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【発明の名称】 旋盤におけるワークの球面加工方法
【発明者】 【氏名】尾山 道洋
【課題】旋盤を用いてワークに部分球面加工を行う方法に関し、形状精度及び仕上げ面精度の高い球面を効率よく加工する。

【解決手段】刃物台4にB軸方向に角度制御される回転工具軸8を設けた複合旋盤を用い、回転工具軸8にフライス9を装着して、回転工具軸8のB軸方向の振れ角を固定してX軸ないしY軸方向、一般的には回転工具軸が向く方向に切込み送りを与えるか、又は、回転工具軸8を加工する球面の中心Pに向けて円弧方向に移動させて、球面加工を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 X軸方向及びZ軸方向位置を制御可能な刃物台(4)にB軸方向に振れ角を制御可能な回転工具軸(8)を搭載した旋盤を用い、前記回転工具軸に椀状ないし皿状の基体の前面外周部に切刃(11)を備えたフライス(9)を装着し、前記回転工具軸が加工しようとする球面の中心(P)を向くように角度制御しつつ前記刃物台に当該球面の周方向の切込み送りを与えることを特徴とする、旋盤におけるワークの球面加工方法。
【請求項2】 X軸方向及びZ軸方向位置を制御可能な刃物台(4)にB軸方向に振れ角を制御可能な回転工具軸(8)を搭載した旋盤を用い、当該回転工具軸に椀状ないし皿状の基体の前面外周部に切刃(11)を備えたフライス(9)を装着し、前記回転工具軸を球面加工終了時に加工された球面の中心(P)を向く方向に固定して、前記刃物台に切込み送りを与えることを特徴とする、旋盤におけるワークの球面加工方法。
【請求項3】 フライスの回転接線方向から見た形状が円形又は円弧形の切刃(11)を備えたフライスを用いることを特徴とする、請求項1又は2記載の球面加工方法。
【請求項4】 フライスの切刃(11)の円弧半径を(r)、当該切刃の円弧中心から回転工具軸の軸心までの半径を(R)、加工しようとする球面の半径を(a)としたときの回転工具軸(8)のX軸方向からの振れ角θが cos-1(R/(a+r))である、請求項1、2又は3記載の球面加工方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、旋盤を用いて主軸に把持されたワークの先端又は中間位置に球面加工を行う方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、旋盤で球面加工を行うときは、図7に示すように、刃物台4にバイト17を取付け、主軸に把持されたワーク13を回転させながら、刃物台16を円弧移動させることによって加工を行っている。旋盤を制御するNC装置には、各種の加工を行うためのサブプログラム(コード)が準備されており、球面加工用のサブプログラムも含まれている。球面加工をするときは、このサブプログラムに刃物台上でのバイトの刃先位置、加工しようとする球面の中心の座標及び半径などを引数として渡す。NC装置は、これらの引数と刃物台の現在位置を基に微少間隔で移動先のX座標とZ座標とを演算して刃物台を順次移動させることにより、刃物台16を図7に18で示す円弧軌跡に沿って移動させ、球面の加工を行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来方法でワークの先端に球面加工を行うときは、球の頂部(主軸軸線上の位置)を加工するとき、バイト17の先端が主軸軸線上にまで進出する。ワークの切削や研削を行うためには、切刃とワーク表面との間に適切な相対速度が存在する必要があるが、旋盤のワークは主軸の中心軸回りに回転しているので、バイトの刃先が主軸中心に近付くと、ワークの周速が小さくなり、主軸軸線上ではゼロになってしまう。そのため、加工した球の頂部付近では、表面粗さが悪くなり、頂部に小さな突起が残ってしまう。また、周速が小さい状態で強引に加工を行うので、バイトの切刃に対する負担が大きく、工具寿命が短くなるという問題があった。また、刃物台のZ軸方向移動とX軸方向移動との合成によって円弧移動させるため、加工する球の精度に限界があり、精度を上げようとすると、演算や刃物台の移動に時間がかかって、加工能率が上がらないという問題があった。
【0004】そこでこの発明は、旋盤で棒材やフランジ材の特に先端部分に形状精度及び仕上げ面精度の高い球面を効率よくかつ工具に負担をかけないで加工する方法を得ることを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明の方法では、X軸方向とZ軸方向とに位置制御される刃物台4にY軸方向の旋回軸7を備え、この旋回軸回りにB軸方向に角度制御される回転工具軸8を備えた複合旋盤を用いて加工を行なっている。ここでZ軸方向は旋盤の主軸方向、X軸方向はZ軸と直交する旋盤の刃物台の送り方向、Y軸方向はX軸及びZ軸と直交する方向、B軸方向はY軸回りの旋回方向である。回転工具軸8の軸心は、旋回軸7の軸心と直交している。この種の複合旋盤には、通常工具マガジンと自動工具交換装置とが設けられ、回転工具軸8に装着する工具を交換して、マシニングセンタ的な加工が可能となっている。
【0006】この発明では、前記回転工具軸8に工具基体の前面外周部に複数の切刃11を有するフライス9を装着して球面加工を行う。このフライスは、好ましくはフライスの回転接線方向から見て円形ないし円弧形の刃先を備えたフライスを用いる(請求項3)。前面から見て中央部が凹んだ椀状ないし皿状の基体の外周部に円形のスローアウエイ形の複数の切刃を備えたフライスは既に実用化されている。この種のフライスは、従来平面加工や形彫り加工に用いられている。
【0007】使用するフライスの刃先(ワークと接している先端)15の回転軌跡の直径2Rが加工しようとする球面の経線方向の弦の長さL(図面参照)と等しいか大きいときは、回転工具軸8のB軸方向の振れ角を固定して加工を行うことができる。使用するフライスの上記回転軌跡の直径2Rが上記弦の長さLより小さいときは、回転工具軸8を加工しようとする球面の中心Pに向けた状態で刃物台4を加工しようとする球面の円弧方向に移動させて加工を行う。この移動は微少間隔の連続移動である必要はない。好ましくは、前記弦の長さLが前記回転軌跡の直径と等しいか大きなフライスを用いて、刃物台4を円弧移動させないで加工する。
【0008】前記好ましい方法によれば、回転工具軸8を球面加工終了時に加工された球面の中心Pへ向く方向に固定して旋盤の主軸と当該回転工具軸とを回転し、刃物台4にZ軸ないしX軸方向(Z軸とX軸の中間の方向を含む。一般的にはフライスの回転中心軸方向)の切削送りを与えることにより加工を行なう(請求項2)。
【0009】また加工する球面の円周方向に切削送りを与える方法では、回転工具軸8を加工しようとする球面の中心Pに向けかつ当該中心と回転工具軸の旋回中心Qとの距離を一定に保持した状態を維持しつつ、すなわち回転工具軸8が常に加工する球面の中心Pに向くようにB軸方向に旋回させかつ刃物台4を当該中心P回りに円弧移動させながら、旋盤の主軸3及び回転工具軸8を回転させることで加工を行なう(請求項1)。
【0010】ワークの先端に球面加工を行なう場合は、球面の頂部の加工終了時にフライスの刃先の回転軌跡が旋盤の主軸軸線上を通る位置関係とする。この条件は、フライスの切刃11の刃先半径をr、当該刃先半径の中心から回転工具軸の軸心までの半径をR、加工しようとする球面の半径をaとしたときの回転工具軸8のX軸方向からの振れ角θを cos-1(R/(a+r))とすることにより実現される(請求項4)。
【0011】
【発明の実施の形態】図6はこの発明で用いる複合旋盤の一例を示した斜視図である。図には旋盤におけるZ軸、X軸、Y軸及びB軸の方向が示されている。ベッド1、主軸台2、主軸3及び刃物台4の配置は、一般的な旋盤と同様で、刃物台4はZ軸及びX軸方向に移動位置決め可能である。
【0012】刃物台4は側面視でコの字形のブラケット5を備えており、そのコの字の間に収まるような形で工具駆動装置6がブラケット5に設けた上下の旋回軸7で支持されて装着されている。図には表れていない下側の旋回軸は、工具駆動装置6に固定されてブラケット5に回転自在に軸支され、この旋回軸にサーボ駆動の旋回モータを連結することにより、工具駆動装置6の旋回軸7回りの振れ角が制御される。工具駆動装置6は、旋盤の主軸軸線を向く回転工具軸8を備えており、この回転工具軸にフライス9が装着されている。
【0013】一般的なこの種の複合旋盤では、主軸台2の後方に工具マガジンと工具交換装置とが設けられており、回転工具軸8を図の左方向に振った状態で刃物台4が左移動して、工具の交換が行われる。フライス9は、ワークの球面加工を行うときに、工具交換装置によって回転工具軸8に装着される。
【0014】フライス9には、図1に模式的に示すように、工具基体10の前面の外周部分に、外周面を緩い円錐面にして逃げ角を設けた短いテーパ円筒型のスローアウエイチップ11が、その円筒の軸をフライスの回転接線方向にして、ボルト12で固定されている。スローアウエイチップ11は、フライスの回転接線方向から見て円形の刃先を形成しており、ワークの表面を円弧溝状に切除してゆくので、滑らかな仕上げ面を得ることができる。
【0015】図1ないし5は、この発明の方法でワーク13に球面加工を行っている状態を模式的に示した図である。図1はワーク13の先端に半球の加工を行うのに最も典型的な方法を示した図で、フライス9の中心軸(従って回転工具軸)は、θ=45度の振れ角で加工しようとする球面14の主軸軸線上にある中心Pに向いており、フライスの刃先15は、主軸軸線に近い側が主軸軸線上でワークに接し、主軸軸線から遠い側は、ワークの円筒形の外周に接している。このような条件を満足させるためには、加工する半球面の直径に合った径のフライスを用いなければならない。その条件は、フライスの切刃の円弧半径をr、フライスの軸心から切刃の円弧中心までの半径をR、加工する球の半径をaとして、cos45°=R/(a+r)である。
【0016】図2は回転工具軸8の振れ角θを45度より大きくして、ワーク13の先端に半球より小さい部分球面を加工している例である。また、図3は回転工具軸の振れ角θを45度より小さくして、半球より大きな経線長さを有する球面を加工している例である。ここで経線長さとは、加工する球面のワークの軸方向の周長であり、Lはその弦の長さである。回転工具軸8のX軸方向からの振れ角をθとして、cosθ=R/(a+r)という条件が満足されるときは、球面の加工終了時にフライスの切刃が主軸軸線上でワークの先端に加工された球面の頂部に接している。ワークの頂部に球面加工を行うためには、頂部の加工完了時にこの条件が満足されなければならない。切刃が主軸軸線上に達しない位置や、主軸軸線を超える位置となるときは、頂部に切り残し部分が残る。
【0017】フライスの大きさが加工しようとする球面の経線長さより小さいときは、図4に示すように、回転工具軸8の振れ角θと刃物台4の位置とを移動しなければ球面の全周を加工することができない。この場合の刃物台4と回転工具軸8の移動方向は、加工しようとする球面の中心Pと回転工具軸の旋回中心Qとの距離が一定の位置、すなわち旋回軸7が球の中心Pを中心とする円弧上を移動し、かつ回転工具軸8が球の中心Pを向く方向である。
【0018】図5は、この発明の方法でワーク13の中間部分にリング状の部分球面14を加工している状態を示している。
【0019】
【発明の効果】以上説明した方法によれば、旋盤を用いてワークに正確で面精度の高いな球面加工を行うことができ、人工関節のような先端に球面を有する棒状のワークなどを加工するのに特に好適である。この発明の方法では、主軸回転は低速でよいので、ワークと切刃との相対速度は、フライスの回転によりほぼ一定に維持され、適正な加工条件での切削が可能である。この切削条件を適正にできることと、加工される球の表面に切削線が綾目状に入ることとで、良好な面粗さが得られ、更にある程度の刃先半径を有する円形ないし円弧状の切刃を備えたフライスを使用することによって、面粗さを更に良好にできる。更に、適正な切削速度を維持できることに加え、フライスが複数の切刃を備えているため、加工能率がよく、刃先の摩耗も少ない。また、加工に際して、刃物台を微少間隔で円弧状に移動させる必要がないから、加工プログラムや演算時間が短く、NC装置のCPUやメモリにかける負担が小さく、段取り性も良好になる。
【出願人】 【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
【出願日】 平成13年1月29日(2001.1.29)
【代理人】 【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
【公開番号】 特開2002−224902(P2002−224902A)
【公開日】 平成14年8月13日(2002.8.13)
【出願番号】 特願2001−20630(P2001−20630)