| 【発明の名称】 |
厚鋼板の冷却方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】本田 貴之
【氏名】中野 鉄也
|
| 【要約】 |
【課題】厚鋼板の圧延される時期の如何に係わらず、全圧延期間に亘って均一な材質が得る。
【解決手段】圧延ロールで熱間圧延した厚鋼板を冷却水で冷却する方法において、累積圧延量の増加に伴う圧延ロールの表面粗度の変化に対応させ、前記冷却水の水量を調整し、その調整を予め設定した累積圧延量に達する迄の圧延初期に行う厚鋼板の冷却方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧延ロールで熱間圧延した厚鋼板を冷却水で冷却する方法において、累積圧延量の増加に伴う圧延ロールの表面粗度の変化に対応させ、前記冷却水の水量を調整することを特徴とする厚鋼板の冷却方法。 【請求項2】 前記請求項1において、累積圧延量の増加に伴う圧延ロール表面粗度の変化に対応する冷却水量の調整は、予め設定した累積圧延量に達する迄の圧延初期に行うことを特徴とする厚鋼板の冷却方法。 【請求項3】 前記請求項2における予め設定した累積圧延量に達する迄の圧延初期の冷却水量は、該設定累積圧延量に達した後よりも増加させることを特徴とする厚鋼板の冷却方法。 【請求項4】 熱間圧延終、冷却水により、厚鋼板の表面温度が630〜530℃になる迄、5〜25℃/sec未満の冷却速度で緩冷却し、その後、25℃/sec以上の冷却速度で急冷却するに際して、前記請求項1または請求項2における冷却水量の調整を前記緩冷却時に行うことを特徴とする厚鋼板の冷却方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、熱間圧延において圧延される高温厚鋼板のオンライン冷却方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】熱間圧延後の高温の鋼板をオンラインで連続的に冷却し、高強度、高靱性の厚鋼板を製造するプロセスが広く用いられている。この製造プロセスでは、連続的な冷却により鋼材の組織制御を行なうため、合金元素の低減や熱処理工程の省略が可能であり、製造コストの削減効果が大きい。また合金元素の低減は溶接性を向上させ、予熱量の低下や大入熱溶接の適用などを可能とし、溶接作業効率が大幅に改善されている。 【0003】しかし、熱間圧延後の高温の鋼板を冷却する際、特に板厚が厚く高強度の特性が要求される場合、冷却開始から終了までの間を一定の冷却水量で注水する方法では、板厚方向で表層部の冷却速度が大きく、中心部の冷却速度が小さくなり、両者間で速度差が生じるため板厚方向に材質差、すなわち強度差が発生するという課題があった。 【0004】このような課題の解決方法として、例えば特開昭63−20410号公報に記載されているように、0.05〜0.50m3 /m2 ・minの低水量密度で冷却を開始し、その後0.30〜1.50m3 /m2 ・minの水量密度になるまで徐々に注水量を増加させながら冷却を行い、板厚方向の強度差の小さい厚鋼板を製造する方法が提案されている。 【0005】しかしながら水冷時の鋼板は、図1に示すように熱伝達係数が表面温度600℃付近から200℃付近にかけて、急激にばらつきながら増加する冷却特性を有しているため、冷却が進み上記温度域に到達した後の冷却においては、冷却するにつれ板内での熱流束の偏差が増大し、板内での温度偏差が拡大する傾向を有するという特長を持っている。 【0006】このため、前記公報に記載されているように、冷却の進行と共に徐々に水量密度を増加させる方法では、上記600〜200℃付近の温度範囲での冷却時間が長くなるため、鋼板全表面に亘って冷却速度を制御し、抜熱量を増加させながら安定して冷却することは非常に困難であり、加えて、一般的に冷却開始の時点で表面温度は板内でばらついているため、冷却開始以降、板内で冷却速度および冷却温度履歴の偏差が更に増大し、その結果、熱応力による形状変化が生じ矯正作業が必要となる場合が多かった。 【0007】上記した問題の解決を図るために本発明者らは、多くの研究開発の結果、板厚方向の材質を均一にし、かつ、冷却終了後の板内温度偏差が冷却開始時の板内温度偏差より増大しないような安定した冷却を行い、良好な形状を確保するための厚鋼板の冷却方法として、特願平11−349281号(以下、先願発明と称す)を既に出願している。該発明の概要は「熱間で圧延され、板内に表面温度偏差を有した高温の厚鋼板を水冷する方法において、前記厚鋼板を、低温部の表面温度が630〜530℃になるまで5℃/sec以上15℃/sec以下の冷却速度で冷却した後、25℃/sec以上の冷却速度で冷却する方法」というものである。 【0008】しかして、上記した先願発明によって厚鋼板における板厚方向での材質差(強度差)の解消を図り、形状不良を防止することはできたが、熱間圧延の初期(圧延ロール組替後)に圧延される厚鋼板においては、前記した板厚方向での強度差もさることながら、強度の絶対値が小さい厚鋼板となる傾向を防ぐことはできなかった。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した熱間圧延の初期に圧延される厚鋼板における問題点の解決を図るために開発されたもので、厚鋼板が圧延される時期の如何に係わらず、全圧延期間に亘って均一な材質が得られる厚鋼板の冷却方法を提供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明は前記した従来方法における課題を解決するためになされたものであって、その要旨するところは、下記手段にある。 (1)圧延ロールで熱間圧延した厚鋼板を冷却水で冷却する方法において、累積圧延量の増加に伴う圧延ロールの表面粗度の変化に対応させ、前記冷却水の水量を調整する厚鋼板の冷却方法。 (2)前記(1)において、累積圧延量の増加に伴う圧延ロール表面粗度の変化に対応する冷却水量の調整は、予め設定した累積圧延量に達する迄の圧延初期に行う厚鋼板の冷却方法。 【0011】(3)前記(2)における予め設定した累積圧延量に達する迄の圧延初期の冷却水量は、該設定累積圧延量に達した後よりも増加させる厚鋼板の冷却方法。 (4)熱間圧延終、冷却水により、厚鋼板の表面温度が630〜530℃になる迄、5〜25℃/sec未満の冷却速度で緩冷却し、その後、25℃/sec以上の冷却速度で急冷却するに際して、前記(1)または(2)における冷却水量の調整を前記緩冷却時に行う厚鋼板の冷却方法。 【0012】 【発明の実施の態様】本発明は、前述した冷却方法を採るものであり、先願発明に適用しても充分効果を発揮するものである。そこで、先ず、先願発明についてその概略を以下に述べる。高張力鋼板を製造するに当たり、高温の厚鋼板をオンラインで水冷する場合、一般的に表面温度は800℃前後から400℃〜常温の範囲まで冷却するものである。前記した図1は、冷却温度域の鋼板表面温度と熱伝達係数の関係を示した図であるが、熱伝達係数の増減方向に応じて約200℃の表面温度を境に二つの温度領域に分割できる。 【0013】表面温度800℃付近から200℃付近の領域は、表面温度が低温であるほど熱伝達係数が増加する領域で、一般的に遷移沸騰域と呼ばれている。この遷移沸騰域では表面温度が低温であるほど冷却能が高くなるため、板内に温度偏差を有している場合、冷却が進行するにつれ、温度偏差は拡大する。一方、表面温度が200℃付近から常温の低温領域は、表面温度が低温であるほど熱伝達係数が減少する領域で、一般的に核沸騰域と呼ばれている。この核沸騰域では遷移沸騰域の現象とは逆で、温度偏差は収束する。 【0014】このような冷却特性を考慮すると、冷却むらの少ない安定した冷却を行なうためには、可能な限り遷移沸騰域、その中でも特に熱伝達係数が急激に増大し、ばらつきが大きくなる600〜200℃付近の温度域を短時間で通過、つまり大きな冷却速度(急冷却)で鋼板表面温度を急降下させ、200℃以下の核沸騰域で冷却を行なうことが望ましいことがわかる。 【0015】しかしながら、前記の様に、冷却開始から終了までの全ての期間において、冷却装置からの給水量を一律に増加させ冷却する場合、板厚方向表層部のみ急速に冷却され板厚方向に急峻な温度分布が形成されて、遷移沸騰域を短時間で通過して冷却むらが少なく比較的良好な形状が確保できるものの、表層部における冷却開始から変態完了までの冷却速度が過大であるため、中心部に比較して表層部が急速に冷却され(焼入現象)強度が増大すると共に靭性が劣化し、その結果、板厚方向の材質偏差が増大する結果となる。 【0016】したがって、板厚方向の材質偏差を低減するには表層部の強度増大を防止することが必要であり、そのためには表層部の変態完了までの冷却速度を小さくする(緩冷却)必要がある。そこで本発明者らは、冷却開始段階を緩冷却し、その後、続いて急冷却する方法について、種々の実験、シミュレーションを実施した結果、この方法によって所望の特性、すなわち、板厚方向の材質均一化と冷却むら低減による鋼板平坦度確保の両立が可能であることを確認した。 【0017】ここで冷却開始時における冷却速度を15℃/sec以下(緩冷却)としたのは、15℃/secより大きい冷却速度では鋼板表層部の強度が大きくなり、冷却後半で冷却速度を大きくしても中心部の強度を表層部と同程度まで上昇させることが困難で、結果的に板厚方向に材質偏差が発生からであり、また、5℃/sec以上としたのは、5℃/secより小さい冷却速度では冷却時間が長くなり、生産性が悪化すると共に高張力厚鋼板としての強度要求値490N/mm2 が得られないからである。 【0018】同様に冷却後半において25℃/sec以上(急冷却)の冷却速度で冷却することとしたのは、一般的に冷却前の鋼板の表面温度は板内でばらついている。これは、スラブの加熱段階で生じた温度偏差、熱間圧延中のデスケーリングによる温度偏差、鋼板四周部の温度低下などによるものである。 【0019】図1に示したように鋼板表面温度に応じて熱伝達係数の値は異なるため、板内の高温部分と低温部分では熱流束が異なる。その結果、冷却前半の遷移沸騰域では高温部分よりも低温部分の熱流束が大きく、板内温度偏差は拡大に向かっている。冷却途中の冷却速度を増加させたタイミングで急激に熱流束が増加し、その後、熱流束はピークを迎え、高温部分と低温部分の熱流束が逆転する。これは表面温度が大凡200℃以下まで冷却され核沸騰域に突入したことを示しており、低温部分よりも高温部分の熱流束が大きく、板内温度偏差は収束に向かっていることを示す。 【0020】冷却途中で急速に冷却速度を増して、表面温度を急降下させることにより短時間で熱流束をピークに到達させる必要があり、冷却後半で少なくとも25℃/sec以上の冷却速度で冷却する必要がある。なお、上限は好ましくは70℃/secである。従来法のように、冷却完了まで冷却速度を一定のまま、あるいは徐々に増加させる方法では、冷却中に板厚方向に急峻な温度分布を形成できず、なだらかな温度分布で鋼板全体が冷却されるため、表面温度が核沸騰域に到達する前あるいは到達した付近で中心部は既に要求される強度を十分確保可能なまで冷却されており、それ以上冷却させて表面温度を低下させると強度オーバーになるだけでなく靭性が劣化する。 【0021】したがって、核沸騰域で十分な冷却が行えず、温度偏差を収束させる方向の抜熱量差が存在しないか、あるいは小さい結果となり、冷却完了後の板内温度偏差は冷却開始の状態から拡大したままで、良好な形状を確保するのは困難である。冷却速度を変更するタイミングを板内最低表面温度が630℃から530℃の温度範囲としたのは、冷却後の板内温度偏差を小さく抑えるためには、温度偏差を拡大させる方向の抜熱量差が最小になるようなタイミングで冷却速度を変更することが最も効果的である。 【0022】例えば、変更タイミングが遅く、表面温度が低温になった場合、冷却初期の表面温度が高温の時は表面温度に対する熱伝達係数の変化が小さく、高温部分と低温部分の熱流束差が小さいものの、比較的小さい冷却速度で冷却するため冷却前半の経過時間が長くなるためである。逆に変更タイミングが早く、表面温度が高温で冷却速度を大きくした場合、表面温度に対する熱伝達係数の変化が大きくなる。これらのことを考慮し、種々の条件でシミュレーションを行なった結果、板厚、冷却開始温度、冷却開始時の冷却速度などの条件に大きく左右されず、580℃付近で最小となることがわかった。 【0023】このシミュレーション結果に基づいて実験を行い、効果の確認をしたところ、630℃から530℃の温度範囲であれば冷却後の板内温度偏差に関して有意差は見られず、良好な形状が得られた。また、冷却速度の変更温度が630℃から530℃の範囲内であれば、板厚方向に均一な材質分布が得られた。これは、冷却速度変更タイミング付近で鋼板表層部の変態はほぼ終了しているが、鋼板中心部まで抜熱は十分に行なわれていないため中心部の変態は未だ始まっておらず、その後、冷却速度を増加させ強冷却を行なうと鋼板中心部での変態を促進させ、表層部と同様な組織が得られるためである。 【0024】先願発明は上記のごとき冷却方法を採るものであるが、前記したように先願発明においては、圧延初期の厚鋼板における強度不足および強度のばらつきが発生していた。そこで本発明者らは、その原因の究明を行うべく種々の検討を行った結果、熱間圧延された厚鋼板の表面粗度に着目するに至った。 【0025】すなわち、厚鋼板の表面粗度は、冷却水と厚鋼板表面の境界に形成される蒸気膜の分布、および消滅のタイミングに影響を及ぼし、均一冷却、つまり板内の熱流束を均一にするためには、熱抵抗となる蒸気膜の分布や消滅タイミングを一様にする必要があり、そのためには厚鋼板の表面粗度の均一化が重要である。したがって、均一に冷却するには厚鋼板の表面粗度を均一にしつつ、かつ大きくすることが効果的である。すなわち、厚鋼板の表面の凸部は蒸気膜を突き破り冷却水と直接接触する結果、冷却能が向上し、凸部周辺の熱抵抗となる蒸気膜の除去を促進する。そのため、安定冷却が可能な核沸騰域に早期に突入し、冷却開始時に持ち込んだ、あるいは冷却初期に発生した温度偏差を収束させることができる。 【0026】厚鋼板の表面粗度は、圧延するワークロールの表面粗度によって一義的に決まってくる。すなわち、圧延ワークロール表面粗度が厚鋼板の表面にそのまま転写されるからである。そこで前記したように、厚鋼板の温度が高いと厚鋼板表面での冷却水の蒸気膜の生成により冷却が阻害されるので、高温領域での厚鋼板が圧延ワークロール粗度によってどのように熱伝達が異なるかを調査した。 【0027】図2は表面粗度の異なるロールを複数研削し、そのロールを用いて熱間圧延した厚鋼板を高温域にて水冷することにより、熱伝達係数がどのように変化するか調査したもので、厚鋼板表面温度と熱伝達係数との関係を示した。厚鋼板冷却時の熱伝達係数(w/m2 ・K)は、厚鋼板の温度によって異なり、かつ圧延ワークロール表面粗度によって影響を受ける。図からは圧延ワークロール表面粗度が大きい程熱伝達係数が大きくなることが判る。 【0028】さらに、圧延ワークロール表面粗度が圧延本数に応じてどのように変化するか調査した。図3は横軸に圧延本数を採り、縦軸にワークロール表面粗度を表したもので、圧延ワークロールの粗度は、鋼板の圧延本数(圧延量)によって変化する。すなわち、ワークロール表面粗度が小さい(滑らか)なロールであっても圧延本数が増すにつれワークロール表面が粗れて粗度が大きくなることが示されている。 【0029】しかして、厚鋼板の圧延本数が20本程度までは急激に圧延ワークロール表面粗度が大きくなり、それ以降は徐々ではあるがやはり粗度が大きくなって行き、圧延本数が50本程度でほぼ飽和する。これらのことから、厚鋼板の圧延初期の20本程度までは定常時(圧延本数20程度以降)に比し、冷却能力を増すような処理を講じなければ、圧延全期間(1ロット200〜250本)に亘って均一な冷却(結果的には鋼板での強度差を少なくする)を行うことができないことが判明した。なお、本例では圧延初期を20本として説明したが、圧延ロールの摩耗量は圧延ロールの材質および被圧延材の長さにより異なるため、使用する圧延ロールの材質、圧延予定量を勘案して予め設定する必要がある。 【0030】そこで本発明においては、圧延初期の圧延ワークロール表面粗度が小さい時期には、圧延される厚鋼板の表面粗度も小さく冷却能が劣るので、それに見合った冷却、すなわち、強冷却(冷却水量の増大)を行い、圧延全期間に亙って得られる厚鋼板において均一な強度を持ち、かつばらつきの少ない鋼板を得ようとするものである。 【0031】前述したように、厚鋼板の圧延本数が増加するにつれ圧延ワークロールの表面は摩耗し、表面粗度がロールショップ研削後の状態から変化する。そのため該ロールによって圧延された厚鋼板の表面粗度も変化するので、厚鋼板において所定の冷却速度を確保するためにには、厚鋼板の表面粗度に基づいて冷却装置へ供給する水量をコントロールする必要がある。特に冷却開始から厚鋼板表面温度が630℃〜530℃になるまでの高温域においては、厚鋼板表面の多くが蒸気膜に覆われているので、厚鋼板の表面粗度の大きさによって冷却速度が大きく左右されるため、その必要性が高い。 【0032】逆に厚鋼板の表面粗度が前記の温度以下の低温域では、冷却水による蒸気膜が徐々に破壊され、冷却水と厚鋼板表面が直接接触する冷却形態となっているため、鋼板の表面粗度によって冷却速度が大きく変化することはない。さらに本発明では、冷却速度25℃/sec以上の高い冷却速度で冷却するため蒸気膜は直ちに除去され、表面粗度の影響は殆ど受けない。 【0033】前述のように本発明においては、厚鋼板の熱間圧延終了温度から鋼板の表面温度が630〜530℃になるまでは5〜25℃/sec未満の緩冷却を行い、その後急冷却を行う厚鋼板の冷却方法において、圧延量の増加に伴い圧延ロールの表面粗度の変化に対応させて厚鋼板の冷却水量を調整するものであり、圧延量の増加に伴い圧延ロールの表面粗度の変化に対応させる冷却水量の調整は、圧延初期の非定常時のみ行えばよく、概ね定常時はその必要はない。また冷却水量は、圧延初期に定常時より増大させて冷却能の調整を図るものである。 【0034】圧延ワークロールの表面粗度に着目した発明としては、例えば特開昭62−54507号および特開昭63−149315号が公知である。前者の特開昭62−54507号発明の目的とするところは、冷却後の鋼板温度ばらつきを少なくし、鋼板形状を向上させることにあり、そのための手段として、表面粗さRz20μm以上及びそのピッチが50μm以上の圧延ロールで鋼板を圧延し、圧延ロールの表面粗さを鋼板表面に転写するものである。また、特開昭63−149315号発明の目的とするところは熱圧鋼板を精密かつ均一に冷却して、高品質かつ均一な機械的性質と優れた形状を有する鋼板を得ることにあり、そのための手段として適正粗度のロールを用いて圧延することにより、その粗度を鋼板表面に転写するものである。 【0035】しかし、これら両発明での問題点としては、圧延を重ねるにつれ圧延ロール表面の鋼板通過部分が摩耗し、圧延ロールは初期の表面粗度を維持することができず、安定した効果(目的)を得ることができない。すなわち、これらの発明は何れも一定の粗度を持った圧延ロールによって鋼板を全期間に亘って圧延するものであって、圧延中において鋼板の冷却条件の変更については全く考慮されておらず、本発明の狙いとする初期圧延の厚鋼板のみを対象として、その冷却条件を適切に調整するものではなく、本発明の目的を達成することはできない。 【0036】 【実施例】以下、本発明を実施例によって本発明の効果を説明する。実施例は板厚30mmの厚鋼板を対象とし、表1は請求項1〜3に対応する例であり、その時の圧延および冷却条件とその結果を比較例と共に示した。本実施例は厚鋼板の圧延本数の増加にしたがって厚鋼板の表面粗度に応じて水量密度を変化させた。高温域で適正な冷却速度を与えたので、厚鋼板における平均強度が要求する平均強度:490N/mm2 を充分満足するものであった。 【0037】これに対し実施例と同一の板厚を有した厚鋼板を用いた比較例では、厚鋼板圧延全期間に亙って水量密度の変化を行わなかったので、圧延初期においては厚鋼板の表面粗度が小さく、冷却能が低いため必要とする冷却速度を確保することができなかったので、厚鋼板における強度が要求平均強度を満足することができないものであった。圧延本数が50本程度で、ロール表面粗度が収束したときは、適用する水量密度が同量であったので効果もほぼ同一であった。 【0038】 【表1】
【0039】表2は請求項に対応する例であり、これも板厚20mmの厚鋼板を対象としたものである。表中前半とは、仕上げ圧延を終了した上記厚鋼板の表面温度が800〜600℃迄であり、後半とは600℃未満から冷却終了表面温度が300℃迄である。本例は圧延ロールの表面を研削して後、累積圧延量が2本目である実施例と比較例を示したものであり、比較例は圧延ロールの表面粗度が小さいにもかかわらず、水量密度を上げなかったために強度が低く要求平均強度490N/mm2 に達しなかった例であり、本実施例は前半の水量密度を上げて冷却速度を5〜25℃未満の範囲内に調整したために強度が要求平均強度を満足することができた。 【0040】 【表2】
【0041】 【発明の効果】以上、説明したように本発明を実施することにより、厚鋼板の圧延全期間に亘って適切な冷却を与えるため、ロット全体の厚鋼板において材質差が小さく、かつ形状の良好な厚鋼板を製造することが可能となる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000006655 【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
|
| 【出願日】 |
平成13年6月1日(2001.6.1) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100094972 【弁理士】 【氏名又は名称】萩原 康弘
|
| 【公開番号】 |
特開2002−361311(P2002−361311A) |
| 【公開日】 |
平成14年12月17日(2002.12.17) |
| 【出願番号】 |
特願2001−166420(P2001−166420) |
|