トップ :: B 処理操作 運輸 :: B22 鋳造;粉末冶金




【発明の名称】 Ni金属粉末の製造方法、並びに導電性ペーストおよびセラミック電子部品
【発明者】 【氏名】岡部 参省

【要約】 【課題】表面の少なくとも一部がガラス質酸化物層で被覆されたNi金属粉末を、容易にかつ安価に製造する方法を提供する。

【解決手段】ガラス形成元素を含む化合物であって少なくとも1種類以上の酸化物ゾルを含む化合物と、水溶性のNi2+・還元剤錯体化合物との混合溶液を、得られるガラス質膜の融点以上の温度に加熱されたN2雰囲気中に噴霧し、熱分解する。前記Ni2+・還元剤錯体化合物は、ヒドロキシアセトンとヒドラジンとを反応させてケトンヒドラゾンを得た後、該ケトンヒドラゾンとNi化合物の水溶液とを反応させて水溶液として得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガラス形成元素を含む化合物であって少なくとも1種類以上の酸化物ゾルを含む化合物と、水溶性のNi2+・還元剤錯体化合物との混合溶液を、得られるガラス質膜の融点以上の温度に加熱されたN2雰囲気中に噴霧し、熱分解することを特徴とする、表面の少なくとも一部にガラス質膜を有するNi金属粉末の製造方法。
【請求項2】 前記Ni2+・還元剤錯体化合物は、ヒドロキシアセトンとヒドラジンとを反応させてケトンヒドラゾンを得た後、該ケトンヒドラゾンとNi化合物の水溶液とを反応させて水溶液として得ることを特徴とする、請求項1に記載のNi金属粉末の製造方法。
【請求項3】 前記酸化物ゾルは、該酸化物の平均粒子径が30nm以下であって、2価および3価のアルコールのうちの少なくとも1種を溶媒として含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のNi金属粉末の製造方法。
【請求項4】 前記N2雰囲気温度は、前記ガラス質膜の融点よりも30℃以上高い温度であることを特徴とする、請求項1、2または3に記載のNi金属粉末の製造方法。
【請求項5】 Ni金属粉末と有機ビヒクルとを含有する導電性ペーストであって、前記Ni金属粉末は、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法により製造されたものであることを特徴とする、導電性ペースト。
【請求項6】 セラミックと、該セラミックに形成された導体とを備えたセラミック電子部品であって、前記導体が、請求項5に記載の導電性ペーストを焼成して得られたものを含むことを特徴とする、セラミック電子部品。
【請求項7】 複数の積層された誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層の特定の界面に沿って形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えて積層コンデンサが構成されており、かつ、前記内部電極は、請求項5に記載の導電性ペーストを焼成して得られたものであることを特徴とする、セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Ni金属粉末の表面の少なくとも一部がガラス質膜で被覆された球形状のNi金属粉末の製造方法に関する。また、得られたNi金属粉末を用いた導電性ペーストおよびセラミック電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】積層コンデンサなどのセラミック電子部品の電極材料としては、コストダウンを目的として、Niなどの卑金属が多く用いられるようになってきている。
【0003】ところで、例えば積層コンデンサの場合、その積層数がますます増加し、500〜600層に及ぶまでになっている。このため、セラミック層の薄層化がますます進み、それにともなってNi内部電極層についてもさらに薄層化が要求されている。
【0004】しかしながら、Ni内部電極層の薄層化のために、単に微細なNi粉末を用いるのみでは、焼成時にNi粉末の焼結が進みすぎて、網目状の導体となって導体の抵抗値上昇や導通不良を引き起こしたり、Ni粉末の凝集によって導体層の厚みがばらつくという不都合が起こるという問題点がある。Ni内部電極層を薄層化するには、Ni粉末をより微細にし、かつ分散性のよいものにして、焼成時にできるだけ空隙が生じにくくすると共に、セラミック層との焼結収縮挙動を一致させることが必要である。
【0005】従来、セラミック層との焼結収縮挙動を一致させる、すなわちセラミック層の焼結開始温度までNi粉末の焼結を抑制するために、ZrO2、BaO、TiO2、Fe23などの金属酸化物粒子を添加したり、これらの酸化物を生成する前駆体化合物をNi粉末表面に被覆したりする方法が行われれてきている。しかしながら、これらの酸化物は不良導体であり、多量に添加すると導電性が低下するという欠点を有している。
【0006】このような問題点を解決する方法として、特開平10−330802号公報には、ペースト中のNi金属粉末の保存中および焼成中の酸化を防止すること、またペーストの焼結の抑制や促進、接着性の向上などの調節を目的として、NiCl2、Ni(NO32などの熱分解性金属化合物と、Ba(NO32やH3BO3などのガラス質を生成する酸化物前駆体との混合溶液を、微細な液滴にして、加熱分解して、表面の少なくとも一部にガラス質膜を有するNi金属粉末の製造方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平10−330802号公報に開示された従来の方法の場合、NiCl2、Ni(NO32などは、加熱分解によりNi0にならずNiOになってしまうので、還元性ガス例えばH2ガスを送り込み強制的に還元してNi0にする必要があった。ところが、H2ガスは可燃ガスであり、燃焼・爆発を起こす危険性があるため、Ni粉末の製造に際しては防爆装置を備えた高価な設備が必要であるとともに、取り扱いに十分な注意が必要であるという問題点を有していた。
【0008】そこで、本発明の目的は、上記問題点を解決して、表面の少なくとも一部がガラス質酸化物層で被覆されたNi金属粉末を、容易にかつ安価に製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の表面の少なくとも一部にガラス質膜を有するNi金属粉末の製造方法は、ガラス形成元素を含む化合物であって少なくとも1種類以上の酸化物ゾルを含む化合物と、水溶性のNi2+・還元剤錯体化合物との混合溶液を、得られるガラス質膜の融点以上の温度に加熱されたN2雰囲気中に噴霧し、熱分解することを特徴とする。
【0010】そして、前記Ni2+・還元剤錯体化合物は、ヒドロキシアセトンとヒドラジンとを反応させてケトンヒドラゾンを得た後、該ケトンヒドラゾンとNi化合物の水溶液とを反応させて水溶液として得ることを特徴とする。
【0011】また、前記酸化物ゾルは、該酸化物の平均粒子径が30nm以下であって、2価および3価のアルコールのうちの少なくとも1種を溶媒として含むことを特徴とする。
【0012】また、前記N2雰囲気温度は、前記ガラス質膜の融点よりも30℃以上高い温度であることを特徴とする。
【0013】また、本発明の導電性ペーストは、Ni金属粉末と有機ビヒクルとを含有する導電性ペーストであって、前記Ni金属粉末は、上述の製造方法により製造されたものであることを特徴とする。
【0014】また、本発明のセラミック電子部品は、セラミックと、該セラミックに形成された導体とを備えたセラミック電子部品であって、前記導体が、上述の導電性ペーストを焼成して得られたものを含むことを特徴とする。
【0015】さらに、本発明のセラミック電子部品は、複数の積層された誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層の特定の界面に沿って形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えて積層コンデンサが構成されており、かつ、前記内部電極は、上述の導電性ペーストを焼成して得られたものであることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明のNi金属粉末の製造方法は、ガラス形成元素を含む化合物であって少なくとも1種類以上の酸化物ゾルを含む化合物と、水溶性のNi2+・還元剤錯体化合物との混合溶液を、得られるガラス質膜の融点以上の温度に加熱されたN2雰囲気中に噴霧し、熱分解する方法である。そして、前記Ni2+・還元剤錯体化合物は、ヒドロキシアセトンとヒドラジンとを反応させてケトンヒドラゾンを得た後、該ケトンヒドラゾンとNi化合物の水溶液とを反応させて水溶液として得る。
【0017】このような製造方法により、表面の少なくとも一部にガラス質膜を有する、球形状でかつ耐酸化性に優れたNi金属粉末を容易に得ることができる。
【0018】なお、ガラス質膜はNi金属粉末の表面を完全に被覆した形でも、またNi金属粉末の表面および/または表面近傍の一部に偏析した形でもよい。Ni金属粉末同士の接触を妨げて焼結を抑制するためには、表面全体を被覆したものが最も効果的であるが、必ずしも全面を被覆していなくても、用途、焼成雰囲気、要求特性により必要に応じて有効量のガラスが表面に存在していればよい。
【0019】また、Ni2+・還元剤錯体化合物の熱分解で得られるNi金属粉末の粒子径は1μm以下程度であるので、ガラス形成元素を含む化合物である酸化物ゾルの粒子径としては、合成されるNi金属粉末の粒子径の1/30以下の30nm以下が好ましい。
【0020】また、SiO2ゾルの溶媒としては、2価または3価のアルコールが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリグリコール、テトラエチレングリコール、ブタンジオール−1、4−ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、1,2,3−プロピルトリオールなどを適宜用いることができる。
【0021】通常市販されているSiO2ゾルの有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、エチルセルソルブ、n−ブタノールなどが用いられている。しかしながら、これらのSiO2ゾルは、弱酸性から弱アルカリ性溶液中に添加分散させると、凝集して分散性が低下する。これに対して、2価または3価のアルコールをSiO2ゾルの溶媒として用いた場合には、弱酸性から弱アルカリ性溶液中に添加分散させても凝集は起こらず、高分散状態を保つ。したがって、非常に微細な液滴を噴霧熱分解させる場合にも、ガラスを構成する元素が均一に混合されているため組成ずれが起こりにくく、微細な球形状のガラス粉末を得ることができる。
【0022】また、酸化物以外のガラス形成元素を含む化合物としては、水に溶解する化合物、例えば硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、蟻酸塩などを適宜用いることができる。
【0023】また、混合溶液を噴霧するNi雰囲気温度は、安定してガラス質膜を得るために、得られるガラス質膜の融点よりも30℃以上の高温が好ましい。
【0024】さらに、ガラス形成元素を含む混合溶液を噴霧する方式としては、超音波振動方式、静電霧化方式、2〜3流体ノズル方式などがあり、これらを適宜用いることができる。なかでも超音波振動方式や静電霧化方式は、より細かい液滴に霧化することができ、より細かい粉末を得ることができるため好ましい。
【0025】ところで、ニッケルイオン(Ni2+)と還元剤であるヒドラジンとを直接反応させて得られるNi2+・還元剤錯体化合物(Ni−ヒドラジン錯体化合物)は、水に対して不溶性であり、溶液タイプのNi前駆体溶液を調整することは不可能である。このため、Niの分散が不均一となる。
【0026】本発明においては、ヒドロキシアセトンとヒドラジンとを反応させて得られるケトンヒドラゾン(ヒドロキシアセトン−ヒドラゾン)とNi2+を反応させて、水溶性のNi前駆体溶液であるNi2+・還元剤錯体化合物(Ni−ヒドロキシアセトン−ヒドラゾン錯体化合物)を得ている。これにより、Niの原子レベルでの均一分散を達成している。
【0027】また、本発明の方法では、生成したNi2+・還元剤錯体化合物(Ni−ヒドロキシアセトン−ヒドラゾン錯体化合物)を加熱するため、Ni−ヒドラジンの熱分解よる還元の場合と同じく、Ni2+を還元してNi0にすることができる。このため、強制還元のために、例えばH2ガスなどの還元性ガスを送り込む必要がない。したがって、本発明の方法の場合、Ni(NO32やNiCl2などを直接熱分解するときのようにNi0にならずにNiOになるという反応は起こらず、強制還元ガスを供給することなく直接Ni0を得ることが可能である。
【0028】また、Ni0は酸化されやすく酸素が介在するとすぐに酸化されてNiOとなる性質があるため、NiOへの酸化を防ぐために噴霧雰囲気を非酸化性雰囲気のN2ガス中とし、Ni0→Ni2+〔Ni(metal)→NiO〕への酸化反応を抑制している。
【0029】次に、本発明の導電性ペーストは、上記の製造方法で得られたNi金属粉末を有機ビヒクル中に分散させることにより得られる。なお、有機ビヒクルは、通常、樹脂および溶剤を主成分とし、それ以外に必要に応じて、分散剤、可塑剤、消泡材、静電気防止剤などを所定量含む。
【0030】そして、樹脂としては、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ブチラール系樹脂、アルキッド系樹脂などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。また、溶剤としては、たとえば、テルピネオール、グリコール類、セロソルブ類、酢酸エステル類などが挙げられるが、特に限定されるものではない。樹脂の種類、塗布方法などとの兼ね合いで、適宜選択して用いることができる。
【0031】次に、本発明のセラミック電子部品は、セラミックと、上記の導電性ペーストの焼成により形成された導体とを含むものであり、例えば、積層セラミックコンデンサ、セラミック多層回路基板、セラミックコンデンサ、セラミック共振器、セラミックアクチュエータなどがある。
【0032】図1は本発明のセラミック電子部品の一例を示す積層セラミックコンデンサの断面図であり、図2は図1に示す積層セラミックコンデンサの積層体2の分解斜視図である。
【0033】図1および2を参照して、積層セラミックコンデンサ1は、複数の積層された誘電体セラミック層3および4と、積層方向における中間部に位置する誘電体セラミック層4間の特定の界面に沿いかつ積層体2の積層方向に互いに重なり合った状態で形成された複数の内部電極5および6とを含む、直方体形状の積層体2を備えている。この内部電極5および6が、本発明の導電性ペーストを焼成して形成されている。
【0034】そして、積層体2の外表面上であって、その各端部には、第1および第2の外部電極7および8がそれぞれ形成されている。外部電極7および8は、それぞれ、内部電極5および6のうちの特定のものに電気的に接続されるもので、第1の外部電極7に電気的に接続される内部電極5と第2の外部電極8に電気的に接続される内部電極6とは、交互に積層方向に配置されている。
【0035】なお、外部電極7および8の各上には、ニッケル、銅などからなる第1のめっき層9が形成され、さらにその上には、はんだ、錫などからなる第2のめっき層10が形成されてもよい。
【0036】次に、この積層セラミックコンデンサ1の製造方法について、製造工程順に説明する。
【0037】まず、例えば、チタン酸バリウムを主成分とした非還元性の誘電体セラミック原料粉末を用意し、これに有機バインダを加えてスラリー化し、このスラリーをシート状に成形して、誘電体セラミック層3および4のためのセラミックグリーンシートを得る。
【0038】次に、中間部に位置する誘電体セラミック層4となるセラミックグリーンシートの各一方の主面上に、ニッケルを導電成分とする内部電極5および6を形成する。これら内部電極5および6は、本発明の導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷法などの印刷法で形成される。
【0039】次に、内部電極5または6を形成した誘電体セラミック層4のためのセラミックグリーンシートを、必要枚数積層するとともに、図2に示すように、これらセラミックグリーンシートを、外層部に位置する、内部電極が形成されていない誘電体セラミック層3のためのセラミックグリーンシートによって挟んだ状態とし、これらを圧着することによって、生の積層体を得る。
【0040】その後、この生の積層体を、所定の非酸化性雰囲気中で所定の温度にて焼成し、積層体2を得る。
【0041】次に、積層体2の両端面上に、内部電極5および6の特定のものと電気的に接続されるように、外部電極7および8を形成する。この外部電極7および8の材料としては、内部電極5および6と同じ材料、すなわちニッケルを使用することができるが、それ以外に、銀、パラジウム、銀−パラジウム合金なども使用可能である。また、これら金属粉末に、B23−SiO2−BaO系ガラス、Li2O−SiO2−BaO系ガラスなどのガラスフリットを添加したものが使用される。これら外部電極材料については、積層セラミックコンデンサ1の用途、使用場所などを考慮して適当な材料が選択される。
【0042】また、外部電極7および8は、典型的には、材料となる金属粉末ペーストを、焼成により得た積層体に塗布して、焼付けることによって形成されるが、焼成前に塗布して、積層体2を得るための焼成と同時に焼付けることによって形成してもよい。
【0043】その後、外部電極7および8の上に、ニッケル、銅などのめっきを施し、第1のめっき層9を形成する。最後に、この第1のめっき層9の上に、はんだ、錫などの第2のめっき層10を形成し、積層セラミックコンデンサ1を完成させる。
【0044】
【実施例】以下、ガラス形成元素としてSi、Ba、B、Liを含むガラス質膜を表面に有する、本発明のNi金属粉末の製造方法の実施例を示す。
【0045】まず、水溶性のNi2+・還元剤錯体化合物の溶液(溶液A)を調整した。すなわち、表1に示すように、まず、ヒドロキシアセトンと還元剤としてのヒドラジンとを用意し、ヒドロキシアセトン:ヒドラジン=1:1(モル比)の比率で反応させて、ヒドロキシアセトン−ヒドラゾン(ケトンヒドラゾン)を合成した。次に、Ni化合物としての酢酸ニッケル{Ni(OAc)2}を用意し、Ni:ヒドロキシアセトン−ヒドラゾン(ケトンヒドラゾン)=1:2.25(モル比)になるように調合し、反応させて、N2+−ヒドロキシアセトン−ヒドラゾン錯体化合物(Ni2+・還元剤錯体化合物)の水溶液を調整した。当溶液中のNi量は117.42g/1000mlである。
【0046】
【表1】

【0047】次に、ガラス形成元素を含む化合物の溶液(溶液B)を調整した。すなわち、表2に示すように、まず、Si源としてエチレングリコールを溶媒としたSiO2ゾルを用意した。また、Li源としてLi2CO3を、Ba源としてBaCO3を、B源としてB23をそれぞれ用意した。次いで、Si:Li:Ba:B=1.0:1.0:1.5:1.5(原子モル比)なるように、SiO2ゾル、BaCO3、B23、Li2CO3を正確に秤量し分取した。その後、林檎酸をSi、Ba、B、Liと反応するのに必要な当量の1.25倍量の当量数を正確に秤量し分取して加え、さらに純水を加えてスターラ上で攪拌しながら溶解して、ガラス形成元素を含む化合物の溶液を調製した。なお、使用したSiO2ゾル溶液中のSiO2含有量は20wt%であった。また、調製した溶液B中のガラス形成元素を含む化合物の酸化物換算量は、69.95g/1000mlである。
【0048】
【表2】

【0049】次に、表3に示すように、Ni金属に対するガラス形成元素を含む化合物量を酸化物に換算して0.1〜20wt%になるように、溶液Aおよび溶液Bを混合した。その後、この混合溶液を、850℃に加温したN2雰囲気中に超音波振動方式で噴霧して、熱分解を行ない表面に膜を有するNi金属粉末を得た。
【0050】
【表3】

【0051】得られたNi金属粉末について、X線回折(XRD)分析を行なったところ、Niのみが検出された。また、発光分光分析を行なったところ、Ni、Si、Ba、BおよびLiの5元素が検出された。以上のことは、得られたNi金属粉末は、SiO2、B23、BaO、Li2Oから構成されたガラス質膜で表面が被覆された粉末であることを示している。
【0052】次に、得られたNi金属粉末の熱重量分析を大気中で行なって、酸化開始温度を測定した。酸化開始温度は、重量増加率が2%(完全にNiOになる重量増加率の約1/10)となる温度とした。結果を表4に示す。
【0053】
【表4】

【0054】表4から明らかなように、ガラス質膜をNi金属粉末表面に被覆することで、Ni金属粉末の耐酸化性を向上させることができる。Ni粉末製造時の混合溶液中のガラス形成元素を含む化合物量を酸化物に換算量して20wt%とすることにより、ガラス質膜を被覆しない場合と比較して、酸化開始温度が210℃も高くなる。
【0055】次に、走査型電子顕微鏡(SEM)で、得られたNi金属粉末の形状および粒子径を観察した。結果を表5に示す。
【0056】
【表5】

【0057】表5から明らかなように、得られるNi金属粉末の形状は、ガラス質膜の被覆の有無に関係なくすべて球形状になっている。また、Ni金属粉末の粒子径は、ガラス質膜の被覆量(ガラス形成化合物の酸化物換算濃度)が増加していくと、わずかに粒子径が増加する傾向が見られるが、大幅な増加はなく、ガラス質膜はNi金属粉末の粒子径にほとんど影響を与えない。
【0058】以上のとおり、本発明の方法によれば、表面の少なくとも一部にガラス質膜を有する、球形状でかつ耐酸化性に優れたNi金属粉末を容易に得ることができる。
【0059】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の金属粉末の製造方法によれば、表面の少なくとも一部にガラス質膜を有する、球形状でかつ耐酸化性に優れたNi金属粉末を容易にかつ安価に得ることができる。
【0060】本発明の方法によれば、Ni金属粉末を前もって準備する必要がなく、Ni2+とガラス質膜を構成する金属イオンがあれば、1工程で表面にガラス質膜を有するNi金属粉末を得ることができる。また、Ni金属粉末の製造に際して、H2ガスなどの可燃ガスを用いないため、燃焼・爆発を起こす危険性がなく、防爆装置を備えた高価な設備を必要としない。
【0061】本発明方法で得られるNi金属粉末は、低温域での焼結が抑制され、セラミックの焼結開始温度付近まで焼結を遅らせることが可能となり、過焼結を防止できる。このため、このNi金属粉末を導体材料とした導電性ペーストを用いることにより、焼成時にNi粉末の焼結が進みすぎて、網目状の導体となって導体の抵抗値上昇や導通不良を引き起こしたり、Ni粉末の凝集によって導体層の厚みがばらつくということが抑えられるとともに、導体層とセラミック層の同時焼成時の収縮の不一致に起因するデラミネーションが防止され、薄くかつ導電性に優れたNi導体を形成することができる。
【0062】したがって、この導電性ペーストを用いることにより、積層コンデンサなどのセラミック電子部品の導体層をより薄くすることができる。
【出願人】 【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
【出願日】 平成12年8月21日(2000.8.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−60807(P2002−60807A)
【公開日】 平成14年2月28日(2002.2.28)
【出願番号】 特願2000−249782(P2000−249782)