トップ :: B 処理操作 運輸 :: B05 霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般




【発明の名称】 シャワーフローコート塗装装置およびこれを用いた塗装方法
【発明者】 【氏名】佐藤 寛之

【氏名】福島 洋

【氏名】古川 浩二

【要約】 【課題】複雑な立体形状の被塗布物に薄い塗膜を形成する場合でも均一に塗布でき、塗料のリサイクル性が優れ、環境への負荷も少ない塗装装置を提供する。

【解決手段】一定量の塗料を貯留しつつ底面に形成された滴下孔10aから塗料を滴下して、前記滴下孔10aの下方に配された基材19に塗料を塗布する塗料貯留槽10と、この塗料貯留槽10に連続的に塗料を供給する塗料供給手段11と、前記塗料貯留槽10からオーバーフローした塗料を受ける塗料回収槽12とを備えた塗装装置であって、前記塗料貯留槽10は、塗料の液深さが1〜20cmに維持されるように形成され、かつ、前記滴下孔は、孔径が0.5〜5mmであり、底面1cm2当たり0.05〜2.0個の割合で形成されているシャワーフローコート塗装装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一定量の塗料を貯留しつつ底面に形成された滴下孔から塗料を滴下して、前記滴下孔の下方に配された基材に塗料を塗布する塗料貯留槽と、この塗料貯留槽に連続的に塗料を供給する塗料供給手段と、前記塗料貯留槽からオーバーフローした塗料を受ける塗料回収槽とを備えた塗装装置であって、前記塗料貯留槽は、塗料の液深さが1〜20cmに維持されるように形成され、かつ、前記滴下孔は、孔径が0.5〜5mmであり、底面1cm2当たり0.05〜2.0個の割合で形成されていることを特徴とするシャワーフローコート塗装装置。
【請求項2】 塗料回収槽内の塗料を塗料供給手段に送る第1の送液手段が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のシャワーフローコート塗装装置。
【請求項3】 滴下孔から滴下された余剰塗料を受ける余剰塗料槽が設けられ、この余剰塗料槽内の余剰塗料を塗料供給手段に送る第2の送液手段が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載のシャワーフローコート塗装装置。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載のシャワーフローコート塗装装置を用いて、25℃での粘度が50mPa・s以下である塗料を塗布することを特徴とする塗装方法。
【請求項5】 塗料が架橋硬化性塗料であることを特徴とする請求項4に記載の塗装方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗料を基材に塗装する塗装装置とこれを用いた塗装方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂からなる成形品は、軽量で耐衝撃性に優れているだけでなく、透明性も良好である。そのため、これらの熱可塑性樹脂は、近年、ヘッドランプ、クレージング、計器類のカバーなどの自動車用プラスチック材料や、高速道路遮音板等の土木材料、車庫屋根、アーケード屋根等の建築材料、光ディスク用材料等に多く用いられるようになってきている。しかし、これらの熱可塑性樹脂成形品はその表面の耐摩耗性や耐候性が不十分である。よって、これらの性能を補うために成形品表面への塗膜の形成が従来から行われている。
【0003】塗膜を形成する方法としては、シリコン系、メラミン系の樹脂組成物からなる塗料を基材の表面に塗布して加熱縮合または付加反応させ、表面に架橋塗膜を形成する方法、ラジカル重合性単量体または多量体からなる樹脂組成物を塗料とし、これを基材の表面に塗布した後、活性エネルギー線を照射し、架橋塗膜を形成する方法等がある。こうして表面に架橋塗膜からなる保護皮膜を形成することによって、熱可塑性樹脂成形品の表面に耐摩耗性や耐候性を付与できる。
【0004】塗料を特に立体形状の基材に塗布する場合、一般にはスプレー法が採用される。スプレー法は、成形品の形状が複雑であっても、比較的容易に均一な厚みで塗膜を形成できるため各種用途に広く使用されているが、その一方で、基材に塗着しなかった余剰の塗料がミストとなって空気中に散乱してしまうという問題がある。そのため、スプレー法で塗布する場合には、一般的にスプレーブースと呼ばれる捕集能力のある排気設備を使用する。ミストを捕集する方法には、凝集剤を含む水を使用してミストを凝集させる方法、オイルを使用してこれにミストを吸収させる方法、ミストを含む排気をスパイラル状の捕集部材に付着させて、ミストを捕集するドライブース方法等がある。しかしながら、これらの方法では捕集した余剰塗料を再使用することができない。そのため、スプレー法の場合には塗料の塗着効率は低く、一般には30%以下であった。
【0005】塗着効率を上げるために有効と考えられているのがフローコート法である。フローコート法の場合には、基材に塗着しなかった余剰の塗料は塗装装置下部に設けられた塗料捕集用の受け皿に集められ再使用することが可能である。この結果、塗料の塗着効率は通常70〜80%となり、さらに設備対策を行うことにより、100%近くの高い塗装効率で塗装することができる。また、余剰塗料がミスト状になって、含有される有機溶剤のほぼ全量が大気中に揮発してしまうスプレー法に比べると、フローコート法では有機溶剤の揮発量は少なく、地球環境汚染防止の観点から好ましく、また、有機溶剤処理設備が不要であるという観点からも好ましい。
【0006】フローコート法として一般的な方法は、カーテンフローコート法である。この方法は、塗料を狭いスリット状のノズルからカーテン状に流して基材上に流しかけ塗装する方法であり、カーテンの厚さを調整することにより塗膜の膜厚を制御できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、塗料をカーテン状に保つためには塗料の粘度が数百mPa・s以上であることが必要である。よって、膜厚が数十μm以上の塗膜を形成する場合や、2次元形状の基材に塗料を塗布する場合には、カーテンフローコート法は有効な手段であるが、20μm以下の薄膜を基材に形成することは非常に困難であった。また、基材が複雑な立体形状である場合には膜厚が不均一になるため、カーテンフローコート法は適用できなかった。
【0008】本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、複雑な立体形状の被塗布物に薄い塗膜を形成する場合でも均一な塗膜を形成でき、かつ、塗料のリサイクル性に優れ、環境への負荷も非常に少ない塗装装置および塗装方法を提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のシャワーフローコート塗装装置は、一定量の塗料を貯留しつつ底面に形成された滴下孔から塗料を滴下して、前記滴下孔の下方に配された基材に塗料を塗布する塗料貯留槽と、この塗料貯留槽に連続的に塗料を供給する塗料供給手段と、前記塗料貯留槽からオーバーフローした塗料を受ける塗料回収槽とを備えた塗装装置であって、前記塗料貯留槽は、塗料の液深さが1〜20cmに維持されるように形成され、かつ、前記滴下孔は孔径が0.5〜5mmであり、底面1cm2当たり0.05〜2.0個の割合で形成されていることを特徴とする。また、本発明の塗装方法は、上記のシャワーフローコート塗装装置を用いて、有機溶剤を含有し、25℃での塗料粘度が50mPa・s以下である塗料を塗布することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明のシャワーフローコート塗装装置を図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明のシャワーフローコート塗装装置の一例を示す概略構成図である。符号10は塗料貯留槽であり、塗料供給手段11から連続的に供給された塗料を一定量貯留しつつ底面に形成された滴下孔10aから滴下して、滴下孔10aの下方に配された基材19に塗料を塗布するものである。塗料貯留槽10の外側にはこの塗料貯留槽10からオーバーフローした塗料を受けるための塗料回収槽12が設けられていて、塗料供給手段11から塗料貯留槽10に供給された過剰な塗料が回収されるようになっている。よって、塗料貯留槽10の底面の滴下孔10aから滴下する滴下量以上の塗料を塗料貯留槽10に連続供給することにより、塗料貯留槽10内には一定量の塗料が常時貯留され、貯留されている塗料による液圧力が一定となる。そのため、塗料が滴下孔10aから連続的に、かつ、一定の滴下速度で滴下するようになっている。
【0011】この図示例において塗料供給手段11は、塗料タンク13と、この塗料タンク13内の塗料を塗料貯留槽10に送液するダイヤフラムポンプ14とを備えて構成されている。塗料タンク13とダイヤフラムポンプ14との間にはストレーナ15などの濾過器が設けられ、塗料中の異物がここで除去されるようになっている。また、塗料タンク13には、粘度調整用タンク16が備えられている。この粘度調整用タンク16には、溶剤タンク17と、この溶剤タンク17中の有機溶剤などの溶剤を必要に応じて粘度調整用タンク16に加えて塗料の固形分濃度を調節し、塗料の粘度を自動制御する粘度コントローラ18とが具備され、粘度制御された塗料が塗料タンク13に供給されるようになっている。連続的に固形分濃度を一定にするためには、塗料粘度を常時測定し、自動的に有機溶剤を添加する機能を有する粘度コントローラ18を用いるのが好ましく、塗装設備内の液温を一定に保つことにより制御可能になる。このような粘度コントローラ18としては、塗料粘度上昇に伴いダイヤフラムポンプへの負荷増大が引き起こす、ポンプ脈動数減少をカウントし、脈動数変化に応じて都度塗料を供給して粘度を制御する(株)メイセイ製のMS粘度コントローラなどを例示できる。なお、濾過器にはストレーナ15のかわりにフィルタを使用してしてもよい。
【0012】また、この図示例の塗装装置においては、塗料回収槽12に回収された塗料を塗料供給手段11に送る第1の送液手段が備えられていて、塗料貯留槽10からオーバーフローした塗料を塗料貯留槽10に再供給できるようになっている。この例の第1の送液手段は、塗料回収槽12と粘度調整用タンク16とを接続する配管20で構成されていて、粘度調整用タンク16を塗料回収槽12よりも下方に設けることにより、塗料回収槽12内の塗料をその重力によって粘度調整用タンク16に送液できるようになっている。粘度調整用タンク16に送液された塗料は粘度制御された後、塗料タンク13に送られ、再び塗料貯留槽10へ供給される。なお、第1の送液手段には必要に応じてポンプなどを備えて、強制的に塗料回収槽12内の塗料を粘度調整用タンク16に送液できるようにしてもよい。この場合には、粘度調整用タンク16を塗料回収槽12よりも下方に設けなくてもよい。
【0013】このような塗装装置における塗料貯留槽10と塗料回収槽12の具体的な形態としては、例えば図2に示すように、塗料貯留槽10の外周に塗料回収槽12が設けられた形態を例示できる。塗料貯留槽10の底面の大きさや形状は、被塗装物である基材19の大きさや形状に応じて任意に設定でき、特に制限はない。この例においては、塗料供給手段11からの塗料がノズル11aから吐出され、塗料貯留槽10に供給される。そして、塗料貯留槽10の底面の滴下孔10aから塗料が滴下するとともに、過剰に供給された塗料は塗料貯留槽10の側壁を超えてオーバーフローし、塗料回収槽12に回収される。塗料回収槽12に回収された塗料は第1の送液手段である配管20を通って、粘度調整用タンク16へと送られる。
【0014】塗料貯留槽10と塗料回収槽12の容積は、塗料供給手段11から塗料貯留槽10への塗料供給量、滴下孔10aからの滴下量および第1の送液手段11による塗料回収槽12から塗料供給手段11への送液量とのバランスなどによって決定され、塗料貯留槽10には常時一定量の塗料が貯留され、かつ、塗料回収槽12から塗料が溢れないように設計することが必要である。また、第1の送液手段11が備えられていない場合には、塗料回収槽12から塗料が溢れない範囲でこのシャワーフローコート塗装装置を連続運転し、塗料が溢れる前に一旦停止し、塗料回収槽12から塗料を排出した後、再度運転すればよい。ただし、塗料回収槽12の液面は塗料貯留槽10の液面上限を越えないようにする必要がある。
【0015】ここで、塗料貯留槽10の深さは1〜20cmに形成されていて、塗料貯留槽10における塗料の液深さも1〜20cmの範囲内で一定に維持されるようになっている。このように塗料の液深さを一定に維持することにより、液圧力も一定に維持され、塗料を一定の滴下速度で連続的に滴下することができる。塗料貯留槽10の深さが1cm未満であって塗料の液深さが1cm未満であると、後述する大きさの滴下孔10aが形成されている場合には液圧力が不十分となり、塗料を滴下孔10aから連続的に滴下できない。また、ノズル11aから塗料が供給される際に発生する泡が塗料と共に滴下して基材19に付着し、その結果、塗膜が外観不良となる。一方、塗料貯留槽10の深さが20cmを超えて塗料の液深さも20cmを超えると、液圧力が大き過ぎて滴下する塗料の勢いが強くなり、塗料が基材19の表面で飛散し好ましくない。塗料を一定の滴下速度で連続的に、かつ、基材19の表面で飛散しないように滴下するためには、塗料貯留槽10における塗料の液深さが1〜20cmであることが必要であり、好ましくは3〜10cmである。
【0016】また、滴下孔10aは、孔径が0.5〜5mmであり、塗料貯留槽10の底面1cm2当たり0.05〜2.0個の割合で形成されている。ここで、滴下孔10aの割合は、塗料貯留槽10の底面に形成された滴下孔10aの総数(個数)を塗料貯留槽10の底面積(cm2)で除して求められる。滴下孔10aの孔径が0.5mm未満では、塗料が連続的に滴下しにくく、塗料詰まりも発生し易い。一方、孔径が5mmを超えると、滴下量が大きくなり隣接する複数の滴下孔10aから滴下する塗料が一体化して滴下し、基材19の表面での飛散が大きくなり好ましくない。塗料を一定の滴下速度で連続的に、かつ、基材19の表面で飛散しないように滴下するためには、滴下孔10aの孔径は0.5〜5mmであることが必要であり、好ましくは1〜2mmである。また、滴下孔10aの密度が、底面1cm2当たり0.05個未満では、塗料が基材19の表面に均一に塗布されず塗装斑が起こり易く、また膜厚を均一に制御できない。一方、2.0個を超えると、滴下量が大きくなり隣接する複数の滴下孔10aから滴下する塗料が一体化して滴下し、基材19の表面での飛散が大きくなり好ましくない。滴下孔10aは1cm2当たり0.1〜0.2個形成されることが好ましい。また、滴下孔10aの配列には特に制限はなく、図3に示す縦横均等配列(a)、ちどり状配列(b)、ランダム配列(c)等のどのような配列であってもよい。
【0017】このようなシャワーフローコート塗装装置を使用して、基材19に塗料を塗布する方法を図1を用いて説明する。まず、粘度が制御された塗料を塗料供給手段11から塗料貯留槽10に連続的に供給する。そして、塗料貯留槽10から塗料がオーバーフローし始め、滴下孔10aから滴下される塗料の滴下量が定常状態になった後、被塗布物である基材19を、基材供給手段21によって塗料貯留槽10の下方に配する。その結果、滴下孔10aからの塗料が基材19の表面に塗布される。塗料回収槽12には、塗料貯留槽10に過剰に供給された塗料が回収され、第1の送液手段である配管20を通って、塗料供給手段11の粘度調整用タンク16へ送液される。そして、粘度調整用タンク16において必要に応じて有機溶剤などの塗料の種類に応じた溶剤が添加され、粘度調整された塗料が塗料タンク13に送られ、再び塗料貯留槽10へ供給される。
【0018】この図示例において基材供給手段21は塗料貯留槽10の下方を水平に移動するベルトコンベアであり、基材19をベルトコンベア上に固定治具22で固定して、ベルトコンベアを作動させ、基材19を滴下孔10aの下方に配する。また、ベルトコンベアの速度を調節して、基材19が塗料貯留槽10の下方を通過する速度を調節することによって、基材19への塗料の塗布量を制御できる。例えば基材19を、塗料貯留槽10の下方で一旦停止させて塗布量を大きくしたり、あるいは塗料貯留槽10の下方を水平方向に高速で通過させ塗布量を小さくしたりできる。ただし、形成される膜厚は充分基材に塗布できる量があれば基本的に塗布量には依存せず、塗料粘度、固形分および基材固定の形態(傾斜配置にする等)に依存する。よって、膜厚は、塗料の粘度や固形分を調節するとともに、基材19を固定治具22へ固定する際の基材19の向きなどを調節して決定する。
【0019】また、この図示例の塗装装置においては、基材供給手段21の下方に、滴下孔10aから滴下され、基材19上に塗布されなかった余剰塗料を受けるための余剰塗料槽23が設けられている。そして、この余剰塗料槽23には、この余剰塗料槽23に溜まった余剰塗料を塗料供給手段11に送る第2の送液手段が備えられていて、余剰塗料を再び塗料貯留槽10に供給できるようになっている。この例の第2の送液手段は、余剰塗料槽23と粘度調整用タンク16とを接続する配管24で構成され、粘度調整用タンク16を余剰塗料槽23よりも下方に設けることにより、余剰塗料槽23内の塗料をその重力によって粘度調整用タンク16へ送液できるようになっている。粘度調整用タンク16に送液された余剰塗料はここで粘度制御された後、塗料タンク13に送られ、再び塗料貯留槽10へ供給される。また、第2の送液手段には必要に応じてポンプなどを備えて、強制的に余剰塗料槽23内の塗料を粘度調整用タンク16に送液できるようにしてもよい。この場合には、粘度調整用タンク16を余剰塗料槽23よりも下方に設けなくてもよい。
【0020】このような塗装装置を使用すると、粘度が小さな塗料であっても一定の滴下速度で連続的に、かつ、基材19の表面で飛散しないように滴下できる。よって、塗料を基材19の表面に均一に、塗装斑を起こすことなく塗布でき、基材19が複雑な立体形状である場合にも、その表面に一定の膜厚で外観に優れた塗膜を形成できる。また、塗料貯留槽10からオーバーフローした塗料を塗料回収槽12に回収することができ、塗料のリサイクル性に優れ、環境への負荷を低減することができる。さらに、塗料回収槽12内の塗料を塗料供給手段11に送る配管20などの第1の送液手段を備えることによって、より効率的に塗料をリサイクルできる。また、滴下孔10aから滴下された余剰塗料を受ける余剰塗料槽23を備え、この余剰塗料槽23内の余剰塗料を塗料供給手段11に送る配管24などの第2の送液手段を設けることによって、さらに効率的に塗料をリサイクルできる。
【0021】また、本発明のシャワーフローコート塗装装置における塗料貯留槽10と塗料回収槽12は、図2に例示した形態の他に、図4〜7に示すような形態であってもよい。図4の形態は、底面が四角形である容器26内に堰板25を配置して、この堰板25で容器26を2つに分割し、一方を塗料貯留槽10とし他方を塗料回収槽12とする形態で、図5は底面が楕円形である容器26を使用した形態である。図6は容器26内に堰板25を2枚配置して、容器26を3分割して中央を塗料貯留槽10とし、この塗料貯留槽10の両側を塗料回収槽12としたものである。図4〜6の例においては、使用する堰板25の高さを容器26の側壁よりも低くすることによって、塗料貯留槽10に供給された塗料を堰板25からオーバーフローさせ、塗料回収槽12に回収することができる。また、容器26の底面の形状は、ここで例示した四角形や楕円形の他、基材19の形状に応じて三角形、円形などの任意の形状にすることができるが、特別な場合を除き、底面の形状は四角形または楕円形であると、様々な形状の基材19に対応でき好ましい。
【0022】また、これらの例の場合には、堰板25の高さを1〜20cm、好ましくは3〜10cmに形成して、塗料貯留槽10における塗料の液深さが1〜20cm、好ましくは3〜10cmの範囲内となるようにする。また、堰板25を可動式にして堰板25を設ける位置を移動可能とすることによって、塗料貯留槽10と塗料回収槽11の容積を適宜調整できる。なお、1つの容器26内に堰板25を設けて塗料貯留槽10と塗料回収槽12とを形成する場合、通常、堰板25の枚数は図4〜6で示したように1〜2枚である。
【0023】また、塗料貯留槽10と塗料回収槽12は、図7のように、塗料貯留槽12の側壁に開口部10bが形成され、この開口部10bから塗料がオーバーフローする形態であってもよい。図7の例の場合には、開口部10bを高さ1〜20cm、好ましくは3〜10cmの位置に形成して、塗料貯留槽10における塗料の液深さが1〜20cm、好ましくは3〜10cmの範囲内で一定になるようにする。また、図8に例示したように塗料貯留槽10の外周に塗料回収槽12が設けられ、塗料貯留槽10の側壁が塗料回収槽12の側壁よりも高く形成された形態でもよい。塗料貯留槽10と塗料回収槽12が、図4〜8に示すような形態である場合にも、塗料貯留槽10と塗料回収槽12の大きさは、塗料供給手段11からの塗料供給量および滴下孔10aからの塗料滴下量と、第1の送液手段が備えられている場合には第1の送液手段による塗料供給手段11への塗料送液量とのバランスによって決定される。すなわち、塗料貯留槽10には常に一定量の塗料が貯留され、一定の液圧力で連続的に塗料が滴下し、かつ、塗料回収槽12から塗料が溢れない限り、塗料貯留槽10と塗料回収槽12の形態や大きさには特に制限はない。
【0024】本発明のシャワーフローコート塗装装置で使用される塗料には特に制限はないが、粘度が25℃において、50mPa・s以下である塗料が好ましい。粘度が50mPa・sを超えると塗料の流動性が悪くなり、滴下孔から塗料が連続的に滴下しにくく、また塗着後のレベリング性が悪く、塗膜外観が優れない。本発明の塗装装置を特に架橋硬化性塗料の塗布に使用すると、塗料を薄く塗布でき、薄い硬化膜が形成可能であるため好ましい。
【0025】使用可能な塗料の具体例は、単官能アクリレート、多官能アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等を含む活性エネルギー線硬化性塗料や、コロイダルシリカとオルガノアルコキシシランを成分とする縮合型シリコン系塗料、アクリルポリオールポリマーをブチル化メラミン樹脂で架橋硬化させるメラミン系塗料、アクリルポリオールポリマーを有機イソシアネートで架橋硬化させるウレタン系塗料、アクリルポリマーの酸/エポキシ架橋系塗料が挙げられる。これらの中でも、本発明の塗装装置は、プラスチック成形品表面の保護被膜として好適に使用される活性エネルギー線硬化性塗料を塗布する場合に適し、特に薄い膜厚で塗布する場合に適している。
【0026】また、これらの塗料には有機溶剤などの溶剤を添加して粘度を調整することができる。有機溶剤の種類や使用量は基材や塗料の種類に応じて決定すればよく、特に限定されないが、使用可能な具体例としては、例えば、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤;ヘキサン、シクロヘキサン、等の炭化水素系溶剤、トルエン、キシレン、等の高沸点芳香族溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;エチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸アミル、酢酸メトキシプロピル、酢酸エトキシエチル等のエステル系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、メトキシブタノール、エチルジグリコール等の多価アルコール誘導体系溶剤等が挙げられる。これらは単独で、または複数を混合して使用可能であるが、塗装装置を連続運転する際における塗料の管理が容易であることから使用する溶剤の種類は単独、または多くても3種類以下が望ましい。
【0027】塗料として架橋性塗料が塗布された基材19は、各々の塗料の種類に応じて加熱や活性エネルギ−線の照射により、架橋し、硬化被膜が形成される。活性エネルギ−線照射により硬化させる際には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用いて、100〜400nmの紫外線を照射する。照射する雰囲気は、空気でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよい。
【0028】本発明の塗装装置および塗装方法によれば、プラスチック成形品、金属、木材、ガラス、陶器、無機質材等のあらゆる形状のあらゆる基材19に塗料を均一に塗布できるが、特に、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカ−ボネ−ト樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(ポリエステル)カ−ボネ−ト樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレ−ト樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコ−ルカ−ボネ−ト樹脂などの熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなるプラスチック成形品への塗布に適している。これらのプラスチック成形品に上記したような塗料を適宜塗布し、塗膜を形成することによって、耐摩耗性や耐侯性などの性能をプラスチック成形品に付与することができる。特に、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカ−ボネ−ト樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂は透明性に優れ、このような透明性を維持したまま耐摩耗性を向上させるためには架橋性塗料などの塗料を透明性に悪影響を与えないように薄く塗布することが必要である。よって、本発明の塗装装置および塗装方法の適用が特に有効である。
【0029】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
[製造例]
<活性エネルギー線硬化型塗料の調整>100Lの調合用ステンレスタンクにジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:カヤラッドDPHA、日本化薬社製)15kg、ウレタンアクリレート(商品名:UK−6091、三菱レイヨン(株)製)7.4kg、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.7kg、有機溶剤としてメトキシプロパノール58kgを入れ、室温で良く撹拌して活性エネルギー線硬化型塗料を調整した。なお、この塗料の25℃における粘度は7mPa・sであった。
【0030】[実施例1]
<シャワーフローコート塗装装置を用いた塗装>図1に示すシャワーフローコート塗装装置を使用して、ポリカーボネート成形品の板状テストピースに上記で調製した活性エネルギー線硬化型塗料を塗布した。塗料貯留槽10および塗料回収槽12としては図2に示す形態のものを使用した。ただし、塗料貯留槽10は、側壁高さ10cm、幅30cm、奥行き10cmであり、滴下孔10aは、孔径が2mmであり、塗装貯留槽10の底面1cm2当たり0.15個の割合でちどり状に配列され形成されているものを使用した。尚、塗料貯留槽10の底面積は300cm2、滴下孔10aの数は44個であった。また、塗料回収槽12の側壁の高さは12cmであった。活性エネルギー線硬化型塗料は約15L/分の流量でノズル11aから塗料貯留槽10に供給した。滴下孔10aからの滴下量は、1個の滴下孔10aあたり約200cc/分であった。塗料貯留槽10から雨状に塗料が連続的に滴下していることを目視確認後、ベルトコンベアの固定冶具22に基材19としてポリカーボネート成形品の板状テストピースを固定した。その後、このコンベアを3m/minの速度で動かして滴下孔10aの下方を通過させ、板状テストピースを塗装した。塗装後、板状テストピースから余剰塗料が滴るのが止まった後、これを50℃の温風乾燥機に5分間入れ、有機溶剤分を揮発させた後、空気中で高圧水銀ランプを用い、波長340〜380nmの積算光量が1000mJ/cm2のエネルギーを照射し硬化させて、硬化塗膜が形成されたテストピースを得た。目視で行った外観検査では、硬化塗膜には異常がなく平滑性に優れ、その膜厚は塗装面全域に渡り、6〜10μmであった。
【0031】[実施例2]使用塗料として、熱硬化型シリコン系塗料(商品名:トスガード510、東芝シリコン社製、粘度7mPa・s、25℃)を用い、硬化工程は紫外線照射の代わりに120℃の熱風乾燥機に2時間入れて硬化させた以外は実施例1と同様にしてテストピースを塗装した。目視で行った外観検査では、硬化塗膜には異常がなく平滑性に優れ、その膜厚は塗装面全域に渡り、3〜6μmであった。
【0032】[実施例3]図4に示す塗料貯留槽10と塗料回収槽12を備えた図1の塗装装置を使用した以外は実施例1と同様にしてテストピースを塗装した。なお、図4において容器26の側壁高さは15cmで、堰板25の高さが10cmで、滴下孔10aは、孔径が0.8mmでちどり状に配列され、底面1cm2当たり1個形成されていた。目視で行った外観検査では、硬化塗膜には異常がなく平滑性に優れた塗膜が得られ、その膜厚は塗装面全域に渡り、6〜10μmであった。
【0033】[実施例4]図6に示す塗料貯留槽10と塗料回収槽12を備えた図1の塗装装置を使用した以外は実施例1と同様にしてテストピースを塗装した。なお、図6において容器26の側壁高さは10cmで、堰板25の高さが5cmで、滴下孔10aは、孔径が2.5mmで縦横均等に配列され、底面1cm2当たり0.1個形成されていた。目視で行った外観検査では、硬化塗膜には異常がなく平滑性に優れた塗膜が得られ、その膜厚は塗装面全域に渡り、6〜10μmであった。
【0034】[実施例5]
<粘度コントローラーを使用した長時間運転試験>実施例1に記載の装置(粘度コントローラ18装着済み)と、実施例1と同じ塗料を用いて8時間のランニングテスト(連続運転)を実施した。ランニングテスト中の有機溶剤の揮発による塗料液の物性変化を、液粘度と液比重、及び液屈折率を測定して追跡した。その結果を表1に記す。表1から明らかなように、粘度は常に一定に保持され、その他の物性も初期と同等の性質を示した。粘度コントローラ18を装備することで、塗料のリサイクル性が高まり、連続運転が可能であることが判明した。粘度、屈折率、比重はそれぞれ下記のようにして測定した。
・ 粘度:B型粘度計により、20℃における粘度を測定・ 屈折率:アッベ屈折率計により、20℃における粘度を測定・ 比重:浮き秤により、20℃における粘度を測定【0035】
【表1】

表中、粘度の単位はmPa・sである。
【0036】<長時間の運転試験>実施例1に記載の装置から粘度コントローラ18をはずしたものを使用し、実施例1と同じ塗料を用いて8時間のランニングテスト(連続運転)を実施した。ランニングテスト中の塗料の液物性を測定したところ、表2に示したように、約8時間後には塗料の粘度が7.1mPa・sまで上昇し、その他の液物性も変化した。
【0037】
【表2】

表中、粘度の単位はmPa・sである。
【0038】[比較例1]実施例1と同じ塗装装置と塗料を用いて、約9L/minの流量でノズルから塗料を塗料貯留槽10に供給した。塗料貯留槽10の底面の滴下孔10aからの塗料滴下量は約200cc/minであり、この条件では塗料貯留槽10から塗料はオーバーフローしなかった。この条件以外は実施例1と同じ条件でテストピースを塗装した。目視で行った外観検査では、硬化塗膜に若干の泡が見られ、外観不良であった。その膜厚は塗装面全域に渡り、6〜10μmであった。
【0039】[比較例2]側壁高さが10cmで、滴下孔10aは、孔径が0.3mmでちどり状に配列され、底面1cm2当たり0.3個形成された塗料貯留槽10を使用した以外は実施例1と同じ装置を用いてテストピースを塗装した。目視で行った外観検査では、硬化塗膜は平滑性に劣っており、その膜厚は塗装面全域に渡り、3〜9μmとばらつきが見られた。
【0040】[比較例3]側壁高さが10cmで、滴下孔10aは、孔径が8mmでちどり状に配列され、底面1cm2当たり0.3個形成された塗料貯留槽10を使用した以外は実施例1と同じ装置を用いてテストピースを塗装した。目視で行った外観検査では、硬化塗膜は塗料のタレマークが見られ、平滑性に劣っており、その膜厚は塗装面全域に渡り、9〜15μmとばらつきが見られた。
【0041】[比較例4]側壁高さが10cmで、滴下孔10aは、孔径が1mmでちどり状に配列され、底面1cm2当たり0.02個の塗料貯留槽10を使用した以外は実施例1と同じ装置を用いてテストピースを塗装した。目視で行った外観検査では、硬化塗膜は平滑性に劣っており、その膜厚は塗装面全域に渡り、3〜9μmとばらつきが見られた。
【0042】[比較例5]側壁高さが10cmで、滴下孔10aは、孔径が1mmでちどり状に配列され、底面1cm2当たり3個の塗料貯留槽10を使用した以外は実施例1と同じ装置を用いてテストピースを塗装した。目視で行った外観検査では、硬化塗膜は塗料のタレマークが見られ、平滑性に劣っており、その膜厚は塗装面全域に渡り、9〜15μmとばらつきが見られた。
【0043】[比較例6]側壁高さが10cm、滴下孔10aは、孔径が0.3mmでちどり状に配列され、底面1cm2当たり0.02個の塗料貯留槽10を使用した以外は実施例1と同じ装置を用いてテストピースを塗装した。目視で行った外観検査では、硬化塗膜は平滑性に劣っており、その膜厚は塗装面全域に渡り、3〜6μmとばらつきが見られた。
【0044】[比較例7]側壁高さが10cmで、滴下孔10aは、孔径が0.3mmでちどり状に配列され、底面1cm2当たり3個の塗料貯留槽10を使用した以外は実施例1と同じ装置を用いてテストピースを塗装した。目視で行った外観検査では、硬化塗膜は平滑性に劣っており、その膜厚は塗装面全域に渡り、3〜9μmとばらつきが見られた。
【0045】[比較例8]側壁高さが10cmで、滴下孔10aは、孔径が8.0mmでちどり状に配列され、底面1cm2当たり0.04個の塗料貯留槽10を使用した以外は実施例1と同じ装置を用いてテストピースを塗装した。目視で行った外観検査では、硬化塗膜は平滑性に劣っており、その膜厚は塗装面全域に渡り、3〜12μmとばらつきが見られた。
【0046】[比較例9]側壁高さが10cmで、滴下孔10aは、孔径が8mmでちどり状に配列され、底面1cm2当たり3個の塗料貯留槽10を使用した以外は実施例1と同じ装置を用いてテストピースを塗装した。目視で行った外観検査では、硬化塗膜は平滑性に劣っており、その膜厚は塗装面全域に渡り、9〜15μmとばらつきが見られた。
【0047】このように、本実施例によれば、得られる硬化塗膜は平滑性に優れ、膜厚が均一であった。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように本発明のシャワーフローコート塗装装置および塗装方法によれば、活性エネルギー線硬化型塗料やその他の各種の塗料を、粘度が小さな塗料であっても一定の滴下速度で連続的に、かつ、基材の表面で飛散しないように滴下できる。よって、塗料を基材の表面に均一に、塗装斑を起こすことなく塗布でき、基材が複雑な立体形状である場合にも、その表面に一定の膜厚で外観に優れた塗膜を形成できる。また、塗料貯留槽からオーバーフローした塗料を塗料回収槽に溜めることができ、塗料のリサイクル性に優れ塗着効率、生産性が良好で、環境への負荷を低減することができる。
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【出願日】 平成13年1月18日(2001.1.18)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外6名)
【公開番号】 特開2002−210400(P2002−210400A)
【公開日】 平成14年7月30日(2002.7.30)
【出願番号】 特願2001−10548(P2001−10548)