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【発明の名称】 ショットピ−ニング処理方法及びその被処理品
【発明者】 【氏名】井上 明久

【氏名】黒崎 順功

【氏名】奥村 潔

【氏名】梶田 浩二

【要約】 【課題】高硬度の金属素材においても高い残留圧縮応力を付与すると共に、被処理品表面粗さを小さくすることを容易に得ることができるショットピ−ニング処理方法、及び、それを用いた被処理品を提供する。

【解決手段】ビッカース硬さHvが900乃至1100、かつ、ヤング率が200000MPa以下のピ−ニング材を用いるショットピ−ニング処理方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ビッカース硬さHvが900乃至1100、かつ、ヤング率が200000MPa以下のピ−ニング材を用いるショットピ−ニング処理方法。
【請求項2】 ビッカース硬さHvが900乃至1100、かつ、ヤング率が50000乃至150000MPaのピ−ニング材を用いるショットピ−ニング処理方法。
【請求項3】 前記ピ−ニング材が鉄系アモルファス球状粒子であることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のショットピ−ニング処理方法。
【請求項4】 処理前にビッカース硬さが、Hv950以下の被処理品に対してピーニング処理をすることを特徴とする請求項1から請求項3に記載のショットピ−ニング方法。
【請求項5】 処理前にビッカース硬さが、Hv650乃至Hv950以下の被処理品に対してピーニング処理をすることを特徴とする請求項1から請求項3に記載のショットピ−ニング方法。
【請求項6】 前記ショットピーニング処理を、投射速度100m/s以下で行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のショットピーニング処理方法。
【請求項7】 前記ショットピーニング処理を、投射速度50〜70m/sで行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のショットピーニング処理方法。
【請求項8】 処理前にビッカース硬さHvが950以下の鋼材の被処理品に対してピーニング処理をするに際して、鉄系アモルファス球状粒子をピ−ニング材として使用し、被処理品が、最大圧縮残留応力が1600MPa以上、表面粗さRzが5μm以下となる特性を有するようにピーニング処理を行なうことを特徴とするショットピーニング処理方法。
【請求項9】 請求項1から請求項8のいずれかに記載のピ−ニング処理方法を行うことにより処理した被処理品であって、被処理品が、最大圧縮残留応力が1600MPa以上、表面粗さRzが5μm以下となる特性を有することを特徴とする被処理品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ショットピ−ニング処理方法及びそれを用いた被処理品に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、金属製品の寿命を長くするためショットピ−ニング処理をすることは公知である。このショットピ−ニングのピ−ニング材としては様々な種類が用いられているが、鋳鋼製のピ−ニング材が従来から広く用いられている。しかしながら、この鋳鋼製のピ−ニング材では、投射速度を高くすれば金属素材に高い残留応力を付与することができるが、素材の表面が荒れてしまうことがあるという問題があった。また、金属素材が熱処理等をすることにより、その表面硬度が硬い場合には、鋳鋼製のピ−ニング材料ではいくら投射速度をあげても金属素材に高い残留応力を付与することが困難であった。即ち、ピ−ニンング材料が破砕してしまうためである。このため、いわゆる超硬製のピ−ニング材料を使用する場合が増えてきている(例えば、特開平8−323626号公報参照)。
【従来の技術の問題点】しかしながら、超硬製のピ−ニング材料を用いた場合には、金属素材に高い残留応力を付与することができるが、素材の表面が荒れてしまうことがあるという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、低硬度はもちろん比較的高硬度の金属素材においても高い残留圧縮応力を付与すると共に、被処理品表面粗さを容易に小さくできるショットピ−ニング処理方法、及び、それを用いた被処理品を提供することを目的とする。
【0004】本発明は、上記の目的を達成するため、ピ−ニング材料を追求する中からなされたものであり、その課題を解決するための手段は従来とは全く異なるものである。即ち、はじめに大きな径のピ−ニング材で処理をした後、小さな径のピ−ニング材で処理するいわゆるダブルピ−ニング処理は慣用技術であるが、複数のピ−ニング装置が不可欠であるという問題があった。また、大きな径のピ−ニング材と小さな径のピ−ニング材を混合してピ−ニングするいわゆる混合ピ−ニングが提案されているが、混合割合や粒度管理など様々な未解決な問題を有する技術であり実用化に到っていない。
【0005】
【課題を解決するのための手段】これらの従来技術に対して、上記の目的を達成するために本発明におけるショットピ−ニング処理方法は、ビッカース硬さHvが900乃至1100、かつ、ヤング率が200000MPa以下(より好ましくは、ヤング率が50000乃至150000MPa)のピ−ニング材を用いることを特徴とする。また、本発明におけるショットピ−ニング処理方法は、上記範囲のビッカース硬さとヤング率を有するピ−ニング材が鉄系アモルファス球状粒子を用いることを特徴とする。
【0006】本発明によれば、高い残留圧縮応力を付与すると共に、被処理品表面粗さを小さくすることをができ、それを用いた被処理品は寿命が長くなる。すなわち、本発明によれば、ショットピーニング処理をした場合、粒子が結晶構造の粒子とは異なり低弾性率体(低ヤング率体)であるために被処理品の表面粗さを一定以下に抑えながら(滑らかさを保持したまま)、高い残留圧縮応力を被処理品に与えることができる。すなわち、表面の滑らかさを維持したまま、硬度、降伏強さ及び引張強さの増大をもたらすことができる。
【0007】また、本発明によれば、鉄系アモルファス粒子は、高硬度であるため、能率よく所定のブラスト加工ができる。
【0008】さらに、上記の目的を達成するために本発明におけるショットピ−ニング処理方法は、上記範囲のビッカース硬さとヤング率を有するピ−ニング材(より好ましくは鉄系アモルファス球状粒子)を用いて、処理前にビッカース硬さが、Hv950以下(より好ましくは、Hv650乃至Hv950以下)の被処理品に対してピーニング処理をすることを特徴とする。
【0009】本発明によれば、上記の範囲の被処理品(例えば、鋼材)に対してショットピーニング処理を行った場合、被処理品に、最大圧縮残留応力が1600MPa以上で、表面粗さRzが5μm以下の特性を容易に得ることができる。
【0010】上記の目的を達成するために本発明におけるショットピ−ニング処理方法は、上記範囲のビッカース硬さとヤング率を有するピ−ニング材を、投射速度100m/s以下(より好ましくは投射速度50〜70m/s)で、処理前に上記範囲のビッカース硬さの被処理品に対してピーニング処理をすることを特徴とする。
【0011】本発明によれば、上記の範囲の被処理品に対してショットピーニング処理を行った場合、被処理品に、最大圧縮残留応力が1600MPa以上、表面粗さRzが5μm以下の特性を容易に、かつ比較的低い投射速度でも得ることができる。したがって、省エネに資するピ−ニング処理方法になる。一方、高速の投射であっても、表面粗さを低くすることが可能である。
【0012】さらに、上記の目的を達成するために本発明におけるショットピ−ニング処理方法は、処理前にビッカース硬さHvが950以下の鋼材の被処理品に対してピーニング処理をするに際して、鉄系アモルファス球状粒子をピ−ニング材として使用し、被処理品が、最大圧縮残留応力が1600MPa以上、表面粗さRzが5μm以下となる特性を有するようにピーニング処理を行なうことを特徴とするショットピーニング処理方法である。
【0013】本発明によれば、鋼材に対して、容易に最大圧縮残留応力が1600MPa以上、表面粗さRzが5μm以下となるため、被処理品の寿命が延びる。
【0014】上記の目的を達成するために本発明における被処理品は、上記のショットピ−ニング処理方法を用いて処理した被処理品である。
【0015】ここで、本発明において、ピ−ニング材の材質は問わないが、鉄系アモルファス球状粒子が比較的容易にかつ低コストでの生産が可能である。
【0016】また、ここで、本発明において、被処理品のピ−ニング処理前のビッカース硬さがHv950以下としたのは、容易に被処理品に大きな圧縮残留応力と表面粗さを付与できる被処理品の範囲の上限を示したものである。一方、Hv650以下であると、他の材質のピ−ニング材でも残留応力の付与が可能になって、必ずしも本発明にかかるピ−ニング材を使用する必要は小さくなっていくからである。これらの硬度に該当する部品や材料としては、例えば、歯車などの浸炭焼入れ部品や各種の金型が該当するが、その材質は問わない。また、製品形状を問わない。さらに、熱処理の種類を問わない。
【0017】さらに、ここで、本発明において、投射速度とは、遠心投射による投射速度のみならず、各種の空気式噴射による噴射速度を含む概念である。尚、投射速度50〜70m/sは、通常の遠心投射よりも低い投射速度である。
【0018】
【試験例1】以下、試験例に基づき発明の実施の形態を説明する。試験例1において、ピ−ニング材としてアモルファス粒子を採用した場合の効果を調べるために、ショットピーニング処理におけるピ−ニング材の影響について、ブラスト装置として、新東ブレーター社製『エアブラスト装置MY30』、被処理品として、金型(材質SKD11 ビッカース硬度Hv770)、処理条件として、噴射圧0.4MPa、噴射ノズル口径6mm、噴射距離150mm、噴射量1.3Kg/min、噴射速度80m/S、の条件でショットピーニング処理を行った。なお、各ピ−ニング材の粒径は、いずれも0.3mmφのものを使用した。
【0019】アモルファスショットのショットピーニング効果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】表1により、以下のことが判る。鋳鋼ショットによれば圧縮残留応力は付与できず表面粗さも荒れない。一方、被処理品に高い圧縮残留応力を付与しようと超硬ショットでを用いると、表面粗さは非常に大きくなってしまう。これに対して、アモルファスショットでは、圧縮残留応力は高くしかも表面粗さを低くすることができる。
【0022】他の材料との物性比較を以下に説明する。
【0023】本発明に用いられるアモルファス材料は、その材質・大きさによりヤング率及び硬度が異なるが、平均粒径0.05乃至0.5mmの範囲であれば、ヤング率50000乃至1500000のアモルファスピ−ニング材を比較的低コストでアトマイズ法で製造できることが確認できた。平均粒径が0.05乃至0.3mmの範囲であれば、更に製造が容易になる。ただし、平均粒径が0.02乃至1.5mmであれば製造は可能である。粒径が大きくなると段々球状のアモルファスが得られなくなり、1.5mm以上は球形にするのが困難である。平均粒径が0.02mm以下の場合は、ピ−ニング材質を問わず表面の荒れを小さくすることが容易である。また、平均粒径を大きくすると段々表面が荒れてくる。よって、本発明に用いるピ−ニング材の平均粒径としては、0.05mm乃至1.5mmであることが更に好ましい。一方、切断してショット材に用いられる鋼線は、ヤング率200000あるにもかかわらずHv硬さが730であり、球状でもなくヤング率が高すぎるため表面が荒れてしまためピ−ニング材には適さない。
【0024】本発明によるアモルファス材料は高硬度で低弾性率(低ヤング率)を示していることがわかる。アモルファスの高硬度、低ヤング率を生かして、高圧縮応力、低表面粗さを実現できる。
【0025】
【試験例2】次ぎに、試験例2について説明する。ピーニング処理におけるピ−ニング材の種類と投射速度(噴射速度)の影響を調べるために、加圧式ピーニング装置(装置名「MY−30」新東ブレーター社製)を用いて、ばね材SCM420(Hv370)を処理した場合について、最大残留圧縮応力及び表面粗さを調べた。この結果を表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】表2において、本発明の条件を満たすピ−ニング材としてアモルファス球状粒子を使用した場合、通常使用されている鋼球のピ−ニング材を使用した場合と比較して、より低い投射速度で、鋼球(ショット)を用いた場合には付与することのできない1600MPa以上の大きな残留圧縮応力を与えることができる。
【0028】また、高残留応力を付与するために使用される超硬のピ−ニング材を使用した場合と比較して、より表面を粗さずに処理することができる。したがって一般的に要求される表面粗さがおよそ5μm以下となるので、二次仕上げ等の再処理を行なう必要がない。
【0029】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明は、ビッカース硬さHvが900乃至1100、かつ、ヤング率が200000MPa以下のピ−ニング材を用いるショットピ−ニング処理方法であるから、硬度の鋼材(被処理品)に、被処理物表面の表面粗さを一定以下に抑えながら、高い残留圧縮応力有する特性を付与することが可能となった。すなわち、高い残留応力を付加させたいならピ−ニング材より高硬度にすればよいが、超硬ショットのような高硬度粒子はその弾性率が高いから表面が凄まじく荒されることになる。しかし本発明によるアモルファスショットは高硬度且つ低弾性率(低ヤング率)体であるため、アモルファスショットでピーニング処理することで、表面を粗さずに深い残留応力が得られることになる。
【出願人】 【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
【識別番号】591112625
【氏名又は名称】井上 明久
【識別番号】390031185
【氏名又は名称】新東ブレーター株式会社
【出願日】 平成12年7月31日(2000.7.31)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−36115(P2002−36115A)
【公開日】 平成14年2月5日(2002.2.5)
【出願番号】 特願2000−230317(P2000−230317)