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【発明の名称】 ゴルフボール
【発明者】 【氏名】伏原 和久

【氏名】竹村 光平

【要約】 【課題】本発明により、ラフからのショットであってもフライヤーを起こし難く、かつ高い反発性を有して飛行性能に優れたゴルフボールを提供する。

【解決手段】本発明は、単層または多層構造を有するコアと該コアを被覆形成して成るカバーから成るゴルフボールであって、該カバーが、周波数10Hz、動歪5%および昇温速度4℃/分の条件下で動的粘弾性測定により得られた複素弾性率および損失正接tanδの温度分散曲線における−10℃での複素弾性率20〜150MPaおよびtanδ0.05以上を有することを特徴とするゴルフボールに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 単層または多層構造を有するコアと該コアを被覆形成して成るカバーから成るゴルフボールであって、該カバーが、周波数10Hz、動歪5%および昇温速度4℃/分の条件下で動的粘弾性測定により得られた複素弾性率および損失正接tanδの温度分散曲線における−10℃での複素弾性率20〜150MPaおよびtanδ値0.05以上を有することを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】 前記カバーが、基材ポリマー中に熱可塑性エラストマー30重量%以上を含有する請求項1記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラフからのショットであってもフライヤーを起こし難く、かつ高い反発性を有して飛行性能に優れたゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、ラウンド用ゴルフボールとしては、ツーピースゴルフボールやスリピースゴルフボール等のソリッドゴルフボールや糸巻きゴルフボールが用いられている。ソリッドゴルフボールは、ポリブタジエンを主材とするゴム組成物を一体成形したコアをアイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂製のカバーで被覆したものであり、糸巻きゴルフボールは中心の固体または液体の芯部上に、糸ゴムを高延伸力下に巻き付けて糸巻きコアを形成し、これにアイオノマー樹脂やバラタ等によるカバーで被覆して形成される。
【0003】ラウンドプレー中には、ボールがラフや深い芝生に入り込むことがしばしばある。そのような場所からのショットでは、フライヤーと呼ばれるミスショットが起こり易いことが指摘されている。フライヤーとは、そのようなショットにおいて雑草や芝生がクラブとボールとの間に噛み込むため、バックスピン量が減少してボールが高く上がってしまう現象のことである。フライヤーを生じると、ゴルフボールの弾道やスピン量をコントロールすることが難しくなり、特にアプローチショットにおいてはコントロール性が劣る原因の1つであり、大きな問題となっていた。この現象は、ソリッドゴルフボール、糸巻きゴルフボールに関わらず、いずれのゴルフボールでも起こり、ゴルフプレーヤーの悩みの1つであった。
【0004】このフライヤーをカバー種別に調べると、アイオノマー樹脂系カバーを用いたゴルフボールの方が、バラタ系カバーを用いたゴルフボールより起こりやすいことがわかった。また、バラタカバーを用いたゴルフボールは、フライヤーを起こし難く、スピンコントロール性が優れているが、カバー材自体の反発性が低く、耐カット性に劣るという欠点があった。これに対して、アイオノマー樹脂系カバーは弾性率が高く反発性能に優れている反面、スピンがかかりにくくコントロール性が劣るという欠点も有する。
【0005】上記のようなフライヤーの問題を解決し、かつ反発性能に優れたゴルフボールを提供するために、本発明者等はゴルフボールのカバーの動的粘弾性測定による−10℃での複素弾性率が50〜1500kgf/cm2(5〜150MPa)でありトリプソメーターによる反発弾性が50%以上である材料を選択することを提案した(特開平10‐305115号公報)。しかしながら、近年のラウンド用ゴルフボールに望まれる要求は高く、このような条件を満たしても未だ耐フライヤー性に関して十分であるとは言えなくなってきている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のような従来のゴルフボールの有する問題点を解決し、ラフからのショットであってもフライヤーを起こし難く、かつ高い反発性を有して飛行性能に優れたゴルフボールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、カバーの複素弾性率およびtanδの値を特定範囲内に規定することによって、ラフからのショットであってもフライヤーを起こし難く、かつ高い反発性を有して飛行性能に優れたゴルフボールが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】即ち、本発明は、単層または多層構造を有するコアと該コアを被覆形成して成るカバーから成るゴルフボールであって、該カバーが、周波数10Hz、動歪5%および昇温速度4℃/分の条件下で動的粘弾性測定により得られた複素弾性率および損失正接tanδの温度分散曲線における−10℃での複素弾性率20〜150MPaおよびtanδ値0.05以上を有することを特徴とするゴルフボールに関する。
【0009】前述のように、本発明者等が以前に提案したカバー材料(特開平10-305115号公報)は、動的硬さを表すファクターとしての、特定の温度、周波数および動歪量で測定した複素弾性率を特定範囲内に規定したものである。これは、アプローチショット時の条件、即ち常温、高周波数および大変形量での動的硬さを規定することにより、アプローチショット時に最もスピンがかかり易い条件を選び出したものである。
【0010】しかしながら、カバー材料について更に詳しく調べてみると、この条件を満たすものであっても、耐フライヤー性が十分なものとそうでないものが存在することがわかった。これはフライヤーが特殊な条件下で起こるためである。即ち、単にアプローチショット時の変形条件を元にした動的硬さだけでは、雑草や芝生がゴルフクラブのフェイスとゴルフボールの間に挟まった状態で打撃した時のゴルフボールの挙動を示すことができなかったからである。従って、フライヤーが起こらないようにするには、どのようにすればよいのか、特に上記のような特殊な状態におけるゴルフボールの有するどのような特性に注目すればよいのかを考え直す必要があった。
【0011】耐フライヤー性に優れるゴルフボールであるためには、ゴルフクラブのフェイスとゴルフボール表面の間に雑草や芝生が挟まった状態でもバックスピンがかからなければない。即ち、雑草等が挟まった状態でもゴルフクラブのフェイスとゴルフボール表面の間に摩擦力が働かなければ、ゴルフボールにスピンを与えることはできない。つまり、雑草等が挟まった状態でも打撃時に摩擦力を保持することができれば、耐フライヤー性を向上することができる。そこで、この摩擦力に関連のある特性に注目した。
【0012】ゴルフボールのカバー材料として用いられる高分子材料は、一般に粘弾性を有しており、そのような材料の弾性率、曲げ強さ、硬度等の特性は主に弾性に依存し、衝撃強さ、摩擦力(摩擦係数)等の特性は主に粘性に依存する。
【0013】本発明者等は上記の点について種々検討を重ねた結果、カバー材料の動的硬さを表すファクターとしての上記複素弾性率に加えて、同様に動的粘弾性測定によりより得られる特性として力学的減衰を表す損失正接「tanδ」に着目した。ここで複素弾性率とtanδについて説明すると、一般に複素弾性率E*とtanδは以下の2式:E*=(E'2+E"21/2tanδ=E"/E'(式中、E'は貯蔵弾性率であり、E"は損失弾性率である。)で表される。加えられた応力と歪との時間的遅れを表す角度がδであり、損失正接tanδは、損失係数とも呼ばれ、材料に加えられた応力を熱エネルギーとして散逸する能力、即ちエネルギー損失を表す。即ち、tanδの値が大きいと、前述の衝撃強さや摩擦力等の粘性に依存する特性値が大きいことになる。
【0014】摩擦力は一般に以下の式:摩擦力=(粘着摩擦力)+(変形損失摩擦力)+(研削摩擦力)
で表される。粘着摩擦力は、ゴルフクラブのフェイスとゴルフボール表面との界面で分子レベルの結合が生じていると考えると、その結合を剪断破壊するのに必要な力である。この粘着摩擦力は、接触面の影響を受け、その接触面積が大きいほど大きくなる。
【0015】また、打撃時にはゴルフボール表面のカバーが、接触面であるゴルフクラブのフェイスの凹凸に従って、圧縮変形と回復挙動を繰り返すが、カバー内部でエネルギー損失が生じ、それを外部からの応力による仕事で補う際に生じるのが変形損失摩擦力である。この変形損失摩擦力は変形によって生じる摩擦力である。研削摩擦力は、ゴルフボール表面とゴルフクラブのフェイスとの関係でゴルフボール表面のカバーがゴルフクラブに対してほとんど研削力を持たないので、ボール側からの制御因子ではなく、ここでは考えなくてもよい。
【0016】雑草や芝生の影響のない通常のショットにおいては粘着摩擦力の影響が大きくなり、雑草や芝生が挟まった状態でのショットにおいては変形損失摩擦力の影響が大きくなる。変形損失摩擦力は、一般に硬度の低いものほど大きくなる傾向があり、更に硬度がある程度低くなると、損失係数tanδが大きいものほど大きくなる。逆に、硬度が高いと、tanδが小さくなって、その影響が小さくなる。即ち、硬度を示す複素弾性率が小さく、かつtanδが大きいものほど耐フライヤー性が向上することになる。
【0017】従って、本発明のゴルフボールでは、カバーが、周波数10Hz、動歪5%および昇温速度4℃/分の条件下で動的粘弾性測定により得られた複素弾性率および損失正接tanδの温度分散曲線における−10℃での複素弾性率20〜150MPaおよびtanδ値0.05以上を有することを要件とするが、複素弾性率は好ましくは100MPa以下、より好ましくは50MPa以下であることが望ましく、tanδは0.07以上が好ましい。しかしながら、複素弾性率が小さくなり過ぎたり、tanδが大きくなり過ぎると、飛行性能の大きな因子である反発係数が低下する。従って、複素弾性率は30MPa以上が好ましく、tanδは好ましくは0.3以下、より好ましくは0.11以下が望ましい。
【0018】尚、本発明者等は、温度周波数換算則からゴルフボール打撃時の常温で高周波数になるような場合と、低温(−10℃)における周波数10Hzでの動的粘弾性測定による複素弾性率とが相関性を有することを明らかとした。また動歪量を5%と実際のアプローチショット時に近い変形量にすることにより、動歪5%で測定した−10℃における複素弾性率がフライヤーの生起と相関性があることを明らかにした(特開平10-305115号公報)。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明について更に詳述すると、本発明のゴルフボールはコアおよび該コア上に形成されたカバーから成る。本発明のゴルフボールは、ツーピースゴルフボール等のソリッドゴルフボールであっても、糸巻きゴルフボールであってもよい。ソリッドゴルフボールに用いられるコア(ソリッドコア)は、従来から用いられているものであってもよく、例えばポリブタジエンゴム等の基材ゴム100重量部に対して、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸またはその金属塩や、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の官能性モノマーから成る加硫剤(架橋剤)を単独または合計で10〜60重量部、有機過酸化物等の共架橋開始剤0.5〜5重量部、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の充填材10〜30重量部、要すれば老化防止剤等を含有するゴム組成物を通常のロール等の適宜の混練機を用いて混練し、所定の金型にて、例えば140〜170℃で10〜40分間加熱加圧成形することにより得られる。この場合、コアは単層構造を有していても、また多層構造を有していてもよい。
【0020】更に、糸巻きゴルフボールに用いられるコア(糸巻きコア)も、従来から用いられているものであってもよく、センターとそのセンターの周囲に糸ゴムを延伸状態で巻き付けることによって形成した糸ゴム層とから成る。センターとしては液系(リキッドセンター)またはゴム系(ソリッドセンター)のいずれを用いてもよい。また、上記センター上に巻き付ける糸ゴムは、糸巻きゴルフボールの糸巻き層に従来から使用されているものと同様のものを用いてもよく、例えば天然ゴムまたは天然ゴムと合成ポリイソプレンに硫黄、加硫助剤、加硫促進剤、老化防止剤等を配合したゴム組成物を加硫することによって得られたものを用いてもよい。糸ゴムはセンター上に約10倍に引き伸ばして巻き付け、糸巻きコアを作製する。但し、これらのソリッドコア、糸巻きコアは単なる例示であって、それらに限定されるものではない。
【0021】上記コアの直径は、40.0〜42.5mm、好ましくは40.3〜42.0mmである。40.0mmより小さいとボール全体に対するコアの体積分率が小さくなって反発性が低下し、42.5mmより大きいと、カバーが薄くなるため、本発明の耐フライヤー性向上効果が不十分となったり、耐久性が低下する。
【0022】次いで、上記コア上にはカバーを被覆する。本発明のカバーは、周波数10Hz、動歪5%および昇温速度4℃/分の条件下で動的粘弾性測定により得られた複素弾性率および損失正接tanδの温度分散曲線における−10℃での複素弾性率20〜150MPaおよびtanδ値0.05以上を有することを要件とする。
【0023】このカバーも単層構造に限らず、2層以上の多層構造を有してもよい。本発明のカバーに用いられる材料は、上記のような複素弾性率およびtanδを満足すれば特に限定されないが、一般的なカバー材料であるアイオノマー樹脂の単独での使用は適さない。特に高いtanδを実現するために、熱可塑性エラストマー、エチレン-メタクリル酸共重合体、またはそれらとアイオノマー樹脂との混合物等を用いることが有効である。
【0024】上記熱可塑性エラストマーとしては、分子内にゴム弾性を示すソフトセグメントと塑性変形を抑制する分子拘束成分(ハードセグメント)としての凍結相や結晶相を有するもの、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー等を用いることができる。熱可塑性エラストマーは、複素弾性率が低いだけでなく、上記のようにソフトセグメントの構成を選択することにより高いtanδを可能にする。特にスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、例えばポリスチレン相(S)およびポリブタジエン相(B)から成るSBS樹脂や、B相の代わりにポリイソプレン相(I)を含むSIS樹脂、B相の代わりにエチレン/プロピレン相(EP)を有するSEPS樹脂、B相の代わりにエチレン/ブチレン相(EB)を有するSEBS樹脂等が挙げられる。
【0025】これらの具体例として、例えばJSR(株)から商品名「TR」シリーズ(例えば、「TR2787」)や「SIS」シリーズ(例えば、「SIS5000」)で市販されているもの、旭化成工業(株)から商品名「タフテック」シリーズで市販されているもの(例えば、「タフテックZ514」)、クラレ(株)から商品名「セプトン」シリーズで市販されているもの(例えば、「セプトン2002」)、アロン化成(株)から商品名「AR790」で市販されているもの等が挙げられる。
【0026】上記エチレン-メタクリル酸共重合体の具体例としては、商品名「ニュークレル」シリーズで市販されているもの(例えば、「ニュークレルAN4211」、「ニュークレルAN4213」等)が挙げられる。
【0027】上記カバー組成物用ポリマー成分は、反発性の高い他のカバー材料、例えばアイオノマー樹脂との混合物として用いることができるが、カバー組成物用ポリマー成分中に熱可塑性エラストマーが少なくとも30重量%以上含まれることが望ましい。
【0028】上記アイオノマー樹脂としては、エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものである。上記のα,β‐不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸とメタクリル酸が好ましい。また、α,β‐不飽和カルボン酸エステル金属塩としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n‐ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルが好ましい。上記エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸との共重合体中や、エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、錫、ジルコニウム、カドミウムイオン等が挙げられるが、特にナトリウム、亜鉛、マグネシウムイオンが反発性、耐久性等からよく用いられ好ましい。
【0029】上記アイオノマー樹脂の具体例としては、それだけに限定されないが、ハイミラン1555、1557、1605、1652、1702、1705、1706、1707、1855、1856(三井デュポンポリケミカル社製)、サーリン(SURLYN)8945、9945、6320、AD8511、AD8512、AD8542(デュポン社製)、アイオテック(IOTEK)7010、8000(エクソン(Exxon)社製)等を例示することができる。
【0030】また、本発明において、上記カバー用組成物には、主成分としての上記ポリマー成分の他に必要に応じて、硫酸バリウム等の充填材や二酸化チタン等の着色剤や、その他の添加剤、例えば分散剤、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤並びに蛍光材料または蛍光増白剤等を、ゴルフボールカバーによる所望の特性が損なわれない範囲で含有していてもよい。
【0031】本発明のゴルフボールのカバーは、厚さ0.3〜3.5mm、好ましくは0.8〜2.5mmを有することが望ましい。カバー厚さが0.3mmより小さいと本発明の耐フライヤー性向上効果が不十分となったり、カバーの強度が不足して耐久性が低下し、3.5mmより大きいとボール全体に対するコアの体積分率が小さくなって反発性が低下する。
【0032】上記カバーを被覆する方法としては、特に限定されるものではなく、通常のカバーを被覆する方法で行うことができる。カバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてコアを包み、130〜170℃で1〜5分間加圧成形するか、または上記カバー用組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法が用いられる。そして、カバー成形時に、必要に応じて、ボール表面にディンプルを形成し、また、カバー成形後、ペイント仕上げ、スタンプ等も必要に応じて施し得る。
【0033】射出成形法において、熱可塑性エラストマーを用いる場合には加熱し流動状態の材料を注入後冷却して、固化した状態で取り出す。また、プレス成形法においても半球殻状のハーフシェルを成形する際に、上記射出成形法と同様に、熱可塑性エラストマーを用いる場合には加熱し流動状態の材料を注入後冷却して、固化した状態で取り出す。
【0034】カバー成形時に、必要に応じて、ディンプルと呼ばれるくぼみを多数表面上に形成する。本発明のゴルフボールは美観を高め、商品価値を上げるために、通常ペイント仕上げ、マーキングスタンプ等を施されて市場に投入される。このように、カバーの形状、表面に影響を与える因子はゴルフクラブのフェイスと直接接触するような場合には摩擦力、スピンに影響を与えるが、雑草が間に挟まるような耐フライヤー性に関してはほとんど影響を与えない。尚、本発明のゴルフボールは、ゴルフボール規則に基づいて、直径42.67mm以上(好ましくは42.70〜43.20mm)、重量45.93g以下に形成される。
【0035】上記カバー被覆後のゴルフボールはコンプレッション(初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの変形量)2.2〜4.5mm、好ましくは2.5〜3.3mm、より好ましくは2.9〜3.2mmを有することが望ましい。2.2mmより小さいと硬くなり過ぎて打球感が悪くなり、4.5mmより大きいと軟らかくなり過ぎて反発性が悪くなり飛距離が低下する。
【0036】本発明では、ラフからのショットであってもフライヤーを起こし難く、かつ高い反発性を有して飛行性能に優れたゴルフボールを提供する。
【0037】
【実施例】次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】(コアの作製)以下の表1に示した配合を有するコア用ゴム組成物を混合、混練し、加硫条件155℃で18分間、加熱プレスして、直径38.5mmを有する球状ソリッドコアを作製した。
【0039】
【表1】

【0040】(注1) JSR(株)から商品名「BR01」で市販のポリブタジエンゴム(注2) 吉富製薬(株)から商品名「ヨシノックス425」で市販【0041】(カバー用組成物の調製)以下の表2に示した配合の材料を、二軸混練型押出機により160〜180℃でミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35およびシリンダー温度210℃とした。得られたカバー組成物の動的粘弾性測定を行い、−10℃での複素弾性率およびtanδを表3および表4に示した。
【0042】
【表2】

【0043】(注3)アロン化成(株)製のSEBS(スチレン‐エチレン‐ブタジエン‐スチレン共重合体)
(注4)三井デュポンポリケミカル(株)製のエチレン-メタクリル酸共重合体(注5)三井デュポンポリケミカル(株)製のエチレン-メタクリル酸共重合体(注6)東レデュポン(株)製のポリエステル系熱可塑性エラストマー(注7)武田バーディッシュウレタン(株)製のポリウレタン系熱可塑性エラストマー(注8)三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂(注9)クラレ(株)製のSEPS(スチレン‐エチレン‐プロピレン‐スチレン共重合体)
【0044】(実施例1〜2および比較例1〜7)上記カバー組成物を、前述のようにして得られたコア上に直接射出成形した。次いで、バリ取り、ペイント前処理、ペイント等の通常のゴルフボールと同様の処理を施して仕上げ、直径42.7mmを有するツーピースソリッドゴルフボールを得た。得られたゴルフボールについて、飛距離、圧縮変形量および耐フライヤー性を測定または評価し、その結果を表3および表4に示した。試験方法は以下の通りとした。
【0045】(試験方法)
■動的粘弾性測定カバー用組成物から作製した幅4mm × 長さ30mm × 厚さ0.5mmの試料片を、粘弾性スペクトロメーターDVA200型((株)島津製作所製)を用いて引っ張りモード(長さ方向の単純伸長)で周波数10Hzおよび動歪5%で強制振動させ、−50から50℃まで4℃/分で昇温させた時の、駆動部と応答部の振幅の比と位相差より求めた複素弾性率およびtanδの温度分散曲線における−10℃におけるそれぞれの値を各カバーの複素弾性率およびtanδとした。
【0046】■飛距離ツルーテンパー社製スイングロボットにウッド1番クラブ(ドライバー)を取付け、ゴルフボールをヘッドスピード45m/秒で打撃し、キャリー(落下点までの飛距離)を測定した。測定は各ゴルフボール8個ずつ行い、その平均値を各ゴルフボールの結果とした。
【0047】■ボールコンプレッションゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの変形量を測定することにより決定した。
【0048】■耐フライヤー性ピッチングウェッジによるアプローチショットにおいて、ボールをティーにのせて打撃した場合の打撃直後のスピン量P1と、深さ4cmのラフからボールを打ち出した場合の打撃直後のスピン量P2とを測定し、両者の比P2/P1×100により決定する。この数値が小さくなるほどフライヤーを起こしやすく、大きくなるほどフライヤーを起こし難いことを表す。結果は、上級ゴルファー10人により実打した場合の平均値により表した。
【0049】(試験結果)
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】以上の結果より、カバーの複素弾性率およびtanδの値を特定範囲内に規定した本発明の実施例1〜2のゴルフボールは、比較例1〜7のゴルフボールに比較して、優れた耐フライヤー性を有し、かつ長い飛距離を有することがわかった。
【0052】これに対して、比較例1〜3および7のゴルフボールは、カバーのtanδが大きいため耐フライヤー性は優れているものの、複素弾性率が小さいため飛距離が短くなっている。比較例4のゴルフボールは、カバーの複素弾性率が小さいため飛距離が短く、tanδの値が小さいため耐フライヤー性が悪くなっている。比較例5のゴルフボールは、カバーのtanδが大きいため耐フライヤー性は良好であるが、複素弾性率が小さいため飛距離が短くなっている。比較例6のゴルフボールは、カバーの複素弾性率が大きいため飛距離は長いものの、tanδが小さいため耐フライヤー性が悪くなっている。
【0053】
【発明の効果】本発明のゴルフボールは、カバーの複素弾性率およびtanδの値を特定範囲内に規定することにより、ラフからのショットであってもフライヤーを起こし難く、かつ優れた飛行性能を有し得たものである。
【出願人】 【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
【出願日】 平成12年7月17日(2000.7.17)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外1名)
【公開番号】 特開2002−28262(P2002−28262A)
【公開日】 平成14年1月29日(2002.1.29)
【出願番号】 特願2000−215766(P2000−215766)