トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学




【発明の名称】 濃度測定方法及び透析装置
【発明者】 【氏名】フォルカー ニーア

【氏名】マティーアス クレーマー

【要約】 【課題】錯体の状態で結合されるイオン、原子または分子の濃度を測定する濃度測定方法及び透析装置において、錯体の状態で結合されるイオン、原子または分子の濃度の測定の信頼性を向上させる。

【解決手段】濃度測定方法は、物質を添加または回収することによって少なくとも濃度測定時にイオン、原子または分子の錯化を防止する工程を備えている。また、透析装置は、血液透析器及び/または血液濾過器と、体外血液循環系統と、透析液系統を備え、体外血液循環系統には、血液透析器及び/または血液濾過器の上流側に、血液中にクエン酸を添加するクエン酸添加手段が接続されているとともに、上記血液透析器及び/または血液濾過器の下流側に、イオンを含有する置換液を血液に添加する置換液添加手段が接続されており、透析液系統は、血液透析器及び/または血液濾過器の下流側に透析液中のイオン濃度を検出する検出手段を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 錯体の状態で結合されるイオン、原子または分子の濃度を測定する方法であって、物質を添加または回収することによって少なくとも濃度測定時にイオン、原子または分子の錯化を防止する工程を備えている濃度測定方法。
【請求項2】 上記添加される物質は酸であり、錯化はpHの変化によって防止される請求項1記載の濃度測定方法。
【請求項3】 錯化は、錯化剤の添加が中断されるか、あるいは、錯化剤が別の添加物質と錯化することにより、濃度測定対象であるイオン、原子または分子を遊離させることで防止される請求項1記載の濃度測定方法。
【請求項4】 クエン酸による血液凝固防止法を用いた血液透析及び/または血液濾過時に、透析液中のイオン濃度の測定に基づいて血中イオン濃度を測定する工程と、透析液中のイオン濃度を測定する前に、濃度測定のため、関連するイオンのクエン酸との錯化を防止する工程とを備えている請求項1ないし3のいずれかに記載の濃度測定方法。
【請求項5】 血液循環へのクエン酸添加を一時的に中断することにより錯化が防止される請求項4記載の濃度測定方法。
【請求項6】 pH値を低下させることによって透析液のイオン/クエン酸錯体からイオンを遊離させることで錯化が防止される請求項4記載の濃度測定方法。
【請求項7】 クエン酸添加を中断させた後に、不作動容積によって決まる不作動時間と準定常状態に達するのに必要な時間とからなる長さの時間の終わりに、透析液中のイオン濃度の測定が実行される請求項5記載の濃度測定方法。
【請求項8】 クエン酸添加を中断させた後に、透析液中のイオン濃度の計測が多数回繰り返され、準定常状態に達した後に計測値が決定される請求項5記載の濃度測定方法。
【請求項9】 クエン酸添加を中断させた後に、透析液中のイオン濃度の計測が多数回繰り返され、透析液で入手した上記イオン濃度を外挿することによって計測値が決定される請求項5記載の濃度測定方法。
【請求項10】 クエン酸添加が所定時間だけ中断され、透析液中のイオン濃度で時間関数として定義された応答関数の面積の積分によって計測値が決定される請求項5記載の濃度測定方法。
【請求項11】 透析液のpH値が2ないし3の範囲に設定される請求項6記載の濃度測定方法。
【請求項12】 上記透析液のpH値の設定は、酸の注入によって行われる請求項6ないし11のいずれかに記載の濃度測定方法。
【請求項13】 透析液中のイオン濃度を血中イオン濃度に近似させる目的で透析液流量が低減される請求項4ないし12のいずれかに記載の濃度測定方法。
【請求項14】 血中イオン濃度の測定は、透析液流量を低減させることなしに計算によって行われる請求項4ないし13のいずれかに記載の濃度測定方法。
【請求項15】 透析液中のイオン濃度の検出は、透析器から流出する透析液中でイオン感知センサによって行われる請求項4ないし14のいずれかに記載の濃度測定方法。
【請求項16】 患者の血中イオン濃度の測定値が、クエン酸添加及び/またはイオンを含有する置換媒質の添加の制御変数によって影響される値を有する被制御変数となる請求項4ないし15のいずれかに記載の濃度測定方法。
【請求項17】 患者の血中イオン濃度の測定値が許容範囲外に合ったり、許容値と異なっている場合に警報が発せられる請求項4ないし16のいずれかに記載の濃度測定方法。
【請求項18】 上記透析器の血液側の区画内のイオン濃度が、クエン酸供給を中断させることなく測定され、許容閾値と比較されるとともに、該比較にしたがってクエン酸供給が変更される請求項4ないし17のいずれかに記載の濃度測定方法。
【請求項19】 上記イオンは、カルシウムイオン及び/またはマグネシウムイオンである請求項4ないし18のいずれかに記載の濃度測定方法。
【請求項20】 血液透析器及び/または血液濾過器と、体外血液循環系統と、透析液系統を備えた透析装置であって、上記体外血液循環系統には、上記血液透析器及び/または血液濾過器の上流側に、血液中にクエン酸を添加するクエン酸添加手段が接続されているとともに、上記血液透析器及び/または血液濾過器の下流側に、イオンを含有する置換液を血液に添加する置換液添加手段が接続されており、上記透析液系統は、上記血液透析器及び/または血液濾過器の下流側に透析液中のイオン濃度を検出する検出手段を備えている透析装置。
【請求項21】 上記検出手段は、1つ以上のイオン感知センサとして構成されている請求項20記載の透析装置。
【請求項22】 所定時間間隔であるいは操作者による起動時にセンサの機能検査を行う試験装置をさらに備えている請求項21記載の透析装置。
【請求項23】 上記透析液系統に、透析液のpH値を変化させる物質を添加する物質添加手段が接続されている請求項20ないし22のいずれかに記載の透析装置。
【請求項24】 上記物質添加手段は、上記透析器から透析液の流れの方向に対して下流側で添加が行われるように配設されている請求項23記載の透析装置。
【請求項25】 透析液の流量を一時的に低減させる流量低減手段をさらに備えている請求項20ないし24のいずれかに記載の透析装置。
【請求項26】 所定時間間隔であるいは操作者による起動時にクエン酸の添加を一時的に中断するように上記クエン酸添加手段を制御するとともに、クエン酸添加の中断後に、上記検出手段によって測定された濃度値を連続的または所定時間間隔で記録する制御装置をさらに備えている請求項20ないし25のいずれかに記載の透析装置。
【請求項27】 上記制御装置は、請求項7ないし10に記載の方法に従ってCa++イオン濃度の計測値を測定するように構成されている請求項26記載の透析装置。
【請求項28】 上記検出手段と上記クエン酸添加手段及び/または上記置換液添加手段に対して接続され、イオン濃度の公称値または公称値域と実測値との比較にしたがってクエン酸及び/またはイオンを含有する置換液の増減を開始する調節装置をさらに備えている請求項20ないし27のいずれかに記載の透析装置。
【請求項29】 上記調節装置及び/または上記クエン酸添加手段は、クエン酸の濃度を閾値よりも低下させないように構成されている請求項28記載の透析装置。
【請求項30】 危険なイオン濃度計測値が測定されるごとに、あるいは、複数のイオン濃度計測値から危険な傾向が測定された時に警報を発する装置をさらに備えている請求項20ないし29のいずれかに記載の透析装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、錯体の状態で結合されるイオン、原子または分子の濃度を測定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】多数のイオン、原子及び分子は、孤立した形ではなく、非常に様々な錯体の形で存在する。このことは、患者の血液循環中のものにも、一定の血液治療または患者への治療の目的で患者から取り出され、体外で添加された適切な錯化剤を含む血液中のものにも言える。
【0003】イオンが錯化する例としては、いわゆるクエン酸凝固防止血液透析及び血液濾過がある。この場合、血液中のCa++イオンの錯化は、体外血液循環中で、治療時、とりわけ、透析器内での血液と膜との接触時の血液凝固を防止するためのクエン酸によって引き起こされる。
【0004】血液凝固の防止は、大部分の血液透析患者にとって、今、必要とされている。その標準的な方法は、シリンジポンプによって体外管系統の動脈側に注入される非分画ヘパリンを使用することである。非分画ヘパリンや、その代替物となる低分子量ヘパリン、ヒルジン等の凝固防止剤を使用することは、一部の患者にとって、また、その他の体外血液治療にとって以下の理由で問題がある。
【0005】凝固防止は、全身性の(すなわち、体外血液循環中での膜との接触時だけでなく、体全身で)作用を及ぼし、その結果、一部の患者にとって重大な出血の危険性がある。特に、集中治療分野では、30ないし40%の患者が出血の危険にさらされている。
【0006】一部の患者は、これらの凝固防止剤の使用を許さない、ヘパリン誘発血小板減少などの不適合反応を示す。
【0007】吸着治療(例えば、肝臓への補充療法)の場合、例えば、ヘパリンの使用によって(毒素吸着用に設けられた)吸着器の結合点が中和されてしまうならば、ヘパリン療法には不適合となる可能性がある。
【0008】上記に列挙した問題点を解決する代替方法は、(体外血液循環系統にのみ、特に血液と膜との接触時に)クエン酸による局所凝固防止法である。図1に示す方法では、遊離カルシウム(Ca)の濃度は、凝固カスケードが阻止される図1の位置1に、2個のクエン酸分子で3個のCaイオンと錯体を形成するクエン酸三ナトリウムを添加することによって大幅に低下する。図1の位置2にCaを含まない透析液を使用したり、Caを回収することも、Ca濃度低下に寄与する。したがって、体内のCa及びMg(Mgもまたクエン酸によって結合する)の減損を防止するため、CaイオンとMgイオンを適した濃度で含有する溶液(図1の位置3参照)を、体外血液循環系統の静脈側あるいは個別の静脈入口にさらに注入しなければならない。
【0009】臨床研究では、局所クエン酸凝固防止剤が体外血液循環中の血液凝固を非常に効果的に防止することが示されている。そのような臨床研究には、Y.モリタ(Morita)、R.W.ジョンソン(Johnson)、R.E.ドーレン(Doren)、D.S.ホール(Hall)「クエン酸を用いた血液透析時の局所凝固防止法(Regional anticoagulation during hemodialysis using citrate)」ジ・アメリカン・ジャーナル・オブ・ザ・メディカル・サイエンシーズ誌(The American Journal of the Medical Sciences)(1961)、M.J.M.F.ジャンセン(Janssen)他「慢性血液透析患者の低分子量ヘパリン凝固防止法とクエン酸凝固防止法との比較(Citrate compared to low molecular weight heparin anticoagulation in chronic hemodialysis patients)」キドニー・インターナショナル誌(Kidney Int.)(1996)49:806−813、R.L.メータ(Mehta)、B.R.マクドナルド(McDonald)、M.M.アギラー(Aguilar)、D.M.ワード(Ward)「重症患者の連続動静脈血液透析用局所クエン酸凝固防止法(Regional citrate anticoagulation for continuous arteriovenous hemodialysis in critically ill patients)」キドニー・インターナショナル誌(1990)38:976−981がある。さらに、局所クエン酸凝固防止剤によれば、患者の出血の危険性の増大も回避することができる。したがって、クエン酸透析法は、上述したようにヘパリンの使用が不利益であるかまたは明らかに望ましくない患者に対して、従来のヘパリン凝固防止法に対する興味深い有効な代替法であることが分かる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】これらの明らかな治療的利点にもかかわらず、クエン酸凝固防止法は、現在までそれほど利用されておらず、自動化され規格化されたプロセスとして利用されていない。その理由は以下のとおりである。
【0011】1.手間が増えること:従来の透析法では、標準の血液透析溶液と少量のヘパリンが必要とされる。クエン酸透析法では、通常、CaとMgを含まず、Naと重炭酸イオン含有量が適応化された血液透析液と、クエン酸三ナトリウム溶液と、Ca++/Mg++溶液の3種類の溶液が必要である。
【0012】2.Ca++/Mg++溶液投与の安全面:誤った用量が投与されると、生命に危険を及ぼす状況がすぐに発生する可能性がある(強直、心臓の不規則な鼓動、心拍停止)。用量の誤りは、技術的問題(例えば、ポンプの欠陥、漏れ等)の結果として、あるいは、Ca所要量の間違った判断によって起こり得る。
【0013】3.クエン酸またはCa3-Ci2錯体またはMg3-Ci2錯体の供給の結果:代謝性アルカローシス、非生理的なCa濃度上記プロセスにかかる手間の増大は、適切な技術を実現することによって抑えることができる。ヘパリンに対して不適合性をもつ患者にとっては、一定の付加コストも納得がゆく。クエン酸またはクエン酸錯体の供給量は、膜(大面積高流出フィルタの利用、できれば、後希釈法血液濾過透析と組み合わせた利用)を介して有効に回収することによって大幅に低下させることができる。残る少量の供給量は容認できるものであろう。そうでない場合は、透析過程及び錯体代謝を適切にモデル化することによって供給量を推定し、補償することも可能である。
【0014】クエン酸凝固防止透析方法は、国際特許出願公報WO 91/06326によって公知である。すなわち、体外血液循環系統の動脈供給路に対して、凝固防止剤としてクエン酸三ナトリウムが加えられ、単位時間あたりのクエン酸三ナトリウム添加量が体外循環系統の血流量にのみ適応される。血流量が増加または減少すると、クエン酸三ナトリウム添加量もそれぞれ増加または減少する。患者の血中カルシウムイオン濃度は、この場合、きめ細かく監視されるのではなく、かなり大きな時間間隔で血液サンプルによって測定される。患者の血中カルシウム濃度のきめ細かいあるいは連続的な監視がないため、それに、クエン酸添加量が患者のカルシウム濃度ではなく、血流量のみを対象としているので、この従来の方法では、カルシウム値が患者の血液を非生理的にし、したがって、患者にとって生命を危険にさらす結果をもたらすことを確実に防止することができない。
【0015】イオン感知センサは、患者の血中カルシウムイオン濃度またはマグネシウムイオン濃度を短い時間間隔で測定できる手段として公知であるが、血液側でセンサを使用することは、無菌要求による毒性の恐れからかつコストの面から不利であり、したがって、望ましくない。
【0016】透析以外の用途において、錯体の状態で結合されるイオン、原子または分子の濃度を測定することが必要な場合もある。イオン感知センサが患者に対して不利益なく利用できると仮定しても、錯化されたイオンの濃度測定に使用することによって何ら有効利用可能な結果をもたらさないことが多い。錯体中に存在するイオンの特性が意義のある測定を不可能にするからである。
【0017】したがって、本発明の目的は、錯体の状態で結合される測定対象のイオン、原子または分子の濃度を確実に求めることができる濃度測定方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、錯体の状態で結合されるイオン、原子または分子の濃度を測定する方法において、物質を添加または回収することによって少なくとも濃度測定時にイオン、原子または分子の錯化を防止することによって達成される。すなわち、本発明は、濃度測定のため、イオン、原子または分子による錯体の形成を阻止するか、あるいは、そのような錯体からイオン、原子または分子を分離した後に濃度測定を行うという基本的な考えを有している。
【0019】上記添加される物質は酸であってもよい。この場合、測定対象の錯化は、酸の添加に伴うpHの変化によって防止される。その結果、錯化剤はプロトン化され、物質を錯化させるために再び不活性化されて、測定を可能にする。
【0020】錯化は、錯化剤の添加が中断されるか、あるいは、錯化剤が別の添加物質と錯化することにより、濃度測定対象であるイオン、原子または分子を遊離させることで防止することができる。したがって、測定対象のイオン、原子または分子よりも錯化剤に対して親和性が高い物質を添加することが考えられる。測定対象のイオン、原子または分子は、上記の物質を添加した際に錯体から“分離”されることで、測定に利用可能になる。
【0021】本発明の別の特徴では、クエン酸による血液凝固防止法を用いた血液透析及び/または血液濾過において患者の血中イオン濃度を測定する方法を提供する。本発明では、透析液中のイオン濃度の測定に基づいて血中イオン濃度が測定される。透析液中のイオン濃度を測定する前に、濃度測定のため、関連するイオンのクエン酸との錯化が防止される。
【0022】これにより、治療中に患者の安全性に危険を招くことなく、好ましいコストで患者の血中イオン濃度を監視することができる。
【0023】イオン濃度の測定が患者の血液中ではなく透析液中で行われるため、血中イオン濃度を測定するセンサよりも大きな利点が得られるとともに、そのようなセンサがもたらす不利益を回避することができる。したがって、濃度測定のために体外血液循環を妨害することがない。このことは、本発明では不要な血液サンプルの採取の繰返しにも当てはまる。
【0024】本発明の好ましい特徴によれば、血液循環へのクエン酸添加を一時的に中断することで錯化が防止される。透析器の血液側でのイオン濃度は患者体内のイオン濃度と一致せず、イオン、特に、CaイオンとMgイオンは錯化によってクエン酸と結合するので、透析器内のCaとMgの実際のイオン濃度を入手するためにも、本実施形態ではクエン酸注入が中断される。クエン酸添加またはクエン酸注入の中断は、一定の時間間隔で行うことができる。CaイオンとMgイオンの注入は、クエン酸添加の中断によって遊離されたイオンが透析器内の血液から大幅に回収されるので、上記の一定の時間間隔で維持することができる。また、Caイオンの注入とMgイオンの注入は、透析器で部分的に回収される分だけ補充するように低減されてもよい。この監視方法は、十分な凝固防止を確実にするようクエン酸注入を短時間だけ中断させることができるので、不連続に行われる。しかしながら、危険な傾向を適時に認識するにはこれで十分である。投与量が不足したり過剰である場合、あるいは、CaまたはMgイオン注入に関して大きな失敗を冒した場合には、体内で危険な濃度に達するまでいくらか時間がかかる。この時間は、約10分であり、特に血流量に左右される。
【0025】本発明の別の特徴では、pH値を低下させることによって透析液のイオン/クエン酸錯体からイオンが遊離されることで錯化が防止される。続いて、このようにして遊離されたイオンの濃度が測定される。そのような本発明の実施形態には、クエン酸注入の中断が不要であるという利点がある。関連するイオン、好ましくはCa++及び/またはMg++をイオン/クエン酸錯体から遊離させれば、そのイオンを透析液内で問題なく測定することができる。しかしながら、この方法は、遊離を行うためにさらに別の輸液が必要なので、相対的に複雑である。この場合、透析液側に酸を添加しなければならない。さらに、イオン/クエン酸錯体の分子量は(Caイオンの場合)504と相対的に大きいので、クリアランスが電解質よりも遥かに小さい。したがって、透析液側濃度からの血液側濃度の測定や推定はさらに難しくなる。適切なpHを設定する場合、CaイオンまたはMgイオンを一部だけ遊離させると、血液側濃度値が低下しすぎることになるので、イオンをできる限り全て遊離させることに注意すべきである。
【0026】本発明の別の特徴では、クエン酸添加を中断させた後に、不作動容積によって決まる不作動時間と準定常状態に達するのに必要な時間とからなる長さの時間の終わりに、透析液中のイオン濃度の測定を実行するものである。不作動容積は、クエン酸の注入地点とイオン濃度の測定地点との間の管接続部分の容積から生じる。通常、不作動時間は、約10秒ないし30秒の範囲内であると予測される。その後、透析液側イオン濃度が上昇する。この上昇は急激ではないが、準定常状態に達するまで約1分ないし2分の時定数が予測される。これにより、濃度変化が無視できるほど小さいかあるいは所定の許容の範囲内にある状態を知ることができる。
【0027】本発明の好ましい特徴によれば、クエン酸添加を中断させた後に、透析液中のイオン濃度の計測が多数回繰り返され、準定常状態に達した後に計測値が決定される。したがって、透析液中の濃度が複数回計測されることにより、濃度変化曲線が求められ、それにより、平衡濃度に達したか否かを十分な精度で評価することができる。
【0028】本発明の別の特徴では、クエン酸添加を中断させた後に、透析液中のイオン濃度の計測が多数回繰り返され、透析液で入手した上記イオン濃度を外挿することによって計測値が決定される。この方法の場合、十分な時間間隔にわたって計測された透析液中の濃度の上昇の振舞いから平衡値が外挿される。この手法には、採用予定の平衡値を待つ必要がないという利点がある。しかしながら、この場合は、濃度上昇の時間的振舞いに関する知識が必要とされる。
【0029】本発明の別の好ましい特徴によれば、クエン酸注入が所定時間だけ中断され、透析液中のイオン濃度で時間関数として定義された応答関数の面積の積分によって計測値が決定される。クエン酸注入は、例えば、所定の相対的に短い時間、例えば、約1分ないし2分の間中断させることができる。その後、透析液中の濃度のパルス状応答関数によって面積を評価することによって平衡濃度に関する推定を行うことができる。
【0030】当然ながら、クエン酸注入の断続的中断の大きさによっても、透析器の局所凝固防止が妨げられる。しかしながら、このことから凝固防止が大幅に損なわれることになるとは言い切れない。例えば、上記ヘパリンを含まない透析、例えば、体外循環を周期的にすすぎ洗いする場合の実際には完全に凝固防止のない透析においては、血液凝固による合併症生起率は相対的に低い(5%未満)。したがって、凝固防止の断続的中断が、合計で透析時間の約10ないし20%に達する場合もあるが、臨床上の問題に発展することになるとは言い切れない。
【0031】pH値を低下させることにより透析液内のイオン−クエン酸錯体からイオンを遊離させることによって錯化を防止または開鎖する場合、錯体の完全な解離を実現するためにpH値を2ないし3に設定することが好ましい。
【0032】上記透析液のpH値の設定は、酸の注入によって行われることが好ましい。
【0033】透析液のイオン濃度を血中イオン濃度に近似させる目的で透析液流量を低減させれば特に有利である。透析液流量の低減によって、透析液側のイオン濃度が血液側のイオン濃度に適応される。
【0034】血流量を維持したまま透析液流量を低下させると、低分子量物質の濃度が血漿濃度にますます近づくことが理論的かつ実験的に分かった。透析液流量は、血流量、問題の分子及び使用される透析器によるが、十分に低く設定されると、透析液側濃度が事実上血液側濃度と同一になり、透析液が飽和状態に達する。しかしながら、イオンの場合、血漿タンパク分の知識または推定により数学的に考慮することが可能なドナン効果による流量平衡の状態では、透析液側濃度は数%だけ血漿濃度と異なる。
【0035】本発明の別の特徴では、血中イオン濃度の測定は、透析液流量を低減させることなしに計算によって行われる。そのような手法によれば、透析液流量を低下させる必要がなく、従って透析効率が現行の時間間隔で低下しないという利点がもたらされる。
【0036】透析液流量が血流量と等しいかそれより大きい通常の処置条件では、血液側濃度に対して透析液側濃度のほうが低くなる。観測された分子または原子の透析器輸送量(k0A)、機械設定(血流量及び透析液流量)及びヘマトクリット値が分かれば、透析液側の計測濃度から血漿濃度を優れた近似値で算出できる。クリアランスが分かれば、以下の単純な式から血液側濃度が算出される。
【0037】
【数1】

但し、CBiは血液側入口濃度、CDoは計測済の透析液側出口濃度、QDは透析液流量、Kはクリアランスである。Kは純然たる拡散移動の場合に生体外の状況で以下の式によって与えられる。
【0038】
【数2】

【0039】限外濾過法を用いる血液透析の場合、血液濾過法(HF)の場合及び血液濾過透析法(HDF)の場合と同様に、生体外状況の場合もより複雑な方の数式を利用することができる。この数式は、どのような透析状況でも利用可能であるが、生体外及び生体内計測の場合に有効とされ、FMCから“クリアランス・カルキュレーション・ツールCCT(Clearance Calculation Tool CCT)”というソフトウェアで使いやすい形で入手可能である。
【0040】精確な計測が必要な場合は、透析液流量が低減可能であることが好ましい。しかしながら、それには、透析液流量を数分間低減させる必要があり、そのために、透析効率がその時間だけ低下するという不利益がある。しかしながら、Caイオン濃度を監視するためにそれほど精確な計測を必要としない場合は、凝固防止を断続的に中断させること以外、計測方法によって透析が影響されないようなイオン濃度算出方法も、透析液流量を低下させることなく利用可能である。
【0041】透析液中のイオン濃度の検出を透析器から流出する透析液中でイオン感知センサによって行うならば、特に有利である。血中イオン濃度の測定精度は主としてセンサ系によってもたらされる。例えば、投与量の間違いとセンサ表示の誤りが同時に発生することは患者にとって高度の危険性をはらむことになるので、センサの機能は適切な試験やその他の手段によって確保されなければならない。患者にとって危険な状態が発生し得る時間間隔(数10分)を試験間隔とすることができるので、透析中にセンサの機能試験を繰り返すことが必要になる。その代わりに、あるいはそれに加えて、冗長なセンサ構成を使用してもよい。センサに特有の故障動作を直ちに検出してディスプレイに表示する安全システムを設けることも可能である。
【0042】本発明の別の特徴では、患者の血中イオン濃度の測定値が、クエン酸添加及び/またはイオンを含有する置換媒質の添加の制御変数によって影響される値を有する被制御変数となるものである。これにより、患者の血液中のCaイオン及び/またはMgイオン濃度の目標値を設定可能な対応する調節装置によって、閉じたループを実現することができる。これにより、患者の血液中のCaイオン及び/またはMgイオン濃度の生理的な値を常に設定可能にすることによって、クエン酸によって凝固を防止する血液透析用及び/または血液濾過用の独立作動型の監視システムを実現することができる。クエン酸添加量またはそれに相当するイオン含有置換媒質の添加量は、制御変数となることができる。しかしながら、クエン酸添加量を制御変数として選択する場合、イオン濃度を透析器の領域で低く維持するように、その値が一定の限界値を超えてはいけないことを考慮しなければならない。それば、凝固を有効に回避するために必要である。
【0043】特に信頼性の高い以下の発明の実施形態では、患者の血中イオン濃度の測定値が許容範囲外に合ったり、許容値と異なっている場合に警報が発せられる。警報は、個々の計測値が危険なほど高い値や低い値であった場合や、危険な傾向が測定された場合に発することができる。警報に加えて、あるいはその代わりに、機械の迂回、注入の中止、注入速度の変更等、適切な対策を開始させることも可能である。
【0044】本発明の別の特徴では、透析器の血液側の区画内のイオン濃度が、クエン酸供給を中断させることなく測定され、許容閾値と比較されるとともに、該比較にしたがってクエン酸供給が変更されるようになっている。このような手法は、クエン酸添加量が血液凝固の危険性を目標レベルまで低下させる程度にCaイオン濃度を低下させるのに充分か否かを検査するために有意義である。遊離Caイオンの過剰がクエン酸供給量と同時に測定されなければならないので、上記の検査は、当然、クエン酸供給が行われている状態で行われる必要がある。この場合、Caイオン濃度の計測値に応じてクエン酸注入速度を自動的に変化させる調節装置を設けることができる。CaイオンまたはMgイオン置換液の必要量も、このようにして測定可能である。
【0045】上述したように、上記イオンは、クエン酸によって錯体に結合されるカルシウムイオン及び/またはマグネシウムイオンであることが好ましい。また、この方法は、透析液中のCaイオン濃度を測定しながら行われることが好ましい。
【0046】さらに、本発明は、血液透析器及び/または血液濾過器と、体外血液循環系統と、透析液系統を備えた透析装置であって、上記体外血液循環系統には、上記血液透析器及び/または血液濾過器の上流側に、血液中にクエン酸を添加するクエン酸添加手段が接続されているとともに、上記血液透析器及び/または血液濾過器の下流側に、イオンを含有する置換液を血液に添加する置換液添加手段が接続されており、上記透析液系統は、上記血液透析器及び/または血液濾過器の下流側に透析液中のイオン濃度を検出する検出手段を備えている透析装置を対象としている。上記検出手段は、1つ以上のイオン感知センサとして構成されていることが好ましい。冗長な構成を採用することにより、透析装置の動作信頼性が向上するとともに、計測の誤りを迅速に認識することが可能になる。
【0047】本発明の実施形態では、所定時間間隔であるいは操作者による起動時にセンサの機能検査を行う試験装置を設けることにより、透析装置の信頼性を向上させることができる。
【0048】上記透析液系統に、透析液のpH値を変化させる物質を添加する物質添加手段を接続させてもよい。これにより、pH値の変化によって測定対象のイオンを錯体から遊離させた後に、測定対象イオンの濃度を測定することができる。
【0049】上記物質添加手段は、上記透析器から透析液の流れの方向に対して下流側で添加が行われるように配設してもよい。
【0050】本発明の別の特徴では、透析液の流量を一時的に低減させる流量低減手段が設けられている。透析液の流量低減による透析液中のイオン濃度から、血中イオン濃度を特に精確に算出することができる。
【0051】所定時間間隔であるいは操作者による起動時にクエン酸の添加を一時的に中断するように上記クエン酸添加手段を制御するとともに、クエン酸添加の中断後に、上記検出手段によって測定された濃度値を連続的または所定時間間隔で記録する制御装置を設けてもよい。
【0052】上記制御装置は、請求項7ないし10に記載の方法に従ってCa++イオン濃度の計測値を測定するように構成されてもよい。
【0053】本発明の別の好ましい構成では、上記検出手段と上記クエン酸添加手段及び/または上記置換液添加手段に対して接続され、イオン濃度の公称値または公称値域と実測値との比較にしたがってクエン酸及び/またはイオンを含有する置換液の増減を開始する調節装置が設けられる。これにより、患者の血中イオン濃度を目標値にまたは所望の間隔で調節することができる。
【0054】上記調節装置及び/または上記クエン酸添加手段は、クエン酸の濃度を閾値よりも低下させないように構成されてもよい。これにより、クエン酸濃度が血液凝固を有効に防止するのに必要な一定値よりも低くなることが防止される。
【0055】危険なイオン濃度計測値が測定されるごとに、あるいは、複数のイオン濃度計測値から危険な傾向が測定された時に警報を発する装置を設けてもよい。これにより、そのような危険状態に対して、例えば、聴覚的及び/または視覚的に操作者の注意を向けることができる。
【0056】
【発明の実施の形態】以下、本発明の細部と利点を図面と実施形態に基づいてさらに詳細に説明する。
【0057】図1は、クエン酸による血液凝固防止法を用いた血液透析方法を示す概略図である。患者から血液透析器に通じる体外血液循環系統の一部(位置1)にクエン酸三ナトリウムを添加することにより、凝固カスケードを阻止する程度まで遊離Caイオン濃度を低下させる。その結果、重クエン酸三ナトリウム錯体が生成される。透析液系統にCaを含まない透析液(位置2参照)を使用することにより、膜を通じたCaイオン濃度の勾配が高くなることで、血液中のCaイオン濃度がさらに低下する。患者の体内のカルシウム及びクエン酸に結合されたマグネシウムの許容を超える不足を避けるため、適切な濃度でCaイオンとMgイオンを含有する置換液(位置3参照)が、体外血液循環系統の静脈側に注入される。勿論、それと同じ置換液を患者の個々の静脈入口に注入してもよい。
【0058】本発明の方法を実行するため、例えば、クエン酸の添加を一時的に中断することによって、Ca/クエン酸錯体の錯化が防止される。したがって、Ca濃度が上昇する。透析液側のCaイオン濃度は、図2に示すCaセンサ(検出手段)によって計測することができる。パラメータQDとQBはそれぞれ透析液流量と血流量の特性を表す。患者の血中Caイオン濃度の測定は、透析液側Caイオン濃度を血液側Caイオン濃度に適応させる程度に透析液流量を低下させることによって可能になる。Caイオンの血液側入口濃度、Caイオンの計測済透析液側出口濃度、透析液流量及びクリアランスの間の上述の関係式を用いることによっても、処置にありがちの血流量や透析液流量の変化に関係なく、透析液側の計測済イオン濃度から血液側イオン濃度を求めることができる。
【0059】図3は、透析液流量を低下させた時に、透析液側の塩化ナトリウム溶液の濃度を血液側の濃度に適応させる様子を示す。透析液流量を血流量、関係する分子及び使用される透析器に応じて充分に低い値に設定すると、透析液側濃度は血液側濃度に事実上一致する。それにより、透析液が飽和状態に達する。このようにして、血中濃度を計測された透析液中濃度から優れた精度で求めることができる。
【0060】図4は、クエン酸注入を突然に中断させた場合の透析液中のCaイオン濃度の対応関数を示す。図示の矩形関数はクエン酸注入の時間曲線を再現している。図4から分かるように、クエン酸注入は時間間隔がt=1からt=4の間で中断される。図示のもう1つの曲線は、透析液側Caイオンの濃度曲線を表す。両図形の縦座標と横座標は、この場合絶対値を問題にしていないので、任意の単位をとる。注入流量がオフに切り換った(t=1)後も、センサの位置では、Caイオン濃度はまだ低いままである。その理由は、管接続部分の容積が、注入地点とセンサの測定位置との間で不作動容積として作用するからである。通常、不作動時間は、約10秒ないし30秒の範囲内である。図4から分かるように、その後、透析液側のCaイオン濃度が上昇する。血液と透析液がとりわけ透析液中でそれぞれ高クエン酸濃度と低クエン酸濃度で混合することにより、濃度上昇は急激ではないが、濃度は平衡値に近づいてゆく。その上昇を、図4に指数関数の形で簡単に示す。この場合、通常、約1分ないし2分の時定数を見込むことができる。その後、準定常状態に達すると、この時に求めた濃度を高い精度で計測値として採用することができる。クエン酸注入がオンに戻されると(t=4)、最初に、不作動時間が再度有効になる。その後、Caイオン濃度は、クエン酸注入の進行とともに最終的には低い方の平衡値に近づくように降下してゆく。
【0061】図5は、クエン酸注入の中断を必要としない変形方法を示す。この場合、Caイオンが再度Caクエン酸錯体から遊離されることによって、Caイオン濃度が測定される。このことは、酸の供給(位置4参照)によって実現される。これにより、pH値が好ましくは2ないし3の範囲まで低下し、その結果、錯体が解離して、それに応じてCaイオンが遊離する。この変形方法の利点は、クエン酸添加が中断されないために血液凝固防止が妨げられないことである。
【0062】本発明によれば、治療中絶えず、患者の血中Caイオン濃度と血中Mgイオン濃度という生理的に関連する重要な実パラメータを監視することができ、その結果、治療の全ての時点で、患者の健康を危険にさらす状態を確実になくすことができる。その場合、当然ながら、Caイオン値とMgイオン値の測定が確実に行われることが必要条件である。本発明によれば、冗長構成のセンサあるいは自己テストを実施するセンサによって、高い信頼性を実現することができる。センサの使用に加えて、他の方法を利用してイオン濃度を測定可能であることは言うまでもない。
【0063】公知の監視システムは、個別のあるいは集中型の監視システムによるポンプの監視など、個別の技術的構成要素のみ、例えば、輸液の監視が可能なドロッパのみに関するものである。その一方で、本発明にかかる患者のイオン濃度監視は、生理的に関連する重要な実パラメータに基づいて治療全体を包含しており、したがって、方法のあらゆる側面を考慮に入れている。
【出願人】 【識別番号】599117152
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケアー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】Else−Kroner−Strasse 1,D−61352 Bad Homburg,Germany
【出願日】 平成13年12月21日(2001.12.21)
【代理人】 【識別番号】100077931
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘 (外7名)
【公開番号】 特開2002−248165(P2002−248165A)
【公開日】 平成14年9月3日(2002.9.3)
【出願番号】 特願2001−389926(P2001−389926)