| 【発明の名称】 |
インターフェロン−高分子複合体及びその医薬用途 |
| 【発明者】 |
【氏名】田畑 泰彦
【氏名】松岡 秀仁
【氏名】黒瀬 達治
【氏名】村井 健二
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| 【要約】 |
【課題】IFNの安定性を高め、且つ、標的部位でのIFNの薬効が発揮できるように、IFNを修飾したIFN製剤を提供する。
【解決手段】インターフェロン−高分子複合体は、インターフェロンと、スペルミンを導入した高分子とを金属イオンの存在下で混合することにより得られる。好ましいインターフェロンはβ型である。前記高分子は医薬の添加物として許容される高分子、例えば多糖類又は多価アルコール系高分子等の水溶性高分子である。好ましい多糖類はデキストラン又はプルランである。好ましい多価アルコール系高分子はポリアルキレングリコール又はポリビニルアルコールである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 インターフェロン、スペルミンを導入した高分子及び金属イオンからなるインターフェロン−高分子複合体。 【請求項2】 インターフェロンと、スペルミンを導入した高分子とを金属イオンの存在下で混合することにより得られるインターフェロン−高分子複合体。 【請求項3】 前記インターフェロンがβ型である請求項1又は2記載のインターフェロン−高分子複合体。 【請求項4】 前記高分子が医薬の添加物として許容される高分子である請求項1又は2記載のインターフェロン−高分子複合体。 【請求項5】 医薬の添加物として許容される高分子が水溶性高分子である請求項4記載のインターフェロン−高分子複合体。 【請求項6】 水溶性高分子が多糖類又は多価アルコール系高分子である請求項5記載のインターフェロン−高分子複合体。 【請求項7】 多糖類がデキストラン及びプルランから選択される請求項6記載のインターフェロン−高分子複合体。 【請求項8】 多価アルコール系高分子がポリアルキレングリコール及びポリビニルアルコールから選択される請求項6記載のインターフェロン−高分子複合体。 【請求項9】 前記金属イオンが亜鉛イオンである請求項1又は2記載のインターフェロン−高分子複合体。 【請求項10】 請求項1から9のいずれかに記載のインターフェロン−高分子複合体を有効成分として含有する医薬。 【請求項11】 請求項1から9のいずれかに記載のインターフェロン−高分子複合体を有効成分として含有する血管新生を伴う疾患の治療剤。 【請求項12】 血管新生を伴う疾患が眼科疾患である請求項11記載の治療剤。 【請求項13】 眼科疾患が糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性症、血管新生緑内障、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、翼状片、ルベオーシス又は角膜新生血管症である請求項12記載の治療剤。 【請求項14】 血管新生を伴う疾患が自己免疫性疾患である請求項11記載の治療剤。 【請求項15】 自己免疫性疾患が慢性関節リュウマチ、乾癬、浮腫性硬化症又は多発性硬化症である請求項14記載の治療剤。 【請求項16】 血管新生を伴う疾患が癌疾患である請求項11記載の治療剤。 【請求項17】 癌疾患が固形腫瘍又は血管腫である請求項16記載の治療剤。 【請求項18】 請求項1から9のいずれかに記載のインターフェロン−高分子複合体を有効成分として含有する肝疾患の治療剤。 【請求項19】 インターフェロンを、スペルミンを導入した高分子と、金属イオンの存在下で混合してインターフェロン−高分子複合体とすることからなるインターフェロンの薬効持続時間の延長方法。 【請求項20】 インターフェロンと、スペルミンを導入した高分子とを金属イオンの存在下で混合することからなるインターフェロン−高分子複合体の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、新規なインターフェロン−高分子複合体、その製造方法及びその医薬用途並びにインターフェロンの薬効持続時間の延長方法に関する。 【0002】 【従来の技術】インターフェロン(以下「IFN」という)は、抗ウイルス作用を有する物質として発見されて以来、種々の生物活性が見出されている。例えば、細胞増殖抑制作用、免疫調節作用、細胞高分子合成調整作用等であり、実際にウイルス感染疾患の他、癌、肝臓疾患や種々の免疫疾患等の治療に広く用いられている。しかし、IFNは生体内において不安定な物質であるため、その安定化が重要な課題であり、安定化を目的とした種々の製剤研究も行われている。この生体内におけるIFNの安定化は、IFNの薬効持続時間の延長にもつながり、IFNの薬効発現に重要な影響を及ぼす。これらを目的とした研究報告として、例えば、高分子材料を用いたIFNの修飾、具体的には、IFN─ポリエチレングリコール(PEG)抱合体(特開平6−192300)が報告されている。 【0003】また、IFNは、血管新生抑制作用を有することも報告されている(Sidky, Y.A. et al, Cancer Res.,47, 5155-5161, 1987)。血管新生は種々の疾患と密接なつながりがあり、血管新生を伴う疾患としては、例えば糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性症、血管新生緑内障、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、翼状片、ルベオーシス、角膜新生血管症等の眼科疾患、固形腫瘍、血管腫、腫瘍の増殖・転移等の癌疾患、慢性関節リュウマチ、乾癬、浮腫性硬化症等の自己免疫性疾患などが挙げられる。 【0004】一方、IFNの標的部位への移行に関する研究も種々行われている。標的部位への移行は、IFNの薬効発現を効果的にするために重要であり、例えば、IFNの肝臓への集積を向上させたIFN-α─プルラン複合体(Tabata, Y. et al,J.Interferon and Cytokine Research, 19,287-292, 1999)のように、高分子材料を用いてIFNを修飾する技術についての研究がなされている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、前述したように、IFNは安定性が低いため、そのままでは血管新生を伴う疾患の治療剤として十分な効果を発揮することが困難である。従来、IFNの安定化に関する研究は種々なされているが、まだ満足できるものではない。 【0006】本発明の目的は、IFNの安定性を高め、且つ、標的部位でのIFNの薬効が発揮できるように、IFNを修飾したIFN製剤を提供することである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、IFNを、IFN、金属キレート能をもつスペルミンを導入した高分子及び金属イオンからなるIFN−高分子複合体とすることにより、IFNの生体内における安定性が向上し、且つ、標的部位でのIFNの薬効が発揮できることを見いだした。また、この生体内安定性向上はIFNの薬効持続時間の延長にもつながるものである。 【0008】本発明は、IFNと、金属キレート能をもつスペルミンを導入した高分子とを金属イオンの存在下で混合することにより得られる、金属配位結合を介したIFN−高分子複合体に関する。本発明は、上記のIFN−高分子複合体を有効成分として含有する医薬、例えば、血管新生を伴う疾患の治療剤や肝疾患の治療剤を提供する。また、本発明は、IFNと、スペルミンを導入した高分子とを金属イオンの存在下で混合することからなるIFN−高分子複合体の製造方法を提供する。さらに、本発明は、IFN−高分子複合体を用いることによるIFNの薬効持続時間の延長方法を提供する。 【0009】 【発明の実施の形態】上記の通り、本発明のIFN−高分子複合体は、IFNと、金属キレート能をもつスペルミンを導入した高分子とを金属イオンの存在下で混合することにより容易に得られる。 【0010】本発明の複合体に含まれるIFNは、α型、β型、γ型、あるいはコンセンサス型、ハイブリッド型のいずれでも良く、またその由来も天然型、遺伝子組換え型、化学合成型のいずれでも良い。IFN-αとIFN-βはレセプターを共有しており、同様の作用を有してはいるが、血管新生抑制作用に関しては、IFN-βの方がIFN-αよりも高い薬効を奏するという報告(Sidky, Y.A. et al, Cancer Res.,47, 5155-5161, 1987)があり、IFN-βが好適に用いられる。 【0011】本発明に用いられるスペルミンは、金属キレート能を有し、化学名がN,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ジアミノブタンであるポリアミンの一種で、動物組織や血清中に存在する化合物であり、人体に対する安全性も高い。 【0012】本発明に用いられる高分子としては、スペルミンを導入することが可能であって、医薬の添加物として許容される高分子であればよく、特に制限されないが、水溶性高分子やミセル形成可能な高分子などが挙げられ、水酸基を有する水溶性高分子が好適に用いられる。 【0013】水溶性高分子としては、医薬の添加物として許容される水溶性高分子であればよく、特に制限されないが、多糖類又は多価アルコール系高分子が好適に用いられる。 【0014】多糖類としては、医薬の添加物として許容される多糖類であればよく、特に制限されないが、デキストラン、プルラン、スターチ、ヒアルロン酸、エルシナンなどが挙げられ、デキストラン又はプルランが好適に用いられる。これらの多糖類の分子量は、通常4,000〜500,000の範囲で、より好ましくは70,000〜500,000である。 【0015】多価アルコール系高分子としては、医薬の添加物として許容される多価アルコール系高分子であればよく、特に制限されないが、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール又はポリビニルアルコールが好適に用いられる。これらの多価アルコール系高分子の分子量は、通常4,000〜500,000の範囲にあり、より好ましくは70,000〜500,000である。 【0016】スペルミンを導入した高分子とは、スペルミンと高分子とを化学結合させたものを示し、スペルミンと高分子とをN,N’−カルボニジルイミダゾール等の縮合剤を用いてジメチルスルホキシドなどの溶媒中で混合し、縮合させることにより容易に得ることができる。より詳しく説明すると、スペルミンのアミノ基と高分子の水酸基とを反応性基として利用し、縮合剤を用いて縮合させるものである。好適な高分子の例として挙げたデキストラン若しくはプルラン等の多糖類又はポリアルキレングリコール若しくはポリビニルアルコール等の多価アルコール系高分子は、複数の水酸基を有するが、全ての水酸基が化学結合に寄与する必要はなく、一部は遊離の水酸基として残っていてもよく、またその化学結合の形態に制約されるものではない。 【0017】その他の製造方法としては、塩化シアヌル法(「新実験化学講座19 高分子化学I」、日本化学会)、臭化シアン法(「生化学実験講座I タンパク質の化学I」、日本生化学会)、あるいはエピクロルヒドリン法(「第4版 実験化学講座29 高分子材料」、日本化学会)なども用いることができる。 【0018】本発明で使用される金属としては、人体に対して安全であれば、特に限定されるものではなく、2価あるいはそれ以上の原子価をもつ遷移及びアルカリ土類金属などが好ましい。複合体 の安定性や安全性の観点から、亜鉛、銅、ニッケル、コバルトなどが好ましく、亜鉛がさらに好ましい。これらの金属は塩化物、硫酸塩あるいは酢酸塩などの塩の形でIFN−高分子複合体の製造に使用される。 【0019】本発明のIFN−高分子複合体は、IFNの水溶液と、上記スペルミンを導入した高分子と、上記金属イオンとを混合することにより得ることができる。混合温度及び溶媒は特に限定する必要はなく、混合温度は室温でよく、溶媒は水でよい。 【0020】IFN、スペルミンを導入した高分子及び金属イオンの混合比率は、必要に応じて選択することができるが、通常、1モルのIFNに対し、スペルミンを導入した高分子の使用量は0.01モル〜10モルで、金属イオンの使用量は0.1モル〜100モルである。 【0021】高分子とスペルミンとの結合比も必要に応じて選択することができる。その結合比は高分子の種類や結合状態によっても異なるが、通常、高分子1モルに対して、スペルミン1モル〜100モルである。 【0022】IFNは市販の水溶液を用いることができ、その力価も所望に応じて選択することができる。 【0023】複合体を製造する際の混合時間は、特に限定されないが、5〜150分間程度が好ましい。この混合溶液は、特段の精製をすることなく、そのまま実際の製剤に利用することができ、また凍結乾燥して粉末の状態で使用することもできる。なお、必要であれば、 ゲル濾過クロマトグラフィー等の手段を用いて、未反応の金属イオン又はインターフェロンを除去することもできる。 【0024】本発明のIFN−高分子複合体は、IFNの生理活性を利用した種々の疾患の治療に用いることができる。例えば、血管新生を伴う疾患やB型慢性活動性肝炎、C型慢性肝炎等の肝疾患などの治療に用いることができる。血管新生を伴う疾患の具体例としては、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性症、血管新生緑内障、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、翼状片、ルベオーシス、角膜新生血管症等の眼科疾患、慢性関節リュウマチ、乾癬、浮腫性硬化症等の自己免疫性疾患、固形腫瘍、血管腫、膠芽腫、髄芽腫、星細胞腫、皮膚悪性黒色腫、腫瘍の増殖・転移等の癌疾患などが挙げられる。 【0025】本発明の複合体の投与量は、患者の年齢、体重、投与対象疾患、症状、投与形態、投与ルートなどに応じて、適宜決定されるが、IFNとして1,000単位/日〜10,000万単位/日、好ましくは10,000単位/日〜2,000万単位/日の範囲で投与される。 【0026】上記の方法により得られる IFN、スペルミンを導入した高分子、及び金属イオンからなる IFN−高分子複合体を用いた試験例を下記に示す。試験例1に示すように、 IFN−高分子複合体は 優れた血管新生阻害効果を発揮することが見いだされた。この試験結果は、IFNが薬効を失うことなく標的部位に到達していることを示し、IFNをスペルミン複合体にすることによる安定性向上効果を裏付けると共に、薬効持続時間の延長にもつながることを示唆している。また、試験例2に示すように多糖類としてプルランを用いることによって、肝臓部位に効果的に IFNを集積できることが分かり、IFN−高分子複合体が 肝臓疾患の治療に有用であることを併せて見いだした。 【0027】本発明の IFN−高分子複合体は、そのまま、若しくは医薬として許容される担体、賦形剤などと混合した医薬組成物として投与することができる。投与方法としては、経口投与でも非経口投与でも良く、標的部位によって適宜投与方法を選択することができる。経口投与剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤などが挙げられ、公知の方法を用いて調製することができる。例えば、錠剤の場合ラクトース、マルトース、サッカロース、澱粉、ステアリン酸マグネシウムなどの賦形剤を用いて調製することができる。非経口投与剤型としては、例えば、点眼剤、軟膏剤、注射剤、経鼻吸収剤、経肺吸収剤、経皮吸収剤などが挙げられ、公知の方法を用いて調製することができる。例えば、点眼剤や注射剤等の液剤は、 IFN−高分子複合体を注射用蒸留水に溶解して調製することができ、必要に応じてグリセリン等の等張化剤、塩酸等のpH調節剤、リン酸緩衝液等の緩衝剤、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤、エデト酸ナトリウム等の安定化剤等、医薬として許容される添加剤を用いて調製することができる。さらに、上記の各製剤においては、安定化剤としてヒト血清アルブミン、ヒト免疫グロブリン、α2マクログロブリン、アミノ酸などを添加することができる。 【0028】 【実施例】次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0029】実施例1 IFNとスペルミン−デキストランとのキレート結合を介した複合体(IFN−スペルミン−デキストラン)の調製300mgのデキストラン(分子量20万、ナカライテスク株式会社製)を含む30mlの無水ジメチルスルホキシド溶液中に、81.5mgのN,N’―カルボニジルイミダゾール(和光純薬株式会社製)を加え、溶液を室温で撹拌しデキストランの水酸基を活性化した。この溶液に1.011gのスペルミン(SIGMA社製)を加え、同溶液を室温でさらに24時間撹拌した。反応物を水に対して2日間透析して未反応のスペルミンを除去した後、凍結乾燥してスペルミンを導入したデキストランを得た(収率80%、スペルミンの導入率はグルコース残基1モル当り5%モル(TNBS法によるアミノ基定量))。つぎに、IFN-β(持田製薬製)水溶液150,000単位/0.375mlに上記のスペルミンを導入したデキストランの水溶液46.8μg/0.3mlを加え、室温にて軽く撹拌後、ZnCl2水溶液5.1ng/0.075mlを加えて混合して、溶液を室温で約10分間放置した。ついで、生理食塩液0.75mlを加えて攪拌し、目的とするIFNとスペルミン−デキストランとのキレート結合を介した複合体の粗精製水溶液を得た。 【0030】実施例2 IFNとスペルミン−プルランとのキレート結合を介した複合体(IFN−スペルミン−プルラン)の調製デキストリンの代わりにプルランを用いる以外は、実施例1と同様の操作をして、目的とするIFNとスペルミン−プルランとのキレート結合を介した複合体の粗精製水溶液を得た。 【0031】比較例1 IFNとジエチレントリアミノペンタ酢酸(DTPA)−プルランとのキレート結合を介した複合体(IFN−DTPA−プルラン)の調製100mgの プルラン(分子量20万、ナカライテスク株式会社製)を含む30mlの無水ジメチルスルホキシド溶液中に、132.4mgのジエチレントリアミノペンタ酢酸無水物(DTPA無水物,株式会社同仁化学研究所製)と4.5mgの4−ジメチルアミノピリジン(ナカライテスク株式会社製)とを加えた。この混合溶液を室温で24時間撹拌した。反応物を水に対して2日間透析して未反応のDTPAと4−ジメチルアミノピリジンを除去した後、凍結乾燥してDTPAを導入したプルランを得た(DTPAの導入率はグルコース残基1モル当り約20%モル(電気伝導度滴定法))。つぎに、IFN-β(持田製薬製)水溶液150,000単位/0.375mlに上記のDTPAを導入したプルランの水溶液46.8μg/0.3mlを加え、室温で軽く撹拌後、ZnCl2水溶液5.1ng/0.075mlを加えて混合して室温で約10分間放置した。ついで、生理食塩液0.75mlを加えて攪拌して、比較化合物(IFNーDTPA-プルラン)の水溶液を得た。 【0032】試験例1 IFN−スペルミン−デキストランの血管新生抑制試験5%塩酸ケタミン注射液及び2%塩酸キシラジン注射液の混合液(7:1) 1ml/kgをラットの筋肉内に投与することにより全身麻酔し、0.5%トロピカミド−0.5%塩酸フェニレフリン配合点眼液投与により散瞳させた後、クリプトンレーザー光凝固装置を用いて光凝固を行った。光凝固は、眼底後局部の太い網膜血管を避け、焦点を網膜深層に合わせて8ヶ所に散在的に実施した(凝固条件:スポットサイズ100μm、出力100mW、凝固時間0.1秒)。光凝固後、眼底撮影を行い、レーザー照射部位を確認した。光凝固後14日目に10%フルオレスセイン 0.1mlを頚静脈から注入して、蛍光眼底造影を行った。実施例1で得たIFN−スペラミン−デキストランをリン酸緩衝液で希釈し、レーザー照射日より13日間、IFN投与量として10万単位/kgの用量で尾静脈へ投与した。 【0033】比較対照としてIFN-βを複合体と同様にしてリン酸緩衝液に溶解した溶液を用いた。蛍光眼底造影をして、蛍光漏出が認められなかったスポットを陰性、蛍光漏出が認められたスポットを陽性として判定した。レーザー照射8ヶ所のスポットに対する陽性スポット数から新生血管発現率を算定し、コントロール群(リン酸緩衝液投与群)に対する各薬物投与群の新生血管発現率から脈絡膜血管新生阻害率を算出した。これらの結果を表1に示す。なお、表中の数値は4例の平均値を示す。 【0034】 【表1】
【0035】考察表1より、IFNを複合体にすることなくそのまま静脈内投与したときは脈絡膜血管新生阻害率はわずか2%であるのに対し、 実施例1で得たIFN−スペラミン−デキストラン(IFN−高分子複合体)を静脈内投与したときは、脈絡膜の血管新生を36%阻害した。 この結果は、IFNは、これをスペルミン複合体にすることにより、 効果を損なうことなく標的部位に到達していることを示している。この原因としてIFNの血中安定性が向上したこと、新生血管の血管透過性が高く、このことがIFN−高分子複合体の新生血管部位への集積を高めたことなどが考えられる。また、この安定性向上は、薬効持続時間の延長にもつながるものである。 【0036】試験例2 IFN−スペルミン−プルランの肝臓集積試験Balb/cマウスに生理食塩液、IFN-β 、実施例2で得たIFN−スペルミン−プルラン、及び比較例1で得たIFN−DTPA−プルランをIFN投与量として 10万単位 /マウスの用量で夫々静脈内投与した。 【0037】投与24時間後にマウスを脱血致死させ、肝臓を採取し、肝臓1gあたり3 mlの細胞溶解緩衝液(10 mM HEPES / 50 mM KCl / 3 mM Mg(OAc)2 / 0.3 mM EDTA /10% グリセロール/ 7 mM 2-メルカプトエタノール/ 0.5% Tergitol NP-40(商品名、NPはノニルフェノキシ ポリエトキシエタノールの略), pH 7.5)を添加してホモジナイズした。得られたホモジネートを20,000 ×gで5分間遠心分離し、上清を採取した。上清(蛋白濃度:40 mg/ml)に等量のラウリル硫酸ナトリウムを添加し、1分間煮沸後、その5μlをラウリル硫酸ナトリウム含10%ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動した。電気泳動後、ラウリル硫酸ナトリウム含10%ポリアクリルアミドゲル中の蛋白をポリビニリデンジフルオライド膜に転写した。転写した膜を5%無脂肪ドライミルクでブロッキングした後、一次抗体のラット抗マウス2-5A シンセターゼ抗体(モノクローナル抗体)を含むリン酸緩衝液(137 mM NaCl / 2.68 mM KCl / 1.47 mM KH2 PO4 / 8.06 mM Na2 PO4 , pH 7.4)中で4℃、一晩インキュベートした。二次抗体にホースラディッシュペルオキシダーゼを結合させたウサギ抗ラットIgG抗体を、基質にニトロブルーテトラゾリウムを用いて、転写膜上に2-5A シンセターゼが存在する個所を化学発光させ、デンシトメーターにて発光強度を解析した。なお、2-5A シンセターゼはIFNにより特異的に誘導される抗ウイルス酵素であり、この酵素活性がIFNの抗ウイルス活性に対応していることが知られている。IFNの活性比は、2-5A シンセターゼの量(発光強度)を基準に算出した。これらの結果を表2に示す。 【0038】 【表2】
【0039】考察表2より、実施例2で得たIFN−スペルミン−プルランを静脈内投与したときに、肝臓中の2-5A シンセターゼの量(発光強度)は、IFN単独及びIFN−DTPA−プルラン(比較例1)を静脈内投与したときよりも顕著に増加しており、IFN−スペルミン−プルラン複合体がIFNの活性を肝臓に効率よくターゲティングしていることがわかる。これらの効果は、IFNをスペルミンを導入したプルランと複合体化することにより、IFNがその標的部位である肝臓に効果的にターゲティングされ、その結果、肝でのIFNが増強された。プルランは肝への高い親和性を示す多糖類であり、単にIFNとスペルミン導入プルランを混合するだけでIFNとプルランとがZn2+ を介して結合し、肝臓へIFNが到達するまでの間は、少なくともIFNが肝臓のターゲティング担体であるプルランに結合していることが裏付けられる。すなわち、この試験例は、本発明のIFN−スペルミン−プルラン複合体が肝疾患に対し有用な治療剤となり得ることを示すものである。 【0040】 【発明の効果】本発明のIFN−高分子複合体は、IFNの生体内での安定性を向上させ、かつ、IFNの標的部位にIFNを効果的に到達させると共に、IFNの生物活性を増強させる製剤である。IFNはその一つの活性として、優れた血管新生阻害効果を発揮するので、この複合体は血管新生を伴う疾患、例えば糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性症、血管新生緑内障、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、翼状片、ルベオーシス、角膜新生血管症等の眼科疾患、慢性関節リュウマチ、乾癬、浮腫性硬化症等の自己免疫性疾患、血管新生を伴う疾患、固形腫瘍、血管腫、膠芽腫、髄芽腫、星細胞腫、皮膚悪性黒色腫、腫瘍の増殖・転移等の癌疾患に有用である。この場合IFNの新生血管への ターゲティングメカニズムは、正常血管と新生血管との血管透過性の違いによる受動的ターゲティングである。また、肝臓への高い親和性をもつプルランなどを用いれば、IFNを肝臓にも集積させることが可能となり、B型慢性活動性肝炎、C型慢性肝炎等の肝疾患の治療に有効である。このプルランの肝臓への高い親和性は、プルランが肝実質あるいは非実質細胞表面に存在しているレクチン様レセプターに結合するためであり、このシステムは、積極的 ターゲティングである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】599029420 【氏名又は名称】田畑 泰彦 【識別番号】000177634 【氏名又は名称】参天製薬株式会社
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| 【出願日】 |
平成14年4月10日(2002.4.10) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100060874 【弁理士】 【氏名又は名称】岸本 瑛之助 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−371016(P2002−371016A) |
| 【公開日】 |
平成14年12月26日(2002.12.26) |
| 【出願番号】 |
特願2002−107234(P2002−107234) |
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