| 【発明の名称】 |
重質炭化水素油の水素化処理用触媒並びに水素化処理方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】安部 聡
【氏名】日野 彰
【氏名】下分 将史
【氏名】藤田 勝久
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| 【要約】 |
【課題】硫黄、残留炭素、金属、窒素、アスファルテン等の夾雑物を多量に含有する重質の炭化水素油を、セディメントの生成量の低減または抑制に優れる触媒、並びにかかる触媒を使用する水素化処理方法の提供。
【解決手段】多孔質のアルミナ担体に、触媒重量を基準として周期表第6A族金属例えばC2、Mo、Wの酸化物が7〜20重量%及び周期表第8族金属例えばCo、Niの酸化物が0.5〜6重量%の量で担持されてなる触媒であって、当該触媒の(a) 比表面積が100〜180m2/g、及び(b) 全細孔容積が0.55ml/g以上であり、(c)直径が200Å以上の細孔の総容積が50%以上、また、重質炭化水素油を温度350〜450℃、圧力5〜25MPaの条件で水素存在下、前記水素化処理用触媒と接触させることを特徴とする重質炭化水素油の水素化処理方法である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 多孔質のアルミナ担体に、触媒重量を基準として(x)周期表第6A族金属の酸化物が7〜20重量%及び(y)周期表第8族金属の酸化物が0.5〜6重量%の量で担持されてなる触媒であって、当該触媒の(a) 比表面積が100〜180m2/g、及び(b) 全細孔容積が0.55ml/g以上であり、当該全細孔容積を基準として(c1) 直径が200Å以上の細孔の総容積の割合が50%以上、(c2) 直径が2000Å以上の細孔の総容積の割合が10〜30%、(c3) 直径が10000Å以上の細孔の総容積の割合が 0〜1%、であることを特徴とする重質炭化水素油の水素化処理用触媒。 【請求項2】 周期表第6A族金属がクロム、モリブデン及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であり、周期表第8族金属が鉄、コバルト、ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である請求項1記載の重質炭化水素油の水素化処理用触媒。 【請求項3】 重質炭化水素油を温度350〜450℃、圧力5〜25MPaの条件で水素存在下、請求項1記載の水素化処理用触媒と接触させることを特徴とする重質炭化水素油の水素化処理方法。 【請求項4】 重質炭化水素油を沸騰床の様態で請求項1記載の水素化処理触媒と接触させる請求項3記載の水素化処理方法 |
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、炭化水素油の水素化処理用触媒並びに水素化処理方法、特に炭化水素油の中でも重質な留分である減圧残渣油の処理において高性能を発揮する触媒並びに方法に関する。本発明は、詳しくは、硫黄、金属、アスファルテン等の夾雑物(不純物)を多量に含有する炭化水素油、特に減圧残渣油(Vacuum Residue ;「VR」)を水素化処理して、水素化脱硫(HDS)、水素化脱金属(HDM)及び水素化脱アスファルテン(Asphaltene removal)を適度に進めながら、且つ水素化処理装置の運転時に熱交換器に堆積して運転の障害となるセディメントの生成を十分に抑制する水素化処理用触媒、並びに当該触媒を使用する重質炭化水素油の水素化処理方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】石油精製時に生じる、例えば538℃以上の沸点を有する成分を50重量%以上含むような常圧残渣油 (Atmospheric residue;「AR」)や90重量%以上含む減圧残渣油(VR)は重質炭化水素油と呼ばれている。近年、このような重質炭化水素油を水素化処理して硫黄等の夾雑物の除去し、より経済性の高い軽質油への転換を行って利用に供されている。 【0003】水素化処理によって除去される対象の夾雑物として硫黄、残留炭素(ConradsonCarbon Residue ;「CCR」)、各種金属、窒素、アスファルテンが挙げられるが、近年、触媒などの改良によってこうした夾雑物を高度に除去できるようになっている。しかし、アスファルテンは縮合芳香族化合物の集合体であり、周囲の溶剤成分とバランス良く解け合っているので過度にアスファルテンを分解した場合、凝集して粒子状物質(スラッジ; sludge)や堆積物(セディメント; sediment )が生成する。 【0004】かかるセディメントとは、詳しくはShell Hot Filteration Solid Test(SHFST)に従って試料を試験することで測定される沈殿物であり(van Kerknoortらの文献、J.Inst.pet. 37 p.596-604(1951)参照)、通常の含有量は、精製工程中のフラッシュドラム缶出液から回収される沸点が340℃以上の生成物中において約0.19〜1重量%程度であると言われている。セディメントは、石油精製時に熱交換器や反応器等の装置に沈殿して堆積するので、流路を閉塞させ装置の運転に大きな支障をきたすおそれがある。特に減圧残渣油を多く含む、より重質な重質炭化水素油の水素化処理においては、セディメントの生成がより顕著となるため、このような油種を対象として高度な水素化処理を達成しつつ、同時にセディメントの生成をできるだけ少なくすることが水素化処理用触媒並びに水素化処理方法の改良において新たな課題となっている。 【0005】特開平6−88081号公報には、特定の細孔径分布を有する触媒を用いた重質炭化水素油の水素化転化方法が開示されている。この方法では、第VIII族金属酸化物3〜6重量%、第VIB族金属酸化物4.5〜24重量%、リン酸化物0〜6重量%を担持した多孔質アルミナ担体からなる触媒で、比表面積が165〜230m2/g、全細孔容積が0.5〜0.8ml/g、細孔径分布が80Å未満の細孔の割合が5%未満で、細孔径が100〜135±20Å(ここで本明細書において記号「Å」はオングストロームを表し1Å=10-10mである)の細孔容積の割合が250Å未満の細孔の容積に対し65〜70%であり、250Åを超える直径の細孔が全細孔容積に対し22〜29%である触媒が使用されている。しかし、この方法では、水素化処理によって高度な脱硫や脱残留炭素を達成できるがセディメント生成量の低減までは解決されておらず、実運転で重質油を処理する場合の問題が残されている。 【0006】特開平6−200261号公報には、重質油の水素化転換法及びそれに用いる触媒について開示されている。この技術では、多孔質アルミナに第VIII族金属酸化物を2.2〜6重量%、第VIB族金属酸化物を7〜24重量%含有し、比表面積で150〜240m2/g、全細孔容積0.7〜0.98ml/gを有し、並びに細孔径分布として100Å未満の直径の細孔を20%未満、100〜200Åの直径の細孔を少なくとも34%以上、200Åを越える直径の細孔を26〜46%含む細孔径分布を示す触媒が提案されている。しかしながら、本発明者らの研究によれば、直径200Å以上の細孔容積が大きいほどアスファルテンの分解を高くできる事によりセディメント生成の低減効果が大きいことが確認されており、従って200Å以上の細孔容積割合が低い本特許公報の触媒では十分なセディメント低減が期待できないと推測される。 【0007】また、特公平02−48485号公報には、触媒用のアルミナ担体の製造方法が記載されている。該公報により調製されるアルミナ担体は、500Å以下の直径の細孔を0.6〜0.85ml/g、1000Å〜10000Åの直径の細孔を0.1〜0.3ml/g有し、且つ500Å以下の範囲の細孔モード径が90〜210Åであり、細孔径分布に関しU値と呼ばれるD50/(D95−D5)で計算される値が0.55以上であるような担体が開示されている。しかしながら該公報による担体では1000Å以上の細孔の容積割合が必要以上に高いため、このような担体を重質油の水素化処理に用いた場合、安定した脱硫性能を維持することが困難であると推測される。 【0008】米国特許第 4395329号公報には、重質油の水素化処理触媒で特定の細孔分布を有する触媒が記載されている。特定の細孔分布を有すると耐メタル、耐コーク性が向上し、より長期間の運転が可能と説明されている。しかしながら実施例では球状触媒での比較で行われているため、この細孔径分布で成型物とすると、マクロ孔が大きすぎる(直径10000Åを超える細孔容積の割合が10〜25%)ため、触媒強度が十分でなく、触媒の商業使用が困難と予想される。また、運転上問題となるセディメントに関して触れておらず、その低減効果は明確になっていない。 【0009】さらに、米国特許第5322829号公報には、半径125Å以下の細孔容積が0.4cc/g以上の担体にニッケル、モリブデン等を担持した重質油の水素化処理触媒、および該触媒を用いた水素化処理方法が開示されている。しかしながら該公報記載の方法で使用される担体を用いた触媒は、直径200Å以上の細孔の総容積割合が50%に満たないと予想されるため、超重質留分の細孔内拡散には不利である。従って、かかる担体を用いた触媒では、超重質留分を多量に含む減圧残渣油を十分に水素化処理することはできない。 【0010】以上のように、これまでの先行技術では、重質油の水素化処理を目的として、水素化活性成分を含み、100〜200Å程度の細孔とそれ以上の細孔を組み合わせた構造を有する触媒が提案されている。この結果、重質油の水素化処理触媒に求められる水素化活性や触媒強度についてはある程度の改善がなされているものの、本発明の目的である商業使用に耐えうる強度を有することは勿論、重質油、特に重質な減圧残渣油の高度な水素化処理とセディメント生成の抑制を兼ね備えた性能を持つ触媒を提供するには至っていない。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、硫黄、残留炭素、金属、窒素、アスファルテン等の夾雑物を多量に含有する重質の炭化水素油、特に重質な減圧残渣油を多量に含む重質油を高度に水素化処理して適度に除去しながら、セディメントの生成量の低減または抑制に優れる触媒の提供、並びにかかる触媒を使用する接触的水素化処理方法を提供することを目的とする。特に、上述した従来技術では十分な解決がなされていない、アスファルテンの高度な分解除去、転化率の増加に随伴して起こるセディメントの低減に優れた触媒の提供などを課題としている。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の比表面積、細孔容積及び細孔径分布を有する触媒が炭化水素油、特に重質な減圧残渣油中の夾雑物の低減、脱金属と脱アスファルテンを効率的に達成し、さらにセディメントの生成を低減、抑制できるとの知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。 【0013】すなわち、本発明の水素化処理用触媒は、多孔質のアルミナ担体に、触媒重量を基準として(x)周期表第6A族金属の酸化物が7〜20重量%及び(y)周期表第8族金属の酸化物が0.5〜6重量%の量で担持されてなる触媒であって、当該触媒の(a) 比表面積が100〜180m2/g、及び(b) 全細孔容積が0.55ml/g以上であり、当該全細孔容積を基準として(c1) 直径が200Å以上の細孔の総容積の割合が50%以上、(c2) 直径が2000Å以上の細孔の総容積の割合が10〜30%、(c3) 直径が10000Å以上の細孔の総容積の割合が 0〜1%、であることを特徴とする重質炭化水素油の水素化処理用触媒である。さらに上記触媒において周期表第6A族金属がクロム、モリブデン及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であり、周期表第8族金属が鉄、コバルト、ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする。 【0014】また、本発明の水素化処理方法は、重質炭化水素油を温度350〜450℃、圧力5〜25MPaの条件で水素存在下、上記の水素化処理用触媒と接触させることを特徴とする重質炭化水素油の水素化処理方法である。さらに、当該水素化処理方法において重質炭化水素油を沸騰床の様態で上記の水素化処理触媒と接触させることを特徴とする。 【0015】 【発明の実施の形態】〔I〕触 媒本発明における触媒は、水素化活性を有する金属酸化物である触媒物質と、当該触媒物質を担持する担体とから構成される。本発明における触媒物質に使用される金属成分は、周期表(例えば、「岩波理化学辞典 第4版」、岩波書店(1987年発行)の見返し掲載の「元素の周期表長周期型」を参照)の第6A族金属及び第8族金属の酸化物の2成分からなる金属成分組成物である。なお、かかる第6A族と第8族は、18族長周期型周期表(IUPAC方式)の第6族と第8〜10族にそれぞれ対応する。 【0016】本発明で使用される第6A族金属としては、クロム、モリブデン、タングステンから選ばれる少なくとも1種であるが、性能及び経済性の観点からモリブデンが好ましい。また、第8族金属としては鉄、コバルト、ニッケルから選ばれる少なくとも1種であるが、性能及び経済性の観点から水素化活性の高い鉄、コバルト、ニッケルまたはこれらの組み合わせが好ましく、中でもニッケルが好ましい。 【0017】完成後の触媒の重量を基準(100重量%)とした場合における上記の各金属酸化物の担持量は次の通りである。すなわち、第6A族金属酸化物は7〜20重量%であり、8〜16重量%が好ましい。かかる金属酸化物が7重量%未満では触媒性能の発現が不十分となり、一方、20重量%を越えても触媒性能の増分はない。一方、第8族金属酸化物は0.5〜6重量%であり、1〜5重量%が好ましい。0.5重量%未満では触媒性能の発現が不十分となり、一方6重量%を越えても触媒性能の増分はない。 【0018】次に触媒を構成する担体について説明する。担体は、細孔を多数有するいわゆる多孔質アルミナであり、通常の工業的に生成される方法で得ることができる。その代表的な製造方法として、アルミン酸ソーダ(アルミン酸ナトリウム)と硫酸アルミニウムの共沈法が挙げられる。こうして得られるゲル(擬ベーマイト)を、成形し、乾燥し、さらに焼成してアルミナ担体を得ることができる。なお、本発明におけるアルミナ担体はアルミナのみを原材料とするものが好ましいが、触媒の物理的強度改良の目的並びに担体の酸性質改善の目的から完成後の触媒基準で5重量%未満の少量のケイ素、チタン、ジルコニウム、ホウ素、亜鉛、リン、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物や、ゼオライト、粘土鉱物などから選ばれる少なくとも1種を担体中に含有させることができる。 【0019】担体の具体的な製造方法は以下のとおりである。まず、水道水または温水を蓄えたタンクに、アルミン酸ソーダ、水酸化アンモニウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を入れ、次いで硫酸アルミニウムや硝酸アルミニウム等の酸性アルミニウム溶液を用いて加混合を行う。混合溶液中の水素イオン濃度(pH)は、反応が進むにつれて変化するが、酸性アルミニウム溶液の添加が終了する時のpHが7〜9、混合時の温度は70〜85℃であることが好ましい。特に本発明で得られる細孔を有するために好ましい混合時温度は76〜83℃の範囲である。また適当な大きさの細孔を得るために保持時間は約 0.5〜1.5時間、特に40〜80分間が好ましい。かかる加混合の諸条件を適宜調整することで所望のアルミナ水和物のゲルを得ることができる。 【0020】次に、得られたアルミナ水和物のゲルを溶液から分離した後、工業的に広く用いられている洗浄方法、例えば水道水や温水を用いて洗浄処理を行い、ゲル中の不純物を除去する。次に、混練機を用いてゲルの成形性を向上させた後、成型機にて所望の形状に成形する。金属成分を担持する前に、所望の形状に成形しておくことが好ましく、直径が0.9〜1mm、例えば0.95mm、長さが2.5〜10mm、例えば3.5mmの円柱形状の粒子が好適である。 【0021】最後に、成形されたアルミナ成型物に乾燥及び焼成処理を施す。乾燥条件は、空気存在下で常温から200℃の温度で、また焼成条件は、空気存在下で300〜950℃、好ましくは600〜900℃の温度条件、30分間から2時間程度で行う。また焼成処理時には水蒸気を導入して、アルミナ粒子結晶の成長をコントロールすることもできる。上記の製造方法によって、後述する完成触媒の比表面積や細孔分布とほぼ一致する性状を備えたアルミナ担体を得ることができる。なお、前述の混練し成形する工程において、成形助剤として酸、例えば硝酸、酢酸、蟻酸を添加し、あるいは水を添加してアルミナゲル中の水分量を調整することにより、細孔分布の調整を適宜行うこともできる。 【0022】触媒物質の金属成分を担持する前のアルミナ担体の比表面積は、完成後の触媒において特定範囲の比表面積や細孔分布をもたらすために100〜180m2/g、特に130〜170m2/gが好ましく、また全細孔容積が0.55ml/g以上、特に0.6〜0.9ml/gが好ましい。ここで全細孔容積とは単位重量の触媒に含まれる細孔空間の総和である。 【0023】本発明の触媒は以下に述べる方法で製造され完成する。前記の触媒物質用の各種金属成分はアルカリ性または酸性の金属塩とし、この金属塩を水に溶解した浸漬液に上記アルミナ担体を浸漬し担持させる。この場合、周期表第6A族と第8族の金属塩2種からなる混合水溶液に浸漬して同時に担持させても良いし、あるいは個別に金属塩水溶液を調製して別々に浸漬して担持させても良い。また、浸漬液の安定化のために少量のアンモニア水、過酸化水素水、グルコン酸、洒石酸、クエン酸、リンゴ酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等を添加することが好ましい。 【0024】金属水溶液の第8族金属は、通常、水溶性の炭酸塩または硝酸塩を使用し、例えば硝酸ニッケルの10〜40重量%水溶液であり、好ましくは 25重量%水溶液が使用される。また、第6A族金属は水溶性のアンモニウム塩を使用し、例えばモリブデン酸アンモニウムの10〜25重量%水溶液であり、好ましくは15重量%水溶液が使用される。30〜60分間程度の時間、担体を金属塩水溶液に浸漬した後、空気気流下で常温〜200℃の温度で0.5〜16時間程度、乾燥を行い、次いで空気気流下で200〜800℃、好ましくは450〜650℃の加熱条件で1〜3時間程度、焼成(か焼)を行って各金属酸化物が担持された触媒が完成する。 【0025】上述の製法によって完成した細孔を多数有する多孔質触媒が、減圧残渣油を多量に含む重質炭化水素油の水素化処理において所望の目的を達成するためには以下の比表面積や細孔分布を有することが重要である。触媒の比表面積は100〜180m2/g以上、好ましくは130〜170m2/gである。比表面積が100m2/g未満では触媒性能が不十分となり、一方180m2/gを越えると所望の細孔径分布が得られないことが多く、また添加物により所望の細孔径分布のものが得られたとしても、比表面積が高いことにより水添活性が高くなりセディメント生成の増加をきたす。ここで比表面積は窒素(N2)吸着によるBET式で求められる比表面積である。 【0026】さらに、水銀圧入法で測定される全細孔容積は0.55ml/g以上、好ましくは0.6〜0.9ml/gである。0.55ml/g未満では触媒性能が不十分となる。ここで、水銀圧入法による細孔容積および細孔分布とは、例えばマイクロメリティクス(Micromeritics)社製の水銀多孔度測定機器「オートポア(Auto pore)II」(商品名)を使用し接触角140°、表面張力480dyne/cmの条件下で測定して得られる値である。 【0027】さらに、直径が200Å以上の細孔の総容積の割合が、前記の水銀圧入法で測定される全細孔容積を基準としてその50%以上、好ましくは60〜80%の範囲である。直径が200Å以上の細孔の総容積の割合が全細孔容積の50%未満では、触媒性能、特にアスファルテン分解性能の低下を招き、セディメント生成の抑制が十分でない。なお、金属酸化物が担持される前の担体においては、該細孔の総容積割合は全細孔容積の43%以上、好ましくは45〜70%の範囲である。 【0028】ここで細孔の直径が200Å以上の細孔の総容積とは、例えば前記水銀多孔度測定機器「オートポア(Auto pore)II」(商品名)で測定した直径値が200Å以上となる細孔の容積の総和をいう。なお、後述する直径がそれぞれ2000Å、10000Å、100Åの細孔に関しても細孔径の測定方法や「細孔の総容積」の定義はかかる200Åの細孔の場合と同様である。 【0029】さらに、直径が2000Å以上の細孔の総容積の割合が、前記全細孔容積を基準としてその10%以上、好ましくは10〜30% である。かかる割合が10%未満では脱アスファルテン性能の急激な低下を招き、残存アスファルテンの相溶性が低下し、凝集が起こることでセディメントの生成が多くなる。30%以上では触媒の機械強度が極端に低くなってもろくなり、商業使用において十分耐えることができない。 【0030】また、特に減圧残渣油の多い原料油を処理する場合、直径が100〜1200Åの細孔の総容積の前記全細孔容積を基準とした割合は、82%以下、特に80%以下とすることが好ましい。かかる割合が82%を超えた場合、2000Å以上の細孔の総容積の割合が相対的に減少し、超重質留分の触媒細孔内拡散が不十分となることで減圧残渣油留分の分解率の低下を招きやすくなるからである。なお、直径が500〜1500Åの細孔容積は、0.2ml/g未満が好ましい。0.2ml/gを超えた場合、脱硫、脱金属反応に有効な直径300Å以下の細孔が相対的に減少することで、触媒性能が低下しやすくなるからである。さらに、直径300Å以下の細孔が超重質成分で閉塞されやすくなることから触媒寿命の短命化も懸念されるからである。 【0031】さらに、上記の条件に加えて、直径が10000Å以上の細孔の総容積の割合が、前記全細孔容積を基準としてその0〜1%とすることにより、脱硫や水素化活性、特に減圧残渣油留分の分解率の極端な低下を防ぐことが可能となる。直径が10000Å以上の細孔の総容積の割合が全細孔容積の1%を越える場合には、触媒の物理的強度が低下することで商業使用上の問題となり、さらに性能的には分解率の低下や、脱硫の急激な低下を招くので好ましくない。さらに細孔分布として直径が100Å以下の細孔の総容積の割合が全細孔容積を基準としてその25%以下が好ましい。25%を超える場合には、アスファルテン以外の成分への水添が高度に進み、セディメントの生成が増える傾向がある。 【0032】〔II〕水素化処理方法本発明の水素化処理の対象とされる重質の炭化水素油は、石油系残渣油、溶剤脱瀝油、石炭液化油、頁岩油、タールサンド油等であるが、典型的には常圧残渣油(AR)や減圧残渣油(VR)やこれらの混合油、とくに減圧残渣油である。特に、538℃以上で沸騰する減圧残渣油留分を80重量%以上、硫黄を3重量%以上、残留炭素を10重量%以上、その他高濃度で金属が存在するといった多量の夾雑物を含む重質油が、本発明の水素化処理の対象として好適であり、上記触媒を使用することでセディメント生成の低減、夾雑物の除去や軽質油への転換を行うことができる。 【0033】水素化処理における反応装置は、固定床、移動床あるいは沸騰床を備えた一般的なものを使用できるが、反応器内の温度を均一に保持できる沸騰床の様態で水素化処理を行うことが好ましい。具体的には、直径0.9〜1.0mmで長さ3.5mmの円柱形状の触媒を反応装置に充填、装入し、炭化水素油を液相中、全液空間速度(LHSV)0.1〜3h-1、好ましくは0.3〜2.0h-1で導入し、一方、水素は炭化水素油との流量比(H2/Oil) 300〜1500NL/L、好ましくは600〜1000NL/Lで導入し、圧力5〜25MPa、好ましくは14〜19MPa、温度350〜450℃、好ましくは400〜440℃の条件で反応させる。なお、本発明における水素化処理方法では、上述した本発明の触媒を単独で、或いは市販の他の性状の重質油水素化処理用触媒と併せて反応器に充填、装入して用いることができる。併用する場合は他の重質油水素化処理用触媒は50容量%未満とすることが望ましい。 【0034】 【実施例】以下に示す実施例によって、本発明を更に具体的に説明する。ただし、下記実施例は本発明を限定するものではない。 【0035】〔A〕触媒の製造〔実施例1〕 ■担体の製造水道水を貯えたタンクに、アルミン酸ソーダ溶液、硫酸アルミニウム溶液を同時滴下し加混合を行った。混合時のpHを8.5、温度を80℃、保持時間は70分とした。かかる加混合によってアルミナ水和物のゲルが生じた。前記工程で得られたアルミナ水和物のゲルを溶液から分離した後、温水を用いて洗浄処理を行い、ゲル中の不純物を除去した。次いで、混練機を用いて20分ほど混練してゲルの成形性を向上させた後、成型機にて直径0.9〜1mm、長さが3.5mmの円柱形状の粒子に押し出し成形した。最後に、成形したアルミナゲルを空気存在下120℃で16時間かけて乾燥した後、800℃で2時間焼成してアルミナ担体を得た。 【0036】■触媒の製造モリブデン酸アンモニウム四水和物 17.5g、硝酸ニッケル六水和物 9.8gを添加したクエン酸溶液100mlに上記のアルミナ担体100gを25℃、45分間浸漬し、金属成分担持担体を得た。次いで担持担体を、乾燥機を使用して120℃で30分間乾燥した後、620℃で1.5時間、キルンでか焼して触媒を完成させた。製造した実施例1の触媒中の各成分の量及び性状は下記の表1に示す通りである。 【0037】〔実施例2〕 ■担体の製造水道水を貯えたタンクに、アルミン酸ソーダ溶液、硫酸アルミニウム溶液を同時滴下し加混合を行った。混合時のpHを8.5、温度を77℃、保持時間は70分とした。かかる加混合によってアルミナ水和物のゲルが生じた。前記工程で得られたアルミナ水和物のゲルを溶液から分離した後、温水を用いて洗浄処理を行い、ゲル中の不純物を除去した。次いで、混練機を用いて20分ほど混練してゲルの成形性を向上させた後、成型機にて直径0.9〜1mm、長さが3.5mmの円柱形状の粒子に押し出し成形した。最後に、成形したアルミナゲルを実施例1と同様の乾燥、焼成を行い、アルミナ担体を得た。 【0038】■触媒の製造モリブデン酸アンモニウム四水和物 17.3g、硝酸ニッケル六水和物 9.6gを添加したクエン酸溶液100mlに上記のアルミナ担体100gを25℃、45分間浸漬し、金属成分担持担体を得た。次いで担持担体を、乾燥機を使用して120℃で30分間乾燥した後、620℃で1.5時間、キルンでか焼して触媒を完成させた。製造した実施例2の触媒中の各成分の量及び性状は下記の表1に示す通りである。 【0039】〔比較例1〕 ■担体の製造実施例1の工程■において、アルミナ水和物のゲルが生じた後に、シリカ源の水ガラス(ケイ酸ソーダ=ケイ酸ナトリウム)を混合した。この時のアルミナゲル水溶液中のケイ酸ソーダ濃度を1.62重量%に設定した。実施例1と同様の成形、乾燥、焼成を行い、シリカ−アルミナ担体を得た。得られた担体中のシリカ含有量は7重量%であった。 【0040】■触媒の製造モリブデン酸アンモニウム四水和物 16.4g、硝酸ニッケル六水和物 9.8gを添加したクエン酸水溶液100mlにシリカ−アルミナ担体100gを25℃、45分間浸漬し、金属成分担持担体を得た。次いでこの担体を、乾燥機を使用して120℃で30分間乾燥した後、600℃で1.5時間キルンでか焼して触媒を完成させた。製造した比較例1の触媒中の各成分の量及び性状は下記の表1に示す通りである。 【0041】〔比較例 2〕 ■担体の製造水道水を張ったタンクに、硫酸アルミニウム、アルミン酸ソーダ溶液を同時滴下し加混合を行った。混合時の温度は77℃とし、滴下時pHを7.5とした後、最終pHを9.5とするまで更にアルミン酸ソーダを加えた。保持時間は70分間である。得られたアルミナゲルを実施例1と同様の成形、乾燥、焼成を行い、アルミナ担体を得た。 【0042】■触媒の製造モリブデン酸アンモニウム四水和物 17.2g、硝酸ニッケル六水和物 9.8gを添加したクエン酸水溶液100mlにアルミナ担体100gを25℃、45分間浸漬し、比較例1と同様の条件で乾燥並びに焼成を行い、触媒を得た。製造した比較例2の触媒中の各成分の量及び性状は下記の表1に示す通りである。 【0043】〔比較例 3〕 ■担体の製造水道水を張ったタンクに、硫酸アルミニウムを加えておき、硫酸アルミニウム、アルミン酸ソーダ溶液を同時滴下し、滴下時pH7.8で加混合を行った。混合時の温度は65℃でアルミナゲルを得た。保持時間は実施例1と同じ70分間とした。不純物除去後、比較例1と同様の成型、乾燥、焼成を行いアルミナ担体を得た。 【0044】■触媒の製造モリブデン酸アンモニウム四水和物 17.2g、硝酸ニッケル六水和物9.8gにアンモニア水50mlを加え溶解し100mlにし、アルミナ担体100gを25℃、45分間浸漬し、金属成分担持担体を得た。次いで担持担体を、乾燥機を使用して120℃で30分間乾燥した後、600℃で1.5時間キルンでか焼して触媒を完成させた。製造した比較例3の触媒中の各成分の量及び性状は下記の表1に示す通りである。 【0045】〔比較例4〕 ■担体の製造大きな細孔を有する担体を得るため次の方法で製造した。比較例2の工程■で得られた担体を粉砕し、再度比較例2の工程■のアルミナゲルと混練後、実施例1と同様の成形、乾燥、焼成を行い、所望の細孔径分布となるような触媒担体を得た。 【0046】■触媒の製造モリブデン酸アンモニウム四水和物 17.2g、硝酸ニッケル六水和物 9.5gを添加したクエン酸水溶液100mlにアルミナ担体100gを25℃、45分間浸漬し、比較例1と同様の条件で乾燥並びに焼成を行い、触媒を得た。製造した比較例4の触媒中の各成分の量及び性状は下記の表1に示す通りである。 【0047】〔比較例 5 〕 ■担体の製造水道水を貯えたタンクに、アルミン酸ソーダ溶液、硫酸アルミニウム溶液を同時滴下し加混合を行った。混合時のpHを8.5、温度を65℃、保持時間は70分とした。かかる加混合によってアルミナ水和物のゲルが生じた。 【0048】前記工程で得られたアルミナ水和物のゲルを溶液から分離した後、温水を用いて洗浄処理を行い、ゲル中の不純物を除去した。次いで、混練機を用いて20分ほど混練してゲルの成形性を向上させた後、成型機にて直径0.9〜1mm、長さが3.5mmの円柱形状の粒子に押し出し成形した。最後に、成形したアルミナゲルを空気存在下120℃で16時間かけて乾燥した後、900℃で2時間焼成してアルミナ担体を得た。 【0049】■触媒の製造モリブデン酸アンモニウム四水和物 16.4g、硝酸ニッケル六水和物 9.8gを添加したクエン酸溶液100mlに上記のアルミナ担体100gを25℃、45分間浸漬し、金属成分担持担体を得た。次いで担持担体を、乾燥機を使用して120℃で30分間乾燥した後、600℃で1.5時間、キルンでか焼して触媒を完成させた。製造した比較例5の触媒中の各成分の量及び性状は下記の表1に示す通りである。 【0050】 【表1】
【0051】〔B〕水素化処理(I) 水素化処理を行う重質の炭化水素油として、下記の表2に記載された性状の中東系(クウェート)系石油を分留して得られた常圧残渣油(AR) 50重量%と減圧残渣油(VR) 50重量%からなる原料油を使用した。この原料油は538℃を越える沸点を有する留分を約75重量%含有し、硫黄含有量が約4.8重量%、全窒素含有量が約2900重量ppm、バナジウム含有量が85重量ppm及びニッケル含有量が26重量ppm、ノルマルヘプタン不溶解分で示されるアスファルテン分を6重量%含有するものである。 【0052】 【表2】
【0053】上記実施例1、比較例1〜5で製造した触媒それぞれについて水素化処理を行った。まず触媒を、固定床を備えた流通式小型反応装置に充填した。表2に記載した性状の原料油を液相中、16.0MPaで、全液空間速度(LiquidHourly Space Velocity : LHSV) 1.5h-1及び平均温度 427℃で、供給する水素と原料油の比(H2/Oil)を800NL/Lとして固定床に導入し、生成油を得た。生成油を捕集し分析して水素化によって脱離された硫黄(Sulfur)、金属(バナジウム+ニッケル)及びアスファルテン(Asp.)量を算出し、下記計算式に基づいて比活性(Relative Volume Activity; RVA)を求め、表3に示した。比活性(RVA)は、比較例1の触媒の水素化脱硫(HDS)、水素化脱金属(HDM)、及び水素化脱アスファルテン(HDAsp.)の反応速度定数と各触媒の比である。 【0054】 【数1】
【0055】上記式中、kは反応速度定数rは反応次数xは原料油中の硫黄、金属またはアスファルテンの含量yは生成油中の硫黄、金属またはアスファルテンの含量なお、lnは自然対数の表記である。 【0056】 【表3】
【0057】〔C〕水素化処理(II) 表4に通油した原料油の性状を示した。この原料油は538℃を越える沸点を有する留分を約90重量%含有し、硫黄含有量が約3.9重量%、全窒素含有量が約3300重量ppm、バナジウム含有量が109重量ppm及びニッケル含有量が46重量ppm、ノルマルヘプタン不溶解分で示されるアスファルテン分を約8重量%含有するものである。 【0058】 【表4】
【0059】上記実施例1、実施例2及び比較例5で調製した触媒それぞれについて水素化処理を行った。触媒は固定床を備えた流通式小型反応装置に充填した。表4に記載した性状の原料油を液相中、16.0MPaで、全液空間速度(LiquidHourly Space Velocity : LHSV) 1.5h-1及び平均温度427℃で、供給する水素と原料油の比(H2/Oil)を800NL/Lとして固定床に導入し、生成油を得た。 【0060】 【表5】
【0061】表2のような減圧圧残油留分の割合が80重量%以下の重質油による性能比較を行なうと、表3に示すように比較例1を基準とした場合、本発明の実施例1、2は、水素化脱硫性能はやや低いものの、脱金属及び脱アスファルテン性能に優れ、運転中に問題となるセディメントの低減が達成されている。また、比較例5は実施例1、2と同等以上の性能を示している。一方、比較例2、比較例3ではセディメント低減性能が十分でなく、比較例4では一定条件下で残油留分分解率、水素化脱硫性能が低く、製品油の品質に影響を及ぼすことが懸念される。次に、減圧残渣油留分割合が80重量%を超える表4のような重質原料油での比較においては、比較例5を基準とすると、実施例1及び2は、より高い脱金属性能を発揮し、セディメント生成の抑制も顕著であった。 【0062】 【発明の効果】以上述べたように、本発明はアルミナ担体を使用し、触媒物質として周期表第6A族金属酸化物と第8族金属酸化物を担持させ、且つ特定の比表面積と細孔径分布を有する多孔質触媒とすることによって次のような効果を発揮する。 (1)硫黄、金属、アスファルテン等の夾雑物を多量に含有する重質の炭化水素油から、特に金属、アスファルテンを高度に除去することができる。 (2)経済的付加価値の高い軽質油、例えば538℃未満で沸騰する炭化水素油を効率的に生成できる。 (3)特に減圧残渣油留分を多量に含む重質油を通油しながら高分解運転を行う際に生成し、沈殿物として石油精製装置に支障をきたすセディメントの生成量を高度に低減することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】594169123 【氏名又は名称】日本ケッチェン株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年6月8日(2001.6.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091731 【弁理士】 【氏名又は名称】高木 千嘉 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−361100(P2002−361100A) |
| 【公開日】 |
平成14年12月17日(2002.12.17) |
| 【出願番号】 |
特願2001−174071(P2001−174071) |
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