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【発明の名称】 内因性カンナビノイドの吸着材、吸着除去方法および吸着器
【発明者】 【氏名】平井 文康

【氏名】藤本 民治

【氏名】櫻井 裕士

【氏名】古吉 重雄

【要約】 【課題】液体中の内因性カンナビノイドを効率よく吸着除去することが可能な吸着材、ならびに吸着材により液体中の内因性カンナビノイドを除去する方法を提供する。

【解決手段】水不溶性担体にlogP(Pはオクタノール−水系での分配係数)値が3.50以上の化合物を固定してなる内因性カンナビノイドの吸着材を得る。この内因性カンナビノイド吸着材に内因性カンナビノイドを含有する液体を接触させることにより液体中の内因性カンナビノイドを効率よく吸着除去することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水不溶性担体にlogP(Pはオクタノール−水系での分配係数)値が3.50以上の化合物を固定してなる、内因性カンナビノイドの吸着材。
【請求項2】 前記水不溶性担体が水不溶性多孔質担体であることを特徴とする請求項1記載の吸着材。
【請求項3】 内因性カンナビノイドがアナンダマイドであることを特徴とする請求項1記載の吸着材。
【請求項4】 内因性カンナビノイドが2−アラキドノイルグリセロールであることを特徴とする請求項1記載の吸着材。
【請求項5】 請求項1または2に記載の吸着材と、内因性カンナビノイドを含有する液体を接触させる工程を包含する、内因性カンナビノイドの吸着除去方法。
【請求項6】 液体が体液であることを特徴とする請求項5記載の吸着除去方法。
【請求項7】 液の入口および出口を有しかつ、吸着材の容器外への流出防止手段を備えた容器内に、請求項1または2に記載の吸着材を充填してなる、内因性カンナビノイドの吸着器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は体液より内因性カンナビノイドを吸着除去するための吸着材、これを用いた内因性カンナビノイドの吸着除去方法および内因性カンナビノイドの吸着器に関する。
【0002】
【従来の技術】マリファナ(大麻)の生理作用の本体であるカンナビノイド類は、幻覚や多幸感などの精神作用を示すことが知られている。カンナビノイド受容体としては、中枢神経系に発現している受容体(CB1)と末梢の免疫細胞に発現している受容体(CB2)が知られている。これらカンナビノイド受容体の内因性リガンド、すなわち生体内で生成されるリガンドのことを、内因性カンナビノイドという。内因性カンナビノイドとしては、アナンダマイドと2−アラキドノイルグリセロール(2−Arachidonoylglycerol:以下、2−AGと記す)が知られている。
【0003】内因性カンナビノイドは、種々の生理活性を有している。たとえば(1)循環系に対して:血圧降下、徐脈(2)免疫系に対して:マクロファージにおけるNO産生抑制、(3)中枢神経系に対して:記憶障害、痛覚の抑制、(4)凝固線溶系に対して:内皮細胞アポトーシス誘導−といったさまざまな活性を有している。
【0004】近年、リポポリサッカライド(Lipopolysaccharide:以下LPSと記す)刺激により、マクロファージでアナンダマイドが産生され、血小板において2−AGが産生されることが明らかとなった。さらに、これら産生された内因性カンナビノイドにより、血圧低下が惹起されることが観察されている。また、敗血症性ショックなどにおける血圧低下が、マクロファージや血小板により産生された内因性カンナビノイドの寄与により生じている可能性も指摘されている。実際、敗血症性ショック患者の血中から、高濃度の内因性カンナビノイドが検出されたとの報告もある。
【0005】これらのことから、敗血症ショックなどにおける血圧低下に対し、患者体液中から内因性カンナビノイドを除去してやることによる治療法が期待されている。しかし、内因性カンナビノイドを吸着除去する方法が、これまでなく、その方法が大いに望まれていた。Yin Wangらは、抗生物質であるポリミキシンBを固定化した材料により、アナンダマイドの吸着が可能であることを報告している(FEBS Letters、470巻、151頁−155頁、2000年)。しかし、このような吸着材を得るためには、多くの工程を経ねばならない。また抗生物質であるポリミキシンBは、非常に高価である。したがって、より安価な材料での、内因性カンナビノイドを吸着除去する方法が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記のごとき問題点を解決するためになされたものである。本発明の目的は、体液中の内因性カンナビノイドを効率よく吸着除去し得る吸着材、前記吸着材を用いた体液中の内因性カンナビノイドの吸着除去方法および内因性カンナビノイド吸着器を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】体液中の内因性カンナビノイドを効率よく吸着除去し得る吸着材について鋭意検討した。その結果、水不溶性担体にlogP値が3.50以上の化合物を固定してなる吸着材が、体液中の内因性カンナビノイドを効率よく吸着除去し得ることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、水不溶性担体にlogP(Pはオクタノール−水系の分配係数)値が3.50以上の化合物を固定してなる内因性カンナビノイドの吸着材に関する。
【0009】前記水不溶性担体は水不溶性多孔質担体であることが好ましい。
【0010】前記内因性カンナビノイドはアナンダマイドであることが好ましい。
【0011】前記内因性カンナビノイドは2−AGであることが好ましい。
【0012】さらに本発明は、内因性カンナビノイドの吸着材と、内因性カンナビノイドを含有する液体を接触させる工程を包含する、内因性カンナビノイドの吸着除去方法に関する。
【0013】前記液体は体液であることが好ましい。
【0014】さらに本発明は、液の入口および出口を有しかつ、吸着材の容器外への流出防止手段を備えた容器内に、内因性カンナビノイドの吸着材を充填してなる内因性カンナビノイドの吸着器に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明における内因性カンナビノイドとは、カンナビノイド受容体の内因性リガンド、すなわち生体内で生成されるリガンドのことをいう。アナンダマイドと2−AGがその代表的なものである。アナンダマイドの化学式はC2237NO2で表わされ、分子量は347.5である。2−AGの化学式はC23384で表わされ、分子量は378.5である。
【0016】また本発明における体液とは、血液、血漿、血清、腹水、リンパ液、関節内液、髄液およびこれらから得られた分画成分、ならびにそのほかの生体由来の液体成分をいう。
【0017】本発明の吸着体は、logP値が3.50以上の化合物を水不溶性担体に固定化してなる。logP値とは、化合物の疎水性のパラメータである。代表的なオクタノール−水系での分配係数Pは、以下のように求められる。まず、化合物をオクタノール(もしくは水)に溶解し、これに等量の水(もしくはオクタノール)を加え、グリッフィン・フラスク・シェイカー(Griffin flaskshaker)(グリッフィン・アンド・ジョージ・リミテッド(Griffin & George Ltd.)製)で30分間振盪する。そののち2000rpmで1〜2時間遠心分離し、オクタノール層および水層中の化合物の各濃度を、室温、大気圧下において分光学的またはGLCなどの種々の方法で測定することにより、次式から求められる。
P=Coct/CwCoct:オクタノール層中の化合物濃度Cw :水層中の化合物濃度【0018】これまでに多くの研究者らにより種々の化合物のlogP値が実測されているが、それらの実測値はシー・ハンシュ(C.Hansch)らによって整理されている(「パーティション・コーフィシエンツ・アンド・ゼア・ユージズ;ケミカル・レビューズ(PARTITION COEFFICIENTS ANDTHEIR USES;Chemical Reviews)、71巻、525頁、1971年」参照)。
【0019】また実測値の知られていない化合物については、アール・エフ・レッカー(R.F.Rekker)がその著書「ザ・ハイドロフォビック・フラグメンタル・コンスタント(THE HYDROPHOBIC FRAGMENTAL CONSTANT)」,エルセビア・サイエンティフィック・パブリッシング・カンパニー・アムステルダム(Elsevier Sci.Pub.Com.,Amsterdam)(1977)中に示している疎水性フラグメント定数fを用いて計算した値(Σf)が参考となる。疎水性フラグメント定数は数多くのlogP実測値をもとに、統計学的処理を行い決定された種々のフラグメントの疎水性を示す値であり、化合物を構成するおのおののフラグメントのf値の和はlogP値とほぼ一致すると報告されている。本発明においては、logPとはΣfをも包含するものである。
【0020】内因性カンナビノイドの吸着に有効な化合物の探索にあたり種々のlogP値を有する化合物を固定し検討した。その結果、logP値3.50以上、好ましくは4.00以上、さらに好ましくは5.00以上の化合物が内因性カンナビノイドの吸着に有効であり、logP値3.50未満の化合物は、ほとんど内因性カンナビノイドの吸着能を示さないことがわかった。たとえばアルキルアミンを固定化した場合、アルキルアミンをn−オクチルアミン(logP値=2.90)からn−デシルアミン(Σf値=4.07)に変えると、このあいだで内因性カンナビノイドの吸着能は飛躍的に上昇することがわかった。これらの結果より、本発明の吸着材による内因性カンナビノイドに対する吸着能は、logP値が3.50以上の化合物の固定により担体上に導入された原子団と内因性カンナビノイドとのあいだの疎水性相互作用によるものと考えられる。
【0021】本発明において、水不溶性担体に固定化される化合物としては、logP値が3.50以上の化合物であれば特別な制限なしに用いることができる。ただし、担体上に化合物を化学結合法によって結合する場合には、化合物の一部が脱離することが多いが、この脱離基が化合物の疎水性に大きく寄与している場合、すなわち脱離により担体上に固定される原子団の疎水性がlogP=3.50より小さくなるような場合には、本発明の主旨から考えて、本発明に用いる化合物としては不適当である。この代表例を一つあげると、安息香酸イソペンチルエステル(Σf=4.15)をエステル交換により水酸基を有する担体上に固定する場合があげられる。この場合、実際に担体上に固定される原子団はC65CO−であり、この原子団のΣfは1以下である。このような化合物が本発明で用いる化合物として適当かどうかは、脱離基の部分を水素に置き換えた化合物のlogP値が3.50以上かどうかにより判断すればよい。
【0022】logP値が3.50以上の化合物の中でも不飽和炭化水素、アルコール、アミン、チオール、カルボン酸およびその誘導体、ハロゲン化物、アルデヒド、ヒドラジド、イソシアナート、グリシジルエーテルなどのオキシラン環含有化合物、ハロゲン化シラン等のように担体への結合に利用できる官能基を有する化合物が好ましい。このような化合物の代表例としてはデシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどのアミン類、ドデシルアルコール、ヘキサデシルアルコールなどのアルコール類ならびにこれらのアルコールのグリシジルエーテル類、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸などのカルボン酸類ならびにこれらの酸ハロゲン化物、エステル、アミドなどのカルボン酸誘導体、塩化オクチル、臭化オクチル、塩化デシル、塩化ドデシルなどのハロゲン化物、オクタンチオール、ドデカンチオールなどのチオール類などがあげられる。
【0023】これらの他にも、前記例示化合物の炭化水素部分の水素原子がハロゲン、チッ素、酸素、イオウなどのヘテロ原子を含有する置換基、他のアルキル基などで置換された化合物のうち、logP値が3.50以上の化合物、たとえば前述のシー・ハンシュ(C.Hansch)らの総説「パーティション・コーフィシエンツ・アンド・ゼア・ユージズ;ケミカル・レビューズ(PARTITION COEFFICIENTS AND THEIR USES;ChemicalReviews)、71巻、525頁、1971年」中の555ページから613ページの表に示されているlogP値が3.50以上の化合物などを用いることができるが、本発明においてはこれらのみに限定されるものではない。
【0024】なお、これらの化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、任意の2種類以上を組み合わせてもよく、さらにはlogP値が3.50未満の化合物との組み合わせで用いてもよい。
【0025】本発明の吸着材における水不溶性担体とは、常温常圧で固体であり水に対する溶解度が極めて小さい担体であることを意味する。また、本発明における水不溶性担体は粒状、板状、繊維状、中空糸状等があるが形状は問わず、その大きさもとくに限定されない。しかし、本発明の吸着材をカラムに充填して使用する場合、体液などの被吸着物に含まれる内因性カンナビノイド以外の成分が充分に通過し得る間隔を作ることができるものでなければならない。
【0026】たとえば、本発明の吸着材が粒状である場合、平均粒子径は5〜1000μmであることが好ましい。平均粒子径が5μmより小さいと、体液に細胞が含まれる場合に充分に通過し得る間隔を得られない傾向にある。平均粒子径が1000μmをこえると、体積あたりの吸着能が充分得られない傾向にある。さらに好ましい平均粒径は25〜1000μmである。最も好ましくは40〜600μmである。その中でも、圧力損失の増大を引き起こさないなどの理由から、粒径分布は狭い方が好ましい。また、体液が血液である場合には、平均粒径は200μm以上、1000μm以下であることが好ましい。
【0027】また、本発明の吸着材が繊維状でかつ中空である場合、その内径は1μm以上であることが好ましい。さらに好ましくは内径が2〜500μmである。最も好ましくは5〜200μmである。内径が1μmより小さいと、体液に細胞が含まれる場合に充分に通過しない傾向にある。内径が500μmをこえると、体積あたりの吸着能が充分得られない傾向にある。
【0028】本発明の吸着材における水不溶性担体としては、ガラスビーズ、シリカゲルなどの無機担体、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンなどの合成高分子や結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アガロース、架橋デキストリンなどの多糖類からなる有機担体、さらにはこれらの組み合わせによって得られる有機−有機、有機−無機などの複合担体などが代表例としてあげられる。
【0029】なかでも、親水性担体が、非特異吸着が比較的少なく、内因性カンナビノイドの吸着選択性が良好であるため好ましい。ここでいう親水性担体とは、担体を構成する化合物を平板状にしたときの水の接触角が60度以下の担体を指す。水の接触角の測定方法は種々知られているが、たとえば池田がその著書(実験化学選書・コロイド化学,第4章,界面の熱力学,75頁から104頁,裳華房(1986))に示しているごとく、化合物の平板上に水滴を置き測定する方法が最も一般的である。上記の方法で測定した水の接触角が60度以下である化合物としては、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸グラフト化ポリエチレン、ポリアクリルアミドグラフト化ポリエチレン、ガラスなどからなる担体が代表例としてあげられる。
【0030】これらの水不溶性担体は、適当な大きさの細孔を多数有する、すなわち多孔構造を有する担体であることがより好ましい。多孔構造を有する担体とは、基礎高分子母体が微小球の凝集により1個の球状粒子を形成する際に微小球の集塊によって形成される空間(マクロポアー)を有する担体の場合は当然であるが、基礎高分子母体を構成する1個の微小球内の核と核との集塊のあいだに形成される細孔を有する担体の場合、あるいは三次元構造(高分子網目)を有する共重合体が親和性のある有機溶媒で膨潤された状態のときに存在する細孔(ミクロポアー)を有する担体の場合も含まれる。
【0031】また吸着材の単位体積あたりの吸着能から考えて、多孔構造を有する水不溶性担体は、表面多孔性よりも全多孔性が好ましく、また空孔容積および比表面積は、吸着性が損なわれない程度に大きいことが好ましい。
【0032】これらの好ましい要件を満たす担体として、多孔質セルロース担体があげられる。多孔質セルロース担体は、以下の優れた利点を有している。
【0033】(1)機械的強度が比較的高く、強靭であるため撹拌などの操作により破壊されたり微粉を生じたりすることが少ない。またカラムに充填した場合体液を高速で流しても圧密化したりしないので高流速で流すことが可能となる。また細孔構造が高圧蒸気滅菌などによって変化を受けにくい。
【0034】(2)担体がセルロースで構成されているため親水性であり、リガンドの結合に利用し得る水酸基が多数存在している。非特異的吸着も少ない。
【0035】(3)空孔容積を大きくしても比較的強度が高いため軟質担体に劣らない吸着容量が得られる。
【0036】(4)安全性が合成高分子担体等に比べて高い。
【0037】したがって、本発明に用いる最も適した担体の1つである。しかしながら本発明においてはこれらのみに限定されるものではなく、さらに上述の担体はそれぞれ単独で用いてもよいし、任意の2種類以上を混合して用いてもよい。
【0038】また水不溶性多孔質担体の細孔は、吸着対象の物質がある程度大きな確率で侵入できるような大きさを有していることが好ましい。本発明の吸着材の吸着対象である内因性カンナビノイドは分子量が300〜400程度と比較的小さいため、多孔構造を有する水不溶性担体であれば充分侵入可能である。そのため、使用できる水不溶性多孔質担体にとくに制限はない。一方、安全性の点からは、体液中のタンパク質ができる限り侵入しないことが好ましい。細孔内に侵入可能な物質の分子量の目安としては、排除限界分子量が一般に用いられている。排除限界分子量とは、成書(たとえば、波多野博行、花井俊彦著、実験高速液体クロマトグラフ、化学同人)などに述べられているごとく、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて細孔内に侵入できない(排除される)分子の内、最も小さい分子量をもつものの分子量をいう。排除限界分子量は一般に球状タンパク質、デキストラン、ポリエチレングリコールなどについてよく調べられているが、本発明に用いる担体の上限の排除限界分子量に関しては、球状タンパク質を用いて得られた値を用いるのが適当である。
【0039】排除限界分子量が60万を超えるものでは、体液中のタンパク質(主としてアルブミン)の吸着が大きくなり、安全性の点でその実用性が低下する。したがって本発明に用いる担体の球状タンパク質の排除限界分子量の好ましい範囲は60万以下、さらに好ましくは30万以下、とくに好ましくは10万以下である。
【0040】さらに、担体にはリガンドの固定化反応に用い得る官能基を有していることが好ましい。これらの官能基の代表例としては水酸基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、チオール基、シラノール基、アミド基、エポキシ基、ハロゲン基、スクシニルイミド基、酸無水物基などがあげられるが、これらに限定されるわけではない。
【0041】本発明に用いる担体としては硬質担体、軟質担体のいずれも用いることができるが、体外循環用の吸着材として使用する場合には、カラムに充填し、通液する際などに目詰まりを生じないことが重要であり、そのためには充分な機械的強度が要求される。したがって本発明に用いる担体は硬質担体であることがより好ましい。ここでいう硬質担体とは、たとえば粒状担体の場合、後記参考例に示すごとく、担体を円筒状カラムに均一に充填し、水性流体を流した際の圧力損失ΔPと流量の関係が0.3kg/cm2までの直線関係にあるものをいう。
【0042】本発明の吸着材は、logP値が3.50以上の化合物を水不溶性担体に固定して得られるが、その固定化方法としては公知の種々の方法を特別な制限なしに用いることができる。しかしながら、本発明の吸着材を体外循環治療に供する場合には、滅菌時あるいは治療時においてのリガンドの脱離溶出を極力抑えることが安全上重要であり、そのためには共有結合法により固定化することが好ましい。
【0043】本発明の吸着材における化合物の固定量は、好ましくは1〜5000μmol/g−湿重量である。さらに好ましくは5〜3000μmol/g−湿重量である。固定量が1μmol/g−湿重量より少ないと、内因性カンナビノイドの吸着が充分でなくなる傾向にある。固定量が5000μmol/g−湿重量をこえると、液体が血液である場合に、血小板などの粘付着が起こる傾向にある。
【0044】本発明による吸着材を用いて体液中より内因性カンナビノイドを吸着除去する方法には種々の方法がある。最も簡便な方法としては、体液を取り出してバッグなどに貯留し、これに吸着材を混合して接触させ、内因性カンナビノイドを吸着除去したのち、吸着材を濾別して内因性カンナビノイドが除去された体液を得る方法がある。つぎの方法は体液の入口と出口を有し、出口には体液は通過するが吸着材は通過しないフィルターを装着した容器に吸着材を充填し、これに体液を流し、接触させる方法がある。いずれの方法も用いることができるが、後者の方法は操作も簡便であり、また体外循環回路に組み込むことにより患者の体液、とくに血液から効率よくオンラインで内因性カンナビノイドを除去することが可能であり、本発明の吸着材はこの方法に適している。
【0045】ここでいう体外循環回路では本発明の吸着材を単独で用いることもできるが、他の体外循環治療システムとの併用も可能である。併用の例としては、人工透析回路などがあげられ、透析療法との組み合わせに用いることもできる。
【0046】つぎに、前記内因性カンナビノイド吸着材を用いた本発明の内因性カンナビノイド吸着器を、一実施例の概略断面図である図1に基づき説明する。図1中、1は液体の流入口、2は液体の流出口、3は本発明の内因性カンナビノイド吸着材、4および5は液体および液体に含まれる成分は通過できるが前記内因性カンナビノイド吸着材は通過できないフィルター、6はカラム、7は内因性カンナビノイド吸着器である。しかしながら、内因性カンナビノイド吸着器はこのような具体例に限定されるものではなく、液の入口、出口を有し、かつ内因性カンナビノイド吸着材の容器外への流出防止具を備えた容器内に前記吸着材を充填したものであれば、どのようなものでもよい。
【0047】前記流出防止具には、メッシュ、不織布、綿栓などのフィルターがあげられる。また、容器の形状、材質、大きさにはとくに限定はないが、形状としては筒状容器が好ましい。容器の材質として好ましいのは耐滅菌性を有する素材であるが、具体的にはシリコンコートされたガラス、ポリプロピレン、塩化ビニール、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリメチルペンテンなどがあげられる。容器の容量は50〜1500mlで直径は2〜20cmが好ましく、さらに容量は100〜800mlで直径は3〜15cmが好ましく、とくに容量は150〜400mlで直径は4〜10cmが好ましい。容器の容量が50mLより小さいと吸着量が充分でなく、1500mLより大きいと体外循環量が多くなるので好ましくない。容器の直径が2cmより小さいと線速が大きくなるため圧力損失が大きくなり好ましくない。20cmより大きいと取り扱いにくくなるうえ線速が小さくなるため凝固の危険性があり好ましくない。
【0048】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0049】参考例両端に孔径15μmのフィルターを装着したガラス製円筒カラム(内径9mm、カラム長150mm)にアガロース材料(バイオラッド(Bio−rad)社製のBiogelA−5m、粒径50〜100メッシュ)、ビニル系高分子材料(東ソー(株)製のトヨパールHW−65、粒径50〜100μm)およびセルロース材料(チッソ(株)製のセルロファインGC−700m、粒径45〜105μm)をそれぞれ均一に充填し、ペリスタティックポンプにより水を流し、流量と圧力損失ΔPとの関係を求めた。その結果を図2に示す。
【0050】図2に示すごとく、トヨパールHW−65およびセルロファインGC−700mが圧力の増加にほぼ比例して流量が増加するのに対し、BiogelA−5mは圧密化を引き起こし、圧力を増加させても流量が増加しないことがわかる。本発明においては前者のごとく、圧力損失ΔPと流量の関係が0.3kg/cm2までの直線関係にあるものを硬質材料という。
【0051】実施例1セルロース系多孔質担体であるセルロファインGC−200m(チッソ(株)製、球状蛋白質の排除限界分子量140,000、粒径45〜105μm)170mlに水を加えて全量340mlとしたのち、2M水酸化ナトリウム水溶液90mlを加え40℃とした。これにエピクロルヒドリン31mlを加え、40℃で攪拌下2時間反応させた。反応終了後、充分に水洗し、エポキシ化セルロファインGC−200mを得た。
【0052】このエポキシ化セルロファインGC−200mを10mlとり、n−ヘキサデシルアミン(Σf=7.22)200mgを加え、エタノール中、45℃で静置下、6日間反応させた。反応終了後、エタノール、水の順に充分洗浄し、n−ヘキサデシルアミン固定化(固定量29μmol/g−湿重量)セルロファインGC−200mを得た。
【0053】このn−ヘキサデシルアミン固定化セルロファインGC−200mを0.2mlとり、内因性カンナビノイドであるアナンダマイド(カルビオケム−ノバビオケム社製)を0.1mg/mlの濃度になるよう添加した50%エタノール/生理食塩液を1.2ml加え、37℃で2時間振盪した。振盪後、上清を除いて生理食塩液で洗浄したのち、95%エタノールを1.2ml入れて吸着したアナンダマイドを溶出させた。その上清エタノールの208nm付近の紫外線吸収を測定することによりアナンダマイド濃度を求め、吸着量を算出した。
【0054】実施例2実施例1で得られたエポキシ化セルロファインGC200mを10mlとり、n−ドデシルアミン(Σf=5.12)200mgを加え、50(v/v)%エタノール水溶液中、45℃で静置下、6日間反応させた。反応終了後、50(v/v)%エタノール水溶液、エタノール、50(v/v)%エタノール水溶液、水の順に充分に洗浄し、n−ドデシルアミン固定化(固定量27μmol/g−湿重量)セルロファインGC200mを得た。
【0055】このn−ドデシルアミン固定化セルロファインGC200mを用いて、実施例1と同様にアナンダマイド添加50%エタノール/生理食塩液と振盪し、エタノールで溶出してアナンダマイド吸着量を算出した。
【0056】実施例3n−ドデシルアミンをn−デシルアミン(Σf=4.07)に変えたほかは、実施例2と同様にしてn−デシルアミン固定化(固定量27μmol/g−湿重量)セルロファインGC200mを得た。このn−デシルアミン固定化セルロファインGC200mを用いて、実施例1と同様にアナンダマイド添加50%エタノール/生理食塩液と振盪し、エタノールで溶出してアナンダマイド吸着量を算出した。
【0057】比較例1n−ドデシルアミンをn−オクチルアミン(logP=2.90)に変えたほかは、実施例2と同様にしてn−オクチルアミン固定化(固定量28μmol/g−湿重量)セルロファインGC200mを得た。このn−オクチルアミン固定化セルロファインGC200mを用いて、実施例1と同様にアナンダマイド添加50%エタノール/生理食塩液と振盪し、エタノールで溶出してアナンダマイド吸着量を算出した。
【0058】比較例2n−ドデシルアミンをn−ヘキシルアミン(logP=2.06)に変えたほかは、実施例2と同様にしてn−ヘキシルアミン固定化(固定量30μmol/g−湿重量)セルロファインGC200mを得た。このn−ヘキシルアミン固定化セルロファインGC200mを用いて、実施例1と同様にアナンダマイド添加50%エタノール/生理食塩液と振盪し、エタノールで溶出してアナンダマイド吸着量を算出した。
【0059】比較例3n−ドデシルアミンをn−ブチルアミン(logP=0.97)に変えたほかは、実施例2と同様にしてn−ブチルアミン固定化(固定量32μmol/g−湿重量)セルロファインGC200mを得た。このn−ブチルアミン固定化セルロファインGC200mを用いて、実施例1と同様にアナンダマイド添加50%エタノール/生理食塩液と振盪し、エタノールで溶出してアナンダマイド吸着量を算出した。
【0060】
【表1】

【0061】実施例4実施例1で得られたn−ヘキサデシルアミン固定化セルロファインGC−200mを0.2mlとり、内因性カンナビノイドである2−AG(カルビオケム−ノバビオケム社製)を0.1mg/mlの濃度になるよう添加した50%エタノール/生理食塩液を1.2ml加え、37℃で2時間振盪した。振盪後、上清を除いて生理食塩液で洗浄したのち、95%エタノールを1.2ml入れて吸着した2−AGを溶出させた。その上清エタノールの208nm付近の紫外線吸収を測定することにより2−AG濃度を求め、吸着量を算出した。
【0062】実施例5実施例2で得られたn−ドデシルアミン固定化セルロファインGC200mを用いて、実施例4と同様にヒト2−AG添加50%エタノール/生理食塩液と振盪し、エタノールで溶出して2−AG吸着量を算出した。
【0063】実施例6実施例3で得られたn−デシルアミン固定化セルロファインGC200mを用いて、実施例4と同様にヒト2−AG添加50%エタノール/生理食塩液と振盪し、エタノールで溶出して2−AG吸着量を算出した。
【0064】比較例4比較例1で得られたn−オクチルアミン固定化セルロファインGC200mを用いて、実施例4と同様にヒト2−AG添加50%エタノール/生理食塩液と振盪し、エタノールで溶出して2−AG吸着量を算出した。
【0065】比較例5比較例2で得られたn−ヘキシルアミン固定化セルロファインGC200mを用いて、実施例4と同様にヒト2−AG添加50%エタノール/生理食塩液と振盪し、エタノールで溶出して2−AG吸着量を算出した。
【0066】比較例6比較例3で得られたn−ブチルアミン固定化セルロファインGC200mを用いて、実施例4と同様にヒト2−AG添加50%エタノール/生理食塩液と振盪し、エタノールで溶出して2−AG吸着量を算出した。
【0067】
【表2】

【0068】
【発明の効果】本発明の方法による水不溶性担体にlogP値3.50以上の化合物を固定化した吸着材を用いることで、内因性カンナビノイドを効率よく吸着除去することができる。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
【出願日】 平成13年8月23日(2001.8.23)
【代理人】 【識別番号】100065226
【弁理士】
【氏名又は名称】朝日奈 宗太 (外3名)
【公開番号】 特開2002−136591(P2002−136591A)
【公開日】 平成14年5月14日(2002.5.14)
【出願番号】 特願2001−252824(P2001−252824)