| 【発明の名称】 |
疎水性物質吸着剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】大石 和之
|
| 【要約】 |
【課題】疎水性物質、特にホルモン様作用物質、多環芳香族炭化水素類や揮発性有機化合物を高効率に吸着し、かつ容易に脱着する吸着剤を提供する。
【解決手段】疎水性非架橋性単量体(例、メチルメタクリレート、スチレン)と親水性架橋性単量体(例、ノナエチレングリコールジメタクリレート)とが共重合されてなる架橋重合体よりなることを特徴とする疎水性物質吸着剤。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 疎水性非架橋性単量体と親水性架橋性単量体とが共重合されてなる架橋重合体よりなることを特徴とする疎水性物質吸着剤。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、試料中の疎水性物質、特にホルモン様作用物質、多環芳香族炭化水素類や揮発性有機化合物を高効率に吸着し、かつ容易に脱着する吸着剤に関する。 【0002】 【従来の技術】排水などを含む環境水や土壌、あるいは大気といった環境試料中には様々な疎水性の有害物質が含まれている。一般に大量の環境試料中における、これらの疎水性の有害物質の初期濃度は低い。ところが、環境試料中に長期に渡って存在する間に、環境試料中の固体物質の表面など拡散性の低い箇所や、生体内における濃縮などによって高濃度化し、生態系に大きな影響を与える。従って大量の環境試料中で低濃度状態であっても、これらを放置することは重大な問題となる。 【0003】これらの疎水性の有害物質の内、環境中に排出された生体由来の、あるいは合成されたステロイドホルモン類や化学物質の一部は、生体内に取り込まれるとホルモン類似作用を示すものがある。これらの化学物質は内分泌攪乱化学物質と呼ばれ、極めて微量であっても動物の生殖機能等に悪影響を及ぼすことがわかってきた。これらのステロイドホルモン類やホルモン様作用物質類(以下、まとめてホルモン様作用物質という)は、人為的な排出に由来する場合が多いため、排出処理過程においてこれらの物質を効率よく除去する必要がある。 【0004】一方、各種の産業過程で大量に使用される、トリクロロエチレン等の揮発性有機化合物は、発ガン性の指摘される物質であるが、工場排水から地下水あるいは土壌に浸出し、汚染の原因とされている。これらの揮発性有機化合物の中には、その防腐効果により建設材料等にも使用されているものもあり、居住者への悪影響が懸念されている。また、ベンゾピレン等の多環芳香族炭化水素類は、家庭用あるいは産業用の各種燃焼装置からの排気ガス、特に自動車排気に含まれる発ガン性の指摘される物質で、環境大気中での高濃度での存在が問題視されている。これらの物質についても、人体への直接的な影響が重大であるため、その排出過程での除去、環境中からの除去が必要である。 【0005】一般に、各種試料中の疎水性物質を吸着する吸着剤としては、活性炭、ゼオライト、シリカなどの無機系吸着剤;合成高分子よりなる有機合成高分子系吸着剤などが用いられている。上記の無機系吸着剤は、構成素材が限定されるため、対象物質に合わせた組成変更が困難である欠点がある。また、再生処理が困難である、発火の危険性がある、コストが高いなどの欠点も指摘されている。一方有機合成高分子系吸着剤は、素材の選択が広範囲に及び得るので、対象物質に合わせた最適化が容易であるという長所がある。 【0006】有機合成高分子系吸着剤よりなる疎水性物質吸着剤としては、スチレン又はジビニルベンゼンを主成分とした吸着剤が汎用されている。しかしながら、これらのスチレン又はジビニルベンゼン系吸着剤は疎水性が強いため、一度吸着された吸着対象物質を脱着しにくく、従って吸着対象物質を脱着させて該対象物質を測定したり、吸着剤を再利用することが困難であった。 【0007】最近、上記スチレン系吸着剤に親水性基を導入した吸着剤が提案されている。このような吸着剤の例としては、例えば、(1)ジビニルベンゼン−ビニルピロリドン共重合体からなる吸着剤(米国特許5,882,521号);(2)ジビニルベンゼン−多価アルコールポリ(メタ)アクリル酸エステルの共重合体からなる吸着剤(特開平6−258203号公報)などがある。 【0008】しかしながら、上記(1)の吸着剤は、親水性単量体の含有率が12〜30モル%と低いため親水性が不十分であり、吸着された疎水性物質の脱着能が低い欠点があった。また、上記(2)の吸着剤は、ジビニルベンゼンに比べてより親水性である多価アルコールポリ(メタ)アクリル酸エステルを共重合成分として用いることにより親水化を図っているが、該(メタ)アクリル酸エステル自体の親水性が小さいため、その結果得られた共重合体の親水性が小さく、脱着能が不十分であった。また、上記(1)及び(2)の吸着剤には、疎水性単量体として、架橋性単量体であるジビニルベンゼンが用いられているが、ジビニルベンゼンは疎水性が非常に強いため、該吸着剤の脱着能低下の主原因となっている。しかしながら、吸着剤の機械的強度の向上を図るために架橋を高度に保つ必要があり、ジビニルベンゼンの使用量を低下させるにも限度がある。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の従来の親水性基含有吸着剤の欠点、特に脱着能低下を解決するものであり、その目的は、疎水性物質、特にホルモン様作用物質、多環芳香族炭化水素類や揮発性有機化合物を高効率に吸着し、かつ容易に脱着する吸着剤を提供することである。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明は、疎水性非架橋性単量体と親水性架橋性単量体とが共重合されてなる架橋重合体よりなることを特徴とする疎水性物質吸着剤(以下、単に吸着剤ともいう)である。 【0011】以下、本発明の詳細を説明する。 (1)疎水性非架橋性単量体本発明における疎水性非架橋性単量体としては、特に限定されず、公知の疎水性単量体が挙げられ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系単量体;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族系単量体などが挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルなる表現は、アクリル及びメタクリルを総称するものとする。また、(メタ)アクリレートなる表現は、アクリレート及びメタクリレートを総称するものとする。 【0012】(2)親水性架橋性単量体本発明における親水性架橋性単量体は、少なくとも1つの親水性基と少なくとも2つの重合性基とを有する単量体である。上記親水性基は、公知の親水性官能基であり、その分子量、構造に特に制限はない。これらの内、特に好ましくは水酸基、エポキシ基、アルキレングリコール基、アルデヒド基、シアノ基、アミノ基、含窒素複素環基などである。これらの親水性基は、単量体1分子内に複数個、又は複数種存在してもよい。 【0013】上記重合性基としては、重合反応により高分子を形成し得る官能基であれば制限はないが、特にビニル基が好ましい。これらの重合性基は、単量体1分子中に少なくとも2個存在することが必要である。 【0014】上記親水性架橋性単量体としては、例えば、下記式(1)で表されるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、【化1】
(式中、RはH又はCH3 、nは5以上の数を示す) 下記式(2)で表されるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、【化2】
(式中、RはH又はCH3 、mは8以上の数、−C3 H6 O−は−CH2 CH2CH2 O−又は−CH(CH3 )CH2 O−又は−CH2 CH(CH3 )O−を示す) グリセリンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは複数種が用いられてもよい。 【0015】上記親水性架橋性単量体の使用量は、用いられる該単量体の種類、上記の疎水性非架橋性単量体の種類、及び/又は吸着対象物質の性質にもよるが、少なくなると疎水性が大きくなり従来技術と同様に脱着能が低下し、多くなると親水性が大きくなり疎水性物質を十分吸着することができなくなるので、疎水性非架橋性単量体100重量部に対して100〜1000重量部、より好ましくは150〜800重量部である。 【0016】(3)重合反応本発明の吸着剤は、上記疎水性非架橋性単量体と上記親水性架橋性単量体とが共重合されてなる架橋重合体よりなる。上記重合反応は、通常、重合開始剤の存在下において行われるが、重合方法としては、公知の重合方法、例えば、懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法などの方法が挙げられる。その中でも、操作の簡便性から、懸濁重合法を用いることが好ましい。例えば、懸濁重合法で行う場合、水溶性分散剤を溶解した水性分散媒に、上記疎水性非架橋性単量体、親水性架橋性単量体及び開始剤の混合物を分散させ、さらに必要に応じて添加剤等を添加した後、攪拌しながら窒素雰囲気下で昇温することにより重合反応を行うことができる。 【0017】上記水溶性分散剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子類;セルロース誘導体類;ゼラチン、デンプン等の水溶性高分子化合物;ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機塩類;各種界面活性剤等が用いられる。これらの中でも水溶性高分子化合物が好ましく、特にポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の非イオン性の水溶性高分子が好適である。 【0018】上記分散媒としては、水や公知の有機溶媒などが用いられる。好ましくは、水又は水と水溶性有機溶媒との混合物が用いられる。 【0019】上記重合開始剤としては、特に限定されず、水溶性又は油溶性の公知のラジカル重合開始剤が用いられる。上記重合開始剤の具体的な例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられる。上記重合開始剤の使用量は、上記疎水性非架橋性単量体と上記親水性架橋性単量体との単量体混合物100重量部に対し、0.05〜4重量部が好ましく、0.08〜3重量部がより好ましい。重合開始剤の使用量が0.05重量部未満になると、重合反応が不十分となったり、重合に長時間を要することがあり、4重量部を越えると、急激な反応の進行により、凝集物が発生することがある。 【0020】さらに、上記重合時には、必要に応じて、公知の添加剤を添加してもよい。これらの添加剤としては、例えば、重合体を大孔径の多孔質体とするための多孔質化剤(相分離剤)、連鎖移動剤、pH調節剤及び比重調節剤などが用いられる。 【0021】上記多孔質化剤としては、例えば、イソアミルアルコールやオクタノール等のアルコール類やヘキサンなどの脂肪族系炭化水素、キシレンやトルエンなどの芳香族系炭化水素等が用いられる。 【0022】上記素材を用いた懸濁重合の反応条件は、用いる単量体や重合開始剤によっても異なるが、重合温度は、20〜100℃で、0.5〜50時間反応させることが好ましい。重合後、得られた架橋重合体は、洗浄して乾燥することにより本発明の吸着剤が得られる。洗浄には、水及び/又は有機溶媒が用いられ、通常、複数回洗浄する必要がある。また好ましくは複数種の有機溶媒で複数回洗浄する。洗浄に使用する有機溶媒は、用いた単量体によっても異なるが、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;アセトンなどの公知の有機溶媒が用いられる。 【0023】また、本発明の吸着剤は、上記架橋重合体を原料として、公知の成形方法、例えば、射出成形法、押出成形法又は、ブロー成形法などによっても調製することができる。 【0024】(4)吸着剤の物性本発明の吸着剤に用いられる架橋重合体の形状は、特に制限されず、例えば、粒子状、繊維状、フィルタ状等、液体または気体である試料と接触することのできる形状であればよいが、特に粒子状であるのが好ましい。また、その多孔性構造についても制限はなく、使用環境下で形状が維持される強度を有する程度の多孔性であれば、ミクロポア構造であってもよいし、マクロポア構造であってもよい。また、発泡体であってもよい。また本発明の吸着剤の大きさは、特に限定されるものではなく、使用時の条件により適宜選択されるものであるが、粒子状である場合、平均粒径0.1μm〜50mmであるのが好ましく、1μm〜20mmであることがより好ましい。これらの範囲を逸脱する場合は、測定時や排水処理時あるいは排気処理時の作業がしにくくなる。特に、本発明の吸着剤を疎水性物質測定の前処理に用いる場合には、その平均粒径が1〜500μmが好ましく、10〜300μmがより好ましい。また、大量試料中からの疎水性物質の除去に用いる場合には、100μm〜50mmが好ましく、500μm〜20mmがより好ましい。本発明の吸着剤の密度は、0.5〜3.0が好ましく、0.7〜2.0がより好ましい。この範囲を逸脱すると、使用時の取り扱い性、特に大量試料処理時の取り扱い性が低下する。さらに上記吸着剤は、特殊な事情において、上記架橋重合体が表面層を形成する被覆構造体であってもよい。その場合、被覆されるコア部分の素材に特に制限はなく、使用環境下で形状が保持される程度の強度を有する物質で形成され、かつ外部に疎水性物質の溶出がない物質で構成される必要がある。被覆構造体とされた場合の吸着剤においても、その形状は特に制限されず、粒子状、繊維状、フィルタ状など、試料である液体や気体と接触できる形状であればよい。 【0025】(5)疎水性物質本発明でいう「疎水性物質」は、試料である液体又は気体に含まれる疎水性物質の内、水への溶解度が10g/L以下、特に1g/L以下の物質をいう。これらの疎水性物質には、例えばホルモン様作用物質、多環芳香族炭化水素類、揮発性有機化合物が含まれる。ホルモン様作用物質には、生物由来又は合成のステロイドホルモン類、および生体内においてホルモン類似作用を発現すると報告されている物質またはホルモン類似作用が疑われる物質であり、いわゆる内分泌攪乱化学物質と呼ばれる物質も含まれる。ホルモン様作用物質としては、例えば、コプラナーPCB及び臭素化ダイオキシンを含むダイオキシン類;ポリ塩化ビフェニール類;4−t−ブチルフェノール、4−n−ヘプチルフェノール、ノニルフェノール、4−t−オクチルフェノールなどのアルキルフェノール類;ビスフェノールA;2,4−ジクロロフェノール;フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチルなどのフタル酸エステル類;アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル;ベンゾ(a)ピレン、ベンゾフェノン、4−ニトロトルエン、スチレン、スチレン2量体、スチレン3量体などの芳香族化合物;エストラジオール、エストロン、エストリオールなどのエストロジェン類;DDTなどの農薬類などが挙げられる。また、多環芳香族炭化水素類としては、公知の多環芳香族炭化水素の全てを含み、例えば、ピレン、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾアントラセン、メチルコラントレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、ベンゾフルオランテン、1−ピレノール;ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン等の含硫炭化水素類;ナフタレンジニトロピレン、ニトロピレン等のニトロ化炭化水素類等が挙げられる。揮発性有機化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、2,2,4−トリメチルペンタン、ブタジエン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;α―ピネン、リモネン等のテルペン類;トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、テトラクロロメタン等のハロゲン化物;酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられ、本発明の吸着剤ではこれらの疎水性物質を吸着対象とすることもできる。 【0026】本発明の吸着剤は、これらの中でも、特にベンゼン骨格を有する化合物の吸着において、好適に用いられる。具体的には、例えば、ダイオキシン類;ポリ塩化ビフェニール類;フタル酸エステル類;エストロジェン類;アルキルフェノール類などの内分泌攪乱化学物質;ベンズピレン、アントラセンなどの多環芳香族化合物;トルエン、ニトロトルエン、キシレン、ベンゼン、スチレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。また、その他にも、ヘキサン、デカン、ブタジエンなどの脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類などの吸着にも好適に用いられる。 【0027】(6)疎水性物質吸着剤の使用形態本発明の吸着剤は、疎水性物質、特にホルモン様作用物質、多環芳香族炭化水素類又は揮発性有機化合物を効率よく吸着し、かつ容易に脱着する吸着剤である。従って、疎水性物質を吸着させる工程を含む全ての用途に有益に用いることができる。例えば固相抽出用の吸着剤として、疎水性物質の測定の前処理に用いたり、又は環境浄化用の吸着剤として、試料中の疎水性物質を除去するのに好適に用いることができる。但し、これらの用途のみに限定されるものではない。 【0028】(7)吸着対象試料の形態本発明の吸着剤が吸着対象とする、上記疎水性物質を含む試料の形態は、特に制限がなく、液体、気体又は固体からの抽出物など、いずれであってもよい。 【0029】 【作用】本発明の疎水性物質吸着剤に用いられる架橋重合体は、機械的強度を保持し、かつ脱着能向上のための親水性を維持するために、親水性架橋性単量体が用いられ、一方吸着剤の吸着性向上のための疎水性化を図るため、非架橋性の疎水性単量体が用いられて共重合された重合体である。従って、疎水性物質を高効率に吸着し、かつ容易に脱着する吸着剤となる。 【0030】 【実施例】以下に、本発明の実施例を示す。 (吸着剤の調製) (実施例1)メチルメタクリレート(疎水性非架橋性単量体)200g及びノナエチレングリコールジメタクリレート(親水性架橋性単量体)200gに、過酸化ベンゾイル(重合開始剤:キシダ化学社製)1.5gを溶解した。得られた単量体混合液を4重量%ポリビニルアルコール水溶液2500mLに撹拌しながら分散させ、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。80℃で12時間重合反応した後、内容物をイオン交換水で3回、アセトンで1回洗浄した。洗浄後乾燥して吸着剤を得た。 【0031】(実施例2)実施例1におけるメチルメタクリレート(疎水性非架橋性単量体)200gの代わりに、スチレン(疎水性非架橋性単量体)200gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸着剤を調製した。 【0032】(比較例1)ジビニルベンゼン(疎水性架橋性単量体)200g及びスチレン(疎水性非架橋性単量体)200gに、過酸化ベンゾイル(重合開始剤:キシダ化学社製)1.5gを溶解した。得られた単量体混合液を4重量%ポリビニルアルコール水溶液2500mLに撹拌しながら分散させ、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。80℃で12時間重合反応した後、内容物をイオン交換水で3回、アセトンで1回洗浄した。洗浄後乾燥して吸着剤を得た。 【0033】(比較例2)比較例1におけるスチレン(疎水性非架橋性単量体)200gの代わりに、エチレングリコールジメタクリレート(疎水性架橋性単量体)200gを用いたこと以外は、比較例1と同様にして吸着剤を調製した。 【0034】(比較例3)ジビニルベンゼン(疎水性架橋性単量体)180g及びN−ビニル−2−ピロリドン(親水性非架橋性単量体)100gをトルエン250gに溶解した。この溶解液に、過酸化ベンゾイル(重合開始剤:キシダ化学社製)1.0gを溶解した。得られた単量体混合液を4重量%ポリビニルアルコール水溶液2500mLに撹拌しながら分散させ、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。80℃で24時間重合反応した後、内容物をイオン交換水で3回、アセトンで1回、エタノールで4回洗浄した。洗浄後乾燥して吸着剤を得た。 【0035】(性能評価)上記実施例及び比較例で得られた吸着剤について、以下のようにして、疎水性物質の吸着性能及び脱着性能を評価した。上記の各実施例および比較例により得られた吸着剤0.1gを、ポリプロピレン製カラム(容量3mL、ポリエチレン製フィルタ付き)に充填した。このカラムにダイオキシン1pg−TEQ/Lを含む試料1Lを通液し、吸着剤にダイオキシンを吸着させた。通過した水溶液を回収し、公定法(日本工業規格 K 0312)にてダイオキシン量を測定して吸着率を求め結果を表1に示した。 【0036】また上記カラムに、テトラヒドロフラン10mLを通液して、吸着剤に吸着したダイオキシンを脱着させた。カラムを通過した混合液を回収し、上記と同様の方法でダイオキシン量を測定して脱着率を求め結果を表1に示した。 【0037】 【表1】
【0038】この結果、実施例により得られた吸着剤は、いずれも吸着率及び脱着率とも良好であり、試料中のダイオキシンを高効率に回収した。一方、比較例の吸着剤は脱着率が低く、試料中のダイオキシンを十分回収できなかった。すなわち、従来技術である比較例の吸着剤は、ダイオキシン類の測定などの前処理用吸着剤として不適当であることがわかった。 【0039】 【発明の効果】本発明の吸着剤は、上述した構成よりなるので、試料中の疎水性物質、特にホルモン様作用物質、多環芳香族炭化水素類又は揮発性有機化合物を精度よく吸着でき、さらに、いったん吸着された疎水性物質は、有機溶媒等による洗浄操作により容易に脱着することが可能である。従って本発明の吸着剤は、低濃度の疎水性物質、特にホルモン様作用物質、多環芳香族炭化水素類もしくは揮発性有機化合物の測定、又はこれらの除去に好適に使用することができる。特に、微量の疎水性物質を試料から回収するための処理に好適に使用することができる。また、本発明の吸着剤は、高架橋度のため機械的強度が大きく、大量処理あるいは繰り返し使用時においても破損等が少なく簡単に取り扱える。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000002174 【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成13年6月8日(2001.6.8) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2002−361081(P2002−361081A) |
| 【公開日】 |
平成14年12月17日(2002.12.17) |
| 【出願番号】 |
特願2001−174379(P2001−174379) |
|