トップ :: B 処理操作 運輸 :: B06 機械的振動の発生または伝達一般




【発明の名称】 カオス振動発生機械
【発明者】 【氏名】小泉 忠由

【要約】 【課題】カオス振動の観測,振動変位の測定及び移動させる対象物に対する駆動源としての応用を容易とすることを課題とする。

【解決手段】振動体12と、この振動体12がその上面で所定の直線方向に沿って往復運動を行う支持台30と、支持台30を振動体12の往復運動方向に加振する加振機構40とを備え、支持台30と振動体12とを連結すると共に、振動体12の往復運動に伴い伸縮動作及び支持台30との連結端部を支点とする回動動作を行う弾性体13を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 振動体と、この振動体がその上面で所定の直線方向に沿って往復運動を行う支持台と、前記支持台を前記振動体の往復運動方向に加振する加振機構とを備え、前記支持台と前記振動体とを連結すると共に、前記振動体の往復運動に伴い伸縮動作及び前記支持台との連結端部を支点とする回動動作を行う弾性体を備えることを特徴とするカオス振動発生機械。
【請求項2】 前記弾性体の回動支点を前記支持台上における前記振動体の往復運動領域と当該領域を往復運動方向に延長した領域のいずれでもない領域に配置したことを特徴とする請求項1記載のカオス振動発生機械。
【請求項3】 前記弾性体を複数備えることを特徴とする請求項1又は2記載のカオス振動発生機械。
【請求項4】 前記弾性体を偶数個備えると共にこれらの弾性体を二分して前記振動体の往復運動領域を挟んだ両側にそれぞれ配置したことを特徴とする請求項3記載のカオス振動発生機械。
【請求項5】 前記弾性体はコイルバネであることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のカオス振動発生機械。
【請求項6】 前記支持台上に、前記振動体の往復運動方向に沿ったガイドレールとこれに係合するローラーガイドとを設け、これらを介して前記振動体が前記支持台上に支持されていることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載のカオス振動発生機械。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カオス振動発生機械に係り、特に簡易な構成で振動体にカオス振動を生ぜしめるカオス振動発生機械に関する。
【0002】
【従来の技術】カオス振動とは、非線形振動の一種であり、その現象に何らランダムな要素がないにもかかわらず、充分時間が経過した後の振動が静止状態や周期運動に落ち着かずランダムとなる振動をいう。このカオス振動は、ある初期条件から出発した場合の解はランダム性を伴わず,いつまでも正確に決定することができるが、そこから僅かに異なった初期条件から出発した場合の解と比較すると、その差が時間と共に指数関数的に増大し、予測が困難となるという意味でのランダム性を備えている。
【0003】ところで、慣性項,減衰項,復元力項,加振項により記述される振動方程式の中に非線形項が含まれると一般的に解を解析的に求めることが不可能であり、数値解析によりその挙動が明らかにされる。さらに、式中のパラメータを適当に選ぶと運動がランダム振動波形となる上述のカオス振動を呈する。
【0004】運動方程式が非線形となるためには、■質量が非線形的に変化する場合と、■減衰が速度と共に非線形的に変化する場合、■復元力が変位と共に非線形的に変化する場合とが考えられる。最も簡単な例は■の復元力が非線形となる場合であり、ダッフィング(Duffing)方程式がその代表的な例である。これまでにも明らかにされているように式中に含まれるパラメータの変化と共にカオス、準周期振動、周期振動への遷移が生じることとなる。
【0005】かかるカオス振動を発生させるものとして、従来から図11に示すカオス振動発生機械100が知られている。このカオス振動発生機械100は、コ字状の枠体101と、この枠体101の天板101aの先端部から垂下された板バネ102と、枠体101の底板101b上に配設された二つのフェライト磁石103,103と、枠体101の縦板101c及び天板101aを介して板バネ102を加振する図示しない加振機構とを備えている。
【0006】上述した二つのフェライト磁石103,103は、枠体101の天板101aの先端から垂下された板バネ102の下端部に近接しなお且つ板バネ102の下端部が撓む方向に沿って当該板バネ102の下端部を挟むようにして配置されている。一方、板バネ102は磁性体からできており、各フェライト磁石103,103からその近接距離に応じた吸引力を受けることとなる。
【0007】枠体101は天板101a,底板101b及び縦板101cとが一体的に形成されており、ある程度の可撓性を備える素材からできている(例えばスチール)。そして、かかる枠体101の縦板101cに対して加振機構が板バネ102の下端部が撓む方向に沿って正弦波振動で加振を行うようになっている。
【0008】このように、加振機構により正弦波振動で枠体101を加振すると、当該枠体101の可撓性により板バネ102の下端部も同方向に振動を開始する。このとき、各フェライト磁石103の吸引力が板バネ102の下端部の移動変位により変化して作用し、その結果、板バネ102の下端部にカオス振動が発生する。
【0009】また、他のカオス振動発生機械の例としては、基端部を回動自在として吊下した棒状の第一の振り子と、この第一の振り子の自由端部に回動自在に基端部を連結した棒状の第二の振り子とからなる二重振り子が挙げられる。この二重振り子全体を垂直方向よりも傾斜させた後に解放すると、第二の振り子の自由端部がカオス振動を生じることが知られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記各従来例は板バネや振り子の先端部に生じるカオス振動現象を観測するための装置であって、そのカオス振動を抽出し当該振動自体を他の目的に応用することは、構造上困難であった。即ち、上記各従来例では、板バネや第二の振り子の自由端部は垂直方向と水平方向の両方に変位を生じる構造であり、さらに、板バネや第二の振り子が上方から垂下された構造であるため、板バネ等の先端部を何かの移動対象物と連結して当該移動対象物にカオス振動を生ぜしめることは不可能ではないが、非常に困難であった。
【0011】
【発明の目的】本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、特に、カオス振動の観測、振動変位の測定、移動させる対象物に対する駆動源としての応用も可能なカオス振動発生機械を提供することを、その目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、振動体と、この振動体をその上面で所定の直線方向に沿って往復運動を行う支持台と、支持台を振動体の往復運動方向に加振する加振機構とを備え、支持台と振動体との間に張設されると共に、振動体の往復運動に伴い伸縮動作及び支持台との連結端部を支点とする回動動作を行う弾性体を備える、という構成を採っている。
【0013】上述の記載において、弾性体が「振動体の往復運動に伴い伸縮動作及び支持台との連結端部を支点とする回動動作を行う」ということは、この弾性体の伸縮方向が振動体の往復運動方向に対して平行ではなく交差した状態で当該弾性体が支持台と振動体との間に配設されていることを意味するものである。従って、振動体が支持台上で往復運動を行うと、弾性体の伸縮方向と振動体の往復運動方向との交差角度を変化させながら、弾性体は支持台との連結部を支点とし且つ振動体との連結部を回動端部として回動しながら伸縮動作を行うこととなる。
【0014】これを前提として、加振機構により支持台を加振すると、支持台に弾性体を介して連結された振動体も基台に対して同方向に往復運動を開始する。このとき、弾性体は回動しながら伸縮するので、振動体に作用する張力は移動距離に比例せず、その回動角度をパラメータとして決定されることとなる。そして、このときの振動体の運動方程式(「発明の実施の形態」の記載で詳述する)はカオス振動を表すDuffing方程式に近似させることができ、振動体にカオス振動を発生させることが可能となる。
【0015】そして、上記発明では、振動体が支持台上に位置すること、及び振動体が従来例の如く二方向に変位を生じることなく直線方向に沿ってカオス振動を行うことに特徴を有している。この点から、振動体をカオス振動を生じせしめようとする対象物と連結することが容易であり、当該カオス振動を多目的に応用することを可能としている。
【0016】請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、弾性体の回動支点を支持台上における振動体の往復運動領域と当該領域を往復運動方向に延長した領域のいずれでもない領域に配置する、という構成を採っている。
【0017】かかる構成では、弾性体の支持台との連結部を往復運動する振動体の移動領域及びその延長した領域のいずれにも配置しないことにより、弾性体の伸縮方向と振動体の往復運動方向とが平行とならないように弾性体を配置することを実現している。
【0018】請求項3記載の発明では、上記各構成に加えて弾性体を複数備えるという構成を採っている。また、請求項4記載の発明は、弾性体を偶数個備えると共にこれらの弾性体を二分して振動体の往復運動領域を挟んだ両側にそれぞれ配置する、という構成を採っている。これらの構成に示すように、弾性体の個体数は一つに限定されるものではない。
【0019】請求項5の発明では、上記各構成に加えて、弾性体をコイルバネとする、という構成を採っている。伸縮可能であり、その伸縮量に比例して弾性力を生じる代表的な部材としてコイルバネを例示したものである。但し、請求項1〜5記載のの発明について、弾性体としてコイルバネと同様に機能する他の弾性体を適用しても構わないことはいうまでもない。
【0020】請求項6記載の発明では、請求項1,2,3,4又は5記載の発明と同様の構成を備えると共に、支持台上に、振動体の往復運動方向に沿ったガイドレールとこれに係合するローラーガイドとを設け、これらを介して振動体が支持台上に支持されている、という構成を採っている。かかる構成では、ローラーガイドにより振動体の円滑な往復運動が図られると共に、ローラーガイドの定格荷重の範囲で振動体上にカオス振動を伝達させたい対象物を装備することが可能となる。
【0021】本発明は、上述した各構成によって前述した目的を達成しようとするものである。
【0022】
【発明の実施の形態】[全体概要]本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態であるカオス振動発生機械10を示す正面図,図2はその斜視図である。このカオス振動発生機械10は、振動体12と、この振動体12をその上面で所定の直線方向に沿って往復運動自在に支持する支持台30と、この支持台30を振動体20の往復運動方向に加振する加振機構40と、支持台30と振動体20との間に張設された弾性体としての二つのコイルバネ13,13とを備えている。以下、各部を詳説する。
【0023】[加振機構]上記加振機構40は、水平面11上に平行且つ水平に配設された二本のレール状の支持台ガイド41(一本は図示略)と、支持台30の下面側に装備され,各支持台ガイド41に個別に係合する二つの支持台用ローラーガイド42(一方は図示略)と、往復振動を発振する加振機43とを備えている(図1,2)。
【0024】各支持台用ローラーガイド42は、支持台ガイド41に沿って滑動自在であり、これにより支持台30の支持台ガイド41に沿った往復運動を可能としている。なお、支持台ガイド41については二本備えているがこれに限定されるものではない。一本としてもより多くしても良い。
【0025】加振機43は、水平面上にブラケット44を介して固定装備されている。そして、加振機43が有する往復駆動軸43aの先端部が支持台30の往復運動方向における一端部に連結されている。この加振機43はその往復動作の振幅Aが予め一定値に設定されており、正弦波Acosωtに従って往復振動を発振する。なお、加振機43が発振する正弦波Acosωtの発振角速度ωは図示を省略した加振機制御手段により調節可能である。
【0026】[支持台]支持台30は、平板状の基板31と、基板31の上面に装備されたガイドレールとしての振動体用ガイド32と、振動体12の下面側に装備され,振動体ガイド32に係合する振動体用ローラーガイド33と、基板31の上面に装備された二つの側壁板34,34とを備えている(図1,2)。
【0027】基板31は、前述した支持台用ローラーガイド42を介して支持台用ガイド41に装備された状態においてその上面が水平となるように設定されている。また、基板31の長手方向が加振機構40による往復運動方向に沿うように当該加振機構40に支持されている。
【0028】振動体用ガイド32は、その長手方向が前述した支持台用ガイド41と平行となるように基板31上に装備されている。そして、振動体用ローラーガイド33は、振動体用ガイド32に沿って滑動自在であり、これにより振動体12は支持台30上において当該支持台30が加振される往復運動方向と同方向の往復運動を可能としている。
【0029】二つの側壁板34は、いずれもその長手方向が振動体用ガイド32と平行となるように基板31上に装備され、当該振動体用ガイド32を挟んでその両側に配置されている。
【0030】[振動体及びコイルバネ]振動体12及び各コイルバネ13について図1乃至図3に基づいて説明する。図3は支持台30を上方から見た平面図である。振動体12はその上面部に各コイルバネ13の一端部が各々係止される二つの連結用突起12aを備えている。各連結用突起12aは連結されたコイルバネ13の一端部を振動体12に対して回転自在に支持する構造を備えている。一方、各コイルバネ13は、いずれもその両端に被係止用の環状部を備えており、各コイルバネ13の一端部が連結用突起12aに連結される。
【0031】また、支持台30の各側壁板34の上面であってその長手方向中央部にもそれぞれ連結用突起34aが装備されている。この連結用突起34aもまた前述した連結用突起12aと同じ構造を有し、上方に向けて突出状態で装備されている。そして、各コイルバネ13は他端部側の環状部を介して各連結用突起34aに連結され、各連結用突起34aを支点として各コイルバネ13は回動動作を行うことが可能となっている。従って、支持台30が加振機構40により加振されると、振動体12は慣性力により振動体ガイド32に沿って往復振動を行うが、その際、各コイルバネ13は各連結用突起34aを支点として回動動作を行い同時に伸縮動作を行うこととなる。
【0032】さらに、上記各連結用突起34aは、図3に示すように、支持台30上において、振動体12の往復運動領域S1と当該領域S1を往復運動方向に延長した領域S2のいずれでもない領域に配置されている。従って、各コイルバネ13の伸縮方向と振動体の振動方向とは一致することはなく、振動体12が往復運動領域S1のいずれに位置する場合であっても、各コイルバネ13の伸縮方向(コイルバネ13の長手方向)と振動体12の振動方向とは一致することはなく、これら伸縮方向と振動方向とは常に交差した状態を維持することとなる。
【0033】また、各連結用突起34aは、振動体12が最も近接した状態(各コイルバネ13の伸縮方向が振動体12の振動方向に対して直交した状態)において、各々が対応する振動体12側の各連結用突起12aまでの距離がコイルバネの13の自然長以上となるように配置設定が成されている。従って、振動体12がその往復運動領域S1内のいずれに位置する場合であっても、当該振動体12には常に0以上の張力が作用し、逆に押圧力は発生しないこととなる。
【0034】なお、カオス振動発生機械10では、各コイルバネ13から振動体12に対して常時張力が生じるように各連結用突起34aの配置を設定しているが、特にこのような配置に限定しなくとも良い。即ち、各連結用突起34aに対して振動体12が最も近接した状態において、これらの相互間距離が各コイルバネの13の自然長よりも短くなるように各連結用突起34aの配置設定を行っても良い。その場合、各コイルバネ13は振動体の振動に際して、伸張と圧縮とを繰り返すこととなる。即ち、上記実施形態記載の如く,常時コイルバネ13が振動体12に張力を生じるように取り付けられている場合には常に変位とは逆方向の張力が振動体12に作用するが、コイルバネが圧縮も生じるように取り付けられている場合にはコイルバネが自然長以下となる区間では移動体12の変位とは逆方向の押圧力が当該移動体12に作用することとなる。このような倍であっても、振動体12にカオス振動は発生する。
【0035】[カオス振動発生機械の作用及び動作]図4は加振機構40により加振を行っているときの支持台30上の各構成を模式的に表した説明図である。支持台30は加振機構40によりAcosωtの正弦波に基づいて加振される。また、図4における符号xは基準位置(各コイルバネ13が振動体12の振動方向に対して垂直となるときの振動体12の位置)からの振動体12の振動方向の変位を示し、符号hは振動体12が基準位置にあるときのコイルバネ13の長さを示し(二つのコイルバネ13はいずれも同値である)、θは各コイルバネ13が振動体12の振動方向に対して成す角度(基準位置においてπ/2)を示す。このとき、振動体12が加振されると、振動体12の運動方程式は次式(1)に表される。
【0036】
【数1】

【0037】上式(1)において、符号cは減衰器を取り付けた場合の粘性減衰係数及び装置各部から生じる摩擦力等に依存する等価粘性減衰係数,kは二つのコイルバネ13のバネ定数,rは基準位置から変位を生じているときの各コイルバネのバネ長を示す。このとき、上式(1)中のcosθは上式(2)で表すことができ、rは上式(3)で表すことができる。その場合、上式(1)の項である(r−h)cosθはx3/2hに近似することが可能である。これを次式(4)に示す。
【0038】
【数2】

【0039】従って、上式(1)の運動方程式は次式(5)となる。また、参考としてカオス振動を生じる代表的な非線形方程式であるDuffing方程式を次式(6)に示す。
【0040】
【数3】

【0041】上式(6)のDuffing方程式は、速度に比例する減衰項,変位の三乗に比例する復元力項及び周期的な外力を含むことを特徴とし、上式(5)はこの特徴を備えていることが分かる。従って、カオス振動発生機械10の振動体12の運動方程式(1)は基準位置のバネ長hに対する振動体の変位xが小さい場合には、Duffing方程式と同様となり、振動体12はカオス振動を生じることとなる。なお、Duffing方程式はカオス振動の一例に過ぎず、振動体の変位xが基準位置のバネ長hに対して小さくない場合であっても、例えば、コイルバネの強さ,その取付位置(前述した領域S1,S2の範囲外で),加振機構40による加振振幅の変更等により移動体12にカオス振動を発生させることは可能である。
【0042】[実施形態の効果]上述したカオス振動発生機械10によれば、支持台30,加振機構40及び各コイルバネ13という簡易な構成から振動体12にカオス振動を発生させることが可能となる。また、上記カオス振動発生機械10では、従来からあるカオス振動発生機械のように振動体が板バネとか棒状の振り子であるというような形状,構造上の限定をほとんど排除し、平面上で往復運動を行うことが可能である限り振動体の形状,構造を自由に設定することが可能である。このため、振動体をカオス振動を発生させようとする対象物と容易に連結することも可能となり、さらには振動体を上記対象物そのものとすることも可能である。
【0043】また、振動体12が支持台30の上面において振動を行う構成であるため、従来の如く垂下された板バネや振り子を振動体とする構成と比較して、振動体12の上部に振動させたい対象物を載置する等により簡易に利用することが可能である。
【0044】さらに、カオス振動発生機械10の如く、振動体12を振動体ガイド32と振動体用ローラーガイド33により支持する構成の場合、振動体の重量化に際してもパワーのある加振機を用いることにより容易に対応することが可能である。
【0045】以上のように、上記カオス振動発生機械10により、カオス振動の応用や利用を飛躍的に容易とすることが可能となった。
【0046】[その他]上記カオス振動発生機械10ではコイルバネの個体数を二つとしているが、特にこれに限定されるものではなく、個体数を一つとしてもまたより多くしても良い。また、コイルバネを一つにした場合には側壁板32も一つ設ければよい。また、カオス振動発生機械10では弾性体としてコイルバネを使用しているが、バネ定数がおおよそ一定であり直線方向に沿って伸縮動作を行うものであれば他の弾性体を使用しても良い。
【0047】また、カオス振動発生機械10では、各コイルバネ13が水平面内を回動する配置となっているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、コイルバネの個体数を一として、当該コイルバネの回動支点を振動体の垂直上方に配置し、回動端部を振動体と連結する構成としても良い。この場合、振動体の振動に際してコイルバネは垂直平面内を回動し伸縮することとなる。
【0048】また、加振機構40では往復運動を発生する加振機43を使用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、回転力を発生する駆動源(モータ等)とクランク機構とからなる構成でも良い。この場合も一定振幅で加振可能である。
【0049】
【第1の実施例】上記カオス振動発生機械10をカオス振動の観測を行うためのカオス振動発生シミュレーション装置50に適用した実施例を図5乃至図8に基づいて説明する。図5は、カオス振動発生シミュレーション装置50の概略ブロック図を示す。このカオス振動発生シミュレーション装置50は、前述したカオス振動発生機械10と、加振機43の制御手段51と、振動体12の振動方向の距離変位を検出するレーザ距離センサ52と、このレーザ距離センサ52の出力に基づく検出距離を記憶し処理するパーソナルコンピュータからなる処理装置53とを備えている。
【0050】上記加振機制御手段51は加振機43の振動周波数fを入力設定を行うためのものである(f=ω/2π)。また、レーザ距離センサ52は支持台30の基板31上に装備され、基板31上における振動体12の振動方向における距離変位xに応じた検出信号を常時出力する。
【0051】処理装置53は、レーザ距離センサ52の出力を所定のサンプリング間隔ごとに格納し、これに基づく距離変位xを算出する距離算出機能を備えている。さらに、算出した距離変位xnごとに後に続く距離変位xn+1との差をとりこれをサンプリングの単位時間で除算することにより各サンプリング間隔ごとの移動体の速度を算出する速度算出機能を備えている。
【0052】また、処理装置53は併設される表示モニター54に、■横軸をサンプリングの経過時間とし縦軸を対応する検出距離変位とする振動波形の線図、■横軸を振動周波数fとし縦軸を周波数強度とするFFTの線図,■横軸を検出距離変位とし縦軸を算出した速度変位とするポアンカレマップを作成し表示する機能を備えている。
【0053】一例として、振動体の質量m=1.90[kg],各々のバネ定数k=0.78453[N/mm],各バネの自然長=100[mm],各バネの設置距離h=100[mm],加振機の周波数f=6[Hz]としたときの、振動波形の線図を図6に、FFTの線図を図7に、ポアンカレマップを図8に示す。かかるポアンカレマップにはカオスアトラクタ形状が現れていることが観測されている。
【0054】本発明のカオス振動発生機械10を適用したカオス振動発生シミュレーション装置50によれば、このようにカオス振動の観測を行うことに好適である。
【0055】
【第2の実施例】上記カオス振動発生機械10をカオス振動の駆動源として利用する実施例を示す。図9は、カオス振動発生機械10により溶液槽61を加振して撹拌を行う撹拌装置60を示す正面図である。この撹拌装置60は、前述したカオス振動発生機械10の振動体12の上部に溶液槽61を装備している。この溶液槽61には、溶質と溶媒或いは二種以上の溶液が入れられ、溶液槽61が振動体12と共にカオス振動を行うことにより溶液の撹拌を図るものである。非線形的な振動を利用するので、通常の線形的な振動により撹拌を行うよりも溶液槽内の液体に複雑な慣性力が作用して、より効果的に撹拌を行うことが可能である。
【0056】
【第3の実施例】上記カオス振動発生機械10をカオス振動の駆動源として利用する実施例を示す。図10(A)は、カオス振動発生機械10を備えると共にカオス振動を利用して洗浄を行う洗浄装置の洗浄槽62を示す断面図である。この洗浄槽62は前述した溶液槽61と同様に振動体12の上部に装備され、その内部に洗剤溶液が入れられた状態で振動体12と共にカオス振動を行う。符号63は洗浄対象物64を収容して洗浄槽62内に格納するバスケットである。この洗浄装置では、非線形的な振動を利用するので、通常の線形的な振動により洗浄を行うよりも洗剤溶液に複雑な慣性力が作用して、洗浄対象物64に対して洗剤溶液が複雑な流れを生じるのでより効果的に洗浄を行うことが可能である。
【0057】
【第4の実施例】上記カオス振動発生機械10をカオス振動の駆動源として利用する実施例を示す。図10(B)は、カオス振動発生機械10を備えると共に人体の脚部Lにカオス振動を付与する足揺らし健康装置の脚台65を示す断面図である。この脚台65は前述した溶液槽61と同様に振動体12の上部に装備され、その凹部に横になった人間の脚部Lを載せた状態で振動体12と共にカオス振動を行う。
【0058】
【第5の実施例】上記カオス振動発生機械10をカオス振動の駆動源として利用する実施例を示す。図10(C)は、カオス振動発生機械10を備えると共に人体の足先部Fにカオス振動を付与する足先揺らし健康装置の足載せ台66を示す断面図である。この足載せ台66は前述した溶液槽61と同様に振動体12の上部に装備され、その凹部に上方から人間の足先部Fを入れた状態で振動体12と共にカオス振動を行う。
【0059】
【第6の実施例】上記カオス振動発生機械10をカオス振動の駆動源として利用する実施例を示す。図10(D)は、カオス振動発生機械10を備えると共に人間Mが座る座席67にカオス振動を付与するカオス振動体感装置の座席67を示す側面図である。この座席67は前述した溶液槽61と同様に振動体12の上部に装備され、この座席67に人間Mが腰掛けた状態で振動体12と共にカオス振動を行う。このカオス振動体感装置では、人間Mが全身で非線形的なカオス振動を体験することができ、体験者に対して高い興趣性を喚起することが可能である。
【0060】また、このカオス振動体感装置の応用として、装置全体を大型化すると共に加振機構40にパワーを持たせ、振動体12には複数の座席を装備することにより、例えば、遊園地に設置されるいわゆる乗り物系の遊技機械を提供することも可能である。
【0061】
【発明の効果】本発明は、弾性体が振動体の振動と共に回動し且つ伸縮する配置としたことにより、振動体の振動方向の変位に対して移動体が弾性体から受ける復元力に非線形的変化を発生させ、これに基づいて振動体にカオス振動を発生させている。従って、振動体に対して、支持台,加振機構及び弾性体からなる簡易な構成でカオス振動を発生させることを可能としている。
【0062】また、本発明では、従来からあるカオス振動発生機械のように振動体が板バネとか棒状の振り子であるというような形状,構造上の限定をほとんど排除し、平面上で往復運動を行うことが可能である限り振動体の形状,構造を自由に設定することが可能である。このため、振動体をカオス振動を発生させようとする対象物と容易に連結することも可能となり、さらには振動体を上記対象物そのものとすることも可能である。このため、ある対象物にカオス振動を発生させるための振動発生源としての活用を、従来と比較して、飛躍的に容易にすることが可能となった。
【0063】また、振動体が支持台の上面において振動を行う構成であるため、従来の如く垂下された板バネや振り子を振動体とする構成と比較して、振動体の上部に振動させたい対象物を載置する等により簡易に利用することが可能である。同様の理由により、本発明はカオス振動を観測するために振動体に測定装置を併設することも容易とするため、カオス振動現象の観測に非常に好適なカオス振動発生機械を提供することも可能となった。
【0064】また、振動体をガイドレールとローラーガイドとにより支持する構成とした場合、振動体の重量化に容易に対応することが可能である。このため、カオス振動を発生させる対象物の適用範囲を拡張し、さらなるカオス振動の積極的な活用が可能である。
【0065】本発明は、以上のように構成され機能するので、これにより従来にない優れたカオス振動発生機械を提供することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】500572269
【氏名又は名称】学校法人明治大学
【出願日】 平成13年2月27日(2001.2.27)
【代理人】 【識別番号】100079164
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 勇
【公開番号】 特開2002−248430(P2002−248430A)
【公開日】 平成14年9月3日(2002.9.3)
【出願番号】 特願2001−52015(P2001−52015)