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【発明の名称】 電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法
【発明者】 【氏名】野口 佳和

【氏名】泉 知夫

【要約】 【課題】漏れ電流が少なく、容量低下もない高性能なタンタル電解コンデンサを製造できるタンタル焼結体を、コンデンサの大きさに応じて提供する。

【解決手段】還元タンタル粉末を不活性雰囲気下で高温熱処理した後に粉砕して得られた、嵩密度が0.50〜1.85g/cm3 のタンタル粉末を、密度が4.5〜7.0g/cm3 で、体積が5mm3 未満の成形体とする成形工程(I)と、成形体を真空中で体積収縮率が2〜15%となるように加熱して焼結体とする焼結工程とを有する電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法である。または、成形工程(I)のかわりに、還元タンタル粉末を不活性雰囲気下で高温熱処理した後に粉砕して得られた、嵩密度が1.75〜2.5g/cm3 のタンタル粉末を、密度が4.5〜7.0g/cm3 で、体積が5mm3 以上の成形体とする成形工程(II)を有していてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 還元タンタル粉末を不活性雰囲気下で高温熱処理した後に粉砕して得られた、嵩密度が0.50〜1.85g/cm3 のタンタル粉末を、密度が4.5〜7.0g/cm3 で、体積が5mm3 未満の成形体とする成形工程(I)と、成形体を真空中で体積収縮率が2〜15%となるように加熱して焼結体とする焼結工程とを有することを特徴とする電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法。
【請求項2】 還元タンタル粉末を不活性雰囲気下で高温熱処理した後に粉砕して得られた、嵩密度が1.75〜2.5g/cm3 のタンタル粉末を、密度が4.5〜7.0g/cm3 で、体積が5mm3 以上の成形体とする成形工程(II)と、成形体を真空中で体積収縮率が2〜15%となるように加熱して焼結体とする焼結工程とを有することを特徴とする電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法。
【請求項3】 還元タンタル粉末が、フッ化タンタル酸カリウムをナトリウムで還元して得られたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法。
【請求項4】 成形工程前に、還元タンタル粉末またはタンタル粉末をマグネシウムの存在下で低温熱処理した後、酸洗いする脱酸素工程を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法。
【請求項5】 還元タンタル粉末のBET法比表面積が、0.8〜4m2 /gであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法。
【請求項6】 焼結体は、EIAJ RC−2361に準拠して60℃、20Vにおいて0.01重量%のリン酸溶液中で化成されると、比静電容量が4万〜15万μFV/gとなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、タンタル粉末を電解コンデンサ用陽極電極とする場合には、まず、タンタル化合物を還元し、得られた還元タンタル粉末を、不活性雰囲気下、1250〜1500℃の高温で熱処理して熱凝集させ、ついで、還元剤の存在下800〜1000℃の低温で熱処理して脱酸素を行う。そして、これを粉砕した後、粉末中に金属ワイヤを埋め込んでペレット状に成形し、さらにこれを焼結して焼結体とする。ついで、得られた焼結体を、化成酸化した後、二酸化マンガン、酸化鉛や導電性高分子等の固体電解質層、グラファイト層、銀ペースト層を焼結体上に順次形成し、さらにその上に陰極端子をハンダ付けなどで接続した後、樹脂外被を形成して、陽極電極として使用している。
【0003】このようなタンタル電解コンデンサとしては、種々の大きさのものが製造されているが、大きく分けて、体積が5mm3 以上のペレット状成形体から製造される大型のものと、5mm3 未満のペレット状成形体から製造される小型のものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このようなタンタル電解コンデンサのうち、大型のコンデンサにおいては、タンタル焼結体への固体電解質の含浸が不十分となりやすく、その結果、コンデンサ容量が低下する場合や漏れ電流が増加する場合があった。一方、小型のコンデンサにおいては、成形体の強度が不十分となりやすく、その結果、得られた焼結体の強度も小さく、製造されたコンデンサの漏れ電流が増加してしまう場合があった。このようにタンタル電解コンデンサは、その大きさによって発生しやすい問題が異なるが、これらの問題を解決する方法について、今までのところいかなる開示もなされていない。
【0005】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、漏れ電流が少なく、容量低下もない高性能なタンタル電解コンデンサとすることができるタンタル焼結体を、コンデンサの大きさに応じて提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法は、還元タンタル粉末を不活性雰囲気下で高温熱処理した後に粉砕して得られた、嵩密度が0.50〜1.85g/cm3 のタンタル粉末を、密度が4.5〜7.0g/cm3 で、体積が5mm3 未満の成形体とする成形工程(I)と、成形体を真空中で体積収縮率が2〜15%となるように加熱して焼結体とする焼結工程とを有することを特徴とする。本発明の電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法は、還元タンタル粉末を不活性雰囲気下で高温熱処理した後に粉砕して得られた、嵩密度が1.75〜2.5g/cm3 のタンタル粉末を、密度が4.5〜7.0g/cm3 で、体積が5mm3 以上の成形体とする成形工程(II)と、成形体を真空中で体積収縮率が2〜15%となるように加熱して焼結体とする焼結工程とを有することを特徴とする。上記還元タンタル粉末は、フッ化タンタル酸カリウムをナトリウムで還元して得られたものであることが好ましい。上記成形工程前には、還元タンタル粉末またはタンタル粉末をマグネシウムの存在下で低温熱処理した後、酸洗いする脱酸素工程を有することが好ましい。上記還元タンタル粉末のBET法比表面積は、0.8〜4m2 /gであることが好ましい。上記焼結体は、EIAJ RC−2361に準拠して60℃、20Vにおいて0.01重量%のリン酸溶液中で化成されると、比静電容量が4万〜15万μFV/gとなることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法においては、還元タンタル粉末を不活性雰囲気下で高温熱処理した後に粉砕して得られたタンタル粉末を、原料として使用する。還元タンタル粉末は、通常、KCl−KF、KCl−NaCl等の混合塩を800〜900℃に加熱して溶融させた希釈塩中に、タンタル化合物と還元剤とを、少量ずつ小分けにして、または、連続的に投入して、これらを反応させることにより得られるものである。
【0008】ここで使用されるタンタル化合物としては、フッ化タンタル酸カリウムなどのフッ化カリウム塩、五塩化タンタル、低級塩化タンタル等の塩化物の他、ヨウ化物、臭化物等などが挙げられる。また、還元剤としては、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属や、これらの水素化物、すなわち水素化マグネシウム、水素化カルシウム等が挙げられる。希釈塩の量は、タンタル化合物と還元剤の合計重量に対して、1.5〜20倍程度の重量となるように設定することが好ましい。希釈塩の量が1.5倍未満では、原料のタンタル化合物の濃度が高いため反応速度が速く、生成するタンタル粒子の粒径が大きくなりすぎる場合がある。一方、希釈塩の量が20倍を超えると反応速度が低下し、生産性が低下する。なお、還元反応時には、希釈塩中に酸化ホウ素(B23)やフッ化ホウ素カリウム(KBF4)などのホウ素化合物を添加してもよい。ホウ素化合物を添加することによって、還元タンタル粉末の過度な微細化を抑制することができる。ここでのホウ素の添加量は、好ましくはタンタル粉末に対して2〜100ppmである。
【0009】タンタル化合物と還元剤との反応終了後、希釈塩を冷却し、得られた集塊を水、弱酸性水溶液等で繰り返し洗浄して、希釈塩を除去することにより、還元タンタル粉末が得られる。この場合、必要に応じて、遠心分離、濾過等の分離操作を組み合わせたり、フッ酸と過酸化水素が溶解している溶液等で粒子を洗浄、精製したりしてもよい。このようにして得られた還元タンタル粉末は、通常、BET法比表面積が0.8〜4m2 /gである。
【0010】還元タンタル粉末を、ついで、不活性雰囲気下、1000〜1500℃で10分〜2時間程度、高温熱処理して熱凝集させる。ここで不活性雰囲気とは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気の他、減圧雰囲気(<10-3kPa)を含む。熱凝集させる前には、遠心機などを使用して、還元タンタル粉末に振動を与えながら、粉末全体が均一に濡れる量の水を添加する予備凝集工程を行ってもよい。この予備凝集工程を行うことによって、より強固に凝集させることができる。また予備凝集工程で添加する水に、金属に対して20〜300ppmのリン、または、2〜100ppmホウ素等をあらかじめ添加しておくことによって、一次粒子の融合成長を抑え、高表面積を維持しながら熱凝集させることができる。ここで加えるリンの形態としては、リン酸、六フッ化リンアンモニウム等が挙げられる。ホウ素の形態としては、酸化ホウ素(B23)やフッ化ホウ素カリウム(KBF4)などのホウ素化合物が挙げられる。なお、リンについては、後述する成形工程の前であれば、いつ添加してもかまわない。成形工程前に添加することによって、ついで行われる工程における焼結の過度な進行を抑制できる。
【0011】高温熱処理後には、熱凝集した還元タンタル粉末を粉砕して、タンタル粉末の嵩密度を調整する。本発明においては、嵩密度が0.50〜1.85g/cm3 のタンタル粉末を一定重量秤量し、これを押し型などに投入した後にプレスして、密度が4.5〜7.0g/cm3 であり、体積が5mm3 未満の円柱状または角柱状などのペレット状成形体(以下、小型成形体という。)に成形する成形工程(I)、または、嵩密度が1.75〜2.5g/cm3 のタンタル粉末を一定重量秤量し、これを押し型などに投入した後にプレスして、密度が4.5〜7.0g/cm3 であり、体積が5mm3 以上の円柱状または角柱状などのペレット状成形体(以下、大型成形体という。)に成形する成形工程(II)を有する。これらの成形工程(I)または成形工程(II)においては、必要に応じてショウノウ(C1016O)などのバインダーや、ポリアクリルカーボネートなどの潤滑剤を添加する。なお、本発明において嵩密度は、JIS Z 2504に準じた方法で測定される値である。
【0012】小型成形体を成形する成形工程(I)において、嵩密度が0.50〜1.85g/cm3 のタンタル粉末、より好ましくは1.0〜1.80g/cm3 のタンタル粉末を使用すると、この成形体を焼結した焼結体をタンタル電解コンデンサの陽極電極に使用した場合の漏れ電流を低く抑えることができる。すなわち、嵩密度が1.85g/cm3 を超えるタンタル粉末を使用すると、押し型に一定重量の粉末を投入した場合のタンタル粉末の体積が小さく、これをプレスする場合のプレスストローク、いわゆる押し比が小さくなり、十分な圧力がかかりにくなる。その結果、強度が不十分な小型成形体となり、これを焼結して得られた焼結体の強度も低下してしまう。よって、このタンタル焼結体を使用したタンタル電解コンデンサにおいては、漏れ電流が増加してしまう。また、コンデンサの製造時には、通常、金属ワイヤをタンタル粉末に埋め込んで成形するが、プレス時に十分な圧力がかからないと、得られた小型成形体から金属ワイヤが抜けやすくなってしまう。このワイヤが抜けやすくなる現象、すなわちワイヤ抜け強度の低下によっても、最終的に得られるタンタル電解コンデンサの漏れ電流が増加してしまう。一方、嵩密度が0.50g/cm3 未満では、粉末の流動性が不良となり、押し型に一定量を供給するのが困難となる。なお、小型成形体の体積は通常5mm3 未満、0.01mm3 以上である。
【0013】タンタル粉末の嵩密度は、還元タンタル粉末を高温熱処理した後の粉砕条件を調整することにより制御できるが、その他にも例えば、高温熱処理前における還元タンタル粉末の粒度や高温熱処理温度をコントロールすることにより制御できる。具体的には、タンタル粉末の嵩密度を0.50〜1.85g/cm3 とするには、高温熱処理前における還元タンタル粉末の粒度を粗い状態に保ち、熱凝集時の接触点の数をできるだけ少なくし、酸洗いなどによって粉末表面をエッチングしてこのような嵩密度としたり、高温熱処理温度を低下させ、例えば標準的な条件が1300℃の時には1200〜1250℃の温度を採用し、熱凝集による収縮を最小限としたりする。成形工程(I)において、このように嵩密度を0.50〜1.85g/cm3としたタンタル粉末を使用することにより、3kg以上の十分なペレット強度を有し、かつ、0.8kg以上のワイヤ抜け強度を有する、体積が5mm3 未満の小型成形体を製造できる。その結果、この小型成形体を焼結して得られる焼結体の強度も優れ、漏れ電流の少ないタンタル電解コンデンサを製造できる。
【0014】なお、ここでペレット強度とは、6mgのタンタル粉末を直径1mmの円柱状ペレットとし、このペレットに対してその径方向に荷重を加えていった場合の、ペレットに亀裂が生じた際の荷重である。ワイヤ抜け強度とは、直径0.09mmの金属ワイヤを粉末に埋め込んで上記円柱状ペレットを成形し、このワイヤをペレットから引き抜くために必要とする力である。
【0015】また、成形工程(I)において小型成形体の密度は4.5〜7.0g/cm3とする。密度が4.5g/cm3 未満では、体積当たりの容量が低下し、タンタル電解コンデンサに要求される高い体積効率の達成が難しくなる傾向であり、密度が7.0g/cm3 を超えると、粉末の粒子間の空隙が小さくなるため、固体電解質である二酸化マンガン(MnO2 )などの含浸が難しくなる傾向である。ここで、体積効率とは、コンデンサの体積と容量の関係であり、単位体積あたりの容量の大きさである。
【0016】一方、大型成形体を成形する成形工程(II)において、嵩密度が1.75〜2.5g/cm3 のタンタル粉末、より好ましくは1.80〜2.2g/cm3のタンタル粉末を使用すると、この成形体を焼結した焼結体をタンタル電解コンデンサの陽極電極として使用した場合の漏れ電流を低く抑え、また、容量不足などのない高性能なコンデンサとすることができる。すなわち、嵩密度が1.75g/cm3 未満のタンタル粉末を使用すると、押し型に一定重量の粉末を投入した場合のタンタル粉末の体積が大きく、これをプレスする場合のプレスストロークが大きくなり、圧力が過剰にかかる。その結果、タンタル粉末が押し型の壁面に過剰に押しつけられ、大型成形体表面の空孔が潰れたり、この成形体内部の空孔サイズが小さくなったりする。このような大型成形体を焼結すると、得られる焼結体の空孔も微細化し、固体電解質を十分に含浸させることが難しくなる。したがって、このタンタル焼結体を使用したタンタル電解コンデンサにおいては、漏れ電流の増加や容量低下などの問題が発生してしまう。一方、嵩密度が2.5g/cm3 を超えると、タンタル粉末が凝集した個々の凝集粉末粒子内の空孔が小さくなる一方、凝集粒子間の空間が極端に大きくなるため、二酸化マンガン(MnO2 )の被膜形成が均一に行えなくなる。なお、大型成形体の体積は、通常5mm3 以上、180mm3 以下である。
【0017】タンタル粉末の嵩密度は、前述したように還元タンタル粉末を高温熱処理した後の粉砕条件を調整する方法だけでなく、高温熱処理前における還元タンタル粉末の粒度や高温熱処理温度をコントロールすることによっても制御できる。タンタル粉末の嵩密度を1.75〜2.5g/cm3 とするには、高温熱処理前における還元タンタル粉末の粒度を、解砕によって微細化することにより、非常に疎な凝集状態で粉末中に大きな空隙を有する還元タンタル粉末を緻密化して、このような嵩密度としたり、水に浸してから乾燥して粉末の付着性を増大させて高温熱処理時の収縮性を高めたり、高温熱処理温度を高め、例えば標準的な条件が1300℃の時には1350〜1400℃の温度を採用し、高密度化したりする。成形工程(II)において、このように嵩密度を1.75〜2.5g/cm3としたタンタル粉末を使用することにより、体積が5mm3 以上で適度な大きさの空孔を有する大型成形体を製造でき、その結果、固体電解質の含浸率が80%以上の焼結体を製造できる。そして、このような焼結体を使用することによって、容積達成率が85%以上、好ましくは90%以上のタンタル電解コンデンサを製造できる。
【0018】なお、ここで固体電解質の含浸率とは、焼結体内の化成被膜の表面のうち、MnO2 などの固体電解質に覆われた部分の割合を百分率で表したもので、容量達成率と等しいと考えられる。また、容積達成率とは、化成酸化された後、固体電解質が含浸される前の焼結体の電気容量を、リン酸または硫酸などの電解液中で測定した値に対する、焼結体に固体電解質を含浸させコンデンサとした後の電気容量の割合を百分率で表したものである。
【0019】また、成形工程(II)において大型成形体の密度は4.5〜7.0g/cm3 とする。密度が4.5g/cm3 未満では、体積あたりの容量が低下しタンタル電解コンデンサに要求される高い体積効率の実現が難しくなる傾向となり、密度が7.0g/cm3 を超えると、粉末の粒子間の空隙が小さくなるため、固体電解質である二酸化マンガン(MnO2 )などの含浸が難しくなる傾向となる。
【0020】成形工程(I)または成形工程(II)の前には、それぞれ嵩密度が0.50〜1.85g/cm3 のタンタル粉末または1.75〜2.5g/cm3 のタンタル粉末を、マグネシウムの存在下で低温熱処理した後、酸洗いする脱酸素工程を行ってもよい。この脱酸素工程では、マグネシウムが添加されたタンタル粉末を、700〜1000℃の温度で、通常2〜10時間程度熱処理する。ついで、脱酸素されたタンタル粉末に対して、徐々に空気を導入して、タンタル粒子の表面に安定な被膜を形成する徐酸化処理を適宜行った後、これを酸性溶液で洗浄する酸洗いを行う。酸洗いによって、残留しているマグネシムやマグネシウム由来の酸化マグネシウム等の物質を除去できる。
【0021】このようにして、成形工程(I)または成形工程(II)で得られた小型成形体または大型成形体を、ついで、体積収縮率が2〜15%となるように真空中で加熱して焼結体とする焼結工程を行う。ここで真空中とは、10-4kPa以下の条件である。また、加熱温度は、1100〜1600℃程度、より好ましくは1200〜1500℃であり、加熱時間は、10分〜1時間である。また、体積収縮率とは、成形体の体積と焼結体の体積との差を、成形体の体積で除して百分率で表したものである。焼結工程において体積収縮率が2%未満では、焼結体の強度が不十分であり、実用的ではない。一方、15%を超えると、焼結による体積収縮が大きすぎて、焼結体の寸法を制御しにくい。体積収縮率を2〜15%とすることによって、タンタル電解コンデンサへの使用に適した焼結体となる。
【0022】このようにして得られた焼結体を、EIAJ RC−2361に準拠して、60℃、20Vで、0.01重量%のリン酸溶液中で化成することによって、比静伝容量が4万〜15万μFV/gとなる。なお、EIAJ RC−2361は、日本電子機械工業会規格において電解コンデンサ用タンタル焼結素子の試験方法として定められているものである。
【0023】この焼結体を陽極電極として使用する場合には、成形工程において、タンタル粉末中に金属ワイヤを埋め込んで成形し、焼結して、一体化させる。そして、これを化成して陽極電極とする。化成条件としては、例えば温度30〜90℃、濃度0.1重量%程度のリン酸、硝酸等の電解溶液中で、40〜80mA/gの電流密度で20〜60Vまで昇圧して1〜3時間処理する条件を例示できる。具体的には、さらに、公知の方法で二酸化マンガン、酸化鉛や導電性高分子等の固体電解質層、グラファイト層、銀ペースト層を焼結体上に順次形成し、ついでその上に陰極端子をハンダ付けなどで接続した後、樹脂外被を形成して、固体電解コンデンサ用の陽極電極として使用する。
【0024】このような電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法にあっては、還元タンタル粉末を不活性雰囲気下で高温熱処理した後に粉砕して得られた、嵩密度が0.50〜1.85g/cm3 に制御されたタンタル粉末を、密度が4.5〜7.0g/cm3 で、体積が5mm3 未満の小型成形体とする成形工程(I)を有する。よって、タンタル粉末を適切な圧力でプレスでき、強度に優れ、埋め込まれた金属ワイヤが抜けにくい小型成形体を製造できる。そして、焼結工程においては、こうして得られた小型成形体を真空中で体積収縮率が2〜15%となるように加熱して焼結体とするので、強度に優れた焼結体を製造できる。したがって、この焼結体を使用することによって、漏れ電流の少ない小型のタンタル電解コンデンサを製造できる。
【0025】または、このような電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法にあっては、、還元タンタル粉末を不活性雰囲気下で高温熱処理した後に粉砕して得られた、嵩密度が1.75〜2.5g/cm3 のタンタル粉末を、密度が4.5〜7.0g/cm3 で、体積が5mm3 以上の大型成形体とする成形工程(II)を有する。よって、タンタル粉末を適切な圧力でプレスでき、タンタル粉末が押し型の壁面に過剰に押しつけられることによるペレット表面の空孔の潰れや、ペレット内部の空孔の微細化が起こらない。そして、焼結工程においては、こうして得られた大型成形体を真空中で体積収縮率が2〜15%となるように加熱して焼結体とするので、適度な大きさの空孔が形成され、固体電解質が含浸されやすい焼結体を製造できる。したがって、この焼結体を使用することによって、漏れ電流が少なく、容量低下も少ない大型のタンタル電解コンデンサを製造できる。
【0026】このように、製造するタンタル電解コンデンサの大きさに応じて、使用するタンタル粉末の嵩密度を制御することにより、EIAJ RC−2361に準拠して60℃、20Vにおいて0.01重量%のリン酸溶液中で化成された場合に、比静電容量が4万〜15万μFV/gとなる焼結体を安定に製造することができる。
【0027】
【実施例】以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1〜14]フッ化カリウムと塩化カリウムからなる希釈塩中で、フッ化タンタル酸カリウムをナトリウムで還元して得られた還元タンタル粒末を、加熱炉に入れて減圧下(10-5〜10-3kPa)、1150〜1350℃で加熱して、高温熱処理を行い、熱凝集させた。そして、これを粉砕して得られた1.20〜1.85g/cm3 の種々の嵩密度を有する表1に示すタンタル粉末を、圧縮成形機でプレスして、体積が2mm3 の14種類の小型ペレットを作成した。これらのペレットのペレット強度とワイヤ抜け強度を下記の方法で求めた結果を表1に示す。ついでこれらのペレットを真空中で体積収縮率が2〜15%となるように1250〜1400℃で20〜30分間加熱、焼結した。得られた焼結体をEIAJ RC−2361に準拠して60℃、20Vにおいて0.01重量%のリン酸溶液中で化成した後、25℃、30.5%の硫酸中でCV測定を行った。CV値も表1に示す。
【0028】(1)ペレット強度6mgのタンタル粉末を直径1mmのペレットとし、このペレットの径方向を垂直にして圧縮試験機の台座上に載せ、このペレットの径方向に荷重を加えていった。この場合の、ペレットに亀裂が生じた際の荷重を求め、ペレット強度とした。
(2)ワイヤ抜け強度上記(1)のペレット製造時において、直径0.09mmの金属ワイヤを粉末に埋め込んでペレットを成形し、このワイヤをペレットから引き抜くために必要な力を測定し、これをワイヤ抜け強度とした。
【0029】[比較例1〜5]嵩密度が1.90〜2.10g/cm3 のタンタル粉末を使用した以外は実施例1と同様にして、体積が2mm3 の5種類の小型ペレットを作成した。このペレットのペレット強度とワイヤ抜け強度を実施例1と同様にして求めた結果を表1に示す。ついでこのペレットを使用して、実施例1と同様にして焼結体を作成し、ついで、CV測定を行った。CV値も表1に示す。
【0030】
【表1】

一般に、ペレット強度が3kg以上、好ましくは4kg以上であり、ワイヤ抜け強度が0.8kg以上、好ましくは1kg以上であると、実用に適したコンデンサを製造できると言われている。表1から明らかなように、嵩密度が1.20〜1.85g/cm3 の、本実施例のタンタル粉末から成形されたペレットは、ペレット強度がいずれも3kg以上で、かつ、ワイヤ抜け強度0.8kg以上であり、実用可能であった。
【0031】[実施例15〜22]フッ化カリウムと塩化カリウムからなる希釈塩中で、フッ化タンタル酸カリウムをナトリウムで還元して得られた還元タンタル粒末を、加熱炉に入れて減圧下(10-5〜10-3kPa)、1250〜1450℃で加熱して、高温熱処理を行い、熱凝集させた。そして、これを粉砕して得られた1.75〜2.10g/cm3 の種々の嵩密度を有する表2に示すタンタル粉末を、圧縮成形機でプレスして、体積が21mm3 の8種類の大型ペレットを作成した。ついで、このペレットを真空中で体積収縮率が2〜15%となるように1350〜1450℃で20〜30分間加熱、焼結した。得られた焼結体を、EIAJ RC−2361に準拠して60℃、20Vにおいて0.01重量%のリン酸溶液中で化成した後、25℃、30.5%の硫酸中でCV測定を行った。このCV値■を表2に示す。また、一方、上記のようにして焼結体を得て、この焼結体を化成酸化し、ついで、固体電解質を含浸させ、銀ペーストを塗布した後陰極を形成して、タンタル電解コンデンサを製造し、このコンデンサのCV値■も求めた。そして、上記25℃、30.5%の硫酸中で測定されたCV値■と、このCV値■から、容量達成率を算出した。この容積達成率も表2に示す。
【0032】[比較例6〜16]嵩密度が1.20〜1.70g/cm3 のタンタル粉末を使用した以外は実施例15と同様にして、体積が5mm3 の11種類の大型ペレットを作成した。そして、実施例15と同様にして、CV値■とCV値■も求め、さらに容量達成率を算出した。この結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

表2から明らかなように、本実施例の嵩密度が1.75〜2.1g/cm3 のタンタル粉末から成形されたタンタル電解コンデンサは、固体電解質の含浸に適した大きさの空孔が形成されているので、固体電解質を十分に含浸でき、容積達成率が優れていた。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように本発明の電解コンデンサ用タンタル焼結体の製造方法によれば、使用するタンタル粉末の嵩密度を、製造するコンデンサの大きさに応じて調整するので、小型成形体および大型成形体のどちらを製造する場合でも、プレス圧力を適切に制御できる。よって、強度に優れ、空孔サイズも制御された成形体を製造でき、この成形体を焼結して得られたタンタル焼結体は電解コンデンサの陽極電極に適したものとなる。したがって、本発明の製造方法で製造された電解コンデンサ用タンタル焼結体を使用することによって、小型コンデンサ、および、大型コンデンサのどちらであっても、漏れ電流が少なく、容量低下も抑制された高性能なタンタル電解コンデンサを製造できる。
【出願人】 【識別番号】000186887
【氏名又は名称】昭和キャボットスーパーメタル株式会社
【出願日】 平成12年8月10日(2000.8.10)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外6名)
【公開番号】 特開2002−60803(P2002−60803A)
【公開日】 平成14年2月28日(2002.2.28)
【出願番号】 特願2000−243366(P2000−243366)