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【発明の名称】 塗布装置
【発明者】 【氏名】福田 努

【氏名】茂木 謙二

【要約】 【課題】可撓性帯状支持体に均一な厚さで塗付液を塗布し、薄層を形成することのできる塗布装置を提供する。

【解決手段】コバルトを4〜20重量%と、クロムを0.3〜3.0重量%および/またはバナジウムを0.1〜3.0重量%と、残部が平均粒径が1μm以下とされた炭化タングステンと不可避不純物とからなり、線膨張率が4.0×10-6-1以上〜6.5×10-6-1以下の値に設定された超硬合金からバックエッジ先端16、第1,第2ドクターエッジ先端17,18を形成し、刃先の真直度が3μmとなるように構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一の方向に走行する可撓性帯状支持体の上に塗布液を塗布する塗布ヘッドを備え、前記塗布ヘッドが、前記可撓性帯状支持体の走行方向に順次配置された少なくとも二つのエッジを有し、前記エッジは、前記可撓性帯状支持体に臨む側に各々先端面を有し、隣接する二つのエッジの互いに向き合う側にそれぞれ平らな側面が設けられるとともに、これらの間が離間されて、前記塗布液が前記可撓性帯状支持体に向かって流通するスロットが形成され、前記エッジの先端で開口される前記スロットの流出口から前記塗布液が流出して前記可撓性帯状支持体に塗布されるよう構成された塗布装置であって、前記エッジの前記側面と前記先端面とが交差してなる稜線が前記エッジの刃先とされるとともに、前記刃先の真直度が3μm以下とされていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】 請求項1に記載の塗布装置において、前記エッジは、鉄系合金からなるエッジ本体と、前記可撓性帯状支持体に圧接せしめられるよう前記エッジ本体の先端部分に取り付けられる超硬合金からなるエッジ先端とを有してなり、前記エッジ先端の線膨張率が4.0×10-6-1以上〜6.5×10-6-1以下であることを特徴とする塗布装置。
【請求項3】 請求項2に記載の塗布装置において、前記エッジ先端は、コバルトを4〜20重量%と、クロムを0.3〜3.0重量%および/またはバナジウムを0.1〜3.0重量%と、残部が平均粒径が1μm以下とされた炭化タングステンと不可避不純物とからなる超硬合金から形成されていることを特徴とする塗布装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行する可撓性帯状支持体に、有機物ないしは無機物、もしくはこれらの複合物からなるゲル状・液状の塗布液を、均一に、しかも薄く塗布する塗布装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、長尺なフィルムやシート等の可撓性帯状支持体の表面に塗付液を薄く塗布して薄層を形成する塗布装置として、例えば特公平6−77712号公報(以下、第1の従来技術という)に示されるものがある。
【0003】第1の従来技術に示される塗布装置は、図3に示すように塗布ヘッドを有し、この塗布ヘッドが第1スロット1を形成するバックエッジ2及び第1ドクターエッジ3と、この第1ドクターエッジ3と共に第2スロット4を形成する第2ドクターエッジ5とを備えた構成とされている。バックエッジ2、第1ドクターエッジ3、及び第2ドクターエッジ5の可撓性帯状支持体8に臨む側には、各々、可撓性帯状支持体8に圧接せしめられる先端面21,31,51が形成され、さらに、隣接するバックエッジ2と第1ドクターエッジ3の互いに向き合う側には、第1スロット1を構成する離間された平らな側面22,32が、また、第1ドクターエッジ3と第2ドクターエッジ5の互いに向き合う側には、第2スロット4を構成する離間された平らな側面34,52がそれぞれ形成されている。そして、先端面21と側面22とが交差する稜線がバックエッジ2の刃先23とされ、先端面31と側面32とが交差する稜線が第1ドクターエッジ3の第1の刃先33とされ、先端面31と側面34とが交差する稜線が第1ドクターエッジ3の第2の刃先35とされ、先端面51と側面52とが交差する稜線が第2ドクターエッジ5の刃先53とされている。
【0004】塗布ヘッドの内部には、第1スロット1,第2スロット4に連通する断面略円形状をなすポケット6a,6bが形成されている。そして、図示しない給液手段から配管7a,7bを介して矢印方向B1,B2に塗布液がそれぞれ送液され、ポケット6a,6bに液溜めされ、該ポケット6a,6bから第1スロット1,第2スロット4の各流出口に押し出され、矢印方向C1,C2に吐出されるように構成されている。
【0005】可撓性帯状支持体8は、図示されぬ可撓性帯状支持体8の送り手段によって、バックエッジ2側からバックエッジ2,第1ドクターエッジ3,第2ドクターエッジ5に向う矢印方向Aに走行するようになっている。
【0006】この可撓性帯状支持体8の走行時、図4に示すように、ポケット6a内の第1の塗布液91が第1スロット1から吐出され、可撓性帯状支持体8の片面に塗布される。その後、可撓性帯状支持体8の走行方向の下流側に位置し、かつポケット6b内から第2スロット4の流出口に押し出された第2の塗布液92が、第1の塗布液91の上に重ね塗りされる。このように、可撓性帯状支持体8の走行時、各塗布液91,92が前後して吐出され、可撓性帯状支持体8に二層の塗布液91,92が塗布される。このとき、バックエッジ2,第1ドクターエッジ3,第2ドクターエッジ5のそれぞれの刃先23,33,35,53が第1スロット1と第2スロット4の流出口の形状をそれぞれ精度良く画成して、塗付液91,92の流量と可撓性帯状支持体8に塗布される膜厚とが設定されるようになっている。また、塗付液中には、無機物質からなる硬質分散粒子や、樹脂や溶媒等の各種添加物が含まれており、摩耗や腐食が著しいため、バックエッジ2,第1ドクターエッジ3,第2ドクターエッジ5といったエッジは、特許第304815号公報(以下、第2の従来技術という)に開示されているように、高い剛性、耐摩耗性、及び耐食性を有する超硬合金から形成され、先端の形状精度や面精度を維持して、形成される薄層に対して均一な膜厚が得られる構成とされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述のように塗布ヘッドの先端部分に超硬合金からなるエッジを設けてその強度と靭性を増すとともに、スロットから常に一定の流量で塗付液が吐出されるような構成にした場合でも、被膜構造の多層化の要求に伴って上述の如き複数のスリットを有する塗布ヘッドが使用されるようになってきていることに加え、塗布される膜の薄層化、高速塗布化、さらには、塗布面積の増大化によって、剛性、耐摩耗性、耐腐食性とも十分ではなくなってきている。その一つとして、塗布される膜の薄層化への移行に伴い、エッジの刃先の歪みによって発生する塗付液の厚さの不均一さが、形成される層全体の厚さに対して無視できなくなってきているという問題があった。刃先の歪みは、エッジの先端の加工精度にもよるが、これに加えて、エッジの先端と可撓性帯状支持体や塗付液との摩擦、あるいは、塗布される際に塗付液が引き伸ばされることによって発生する熱等により、熱膨張によってエッジの先端が変形する影響が大きいという問題があった。
【0008】本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、可撓性帯状支持体に均一な厚さで塗付液を塗布し、薄層を形成することのできる塗布装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、可撓性帯状支持体の走行方向に沿って複数のエッジが順番に配置されている塗布ヘッドにおいて、可撓性帯状支持体側に形成されたエッジの先端面のうねりと、隣り合うエッジとの間でスロットを構成するよう該エッジに形成された平らな側面のうねりとをそれぞれ低減し、先端面と側面とが交差してなる刃先の真直度を向上させることにより、可撓性帯状支持体に塗布される塗付液の厚さを幅方向に沿って均一にできること、このとき、エッジの先端を超硬合金からなるエッジ先端として別体に形成し、線膨張率を所定の値以下に抑えることによって、熱膨張によるエッジ先端の変形を低減でき、また、線膨張率が所定の値を下回らないようにすることによって、エッジ先端とこのエッジ先端が取り付けられる鉄系合金からなるエッジ本体との熱膨張の差からエッジ先端に歪みが加わらないようでき、これらにより、塗布を行っている間の刃先の温度上昇にかかわらず刃先の真直度を保つことができること、また、斯かる超硬合金の特性は、バックエッジが炭化タングステンを主成分とする超硬合金製とされ、炭化タングステンの粒子間に所定の成分を有する結合相金属が均一に配合されて硬度と靭性が高められていること、また、炭化タングステンの粒子間の結合力を高める高温熱処理の下で炭化タングステンの粒成長を抑制する粒成長抑制剤が添加されていること、炭化タングステンの平均粒径が十分小さいことによって実現できるという知見を得て本発明に至った。
【0010】すなわち、本発明は、一の方向に走行する可撓性帯状支持体の上に塗布液を塗布する塗布ヘッドを備え、前記塗布ヘッドが、前記可撓性帯状支持体の走行方向に順次配置された少なくとも二つのエッジを有し、前記エッジは、前記可撓性帯状支持体に臨む側に各々先端面を有し、隣接する二つのエッジの互いに向き合う側にそれぞれ平らな側面が設けられるとともに、これらの間が離間されて、前記塗布液が前記可撓性帯状支持体に向かって流通するスロットが形成され、前記エッジの先端で開口される前記スロットの流出口から前記塗布液が流出して前記可撓性帯状支持体に塗布されるよう構成された塗布装置であって、前記エッジの前記側面と前記先端面とが交差してなる稜線が前記エッジの刃先とされるとともに、前記刃先の真直度が3μm以下とされていることを特徴とする。
【0011】本発明においては、刃先の真直度が3μmとなるような加工精度でエッジの先端が加工される。そして、これにより、スロットの流出口から流出される塗付液の流量がエッジの長手方向、すなわち、可撓性帯状支持体の幅方向に沿って場所によらず一定となり、可撓性帯状支持体上に形成される薄層の膜厚を幅方向に沿って均一にすることができる。すなわち、可撓性帯状支持体上に、例えば4μm以下の薄層を形成する場合には、可撓性帯状支持体の幅方向に沿って膜厚の偏差を10%以下に抑えることができる。エッジの刃先は、エッジの先端面とエッジの側面とが交差してなる稜線上に形成されている。したがって、エッジの刃先の歪みは、それぞれの面が互いに他方の面によって切断され、それぞれの面上のうねりが交差稜線上に現れることによって形成されたものである。例えば、仮に一方の面が理想的な平面で、他方の面にうねりがあるとすると、刃先の歪みは、平らな一方の面による他方の面の断面の稜線の歪みである。それぞれの面にうねりがある場合は、刃先の歪みは、それぞれの面のうねりが重なり合って大きくなるか、もしくは、逆に打ち消し合って小さくなる。しかしながら、刃先の真直度は、概ねそれぞれの面を互いに他方の面に沿った方向の平面で切断したときの稜線の歪みによって評価することができる。そこで、ここでいう刃先の真直度とは、JIS B 0021に規定される線の真直度公差であるとする。そして、エッジの先端面、もしくは、エッジの側面に沿った方向の平面に刃先を投影したときの二つの平行な直線の間に挟まれた領域を公差域とする。刃先の真直度が3μm以下ということは、エッジの先端面、エッジの側面、いずれの方向の平面に刃先を投影してもその公差域が3μmを上回らないということである。このことが実現されるためには、エッジの先端面、及び、エッジの側面のいずれの面においても、交差稜線付近で少なくともうねりが3μm以下でなければならない。なお、塗布ヘッドに設けられるエッジのうち、可撓性帯状支持体の走行方向に沿って二番目以降に配置されるドクターエッジと呼ばれるエッジは、先端面が可撓性帯状支持体の走行方向に沿って湾曲した曲面から形成されていてもよい。この場合、エッジの先端面の方向とは、エッジの側面との交差稜線で先端面に接する接平面の方向とする。このようにして、刃先の真直度を高めることで、可撓性帯状支持体に均一な厚さで塗付液を塗布し、薄層を形成することができる。
【0012】また、本発明の塗布装置では、前記エッジは、鉄系合金からなるエッジ本体と、前記可撓性帯状支持体に圧接せしめられるよう前記エッジ本体の先端部分に取り付けられる超硬合金からなるエッジ先端とを有してなり、前記エッジ先端の線膨張率が4.0×10-6-1以上〜6.5×10-6-1以下であることを特徴とする。
【0013】本発明においては、エッジの先端に超硬合金からなるエッジ先端が設けられることによって、エッジの先端の強度と靭性が高められ、エッジの先端の破損や変形等を抑えて均一に塗布液を塗布することができる。そして、超硬合金の線膨張率が6.5×10-6-1以下とされることによって、エッジ先端と可撓性帯状支持体や塗付液との摩擦、あるいは、塗付液が塗布される際に引き伸ばされることによって発生する熱等によるエッジ先端の変形が抑えられ、塗付液を塗布している間にエッジの温度が上昇した場合においても刃先の真直度が3μm以下に保たれる。また、超硬合金の線膨張率が4.0×10-6-1以上とされることによってエッジ先端とエッジ先端が取り付けられるエッジ本体との熱膨張の差からエッジ先端に歪みが加わらないようでき、これにより、塗布を行っている間刃先の真直度が3μm以下に保たれる。こうして、可撓性帯状支持体に均一な厚さで塗付液を塗布し、薄層を形成することができる。
【0014】また、本発明の塗布装置では、前記エッジ先端は、コバルトを4〜20重量%と、クロムを0.3〜3.0重量%および/またはバナジウムを0.1〜3.0重量%と、残部が平均粒径が1μm以下とされた炭化タングステンと不可避不純物とからなる超硬合金から形成されていることを特徴とする。
【0015】本発明においては、エッジ先端を形成する超硬合金の硬質相が炭化タングステンからなるため、エッジ先端の靭性及び強度の向上を図ることができる。ここで、炭化タングステンは立方晶構造化合物であることから、その平均粒径を1μm以下として超硬合金の強度の低下を抑えることが好ましく、さらに、炭化タングステンの粒径をできるだけ均一なものとし、かつ、結合相中に均一に分散することがエッジ先端の強度及び靭性を向上する上で望ましい。また、エッジ先端を形成する超硬合金の結合相を形成するコバルトは、4重量%を下回るとエッジの靭性が失われ、20重量%を上回るとエッジの耐摩耗性劣化が著しくなるため、4〜20重量%とされていることが好ましい。また、エッジ先端の耐食性を高めるため、さらには、炭化タングステンの粒子間の結合力を高める高温熱処理の下で炭化タングステンの粒成長を抑制するため、エッジ先端を形成する超硬合金がクロムとバナジウムの少なくとも一方もしくは双方を含んでいることが好ましい。ここで、クロムは、0.3重量%を下回ると耐食性が得られず、3.0重量%を上回ると炭化クロムの有害な層が析出するため、0.3〜3.0重量%とされていることが好ましく、また、バナジウムは、0.1重量%を下回ると耐食性が得られず、3.0重量%を上回ると炭化バナジウムの有害な層が析出するため、0.1〜3.0重量%とされていることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明による塗布装置を図面に基づき説明する。本発明の塗布装置は、一方向に走行するフィルムやシート等の可撓性帯状支持体の表面に塗付液を均一に塗布して薄層を形成する塗布装置に関するもので、その他の構成要素や用法に関して特に制限を設けない。
【0017】図1及び図2に、本発明に係る塗布装置の一実施形態を示す。図において、塗布装置は、塗布ヘッド10を有し、この塗布ヘッド10が第1スロット11(スロット)を形成するバックエッジ13(エッジ)及び第1ドクターエッジ14(エッジ)と、第1ドクターエッジ14と共に第2スロット12(スロット)を形成する第2ドクターエッジ15(エッジ)とを備えて構成されている。さらに、可撓性帯状支持体19を矢印方向Aに送る図示されぬ送り手段を有している。
【0018】これらバックエッジ13,第1,第2ドクターエッジ14,15は、可撓性帯状支持体19の走行方向Aに沿い順次配置されており、それぞれ鉄系合金からなるバックエッジ本体13a,第1,第2ドクターエッジ本体14a,15a(エッジ本体)と、これらバックエッジ本体13a,第1,第2ドクターエッジ本体14a,15aの可撓性帯状支持体19の側の先端部分にそれぞれ取り付けられ、可撓性帯状支持体19に圧接せしめられる超硬合金からなるバックエッジ先端16(エッジ先端)、第1ドクターエッジ先端17(エッジ先端)、第2ドクターエッジ先端18(エッジ先端)とから構成されている。ここで、バックエッジ本体13a,第1,第2ドクターエッジ本体14a,15aは、JISの規定による炭素鋼S45Cとされ、また、バックエッジ先端16,第1,第2ドクターエッジ先端17,18を形成する超硬合金は、コバルトを4〜20重量%と、クロムを0.3〜3.0重量%および/またはバナジウムを0.1〜3.0重量%と、残部が平均粒径が1μm以下とされた炭化タングステンと不可避不純物とから構成されている。そして、この超硬合金の線膨張率が4.0×10-6-1以上〜6.5×10-6-1以下の値とされている。
【0019】バックエッジ先端16の可撓性帯状支持体19に臨む側には、平らな先端面16aが形成され、また、バックエッジ先端16の隣に配置された第1ドクターエッジ先端17に臨む側には、平らなスロット側面16b(側面)が設けられている。一方、第1ドクターエッジ先端17のバックエッジ先端16に臨む側は、平らなスロット側面17b(側面)とされ、これらスロット側面16bとスロット側面17bとの間が離間され、第1スロット11が形成されている。そして、先端面16aとスロット側面16bとが交差してなる稜線がバックエッジ先端16の刃先16cとされている。また、第1ドクターエッジ先端17の可撓性帯状支持体19に臨む側には、可撓性帯状支持体19に沿って湾曲する先端面17aが形成され、この先端面17aとスロット側面17bとが交差してなる稜線が第1ドクターエッジ先端17の第1の刃先17cとされている。さらに、第1ドクターエッジ先端17の第2ドクターエッジ先端18に臨む側には、平らなスロット側面17d(側面)が設けられ、このスロット側面17dと先端面17aとが交差してなる稜線が第1ドクターエッジ先端17の第2の刃先17eとされている。また、第2ドクターエッジ先端18の可撓性帯状支持体19に臨む側には、可撓性帯状支持体19に沿って湾曲する先端面18aが形成され、また、第1ドクターエッジ先端17に臨む側には、平らなスロット側面18b(側面)が設けられている。先端面18aとスロット側面18bとが交差してなる稜線が第2ドクターエッジ先端18の刃先18cとされている。これらの刃先16c,17c,17e,18cはそれぞれJIS B 0021に規定される線の真直度公差で0.5μm以上〜3μm以下となるよう加工形成されている。すなわち、先端面16a,17a,18a、もしくは、スロット側面16b,17b,17d,18bに沿った方向の平面に刃先16c,17c,17e,18cをそれぞれ投影したときの二つの平行な直線の間に挟まれた領域を公差域とし、先端面16a,17a,18a、スロット側面16b,17b,17d,18b、いずれの方向の平面に刃先16c,17c,17e,18cを投影してもその公差域の幅が0.5μm以上〜3μm以下となるよう形成されている。なお、湾曲した第1ドクターエッジ先端17の先端面17aと第2ドクターエッジ先端18の先端面18aに沿った方向とは、これらの面に刃先17c,17e,18cで接する接平面の方向とする。
【0020】塗布装置は、可撓性帯状支持体19の走行時、図示しない給液手段によって塗布液20A,20Bが供給され、該塗布液20A,20Bがポケット21,22及び第1スロット11,第2スロット12を流通し、流出口より図中C1,C2で示される方向に吐出することにより、可撓性帯状支持体19の片面に塗布液20A,20Bが重ねて塗布されるように構成されている。この場合の塗布液としては、本例では、積層セラミックスコンデンサのグリーンシートに用いられる母材シートを形成するためのものであり、例えば、誘電体セラミックス粉の含有液、及びその組成を若干変えた誘電体含有液等の二種類からなっている。
【0021】このような構成の塗布装置においては、可撓性帯状支持体19が走行すると、給液手段によって塗布液20A,20Bがそれぞれ供給され、該塗布液20A,20Bがポケット21,22及び第1スロット11,第2スロット12を流通してそれぞれの流出口から可撓性帯状支持体19の片面に塗布される。この場合、可撓性帯状支持体19の片面上に塗布液20A,塗布液20Bが順次重なった状態で塗布される。
【0022】この塗布時、刃先16c,17c,17e,18cの真直度が0.5μm以上〜3μm以下とされているので、第1,第2スロット11,12の流出口から流出される塗付液20A,20Bの流量がバックエッジ先端16、第1,第2ドクターエッジ先端17,18の長手方向、すなわち、可撓性帯状支持体19の幅方向に沿って場所によらず一定となり、可撓性帯状支持体19上に形成される薄層の膜厚を幅方向に沿って均一にすることができる。すなわち、可撓性帯状支持体19上に、例えば4μm以下の薄層を形成する場合には、可撓性帯状支持体の幅方向に沿って膜厚の偏差を10%以下に抑えることができる。
【0023】また、バックエッジ先端16、第1,第2ドクターエッジ先端17,18を形成する超硬合金の線膨張率が6.5×10-6-1以下とされることによって、バックエッジ先端16、第1,第2ドクターエッジ先端17,18と可撓性帯状支持体19や塗付液20A,20Bとの摩擦、あるいは、塗布される際に塗付液20A,20Bが引き伸ばされることによって発生する熱等によるバックエッジ先端16、第1,第2ドクターエッジ先端17,18の変形が抑えられ、塗付液20A,20Bを塗布している間にバックエッジ先端16、第1,第2ドクターエッジ先端17,18の温度が上昇した場合においても刃先16c,17c,17e,18cの真直度が3μm以下に保たれる。また、超硬合金の線膨張率が4.0×10-6-1以上とされることによってバックエッジ先端16、第1,第2ドクターエッジ先端17,18とこれらが取り付けられるバックエッジ本体13a,第1,第2ドクターエッジ本体14a,15aとの熱膨張の差からバックエッジ先端16、第1,第2ドクターエッジ先端17,18に歪みが加わらないようでき、これにより、塗布を行っている間、刃先16c,17c,17e,18cの真直度が3μm以下に保たれる。こうして、可撓性帯状支持体19に均一な厚さで塗付液20A,20Bを塗布し、薄層を形成することができる。
【0024】また、バックエッジ先端16、第1,第2ドクターエッジ先端17,18を形成する超硬合金が、コバルトを4〜20重量%と、クロムを0.3〜3.0重量%および/またはバナジウムを0.1〜3.0重量%と、残部が平均粒径が1μm以下とされた炭化タングステンと不可避不純物とから形成されるているので、バックエッジ先端16、第1,第2ドクターエッジ先端17,18の靭性、耐摩耗性、及び耐食性を向上することができ、刃先16c,17c,17e,18cの真直度を保って均一な厚さで塗付液20A,20Bを塗布することができる。
【0025】このように、本実施形態によれば、バックエッジ先端16の破損や変形が抑えられて可撓性帯状支持体19上への二つの塗布液20A,20Bの塗布条件を一定に保つことができ、これらの塗付液20A,20Bを均一にかつ安定した状態で塗布することができ、むらのない均一な二層の薄膜層を確実に得ることができる。
【0026】
【発明の効果】本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。請求項1に記載の発明によれば、エッジの先端面とエッジの側面とが交差してなる稜線に形成されたエッジの刃先の真直度が3μm以下とされているので、可撓性帯状支持体に均一な厚さで塗付液を塗布し、薄層を形成することができる。
【0027】また、請求項2に記載の発明によれば、エッジ本体の先端部分に取り付けられる超硬合金からなるエッジ先端の線膨張率が4.0×10-6-1以上〜6.5×10-6-1以下であるので、塗付液を塗布している間にエッジの温度が上昇した場合においても刃先の真直度が3μm以下に保たれ、可撓性帯状支持体に均一な厚さで塗付液を塗布し、薄層を形成することができる。
【0028】また、請求項3に記載の発明によれば、エッジは、コバルトを4〜20重量%と、クロムを0.3〜3.0重量%および/またはバナジウムを0.1〜3.0重量%と、残部が平均粒径が1μm以下とされた炭化タングステンと不可避不純物とからなる超硬合金から形成されているので、エッジの靭性、耐摩耗性、及び耐食性を向上することができ、刃先の真直度を保って均一な厚さで塗付液を塗布することができる。
【出願人】 【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【出願日】 平成13年2月27日(2001.2.27)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外6名)
【公開番号】 特開2002−248404(P2002−248404A)
【公開日】 平成14年9月3日(2002.9.3)
【出願番号】 特願2001−52713(P2001−52713)