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【発明の名称】 排ガス浄化用触媒
【発明者】 【氏名】渡邊 哲也

【要約】 【課題】排ガス浄化用触媒において、触媒層に添加された吸蔵剤の移動を高温下においても抑制し、触媒の熱耐久後の浄化能力の低下を防止する。

【解決手段】触媒は、担体(10)に担持された触媒層(20)を有し、触媒層には貴金属及び吸蔵剤が添加されると共に複合酸化物が混入されている。複合酸化物は、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)およびマンガン(Mn)の少なくとも一つと珪素(Si)とからなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 担体と触媒層とを含み、前記触媒層にアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一つを吸蔵剤として添加してなる排ガス浄化用触媒において、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)からなる遷移金属の群から選択される少なくとも一つの金属と珪素(Si)とからなる複合酸化物を上記触媒層に混入したことを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】 上記触媒層の上層に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一つを吸蔵剤として添加してなる第2触媒層を形成したことを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】 上記触媒層と担体との間にアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一つを吸蔵剤として添加してなる第2触媒層を形成したことを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】 上記触媒層の上層および上記触媒層と上記担体との間の少なくとも一方に三元触媒層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】 担体と触媒層とを含み、前記触媒層にアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一つを吸蔵剤として添加してなる排ガス浄化用触媒において、上記触媒層の上層および上記触媒層と上記担体との間の少なくとも一方に、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)からなる遷移金属の群から選択される少なくとも一つの金属と珪素(Si)とからなる複合酸化物を含む吸蔵剤移動抑制層を設けたことを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項6】 上記複合酸化物として珪酸ジルコニウム(ZrSiO4)を用いたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、排ガス浄化用触媒に関し、特に、耐久性および排ガス浄化性能に優れた排ガス浄化用触媒に関する。
【0002】
【関連する背景技術】リーンバーンエンジンや筒内噴射式エンジン等の希薄燃焼式エンジンは燃料希薄側のリーン空燃比で運転されることが多いが、リーン運転中は三元触媒の排ガス浄化作用が十分に発揮されないので、一般には、吸蔵剤が添加された触媒層をコージライト担体に担持してなるNOx吸蔵触媒が搭載される。しかしながら、NOx吸蔵触媒、特にアルカリ金属を吸蔵剤として添加した触媒にあっては、高温下で吸蔵剤が飛散したりコージライト担体内に移動したりして吸蔵剤の量が目減りし、触媒のNOx吸蔵能力が低下するという問題が生じる。
【0003】このため、本出願人は、特願平11−370358号(特開2001−129402号公報)などにおいて触媒にゼオライトを添加することにより吸蔵剤の飛散や担体への移動を抑制することを提案している。ゼオライトに含有される珪素(Si)は、酸性質を有してアルカリとの親和性が高いことから、アルカリ性を示す吸蔵剤を引き寄せる作用を発揮し、従って、上記提案のようにゼオライトを移動抑制剤として用いることにより吸蔵剤の飛散や移動を抑止できる。更に、Siがゼオライトとして混入されているため吸蔵剤と反応して安定物質を形成することがなく、吸蔵剤の消失ひいては触媒の吸蔵能力の低下を抑制でき、高温下での運転の後においても触媒は高いNOx吸蔵性能を維持する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述のようにゼオライトを添加したNOx吸蔵触媒は高温下での運転後も高いNOx吸蔵性能を維持できるが、この種の触媒においても過酷な高温下で運転した場合にはその後のNOx吸蔵性能に低下が認められ、従って高温耐久後の性能低下をより小さくした触媒の提供が要請されている。
【0005】そこで、この様な要請に答えるために更なる研究を進めた結果、NOx吸蔵触媒の高温耐久後の性能低下を抑制する上で、ゼオライト自体が比較的耐熱性の低い物質であることが障害になっていることが判明した。すなわち、ゼオライトは主としてSiO2とAl23との複合酸化物であって、高温下ではSiO2とAl23との結合が崩れ易く、両者の結合が崩れるとSiO2またはSiが吸蔵剤と反応し易くなり、SiO2またはSiとの反応が進んでNOx吸蔵反応に作用する吸蔵剤がその分消失し、触媒の吸蔵性能が低下する。
【0006】そこで、本発明は、高温耐久性に優れ、特に、過酷な高温下でのNOx吸蔵反応に作用する吸蔵剤の消失による排ガス浄化性能の悪化度合いを低減可能な排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、担体と触媒層とを含み、この触媒層にアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一つを吸蔵剤として添加してなる排ガス浄化用触媒において、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)からなる遷移金属の群から選択される少なくとも一つの金属と珪素(Si)とからなる複合酸化物を触媒層に混入したことを特徴とする。
【0008】本発明では、珪酸塩(複合酸化物中のSi)は、吸蔵剤を引き寄せる作用を奏し、また、吸蔵剤との間で安定物質を生成するような化学反応を生起することがない。このため、吸蔵剤はその本来の機能すなわち吸蔵機能を失うことなくSiの近傍に保持され、従って触媒層における吸蔵剤の移動が抑制される。この結果、吸蔵剤の飛散や担体中へ移動した吸蔵剤と担体組成成分との化学反応による吸蔵剤の消失や吸蔵剤の硫黄被毒(燃料または排ガス中の硫黄分と吸蔵剤との反応による硫酸塩の生成)が抑制され、触媒の吸蔵性能が維持される。
【0009】しかも、遷移金属Co、Zr、Fe、Mnは融点が高く、これらの遷移金属とSiとの複合酸化物は高い熱的安定性を示す。従って、複合酸化物中のSiによる吸蔵剤移動抑制作用や吸蔵剤の吸蔵機能が高温下でも維持される。すなわち、遷移金属と珪素とからなる複合酸化物を触媒層に混入した触媒は熱耐久性能に優れ、高温耐久後においてもその吸蔵性能が維持される。
【0010】請求項2に記載の発明は、触媒層の上層に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一つを吸蔵剤として添加してなる第2触媒層を形成したことを特徴とする。請求項2の発明では、第2触媒層は遷移金属と珪素とからなる複合酸化物を含まず、この第2触媒層に添加された吸蔵剤は、第2触媒層に続く触媒層に混入されている複合酸化物のSiによって引き寄せられる。従って、第2触媒層内の吸蔵剤の量が少なくなるため、第2触媒層ひいては全触媒層からの吸蔵剤の飛散が抑制され、触媒の吸蔵能力の低下が防止される。また、アルカリ金属やアルカリ土類金属からなる吸蔵剤はその電子供与性が強いため貴金属の酸化作用を低下させる要因になり得るが、請求項2の発明では第2触媒層内の吸蔵剤の量が少なくなるので、第2触媒層における貴金属の酸化作用低下が抑制される。すなわち、第2触媒層を触媒層上層に備えた触媒によれば、その吸蔵・浄化能力が高レベルに維持される。
【0011】請求項3に記載の発明は、触媒層と担体との間にアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一つを吸蔵剤として添加してなる第2触媒層を形成したことを特徴とする。請求項3の発明では、触媒層が触媒表面側に形成され、第2触媒層は触媒層と担体との間に形成され、第2触媒層に添加された吸蔵剤は、触媒層に含まれる複合酸化物中のSiによって引き寄せられる。従って、排ガスと接触し易い触媒層上層側に吸蔵剤が集まるため、排ガス空燃比をリッチ化することにより吸蔵能力を効率良く回復することができる。この様に回復効率が高いのでリッチ化に伴う燃費悪化を最小にでき、また、第2触媒層中の吸蔵剤が第2触媒層に続く触媒層へ引き寄せられるので第2触媒層における貴金属の酸化作用の低下を抑制できる。すなわち、触媒の吸蔵・浄化能力は高レベルに維持される。
【0012】請求項4に記載の発明は、上記触媒層の上層および上記触媒層と上記担体との間の少なくとも一方に三元触媒層を設けたことを特徴とする。請求項4の発明では、複合酸化物中のSiが吸蔵剤保持作用を奏するので、三元触媒層への吸蔵剤の移動が抑制され、吸蔵剤による貴金属の酸化作用の低下が抑制され、三元触媒層ひいては触媒の浄化性能が維持される。
【0013】請求項5に記載の発明は、担体と触媒層とを含み、この触媒層にアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一つを吸蔵剤として添加してなる排ガス浄化用触媒において、触媒層の上層および触媒層と担体との間の少なくとも一方に、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)からなる遷移金属の群から選択される少なくとも一つの金属と珪素(Si)とからなる複合酸化物を含む吸蔵剤移動抑制層を設けたことを特徴とする。
【0014】請求項5の発明では、吸蔵剤移動抑制層に含まれる複合酸化物中のSiにより吸蔵剤がSiの近傍に保持される。抑制層は層状をなし、この様な形成形態により吸蔵剤移動抑制作用が担保され、しかも、遷移金属Co、Zr、Fe、MnとSiとの複合酸化物の熱的安定性が高いので、抑制層の吸蔵剤移動抑制作用は高温下でも維持される。このため、触媒が高温に晒されて触媒内での吸蔵剤の移動性向が促進された場合にも吸蔵剤の移動が吸蔵剤移動抑制層により確実に抑制され、触媒からの吸蔵剤の蒸発、飛散による吸蔵剤の消失ひいては触媒の排ガス浄化性能の低下が防止される。すなわち、この触媒は熱耐久性能、特に高温耐久後の吸蔵性能に優れる。
【0015】吸蔵剤移動抑制層を担体と触媒層との間に設けた場合、触媒層に添加された吸蔵剤の担体内への浸入が抑制層によって確実に阻止され、吸蔵剤の組成成分と担体の組成成分との反応による化合物の形成が抑制され、担体でのクラック発生ひいては触媒の耐久性低下が防止される。一方、抑制層を触媒層の上層に形成した場合、触媒層からの吸蔵剤の蒸発、飛散が抑制層によって確実に阻止される。また、触媒に2層以上の吸蔵剤移動抑制層を形成可能であり、例えば、担体と触媒層との間に抑制層を設けると共に触媒層の上層に別の抑制層を設けることができる。
【0016】一般に、多数のセルからなる担体に触媒層を担持してなる触媒では、触媒に課せられる機械的、物理的または化学的な要件を満たすため、担体の各セルのコーナー部では触媒層の層厚を厚くしており、その深層部では吸蔵性能の回復のために多量の吸蔵剤が必要であるので触媒の吸蔵性能が低下するが、抑制層を備えた本発明では、担体コーナー部の触媒層を厚くすべきとの要件が緩和され、吸蔵性能回復時の吸蔵剤の消費量が少なく、吸蔵性能が維持される。
【0017】請求項6の発明では、上記複合酸化物として珪酸ジルコニウム(ZrSiO4)を用いたことを特徴とする。珪酸ジルコニウムは工業的に入手し易い材料であり、従って、吸蔵剤を添加した触媒層に珪酸ジルコニウムで構成した複合酸化物を混入することにより、吸蔵剤の移動や飛散を防止するという所期の目的を安価に達成できる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1実施形態による排ガス浄化用触媒を説明する。本実施形態の排ガス浄化用触媒は、多数のセルからなるハニカム(モノリス)型のコージライト担体を有するNOx触媒として構成されている。図1はコージライト担体の一つのセルの一部を示し、コージライト担体10のセルは例えば四角形状に形成されている。コージライト担体10の表面には触媒層20が担持されている。そして、触媒層20には、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)などの貴金属と、カリウム(K)、バリウム(Ba)などのNOx吸蔵剤とが添加されると共に、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)からなる遷移金属の群から選択される少なくとも一つの金属と珪素(Si)とからなる複合酸化物が混入されている。本実施形態では、この複合酸化物として珪酸ジルコニウム(ZrSiO4)が用いられる。
【0019】好ましくは、プラチナ及びパラジウムの各々の担持量を担体1リットルあたり0.1ないし10gの値に設定し、カリウム及びバリウムの各々の担持量を担体1リットルあたり0.1ないし50gの値に設定し、また、珪酸ジルコニウムの担持量を担体1リットルあたり0.1ないし50gの値に設定する。コージライト担体10は、たとえば、アルミナ源の粉末、シリカ源の粉末およびマグネシア源の粉末を、アルミナ、シリカ、マグネシアの割合がコージライト組成になるように混合したものを水に分散させ、その固形分をハニカム状に成形し、このハニカム成形体を焼成したものである。
【0020】触媒層20は、例えば以下のようにして、コージライト担体10の表面に担持される。先ず、プラチナなどの貴金属、カリウムなどのアルカリ金属、バリウムなどのアルカリ土類金属、および複合酸化物としての珪酸ジルコニウムを主成分とする粉末を含むスラリーが調製される。次いで、コージライト担体10をスラリー中に浸漬し、これを乾燥後に焼成する。
【0021】以上のようにして、コージライト担体10に触媒層20をコーティングしてなるNOx触媒を得る。従来公知のように、このNOx触媒は、たとえば緩衝材を介してケースに収容され、希薄燃焼内燃機関の排気管内に配置される。このNOx触媒によれば、リーン空燃比での機関運転中に排ガス中のNOxが、触媒層20に分散された触媒種の作用下で硝酸塩の形で吸蔵される。また、リッチ空燃比での機関運転中には硝酸塩が分解され、吸蔵されていたNOxが窒素に還元されてNOx触媒から大気中に放出される。
【0022】NOx触媒を長時間にわたって高温に晒した場合、一般には、触媒層に添加された吸蔵剤たとえばカリウムがコージライト担体中へ移動して担体中の珪素などと反応して化合物を生成し、この化合物がコージライト担体でのクラック発生要因になるが、本実施形態のNOx触媒では、触媒層20内でのカリウムなどの吸蔵剤の移動が珪酸ジルコニウムに含まれる珪素(Si)の近傍に保持されてコージライト担体10への移動が阻止され、クラック発生が防止される。
【0023】また、吸蔵剤移動抑制作用を奏するゼオライトを触媒層に混入した触媒によれば、過酷な高温下ではその構成成分SiO2とAl23との結合が崩れて吸蔵剤が消失し、高温耐久後のNOx浄化効率が低下するが、本実施形態の触媒層に混入されている珪酸ジルコニウムと珪素との複合酸化物は熱的安定性が高く、複合酸化物中のSiによる吸蔵剤移動抑制作用は例えば850℃を超えるような高温下でも維持され、高温耐久後のNOx浄化効率に優れる。
【0024】本発明者は上記の作用、効果を確認すべく、珪酸ジルコニウムと珪素との複合酸化物を触媒層に混入させた本実施形態のNOx触媒とゼオライトを混入した従来のNOx触媒のそれぞれについて熱耐久試験後のNOx浄化効率を測定し、測定結果を図2および図3に示す。図2は、耐久温度(熱耐久試験での触媒温度)と熱耐久試験後におけるNOx浄化効率との関係すなわち触媒の耐久温度−NOx浄化効率特性を示す。評価温度は500℃である。図2中、四角形マークは本実施形態の触媒の特性を示し、三角形マークは従来の触媒の特性を示し、また、破線は新品(劣化前)の触媒の特性を表している。図2からわかるように、800℃および850℃付近での熱耐久試験後のNOx浄化効率については本実施形態の触媒と従来の触媒とにさほどの差異は見られないが、900℃付近での熱耐久試験後のNOx浄化効率についていえば本実施形態のものは従来のものに比べて相当に向上している。これは、本実施形態の触媒が高温耐久後の浄化性能に優れることを示す。
【0025】図3は、850℃で20時間の熱耐久試験を実施した後で床下触媒の形式で構成した本実施形態の触媒および従来の触媒を使用したときの、床下触媒入口温度とNOx浄化効率との関係を示し、四角形マークは本実施形態の触媒の特性を示し、丸マークは従来の触媒の特性を示す。図3からわかるように、床下触媒入口温度が550℃の場合を除き、本実施形態の触媒は従来のものに比べて熱耐久試験後のNOx浄化効率が向上しており、実車での通常の使用環境に対応する床下触媒入口温度が400ないし450℃での浄化効率に優れている。
【0026】繰り返し云えば、図2及び図3に示した実験結果からわかるように、本実施形態の触媒によれば熱耐久後においても高い浄化性能が維持される。以下、本発明の第2実施形態による排ガス浄化用触媒を説明する。本実施形態の触媒は、そのNOx吸蔵・浄化能力を良好に維持すると共に熱耐久性を向上することを企図したものであり、第1実施形態のもの(図1)と基本構成が同一であるが、図4に示すように、触媒層(以下、第1触媒層という)20の上層たとえば外面に第2触媒層30を形成した点で第1実施形態のものと構成を異にする。
【0027】図4を参照すると、排ガス浄化用触媒は、コージライト担体10と、担体10の表面に担持され且つ貴金属、吸蔵剤および複合酸化物を含む第1触媒層20と、第1触媒層20の上層たとえば表面に形成された第2触媒層30とからなる。担体10、第1触媒層20の構成は第1実施形態のものと同一であるので、説明を省略する。第2触媒層30は、プラチナなどの貴金属とカリウムやバリウム等のNOx吸蔵剤との混合物からなるもので、複合酸化物を含まない点で第1触媒層20と相違する。
【0028】上記構成の排ガス浄化用触媒は、第1実施形態の場合と同様の手順で第1触媒層20を担持したコージライト担体10を、貴金属及びNOx吸蔵剤を含むスラリー中に浸漬し、これを乾燥・焼成することにより製造される。既述のように、電子供与性の強いNOx吸蔵剤によって貴金属の酸化性能が低下して触媒のNOx吸蔵・浄化性能の悪化原因になるが、本実施形態の触媒の触媒層は、複合酸化物を含む第1触媒層20と、その外面に形成され且つ複合酸化物を含まない第2触媒層30とから構成され、第2触媒層30内のNOx吸蔵剤が第1触媒層20側へ移動し易くなっているため、吸蔵剤が第1触媒層20内に集まって第2触媒層30内の吸蔵剤の量は少なくなる。この結果、第2触媒層30の貴金属の酸化作用が第2触媒層30内の吸蔵剤により弱化され難くなり、触媒層全体とくに第2触媒層30での貴金属の酸化作用ひいては触媒の吸蔵・浄化能力が高レベルに維持される。また、第2触媒層30内の吸蔵剤の量が少なくなるため、第2触媒層30からの吸蔵剤の飛散が抑制され、触媒の吸蔵能力が維持される。その他の作用効果については第1実施形態のものと同様であるので、説明を省略する。
【0029】以下、本発明の第3実施形態による排ガス浄化用触媒を説明する。本実施形態の触媒は、図4に示した第2実施形態のものと基本構成が同一であるが、図5に示すように、第2触媒層30をコージライト担体10と第1触媒層20との間に形成した点で第2実施形態のものと異なる。すなわち、図5に示すように、本実施形態の排ガス浄化用触媒は、コージライト担体10と、担体10の表面に担持され且つ貴金属とNOx吸蔵剤とを含む第2触媒層30と、その表面に形成され且つ貴金属、吸蔵剤および複合酸化物を含む第1触媒層20とからなる。担体10、第1触媒層20及び第2触媒層30の構成は第2実施形態のものと同一であるので、説明を省略する。
【0030】上記構成の排ガス浄化用触媒は、第2触媒層30を担持したコージライト担体10を貴金属、NOx吸蔵剤および複合酸化物を含むスラリー中に浸漬し、これを乾燥・焼成することにより製造される。本実施形態の排ガス浄化用触媒では、第1触媒層20とコージライト担体10との間に形成した第2触媒層30に添加された吸蔵剤が、第1触媒層20に混入されている複合酸化物中のSiによって引き寄せられ、従って、排ガスと接触し易い第1触媒層20側に吸蔵剤が集まる。このため、排ガス浄化用触媒の吸蔵能力を排ガス空燃比のリッチ化により効率良く回復することができ、リッチ化に伴う燃費悪化を最小にでき、また、第2触媒層30では吸蔵剤による貴金属の酸化作用の低下を抑制できるので、排ガス浄化用触媒の吸蔵・浄化能力は高レベルに維持される。その他の点については第1及び第2実施形態の場合と同様である。
【0031】以下、本発明の第4実施形態による排ガス浄化用触媒を説明する。本実施形態の触媒は、図1に示した第1実施形態のものと基本構成が同一であるが、触媒層の外面に三元触媒層を形成した点で異なる。図6に示すように、排ガス浄化用触媒は、コージライト担体10と、担体10の表面に担持され且つ貴金属、吸蔵剤および複合酸化物を含む触媒層20と、この触媒層の表面に形成され且つ主に三元触媒作用を奏する三元触媒層40とからなる。本実施形態において、三元触媒層40には酸性質材料が影響抑止材料として混入され、三元触媒層40に達した吸蔵剤が三元触媒層に対して及ぼす悪影響が緩和される。すなわち、吸蔵剤が、三元触媒層40中の貴金属のCO、HC吸着作用を弱化したり貴金属表面を覆うという悪影響を影響抑止材料により緩和するようにしている。酸性質材料としては、アルカリ塩である吸蔵剤と反応して安定物質を生成するシリカ(SiO2)、タングステン(W)、リン(P)が用いられる。その一方で、三元触媒層40には吸蔵剤が一切添加されておらず、良好な三元性能を得るようにしている。
【0032】上記構成の排ガス浄化用触媒は、第1実施形態の場合と同様の手順で第1触媒層20を担持したコージライト担体10を、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などの貴金属と酸性質材料とを含むスラリー中に浸漬し、これを乾燥・焼成することにより製造される。上記構成の排ガス浄化用触媒の作用を説明する。
【0033】触媒層20では吸蔵剤が複合酸化物中のSiのまわりに固定され、高温下における飛散やコージライト担体10および三元触媒層40への移動が防止される。そして、この様な移動抑制作用にも関わらず吸蔵剤が三元触媒層40に到達した場合には、吸蔵剤が三元触媒層40中の酸性質材料と反応して安定物質たとえばリン酸カリウムに変換され、これにより、三元触媒層40に対する吸蔵剤の影響が緩和される。本実施形態によれば、触媒層20と三元触媒層40とを共通の担体10上に形成して単一の触媒として安価に構成できる。また、排ガス浄化用触媒は、触媒層20のNOx吸蔵性能および三元触媒層40の三元性能に優れ、リーン運転時のNOx浄化が確実になされると共にストイキ運転時やリッチ運転時に発生するCO,HCが三元触媒層40により浄化される。その他の点は第1実施形態の場合と同様である。
【0034】以下、本発明の第5実施形態による排ガス浄化用触媒を説明する。本実施形態の触媒は、図6に示した第5実施形態のものと基本構成が同一であるが、三元触媒層をコージライト担体と触媒層との間に形成した点で異なる。すなわち、図7に示すように、本実施形態の排ガス浄化用触媒は、コージライト担体10と、担体10の表面に担持された三元触媒層40と、この三元触媒層40の表面に形成された触媒層20とからなる。この排ガス浄化用触媒は、触媒層20を担持したコージライト担体10を、貴金属と影響抑止材料たとえば酸性質材料とを含むスラリー中に浸漬し、これを乾燥・焼成することにより製造される。
【0035】本実施形態の排ガス浄化用触媒によれば、触媒層20によりNOx浄化作用が奏されると共に三元触媒層40により主にストイキまたはリッチ運転時の排ガス浄化作用が奏される。そして、触媒層20では吸蔵剤が複合酸化物中のSiのまわりに固定され、高温下における飛散やコージライト担体10および三元触媒層40への移動が防止され、また、吸蔵剤が三元触媒層40に到達した場合には、吸蔵剤が三元触媒層40中の酸性質材料と反応して安定物質に変換され、三元触媒層40に対する吸蔵剤の悪影響が抑制される。その他の点は第1実施形態の場合と同様である。
【0036】以下、本発明の第6実施形態による排ガス浄化用触媒を説明する。触媒層に複合酸化物として混入させた第1実施形態に比べ、本実施形態のものは、複合酸化物を含まない触媒層の上層に複合酸化物を含む吸蔵剤移動抑制層(以下、抑制層という)を形成した点が相違し、層状をなす抑制層により触媒層からの吸蔵剤の飛散を確実に阻止するものになっている。
【0037】図8に示すように、本実施形態の排ガス浄化用触媒は、コージライト担体10と、担体10の外面に担持された触媒層20と、触媒層20の上層たとえば外面に形成された抑制層50とを含み、この抑制層50は、コバルト、ジルコニウム、鉄およびマンガンの少なくとも一つと珪素とからなる複合酸化物たとえば珪酸ジルコニウムを含んでいる。
【0038】排ガス浄化用触媒は例えば以下のようにして製造される。先ず、プラチナなどの貴金属およびカリウム、バリウムなどの吸蔵剤を主成分とするスラリー中にコージライト担体10を浸漬し、これを乾燥後に焼成し、更に、珪酸ジルコニウムを主成分とする粉末を含むスラリー中に浸漬した後に乾燥、焼成する。この様にして得た排ガス浄化用触媒は緩衝材を介してケースに収容され、排気管内に設置される。
【0039】排ガス浄化用触媒の使用時、抑制層50に含まれる珪酸ジルコニウム中のSiにより吸蔵剤がSiの近傍に保持される。珪酸ジルコニウムの熱的安定性が高く、抑制層50の吸蔵剤移動抑制作用は高温下でも維持されるので、触媒が高温に晒されて触媒内での吸蔵剤の移動性向が促進された場合にも吸蔵剤の移動が抑制層50により確実に抑制され、触媒からの吸蔵剤の蒸発、飛散による吸蔵剤の消失が防止され、高温耐久後における吸蔵性能が維持される。
【0040】以下、本発明の第7実施形態による排ガス浄化用触媒を説明する。触媒層の上層に抑制層を形成した第6実施形態に比べ、本実施形態のものは担体と触媒層との間に抑制層を形成した点が異なる。すなわち、図9に示すように、本実施形態の排ガス浄化用触媒は、コージライト担体10と、この担体10に担持された抑制層50と、抑制層50の外面に形成された触媒層20とを含む。触媒層20および抑制層50の構成は第6実施形態のものと同様であり、説明を省略する。
【0041】排ガス浄化用触媒は、例えば、珪酸ジルコニウムを主成分とする粉末を含むスラリー中に担体10を浸漬し、これを乾燥、焼成し、更に、貴金属および吸蔵剤を主成分とするスラリー中に浸漬した後で乾燥、焼成することにより製造される。排ガス浄化用触媒の使用時、触媒層20に添加された吸蔵剤の担体内への浸入が抑制層50によって確実に阻止され、吸蔵剤と担体成分との反応による化合物の形成が抑制され、担体でのクラック発生ひいては触媒の耐久性低下が防止される。その他の作用効果については第1及び第6実施形態の場合と同様である。
【0042】本発明は、上記第1ないし第7実施形態のものに限定されず、種々に変形可能である。例えば、上記実施形態では、ハニカム型コージライト担体10を担体として用いたが、本発明は、コージライト以外の材料から成る担体を備えた排ガス浄化用触媒にも適用可能である。メタル担体を用いた場合には、担体への吸蔵剤の浸透はほとんど問題にはならないが、吸蔵剤の飛散を防止する効果が得られ、触媒の排ガス浄化性能の低下が防止される。また、ハニカム型コージライト担体を用いる場合、コージライト担体のセルは四角形状のものに限定されず、例えば三角形状や六角形状のものでも良い。
【0043】また、上記実施形態では、触媒層20に混入され或いは抑制層50に含まれる複合酸化物として珪酸ジルコニウムを用いたが、これに代えて、コバルト、ジルコニウム、鉄、マンガンからなる遷移金属の群から選択される少なくとも一つと珪素とからなる複合酸化物を使用可能である。上記第6及び第7実施形態では、複合酸化物が混入されていない触媒層を用いたが、触媒層に複合酸化物を混入しても良い。
【0044】また、抑制層の形成数および形成部位は第6及び第7実施形態のものに限定されない。例えば、担体と触媒層との間に抑制層を設けると共に触媒層の上層に別の抑制層を設けることができる。更に、第2ないし第7実施形態において述べた第2触媒層、三元触媒層および抑制層の任意の2つ以上を触媒層と組み合わせてなる排ガス浄化用触媒を構成可能である。
【0045】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、吸蔵剤を添加した触媒層に、コバルト、ジルコニウム、鉄およびマンガンの少なくとも一つと珪素とからなる複合酸化物を混入したので、高温下においても安定な複合酸化物中の珪素が奏する吸蔵剤移動抑制機能により触媒層における吸蔵剤の移動が抑制され、吸蔵剤の飛散や担体成分との反応による消失および吸蔵剤の硫黄被毒が抑制される。従って、高温雰囲気中で使用した場合にも排ガス浄化用触媒の吸蔵性能が維持され、高温耐久後にも吸蔵、浄化性能の低下を来すおそれが少なくなる。
【0046】請求項2の発明によれば、吸蔵剤を添加してなる第2触媒層を触媒層の上層に形成したので、第2触媒層に添加された吸蔵剤が触媒層内の複合酸化物中の珪素によって引き寄せられ、第2触媒層ひいては全触媒層からの吸蔵剤の飛散および第2触媒層での貴金属の酸化作用低下を抑制して、排ガス浄化用触媒の吸蔵・浄化能力を高レベルに維持することができる。
【0047】請求項3の発明によれば、吸蔵剤を添加してなる第2触媒層を触媒層と担体との間に形成したので、排ガスと接触し易い触媒層上層側に吸蔵剤が集まるため排ガス浄化用触媒の吸蔵能力を排ガスのリッチ化により効率良く回復することができ、また、第2触媒層における貴金属の酸化作用低下を抑制することができ、吸蔵・浄化能力を高レベルに維持できる。
【0048】請求項4の発明によれば、触媒層の上層または触媒層と担体との間の一方あるいは双方に三元触媒層を設けたので、触媒層に混入された複合酸化物中の珪素の移動抑制機能により触媒層から三元触媒層への吸蔵剤の移動ひいては三元触媒層における貴金属の酸化作用低下を抑制して三元触媒層の浄化性能を維持できる。請求項5の発明によれば、コバルト、ジルコニウム、鉄およびマンガンの少なくとも一つと珪素とからなる複合酸化物を含む吸蔵剤移動抑制層を、触媒層の上層または触媒層と担体との間の一方あるいは双方に設けたので、層状をなす抑制層に含まれ且つ高温雰囲気中での安定性に優れた複合酸化物中の珪素により高温下においても吸蔵剤の移動ひいては吸蔵剤の消失を確実に抑制することができ、排ガス浄化用触媒は高温耐久後の吸蔵性能に優れる。
【0049】請求項6の発明によれば、複合酸化物として珪酸ジルコニウムを用いるので、熱耐久性に優れた排ガス浄化用触媒を安価に提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
【出願日】 平成13年6月8日(2001.6.8)
【代理人】 【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
【公開番号】 特開2002−361094(P2002−361094A)
【公開日】 平成14年12月17日(2002.12.17)
【出願番号】 特願2001−174469(P2001−174469)