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【発明の名称】 樹脂接着用チタン表面改質材
【発明者】 【氏名】伴 清治

【氏名】長谷川 二郎

【氏名】門林 勇生

【要約】 【課題】チタン金属またはチタン合金と樹脂との接着力を向上させる方法を課題とし、更にはチタン金属またはチタン合金と樹脂との接着方法を簡素化させる接着材及び接着方法を提供することを課題とする。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】樹脂を接着させる前にチタン金属またはチタン合金を処理する表面改質材において、a)水b)アルカリ金属イオンを含有する表面改質材。
【請求項2】チタン金属またはチタン合金に樹脂を接着させるチタン金属表面処理方法において、チタン金属またはチタン合金の表面に請求項1記載の表面改質材で処理し、更に熱処理する事を特徴とするチタン金属表面処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属と樹脂接着に関連する表面処理方法及び表面改質材に関する。特に、歯科分野におけるチタン金属またはチタン合金を使用した前装冠用硬質レジンに関連が深く、チタン金属またはチタン合金と前装冠用硬質レジンとの接着材および接着方法に関する。本発明の接着材および接着方法は歯科補綴、歯科保存、矯正、インプラント、医科補綴の分野におけるチタン接着に関する。その他、宝飾分野や眼鏡のチタン接着などにも使用することができる。
【0002】
【従来の技術】一般的に、チタン金属またはチタン合金は、非常に酸化され易いために、安定した酸化皮膜の形成が難しくチタンとプラスチック材料との接着を強固に行うことが出来なかった。近年、金属アレルギー患者が増加しており、一般の歯科用金属ではアレルギーをおこす患者も少なくなく、生体適合性のよい材料が求められている。生体適合性のよい金属材料として、チタン金属が例示される。しかし、チタン金属は、従来の方法にて前装冠用レジンの接着を行ったとしても、十分な接着が得られないために満足の出来るものでなかった。
【0003】歯科分野における口腔内でのチタン金属の使用は今後益々発展していくものと思われる。例えば、歯科インプラントの二回法では、歯根部を歯槽骨への埋入固定後に上部構造体(歯冠部分)を装着する。歯根部にはよくチタン金属やチタン合金のチタン材料が使用されるため、歯冠部分をチタン材料で作製しなければならない。歯冠部分をチタン材料で作製せずに、他の金属材料を使用した場合は、異種金属間で起電力が発生し、腐食の進行が進みやすい。更に、腐食のかたよりが発生する。
【0004】歯冠部分をチタン材料で作製した場合、金属色では審美的な問題が有るため、表面に他の材料で前装を施すことがよくおこなわれる。前装は一般的には、金属焼付陶材もしくは歯冠修復レジンが用いられるが、反応性の高いチタン材料は陶材を焼付ける時に酸化され、かつチタン専用陶材が必要となる。そのため、チタン材料やチタン合金への前装は歯冠修復レジンにて施されることが一般的に行われている。
【0005】しかし、チタン材料の熱による反応性は非常に高く、常温で生成する表面の酸化膜や単なる熱処理で生成する酸化膜では、レジン接着が非常に困難である。数々の研究発表が行われているが、十分な接着が得られているとはいえない。歯科分野におけるの金属とレジン接着に利用される方法をいくつか例示する。チタン金属表面に酸化膜を作製することで、樹脂との接着性が向上することが知られている。
【0006】また、金属表面に樹脂との接着性がよい他の金属をメッキし、表面改質する方法がとられている。よく行われるのがスズ電析であり、金属スズのメッキをほどこすものである。スズ電析はスズ溶液を使用するため、処理後に使用したスズ溶液を水洗する工程が必ず必要であり、スズイオンによる環境汚染が発生する可能性を含んでいる。更に金属スズのメッキの作製のみの接着性では十分な接着力を得ることができなかった。
【0007】機械的維持装置を利用する方法は、リテンションビーズやポンティック中央のバーなどのアンダーカットを利用してレジンと金属を接着させるものである。機械的維持装置を使用する代表的な方法としては、リテンションビーズをワックス表面に設置し、鋳造を行うことによって、機械的維持装置を樹脂接着面に作製する。機械的維持装置は、樹脂を強固に接着をさせるが、界面での金属との化学的な接着を期待しているものでなく、アンダーカットによる機械的嵌合を期待した接着方法である。
【0008】サンドブラストは、金属表面の比表面積を増大させることにより、接着力を向上させることを期待しているものである。市販されているプライマーは、金属表面を改質をするものではあるが、金属表面上に接着剤のベースを作製するものである。即ち、金属表面の上に改質剤を塗布するものである。
【0009】熱処理による表面改質は、金属表面に酸化膜を形成させ、金属表面に0H基を増大させ、接着剤とのなじみを良くし、更に、表面が粗造になるため、機械的嵌合が期待できる。熱処理は前記した金属接着の手段と違い、金属表面の金属側を改質する唯一の方法であった。
【0010】注目すべき研究は、菊池らが補綴誌42:481−488,1997において、チタン金属表面の水酸基と硬質レジンの接着に関する研究を行い、600℃で熱処理した場合が水酸基の最多量となり接着力も強いことを報告している。その他、奥羽大学誌24:1−20,1997や第12回歯科チタン研究会講演要旨集.28−29,1999においても同様な報告がされている。一方、チタン金属のアルカリ処理は、特開平10−179717にインプラントの表面処理として特許出願しており、体内に埋入した場合表面への新生骨アパタイトが敏速に生成されることが報告されている。チタン合金においても有効であることが確認されている。
【0011】また、チタン板を5MのNaOH水溶液に60℃で24時間浸漬すると、表面にチタン酸ナトリウムのゲル層が形成され、これを600℃で1時間加熱処理すると非晶質のチタン酸ナトリウム層が形成されると報告されている。これを体液中に浸漬するとチタン酸ナトリウム層のNaイオンが、基盤表面付近の体液のOHイオン濃度を増加させ、アパタイトの過飽和度を増大させる。即ち、NaOH処理にて、アパタイトの生成は促進される。
【0012】本発明の使用方法の一例として、歯科分野における前装冠の作製方法を記載する。前装冠は、支台歯に合わせクラウンの作製を行う。クラウンとは、前装を行うためのコアの役目を果たし、金属、陶材、樹脂にて作製されるが、一般的には金属が使用される。通常は歯科用金属であれば問題がないが、諸処の条件を鑑み解決するために、金属としてチタン金属またはチタン合金を適用する場合がある。
【0013】通常は金属クラウンの作製時に、機械的維持装置としてリテンションビーズを塗布し鋳造するため、金属クラウンの前装面には機械的維持装置が作製されている。その後、前装面の不要な機械的維持装置を除去する。前装は、チタン金属またはチタン合金をクラウンに使用した場合は、陶材を焼き付ける方法では、チタンが酸化され、満足する接着強さが得られないため、通常前装冠用硬質レジンを使用している。
【0014】近年において、この前装冠用硬質レジンは光重合型のものを適用する傾向にあり、光重合型レジンとチタン金属またはチタン合金との接着を向上させるために数々の試みが行われ、臨床にて応用されている。臨床に応用されている方法として、サンドブラストを行い、プライマーを塗布し、前装冠レジンを築盛し、前装を施すものである。サンドブラスト前後に、熱処理を施す術式も行われているが、そのような操作をしたとしても、十分な接着力が金属と前装の間で保たれていたとはいえなかった。
【0015】チタン金属またはチタン合金の鋳造により、機械的維持装置をクラウンに塗布する作製方法が試みられている。しかし、チタンの反応性の高いことから、容易に機械的維持装置をクラウンの前装面に作製することが難しく、鋳造欠陥が発生することが多かったことから、これらの操作を無しに接着できることが望まれていた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】生体適合性が良く金属アレルギーの発生が少ないチタン金属またはチタン合金を使用した、生体材料との接着を向上させる接着剤及び接着方法を提供する。チタン金属またはチタン合金と樹脂との接着力を向上させる方法を課題とし、更にはチタン金属またはチタン合金と樹脂との接着方法を簡素化させる接着材及び接着方法を提供することを課題とする。
【0017】特に歯科分野における前装冠を作製するにあたり、チタン金属またはチタン合金と前装冠用硬質レジンとの接着に寄与することが課題である。チタン金属またはチタン合金は、機械的維持装置をクラウン表面に塗布する作製方法が試みられているが、容易に機械的維持装置をクラウンの前装面の作製することが困難であったことから、機械的維持装置に頼らなくても容易に接着できる材料や方法が求められていた。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明は樹脂を接着させる前にチタン金属またはチタン合金に処理する表面改質材において、a)水b)アルカリ金属イオンを含有する表面改質材である。
【0019】本発明はチタン金属またはチタン合金に樹脂を接着させるチタン金属表面処理方法において、チタン金属またはチタン合金の表面を表面改質材で処理し、更に熱処理する事を特徴とするチタン金属表面処理方法である。
【0020】歯科用チタン金属またはチタン合金に歯科用光重合型前装冠用硬質レジンを接着させるチタン金属表面処理方法において、チタン金属またはチタン合金表面に表面改質用KOH及びまたはNaOH溶液を塗布し、水洗し、400〜800℃の熱処理を行い、歯科用光重合型前装冠用硬質レジンを塗布し、光重合器にて重合させる事を特徴とするチタン金属表面処理方法である。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明に使用されるチタン金属またはチタン合金とは、特にTi系合金であれば特に限定しないが、一般的に使用される歯科用チタン金属またはチタン合金であることが好ましい。特に好ましいチタン金属またはチタン合金は、純チタン、Ti−Cr系合金、Ti−Pd系合金、Ti−Cu−Ni合金、Ti−Cu合金、Ti−V合金、Ti−6Al−4V合金及びTi−Nb−Ta−Zr合金である。
【0022】樹脂とは、チタン金属またはチタン合金に接着させるものであればなんら問題がないが、好ましくはアクリル系レジンを母材とする樹脂である。更に好ましくは光重合性の樹脂である。特に好ましくは、歯冠修復材用樹脂、歯科用硬質レジンなどが好ましい。最も好ましいものは、インプラント上部構造体用の樹脂材料である。チタン金属表面とは、チタン金属またはチタン合金の表面で研削研磨した表面、機械的維持装置を付与した表面や、サンドブラストを施した表面であることが好ましい。更に好ましくは、サンドブラストを施した処理面である。
【0023】表面改質材とは、金属表面を処理できるアルカリ金属溶液であれば特定するものはないが、溶液に溶解させるアルカリ金属はK及びまたはNaが好ましい。最も好ましいアルカリ金属は、Naである。表面改質材が、a)水b)アルカリ金属イオンを含有する表面改質材であることが好ましい。処理方法としては、塗布によることもできるが、浸漬させることが好ましい。表面改質材中のアルカリ金属の濃度は、0.01〜20モル濃度更に好ましくは0.1〜5モル濃度である。
【0024】表面改質材には、アルカリ金属の他に界面活性剤や有機溶媒を混合することができる。界面活性剤としては、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、ポリシロキサン系界面活性剤が好ましく、更に好ましくは、陽イオン界面活性剤、ポリシロキサン系界面活性剤である。有機溶媒としては水と相溶するものであれば何等制限なく使用することができる。特に好ましくはアルコール類、ケトン類及びエーテル類から適宜選択することができる。
【0025】これら溶媒を具体的に例示すると、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン等のケトン類が挙げられる。これらの溶媒は単独又は2種以上を使用しても良い。好ましくはエチルアルコール、アセトンが好適に使用される。また、表面改質材にアエロジル等の増粘材を入れることができる。
【0026】表面改質材の処理時間は、何等制限なく使用することができる。特に好ましくは2秒〜48時間更に好ましくは1分〜24時間、更に好ましくは18時間〜22時間である。熱処理は、300〜900℃が好ましく、更に好ましくは400〜800℃、更に好ましくは500〜700℃である。また、真空熱処理の場合は、650〜750℃が好ましい。この場合の処理時間は数分の処理時間で十分である。【0027】好ましいチタン金属表面処理方法は、歯科用チタン金属またはチタン合金に歯科用光重合型前装冠用硬質レジンを接着させるチタン金属表面処理方法において、チタン金属またはチタン合金を室温〜100℃の表面改質用KOH及び/またはNaOH溶液に浸漬後、水洗し、400〜800℃の熱処理を行うチタン金属表面処理方法である。歯科用光重合型前装冠樹脂を塗布し、光重合器にて重合させる。
【0028】
【発明の効果】地球資源の有効埋蔵量を考慮すると、貴金属類はあと20〜30年で枯渇すると推測されていることから、口腔内で使える最後の金属はチタン金属であると考えられ、今後のチタン金属またはチタン合金の接着力を向上させる表面改質は、要望の厚いところである。
【0029】
【実施例】(接着試験方法)基板上に直径6mmの穴を開けた厚み2mmの透明アクリル板を固定しその枠内に光重合型歯科用硬質レジンSolidexを各指定のプライマー(プライマーペースト:光照射1分)を塗布した後、充填(bodyA3B:光照射3分)し、Solidilite(松風社製)にて光照射し重合し、直径6mm厚み2mmの硬質レジンを各基板に前装した。
【0030】試料は24時間37℃の生理食塩水に保存した後、図1のように金属基板はバイアスで固定し、1辺1mmの正方形の断面を有するステンレス製矯正ワイヤー(Wire A−798 Rocky mountain morita)で硬質レジン前装部を引っかけ、インストロン万能試験機(lnstron4443)にて、クロスヘッドスピード5mm/minでワイヤーを引っ張り、その接着強さを測定した。
【0031】(基板の調整)表1記載のチタン金属またはチタン合金を20×15×1mmに切り出し、サンドブラスト処理を行い、60℃のNaOH溶液(5mol/L)に20時間浸漬し、蒸留水で洗浄後、電気炉で600℃の大気中で1時間酸化処理を施したものを基板とした。比較例として、表面改質剤処理を施さないもの(無処理品)を用意した。試験結果を表2に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】次に、表3に、前記した基板の処理方法において、表面改質剤の種類、浸漬濃度、時間及び熱処理時間を変えて、チタン金属表面処理を行いその剪断接着強さ結果を示す。尚、使用したチタン金属はcpTiである。
【0035】
【表3】

【出願人】 【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
【出願日】 平成13年5月30日(2001.5.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−363021(P2002−363021A)
【公開日】 平成14年12月18日(2002.12.18)
【出願番号】 特願2001−204054(P2001−204054)