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【発明の名称】 バナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体の製造方法
【発明者】 【氏名】奥原 敏夫

【氏名】日吉 範人

【氏名】山本 尚毅

【氏名】神谷 裕一

【要約】 【課題】VOPO4・nH2O(ここで、nは0、1又は2である)からバナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体を製造する上記従来法を改良して、より良好な活性及びより高い無水マレイン酸への選択性を有するバナジウム‐リン複合酸化物触媒の前駆体を製造する方法を提供する。

【解決手段】VOPO4・nH2O(ここで、nは0、1又は2である)をアルコール中で加熱してバナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体を製造する方法において、アルコールの沸点未満の温度で、VOPO4・nH2Oをアルコール中で加熱した後、塩酸ヒドロキシルアミン、塩酸、ヒドラジン及びシュウ酸より成る群から選ばれる一つ以上の還元剤を加えて更に加熱することを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 VOPO4・nH2O(ここで、nは0、1又は2である)をアルコール中で加熱してバナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体を製造する方法において、アルコールの沸点未満の温度で、VOPO4・nH2Oをアルコール中で加熱した後、塩酸ヒドロキシルアミン、塩酸、ヒドラジン及びシュウ酸より成る群から選ばれる一つ以上の還元剤を加えて更に加熱することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】バナジウム‐リン複合酸化物触媒は、ブタン酸化反応による無水マレイン酸製造用触媒として公知であり、そのなかでも、とりわけ、ピロリン酸ジバナジル[(VO)227]が広く使用されている。
【0003】従来、ピロリン酸ジバナジル触媒を製造する方法としては、■五酸化バナジウム(V25)をアルコール等の有機溶媒の還流下で還元する前あるいは還元後にリン酸(H3PO4)を添加して加熱還流して、ピロリン酸ジバナジル触媒の前駆体であるリン酸水素バナジル0.5水和物(VOHPO4・0.5H2O)を得、次いで、これを通常、ブタン酸化雰囲気下で焼成してピロリン酸ジバナジル触媒を製造する方法、■五酸化バナジウム(V25)を水溶媒中でHCl、ヒドラジン等の無機還元剤で還元する前あるいは還元後にリン酸(H3PO4)を添加して加熱還流して、ピロリン酸ジバナジル触媒の前駆体であるリン酸水素バナジル0.5水和物(VOHPO4・0.5H2O)を得た後、上記と同様に焼成してピロリン酸ジバナジル触媒を製造する方法、及び■VOPO4・2H2Oをアルコール中で該アルコールの沸点における還流下に加熱して、ピロリン酸ジバナジル触媒の前駆体であるリン酸水素バナジル0.5水和物を得た後、上記と同様に焼成してピロリン酸ジバナジル触媒を製造する方法(「Catalysis Today」33 (1997年)第161〜171頁)が知られている。
【0004】これらの無水マレイン酸製造用触媒は、その活性及び無水マレイン酸への選択性が高いことが不可欠である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、VOPO4・nH2O(ここで、nは0、1又は2である)からバナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体を製造する上記従来法を改良して、より良好な活性及びより高い無水マレイン酸への選択性を有するバナジウム‐リン複合酸化物触媒の前駆体を製造する方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは既に、VOPO4・nH2O(ここで、nは0、1又は2である)をアルコール中で加熱してバナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体を製造する方法において、加熱をアルコールの沸点未満の温度で行う工程を含むことを特徴とする方法を出願した(特願2000−354240号)。これにより、VOPO4・nH2Oをアルコールの沸点において加熱する従来法に比べて、より良好な活性及びより高い無水マレイン酸への選択性を有するバナジウム‐リン複合酸化物触媒の前駆体を得ることが出来た。
【0007】本発明者らは、より一層良好な活性及びより一層高い無水マレイン酸への選択性を有するバナジウム‐リン複合酸化物触媒の前駆体を得るべく、更に検討を加えた。その結果、下記のように、VOPO4・nH2O(ここで、nは0、1又は2である)をアルコール中で該アルコールの沸点未満の温度で加熱した後、塩酸ヒドロキシルアミン、塩酸、ヒドラジン及びシュウ酸より成る群から選ばれる一つ以上の還元剤を加えて更に加熱すれば、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】即ち、本発明は、(1)VOPO4・nH2O(ここで、nは0、1又は2である)をアルコール中で加熱してバナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体を製造する方法において、アルコールの沸点未満の温度で、VOPO4・nH2Oをアルコール中で加熱した後、塩酸ヒドロキシルアミン、塩酸、ヒドラジン及びシュウ酸より成る群から選ばれる一つ以上の還元剤を加えて更に加熱することを特徴とする方法である。
【0009】好ましい態様として、(2)還元剤が、仕込みVOPO4・nH2Oの1モルに対して0.05〜50モルで加えられる上記(1)記載の方法、(3)還元剤が、仕込みVOPO4・nH2Oの1モルに対して0.1〜10モルで加えられる上記(1)記載の方法、(4)還元剤が、仕込みVOPO4・nH2Oの1モルに対して0.2〜5モルで加えられる上記(1)記載の方法、(5)還元剤が塩酸ヒドロキシルアミンであるところの上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の方法、(6)上記アルコールの沸点未満における加熱温度が20℃〜(アルコールの沸点−5℃)であるところの上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の方法、(7)上記アルコールの沸点未満における加熱温度が30℃〜(アルコールの沸点−8℃)であるところの上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の方法、(8)上記アルコールの沸点未満における加熱時間が、10分間〜50時間である上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の方法、(9)上記アルコールの沸点未満における加熱時間が、30分間〜25時間である上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の方法、(10)後者の加熱温度が、前者のアルコールの沸点未満の温度での加熱温度を超え、かつアルコールの沸点以上であってもよい温度であるところの上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の方法、(11)後者の加熱温度が、前者のアルコールの沸点未満の温度での加熱温度を超え、かつアルコールの沸点以下の温度であるところの上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の方法、(12)後者の加熱温度がアルコールの沸点温度であるところの上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の方法、(13)上記アルコールの沸点未満の温度における加熱前、加熱中、又は該温度における加熱後から後者の加熱前にシリカを添加するところの上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載の方法、(14)シリカを、VOPO4・nH2O(ここで、nは0、1又は2である)に対して0.2〜100重量倍添加する上記(13)記載の方法、(15)シリカを、VOPO4・nH2O(ここで、nは0、1又は2である)に対して0.5〜50重量倍添加する上記(13)記載の方法、(16)上記アルコールが、炭素数1〜12個の第一級脂肪族モノアルコール、炭素数3〜12個の第二級脂肪族モノアルコール、炭素数5〜8個の脂環族モノアルコール及び炭素数7〜12個の芳香族モノアルコールから選ばれるところの上記(1)〜(15)のいずれか一つに記載の方法、(17)第一級脂肪族モノアルコールが、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、1‐ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ネオペンタノール、2‐メチル‐1‐ブタノール、1‐ペンタノール、1‐ヘキサノール及び1‐オクタノールから選ばれ、第二級脂肪族モノアルコールが、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール及び2−オクタノールから選ばれ、脂環族モノアルコールが、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロペンタノール及び3−エチルシクロペンタノールから選ばれ、芳香族モノアルコールが、ベンジルアルコール及び2‐フェニルエチルアルコールから選ばれるところの上記(16)記載の方法、(18)上記アルコールが、1‐ブタノール、2−ブタノール及び2−オクタノールより成る群から選ばれるところの上記(1)〜(15)のいずれか一つに記載の方法を挙げることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明においては、バナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体の原料となるVOPO4・nH2O(ここで、nは0、1又は2である)を、まず、アルコール中で該アルコールの沸点未満の温度で加熱する。
【0011】使用するアルコールは、従来法、即ち、VOPO4・nH2Oをアルコール中で該アルコールの沸点における還流下に加熱還元してバナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体を製造する方法に使用し得るものであれば特に制限はない。好ましくは、炭素数1〜12個の第一級脂肪族モノアルコール、炭素数3〜12個の第二級脂肪族モノアルコール、炭素数5〜8個の脂環族モノアルコール及び炭素数7〜12個の芳香族モノアルコールから選ばれる。第一級脂肪族モノアルコールとしては、より好ましくは、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、1‐ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ネオペンタノール、2‐メチル‐1‐ブタノール、1‐ペンタノール、1‐ヘキサノール及び1‐オクタノールが挙げられ、第二級脂肪族モノアルコールとしては、より好ましくは、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール及び2−オクタノールが挙げられ、脂環族モノアルコールとしては、より好ましくは、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロペンタノール及び3−エチルシクロペンタノールが挙げられ、そして、芳香族モノアルコールとしては、より好ましくは、ベンジルアルコール及び2‐フェニルエチルアルコールが挙げられる。特に好ましくは、1‐ブタノール、2−ブタノール及び2−オクタノールより成る群から選ばれるアルコールが使用される。
【0012】使用するアルコールの量は、VOPO4・nH2Oをアルコール中で該アルコールの沸点における還流下に加熱してバナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体を製造する従来法と同様である。但し、使用するアルコールの種類によって異なり、VOPO4・nH2O 1モルに対して、好ましくは5〜1,000モル、特に好ましくは10〜300モルである。
【0013】VOPO4・nH2Oを上記のアルコール中で加熱する温度は、上限が、使用したアルコールの沸点未満、好ましくは使用したアルコールの沸点−5℃、より好ましくは使用したアルコールの沸点−8℃である。上記上限を超えては、本発明の効果を達成できない。該加熱温度の下限は、使用したアルコールを液体状態に保持し得る温度、即ち、使用したアルコールの凝固点以上の温度であれば特に制限はないが、好ましくは20℃、より好ましくは30℃である。20℃未満の温度では、加熱に比較的長時間を必要とするため好ましくない。上記のアルコールのうち、例えば、1‐ブタノールでの加熱温度は、好ましくは20〜110℃、より好ましくは30〜90℃であり、2‐ブタノールでの加熱温度は、好ましくは20〜95℃、より好ましくは30〜90℃であり、2‐オクタノールでの加熱温度は、好ましくは20〜125℃、より好ましくは30〜120℃である。
【0014】VOPO4・nH2Oを上記のアルコールの沸点未満の温度で加熱する時間は、使用したアルコールの種類、加熱温度、仕込比等に依存して変化するが、上限が、好ましくは50時間、より好ましくは25時間であり、下限が、好ましくは10分間、より好ましくは30分間である。上記下限未満では、本発明の効果を達成し難く、上記上限を超えても、本発明の効果の著しい増加はなくコスト高となるばかりで好ましくない。
【0015】本発明においては、上記のようにVOPO4・nH2Oをアルコールの沸点未満の温度で加熱した後、続いて、塩酸ヒドロキシルアミン、塩酸、ヒドラジン及びシュウ酸より成る群から選ばれる一つ以上の還元剤を加えて更に加熱を行う。このように還元剤の存在下に還元することにより、より良好な活性及びより高い無水マレイン酸への選択性を有するバナジウム‐リン複合酸化物触媒の前駆体を製造することが出来る。
【0016】塩酸ヒドロキシルアミン、塩酸、ヒドラジン及びシュウ酸より成る群から選ばれる一つ以上の還元剤の添加量は、仕込みVOPO4・nH2Oの1モルに対して、上限が好ましくは50モル、より好ましくは10モル、特に好ましくは5モルであり、下限が好ましくは0.05モル、より好ましくは0.1モル、特に好ましくは0.2モルである。上記下限未満では、上記本発明の効果が達成できず、上記上限を超えても、著しい効果の増大は得られず、コスト高になるばかりで好ましくない。
【0017】上記の還元を行う温度は、好ましくは、上記のアルコールの沸点未満の温度での加熱温度を超え、かつアルコールの沸点以上の温度であってよく、より好ましくは、上記のアルコールの沸点未満の温度での加熱温度を超え、かつアルコールの沸点以下の温度であり、特に好ましくはアルコールの沸点温度である。加熱時間は、該加熱温度、使用したアルコールの種類、使用する還元剤の添加量等に依存するが、アルコールの沸点未満の温度で加熱したVOPO4・nH2Oを十分に還元し得る時間であればよい。より好ましくは、従来法と同様にアルコール中で該アルコールの沸点における還流下に加熱する。該加熱は、公知の従来法に従って実施することができる。好ましくは常圧下にアルコールを還流させつつ、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは3〜50時間加熱することにより行われる。
【0018】本発明の方法においては、上記アルコールの沸点未満の温度における加熱前、加熱中、又は該温度における加熱後から後者の加熱前にシリカを添加することができる。好ましくは、上記アルコールの沸点未満の温度における加熱後からより後者の加熱前に添加される。使用するシリカに特に制限はなく、通常触媒の担体として使用し得るものであればよい。該シリカの添加量は、VOPO4・nH2Oに対して、上限が好ましくは100重量倍、より好ましくは50重量倍、特に好ましくは20重量倍であり、下限が好ましくは0.2重量倍、より好ましくは0.5重量倍、特に好ましくは1.0重量倍である。上記下限未満では、添加したシリカに見合う効果がなく、活性が向上せず、上記上限を超えては、マレイン酸の選択率が低下する。
【0019】本発明において使用するVOPO4・nH2Oは公知の物質であり、通常、五酸化バナジウムをリン酸と水中で還流下に反応させることにより製造される。ここで、nは0、1又は2であり、好ましくは2である。
【0020】このようにして得られたバナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体、好ましくはリン酸水素バナジル0.5水和物(VOHPO4・0.5H2O)は、好ましくは窒素、空気又はブタン酸化反応雰囲気下、好ましくは350〜700℃において焼成されて、ブタンの酸化反応による無水マレイン酸製造用触媒であるピロリン酸ジバナジル[(VO)227]に転化される。
【0021】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0022】
【実施例】実施例及び比較例において各測定は下記のようにして実施した。
<粉末X線回折>X線源としてCu‐Kα線を使用した。使用した装置は、理学電機株式会社製、MiniFlexである。
<表面積測定>窒素による吸脱着等温線測定を行い、BET法により表面積を算出した。測定条件は下記の通りである。
装置:日本ベル株式会社製 BELSORP 28SA前処理:300℃で3時間、脱気処理を行った。
吸脱着温度:−196℃(窒素の沸点)
【0023】
【実施例1】蒸留水577ミリリットルに、85%H3PO4133ミリリットル(1.9モル)及び24.0gの五酸化バナジウム(0.13モル)を加え、次いで、攪拌しつつリフラックス条件下で16時間加熱した後、室温に冷却した。生成した沈殿物を濾別し、アセトン200ミリリットルで洗浄した後、室温で16時間乾燥した。得られた黄色結晶は、粉末X線回折よりVOPO4・2H2Oであることが確認された。
【0024】得られたVOPO4・2H2Oの2.0g(10ミリモル)を2‐ブタノール50ミリリットル中に懸濁し、攪拌しつつ90℃で1時間加熱した後、室温まで冷却した。該加熱により薄黄緑色の均一溶液が得られた。
【0025】次いで、塩酸ヒドロキシルアミンの0.7g(10ミリモル)をメタノール5ミリリットルと蒸留水1ミリリットルとの混合溶媒に溶解した溶液を、上記の薄黄緑色の溶液に攪拌しつつ室温で加えた。その後、昇温してリフラックス条件下(約98℃)で24時間、該溶液を更に加熱した。該加熱処理によりスカイブルーの結晶が生成した。次いで、室温まで冷却した後、生成した結晶を濾別し、アセトン100ミリリットルで洗浄した後、室温で16時間乾燥してバナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体(VOHPO4・0.5H2O)1.5gを得た。
【0026】
【比較例1】実施例1で得られたVOPO4・2H2Oの2.0gを2‐ブタノール50ミリリットル中に懸濁し、攪拌しつつ、直ちにリフラックス条件下(約98℃)で24時間加熱した後、室温まで冷却した。次いで、生成したスカイブルーの結晶を濾別し、アセトン100ミリリットルで洗浄した後、室温で16時間乾燥してバナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体(VOHPO4・0.5H2O)1.48gを得た。
【0027】
【参考例1】塩酸ヒドロキシルアミンの溶液を加えなかったこと以外は、実施例1と同一にして実施した。バナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体(VOHPO4・0.5H2O)1.40gが得られた。
【0028】図1は、実施例1及び参考例1で得られた触媒前駆体のX線回折パターンを示したものである。図2は、比較例1で得られた触媒前駆体のX線回折パターンを示したものである。いずれのX線回折パターンもVOHPO4・0.5H2Oを示すものであった。しかし、その表面積は、実施例1で得られたVOHPO4・0.5H2Oが16m2/gであったのに対して、比較例1で得られたVOHPO4・0.5H2Oが4m2/gであり、また、参考例1で得られたVOHPO4・0.5H2Oは7m2/gであった。このように本発明の方法を使用して得られた該触媒前駆体の表面積は、従来法である比較例1で得られた触媒前駆体の表面積に比べて著しく大きいものであった。参考例1は、特願2000−354240号の方法に従って得られた触媒前駆体である。本発明の方法を使用して得られた該触媒前駆体の表面積は、参考例1で得られた触媒前駆体の表面積に比べてもはるかに大きいものであった。
【0029】<触媒性能試験>上記の実施例1、比較例1(従来法)、及び参考例1(特願2000−354240号の方法)で得られた各触媒前駆体を使用した。反応には、内径8mm、長さ150mmのガラス製円筒型反応器を使用した。該反応器に上記の各触媒前駆体を0.01〜0.3gの範囲で充填した。触媒前駆体の充填後、1.5体積%のn−ブタン、17体積%の酸素及びヘリウム(バランス)から成るガスを、1.2リットル/時間にて反応器内に流しつつ、反応器内の触媒層の温度を430℃まで昇温した。該温度において100時間以上保持し、反応器出口のガス組成がほぼ時間変化しなくなったことを確認して、触媒の活性化処理を完了した。続いて、同一条件で各触媒の性能を評価した。上記の反応は全て常圧で実施した。また、無水マレイン酸の収率及び選択率は、ガス流速及び反応温度を一定にし触媒量のみを変化させて測定した。
【0030】反応器出口のガス組成はガスクロマトグラフィーにより決定した。
【0031】図3及び4には、実施例1(■)、比較例1(×)及び参考例1(○)で製造した触媒前駆体から得た触媒を使用してブタン酸化を実施した結果を示した。ここで、図3の横軸は、反応器内の触媒重量W(g)をn−ブタンの流量F(モル/時間)で割ったものであり、縦軸は、無水マレイン酸の収率(%)を示している。また、図4の横軸はn−ブタンの転化率(%)であり、縦軸は無水マレイン酸の選択率(%)である。図3から、無水マレイン酸の収率は、実施例1の触媒前駆体を使用したものが、比較例1の触媒前駆体を使用したものに比べて著しく高くなった。また、実施例1は、参考例1の触媒前駆体を使用したものに比べても著しく高いものであった。図4から、無水マレイン酸の選択率は、実施例1の触媒前駆体を使用したものと参考例1の触媒前駆体を使用したものとでほぼ同一であり、比較例1の触媒前駆体を使用したものに比べて著しく高くなった。
【0032】
【発明の効果】本発明は、VOPO4・nH2Oからバナジウム‐リン複合酸化物触媒前駆体を製造する上記従来法を改良して、より良好な活性及びより高い無水マレイン酸への選択性を有するバナジウム‐リン複合酸化物触媒の前駆体を製造する方法を提供するものである。
【出願人】 【識別番号】000221627
【氏名又は名称】東燃化学株式会社
【識別番号】597117318
【氏名又は名称】社団法人日本化学工業協会
【出願日】 平成13年6月4日(2001.6.4)
【代理人】 【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
【公開番号】 特開2002−361091(P2002−361091A)
【公開日】 平成14年12月17日(2002.12.17)
【出願番号】 特願2001−168526(P2001−168526)