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【発明の名称】 模様塗装方法及び模様塗装品
【発明者】 【氏名】大西 一茂

【要約】 【課題】単一の塗料で簡単に立体的な模様を形成できる模様塗装方法を提供する。

【解決手段】本発明の模様塗装方法は、基材1に光輝材を含む塗料を付与し、基材の一部を模様形状の加熱板2によって加熱し温度むらを設ける。塗料の塗膜の加熱された部分は、非加熱部分に比べて急速に硬化するため、塗膜中に模様となって形成される。光輝材の反射の具合が加熱部分と非加熱部分で異なるため、形成した模様は立体的に浮かび上がって見える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 基材に光輝材を含む塗料を付与する塗装方法において、上記基材に付与された未硬化の塗料の一部に加熱された部分を形成し、この加熱された部分と他の部分とが模様をなす塗膜を形成することを特徴とする模様塗装方法。
【請求項2】 上記基材の被塗装面の一部を塗料付与前に予め加熱することを特徴とする、請求項1に記載の模様塗装方法。
【請求項3】 上記基材の塗膜の一部を塗料付与後に加熱することを特徴とする、請求項1に記載の模様塗装方法。
【請求項4】 上記基材の被塗装面の一部を塗料付与と同時に加熱することを特徴とする、請求項1に記載の模様塗装方法。
【請求項5】 上記被塗装面の一部又は上記塗膜の一部を、塗装面の表面側から加熱することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の模様塗装方法。
【請求項6】 上記被塗装面の一部又は上記塗膜の一部を、塗装面と対向する裏面側から加熱することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の模様塗装方法。
【請求項7】 線状のヒーターを配設した加熱手段により、上記被塗装面の一部又は上記塗膜の一部を加熱することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の模様塗装方法。
【請求項8】 面状の放射熱発生装置とこの放射熱発生装置を部分的に遮蔽する遮蔽手段とよりなる加熱手段により、上記被塗装面の一部又は上記塗膜の一部を加熱することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の模様塗装方法。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれか一項に記載の模様塗装方法を用いて、立体的な視覚効果を生ずる模様を有する塗装が施されたことを特徴とする模様塗装品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は模様塗装方法に関するものであり、特に塗装によって形成される模様が立体的な視覚効果(立体感)を生ずる模様塗装方法及びその模様塗装品に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、樹脂部品や金属部品に塗装によって模様を付ける方法として、複数のスプレーガンを用いて異なる組成や異なる色の塗料を吹き付ける方法が用いられている。
【0003】また、複数の塗膜を形成することにより塗膜の表面に周囲と異なる色調の模様や図形、文字等の模様を形成する方法として、例えば特開平6−114332号公報に記載されている、特定の磁性材料を含有した磁性塗料を用いるものが知られている。この方法では、まず、被塗装体上に形成した永久磁化粒子粉末(磁性剤塗料A)を含有する着磁用塗膜を磁化する。次に、磁化された着磁塗膜上に磁性材料Bを含有した磁気模様形成塗料を塗布すると、塗布されていく過程で塗料の磁化された部分に含まれている磁性材料Bが磁力線に沿って配向する。この状態で磁気模様形成塗料の塗膜が硬化することによって所定の模様を有する磁気模様形成塗膜が形成されるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の複数塗料を用いる方法では、何種類もの塗料を使用するため、コストが高くなってしまう。それと共に、作業工程が煩雑となり、作業時間も長くなるという問題がある。また、樹脂部品や金属部品に単に塗料を吹き付けるだけでは、立体的な視覚効果を生ずるような特定の模様を付けることは技術的に困難である。
【0005】さらに、上記の磁気模様形成塗料を用いる方法では、必ず磁化粒子が存在する塗料を用いなくてはならず、このような塗料は種類が少ないため、塗料の選択幅が狭くなってしまう。そして、磁性材料を磁力線によって配向させる必要があるため、塗装装置に磁力線発生装置を設けなければならず、塗装装置が複雑になってしまうなどの問題がある。
【0006】そこで、もっと簡単な方法で塗装面に周囲と異なる色調の模様や図形、文字等の模様を形成する方法及びその方法で模様を施した模様塗装品が求められている。加えて、低コストで塗料の選択肢の多い模様塗装方法及びその方法で模様を施した塗装品が要望されている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討の結果次のような模様塗装方法を見出し、これによって上記の問題を解決した。すなわち、本発明によれば、基材に光輝材を含む塗料を付与する塗装方法において、前記基材に付与された未硬化の塗料の一部に加熱された部分を形成し、この加熱された部分と他の部分とが模様をなす塗膜を形成することを特徴とする模様塗装方法が提供される。
【0008】本発明の模様塗装方法に用いる塗料は、微細な粉末である光輝材を含んでいる。光輝材としては、アルミフレーク等の金属フレーク、アルミ箔等の金属箔、パールマイカ、二酸化チタン等の金属を被覆したマイカ等のマイカ、亜鉛粉、ステンレス粉、アルミ粉等の金属粉、金属(具体的には銀、銀合金、二酸化チタンなど)を被覆したガラスフレーク等が好ましく用いられる。基材(被塗装体)の被塗装面にこの光輝材を含む塗料を付与し、塗料を常温でそのまま硬化させると、塗料が塗装面全体でゆっくりと一様に硬化するため、形成した塗装面には光輝材による光沢が一様に生じる。本発明者らは、このゆっくりと硬化する過程で、光輝材は微細な粉末のそれぞれがいわば安定な配向に移動する現象が生じていると考えられることに注目した。そこで、塗膜の一部のみを加熱することによって塗装面に温度むらを形成すると、塗料の温度の高い部分が周囲の温度の低い部分よりも急速に硬化するため、温度の高い部分では光輝材が塗料の付与直後のいわば乱立した状態のままで硬化すると考えられる。一方、塗装面の非加熱分部分は、加熱部分に比べ塗料硬化が遅く、塗料内部が通常状態の塗膜が形成されている。したがって、塗装面の急速に硬化した部分とゆっくり硬化した部分とでは光輝材の光の反射の方向や強さに違いが現れる。そこで、本発明者は、これを模様形成に応用し、塗装面に所定の模様を反映する温度むらを意図的に形成することによって、単一の塗料を用いても所定の模様を形成する方法を確立した。
【0009】本発明の方法を用いて塗装面に模様を形成すると、上記の温度むらを反映した模様が光輝材によって陰影を付けたように見えるため、平面でありながら立体的な模様を形成したように見える視覚的な効果がある。また、光輝材が光を強く反射する部分はより明るい色に、あまり反射しない部分はより暗い色に見えるため、本発明の方法によれば単一の塗料を用いて色調を変化させることもできる。
【0010】基材に塗料を付与した後に模様となる塗膜の一部を加熱すると、塗膜が徐々に加熱されることになる。これにより、模様を形成できるのみならず、塗料中の熱による溶剤発泡が防止でき、塗装面の外観を向上させることができる。
【0011】塗装面に温度むらを形成するには、予め基材の被塗装面の一部すなわち模様部分を加熱しておくこともできる。予め加熱しておくことによって、模様部分では塗料が付与されるそばから硬化し始めるので、模様以外の部分の光輝材の状態との差が顕著になり、仕上がり模様をよりはっきりさせることができる。
【0012】また、基材に塗料を付与すると同時に被塗装面の一部すなわち模様部分を加熱することもできる。これによって、基材への塗装と同時に加熱が行われるため、塗装面が徐々に加熱されることになり、塗料中の溶剤発泡を防止でき、塗装品の外観が向上する。
【0013】被塗装面又は塗膜の模様部分を加熱する際には、形成される塗装面の表面側から加熱してもよいし、塗装面と対向する裏面側、すなわち基材の被塗装面と反対側の面から加熱してもよい。塗装面の表面側から加熱する場合には、基材が板状でない筐体などの場合に有用であり、さらに、模様部分が速やかに加熱されるので仕上がり模様をはっきりさせることができる。一方で、被塗装面と対向する基材の裏面側から加熱する場合には、塗装面が徐々に加熱されるので、塗料中の溶剤発泡を確実に防止でき、塗装品の外観が向上する。
【0014】本発明の方法で塗膜を加熱して模様を形成するには、線状のヒーターを配設した加熱手段を用いることができる。線状のヒーターを用いることによって、特に文字や細い線による模様を塗装面に効果的に浮かび上がらせることができる。また、図形やより細かい模様を形成するには、例えばその図形やより細かい模様を切り抜いたマスク等の遮蔽手段と、面状の放射熱発生装置とを用いるのが好ましい。放射熱発生装置からの放射を部分的に遮蔽手段で遮ることによって、これらの模様を確実に形成することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を実施例と図面を用いて具体的に説明する。
【0016】<実施例1>本実施例では、予め基材(被塗装体)を加熱したのちに塗料を付与し、模様塗装を行った。図1に示すように、基材を加熱するための加熱板2は、加熱板の内部に任意の形状すなわち模様を呈したヒーターを有している。この加熱板は、塗装治具10に取り付けられている。基材1は、加熱板2の上側に配置し、塗装を行った。基材1と加熱板2の間隔は2mm以内とした。ここで、必要ならば、基材1と加熱板2を接触させてもよい。
【0017】基材1として、厚さ2mmのABS樹脂板を用いた。まず、図2に示したように加熱板2を80℃にし、加熱工程として、加熱板2の上側に配置した基材1を30〜60秒間加熱し、基材1に模様の加熱むら(温度むら)を設けた。図2の上の図では、模様となる加熱された部分12を破線で囲んで示した。次に、図3に示したように、基材1に光輝材としてパールマイカを含有する塗料(大橋化学工業(株)製 シェルトーン)をスプレーガンで吹き付け、20〜30μmの塗膜4を形成した。このとき、加熱板2によって、基材1の模様形状に加熱されている部分は、非加熱部分よりも塗料硬化が促進され、模様が形成された。その後、この塗膜4を室温で放置して、塗装面の模様部分14を定着させた。模様が定着した様子は、図4に示した。模様を定着させるための定着時間は、本実施例では30秒であった。なお、定着時間については、一般的に言われる塗装セッティング時間内に行わなければならず、基材の材質、厚さ、さらに塗料の種類によって異なる。最後に、模様が定着した基材1は、セッティング時間後に塗装治具10から取り出し、焼き付け炉に収納し、80℃で30分間焼き付けを行った。
【0018】<実施例2>本実施例では、基材に塗料を付与した後に加熱を行った。塗装治具10、加熱板2及び基材1は、実施例1と同様に図1に示した配置とした。
【0019】基材1として、厚さ2mmのABS樹脂を用いた。まず、基材1に実施例1と同様の光輝材を含有する塗料をスプレーガン吹き付け、20〜30μmになるよう塗膜を形成した。次に加熱板を60〜80℃にし、基材1を10〜20秒間加熱し、基材1に所定の形状すなわち模様の加熱むら(温度むら)を設けた。このとき、加熱板2によって、基材1の模様形状に加熱されている部分は、塗料硬化が促進され、加熱板2の形状に基材1の塗装面に模様が生じた。その後、この塗膜を室温で放置して、模様を定着させた。模様を定着させるための定着時間は、本実施例では1分であった。最後に、模様が定着した基材1は、セッティング時間後に塗装治具10から取り出し、焼き付け炉に収納し、80℃で30分間焼き付けを行った。
【0020】本実施例では、加熱板を基材の下側に配置したが、図5のように加熱板2を基材1の上側(塗装面の表面側9)に設けてもよい。また、加熱板2を基材1の上下両側に設けてもよい。
【0021】<実施例3>本実施例では、塗料を基材に付与すると同時に模様部分の加熱を行った。塗装治具10、加熱板2及び基材1は、実施例1と同様に図1に示した配置とした。ただし、本実施例では基材1と加熱板2を接触させて用いた。場合によっては、基材1と加熱板2の間隔を開けてもよい。
【0022】基材1として、厚さ2mmのABS樹脂板を用いた。基材1に実施例1と同様の光輝材を含有する塗料を塗膜が20〜30μmになるようスプレーガンで吹き付け、吹き付けを行うのと同時に、加熱板2を60〜80℃にし、基材1を10〜20秒間加熱して基材1に模様形状の加熱むらを設けた。このとき、加熱板2によって、基材1の模様形状に加熱されている部分は、非加熱部分よりも塗料硬化が促進され、模様が形成された。次に、この塗膜を室温で放置して、模様を定着させた。模様を定着させるための定着時間は、本実施例では1分であった。最後に、模様が定着した基材1は、セッティング時間後に塗装治具10から取り出し、焼き付け炉に収納し、80℃で30分間焼き付けを行った。
【0023】<実施例4>本実施例では、模様形成に、面状の放射熱発生装置とこの放射熱発生装置を部分的に遮蔽する遮蔽手段とを用いた。図6に示すように、全面が加熱する加熱板5は、塗装治具に取り外しできるように取り付けられ、基材1は、加熱板5の下側に配置した。加熱板5からの放射熱を部分的に遮蔽するために、フェノール樹脂板からなる断熱部材6を基材1と加熱板5の問に配置した。基材1と断熱部材6との間には5mmの隙間を設けた。断熱部材6には所定の模様を形成する孔7が設けられ、加熱板5から発する熱は断熱部材6の孔7を介して基材1の塗装面を加熱するようになっている。
【0024】基材1として厚さ2mmのABS樹脂板を用いた。まず、基材1に実施例1と同様の光輝材を含有する塗料をスプレーガンで吹きつけ、20〜30μmの塗膜4を形成した。次に、基材1の上側に断熱部材6をセットし、断熱部材6の上側に加熱板5を配置した。加熱板5を80℃にし、基材1を10〜20秒間加熱し、断熱部材6の孔7を介して基材1の塗装面に所定の模様形状の加熱むらを設けた。このとき、加熱板5によって、基材1の塗装面の加熱されている部分は、塗料硬化が促進され、基材1の非加熱分部は加熱部分に比べ塗料硬化が遅く、基材1の塗膜に断熱部材6の孔の形状の模様が生じた。次に、この塗膜を室温で放置し、模様を定着させた。模様を定着させるための定着時間は、本実施例では1分であった。最後に、模様塗装が定着した基材1は、セッティング時間後に塗装治具から取り出し、焼き付け炉に収納し、80℃で30分間焼き付けを行った。
【0025】
【発明の効果】本発明の模様塗装方法によれば、1色の塗料で模様付けができるので、使用する塗料の数を減らすことができ、コストを下げることができる。また、基材に温度むらを形成するという簡単な方法で塗装面に周囲と異なる色調の模様や図形、文字等の立体的な模様を形成できる。そして、本発明の方法では塗料が磁性体を含んでいる必要がなく、従来の磁性材料を含有した塗料のように、磁性材料を磁力線によって配向させる必要がないので、塗装装置が複雑になることがない。
【0026】さらに、加熱手段と基材の配置や、加熱と塗料の付与の順序などを適切に選択することにより、より仕上がり模様をはっきりさせたり、塗料中の溶剤発泡を防止して塗装品の外観を向上させたりすることができる。加えて、加熱手段を選択することによって、細かな模様や図形、文字等の模様を確実に設けることができ、かつ、模様を容易に変更できる。
【出願人】 【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
【出願日】 平成13年2月23日(2001.2.23)
【代理人】 【識別番号】100094709
【弁理士】
【氏名又は名称】加々美 紀雄 (外2名)
【公開番号】 特開2002−248417(P2002−248417A)
【公開日】 平成14年9月3日(2002.9.3)
【出願番号】 特願2001−47618(P2001−47618)