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【発明の名称】 生体硬組織に隙間なく接着できる硬化性組成物
【発明者】 【氏名】山本 隆司

【氏名】荒田 正三

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)分子内にスルホン酸基を含有する高分子重合体、(B)分子内に水酸基を含有する重合性単量体 および(C)重合開始剤を含有することを特徴とする生体硬組織に隙間なく接着できる硬化性組成物。
【請求項2】 (A)、(B)および(C)成分の合計を100重量部としたとき、(A)成分が0.1〜70重量部、(B)成分が1〜99.9重量部、および(C)成分が0.01〜50重量部の範囲で含有される請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】 (A)成分の平均分子量が5,000以上である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】 (A)成分がスルホン酸基を有するビニルモノマーユニットとスルホン酸基を有しないビニルモノマーユニットを同時に含有する共重合体である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】 (A)成分が(メタ)アクリル酸アルキルエステルとスチレンスルホン酸の共重合体である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】 (A)、(B)および(C)成分の合計100重量部のうち、(B)成分の少くとも1部として、40〜99.9重量部の範囲で2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含有する請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】 上記(A)、(B)および(C)の成分の他に、(D)分子内に水酸基を含有する重合性単量体(B)と共重合可能な重合性単量体、をさらに含有する生体硬組織に隙間なく接着できる硬化性組成物。
【請求項8】 (A)、(B)、(C)および(D)成分の合計を100重量部としたとき、(A)、(B)および(C)成分の合計が30〜97重量部および(D)成分が3〜70重量部の範囲内で含有される請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】 37.5℃における粘度が100〜8,000cPの範囲内にある請求項1または7に記載の硬化性組成物。
【請求項10】 (A)、(B)および(C)成分、または(A)、(B)、(C)および(D)成分の他に、(E)有機質フィラー、無機質フィラーおよび有機質複合フィラーから選択される少なくとも1種のフィラーをさらに含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項11】 (A)、(B)および(C)成分、または(A)、(B)、(C)および(D)成分と(E)成分の合計を100重量部としたとき、(A)、(B)および(C)成分の合計または(A)、(B)、(C)および(D)成分の合計が30〜95重量部および(E)成分が5〜70重量部の範囲内で含有される請求項10に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、歯牙および骨に代表される生体硬組織に対して、簡便な操作で隙間なく接着できる硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、歯牙などの表面コーティング材、もしくはPMMA系レジン、レジンセメント、コンポジットレジン等の歯科用修復レジンの修復に好適であり、歯質と修復レジンを簡単な操作で隙間なく接着できる硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】生体の硬組織、とりわけ歯質に対する接着材料には、歯質と修復材料とを隙間なく強力に接着すること、かつ、口腔内での作業であるため可能な限り、簡単で短時間の作業で終了できることが望ましい。歯質に強力に接着させるためには、歯質組織内に接着材料を十分に浸透させて確実に硬化させることが重要であるとされている。歯質内に接着材成分を拡散させるために種々の拡散促進モノマーが提案され、これを含有した歯質接着性組成物が提案されている。また、接着材が浸透しやすくするための歯質表面処理として、エッチングまたは/さらにプライマーなどの組成物および適用方法が提案されている。これらの接着材料およびプライマー組成物は、歯質組織内に十分に浸透しやすいように比較的粘度が低く設定されているのが現状である。一方、接着界面を隙間なく封鎖するために、接着材と比較して粘度の高い充填材(低粘性充填材または低粘度レジンと呼ぶ)が提案されている(特開昭63−162705号公報参照)。低粘度充填材は、粘度が高いために歯質との接着性が極めて乏しく、そのためプライマーや接着材と併用して使用されている。
【0003】従来の技術では、歯質に修復材料を隙間なく強力に接着させるためには、エッチングおよび/もしくはプライマー処理を行った歯面に接着材を塗布して硬化させ、更に低粘度充填材で歯質表面を覆ってから、コンポジットレジンなどの修復用充填材を填入することが接着技術としては最も好ましいと考えられていた。しかしその反面、歯科治療に要する時間が非常に長くなって患者に大変な苦痛を強いること、また、歯科医師にとっても手間のかかる作業であることから、好ましい治療方法とは言い難い。
【0004】接着性能については、これまで多くの接着材および接着方法の提案がなされ、改善がなされてきた。しかし、これらの提案における実験的な接着性能はきわめて優れているにもかかわらず、実際の臨床的な評価では性能が十分に発揮されずに満足されていない。これは実験的な接着性能試験で行う接着面と実際の口腔内における接着面の相違によるものと推測でき、特に接着面の乾燥状態の違いが指摘されている。
【0005】従って、従来技術では、歯質に修復材料を隙間なく強力に接着させるにあたり、医師や患者に大変な苦痛や労力を長時間強いることとなり、さらに、接着材料には、十分な乾燥状態を保つことができない口腔内では、十分な接着性能を発揮できないなどの深刻な問題を抱えている。
【0006】
【発明が解決すべき課題】本発明の目的は、上記の問題を解決するために、歯牙特に象牙質に対して簡便な接着操作で、しかも湿潤した条件においても隙間なく接着できる硬化性組成物を提供することにある。
【0007】さらに、本発明の他の目的は、酸エッチングやプライマー処理を行わずとも象牙質に対して接着性を有し、同時に接着材自体が高い粘性を有するため接着界面に隙間を生じさせない利点を有する、簡単な操作で隙間なく接着できる硬化性組成物を提供するものである。
【0008】本願出願人は、上記問題点を解決すべく、既に歯質に接着性を有する表面被覆材を提案している。この表面被覆材は主構成成分として、(A)分子内に酸性基を含有する高分子重合体、(B)重合性単量体、(C)水または水系溶媒、さらには(D)重合開始剤あるいは還元性化合物からなる。この表面被覆材は簡便な接着操作で歯牙などの生体硬組織の表面に対して接着性および封鎖性を有するために、コーティング材、接着材あるいはプライマーとして使用できる。この提案においては、(C)成分である水または水系溶媒を使用しているために、歯質の乾燥状態によって生ずる性能の差はきわめて少ないと推察されるが、主に表面被覆材の機械的な強度や長期的な接着安定性が要求される場合には適さないことがあった。本発明は、上記提案における、簡単な操作で接着性と封鎖性を同時に満足する長所を維持しつつ、さらに機械的な強度および長期的な接着安定性を改善したものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、次の第1から第3の硬化性組成物のいずれかを用いることによって達成される。
(A)分子内にスルホン酸基を含有する高分子重合体、(B)分子内に水酸基を含有する重合性単量体 および(C)重合開始剤を含有することを特徴とする硬化性組成物(以下、第1の硬化性組成物という)、または(A)分子内にスルホン酸基を含有する高分子重合体、(B)分子内に水酸基を含有する重合性単量体、(C)重合開始剤、および(D)分子内に水酸基を含有する重合性単量体と共重合可能な重合性単量体、を含有することを特徴とする硬化性組成物(以下、第2の硬化性組成物という)、および(A)分子内にスルホン酸基を含有する高分子重合体、(B)分子内に水酸基を含有する重合性単量体、(C)重合開始剤、および(E)有機質フィラー、無機質フィラーおよび有機質複合フィラーから選択される少なくとも1種のフィラーを含有することを特徴とする硬化性組成物(以下、第3の硬化性組成物という)、または、(A)分子内にスルホン酸基を含有する高分子重合体、(B)分子内に水酸基を含有する重合性単量体、(C)重合開始剤(D)分子内に水酸基を含有する重合性単量体と共重合可能な重合性単量体、および(E)有機質フィラー、無機質フィラーおよび有機質複合フィラーから選択される少なくとも1種のフィラーを含有することを特徴とする硬化性組成物(以下、第3の硬化性組成物という)。
【0010】本発明の硬化性組成物はいずれも、水分が多く存在する歯質の表面に対して、濡れ性、歯質反応性、歯質浸透性を同時に合わせ持ち、生体硬組織に隙間なく接着できる。
【0011】本発明の硬化性組成物を、歯質特に象牙質に使用する場合には、歯髄への安全性を考慮して、湿潤した歯質に対してそのまま接触させるのが好ましい。また、状況に合わせて歯質表面を金属塩を含んでいてもよいリン酸水溶液、クエン酸水溶液またはEDTA水溶液などのエッチング剤によって、あらかじめ歯牙の表面を処理してから使用することもできる。
【0012】本発明の第1から第3の硬化性組成物において、(A)成分は分子内にスルホン酸基を有する高分子重合体である。かかる高分子重合体は、平均分子量が5000以上であることが好ましい。(A)成分は歯質表面に対して反応性もしくは結合性を有し、しかも分子量が高いために組成物の粘度を増大させ、さらに歯質表面で被膜を形成する役割を果たす。従って、(A)成分の高分子重合体としては、例えばセルロース誘導体やタンパク質誘導体などの天然高分子量体、または合成高分子量体を挙げることができる。さらに、これらの重合体としては懸濁重合体や乳化重合体などを挙げることができる。
【0013】歯質に対して、長期にわたり高い接着性を特に要求される場合には、(A)成分はスルホン酸基を有するビニルモノマーユニットとスルホン酸基を有しないビニルモノマーユニットを同時に含有する共重合体であることが好ましい。とりわけ、(メタ)アクリル酸アルキルエルテルとスチレンスルホン酸の共重合体であることが特に好ましい。
【0014】スルホン酸基を含有する重合体を製造する方法としては、例えばスルホン酸またはその塩を有する重合性単量体を単独で重合した後、もしくは他の共重合可能な重合性単量体と共重合した後単離する方法を挙げることができる。ここで使用できるスルホン酸基を含有する重合性単量体としては、例えばスチレンスルホン酸、2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸およびこれらの金属塩やアンモニウム塩を挙げることができる。スルホン酸基を含有する重合性単量体と共重合できる重合性単量体としては、分子中に重合性基を含有し、さらに水酸基、カルボン酸基、リン酸基、アミノ基、アミド基などの官能基を含んでもよい脂肪族および芳香族の重合性単量体が好ましい。
【0015】これら共重合できる単量体の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル(MMA)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの脂肪族(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネートなどのカルボン酸基含有(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2または3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチロール(メタ)アクリルアミドなどの水酸基含有の(メタ)アクリレート類および(メタ)アクリルアミド類などを挙げることができる。これらの重合性単量体は組み合わせて用いることができる。
【0016】(A)成分として更に好ましくは、既に報告されている方法[中林ら、歯科材料器械、6(6)、873−876、1987または木下ら、歯科材料器械、8(6)、913−921、1989および山本ら、高分子論文集、49(2)、119−123、1992]に基づいて、上記の単量体を予めラジカル重合して得られた重合体で、平均分子量が5,000以上を有するスルホン酸基含有の重合体である。本発明に記載した平均分子量とは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0017】(A)成分中のスルホン酸基の一部がナトリウム、カリウムおよびアンモニウムなどの1価のカチオン、もしくはカルシウム、マグネシウム、銅、アルミニウムもしくは鉄などの金属塩を形成していてもよく、また(A)成分を金属酸化物などの金属化合物と共存させることもできる。
【0018】本発明の第1から第3の硬化性組成物において、(B)成分は分子内に水酸基を含有する重合性単量体である。かかる単量体の重合性基は、例えば(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基などを有するラジカル重合可能な不飽和基を挙げることができる。1分子内にこれらの重合性基から選択される基が少なくとも1個含有されていればよい(以下に記述する重合性単量体における重合性基は、すべてこれと同様に解釈されるべきである)。さらに、これらの水酸基含有重合性単量体は、さらに分子内にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、グリシジル基などの官能基を併せて含有することもできる。
【0019】(B)成分として使用できる重合性単量体として、例えば(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2または3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレ−ト、1,2−または1,3−および2,3−ジヒドロキシプロパン(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有の(メタ)アクリレート類;メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイル−2,3−ジヒドロキシプロピルアミン、N−(メタ)アクリロイル−1,3−ジヒドロキシプロピルアミンなどの水酸基含有の(メタ)アクリルアミド類;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート(メタクリレートの場合HPPM)、2−ヒドロキシ−3−ナフトキシプロピル(メタ)アクリレート(メタクリレートの場合HNPM)、1モルのビスフェノールAと2モルのグリシジル(メタ)アクリレート(メタクリレートのの場合GMA)の付加反応生成物(メタクリレートの場合Bis−GMA)などのGMAと脂肪族もしくは芳香族ポリオール(フェノールを含む)との付加生成物などを挙げることができる。これらの重合性単量体は単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。このうち、(B)成分の少くとも1部として、(A)、(B)および(C)成分の合計100重量部に対し、40〜99.9重量部の範囲で2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(メタクリレートの場合HEMA)を含有することが特に好ましい。
【0020】本発明の第1から第3の硬化性組成物において、(C)成分は重合開始剤である。かかる重合開始剤としては、例えばジアセチルペルオキシド、ジプロピルペルオキシド、ジブチルペルオキシド、ジカプリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)、p,p'−ジクロルベンゾイルペルオキシド、p,p'−ジメトキシベンゾイルペルオキシド、p,p'−ジメチルベンゾイルペルオキシド、p,p'−ジニトロジベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物:および過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウムおよび過リン酸カリウムなどの無機過酸化物を挙げることができる。これらのうちでは、BPOが好ましい。
【0021】また、本発明の硬化性組成物は紫外光線もしくは可視光線を照射することによって光重合することもできる。かかる光重合の際に使用できる重合開始剤に特に制限はないが、例えばベンジル、4,4'−ジクロロベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、9,10−アントラキノン、ジアセチル、d,l−カンファキノン(CQ)などの紫外線または可視光線増感剤が挙げられる。
【0022】有機過酸化物もしくは光重合開始剤を使用する場合、還元性化合物を併用することができる。ここで、有機還元性化合物としては、例えばN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルp−トルイジン(DMPT)、N,N−ジエチルp−トルイジン、N,N−ジエタノールp−トルイジン(DEPT)、N,N−ジメチルp−tert−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニシジン、N,N−ジメチルp−クロルアニリン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸(DEABA)およびそのアルキルエステル、N,N−ジメチルアミノベンツアルデヒド(DMABAd)などの芳香族アミン類;N−フェニルグリシン(NPG)、N−トリルグリシン(NTG)、N,N−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニルグリシン(NPG−GMA)などを併用することができる。これらの中、DMPT、DEPT、DEABA、DMABAd、NPG、NTGが好ましく使用できる。
【0023】また、別の有機還元性化合物として、例えはベンゼンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸、ナフタリンスルフィン酸などの芳香族スルフィン酸またはその塩類を併用することもできる。
【0024】また、無機還元性化合物としては、硫黄を含有する還元性無機化合物が好ましく使用できる。かかる化合物としては、水または水系溶媒などの媒体中でラジカル重合性単量体を重合させる際に使用できるレドックス重合開始剤としての使用される還元性無機化合物が好ましい。例えば亜硫酸、重亜硫酸、メタ亜硫酸、メタ重亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ硫酸、1亜2チオン酸、1,2チオン酸、次亜硫酸、ヒドロ亜硫酸およびこれらの塩が挙げられる。このうち亜硫酸塩が好ましく用いられ、特に亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムが好ましい。これらの還元性無機化合物は単独で、もしくは組み合わせて使用できる。
【0025】さらに、その他の還元性化合物として、トリアルキルホウ素またはその部分酸化物を使用することもできる。具体的には、トリアルキルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリ−n−ブチルホウ素、トリ−n−アミルホウ素、トリアミルホウ素、トリイソアミルホウ素、トリ−sec−アミルホウ素またはこれらの一部が酸化されたトリアルキルホウ素酸化物を用いることができる。これらのなかでは、トリ−n−ブチルホウ素またはその部分酸化物を使用することが好ましい。
【0026】本発明の第1の硬化性組成物は、(A)、(B)および(C)成分の合計100重量部当り、(A)成分を0.1〜70重量部、(B)成分を1〜99.9重量部、および(C)成分を0.01〜50重量部の範囲で含有するのが好ましい。さらに好ましくは、(A)成分が1〜30重量部、(B)成分が3〜90重量部および(C)成分が0.1〜20重量部の範囲で使用される。
【0027】本発明の第2の硬化性組成物のうち、(D)成分は分子内に水酸基を有する重合性単量体(B)と共重合可能な重合性単量体である。かかる重合性単量体は、例えば(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基などを有するラジカル重合可能な不飽和基を有する単量体を挙げることができる。1分子内に上記の重合性基から選択される基が少なくとも1個含有されていればよい単量体である。さらに、これらの重合性単量体は、分子内にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、グリシジル基などの官能基を含有することができる。
【0028】(D)成分として使用できる重合性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の脂肪族エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類;上記のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類のどちらか一方の(メタ)アクリロイル基がメチル基およびエチル基などに置換されたモノ(メタ)アクリレート類;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートまたは2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートまたは1,3,5−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加物などのウレタン結合を有する(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAにオキシエチレンを付加させた生成物にさらに(メタ)アクリル酸を縮合させた2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン類;スチレン、4−メチルスチレン、4−クロルメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体類;酢酸ビニルなどを挙げることができる。これらの重合性単量体は単独で、もしくは組み合わせて使用できる。
【0029】また、(D)成分として使用できる重合性単量体のうち、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する重合性単量体としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはこれらの誘導体を挙げることができ、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、p−ビニル安息香酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(メタクリレートの場合:MAC−10)、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸(メタクリレートの場合:4−MET)およびその無水物(メタクリレートの場合:4−META)、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物、4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]ブチルトリメリット酸およびその無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、N,O−ジ(メタ)アクリロイルオキシチロシン、O−(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイルp−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイルO−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル5−アミノサリチル酸(メタクリレートの場合:5−MASA)、N−(メタ)アクリロイル4−アミノサリチル酸、2または3または4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物の付加生成物(メタクリレートの場合:PMDM)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水マレイン酸または3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(メタクリレートの場合:BTDA)または3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の付加反応物、2−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、N−フェニルグリシンまたはN−トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物、4−[(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3または4−[N−メチルN−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸などを挙げることができる。このうち、MAC−10、4−MET、4−METAおよび5−MASAが好ましく用いられる。これらのカルボキシル基を有する重合性単量体は単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0030】(D)成分として使用できる重合性単量体のうち、1分子中に少なくとも1個のリン酸基を有する重合性単量体としては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート、2および3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシドホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルアシドホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルアシドホスフェート、ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシドホスフェート、ビス{2または3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル}アシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルp−メトキシフェニルアシドホスフェートなどを挙げることができる。これらの化合物におけるリン酸基は、チオリン酸基に置き換えることができる。このうち、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェートが好ましく用いられる。これらのリン酸基を有する重合性単量体は単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0031】(D)成分として使用できる重合性単量体のうち、1分子中に少なくとも1個のスルホン酸基を有する重合性単量体としては、例えば2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2または1−スルホ−1または2−プロピル(メタ)アクリレート、1または3−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。このうち、2−メチル−2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸を好ましく用いられる。これらのスルホン酸基を有する重合性単量体は単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0032】上記(D)成分として、上記に挙げた種々の重合性単量体はそれぞれ単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0033】第2の硬化性組成物の組成は、上記(A)、(B)、(C)成分と上記の(D)成分の合計を100重量部としたとき、(A)、(B)および(C)成分の合計が30〜97重量部、好ましくは、40〜90重量部の範囲であり、(D)成分が3〜70重量部、好ましくは、10〜60重量部の範囲内で含有するが望ましい。(A)、(B)および(C)成分の割合は第1の硬化性組成物におけると同じであると理解されるべきである。
【0034】本発明の第1および第2の硬化性組成物は、特に好ましい状態として、37.5℃における粘度が100〜8,000センチポアズ(cP)の範囲内にあることである。この粘度範囲の組成物を使用することによって、特に、歯質との接着界面に隙間なく優れた封鎖性および接着性を発揮する。本発明における硬化性組成物の粘度は、E型粘度計を用いて37.5℃で測定したものである。
【0035】本発明の第3の硬化性組成物のうち、(E)成分は、有機質フィラー、無機質フィラーおよび有機質複合フィラーから選択される少なくとも1種のフィラーである。有機質フィラーとしては、例えば重合体の粉砕もしくは分散重合によって得られた粉末重合体のフィラーや架橋剤を含む重合性単量体を重合させた後粉砕して得られたフィラーを挙げることができる。ここで、使用できるフィラーの原料となる重合体としては、(B)成分もしくは(D)成分で例示した重合性単量体の単独重合体もしくは共重合体を挙げることができる。例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル(PBMA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレングリコール(PEG)やポリプロピレングリコール(PPG)、ポリビニルアルコール(PVA)などを挙げることができる。
【0036】無機質フィラーとしては、例えばシリカ、シリカアルミナ、アルミナ、アルミナ石英、ガラス(バリウムガラスを含む)、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウムなどを挙げることができる。
【0037】有機質複合フィラーとしては、前述した無機質フィラー表面を重合性単量体で重合して被覆した後、粉砕して得られるフィラーを挙げることができる。具体的には、無機質フィラーのうち、微粉末シリカをトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPT)を主成分とする重合性単量体で重合被覆し、得られた重合体を粉砕したフィラー(TMPT・f)を挙げることができる。
【0038】本発明の第3の硬化性組成物は、(A)、(B)および(C)成分と(E)成分から、あるいは(A)、(B)、(C)および(D)成分と(E)成分からなり、それぞれにおいて、これらの各成分と(E)成分の合計を100重量部としたとき、(A)、(B)および(C)成分の合計または(A)、(B)、(C)および(D)成分の合計が30〜95重量部、好ましくは65〜85重量部の範囲であり、(E)成分は5〜70重量部、好ましくは15〜35重量部の範囲であることが望ましい。(A)、(B)および(C)成分の組合せ並びに(A)、(B)、(C)および(D)成分の組合せにおける各成分の割合はそれぞれ第1および第2の硬化性組成物におけると同じであると理解すべきである。
【0039】本発明の硬化性組成物は、(E)成分を使用することによって容易に粘度を調節することができる。37.5℃における粘度を100〜8,000cPの範囲内にすることができる。この粘度範囲の組成物を使用することによって、前述の如く、特に歯質との接着界面に隙間なく優れた封鎖性および接着性を発揮する。
【0040】本発明の第1から第3の硬化性組成物は、上記(A)から(E)成分の他に、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどの第III族金属、ゲルマニウム、スズ、鉛などの第IV族の金属および鉄、銅、コバルト、ニッケルなどの遷移金属などの多価金属の水酸化物、ハロゲン化物、酸化物などを含有することができる。これらの添加剤は、(A)成分の高分子重合体と反応して増粘効果や塗膜性の向上および硬化促進に役立つ。
【0041】本発明の第1から第3の硬化性組成物は、上記(A)から(E)成分を予め混合して歯質に適用することができる。これらの成分の混合物が長期にわたり形態や性能が変化し、本発明の効果を損なう恐れがある場合には、各成分を単独であるいは任意の組合せで分割して保存し使用前に混合して硬化性組成物とすることができる。
【0042】硬化性組成物の保存の方法としては、例えばA/B(/D/E)成分の混合物とC成分の2つに分割する場合、A/B(/D/E)成分の混合物とB(/D/E)/C成分の混合物に分割する場合がある。これらの混合物は別々の容器に入れられ、キットに収容されて製品として提供できる。また、(C)成分が、例えば、BPOないしはCQとアミンからなる2成分の場合にはA/B/C(BPOないしはCQ)(/D/E)成分の混合物とB(/D/E)/C{アミン例えばN,N−ジメチルp−トルイジン(DMPTと略記)}成分の混合物などが挙げることができる。また、(C)成分の一部ないしは全部を、あらかじめ、硬化性組成物を歯面に塗布する際に使用する治具に含有させ、使用直前に(A)、(B)、(D)および(E)成分と治具とを接触させて硬化性組成物をその場で調製し、そのまま歯面に塗布することもできる。歯面に塗布する治具としては、筆、繊維球または布、スポンジ球またはスポンジ片などを好ましいものとして挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0043】この方法によって、例えば、硬化性組成物を二つの容器に分割して使用直前に混合して用いる方法に比較して、手間が省け、また、容器から直接に硬化性組成物を必要量だけスポンジ等の治具に接触させることによって、混合容器などを用いずに経済的に使用することができる。本発明の硬化性組成物を歯質表面に適用させたのち、その上に歯科用修復レジンを適用することによって、歯を修復することが有利に行なわれる。
【0044】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本発明がこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】実施例1 分子内にスルホン酸基を有する重合体(A)の合成2lのフラスコに33gのp−スチレンスルホン酸ナトリウム(p−SSA、和光純薬)、144gのメタクリル酸メチル(MMA、和光純薬)および2.26gの2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを窒素雰囲気下で1.6lの水/エタノール(EtOH)の混合溶媒(水/EtOH=1/0.6容量比)に溶解し、続いて溶液を75℃の油浴中に入れて11時間撹拌した。溶液を室温にもどして減圧下でEtOH分を留去した。残った溶液は透析チューブ(Union Carbide、三光純薬)に詰めてイオン交換水中で3日間透析を行った。チューブ内の溶液を集め、1.5Kgのイオン交換樹脂(アンバーライトIR-118、オルガノ)を充填したカラムに通し脱塩した。水を留去して目的の重合体を得た。得られた重合体は、1H−NMR、元素分析およびGPC(N,N−ジメチルホルムアミド溶媒中ポリスチレン換算分子量)分析を行い、数平均分子量が10万以上のメタクリル酸メチル−p-スチレンスルホン酸共重合体(MMA含量約90モル%、以下これをPOLY−Aと略記する)であることを確認した。
【0046】接着力の評価方法は、以下のとおりである。
【0047】新鮮なウシ下顎前歯を抜去し、水中で凍結し保存したものを歯質サンプルとして使用した。解凍した牛歯をエナメル質および象牙質が露出するように回転式研磨機ECOMET-III(BUEHLER製)で注水、指圧下で耐水エメリー紙#600番まで研削し、平滑な面を得た。研削した牛歯を一度気銃にて水分を除去して、直ちに接着面積を規定するための直径5.1mmの円孔のあいたセロハンテープを張り付け、再度水中に浸漬した。水中に最低1分間浸漬した牛歯を取り出し、接着面を綿球で軽く水分をぬぐい取った。この表面にはまだ水分がかなり残っており、湿潤表面として接着試験に使用した。
【0048】本発明の硬化性組成物をスポンジ(スーパーボンドC&B付属品、サンメディカル製)にて塗布して、気銃にて軽くエアーを約5秒間吹きかけた。可視光照射器(Translux CL, Kulzer)にて20秒間光照射して本発明の硬化性組成物を硬化させた。片面に粘着材のついた内径5.1mmの厚紙を置いて固定し、この穴にコンポジットレジン(Silux Plus, 3M)を充填して、厚さ50μmのポリエステルフィルムで覆った。このフィルムの上から可視光照射器(Translux CL, Kulzer)にて40秒間光照射してコンポジットレジンを硬化させた後、フィルムを剥がし、メタファースト(サンメディカル)にてアクリル棒を植立して15分間静置した。37℃の水中に24時間浸漬した後、引っ張り接着試験(クロスヘッドスピード2mm/min)を行った。
【0049】歯質と修復材料との界面の隙間(ギャップ)の測定は、以下の方法で行った。
【0050】歯質と修復物との封鎖性を確認するため、解凍した牛歯をエナメル質および象牙質が露出するように回転式研磨機ECOMET-III(BUEHLER製)で注水、指圧下で耐水エメリー紙#600まで研削し平滑な面を得た。φ3×3mmの窩洞を注水下でダイヤモンドポイントを用いて形成した。本発明の硬化性組成物をスポンジを用いて窩洞内の表面に塗布して軽くエアブローして窩洞上部から可視光照射器(Translux CL, Kulzer)にて20秒間光照射して硬化させた。さらにコンポジットレジンを充填して同様に40秒間光照射して硬化させた。表面を#600まで注水下で研磨して平滑にした後、塩基性フクシン水溶液中に1分間浸漬して水洗した。気銃にて乾燥した状態での隙間(ギャップ)を光学顕微鏡にて観測し、さらにギャップの生じた部分に認められる着色を目視にて確認し、隙間の有無を判定した。
【0051】実施例2本発明の硬化性組成物として、9重量部のPOLY−A、63重量部の2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、9重量部のトリエチレングリコールジメタクリレート(3G)、9重量部の2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(2.6E、新中村化学)、9重量部の4−MET、0.45重量部のd,l−カンファーキノン(CQ)および0.45重量部のN,N−ジメチルアミノベンツアルデヒド(DMABAd)を混合して溶解した。調製直後に使用して接着試験を行った結果、象牙質に対する接着強さは50±17kgf/cm2であり、ギャップの形成は認められなかった。
【0052】実施例3本発明の硬化性組成物として、6.8重量部のPOLY−A、47.7重量部のHEMA、25重量部のVR90(昭和高分子)、6.8重量部の3G、6.8重量部の2.6E、6.8重量部の4−MET、0.5重量部のCQおよび0.5重量部のDMABAdを混合して溶解した。調製直後に使用して接着試験を行った結果、象牙質に対する接着強さは56±13kgf/cm2であり、ギャップの形成は認められなかった。
【0053】実施例4本発明の硬化性組成物として、実施例3における4−METを4−METAに変更したものを使用した。その結果、象牙質に対する接着強さが53±9kgf/cm2であり、ギャップの形成は認められなかった。
【0054】実施例5本発明の硬化性組成物として、6.8重量部のPOLY−A、47.3重量部のHEMA、6.8重量部の3G、6.8重量部の2.6E、6.8重量部の4−MET、0.34重量部のCQ、0.34重量部のDMABAdおよび25重量部の微粉末シリカ(RM50)を混合した。調製直後に使用して接着試験を行った結果、象牙質に対する接着強さは41±5kgf/cm2であり、ギャップの形成は認められなかった。
【0055】実施例6本発明の硬化性組成物として、6.8重量部のPOLY−A、51重量部のHEMA、6.8重量部の3G、6.8重量部の2.6E、6.8重量部の4−MET、0.34重量部のCQ、0.34重量部のDMABAdおよび25重量部の有機複合フィラー(TMPT・f)を混合した。調製直後に使用して接着試験を行った結果、象牙質に対する接着強さは51±20kgf/cm2であり、ギャップの形成は認められなかった。
【0056】実施例7本発明の硬化性組成物として、6.8重量部のPOLY−A、51重量部のHEMA、6.8重量部の3G、6.8重量部の2.6E、6.8重量部の4−MET、0.34重量部のCQ、0.34重量部のDMABAdおよび12.5重量部のRM50、12.5重量部のTMPT・fを混合した。調製直後に使用して接着試験を行った結果、象牙質に対する接着強さは91±16kgf/cm2であり、ギャップの形成は認められなかった。
【0057】実施例8本発明の硬化性組成物として、6.8重量部のPOLY−A、51重量部のHEMA、6.8重量部の3G、6.8重量部の2.6E、6.8重量部の4−MET、0.34重量部のCQ、0.34重量部のDMABAdおよび25重量部のポリ酢酸ビニル(PVAc)を混合した。調製直後に使用して接着試験を行った結果、象牙質に対する接着強さは105±32kgf/cm2であり、ギャップの形成は認められなかった。
【0058】実験例9本発明の硬化性組成物として、6.8重量部のPOLY−A、51重量部のHEMA、6.8重量部の3G、6.8重量部の2.6E、6.8重量部の4−MET、0.34重量部のCQ、0.34重量部のDMABAdおよび25重量部のポリ(メタクリル酸メチル−co−メタクリル酸ブチル)を混合した。調製直後に使用して接着試験を行った結果、象牙質に対する接着強さは56±13kgf/cm2であった。
【0059】実施例10実施例3において、DMABAdの代わりにNPGを使用した。その結果、象牙質に対する接着強さは94±9kgf/cm2であり、ギャップの形成は認められなかった。
【0060】実施例11実施例2から9の硬化性組成物は、調製後約1時間で硬化した。また、実施例10の硬化性組成物は、調製後約15分間で硬化した。そこで、保存安定性を向上させるために、本発明の硬化性組成物を歯面に塗布する際に使用するスポンジにNPGを以下の手順で含有させた。まず、NPG粉末の入った容器中にスーパーボンドC&B付属のスポンジをいれてよく混ぜた後、スポンジを取り出して軽く振り、余分のNPGを振り落とした。これを歯面に塗布するスポンジ(NPG−SP)として使用した。
【0061】実施例12実施例3において、DMABAdを含まない硬化性組成物を調製し、実施例11で作製したNPG−SPを使用して歯質表面への塗布を行った。その結果、本発明の硬化性組成物の保存安定性および操作性を損なうことなく、作業することができ、象牙質に対する接着強さが64±18kgf/cm2であった。
【0062】比較例1実施例2において、分子内に水酸基を含有する重合性単量体(B)であるHEMAを使用せずに、メタクリル酸エチル(EMA)を使用した。その結果、POLY−Aが溶解せず、硬化性組成物が調製できなかった。
【0063】比較例2実施例2において、HEMAを使用しないで、(A)成分であるPOLY−Aと(D)成分である3G、2.6Eおよび4−METの重量比を変化させて硬化性組成物の調製を試みたが、POLY−Aが十分に溶解せず調製できなかった。
【0064】比較例3実施例2において、(A)成分のPOLY−Aを使用せずに硬化性組成物を調製した結果、象牙質に対する接着強さが42±10kgf/cm2であったが、ギャップの形成が認められた。
【0065】以上の結果を表1および表2にまとめて記載した。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【発明の効果】本発明の硬化性組成物は、エッチングやプライマー処理を行わずとも象牙質に対して高い接着強さを発揮し、さらに隙間のない接着ができることから、歯髄に対する刺激が極めて少なく、しかも簡便な操作で短時間に接着歯科治療ができる。さらに本発明の硬化性組成物は、湿潤状態の象牙質に対しても高い接着強さを示すことから、実際の臨床的な使用にあたっても安定した性能を発揮する。本発明において、使用する治具や容器などに硬化性組成物の構成成分の一部を予め含有させておくことによって、保存安定性や操作性などを損なわずに必要量だけ硬化性組成物を使用できる操作方法を提供する。
【出願人】 【識別番号】592093578
【氏名又は名称】サンメディカル株式会社
【識別番号】391012774
【氏名又は名称】中林 宣男
【出願日】 平成5年8月2日(1993.8.2)
【代理人】 【識別番号】100080609
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 正孝
【公開番号】 特開2002−363022(P2002−363022A)
【公開日】 平成14年12月18日(2002.12.18)
【出願番号】 特願2002−146687(P2002−146687)