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【発明の名称】 経皮吸収貼付剤およびその製造方法
【発明者】 【氏名】三浦 晋

【氏名】加来 稔浩

【氏名】冨永 健治

【要約】 【課題】薬物のより高い経皮吸収性と、優れた放出コントロール性を有する経皮吸収貼付剤を開発するための技術を見いだすこと。

【解決手段】支持体の片面に、粘着剤層および当該層を保護する剥離シートが設けられた経皮吸収貼付剤において、前記粘着剤層での薬物を局在せしめてなることを特徴とする経皮吸収貼付剤および当該経皮吸収貼付剤の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体の片面に、粘着剤層および当該層を保護する剥離シートが設けられた経皮吸収貼付剤において、前記粘着剤層中の薬物を局在せしめてなることを特徴とする経皮吸収貼付剤。
【請求項2】 粘着剤層の剥離シート側に薬物を局在させたものである請求項1記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項3】 粘着剤層は単一層であり、粘着剤層中の薬物が他成分との物理的性質の差により不均一となることを利用して薬物を局在化せしめたものである請求項第1項または第2項記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項4】 粘着剤層が積層されたものであり、積層された各粘着剤層中の薬物の配合量が異なることを利用して薬物を局在化せしめたものである請求項第1項または第2項記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項5】 更に粘着剤層中に経皮吸収促進剤を配合せしめた請求項第1項ないし第4項の何れかの項記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項6】 粘着剤層の経皮吸収促進剤を局在せしめたものである請求項第5項記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項7】 薬物が、平均粒子径1μm以上の微粒子である請求項第1項ないし第6項の何れかの項記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項8】 薬物が医薬化合物と有機アミンを組み合わせたものである請求項第1項ないし第7項の何れかの項記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項9】 医薬化合物がメトトレキサートまたはロイコボリン、あるいはそれらの誘導体である請求項第8項記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項10】 有機アミンがアルカノールアミンまたはアルキルアミンである請求項第8項記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項11】 アルカノールアミンがモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびジイソプロパノールアミンからなる群から選ばれたものである請求項第10項記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項12】 アルキルアミンがエチルアミン、ジエチルアミンおよびトリエチルアミンからなる群から選ばれたものである請求項第10項記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項13】 吸収促進剤がグリコール類、油脂類、尿素誘導体、極性溶剤、ジカルボン酸系可塑剤、クロタミトン、サリチル酸、アミノ酸、ニコチン酸ベンジルエステル、ラウリル酸ナトリウム、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリル酸エチル、ジイソプロパノールアミン、グリセリンエステル、1−ドデシル−アザシクロペンタン−2−オン、l−メントールおよびハッカ油から選ばれたものの1種または2種以上である請求項第5項または第6項記載の経皮吸収貼付剤。
【請求項14】 溶剤に分散された薬物および粘着剤層構成成分を含有する混合液を剥離シートまたは支持体上に展延し、粘着剤の乾燥と同時に薬物を移動させ、次いで支持体または剥離シートを貼り合わせることを特徴とする粘着剤層中の薬物を局在せしめた経皮吸収貼付剤の製造方法。
【請求項15】 支持体に薬物を含まない粘着剤組成物を展延し、その上に薬物を含んだ粘着剤組成物を積層し、更に剥離シートを貼り合わせることを特徴とする粘着剤層中の薬物を局在せしめた経皮吸収貼付剤の製造方法。
【請求項16】 剥離シート上に薬物を含んだ粘着剤組成物を展延し、さらにその上に薬物を含まない粘着剤組成物を展延し、更に支持体を貼り合わせることを特徴とする粘着剤層中の薬物を局在せしめた経皮吸収貼付剤の製造方法。
【請求項17】 剥離シート上に、薬物を含んだ粘着剤組成物を展延し、これにあらかじめ薬物を含まない粘着剤組成物を展延しておいた支持体を貼り合わせることを特徴とする粘着剤層中の薬物を局在せしめた経皮吸収貼付剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粘着剤層中での薬物を局在せしめた経皮吸収貼付剤に関し、更に詳細には、粘着剤層中での薬物を局在せしめることにより、従来の薬物を均一に配合した経皮吸収貼付剤とは異なる薬物の放出特性を発揮する経皮吸収貼付剤に関する。
【0002】
【従来の技術】治療用の製剤には、従来より経口剤、注射剤、あるいは液剤、軟膏剤、貼付剤のような経皮適用剤が存在する。しかし、経口剤には、消化管での分解の他、肝初回通過効果、すなわち薬物が血中へ到達する前に肝臓を通過する際に、薬物の多くがそこで消費されてしまうことが避けられないといった問題がつきまとう。また、薬物によっては、経口投与により、消化管に対し副作用を及ぼすものも存在する。
【0003】一方注射剤は、消化管での分解や、肝臓での消費の問題は回避でき、血中での高い薬物濃度が可能であるが、患者にとって痛みや、病院等の医療機関によってしか投与を受けられないという問題がある。
【0004】これに対し、血中への薬物吸収を可能とすることができる経皮適用剤は、経口剤では避けられない肝初回通過効果を回避することができ、さらに消化器障害等の副作用を回避することが可能となる。また、投与も塗布ないし貼付と極めて簡単であるから、利便性も高いものである。
【0005】また、経皮適用剤のうち、貼付剤にはそれに加えていくつか利点がある。例えば、薬物の経皮吸収性をコントロールすることで、長期間にわたり一定の薬物血中濃度を維持することが可能であり、経口投与のような、薬物の短時間の急激な吸収により起こる副作用を防ぐことが可能となる。更に、もし障害が発生した場合でも、製剤を除去することにより薬物の供給を直ちに中止することが可能なこと、投与忘れや重複投与のおそれがないといった点である。
【0006】しかし、当然のことながら薬物は種々の化学構造を有しており、すべてのものが経皮吸収貼付剤の基剤によく相溶し、良好な放出特性を示すとは限らない。そこで、経皮吸収貼付剤の基剤中に経皮吸収促進剤を加え、放出特性を高める等の手段が取られているが、すべての薬物に適した経皮吸収促進剤が存在するわけではなく、経皮吸収貼付剤への配合が困難であるという薬物も存在している。
【0007】例えば抗悪性腫瘍剤あるいは抗リウマチ剤として知られるメトトレキサートは、分子量が大きく、極性が高いため、通常の経皮適用剤の基剤へ相溶性に劣り、基剤からの放出性が悪く、経皮吸収型の製剤化には困難があった。
【0008】このメトトレキサートの経皮吸収性を向上させる方法として、本発明者らは、経皮適用剤の基剤にメトトレキサートと共に有機アミンを配合することにより、メトトレキサートの経皮吸収性を高めた経皮適用剤を開発した(特開2000−16938号公報)。しかし、当該経皮適用剤は、確かにメトトレキサートの高い経皮吸収性を示すものの、その経皮吸収促進効果にはばらつきがあり、最大の効果が得られているとは言い難かった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従って、薬物の経皮吸収性を最大限に発揮させるための技術を見いだすことが本発明の課題である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、メトトレキサートについて、これを含有した経皮吸収貼付剤での経皮吸収促進効果が十分に得られない原因を探るべく研究を行なった結果、メトトレキサートと有機アミンは極性の高い複合体を形成し、溶剤法を用いたゴム系粘着剤基剤での貼付剤の製造においては、前記複合体が基剤の溶解液と十分に相溶しておらず、複合体の高い比重のため基剤中で不均一となってしまうことを知った。そして、メトトレキサートの薬物放出性が高まるメカニズムは、上記複合体を含有する基剤組成物を剥離シート上に展延した場合には、当該組成物中のメトトレキサート複合体が最終的に基剤(膏体)の剥離シート側に局在する結果、製剤を貼付した時に、貼付面のメトトレキサート複合体濃度が高くなり、高い放出性が得られることであることを見出した。
【0011】そして更に、このメカニズムを利用すれば、メトトレキサートのみならず、他の薬物についてその放出性をコントロールし得ることに思い至った。すなわち、経皮吸収性が低い薬物については、剥離シート側(すなわち皮膚貼付側)に薬物を局在化させることにより効果的に高い放出性を得ることができることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】すなわち本発明は、支持体の片面に、粘着剤層および当該層を保護する剥離シートが設けられた経皮吸収貼付剤において、前記粘着剤層中の薬物を局在せしめてなることを特徴とする経皮吸収貼付剤である。
【0013】また本発明は、溶剤に分散された薬物および粘着剤層構成成分を含有する混合液を剥離シートまたは支持体上に展延し、粘着剤の乾燥と同時に薬物を移動させ、次いで支持体または剥離シートを貼り合わせることを特徴とする粘着剤層中の薬物を局在せしめた経皮吸収貼付剤の製造方法である。
【0014】更に本発明は、支持体に薬物を含まない粘着剤組成物を展延し、その上に薬物を含んだ粘着剤組成物を積層し、更に剥離シートを貼り合わせることを特徴とする粘着剤層中の薬物を局在せしめた経皮吸収貼付剤の製造方法である。
【0015】更にまた本発明は、剥離シート上に薬物を含んだ粘着剤組成物を展延し、さらにその上に薬物を含まない粘着剤組成物を展延し、更に支持体を貼り合わせることを特徴とする粘着剤層中の薬物を局在せしめた経皮吸収貼付剤の製造方法である。
【0016】また更に本発明は、剥離シート上に、薬物を含んだ粘着剤組成物を展延し、これにあらかじめ薬物を含まない粘着剤組成物を展延しておいた支持体を貼り合わせることを特徴とする粘着剤層中の薬物を局在せしめた経皮吸収貼付剤の製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】本明細書中において、「局在」とは、薬物あるいは経皮吸収促進剤が粘着剤層(膏体層)中の厚み方向に均一濃度で存在しないことを意味し、粘着剤層の一部分に全部の薬物等が存在し、他の部分には薬物等が全く存在しない場合も、あるいは、薬物等が粘着剤層で厚み方向に連続した濃度変化をもって存在する場合も含む。
【0018】本発明の経皮吸収貼付剤の調製は、薬物を粘着剤層中に局在化できる方法であれば、特に限定することなく、種々の方法により行うことができる。しかし、代表的な方法としては、薬物および必要な場合には経皮吸収促進剤をそれらの物理的性質を利用して粘着剤組成物中で局在化させる方法と、薬物等を均一に含有させた複数の粘着剤層を積層させる方法をあげることができる。
【0019】すなわち、前者の方法は、溶剤によって分散された薬物および粘着剤層構成成分を含有する混合液を剥離シートまたは支持体上に展延し、粘着剤の乾燥と同時に薬物を移動せしめ、次いで支持体または剥離シートを貼り合わせることにより、粘着剤層中の薬物を局在せしめるものである。この方法においては、薬物を移動せしめるために薬物の物理的性質を利用するが、この性質としては、比重、親油性あるいは親水性等の親和性などを例示することができる。
【0020】上記方法では、薬物等と他の粘着剤構成成分の物理的性質の差により薬物等を局在化させるというメカニズムのため、その製造方法、条件等が限定される。すなわち、粘着剤基剤、薬物およびその他の添加物を配合した粘着剤構成成分を、トルエンやヘキサン等の溶剤に溶解ないし分散させて混合液とした後、これを剥離シート(または支持体)上に展延し、乾燥(溶剤を揮発)と同時に薬物を移動、局在化させ、最後に支持体(または剥離シート)を貼り合わせる溶剤法により好ましい経皮吸収貼付剤が得られる。
【0021】この製造方法においては、混合液の攪拌速度や混合液中の溶剤の割合が上記局在化状態を左右するため、これらの条件を適度にコントロールして局在化を高めることが必要である。
【0022】また、後者の方法としては、次の三方法が挙げられる。
【0023】■ 支持体に、薬物を含まない粘着剤組成物を展延してその上に薬物を含んだ粘着剤組成物を積層し、次いで剥離シートを貼り合わせ、粘着剤層中の薬物を局在せしめた経皮吸収貼付剤を製造する方法。
【0024】■ 剥離シート上に、薬物を含んだ粘着剤組成物を展延し、さらにその上に薬物を含まない粘着剤組成物を展延し、次いで支持体を貼り合わせ、粘着剤層中の薬物を局在せしめた経皮吸収貼付剤を製造する方法。
【0025】■ 剥離シート上に、薬物を含んだ粘着剤組成物を展延したものを調製し、これと、あらかじめ薬物を含まない粘着剤組成物を展延しておいた支持体とを貼り合わせ、粘着剤層中の薬物を局在せしめた経皮吸収貼付剤を製造する方法。
【0026】上記三方法は、いずれも従来の貼付剤を製造する技術において、粘着剤層を一層とせず、積層によって薬物の局在化状態を実現するというものである。
【0027】これらの方法において使用される技術は、粘着剤層を積層すること以外はいずれも周知なものであり、確立されているものである。すなわち、薬物および必要な場合の経皮吸収促進剤は、周知の方法で他の粘着剤成分と混合され、これらが含まれる粘着剤層を得ることができる。また、薬物を含まない粘着剤層も同様周知の方法で得ることができる。そして、これらを積層することにより、粘着剤層中の薬物等が局在化した最終の貼付剤が得られるのである。
【0028】従って、これらの積層による製造には、溶剤法、ホットメルト法のどちらも採用することができる。なお、ホットメルト法とは、粘着基剤成分を加熱溶融させ、均一に混ぜた後展延して製剤を得る方法である。
【0029】上記の積層による本発明の経皮吸収粘着剤の製造に当たっては、各粘着層での主成分となる粘着剤基剤は、同一のものが好ましいが、ある程度の相溶性があり、剥離等するものでなければ異なる粘着剤基剤を使用することもできる。
【0030】なお、本発明の経皮吸収貼付剤において使用される粘着剤基剤としては、非水系粘着剤基剤および水系粘着剤基剤を使用することができるが、局在化のメカニズム上、非水系粘着剤基剤を用いることが望ましい。
【0031】好ましい粘着基剤の例としては、ゴム系エラストマー、アクリル系粘着剤等が挙げられ、具体的なゴム系エラストマーとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、ブチルゴム、ポリイソブチレン等が挙げられ、好ましくはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が挙げられる。
【0032】また、上記のゴム系エラストマーには流動パラフィンなどの可塑剤等を含浸させ、これに粘着付与樹脂や充填剤などを混練して調製することができる。
【0033】本発明の経皮吸収貼付剤において使用できる薬物としては、粘着剤組成物中に相溶せず、微粒子等の固体状ないしは液体状で存在するものであれば特に制約はない。また、種々の薬物について積極的に粘着基剤の種類を適宜選択することで本発明の経皮吸収貼付剤に配合使用することができる。
【0034】具体的な薬物の例としては、1)コルチコステロイド類:例えば、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、パラメタゾン、ベクロメタゾンプロピオネート、フルメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾンバレレート、デキサメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニドアセテート、プロピオン酸クロベタゾールなど、2)消炎鎮痛剤:例えば、インドメタシン、ケトプロフェン、アセトアミノフェノン、メフェナム酸、フルフェナム酸、ジクロフェナック、ジクロフェナックナトリウム、アルクロフェナック、フェルビナク、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、サリチル酸、サリチル酸メチル、1−メントール、カンファー、スリンダック、トルメチンナトリウム、ナプロキセン、フェンブフェンなど、3)催眠鎮静剤:例えば、フェノバルビタール、アモバルビタール、シクロバルビタール、トリアゾラム、ニトラゼパム、フルニトラゼパム、ロラゼパム、ハロペリドールなど、4)精神安定剤:例えば、フルフェナジン、テオリタジン、ジアゼパム、フルジアゼパム、フルニトラゼパム、クロルプロマジンなど、5)抗高血圧剤:例えば、クロニジン、塩酸クロニジン、ピンドロール、プロプラノロール、塩酸プロプラノロール、ブフラノール、インデノロール、ニバジピン、ニモジピン、ロフェジキシン、ニトレンジピン、ニプラジロール、ブクモロール、ニフェジピンなど、6)降圧利尿剤:例えば、ハイドロサイアザイド、ベンドロフルメサイアザイド、シクロベンチアザイドなど、7)抗生物質:例えば、ペニシリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、硫酸フラジオマイシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコールなど、8)麻酔剤:例えば、リドカイン、塩酸ジブカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、アミノ安息香酸エチルなど、9)抗菌性物質:例えば、塩化ベンザルコニウム、ニトロフラゾン、ナイスタチン、アセトスルファミン、クロトリマゾールなど、10)抗真菌剤:例えば、ペンタマイシン、アムホテリシンB、ピロールニトリン、トルナフタート、クロトリマゾールなど、11)ビタミン剤:例えば、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、オクトチアシン、リボフラビン酪酸エステルなど、12)抗癲癇剤:例えば、ニトラゼパム、メプロバメート、クロナゼパムなど、13)冠血管拡張剤:例えば、ニトログリセリン、ニトログリコール、イソソルビドジナイトレート、エリスリトールテトラナイレート、プロパチルナイトレート、ジピリダモール、モリシドミンなど、14)抗ヒスタミン剤:例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ジフェニルイミダゾールなど、15)鎮咳剤:例えば、臭化水素酸デキストロメトルファン、デキストロメトルファン、テルブタリン、硫酸テルブタソン、エフェドリン、塩酸エフェドリン、硫酸サルブタモール、サルブタモール、塩酸イソプロテレノール、イソプロテレノール、硫酸イソプレテレノールなど、16)性ホルモン:例えば、プロゲステロン、テストステロン、エストラジオール、アリルエストレノールなど、17)抗鬱剤:例えば、ドキセピンなど、18)脳循環改善剤:例えば、ヒデルギン、エルゴットアルカロイド、イフェンプロジルなど、19)制吐剤、抗潰瘍剤:例えば、メトクロプラミド、クレボプライド、ドンペリドン、塩酸オンダンセトロン、スコポラミン、臭化水素酸スコポラミンなど、20)その他:例えば、メトトレキサート、ロイコボリン、フェンタニール、ニコチン、デスモプレシン、ジゴキシン、5−フルオロウラシル、メルカプトプリンなどを挙げることができる。
【0035】これらの薬物の本発明貼付剤中での粒子径は、特に制約されるものでないが、少なくとも平均粒子径1μm以上の微粒子であることが好ましい。
【0036】上記薬物のうち好ましいものとしては、メトトレキサートまたはロイコボリンあるいはそれらの誘導体である医薬化合物と有機アミンを組み合わせたものを挙げることができる。
【0037】なお、上記薬物の経皮吸収貼付剤中への配合量は、血中または組織中で効果を奏する濃度、目的とする薬効、薬物の放出時間、同時に使用する経皮吸収促進剤の種類および量等により実験的に定められるべきものである。
【0038】また、二種以上の薬物を配合することも可能である。例えば、積層して製造された経皮吸収貼付剤の場合は、同一粘着剤層に二種以上配合しても、あるいは異なる層に別々に配合しても良い。
【0039】本発明の経皮吸収貼付剤には、さらに経皮吸収促進剤を加えることができる。この経皮吸収促進剤は特に限定されるものではないが、その例として、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、例えばオリーブ油、スクワレン、ラノリン等の油脂類、例えば、尿素、アラントイン等の尿素誘導体、例えばジメチルデシルスルホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、N−メチルピロリドン、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、エトキシイソステアリルアルコール等の極性溶剤、例えばジイソプロピルアジペート、フタル酸エステル、セパシン酸ジエチル等の可塑剤が挙げられ、更に、クロタミトン、サリチル酸、アミノ酸、ニコチン酸ベンジルエステル、ラウリル硫酸ナトウリム、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリル酸エチル、ジイソプロパノールアミン、グリセリンエステル、1−ドデシル−アザシクロペンタン−2−オン、l−メントール、ハッカ油等を挙げることができる。
【0040】これらの経皮吸収促進剤を加えることにより、さらに経皮吸収性が向上するため、貼付剤中の薬物の量を減らしたり、製剤の貼付面積をより小さくすることができ、貼付自体による皮膚への刺激性などの影響を減らすことが可能となる。
【0041】次に、薬物としてメトトレキサートと有機アミンを用いた場合を例に挙げ、本発明の経皮吸収貼付剤について更に具体的に説明を行う。
【0042】メトトレキサートと有機アミンは、極性の高い複合体を形成するため、溶剤法を用いるゴム系粘着剤基剤では、基剤の溶解液と十分に相溶しておらず、展延から乾燥までの間に高い比重のため基剤中で沈降する。したがって、この点を考慮しつつメトトレキサート複合体を含有する粘着剤構成成分を剥離シート上に展延させれば、粘着剤構成成分中のメトトレキサート複合体は、乾燥後の基剤(膏体)の剥離シート側に局在する形となり、その結果、製剤を貼付した時に、貼付面のメトトレキサート複合体濃度は高くなり、高い放出性が得られることになる。
【0043】この局在化においては、メトトレキサート複合体の平均粒子径が大きく影響する。すなわち、メトトレキサート複合体の平均粒子径は、薬物が十分に局在化し、かつ良好な経皮吸収性、薬効及び粘着力が得られる程度がよく、1〜100μm、好ましくは10〜40μmである。この条件を満足させるためには、攪拌速度、溶解液中の固形分濃度等を適度に調整することが必要である。例えば、攪拌速度が速すぎるとメトトレキサート複合体の平均粒子径が小さく、分散度が高くなり過ぎ、局在化が不十分となる。また、遅すぎると複合体以外の粘着剤基剤成分の均一性に問題が出てくる。
【0044】なお、メトトレキサートとアミンを薬物として用い、本発明の経皮吸収貼付剤を用いる場合のメトトレキサートの量は、製剤を皮膚に適用した際に薬物が無駄なく吸収され、かつ良好な薬効を得るために高い吸収性が得られる量が採用され、通常は0.1〜10質量%の範囲である。
【0045】また、メトトレキサートと共に用いられる有機アミンとしては、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミンや、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンといったアルカノールアミンあるいはエチレンジアミン、塩酸トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0046】
【作用】本発明の経皮吸収貼付剤は、従来の薬物を均一に配合した経皮吸収貼付剤とは異なり、粘着剤層中での薬物を局在せしめることによる特異な薬物の放出特性を利用するものである。
【0047】すなわち、薬物の拡散の原理から見ても、薬物を剥離紙側(すなわち皮膚貼付側)に局在化させれば、均一に配合させたものより経皮吸収されるものが多くなり、より高い効果が期待できることはいうまでもない。従って、これを利用すれば、例えば皮膚難吸収性の薬物についても、貼付剤としての実用化が可能となる。
【0048】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。なお、実施例中、部とあるのはすべて重量部を意味する。
【0049】実 施 例 1メトトレキサート経皮吸収貼付剤(1):以下の組成および製法により、経皮吸収貼付剤を製造した。
【0050】
( 組 成 )
メトトレキサート 3.0部 ジイソプロパノールアミン 3.0部 スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 25.0部 (商品名 カリフレックスKX401)
ポリイソブチレン 4.0部 脂環族飽和炭化水素樹脂 20.0部 (商品名 アルコンP100)
流動パラフィン 45.0部【0051】( 製 法 )ジイソプロパノールアミンをエタノール中に溶解し、これにメトトレキサートを添加して混合した。この混合液と、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、脂環族飽和炭化水素及び流動パラフィンのトルエン溶液とを混合し、50rpmの速度で攪拌した。次いで剥離シート上に展延した後乾燥し、ポリエステル支持体を膏体面に貼り合わせて貼付剤を製造した。なお、貼付剤中に含まれるメトトレキサート複合体の平均粒子径は約20μmであり、粘着剤層中で剥離シート側に局在化していた。
【0052】比 較 例 1比較メトトレキサート経皮吸収貼付剤:実施例1と同じ組成にて、以下の製法により、比較メトトレキサート経皮吸収貼付剤を得た。
【0053】( 製 法 )ジイソプロパノールアミンをエタノール中に溶解し、これにメトトレキサートを添加して混合した。この混合液と、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、脂環族飽和炭化水素及び流動パラフィンのトルエン溶液とを混合し、300rpmの速度で攪拌した。次いで剥離シート上に展延した後乾燥し、塩化ビニル支持体を膏体面に貼り合わせて貼付剤を製造した。なお、貼付剤中に含まれるメトトレキサート複合体の平均粒子径は約5μmであり、粘着剤層中での局在化の程度は低かった。
【0054】実 施 例 2メトトレキサート経皮吸収貼付剤(2):以下の組成及び製法により、経皮吸収貼付剤を得た。
【0055】
( 組 成 )
メトトレキサート 3.0部 ジイソプロパノールアミン 3.0部 スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 35.0部 (商品名 カリフレックスKX401)
ポリイソブチレン 7.0部 脂環族飽和炭化水素樹脂 15.0部 (商品名 アルコンP100)
流動パラフィン 17.0部 ミリスチン酸イソプロピル 20.0部【0056】( 製 法 )ジイソプロパノールアミンをエタノール中に溶解し、これにメトトレキサートを添加して混合した。この混合液と、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、脂環族飽和炭化水素、流動パラフィン及びミリスチン酸イソプロピルのトルエン溶液とを混合し、50rpmの速度で攪拌した。次いで剥離シート上に展延した後乾燥し、塩化ビニル支持体を膏体面に貼り合わせて貼付剤を製造した。
【0057】実 施 例 3メトトレキサート経皮吸収貼付剤(3):以下の組成及び製法により、経皮吸収貼付剤を得た。
【0058】
( 組 成 )
< 粘 着 剤 層 A > メトトレキサート 4.0部 ジイソプロパノールアミン 4.0部 スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 40.0部 (商品名 クレイトンD−KX401)
粘着付与剤(ロジンエステル) 10.0部 (商品名 KE−311)
ジブチルヒドロキシトルエン 0.5部 流動パラフィン 40.5部 クロタミトン 1.0部 < 粘 着 剤 層 B > アクリル樹脂系溶剤型感圧接着剤 100.0部【0059】( 製 法 )ジイソプロパノールアミンをエタノール中に溶解し、これにメトトレキサートを添加して混合した。この混合液と、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジンエステル、ジブチルヒドロキシトルエン、流動パラフィン及びクロタミトンのトルエン溶液とを混合し、50rpmの速度で攪拌した。次いで剥離シート上に展延した後乾燥させた。一方、別にアクリル樹脂系溶剤型感圧接着剤を貼り合わせた塩化ビニル支持体を、先の乾燥品と粘着剤面同士を貼り合わせて貼付剤を製造した。
【0060】実 施 例 4メトトレキサート経皮吸収貼付剤(4):以下の組成及び製法により、経皮吸収貼付剤を得た。
【0061】
( 組 成 )
< 粘 着 剤 層 A > メトトレキサート 4.0部 ジイソプロパノールアミン 4.0部 スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 5.0部 (商品名 クレイトンD−KX401)
粘着付与剤(テルペン樹脂系) 44.5部 (商品名 クリアロン)
流動パラフィン 32.0部 ジブチルヒドロキシトルエン 0.5部 ミリスチン酸イソプロピル 10.0部【0062】
< 粘 着 剤 層 B > スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 5.0部 (商品名 クレイトンD−KX401)
粘着付与剤(テルペン樹脂系) 48.5部 (商品名 クリアロン)
流動パラフィン 36.0部 ジブチルヒドロキシトルエン 0.5部 ミリスチン酸イソプロピル 10.0部【0063】( 製 法 )ジイソプロパノールアミンをエタノール中に溶解し、これにメトトレキサートを添加して混合した。この混合液と、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、テルペン系樹脂、ジブチルヒドロキシトルエン、流動パラフィン及びミリスチン酸イソプロピルのトルエン溶液とを混合し、50rpmの速度で攪拌した。次いで剥離シート上に展延した後乾燥させた。一方、別にスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、テルペン系樹脂、ジブチルヒドロキシトルエン、流動パラフィン及びミリスチン酸イソプロピルのトルエン溶液とを混合し、50rpmの速度で攪拌した。次いで剥離シート上に展延した後乾燥させ、ポリエステル不織布支持体を貼り合わせた。このものを、先の乾燥品と粘着剤面同士を貼り合わせて貼付剤を製造した。
【0064】試 験 例 1皮膚透過試験:ヘアレスマウス摘出背部皮膚を用いた皮膚透過試験を行い、実施例1および2並びに比較例1の各製剤のメトトレキサートの皮膚透過性を下記の通り行い比較した。なお、再現性を確認するため、いずれも3回繰り返し製造して試験を行った。
【0065】( 試 験 方 法 )ヘアレスマウス摘出皮膚に各製剤を貼付し、インビトロ膜透過試験器に装着、レセプター液にpH7.4のリン酸塩緩衝液を使用し、レセプター液中へ移行したメトトレキサート量を測定した。その結果を図1に示す。
【0066】( 結 果 )図1より明らかなように、実施例1は比較例1よりも経皮吸収性に優れることが確認され、実施例1の薬物局在化レベルが高いことを示した。さらに、吸収促進剤としてミリスチン酸イソプロピルを添加した実施例2は、ミリスチン酸イソプロピルを添加していない実施例1よりも高い皮膚透過性を示した。なお、実施例1及び比較例1のメトトレキサート複合体の平均粒子径はそれぞれ約20μm、約5μmであるから、低い攪拌速度により粒子径が大きくなり、局在性が高まった結果、皮膚透過性も高まることが示された。
【0067】試 験 例 2経皮吸収試験:ラット(Wistar系、7週齢、雄、200g〜250g)の背部皮膚を除毛し、実施例1及び比較例1の製剤(4cm2)を貼付した。試験開始後一定時間後に採血し、血中濃度を測定した。なお、48時間後に製剤を剥離し、54時間後まで血中濃度を追跡した。その結果を図2に示す。
【0068】( 結 果 )試験例1と同様、図2より明らかなように、局在化レベルの高い実施例1は、比較例1よりも経皮吸収性に優れていることが確認された。
【0069】試 験 例 3放出試験:実施例1の製剤におけるメトトレキサレートの局在状態を確認するために、膏体の剥離シート側からのメトトレキサートの放出性と、膏体の支持体側からのメトトレキサートの放出性を比較した。試験は、インビトロ膜透過試験器に各製剤(貼付剤の剥離シート側膏体面をレセプター液に接触させたものおよび貼付剤の支持体を剥がした後の膏体面をレセプター液に接触したもの)を貼付し、レセプター液にpH7.4のリン酸塩緩衝液を使用し、レセプター液中に放出されたメトトレキサート量を測定することにより行った。この結果を図3に示す。
【0070】( 結 果 )図3より明らかなように、実施例1の貼付剤において、貼付剤の剥離シート側膏体面からは薬物の高い放出が見られるのに対し、貼付剤の支持体側膏体面からはほとんど薬物の放出が見られなかった。このことから、実施例1の製剤では、粘着剤層中において薬物が剥離シート側に局在していることが示された。
【0071】
【発明の効果】本発明の経皮吸収貼付剤は、薬物を粘着剤層中で局在化させることにより、その経皮吸収性ならびにコントロール性を向上させたものである。また、それだけでなく、薬物や経皮吸収剤を貼付剤中に適宜局在化させることにより、これらの放出、作用を調整することができ、均一に配合した貼付剤とは異なった放出パターンを有するものとすることができる。
【0072】従って、本発明は、安定して高い経皮吸収性を有する製剤を提供するだけでなく、薬物の望ましい放出特性を有する貼付剤を開発するための基礎技術としても有用なものである。
【出願人】 【識別番号】390000929
【氏名又は名称】祐徳薬品工業株式会社
【出願日】 平成13年5月11日(2001.5.11)
【代理人】 【識別番号】100086324
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 信夫 (外1名)
【公開番号】 特開2002−332228(P2002−332228A)
【公開日】 平成14年11月22日(2002.11.22)
【出願番号】 特願2001−140951(P2001−140951)