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【発明の名称】 かしめ方法、かしめ構造、シャーシ、記録装置およびインクジェット記録装置
【発明者】 【氏名】坂本 孝弘

【氏名】金松 輝樹

【氏名】三宅 雄大

【要約】 【課題】軸と板金とのかしめにおける許容回転トルクを高める。

【解決手段】断面が円形であった軸1の段差部2が、板金4に形成された多角形孔7とほぼ同一形状に塑性変形することで、軸1が板金4に対してかしめられている。軸1にかかる回転トルクは、軸1が板金4と接触した面6での摩擦力と、多角形孔7の各孔側面7aに面接触している各段差部側面2aとで受ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 板部材に軸をかしめにより固定するかしめ方法において、前記軸が嵌合される前記板部材の孔を多角形に形成する工程と、前記軸の、前記貫通孔に嵌合された部分を前記多角形と略同形状に塑性変形させる工程とを含むことを特徴とするかしめ方法。
【請求項2】 前記多角形の孔の各辺と前記多角形の孔の内接円とが接する点と、前記多角形の孔の頂点を結ぶ線分とを直線以外に形成する工程を含む請求項1に記載のかしめ方法。
【請求項3】 前記直線以外の線分を、前記内接円の中心側が凹んだ曲線に形成する工程を含む請求項2に記載のかしめ方法。
【請求項4】 軸が板部材にかしめにより固定されているかしめ構造において、前記軸が嵌合される多角形に形成された前記板部材の孔に、前記軸の、前記孔に嵌合される部分が前記多角形と略同形状に塑性変形してかしめられていることを特徴とするかしめ構造。
【請求項5】 前記孔の、前記多角形の孔の各辺と前記多角形の孔の内接円とが接する点と、前記多角形の孔の頂点とを結ぶ線分が直線以外に形成されている請求項4に記載のかしめ構造。
【請求項6】 前記直線以外の線分が、前記内接円の中心側が凹んだ曲線である請求項5に記載のかしめ構造。
【請求項7】 第1の板部材と、第2の板部材とが、少なくとも1つの軸で締結されてなるシャーシにおいて、前記第1の板部材および前記第2の板部材のそれぞれに形成された多角形の貫通孔に、前記各軸の、前記貫通孔に嵌合された部分が前記多角形と略同形状に塑性変形してかしめられていることを特徴とするシャーシ。
【請求項8】 前記第1の板部材および前記第2の板部材に形成されている前記多角形の貫通孔の、前記多角形の孔の各辺と前記多角形の孔の内接円とが接する点と、前記多角形の孔の頂点とを結ぶ線分が直線以外に形成されている請求項7に記載のシャーシ。
【請求項9】 前記直線以外の線分が、前記内接円の中心側が凹んだ曲線である請求項8に記載のシャーシ。
【請求項10】 前記第1の板部材と、前記第2の板部材とは、同じ型で形成された同一形状の部材である請求項7ないし9のいずれか1項に記載のシャーシ。
【請求項11】 記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録媒体の搬送方向に対して交差する方向に往復移動し、記録ヘッドを搭載するためのキャリッジとを有する記録装置において、前記キャリッジを、前記1の板部材と前記第2の板部材との間で、前記各軸に沿って往復移動可能に保持する構造体が請求項7ないし10のいずれか1項に記載のシャーシであることを特徴とする記録装置。
【請求項12】 記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録媒体の搬送方向に対して交差する方向に往復移動し、インクジェット記録ヘッドを搭載するためのキャリッジとを有するインクジェット記録装置において、前記キャリッジを、前記1の板部材と前記第2の板部材との間で、前記各軸に沿って往復移動可能に保持する構造体が請求項7ないし10のいずれか1項に記載のシャーシであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、許容回転トルクの高められたかしめ方法、かしめ構造、記録装置およびインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、金属の軸と板金とを接合する方法としてかしめが用いられている。
【0003】以下に、従来のかしめに関して一例を示す。
【0004】まず、図10(a)および図10(b)に示すように、径D1の軸101に対して、その端部に径D2の段差部102を形成する。この段差部102の長さLは、図11に示す、軸101をかしめにより固定する板金104の板厚tよりも若干(通常0.2〜0.5[mm]程度)長くする。さらにこの段差部102の端面に径D3=D2−(0.4[mm]〜1.0[mm])の90度のセンタ穴103を形成する。
【0005】一方、板金104の軸101を接合する位置には、図11に示すように、軸101の径D2の段差部102が、ガタなく嵌合する内径の貫通孔105を空ける。
【0006】次に、図12(a)に示すように、軸101を板金104にかみ込ませる。その後、図12(b)に示すように、軸101の段差部102を塑性変形させて、軸101と板金104とを締結させる。この時の軸104の許容回転トルクは、軸の段差部102が塑性変形して、板金104に押えつけられた面106と板金104との摩擦力により生じる。
【0007】一般に、上述した金属軸と板金とのかしめは、微細なノズルからインクを記録媒体(紙、布、プラスチックシート等)に向けて吐出することによって直接的に文字や画像を記録するインクジェット記録装置を含めた電気製品のシャーシを構成する際に、よく用いられる。
【0008】従来、インクジェット記録装置においては、インクジェット記録ヘッドとインクタンクとが一体となったインクタンク付きヘッドカートリッジ、もしくはインクタンクをさらにカートリッジに対し脱着式にしたインクジェットカートリッジを用いるものが知られている。このカートリッジは、インクジェット記録装置本体に往復走査可能に設けられているキャリッジに固定支持されると共に、このキャリッジに対して着脱可能なディスポーザブルタイプのものである。
【0009】このようなインクジェット記録装置の、キャリッジを往復走査可能に搭載しているキャリッジシャーシを図13〜図16に示す。
【0010】キャリッジシャーシとしては、大きく分けて、図13に示すタテ型と、図14、15、16に示すヨコ型とがある。
【0011】キャリッジ202の往復走査をガイドするシャフトであるガイドシャフト203の上方にガイドレール204が位置するタイプが、図13に示すいわゆるタテ型であり、この構成は、記録媒体としての記録紙の搬送方向に対してコンパクトにできる。しかしながら、記録紙の搬送方向と垂直方向(上方)に対しては大きくなる傾向にある。
【0012】一方、図14は、キャリッジ302のガイドシャフト303に対して、ガイドレール304が記録媒体排紙側に位置する、いわゆるヨコ型である。上記構成においては、記録媒体としての記録紙の搬送方向と垂直方向(上方)に対してコンパクトにできる。しかしながら、記録紙の搬送方向に対しては大きくなる傾向にある。
【0013】上記タテ型・ヨコ型どちらを選択するかは、装置本体の構成・特徴等により異なる。
【0014】ここでは、従来例としてヨコ型について説明する。
【0015】不図示のインクジェット記録ヘッドは、ガイドシャフト303とガイドレール304に摺動自在なキャリッジ302に搭載され、キャリッジ302の移動はキャリッジプレート315に保持されたキャリッジモータ305によりプーリ306に巻回されたタイミングベルト307の一部をキャリッジ302に固定させることで行われ、キャリッジモータ305の回転方向を変えることで、往復駆動がなされる。
【0016】キャリッジプレート315は、ビス、かしめまたは溶接等により左側板318、右側板319に固定されている。なお、ガイドシャフト303は左側板318、右側板319に保持されているが、締結されていないので、キャリッジシャーシ320の剛性を確保するためのメンバ部材としては機能しない。
【0017】上記構成において、ガイドシャフト303の片端aは固定し、もう一端bを上・下方向に調整可能な構成(不図示)とすることで、ガイドシャフト303とガイドレール304の平行を調整する。また、ガイドレール304は上述したかしめ、ビスまたは溶接等により左側板318、右側板319に固定されている。さらに、左側板318、右側板319には補強のためステイ323が締結されている。ガイドレール304とステイ323を、キャリッジシャーシ320の剛性を上げるためのメンバ部材として機能させるために一体にしてもよいが、ガイドレール304の表面は、キャリッジ302が摺動するため、平面の平滑性および摩擦係数が低いことが要求されるので、ステイ323とは別材料になることが多い。キャリッジ302が搭載されたキャリッジシャーシ320は、本体シャーシ316上に固定される構成となっている。
【0018】図15および図16に示すように、記録媒体としての記録紙308はカセット309中にセットされ、不図示の分離機構により、一枚ずつ分離・搬送され、Uターンローラ310を通り、LFローラ311に到達し、プラテン312上の記録部に送られる。そこで、キャリッジ302の往復動とキャリッジ302に搭載されたインクジェット記録ヘッドからインクが吐出されることで記録紙308に記録される。
【0019】その後、記録紙308は、排紙ローラ313により排紙トレイ314上に排紙される。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のかしめによる軸と板金との固定による許容回転トルクは、軸の段差部が塑性変形して板金と接触した面と板金との摩擦力のみである。このため、軸径にもよるが、通常、約4.9[Ncm]〜9.8[Ncm]程の許容回転トルクしか得られなかった。このため、高い許容回転トルクが得られない場合があった。
【0021】そこで、軸と板金の回転トルクを高くする方法として、かしめ以外に溶接があるが、かしめと比べてコストが高く、熱により板金の変形があり、精度が低下する場合があった。
【0022】一方、上述した従来のインクジェット記録装置のキャリッジシャーシ320においては、シャーシプレート315、左側板318、右側板319、ステイ323からなる枠体の剛性を上げるために、板金を多用しなければならず、必要板金量が多くなり、コストアップと重量増加を招いてしまう場合があった。
【0023】また、せっかくガイドシャフト303を用いているのに、これがキャリッジシャーシ320の剛性に寄与することがないので、板金で必要な剛性を得なければならず、必要板金量が多くなり、やはり、コストアップと重量増加を招いてしまう場合があった。
【0024】さらに、シャーシプレート315を一体の板金で構成しているため、ガイドシャフト303とガイドレール304の平行度の精度も出しづらいので、ガイドシャフト303の一端bの高さ方向を調整している。そのため、調整する手間もかかっていた。
【0025】そこで、本発明は、許容回転トルクが高められた軸と板金とのかしめ方法およびかしめ構造体を提供することを第1の目的とする。
【0026】また、本発明は、剛性が高められた、シャーシ、記録装置およびインクジェット記録装置を提供することを第2の目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明のかしめ方法は、板部材に軸をかしめにより固定するかしめ方法において、前記軸が嵌合される前記板部材の孔を多角形に形成する工程と、前記軸の、前記貫通孔に嵌合された部分を前記多角形と略同形状に塑性変形させる工程とを含むことを特徴とする。
【0028】上記の通りの本発明のかしめ方法は、板部材の孔を多角形に形成し、この多角形の孔に軸を嵌合させて、この嵌合させた部分を多角形と略同形状に塑性変形させることで、軸を板部材に対してかしめて固定する。このため、軸と板部材とは、接触した面の摩擦力のみでなく、これに加えて、塑性変形して多角形の孔と略同形状になった軸の各辺が、多角形の孔の各辺に当たることで、軸の回転を規制する構成のかしめとすることができる。
【0029】また、多角形の孔の各辺と多角形の孔の内接円とが接する点と、多角形の孔の頂点を結ぶ線分とを直線以外に形成する工程を含むものであってもよく、特に直線以外の線分を、内接円の中心側が凹んだ曲線に形成する工程を含むものであってもよい。この線分を、多角形の孔の内接円の中心側が凹んだ曲線に形成すると、頂点の角度を多角形の頂点に比べて小さくすることができる。これにより、軸にかかる回転トルクを受ける面と、回転トルクの力の方向との角度を垂直に近づけることができる。
【0030】本発明のかしめ構造は、軸が板部材にかしめにより固定されているかしめ構造において、前記軸が嵌合される多角形に形成された前記板部材の孔に、前記軸の、前記孔に嵌合される部分が前記多角形と略同形状に塑性変形してかしめられていることを特徴とする。
【0031】上記の通りの本発明のかしめ構造は、板部材の多角形の孔に、軸がこの多角形と略同形状に塑性変形してかしめられているものである。このため、軸と板部材とは、接触した面の摩擦力のみでなく、これに加えて、塑性変形して多角形の孔と略同形状になった軸の各辺が、多角形の孔の各辺に当たることで、軸の回転が規制された構造となる。
【0032】また、本発明のかしめ構造は、孔の、多角形の孔の各辺と多角形の孔の内接円とが接する点と、多角形の孔の頂点とを結ぶ線分が直線以外に形成されているものであってもよく、特に、直線以外の線分が、内接円の中心側が凹んだ曲線であってもよい。
【0033】本発明のシャーシは、第1の板部材と、第2の板部材とが、少なくとも1つの軸で締結されてなるシャーシにおいて、前記第1の板部材および前記第2の板部材のそれぞれに形成された多角形の貫通孔に、前記各軸の、前記貫通孔に嵌合された部分が前記多角形と略同形状に塑性変形してかしめられていることを特徴とする。
【0034】上記の通り構成された本発明のシャーシは、各板部材に形成された多角形の貫通孔に、各軸が多角形と略同形状に塑性変形してかしめられている。このため、軸が、板部材に対して、接触した面の摩擦力のみでなく、これに加えて、塑性変形して多角形の孔と略同形状になった軸の各辺が、多角形の孔の各辺に当たることで、回転が規制された、軸が高い回転トルクに対して耐えることができる構成となっている。すなわち、本発明のシャーシは、高い回転トルクに対して耐えることができる軸をメンバ部材としているため、シャーシのねじれ剛性が高められている。
【0035】また、本発明のシャーシは、第1の板部材および第2の板部材に形成されている多角形の貫通孔の、多角形の孔の各辺と多角形の孔の内接円とが接する点と、多角形の孔の頂点とを結ぶ線分が直線以外に形成されているものであってもよく、直線以外の線分が、前記内接円の中心側が凹んだ曲線であってもよい。また、第1の板部材と、第2の板部材とは、同じ型で形成された同一形状の部材であってもよい。これにより、第1の板部材と、第2の板部材との精度を揃えることができるため、各板部材に複数の軸を平行にかしめる場合、各軸の平行度の精度を出しやすくできる。
【0036】本発明の記録装置は、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録媒体の搬送方向に対して交差する方向に往復移動し、記録ヘッドを搭載するためのキャリッジとを有するインクジェット記録装置において、前記キャリッジを、前記1の板部材と前記第2の板部材との間で、前記各軸に沿って往復移動可能に保持する構造体が本発明のシャーシであることを特徴とする。
【0037】また、本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録媒体の搬送方向に対して交差する方向に往復移動し、インクジェット記録ヘッドを搭載するためのキャリッジとを有するインクジェット記録装置において、前記キャリッジを、前記1の板部材と前記第2の板部材との間で、前記各軸に沿って往復移動可能に保持する構造体が本発明のシャーシであることを特徴とする。
【0038】上記の通りの本発明の記録装置およびインクジェット記録装置は、キャリッジをガイドする軸を、高い回転トルクに対して耐えることができるメンバ部材とした、ねじれ剛性が高い構造体をキャリッジのシャーシとしている。このため、シャーシの剛性を上げるための板部材等を付加する必要がない。
【0039】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)以下に、金属の軸と板金とを接合する、本発明の第1の実施形態におけるかしめ方法、およびかしめ構造に関して説明する。
【0040】図1(a)に示すように、径d1の軸1の端部には、径d2で長さlの段差部2が形成されており、さらにこの段差部2の端面にセンタ穴3が形成されている。このセンタ穴3の径d3は、例えば、径d3=d2−(0.4[mm]〜1.0[mm])の90度のセンタ穴であってもよい。また、段差部2の長さlは、軸1をかしめる、図1(b)に示す板金4の板厚t1よりも若干長く、例えば、板厚t1よりも0.2〜0.5[mm]程度長いと好適である。
【0041】一方、板金4の軸1を接合する位置には、図1(b)に示すように、板金4を貫通している多角形孔7が形成されている。この多角形孔7は、図1(b)に示すような六角形でもよいが、六角形以外の多角形であってもよく、特に、段差部2が、ガタなく嵌合する内接円を有する多角形が好適である。
【0042】次に、図2に示すように、板金4に形成されている多角形孔7に軸1の段差部2をかみ込ませる。図2では、板金4の裏面側から軸1が差し込まれ、段差部2の先端が多角形孔7から突出している状態を示している。
【0043】次に、断面が円形である、軸1の段差部2の先端を、軸1の段差部2を板金4の多角形孔7と略同一形状のパンチを用いて、図3(a)に示すように、板金4の多角形孔7とほぼ同一形状に塑性変形させることで、板金4に対して軸1をかしめる。このようにしてかしめられた軸1の段差部2を軸1の軸線方向からみた拡大図である図3(b)でわかるように、軸1の段差部2の段差部側面2aと、多角形孔7の孔側面7aとは、多角形の面で面接触している。つまり、軸1にかかるトルクを受けるのは、図3(b)に示したかしめ部を矢印A方向に見た側断面図である図3(c)に示されている、軸1の段差部2が塑性変形して板金4と接触した面6と板金4の摩擦力のみでなく、これに加えて、軸1の段差部2の各段差部側面2aが多角形孔7の各孔側面7aに当たることで軸1の回転が規制されるため、より高い回転トルクに耐えることが可能となる。
【0044】なお、従来のかしめ方法およびかしめ構造では、許容回転トルク以上のトルクを加えた時は、板金4と軸1の間で変形等がなく、ただ回転するだけだが、本実施形態では、板金4または軸の段差部2のどちらか、または両方に変形が生じる。
【0045】換言するなら、本実施形態のかしめ方法およびかしめ構造によれば、板金4または軸の段差部2が変形するまでの高回転トルクに耐えることができる。
【0046】また、軸1の段差部2は、かしめることで多角形状に塑性変形するため、軸1の段差部2をかしめる前に、円形に加工するのに比べて加工時間を要する多角形状に形成する必要がない。一方、板金4の多角形孔7も、円形の場合と同様の一回の打ち抜き加工で空けることができるため、円形の貫通孔を形成するのに比べて加工時間が余計にかかるといったことはない。
(第2の実施形態)次に、本発明の第2の実施形態におけるかしめ方法およびかしめ構造に関して説明する。
【0047】図4は、本実施形態の、軸がかしめられる板金に形成された貫通孔17の上面図である。
【0048】貫通孔17は、頂点18を結ぶ各面が平面ではなく、貫通孔17の中心側が凹んだ曲面21で接続してなる略六角形状の孔である。換言すれば、貫通孔17は、多角形の各辺と多角形の内接円とが接する点と、頂点18を結ぶ線分を直線以外で形成した形状である。このような形状とすることで、頂点18の角度は、通常の六角形の頂点の角度より小さくなる。例えば、正六角形の場合、正六角形の頂点における、対角線と、正六角形の辺との間の角度が60度となるのに対し、図4において、この角度に対応する貫通孔17の頂点18での角度は、58.057度と小さい。これにより、より高い回転トルクに耐えることが可能となる。すなわち、この頂点18の角度が小さいほど、軸にかかる回転トルクを受ける面と、回転トルクの力の方向との角度が垂直に近づくこととなり、高い回転トルクにより軸が貫通孔17をなめてしまうおそれを小さくできるためである。
【0049】なお、図4に示した各部寸法および角度は、一例であり、本発明がこれらの数値に限定されるものではない。
【0050】
【実施例】次に、第1あるいは第2の実施形態で説明したかしめ方法およびかしめ構造を用いたインクジェット記録装置に関して説明する。
【0051】上述した各実施形態のかしめ構造により構成されたキャリッジシャーシを有するインクジェット記録装置の模式的な斜視概略図を図5に、キャリッジシャーシの詳細を示す斜視図を図6に、左右側板とサブシャフトとのかしめによる固定を説明する図を図7に、また、記録用シートの搬送を説明するための、キャリッジシャーシを含む記録用シート搬送系の斜視図を図8に、側面図を図9にそれぞれ示す。
【0052】まず、図5を参照して、本実施例のインクジェット記録装置の概略に関して説明する。
【0053】図5に示すインクジェット記録装置は、不図示のインクジェット記録ヘッドの往復移動(主走査)と、一般記録紙、特殊紙、OHPフィルム等の記録用シートSの所定ピッチごとの搬送(副走査)とを繰り返しつつ、これらの動きと同期させながらインクジェット記録ヘッドから選択的にインクを吐出させ、記録用シートSに付着させることで、文字や記号、画像等を形成するシリアル型の記録装置である。
【0054】図5において、不図示のインクジェット記録ヘッドを有するインクジェットカートリッジ51は、ガイドシャフト63と、左側板78、および右側板79に、それぞれ第1あるいは第2の実施形態で説明したかしめにより固定されているサブシャフト82とに摺動自在に支持され、ガイドシャフト63およびサブシャフト82に沿って往復移動するキャリッジ62に着脱可能に搭載されている。記録用シートSは後述する搬送手段により、インクジェット記録ヘッドのインク吐出面に対面し、かつ、インク吐出面との距離を一定に維持するように、キャリッジ62の移動方向と交差する方向(例えば、直交する方向である矢印A’方向)に搬送される。
【0055】インクジェット記録ヘッドは、それぞれ異なる色のインクを吐出するための複数のノズル列を有する。インクジェット記録ヘッドから吐出されるインクの色に対応して、複数の独立したメインタンク54が、インク供給ユニット55に着脱可能に装着される。インク供給ユニット55とインクジェット記録ヘッドとは、それぞれインクの色に対応した複数のチューブ56がインクジェットカートリッジ51に接続され、メインタンク54がインク供給ユニット55に装着されることで、メインタンク54内に収納された各色のインクを、インクジェット記録ヘッドの各ノズル列に独立して供給することが可能となる。
【0056】インクジェット記録ヘッドの往復移動範囲内で、かつ、記録用シートSの通過範囲外の領域である非記録領域には、回復ユニット57が、インクジェット記録ヘッドのインク吐出面と対面するように配置されている。回復ユニット57は、インクジェット記録ヘッドのインク吐出面をキャッピングするためのキャップ部、インク吐出口面をキャッピングした状態でインクジェット記録ヘッドから強制的にインクを吸引するための吸引機構、インク吐出面の汚れを払拭するためのクリーニングブレード等を有する。
【0057】次に、図6および図7を参照して、キャリッジシャーシ90に関して説明する。
【0058】キャリッジシャーシ90は、図6に示すように、左側板78と、右側板79と、左側板78と、右側板79のそれぞれに上述したかしめにより固定されたサブシャフト82と、キャリッジ62の走査方向を長手とする板部材のキャリッジプレート64とで概ね構成される。
【0059】左側板78および右側板79にはそれぞれ、図7(a)に示すように、多角形の貫通孔80、81が空けられており、これら貫通孔80、81は、サブシャフト82の両端の段差部82a、82b(いずれも円筒形)とガタなく嵌合する寸法になっている。
【0060】また、図6に示すように、キャリッジ62は、キャリッジモータ65に取り付けられた駆動プーリ66と、この駆動プーリ66に対応する従動プーリ68との間に張設されたタイミングベルト67に一部が固定されており、キャリッジモータ65の回転方向を変えることでガイドシャフト63に沿って往復移動がなされる。
【0061】サブシャフト82と、右側板79および左側板78との締結は、まず、図7(b)に示すように、サブシャフト82の段差部82aを左側板78の多角形の貫通孔80に、また、サブシャフト82の段差部82bを右側板79の多角形の貫通孔81にそれぞれかみ込ませる。その後、サブシャフト82の段差部82a、82bをかしめて、段差部82a、82bを左側板78および右側板79の多角形の貫通孔80、21とほぼ同形状に塑性変形させることで、左側板78および右側板79に対してサブシャフト82を締結させる。
【0062】上述した本発明のかしめ方法により、サブシャフト82の許容回転トルクはサブシャフト82の段差部82a、82bが塑性変形して左側板78、右側板79の平面と接触した面の摩擦力のみではなく、サブシャフト82の段差部82a、82bの先端形状が左側板78、右側板79の多角形の貫通孔80、21の形状に塑性変形しているので多角形の側面で回転トルクを受けることができ、より高い許容回転トルクに耐えることが可能となる。
【0063】このようなかしめ構造を有するサブシャフト82、左側板78および右側板79で構成されたキャリッジシャーシ90は高いねじり剛性を有する。もちろん、サブシャフト82と左側板78、右側板79を溶接等で締結してもよいが、安価でかつ、熱変形がない点で本願のかしめが優れている。
【0064】また、サブシャフト82と略平行に、メンバ部材としてのステイが、左側板78と、右側板79とに締結されているので、少ない板金で高い剛性が得られる。なお、本実施例の各図には、簡単のため、ステイは図示されていない。
【0065】ガイドシャフト63は、サブシャフト82との平行度をだすために、不図示の上下調整機構を設けている構成としているが、ガイドシャフト63もサブシャフト82と同様に左側板78、右側板79のそれぞれに対してかしめることにより、さらに強い剛性が得られる。この場合、サブシャフト82とガイドシャフト63の平行度を精度良くするため、左側板78、右側板79を同じ型で形成した同一形状の部品とすることで、サブシャフト82とガイドシャフト63の平行度の精度をだしつつ、剛性も確保できる構成にすることも可能である。
【0066】次に、記録用シートSの搬送に関して図8および図9を参照して説明する。
【0067】記録媒体としての記録用シートSはカセット69中にセットされ、不図示の分離機構により、一枚ずつ分離・搬送され、不図示の駆動源と接続されているUターンローラ70を通り、不図示の駆動源に接続されているLFローラ71に到達し、プラテン72上の記録部に送られる。そこで、キャリッジ62の往復動とキャリッジ62に搭載されたインクジェット記録ヘッドにより記録用シートSに記録がなされる。記録後、記録用シートSは不図示の駆動源と接続されている排紙ローラ73により、排紙トレイ74上に排紙される。
【0068】なお、本実施例では、インクを吐出することで記録を行うインクジェット記録装置を例として説明したが、本実施例の高剛性のシャーシ構成は、他の記録方式の記録装置のシャーシにおいても、適用可能であることは言うまでもない。
【0069】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、板部材の孔を多角形に形成し、この多角形と略同形状に軸を塑性変形させることで、軸を板部材に対してかしめて固定する。このため、軸と板部材とは、接触した面の摩擦力のみでなく、これに加えて、軸の各辺が、多角形の孔の各辺に当たることで、軸の回転を規制することとなり、高い回転トルクに耐える構成のかしめとすることができる。
【0070】また、本発明の記録装置およびインクジェット記録装置は、本発明のかしめを用いて構成されたシャーシをキャリッジのシャーシとすることで、シャーシの剛性を高めるための余分な板部材等を追加する必要がない。このため、コストが低減され、重量増加が抑制されたインクジェット記録装置とすることができる。
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成13年2月23日(2001.2.23)
【代理人】 【識別番号】100088328
【弁理士】
【氏名又は名称】金田 暢之 (外2名)
【公開番号】 特開2002−248531(P2002−248531A)
【公開日】 平成14年9月3日(2002.9.3)
【出願番号】 特願2001−48668(P2001−48668)