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【発明の名称】 化粧剤の吸着を増強させる方法および化粧料
【発明者】 【氏名】寺田 正樹

【氏名】永井 勉

【氏名】菅原 康夫

【氏名】米田 武夫

【要約】 【課題】皮膚、毛髪、爪などに対して化粧剤を強固に長期間にわたって特異的且つ簡便に吸着させることができる、安全性が高い方法および化粧料を提供する。

【解決手段】化粧を施す対象に対して結合性を有する単鎖抗体とリガンドに結合し得るアミノ酸配列との融合体、ならびにリガンドおよび化粧剤が組み合わせて使用されることを特徴とする化粧料と、これを用いた化粧剤の吸着増強方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 化粧を施す対象に対して結合性を有する単鎖抗体とリガンドに結合し得るアミノ酸配列との融合体、ならびにリガンドおよび化粧剤が組み合わせて使用されることを特徴とする化粧料。
【請求項2】 リガンドに結合し得る前記アミノ酸配列が、以下に示す配列:-((Xaa)m-(His)n-(Xaa)o-(His)p)q-[配列中、nおよびqは1以上の整数、m、oおよびpは0以上の整数を表し、Xaaは任意のアミノ酸残基を表す]である請求項1記載の化粧料。
【請求項3】 前記リガンドが金属キレート化合物である請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項4】 前記アミノ酸配列が、抗リガンド抗体またはリガンド結合性蛋白質を構成する配列である請求項1記載の化粧料。
【請求項5】 前記リガンドが、セルロース、キチン、マルトースおよびグルタチオンならびにそれらの類似物より成る群から選択される請求項1または4記載の化粧料。
【請求項6】 化粧を施す対象に対して結合性を有する単鎖抗体と化粧剤に結合し得るアミノ酸配列との融合体、および化粧剤が組み合わせて使用されることを特徴とする化粧料。
【請求項7】 前記アミノ酸配列が、抗化粧剤抗体または化粧剤結合性蛋白質を構成する配列である請求項6記載の化粧料。
【請求項8】 前記融合体が、前記単鎖抗体をコードするヌクレオチド配列と、前記アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列とを双方とも発現可能に含むベクターが形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を利用した遺伝子組換え法によって得られる請求項1乃至7のいずれかに記載の化粧料。
【請求項9】 前記単鎖抗体が、抗ケラチン抗体である請求項1乃至8のいずれかに記載の化粧料。
【請求項10】 前記単鎖抗体が、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有する請求項1乃至9のいずれかに記載の化粧料。
【請求項11】 前記単鎖抗体が、配列番号:2に示すアミノ酸配列をコードする、配列番号:1に示すポリヌクレオチドもしくはその類似体によってコードされるアミノ酸配列を有する請求項9または10記載の化粧料。
【請求項12】 化粧を施す対象に対して結合性を有するリガンドおよび化粧剤が組み合わせて使用されることを特徴とする化粧料。
【請求項13】 前記リガンドが金属キレート化合物である請求項12記載の化粧料。
【請求項14】 前記金属キレート化合物がニトリロトリ酢酸のニッケルキレート化合物(Ni−NTA)であり、該Ni−NTAと、ペルオキシダーゼ、ウリカーゼおよびグルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼよりなる群から選択される1以上のオキシダーゼとの複合体が使用される染毛剤である請求項13記載の化粧料。
【請求項15】 化粧剤の吸着増強方法であって、化粧を施す対象に対して結合性を有する単鎖抗体とリガンドに結合し得るアミノ酸配列との融合体、ならびにリガンドおよび化粧剤;化粧を施す対象に対して結合性を有する単鎖抗体と化粧剤に結合し得るアミノ酸配列との融合体、および化粧剤;または化粧を施す対象に対して結合性を有するリガンドおよび化粧剤を対象に被覆することを特徴とする方法。
【請求項16】 請求項1乃至15のいずれかに記載の化粧料を用いることを特徴とする化粧方法。
【請求項17】 配列番号:1に示すヌクレオチド配列を有し、皮膚および/または毛髪に結合する単鎖抗体をコードするポリヌクレオチド、ならびにその類似体。
【請求項18】 配列番号:2に示すアミノ酸配列を有する、皮膚および/または毛髪に結合する単鎖抗体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化粧剤を皮膚、毛髪、爪等に強固に吸着させる方法およびそのための化粧料に関し、さらに詳細には、頭髪、眉、睫毛等の毛髪、皮膚、爪などの対象に結合する蛋白質と化粧剤とを、金属−アミノ酸アフィニティーによって、あるいはリガンドとそれに対応する結合性蛋白質との相互作用に基づいて結合させる方法を利用して、これら化粧を施す対象に当該化粧剤を安定に吸着させる方法およびそのための化粧料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より毛髪の染毛、あるいは美爪のために、それらの構成成分に対する抗体を化粧剤に結合させ、抗体の結合性を利用した化粧品がいくつか開発されている(特開平4−29912号;特開平6−227955号;特開平7−69832号;および特開平8−143431号各公報)。これらの殆どは、抗体を顔料や染料、あるいは美爪剤に直接化学結合させることによって得られる化粧剤・抗体複合体を化粧品として身体に塗布している。
【0003】唯一、特開平8−143431号公報には、アビジンとビオチンの特異的且つ強力な結合力を利用した方法が開示されている。すなわち、抗体とビオチン(あるいはアビジン)の複合体と化粧剤とアビジン(あるいはビオチン)の複合体を別途に調製し、抗体複合体を先に皮膚に塗布し、次いで化粧剤複合体を塗布するものである。さらに、化粧剤を特異的に毛に結合させるために、抗原となる蛋白質が前処理剤として使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、これら従来のいずれの方法に於いても、抗体と化粧剤とを結合させるためには抗体および化粧剤の双方ともに化学修飾をしなければならなかった。従って、化学修飾によって抗体の結合部位が損傷を受けたり、化粧剤に目的とする量の抗体を結合させることが出来ないなどの欠点を有していた。また、化学修飾のためのコストも問題であった。
【0005】また、上記従来技術において抗体を生産するためには、動物を免疫し、血清から精製する方法、あるいは細胞融合法によってモノクローナル抗体産生細胞を作製し、それを動物あるいは細胞で生産する方法が工業的生産法であるが、そのコストは大である。
【0006】このように、上記従来技術では特に、(1)抗体と化粧剤とを直接結合させる場合には十分な量の化粧剤を抗体に結合させようとすると抗体の活性低下がもたらされる;(2)抗体やアビジンのような蛋白質は不安定であるうえ高価であり、また化学修飾するので収量が安定せず、コスト的にも好ましくない;ならびに(3)抗体を化学修飾するためには抗体は出来るだけ精製されなければならず、それだけコスト増になる、等の問題があった。
【0007】本発明者らは、これらの従来技術における欠点に鑑み、毛髪、皮膚、爪等の対象に、特段の前処理剤を必要とせず、低コストで安定に染毛、メーキャップ、整肌、美爪等の化粧を施す方法およびそのための化粧料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、皮膚や毛髪、爪等の対象に結合性を有する単鎖抗体のN端側、C端側あるいは内部に、リガンドと結合することができるアミノ酸配列を組み込んだ融合体と、リガンドおよび化粧剤を組み合わせて使用される化粧料により、リガンドとそれに結合し得るアミノ酸配列との相互作用により、化粧剤を安定且つ特異的に吸着させ得ることを見出して完成したものである。
【0009】ここで、リガンドと当該リガンドと結合することができるアミノ酸配列のペアとして好適に使用されるのは、金属キレート化合物とかかる化合物に金属を介して結合することができるアミノ酸配列、およびセルロース、キチン、マルトース等の高分子化合物またはグルタチオン等のペプチドならびにそれらの類似物と、これらとアフィニティを有するリガンド結合性蛋白質または抗リガンド抗体のペアである。
【0010】上記本発明の化粧料で、金属、上記高分子化合物もしくはペプチドなどのリガンドと特異的にアフィニティ結合し得るアミノ酸配列をコードする遺伝子を、皮膚や毛髪等の対象に結合性を有する単鎖抗体のN端側、C端側あるいは内部に組込んだベクターを調製し、かかるベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を生育して、蛋白質を発現させることによって、融合体を調製するとよい。一方、化粧剤物質の表面には、遷移金属を保持することができる金属キレート官能基、あるいはそれぞれの蛋白質に対応するリガンド、すなわちキチンやセルロース、アミロース、グルタチオンなどを化学的あるいは物理的に結合させるとよい。
【0011】さらに本発明は、化粧を施す対象に対して結合性を有する単鎖抗体と化粧剤に結合し得るアミノ酸配列との融合体、および化粧剤が組み合わせて使用されることを特徴とする化粧料も提供する。かかる化粧料によっても、化粧剤を対象に対して安定に吸着させることが可能である。この場合、前記アミノ酸配列は、抗化粧剤抗体または化粧剤結合性蛋白質を構成する配列とされるとよい。また、この化粧料で利用される融合体も、如上の遺伝子組換え法を利用した蛋白質発現によって調製するとよい。
【0012】前記の、化粧を施す対象に対して結合性を有する単鎖抗体は、好ましくは抗ケラチン抗体である。また、かかる単鎖抗体は、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するもの、すなわち、配列番号:1に示すポリヌクレオチドもしくは、当該ポリヌクレオチドに縮重コドン配列を含むその類似体によってコードされるアミノ酸配列を有するものであるとよく、染毛に際して特に好適に利用される。
【0013】また、本発明はさらに、化粧を施す対象に対して結合性を有する、金属キレート化合物等のリガンドと化粧剤とが組み合わせて使用されることを特徴とする化粧料を提供し、かかる化粧料によれば、やや特異性、安定性には劣るものの、目的とする対象部位への良好な化粧剤の吸着が可能である。また、前記金属キレート化合物としてニトリロトリ酢酸のニッケルキレート化合物(Ni−NTA)を用い、このNi−NTAと、ペルオキシダーゼ、ウリカーゼ、グルコースオキシダーゼおよび乳酸オキシダーゼよりなる群から選択される1以上のオキシダーゼの複合体が使用される染毛剤を、好ましい化粧料として挙げることができ、これらのオキシダーゼのうち特に好ましいのはペルオキシダーゼである。以上のオキシダーゼの活性によって、過酸化水素を発生させることができ、これにより染色基質が酸化されて発色が行われる。ペルオキシダーゼとそれ以外のオキシダーゼとを併用して、過酸化水素の供給源とすることもできる。
【0014】さらに本発明によって、化粧剤の吸着増強方法であって、化粧を施す対象に対して結合性を有する単鎖抗体とリガンドに結合し得るアミノ酸配列との融合体、ならびにリガンドおよび化粧剤;化粧を施す対象に対して結合性を有する単鎖抗体と化粧剤に結合し得るアミノ酸配列との融合体、および化粧剤;または化粧を施す対象に対して結合性を有するリガンドおよび化粧剤を対象に被覆することを特徴とする方法も提供される。これらの方法によれば、化粧剤を対象に比較的安定に長期間吸着させることが可能となり、しかも生体に対する安全性は極めて高い。
【0015】また、本発明により、化粧料への配合に好適に利用され得る、配列番号:1に示すヌクレオチド配列を有し、皮膚および/または毛髪に結合する単鎖抗体をコードするポリヌクレオチド、ならびにその類似体と、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有する、皮膚および/または毛髪に結合する単鎖抗体が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明において化粧を施す対象とされるのは、毛髪、例えば頭髪、眉、睫毛等、さらに皮膚、爪など、一般にメーキャップが施される身体の種々の箇所である。
【0017】従って化粧料とは、染毛剤、マスカラ、眉墨、ファンデーション、プレストパウダー、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、口紅、コスメティックペンシル、マニキュア等の他、サンスクリーン化粧料を包含し、その形状は固体、粉体(圧縮してもしなくてもよい)、流体(水溶液、乳液を含む懸濁液、(エタノール等の有機溶剤を含んでもよい))、およびクリーム、ムース等、特に限定されることはない。
【0018】本発明の化粧料の主要成分の1つである、皮膚や毛髪等の対象に結合性を有する単鎖抗体と、リガンドに結合することができるアミノ酸配列とを含む融合体は、蛋白質が三次構造をとった場合に、化粧を施す対象に対する結合性(単鎖抗体による免疫的結合性)を有する箇所と、リガンドに結合することができるアミノ酸配列とが、各々立体的に障害を受けることなく対応する結合対を形成し得るように設計されていることが好ましい。
【0019】本発明で用いるのに好ましい、化粧を施す対象に特異的に結合することができる蛋白質としての抗体は、抗体遺伝子のL鎖とH鎖の一部分を遺伝子工学的に取り出し、それを遺伝子的に連結後、発現させて得られる蛋白質である。これは便宜上、単鎖抗体(sFv)と呼ばれており、本明細書においても単鎖抗体と呼ぶが、その連結方法も自然の抗体には存在しないものである。さらに、L鎖、H鎖それぞれ単独の場合もこれに含める。なお、単鎖抗体には、抗体を蛋白質分解酵素や還元などの従来技術によって得られる抗体フラグメントは含まれないこととする。この単鎖抗体を使用する上での有利な点は、分子量が元の抗体の1/6以下と低分子量であること、糖鎖を含んでいないことから、微生物や植物を利用して安価に大量生産できることにある。さらには、分子が小さいために皮膚や毛の細部にまで到達し得るので、その使用量が少なくても化粧を施す対象に行き渡り、望ましい吸着効果を発揮することができる。
【0020】次に、本発明において好適に用いられる単鎖抗体を得る方法について述べる。先ずヒト由来の毛髪、皮膚、爪等を細切後、必要とあれば加水分解(酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素加水分解等)、抽出、修飾(例えばカルボキシメチル化)等の処理を行った抗原を、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス等に数回投与して免疫感作させる。抗原は、ケラチンまたはその加水分解物が好ましく、また慣用の方法によって精製されたケラチンを用いてもよい。免疫感作後、脾臓細胞とミエローマ細胞などの増殖性の高い細胞を常法(Kohler G and Milstein C, Biotechnology, 24:524(1992))に従って細胞融合させてモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを調製する。次いで、単鎖抗体調製のために、細胞融合直後のハイブリドーマから抗体のVH(可変性重鎖)およびVL(可変性軽鎖)領域の遺伝子をPCRを利用して取り出し、リンカーでVHとVLとを連結することで、単鎖抗体(sFv)遺伝子を作製することができる。この遺伝子を適宜のベクターに挿入し、エレクトロポーレイション法等の慣用法によって大腸菌(例えばE.coli TG1)に形質転換した後、得られる大腸菌を培養し、その培養液について、 免疫で用いた抗原をコーティングて実施するELISA法により、単鎖抗体をコードする遺伝子をクローニングするとよい。さらに、いくつかのクローンの中から単鎖抗体の安定性や結合の強さに基づき好ましいものを選択することができる。選択した単鎖抗体のクローンは、その培養上清から遠心分離法などを利用して常法により回収されるが、必要に応じて精製してもよい。
【0021】単鎖抗体のクローニング、選択、そして免疫力価測定のために行われるELISA法は、例えば以下の手順に従って実施するとよい。すなわち、ELISA用プレートのウェルに毛髪由来のケラチン等の抗原溶液(100μg/ml)を100μl入れ、4℃で一晩インキュベートする。次いで3%スキムミルクを含むリン酸緩衝性生理食塩水(PBS)でブロッキングした後、抗体含有溶液を50μl添加し、37℃で1時間インキュベートする。0.05% Tween20を含むPBSでウェルを充分に洗浄した後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した二次抗体を加え、さらに37℃で1時間インキュベートする。0.05%Tween20を含むPBSでウェルを洗浄後、ペルオキシダーゼの基質である、3,3',5,5'−テトラメチルベンチジン(TMB)を加え15分室温で反応させ、450nmの吸光度を測定する。
【0022】このようにして得られる単鎖抗体が、本発明における融合体調製に利用されるのである。単鎖抗体の分子量は、好ましくは300〜80,000、より好ましくは20,000〜40,000であり、このうちL鎖が好ましくは0〜23,000、より好ましくは11,000前後に相当し、H鎖が好ましくは300〜50,000、より好ましくは15,000前後に相当するようにするとよい。
【0023】特に好ましい単鎖抗体として、配列番号:1で示されるヌクレオチド配列またはその類似体(縮重コドンを含む配列)によってコードされる、配列番号:2のアミノ酸配列を有する単鎖抗体を挙げることができる。この単鎖抗体は、毛髪、皮膚に選択的に結合することができ、毛髪や皮膚への化粧剤の安定な吸着をもたらし、しかも分子量は約27,000(うち、L鎖:約12,000、H鎖:約13,000) であるため、毛髪の細部への浸透も良好である。配列番号:1に示される、本発明で有用な単鎖抗体をコードするヌクレオチド配列を有するベクターの概略を、図1に示す。
【0024】融合体を構成する単鎖抗体と化粧剤とを結合させるために、化学合成法により直接修飾等を行うのではなく、特異的な親和性、すなわちアフィニティ結合を利用する。親和性を提供するペアとしては、例えば、特定のアミノ酸配列と金属(キレート化合物)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ等のグルタチオン結合性蛋白質とグルタチオン、セルロース結合性蛋白質とセルロース、キチン結合性蛋白質とキチン、マルトース結合性蛋白質とアミロースなど様々である。さらに、このように金属キレート化合物やリガンドを特段に用いることなく、化粧剤とその結合性蛋白質を用いてもよい。また、結合性蛋白質は、各種リガンドとを抗原とする抗体であってもよい。アフィニティを利用した単鎖抗体と化粧剤との間の結合のメリットは、この結合に関与するアミノ酸や蛋白質を遺伝子組換え法によって抗体と共に発現させ、一つの蛋白質融合体として生産出来るので、従来技術におけるように抗体を精製し、化学修飾するする必要がないことである。以下、それぞれのアフィニティ結合について説明する。
【0025】(1)金属と特定のアミノ酸配列とのアフィニティは、発現された遺伝子組換え蛋白質の精製法の原理をなし、この精製法は固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC、Immobilized metal ion affinity chromatography)と呼ばれている(Bio/Technology, Vol.9, 151-156, 1991)。本発明はその中で、金属−ヒスチジン結合で代表されるIMACの原理、すなわち、蛋白質(ポリペプチド)分子内の特定のアミノ酸とキレート化合物とが金属を介して特異的に結合することを利用するものであるが、このような結合性が化粧品に応用された例は皆無である。この方法によれば、抗体分子の化学修飾は一切不必要であるので、抗原すなわち化粧を施す対象に対する結合性が損なわれることがなく、しかも金属−アミノ酸間の結合が特異的であるために、キレート化合物と化粧剤の複合体を対象の所望の部位のみに選択的に結合させることができ、特段の前処理を必要としない。従って、例えば抗体を毛髪等の対象に塗布した後、または同時に、キレート化合物および化粧剤を塗布さえすれば染毛することができ、従来技術の欠点を解消できるものである。ここでキレート化合物と化粧剤は、予め複合体を形成させておいても、また別々に塗布して対象部位にて複合させてもかまわない。
【0026】皮膚あるいは毛髪、爪などに結合する単鎖抗体は、IMACにおける被精製蛋白質分子に対応するものであり、そのアミノ酸配列のN端側、C端側あるいは内部に、金属とキレート結合し得るアミノ酸配列が含まれ、抗体の免疫結合部位と、キレート結合し得るアミノ酸配列の双方が蛋白質表面に露出するように発現されればよい。そのアミノ酸配列とは、ニッケルや亜鉛、銅、鉄などの金属とキレート結合するアミノ酸残基、特にHis、Trp、Tyr、Phe、Cysおよびこれらの組合せを含むことが好ましい。かかるアミノ酸配列については特に決まったルールは無いが、いくつかの文献に報告されている金属と結合し得るアミノ酸配列の例を以下に示す。
【0027】His-His-Leu-Gly-Gly-Ala-Lys-Glu-Ala-Gly-Asp-Val(配列番号:3)、Asp-Arg-Val-Tyr-Ile-His-Pro-Phe-His-Leu-Val-Ile-His-Ser(配列番号:4)
Lys-Gly-Ser-Arg-Ser-His-His(配列番号:5)
His-Asn-Leu-Lys-Glu-Glu-His-Val-Pro-His(配列番号:6)
His-Xaa-Xaa-Xaa-His(配列番号:7)
Met-Arg-Gly-Ser-His-His-His-His-His-His-Gly-Ser-Gly-Ile-Met(配列番号:8)、His-Trp(配列番号:9)
His-Gly-His(配列番号:10)
His-Tyr-NH2(配列番号:11)。
【0028】上記アミノ酸残基の中でも、Hisが金属に対する親和性の点から好ましく、従ってHis残基を数多く、且つ連続して含んでいるアミノ酸配列ほど強い結合力がもたらされ、また特異性も高くなる。これらをまとめると、以下の配列:-((Xaa)m-(His)n-(Xaa)o-(His)p)q-[配列中、nおよびqは1以上の整数、m、oおよびpは0以上の整数を表し、Xaaは任意のアミノ酸残基を表す]が好適に用いられる。特に好ましくは、m、oおよびpは0、nは2〜6、そしてqは1である。
【0029】勿論、これらのアミノ酸を遺伝子組換え技術によって融合体蛋白質に組み込むことは容易である。しかし、特定のアミノ酸残基を任意に露出させつつ、本来の蛋白質の特徴が失われないようにすることは通常困難であり、抗体の場合では、抗原とのアフィニティや特異性が損なわれることになりやすい。そこで、本発明において単鎖抗体を用い、特異性の喪失等が起りにくい場所、すなわち単鎖抗体のN末端やC末端付近に特定のアミノ酸配列を導入するとよい。
【0030】得られたこれらの抗体は、微生物や植物体、動物のミルクなどで発現、生産し、必要に応じて精製、あるいはそのまま化粧品原料として他の化粧料と混合して使用できる。
【0031】金属としては、第四周期の遷移金属のNi2+、Zn2+、Cu2+、Fe3+が好ましい。
【0032】キレート化合物を形成する配位子としては、IDA (イミノジ酢酸)、TED(トリス(カルボキシメチル)−エチレンジアミン)、NTA (ニトリロトリ酢酸)、PDTA (2−ヒドロキシ−プロピレンジアミンテトラ酢酸)等が知られている。これらは一端にいずれもおよそ2〜3個のカルボキシル基を有しており、これらの部分で金属とキレート結合する。
【0033】そしてキレート化合物の他の端にて、様々な残基を介して化粧剤が結合される。その方法には、化学合成法や物理的吸着法がある。すなわち、それぞれの化粧剤の表面あるいは分子の−NH2や−SH,−COOH,糖などと選択的に反応してそれらを架橋させるクロスリンカーが用いられる。クロスリンカーには、イミドエステル化合物、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル化合物、マレイミド化合物、ハロアセチル化合物、ピリジルジチオール化合物、カルボジイミド化合物、光反応性化合物、グリオキサール化合物、ヒドラジド化合物などが知られている。また、アビジン・ビオチンの組み合わせ等、相互作用性を有する蛋白質もクロスリンカーとして使用可能である。ここで実施される化学反応は、抗体や酵素のように生物的活性を有しているものに対して行う訳ではないので、比較的過激な反応も可能であるために、コスト的にも有利である。
【0034】(2)リガンドの他の例としてグルタチオンを挙げることができ、これと特異的にアフィニティ結合することができるアミノ酸配列の代表的なものとして、抗グルタチオン抗体のほかに、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)のアミノ酸配列(配列番号:26参照)が挙げられる。このGSTを他の蛋白質との融合蛋白質として遺伝子組換え法によって発現させた報告がある(Gene 67巻、31頁 (1988))。従って、単鎖抗体をコードする遺伝子の好ましくはN端側またはC端側に、GSTをコードする遺伝子を連結し、それを微生物や植物などで発現、生産することにより本発明において使用可能な融合体を得ることができる。得られる単鎖抗体とGSTの融合蛋白質は特に精製される必要はない。それは、融合体がリガンドで修飾された化粧剤と特異的にアフィニティ結合するためであり、融合体を化粧剤と単に混合するだけでも本発明の化粧料を調製することが可能である。一方、化粧剤と複合できるリガンドたるグルタチオンは、(1)に記載したと同様、化学合成法によって任意の化粧剤に固定すればよい。
【0035】(3)さらなるリガンドの例として挙げることができるセルロースとセルロース結合性蛋白質(CBD)についても、多くの報告がある(J. Biol. Chem. 263巻、10401頁 (1988))。セルロース結合性蛋白質は4つに大別され、リガンドであるセルロースの物理的形状や分子量などによってそれぞれアフィニティが異なる。いずれのCBD(配列番号:12〜21参照)にせよ、抗体遺伝子とCBD遺伝子とを結合し、発現、生産する。一方、化粧剤は(1)に記載したと同様、化学合成法あるいは物理吸着法によってセルロースと結合させればよい。
【0036】(4)その他、キチン結合性蛋白質(配列番号:22〜24参照)、マルトース結合性蛋白質(配列番号:25参照)などの場合も同様に、各蛋白質を単鎖抗体との融合蛋白質として生産し、それぞれ対応するキチン、マルトースのリガンドは(1)に記載したと同様、化粧剤に化学合成法あるいは物理吸着法で固定化すればよい。
【0037】以上、(2)〜(4)に挙げたグルタチオン、セルロース、キチンおよびマルトースに加え、例えば、カルボキシメチルセルロース、キシラン、セロビオース、ニゲラン、デキストラン、キトサン、アミロースなどの類似物もリガンドとして好適に用いることができる。
【0038】これらの他にも、リガンドとしては、生体に対して安全であって、化粧料の使用感、発色等に悪影響を及ぼすことなく配合することができるものであれば特に限定されず、かかるリガンドに結合することができる抗体や結合性蛋白質が有するアミノ酸配列を、本発明における単鎖抗体との融合体形成に利用すればよい。
【0039】なお、リガンドと化粧剤との比率は特に限定されることはないが、リガンド1分子になるべく多くの化粧剤が結合すると、化粧の効率を高めることができる。
【0040】さらに、リガンドを用いずに、化粧剤と結合することができるアミノ酸配列、例えば、抗化粧剤抗体、化粧剤結合性蛋白質を構成するアミノ酸配列を、単鎖抗体との融合体成分として利用すれば、化粧剤とリガンドとを結合させる手間が省略され得、好ましい効果を期待することができる。
【0041】融合体は、単鎖抗体をコードするヌクレオチド配列と、リガンドあるいは化粧剤に結合し得る上記アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列とを双方とも発現可能に含むベクターを用いて発現させることにより調製するとよく、ベクターとしては繁用されている種々のものが使用可能であって、例えばNovagen社製のpET、Promega社製のpGEM、Stratagene社製のpBluescript、Pharmacia社製のpUC18/19、pSVL等を挙げることができる。
【0042】発現ベクターには通常、上記2種のヌクレオチド配列に作動可能に連結されるプロモーターが含まれる。プロモーターとしては、例えばファージλPLプロモーター、E.coli lac、trp、tacプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、T7およびT3プロモーター、レトロウィルスLTRプロモーターが挙げられる。
【0043】また、発現ベクターは、形質転換した宿主を選択可能とするマーカー(例えばジ、ヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子等)や、エンハンサー(SV40エンハンサー、サイトメガロウィルス初期エンハンサープロモーター、アデノウィルスエンハンサー等)を含有してもよい。
【0044】以上例示したベクターの構築、形質転換またはトランスフェクション、発現等については、ManiatisらのMolecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, second editionに記載の方法を参照して実施するとよい。
【0045】ベクターの宿主細胞としては、大腸菌(例えばE.coli TG1)等の細菌類、酵母等の真菌類の他、大豆、タバコ等の植物細胞などが挙げられる。
【0046】形質転換またはトランスフェクションのためには、エレクトロポレーション法等の当該技術分野でよく知られた方法が実施される。
【0047】また、非ヒト哺乳動物における生産を企図する場合には、上述のような融合体のをコードするヌクレオチド配列を、例えばカゼイン等のミルク蛋白質にプロモーターに連結した後、動物胚細胞にそれを注入してトランスジェニック哺乳動物を作成する。目的とする融合体蛋白質の回収を容易ならしめるためには、トランスジェニック哺乳動物作製時に乳汁への分泌シグナルに対応するヌクレオチド配列が挿入された構築体を用いるとよい。
【0048】融合体を化粧品材料として使用する場合、基礎化粧品に混合しておいても、また、微粒子や高分子化合物と混合してもよい。
【0049】以下に化粧料における応用例にて、本発明をさらに説明する。
【0050】(1)毛髪の染毛(a)従来より実施されている酸化染毛法は、使用直前に酸化染料と酸化剤を混合し、髪に塗布した後、酸化重合および脱色を行う方法である。酸化染料には、染毛剤原料規格に記載されている各種のアミン類、フェノール類等、例えば、p-アミノフェノール、m-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、5-アミノ-o-クレゾール、2,4-ジアミノフェノール、カテコール、3,3'-イミノジフェノール、ピロガロール、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)2-メチルフェノール、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、4,4-ジアミノジフェニルアミン、o-クロロ-p-フェニレンジアミン、p-メチルアミノフェノール、トルエン-3,4-ジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、p-アミノフェニルスルファミン酸、α-ナフトール、ジフェニルアミン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジアミノピリジン、ヒドロキノン、フロログルシンがある。酸化剤としては古くから過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム等が使われている。しかし近年、皮膚刺激性のある酸化剤の量を少なくするためにペルオキシダーゼの酵素を利用したり(特開昭47−10400号公報)、最近ではこれらの酸化剤の代わりにウリカーゼ、グルコースオキシダーゼ等の糖オキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ等の有機酸オキシダーゼなどといった酸化酵素により空気中の酸素を活性化させてその酸化力を利用する新しい方法が開示されている(特開平7−45385号公報、特開平8−217652号公報、特開平11−21214号公報および特開平11−21215号公報参照)。以上のごとき酸化力を有する酵素群を、本明細書中で「オキシダーゼ」と称し、本発明において特に好ましいオキシダーゼは、ペルオキシダーゼ、ウリカーゼ、グルコースオキシダーゼおよび乳酸オキシダーゼよりなる群から選択されるものである。
【0051】このように酵素作用を利用することは有用な方法であるものの、上記従来法においては洗髪によって高価な酵素が洗い流されてしまうことが回避され得なかった。そこで、これらの酵素を、本発明の単鎖抗体を利用して毛髪に強固に固定化するようにすれば、酸化剤を塗布するだけで、洗髪による流出を低減でき、長期間にわたって染毛状態を維持できる。
【0052】リガンドと結合性アミノ酸配列のペアとして金属キレート化合物−アミノ酸アフィニティ結合を利用する場合、酵素をキレート化合物の配位子で修飾し、次いで金属と配位子をキレート結合させて、金属キレート化合物−アミノ酸のアフィニティ結合を形成させることで、毛髪に特異的に結合する単鎖抗体融合体に酵素を結合させればよい。染毛を実施するに際しては、先ず単鎖抗体を含む融合体を毛髪に塗布して吸着させる。そのためには、単鎖抗体をを含む融合体を例えばリンスやヘヤークリームに混ぜて調製した前処理剤を使用すればよい。次いで、キレート化合物で修飾された酵素の複合体をその単鎖抗体に結合させるべく毛髪に塗布するのであるが、やはりこの場合もリンスやヘヤークリーム、スプレー、シャンプー等に配合したものを用いるのが好ましい。勿論、単鎖抗体を含む融合体と、酵素を含む複合体とを予め混合して結合させておいたものを用いることも可能である。そして最後に、酸化染料を塗布あるいはスプレーすれば染毛を完遂できる。酸化染料には、酵素に見合った酸化剤やその基質を混合しておく必要がある。酵素にペルオキシダーゼを用いた場合、酸化剤には過酸化水素を用い、ウリカーゼを酵素として使用する場合は尿酸が酸化剤として利用される。その他のオキダーゼの場合、それぞれに対応する糖類や有機酸を選択する。
【0053】キレート化合物以外のリガンドを用いる場合にも同様に、それぞれのリガンドで化粧剤(酵素)を修飾すればよい。
【0054】(b)直接染毛法は毛髪に色素を直接結合させる方法である。色素は大きく有機系タール色素、無機顔料そして天然色素に分類されるが、そのうちのいくつかが化粧品用色素として許可されている。これらの色素を毛髪に結合させるには、色素の物理的吸着、糊料による接着等の方法があり、ヘヤーマニキュア、ヘヤーマスカラ等の化粧品として商品化されている。しかし、これらの方法では色素を毛髪に長時間保持することは出来ず、また、洗髪によって容易に洗い流されてしまう。この欠点を解決するために抗体を利用する方法にかかる発明が、前記のいくつかの公報に開示されているが、抗体を顔料に直接結合させる方法にせよ、高分子担体を介する方法にせよ、抗体の化学修飾には前述のようにいろいろな問題があった。
【0055】本発明で直接染毛を行う場合の好ましい実施態様において、水および油に不溶性の顔料やレーキ、天然色素を前述のキレート化合物の配位子で化学修飾して複合体を形成させ、次いで金属とキレート結合させる。これを、単鎖抗体を含む融合体を塗布しておいた毛髪に塗布すれば、色素に結合した金属キレート化合物の分子は、毛髪上の単鎖抗体と瞬時に結合する。単鎖抗体を含む融合体とキレート化合物・色素複合体を塗布するためには、上記(a)と同様、リンスやスプレー、クリーム、シャンプー等に適当に添加したものを用いればよい。
【0056】水および油に不溶の色素としては、黒色チタン、ベンガラ、酸化鉄、カーボンブラック、イカスミ、各種酸化重合物等がある。この中で、色素が有機官能基を有している場合は特に、種々の化学反応によってキレート化合物を結合させることが容易にできる。無機顔料のように有機官能基を有していない場合は、カップリング剤やシリコン化合物による処理などの表面処理によって、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、水酸基、チオール基などの有機官能基を導入すればよい。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤等が挙げられ、シリコン化合物処理には、アミノ変性シリコンや、カルボキシ変性シリコン等が用いられる。有機官能基とリガンドとを結合させるには、官能基がアミノ基である場合はグルタルアルデヒド、カルボキシル基である場合には水溶性カルボジイミドである1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)が好適に利用される。また、有機官能基がチオール基である場合には、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネートなどが利用できる。
【0057】特に水可溶性の色素、つまり染料を化粧剤として用いる場合、それを予め水溶性高分子担体や不溶性高分子担体、例えば多糖類、蛋白質、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、各種合成プラスチック等に多量に結合させておき、次いでキレート化合物をも結合させた方が、単鎖抗体1分子当たりの結合色素の量が多くなるので、結果として染毛効果が向上する。このように担体を介する方法は不溶性色素にも適応できる。
【0058】金属キレート化合物以外のリガンドを用いる場合にも同様に、それぞれのリガンドで化粧剤(色素)を修飾すればよい。
【0059】勿論、これらの方法は頭髪以外にも睫毛や眉毛、爪等の染色にも利用され得る。
【0060】(2)皮膚の化粧皮膚に塗布される化粧品は、基礎化粧品、ファンデーション、プレストパウダー、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、口紅、コスメティックペンシル、サンスクリーン等であるが、その構成成分は水、油に不溶性の微粉末や高分子化合物である以外に、W/OまたはO/Wのエマルジョン微粒子の場合が多い。しかし、これらは皮膚に吸着しがたいために経時的に化粧崩れが起こる。そこで、これらを抗体によって皮膚により強固に吸着させることにも、本発明の原理を利用できる。その方法について以下に詳説する。
【0061】(a)化粧料の主要構成成分である化粧剤が、水および油に不溶性の微粉末や高分子化合物である場合は、金属キレート化合物やセルロース、キチン、アミロースをリガンドとして用い、直接あるいはリンカーを介して化学的に化粧剤とリガンドとを結合させる。その化学反応には上記(1)の方法に準じ、様々な方法が考えられるが、反応基質が抗体や酵素などの生物的活性を有するものではないので、比較的過激な反応も可能である。このように調製のために実施される化学反応の選択肢が広いので、本発明はコスト的にも有利であるといえる。
【0062】化粧剤は、従来皮膚へのメーキャップ化粧料に配合される、タルク、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、セリサイト、パーミキュライト、カオリン、二酸化チタン、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆タルク、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、着色酸化チタン被覆雲母等のパール顔料、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色系顔料、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫系顔料、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料、群青、紺青等の無機青色系顔料、亜鉛華、ベントナイト、硫酸バリウム、金属石鹸、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、アルミナ、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、シリカ、ナイロンパウダー、ゼオライト、ベンゾグアナミンパウダー、四弗化エチレンパウダー、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、セルロースパウダー、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号および青色404号等の有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号および青色1号のジルコニウム、バリウム、又はアルミニウムレーキ等の有機顔料、クロロフィル、β−カロチン等の天然色素等より適宜選択して用いるとよい。
【0063】また、サンスクリーン化粧料の場合、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムの他、適量の紫外線吸収剤例えば、パラメトキシケイ皮酸2エチルヘキシル(オクチル)、パラジメチルアミノ安息香酸2エチルヘキシル(オクチル)、オキシベンゾン(ベンゾフェノン3)、サリチル酸2エチルヘキシル(オクチル)、4-tert-ブチル-4-メトキシ-ベンゾイルメタン等を適量使用し、紫外線より皮膚を保護する化粧剤とする。
【0064】なお、単鎖抗体を含む融合体は、予め化粧水、乳液、クリーム等のメーキャップベースに適量配合させたものを塗布するようにしても、また上記化粧剤の複合体に混合してもよい。
【0065】(b)エマルジョンベースの化粧料において、その外表面はO/W型エマルジョンにあっては親水基、W/O型エマルジョンにあっては疎水基で覆われている。つまり、エマルジョン粒子を構成させるにはその成分が親水基と疎水基を有しておればよい。そうでない場合は界面活性剤によってそのように改質すればよい。ところが、ファンデーション、各種クリーム類、口紅等、多くの化粧品はエマルジョンとして調製され、その構成成分である化粧剤の種類も多い。従って、各々の構成成分すべてにキレート化合物等のリガンドを化学結合させることは現実的ではない。そこでキレート化合物等各種のリガンドを、エマルジョン粒子の構成成分となるように調製する。以下、リガンドとしてキレート化合物を用いてエマルジョンを調製する方法を説明する。
【0066】O/W型エマルジョンの場合:キレート化合物の配位子の一端には、金属とキレート結合することができ、且つ親水性を有する例えばカルボキシル基が存在する。配位子の他端には担体に結合させることのできるアミノ基、イミノ基等が存在するので、これらの基を脂肪族高分子、各種環状高分子等に結合させて、キレート化合物が親水基と疎水基を有するようにする。これをエマルジョン化の際に構成成分の一つとして加えれば、得られる粒子の外表面に、金属とキレート結合するカルボキシル基を有するエマルジョン粒子が得られる。皮膚に予め単鎖抗体を含む融合体を塗布しておけば、このエマルジョン粒子は抗体と結合する。勿論、融合体とこのエマルジョン粒子とを混合してから皮膚に塗布してもよい。なお、キレート化合物でなく、セルロースやキチン、アミロースなど、親水性のリガンドを用いる場合は特段の処理は不要で、そのままそれらを添加すればよい。
【0067】W/O型エマルジョンの場合:キレート化合物の配位子に含まれるアミノ基やイミノ基を、強い親水性を有する高分子化合物と結合させる。高分子化合物としては、例えば、糖類、合成ポリオール類、糖アルコール類、ポリ硫酸化合物、ポリリン酸化合物等が挙げられる。このような親水基で改質した配位子の他端にも親水性のカルボキシル基が含まれるが、これは酸性下では疎水性となる。従って、酸性下でエマルジョン化することで所望されるエマルジョンを形成することができる。抗体との結合方法は上記O/W型エマルジョンの調製と同様に行う。
【0068】エマルジョン調製のための油分としては、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト、セレシン、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、セチル−2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、2−オクチルドデシルミリステート、2−オクチルドデシルガムエステル、ネオペンチルグリコール−2−エチルヘキサネート、トリイソオクタン酸グリセライド、2−オクチルドデシルオレエート、イソプロピルミリステート、トリイソステアリン酸グリセライド、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、オリーブ油、アボガド油、ミツロウ、ミリスチルミリステート、ミンク油、ラノリン、ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、シリコーンレジン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等の各種炭化水素、高級脂肪酸、油脂類、エステル類、高級アルコール、ロウ類、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0069】以上説明したように、本発明の化粧料の単鎖抗体およびリガンドあるいは化粧剤に結合し得るアミノ酸配列との融合体と、リガンド、そして化粧剤は、それぞれ単独の組成物として供給しても、または適宜の配合ずみの組成物として供給してもよい。また、その配合割合は特に限定されず、単鎖抗体の抗体価、アミノ酸配列のリガンドに対する親和性の如何や、リガンドに結合させた化粧剤の量等に鑑みて適正に調整されるべきものである。
【0070】なお、以上説明した染毛、化粧のための化粧料には、さらなる任意成分として界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤、防腐防黴剤などを必要に応じて適量配合してもよい。
【0071】以下に、代表例として金属−アミノ酸アフィニティ結合を利用した実施例を示すが、本発明がかかる実施例によって限定的に解釈されるべきでないことは勿論である。%はすべて、質量/容量に基づくものとする。
【0072】[実施例1] 抗毛髪単鎖抗体−ペルオキシダーゼ接合体を用いる染毛法−11.抗毛髪抗体の作製先ず、毛髪に対する抗体をKohlerとMilstein(前出)の細胞融合法で作製した。すなわち、1mm程度の長さに切断したヒト毛髪10mgを、マウスの腹腔に2週間毎に4回程度投与して免疫感作させた。マウス血清の毛髪に対する抗体価が上昇した時点で脾臓細胞を取り出し、マウスミエローマ(NS1)細胞とのハイブリドーマ集団を、PEGによる細胞融合によって得た。これを培養し、選択してモノクローナル抗体を産生させた。また、細胞融合直後のハイブリドーマから抗体のVHおよびVL領域の遺伝子をPCRで取り出し、リンカーでVHとVLを連結し、単鎖抗体(sFv)遺伝子を作製した。そのC末端には抗体の存在を調べるための選択マーカーとして、金属キレート化合物に結合するアミノ酸配列としてHis-His-His-His-His-His(配列番号:27)を結合させた。次いで、各々のsFv遺伝子を図1に示すごときベクターに挿入し、エレクトロポーレイション法によってE. coli TG1に形質転換した。得られた各大腸菌を2xYT−AI培地(17% バクト−トリプトン、10% バクト−イーストエキストラクト、5%NaCl、2%グルコース、100μg/mlアンピシリン、1mM IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド))にて培養し、その培養液について、毛髪由来のケラチンをコーティングしたELISA法に基づいてクローニングした。いくつかのクローンの中からsFvの安定性、結合性によって、配列番号:1に示す遺伝子配列を有するsFvを選択した。
【0073】2.sFvを含む融合体の精製上記1.で選択したクローンを2xYT−AI培地にて一晩培養し、5,000 x gで10分遠心分離して沈殿を除き、sFv融合体を含む上清を得た この上清に、終濃度10mMになるようイミダゾールを加え、10mMイミダゾールを含む50mMリン酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したNi−NTAカラム(QIAGEN製、Germany)にアプライした。20mMイミダゾールを含む50mMリン酸緩衝液(pH8.0)にて未吸着のタンパクを洗い流した後、250mMイミダゾール含有の同緩衝液にてsFv融合体を溶出させ、この画分を集めた【0074】3.ELISAによる抗体力価の測定法毛髪5gを細かく細断し、0.2Mトリス塩酸緩衝液/8M尿素/0.2Mβ-メルカプトエタノールを1リットル加え、50℃で一晩放置した。毛髪をさらに細かくするために乳鉢ですりつぶした後、12,000rpmにて30分遠心を行って上清を回収した。回収した上清を純水で透析し、毛髪由来のケラチン溶液を得た。得られたケラチン溶液を100μg/mlとし、ELISAプレートのウェルに100μlを入れ、4℃で一晩インキュベートした。このウェルを3%スキムミルクを含むPBSでブロッキングした後、上記の方法で精製したsFv(50μg/ml)を50μlアプライし、37℃で1時間インキュベートした。次いで0.05%Tween20を含むPBSでプレートを洗浄した後、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)標識したNi−NTA(QIAGEN製、Germany)を加え、37℃で1時間インキュベートした。0.05%Tween20を含むPBSでプレートを洗浄し、次いでHRPの基質である、TMBを加え、室温にて15分間反応させ、450nmの吸光度を測定した。
【0075】4.sFv融合体とペルオキシダーゼを含む染毛剤の調製上記2.で精製したsFvを含む融合体(50μg/ml)に、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼと、Ni−NTAの複合体(Ni−NTA HRP Conjugate、QIAGEN製、Germany)を終濃度25μg/mlとなるように加え、37℃で1時間インキュベートして、単鎖抗体がキレート化合物を介してペルオキシダーゼに結合した状態で含まれる接合体を調製した。
【0076】5.染毛試験上記4.で得られた抗体−ペルオキシダーゼ接合体(ペルオキシダーゼ力価100mU/ml)を含むかまたは含まない、表1に記載のa〜dの各抗体−ペルオキシダーゼ接合体水溶液2mlに、5cmの長さのヒト白髪束0.5gを1時間浸漬した。次いで、0.05%Tween20を含むPBSで5回洗った後、表1に示す組成の染料溶液に30分浸漬した。
【0077】染毛の判定は、着色度により3段階に分けた。すなわち、染毛しない毛髪に対して、3:顕著に染まった;2:明らかに染まった;1:僅かに染まった;0:差がない。
【0078】
【表1】

【0079】表1に示す結果に明らかなとおり、通常よりもおよそ10分の1の低濃度の過酸化水素使用量でも、良好な染毛結果が得られ、本発明の単鎖抗体の融合体を含む染毛剤が安全性、低刺激性に優れるという点でも有益であることが判った。
【0080】なお、ここで染色された毛髪は、5回シャンプーを行っても退色せず、単鎖抗体を利用することで、色素の毛髪への定着性が格段に向上することが示唆された。
【0081】[実施例2] 直接染毛法1. 色素・Ni−NTA複合体の調製以下の方法で、色素・Ni−NTA複合体を調製した。
【0082】Ni−NTA アガロース(QIAGEN製、Germany)1mlを乳鉢ですりつぶした。チバクロンブルー(SIGMA製、U.S.A.)20mgおよび純水2mlを加え、60℃で30分振盪し、さらにNaClを0.1g加え60℃で6分振盪した。Na2CO3で中和させた後、80℃で2時間放置。1% NiSO4を含む水で一晩透析し、さらに、純水で一晩透析した。
【0083】2.sFv融合体と色素・Ni−NTA複合体を含む染毛剤の調製上記1.で調整した、チバクロンブルー・Ni−NTA複合体1mlに上記の[実施例1]2.で精製したと同様のsFv 1mlを加え、37℃で1時間インキュベートして、単鎖抗体がキレート化合物を介して色素(チバクロンブルー)に結合した状態で含まれる染毛剤を調製した。
【0084】3.染毛試験上記2.で得られた色素・Ni−NTA抗体複合体を含む、表2に記載のa水溶液2mlに、5cmの長さのヒト白髪束0.5gを1時間浸漬した。次いで、0.05%Tween20を含むPBSで5回洗った。対照として、表2のb〜dに示す組成を有する溶液についても同様の染毛試験を行った。
【0085】染毛の判定は、着色度により3段階に分けた。すなわち、染毛しない毛髪に対して、3:顕著に染まった;2:明らかに染まった;1:僅かに染まった;0:差がない。
【0086】
【表2】

【0087】表2の結果に示すとおり、本発明の染毛剤によって良好な染色結果が得られた。
【0088】[実施例3] 抗毛髪単鎖抗体−ペルオキシダーゼ接合体を用いる染毛法−2表3のa〜gに示す組成に従い、実施例1の4.に記載したと同様の、sFv融合体とペルオキシダーゼ・Ni−NTA複合体との接合体を用いて、さらに種々の組成の染毛剤を調製した。
【0089】この際sFv融合体は、実施例1の1.および2.段落に記載した手順で調製したものと、さらにこれを限外濾過(濾過膜:ミリポア社製、ニトロセルロース膜)にて200倍に濃縮したものを利用した。
【0090】調製したsFv融合体とペルオキシダーゼ・Ni−NTA複合体との混液に、3cmの長さのヒト白髪束約2gを室温下で1時間浸漬した。この際、試料「g」だけは、室温で10分間の処理とした。次いで、0.05%Tween20を含むPBSで5回洗浄した後、下段に示す染料溶液にそれぞれ室温にて30分間浸漬した。その後、0.05%Tween20を含むPBSで5回洗浄した。
【0091】次に、すべての染毛試料につき、実施例1に記載したと同様に判定を行った。その結果を以下の表3に示す。
【0092】
【表3】

【0093】この結果、本発明の単鎖抗体融合体を利用した染毛法において、p−フェニレンジアミンを基質として用い、Ni−NTAとペルオキシダーゼの複合体を0.02〜2容量%、好ましくは1〜2容量%配合すると、良好な染毛状態となることが明らかになった。
【0094】なお、ここで染色された毛髪も、5回シャンプーを行っても退色せず、色素の毛髪への良好な定着性が示唆された。
【0095】[実施例4] Ni−NTA・ペルオキシダーゼ複合体のみを用いる染毛法表4のa〜iに示す組成に従い、化粧を施す対象に対して結合性を有するリガンドであるNi−NTAとペルオキシダーゼとが組み合わせて使用される染毛料を調製した。予め、表4、上段に示す溶液に、それぞれ約3cmの長さのヒト白髪束約2gを室温下に1時間浸漬した。この際、試料「g」だけは、37℃にて実施した。次いで、0.05%Tween20を含むPBSで5回洗浄した後、下段に示す染料溶液にそれぞれ室温にて30分間浸漬した。その後、0.05%Tween20を含むPBSで5回洗浄した。
【0096】次に、すべての染毛試料につき、実施例1に記載したと同様に判定を行った。その結果を以下の表4に示す。
【0097】
【表4】

【0098】この結果、Ni−NTA・ペルオキシダーゼ複合体で予め処理することにより、p−フェニレンジアミンの酸化を利用した染毛法において、従来用いられていたよりも少量の過酸化水素で、染毛を成し遂げられることが明らかになった。
【0099】なお、ここで染色された毛髪も、5回シャンプーを行っても退色せず、色素の毛髪への良好な定着性が示唆された。
【0100】[実施例5]モイスチャーローション1.IDA・アガロース複合体の調製アガロース20gと2M NaOH 20ml、2mlのエピクロロヒドリンおよび75mgのNaBH4を混合し、室温で2時間撹拌した。さらに2M NaOHを20mlと10mlのエピクロロヒドリンを添加し、一晩反応させた。得られたゲルを水洗後、2M Na2CO3 50mlに溶解した。5gのIDAと0.06gのNaBH4を添加し60℃で一晩撹拌した。水洗、希酢酸での洗浄の後、pHが中性になるまで水洗して、IDA・アガロース複合体を得た。
【0101】2.IDA・アガロースーsFv複合体の調製上記[実施例1]2.で精製したと同様のsFv融合体2mlに、上記1.で調製したIDA・アガロース2mlを加え、37℃で1時間インキュベートして、単鎖抗体・アガロース複合体を調製した。
【0102】3.角層水分量の測定単鎖抗体・アガロース複合体による保水性を検証するため、角層水分量測定により判定した。
【0103】角層の水分量は田上らの方法(フレグランス・ジャーナル臨時増刊、No. 9 19-24頁(1988))に従いキャパシタンス・コンダクタンス・メーター(IBS社 SKICOS301)を用いて測定した。測定に際しては、測定部位を37℃の温水で30秒間洗浄後、20℃、50%相対湿度下、5回測定してその平均を測定値とした。その結果を図2に示す。
【0104】ここで、サンプル1は単鎖抗体・アガロース複合体、サンプル2はIDA・アガロースのみ、そしてサンプル3は水のみを用いた結果である。
【0105】図2に示すとおり、単鎖抗体 ・アガロース複合体を塗布した場合、その他の場合より保水性に優れており、この効果は長期間維持できることが明らかとなった。
【0106】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によって、化粧剤を皮膚、毛髪、爪等の対象に安定に吸着させることができ、しかも生体に対する安全性は極めて高く、また高価な抗体等を無駄に流出させることがないので低コストでの供給が実現される。
【0107】また、本発明によって、特に染毛剤における過酸化水素、フェニレンジアミンなどの発色基質のように、生体に対して有害となり得る試薬の使用量を低減したり、またこれらが生体に暴露される時間を短縮して、惹起される可能性のある悪影響を最小化することもできる。
【出願人】 【識別番号】593084649
【氏名又は名称】日本コルマー株式会社
【出願日】 平成12年11月20日(2000.11.20)
【代理人】 【識別番号】100065868
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 嘉宏 (外4名)
【公開番号】 特開2002−363026(P2002−363026A)
【公開日】 平成14年12月18日(2002.12.18)
【出願番号】 特願2000−352576(P2000−352576)