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【発明の名称】 電動モータおよび該電動モータを駆動源とする電動工具
【発明者】 【氏名】中根 慎一

【要約】 【課題】電動モータにおいて、従来カーボンブラシの位置を回転方向に合わせて整流子回りに変位させてその性能向上を図る技術が提供されていたが、この技術はカーボンブラシをハウジング外部に取り出して交換可能とする形態の電動モータに適用することが困難であった。本発明ではこのような形態の電動モータであっても同等の作用効果を得ることができるようにすることを目的とする。

【解決手段】電機子に対して固定子を回転方向に変位させることにより、固定子間に発生する磁界の向きを変化させ、これにより発生する電磁力の向きを変化させて従来と同様の作用効果を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 モータケースの内面に取り付けた固定子を、回転子の回転軸回りに一定角度変位可能な構成とした電動モータ。
【請求項2】 ハウジングの内面に取り付けた固定子を、正転・逆転切り換えレバーに連動して回転子の回転軸回りに一定角度変位可能な電動モータを駆動源とする電動工具。
【請求項3】 請求項2記載の電動工具であって、固定子としてのマグネットをヨークを介してハウジングに取り付け、前記ヨークを回転させて該固定子を回転子の回転軸回りに一定角度変位可能な構成とした電動モータを駆動源とする電動工具。
【請求項4】 請求項3記載の電動工具であって、ヨークを2層構造とし、固定子としてのマグネットを取り付けた内周側の分割ヨークを正転・逆転切り換えレバーに連動して、ハウジングの内面に固定した外周側の分割ヨークに対して回転させる構成とした電動モータを駆動源とする電動工具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電動モータおよびこの電動モータを駆動源とする電動工具に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば実開昭53−43410号公報に開示されているように、回転子の整流子に接触するカーボンブラシの位置を、該回転子の回転軸回りに一定の角度だけ変位させて、整流子の各セグメントに電流を供給する位置を回転方向にずらせることにより正転時および逆転時共に最適な整流状態を確保できるようにした電動モータ、およびこの電動モータを駆動源として備えた電動工具が提供されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、カーボンブラシがハウジング内部に完全に組み込まれた形態の電動工具の場合であれば、正転・逆転の切り換えスイッチに連動してカーボンブラシを回転子の回転軸回りにシフトさせる従来の構成を用いることができるが、ハウジングを分解することなくカーボンブラシをハウジングの外部に取り出して交換可能とした形態の電動工具の場合には、ハウジングにブラシ装着口が設けられる等の理由からカーボンブラシをシフトさせる従来の構成を適用することが困難であった。そこで、本発明は、ハウジングに設けた装着口を経てカーボンブラシを交換可能とした電動工具であっても、正転・逆転に合わせてカーボンブラシの整流子に対する位置を変位させる場合と同等の作用効果を得ることができる電動モータおよび該電動モータを用いた電動工具を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】このため、本発明は、前記各請求項に記載した構成の電動モータおよび該電動モータを駆動源とする電動工具とした。請求項1記載の電動モータによれば、従来のようにカーボンブラシを変位させる構成ではなく、固定子を回転子の回転軸回りに一定角度変位させる構成であるので、ハウジングを分解することなくカーボンブラシをハウジングの外部に取り出して交換可能な形態の電動モータであっても、従来と同様の作用効果を得ることができる。固定子を回転子の回転軸回りに変位させて磁界の方向を変化させることにより発生する電磁力の向きを変化させることと、カーボンブラシを整流子の軸線回り(回転子の回転軸線回り)に回転させて電磁力の向きを変化させることとは、磁界に対する電磁力の向きを変化させる点において同等である。
【0005】請求項2記載の電動工具によれば、正転時と逆転時で磁界に対する電磁力の向きを変化させることができるので、何れの場合であっても磁界に対する電磁力の向きを平均化することができ、これにより電動モータの性能および寿命を向上させることができる。
【0006】請求項3記載の電動工具によれば、簡単な構成でマグネットの変位を確実に行うことができる。
【0007】請求項4記載の電動工具によれば、ヨークをハウジングの内面に対して変位させる構成に比して確実かつスムーズに固定子を変位させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1は、電動工具の一例としてのインパクトドライバ1を示している。このインパクトドライバ1は、本体部20とその側部から側方へ突き出し状に設けたハンドル部50を有している。本体部20には駆動源として電動モータ30が内蔵されている。以下説明する実施形態のインパクトドライバ1は、この電動モータ30について特徴を有しており、本体部20の前部に内蔵したインパクト機構等のインパクトドライバ1としての基本的な構成については特に変更を要しないので説明は省略する。
【0009】電動モータ30の回転子31は、軸受け32,33を介してハウジング2の後部に回転可能に支持されている。この回転子31の周囲であって、ハウジング2の内面には円筒形状をなすヨーク34が該回転子31の回りに回転可能に組み込まれている。このヨーク34の内面側であって、回転子31の周囲には2個のマグネット35,36が固定されている。ヨーク34の前端下部には凹部34aが形成されており、この凹部34aには、正逆切り換えレバー40の第1アーム部40aの先端が入り込んでいる。この正逆切り換えレバー40は、ハンドル部50の基部付近に配置されており、当該インパクトドライバ1の幅方向(図1において紙面に直交する方向)に移動可能に設けられている。
【0010】図3に示すようにこの正逆切り換えレバー40を図示右方(正転側)に移動操作すると、回転子31が図示反時計回り方向(以下、この方向を当該電動モータ30の正転側とする)に回転する。この正逆切り換えレバー40の正転側への移動操作に連動して、ヨーク34が回転子軸31aを中心にして図示反時計回り方向(正転側)に一定の角度αだけ回転する。また、図4に示すように正逆切り換えレバー40を図示左方(逆転側)に移動操作すると、回転子31が図示時計回り方向(以下、この方向を当該電動モータ30の逆転側とする)に回転する。正逆切り換えレバー40の逆転側の切り換え操作により、ヨーク34が回転子軸31aを中心にして図示時計回り方向(逆転側)に一定の角度βだけ回転する。ヨーク34の回転角度α、βは、本実施形態では基準軸線Sに対して正転側に約12゜、逆転側に約12゜に設定されている。ヨーク34が回転することにより両マグネット35,36が回転子31の回転軸(回転子軸31a)回りに約24゜(α+β)の範囲で回転し、これにより両マグネット35,36により発生する磁界の方向が約24゜の範囲で変化する。ここで、ヨーク34の基準軸線Sとは、その回転方向の位置であって、両マグネット35,36により発生する磁界の方向が、カーボンブラシ37から整流子31bのセグメントを経て回転子31に流される電流の方向に対して平行となる(または直交することとなる)ヨーク34の位置をいう。すなわち、本実施形態では、両マグネット35,36が左右対称に位置することとなるヨーク34の位置を基準軸線Sという。
【0011】回転子31の後部には整流子31b(図2参照)が設けられており、この整流子31bにはカーボンブラシ37,37が摺接されている。この2個のカーボンブラシ37,37は、ハウジング2の後部に取り付けたブラシホルダ38を介して整流子31bを両側から挟むように配置されている。両カーボンブラシ37,37は、上記基準軸線Sに直交する軸線C上に沿って配置されている。ブラシホルダ38は、4箇所に配置した振動吸収用の弾性ゴム38a〜38aを介してハウジング2の内部に取り付けられている。両カーボンブラシ37,37はブラシホルダ38に着脱可能に装着されている。両カーボンブラシ37,37は、ハウジング2の両側部に設けた装着孔2a,2aを経てハウジング2の外部に取り出すことができる。両カーボンブラシ37,37の頭部にはそれぞれキャップ39が装着されている。この両キャップ39,39によりハウジング2の装着孔2a,2aがほぼ塞がれる。このキャップ39,39を外せば、カーボンブラシ37,37をハウジング2の外部に取り出して簡単に交換することができる。
【0012】次に、正逆切り換えレバー40の前端面側には、相互に平行な2本の第2アーム部40b,40bが前方(第1アーム部40aとは反対側)へ突き出した状態に設けられている。一方、ハンドル部50の基部には、電動モータ30の起動・停止および正転逆転の切り換えを行うためのスイッチ41が内蔵されている。このスイッチ41の上部に、正逆切り換え用の操作部材41aが横方向(図1において紙面に直交する方向)に回動可能に設けられている。この操作部材41aの先端部が上記2本の第2アーム部40b,40b間に入り込んで係合している。図3および図4に示すように正逆切り換えレバー40を図示左右方向に移動操作して正転側または逆転側に切り換え操作すると、スイッチ41の操作部材41aが横方向に回動して正転側または逆転側に切り換わり、これにより当該電動モータ30の回転方向が切り換わる。従って、この正逆切り換えレバー40を切り換えると、電動モータ30の回転方向が切り換わるとともに、これに連動してヨーク34が正転側または逆転側に回転することによりマグネット35,36間に発生する磁界の方向が変化する。
【0013】ハンドル部50の基部にはトリガ51が配置されており、このトリガ51を指で引き操作すると上記スイッチ41がオンして電動モータ30が正転方向または逆転方向に起動し、この引き操作を解除するとスイッチ41がオフして電動モータ30が停止する。なお、スイッチ41を含む電動モータ30の制御回路については説明を省略する。ハンドル部50の先端には、電動モータ30に電源を供給するためのバッテリ52が装着されている。
【0014】以上のように構成した電動モータ30によれば、その回転方向に合わせてマグネット35,36(固定子)を回転子31の回転軸(回転子軸31a)回りに回転させて、両マグネット35,36により発生する磁界の方向を変化させる構成であり、従来のようにカーボンブラシ37,37を整流子31の回転軸線回りに回転させる構成ではないので、このカーボンブラシ37,37をハウジング2の外部に取り出して簡単にブラシ交換を行うことができる形態の電動工具(インパクトドライバ1)であっても、従来と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、例示した実施形態の電動モータ30により、カーボンブラシの組み込み形態に関係なく、回転方向に合わせて電磁力の向きを最良の状態に設定することができ、これにより効率のよい出力トルクを得ることができるるとともに、当該電動モータ30の整流状態を最良に設定することができ、これによりカーボンブラシ37,37の寿命を向上させ、また電気的雑音の低下を図ることができる。
【0015】以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、図5に示すようにヨーク60を二層構造にし、内周側の分割ヨーク60aにマグネット35,36を取り付け、該内周側の分割ヨーク60aを外周側の分割ヨーク60bに対して、回転子31の回転子軸31a回りに回転可能に支持する構成としてもよい。これが、請求項4に記載した発明の実施形態に相当する。なおこの場合には、内周側の分割ヨーク60aの前端下部に凹部60cを設け、この凹部60cに正逆切り換えレバー40の第1アーム部40aの先端部を挿入して係合させるとともに、外周側の分割ヨーク60bの前端下部に第1アーム部40aとの干渉をさけるための逃がし凹部60dを設ける構成とすればよい。この構成によれば、前記したようにヨーク34をハウジング2の内面に対して回転可能に支持するのではなく、ハウジング2の内面に固定した外周側の分割ヨーク60bに対して内周側の分割ヨーク60aを回転可能に支持する構成とすることができるので、該内周側の分割ヨーク60aおよび両マグネット35,36のよりスムーズな回転動作を得ることができる。
【0016】また、電動工具の一例としてインパクトドライバ1を例示したが、駆動源としての電動モータを正転または逆転させて使用する形態の電動工具に広く適用することができる。さらに、バッテリ52を電源とする直流モータ(電動モータ30)を例示したが、交流電源により駆動する交流モータおよびこれを内蔵した電動工具にも同様に適用することができる。
【0017】また、ハウジングに直接組み込む形態の電動モータ30を例示したが、固定子および回転子をモータケースに組み込み、これをハウジングに内蔵する形態の電動モータにも同様に適用できることは言うまでもない。また、電動工具に内蔵した電動モータを例示したが、本発明は正転逆転の切り換えを伴って動作させる形態の電動モータおよびこれを駆動源とする各種機器に広く適用することができる。
【出願人】 【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
【出願日】 平成12年7月5日(2000.7.5)
【代理人】 【識別番号】100064344
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 英彦 (外3名)
【公開番号】 特開2002−18747(P2002−18747A)
【公開日】 平成14年1月22日(2002.1.22)
【出願番号】 特願2000−204166(P2000−204166)