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【発明の名称】 カロテノイド乳化液の製造方法
【発明者】 【氏名】森 俊樹

【氏名】中谷 知成

【氏名】三村 仁之

【氏名】嶋村 重孝

【氏名】緒方 敏夫

【要約】 【課題】カロテノイドを有効成分として有する乳化液を、該カロテノイドの高い全トランス体比率を保ち、生産性よく、簡便に、工業的に有利に製造する方法を提供する。

【解決手段】カロテノイドを高沸有機液体に懸濁させた懸濁液を、120〜500℃に加熱した高沸有機液体と0.05〜10秒間の時間内で混合してカロテノイドを溶解させ、得られる溶液を次いで直ちに乳化剤を含む水溶液中に加えて乳化させることを特徴とするカロテノイド乳化液の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カロテノイドを高沸有機液体に懸濁させた懸濁液を、120〜500℃に加熱した高沸有機液体と0.05〜10秒間の時間内で混合してカロテノイドを溶解させ、得られる溶液を次いで直ちに乳化剤を含む水溶液中に加えて乳化させることを特徴とするカロテノイド乳化液の製造方法。
【請求項2】 高沸有機液体として、炭素数10〜80を有する脂肪酸グリセリド類を用いる請求項1記載の方法。
【請求項3】 請求項1または2の方法で得られたカロテノイド乳化液を噴霧乾燥するか、または非極性溶剤中で攪拌して粒子化した後、濾過、乾燥して得られるカロテノイド粉体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はカロテノイド乳化液の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】カロテノイドは天然に幅広く存在し、それらが有する黄色ないし赤色の特徴を生かして食品の着色剤用途などに幅広く使用されている。また、カロテノイドの種類によってはプロビタミンA活性やガン抑制効果などを示すことが知られており、薬学的見地からも注目を浴びている化合物群である。これらのカロテノイドにはそれらが有している多くの炭素−炭素二重結合に基づく多数の異性体が存在するが、着色剤用途、あるいはプロビタミンA活性剤などの生理活性剤用途として考えた場合、全トランス体比率が高いカロテノイドが好まれる。カロテノイドは常温では結晶状態でかつ高融点であり、水に不溶性で、有機溶剤や油脂に対する溶解度も極めて低い上、熱により異性化を起こしやすく、また酸素、光によって容易に変質しやすい化合物である。よって、カロテノイドを食品の着色剤用途として、あるいは生理活性剤用途として用いる場合、安定でかつ利用し易い形態に加工する必要がある。その一つの方法として、油脂にカロテノイドを混合して水溶液中で乳化してカロテノイドの乳化液を調製する方法がある。
【0003】カロテノイドの乳化液を製造する方法としては、(1)約20〜40℃で液状の食用油中のカロテノイドの過飽和溶液を100〜160℃で製造し、この過飽和溶液を水性ゼラチン物質中に乳化してカロテノイド製剤を製造する方法(USP2861891参照)(2)トランス体β−カロチン、油脂類およびリモネンを加熱溶解した後、リモネンを回収し、得られたトランス体β−カロチン溶解油脂層を乳化剤の存在下に乳化液とし、トランス体高含有β−カロチン製剤を製造する方法(特開平8−119933号公報参照)、(3)高沸点油中のカロテノイドの懸濁物を最大30秒の間過熱蒸気と接触させ、得られる混合物をコロイドの水溶液中で乳化する方法(特開平3−66615号公報参照)、(4)カロテノイドを揮発性の水と混合しうる有機溶剤に、50〜240℃の温度でカロテノイドに対し1.5〜20倍重量の食用油及び乳化剤と共に急速に溶解し、これを直ちに保護コロイドの水溶液と0〜50℃の温度で混合することにより、親水性溶剤成分を水相に移行させ、その際カロテノイドを溶解含有する疎水性油相を微細分散相となす方法(特開昭63−196242号公報参照)、(5)カロテノイドを水非混和性有機溶媒中に懸濁させた懸濁液を滞留時間5秒未満で熱交換器に供給して該懸濁液を100〜250℃に加熱し、この溶液を20〜100℃の範囲の温度にて膨潤性コロイドの水性溶液と急速に混合した後、有機溶媒を除去する方法(特開2000−186224号公報参照)が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記(1)の方法は、得られるカロテノイド乾燥粉末の可視吸収スペクトルが低くなり、例えば食品の着色の場合には、要求する色濃度値を得るためにかかるカロテノイド乾燥粉末の使用量を多くしなければならず、経済的に不利である。(2)の方法は、トランス体β−カロチンを加熱して溶解させる際にトランス体β−カロチンの異性化を抑制する観点からリモネンを用いているが、かかるリモネンは油脂類と同量またはそれ以上の量を用いなければならない上、最終製品には不要であるため、これを除去する工程が必須であるという問題点を有する。(3)の方法は、高温高圧である過熱蒸気を取り扱うために高価な装置を必要とする上、コロイドの水溶液に含まれる水以外にも過熱蒸気に由来する水が得られる乳化液に加わり、該乳化液からカロテノイド粉末を製造しようとした場合、多量の水を除去しなければならないという問題点を有する。また、(4)および(5)の方法においては、用いている有機溶剤は最終製品には不要であるため、除去しなければならない上、有機溶剤を多量に用いなければならず生産性が低いという問題点があり、工業的に有利とは言い難い。しかして、本発明の目的は、カロテノイドを有効成分として有する乳化液を、該カロテノイドの高い全トランス体比率を保ち、生産性よく、簡便に、工業的に有利に製造し得る方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的を達成するため、鋭意検討を行った。その結果、カロテノイドを高沸有機液体中に懸濁させた懸濁液に熱を加えてカロテノイドを溶解させる工程において、該懸濁液に、特定の温度範囲に加熱した高沸有機液体(好ましくは該懸濁液を調製する際と同種類の高沸有機液体)を短時間に混合させる方法を用いることで、該懸濁液に短時間で多量の熱量を加えることができ、カロテノイドの異性化を抑えてカロテノイドを高沸有機液体へ溶解でき、かかる溶液を直ちに乳化させる方法を用いることで、最終製品に不要な有機溶剤や多量な水を含まないカロテノイド乳化液を製造できることを見出した。また、かかる方法で得られる乳化液を噴霧乾燥、または非極性溶剤中で攪拌して粒子化した後、濾過、乾燥して得られるカロテノイド粉体は、食品の着色剤用途として、あるいは生理活性剤用途として用いることができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】すなわち、本発明は、■カロテノイドを高沸有機液体に懸濁させた懸濁液(以下、単に「カロテノイド懸濁液」と略称することがある)を、120〜500℃に加熱した高沸有機液体と0.05〜10秒間の時間内で混合させることによってカロテノイドを溶解させ、得られる溶液を次いで直ちに乳化剤を含む水溶液中に加えて乳化させることを特徴とするカロテノイド乳化液の製造方法、および■得られたカロテノイド乳化液を噴霧乾燥するか、または非極性溶剤中で攪拌して粒子化した後、濾過、乾燥して得られるカロテノイド粉体、に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明に用いるカロテノイドとしては、β−カロチン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、アポカロテナール、シトラナキサンチン、クリプトキサンチンなどを例示することができる。カロテノイドの結晶の大きさは、カロテノイドを高沸有機液体へ円滑に溶解させる観点からは、粒径として50μm以下の結晶を用いるのが好ましく、15μm以下の結晶を用いるのがより好ましい。
【0008】本明細書の範囲において、“高沸有機液体”という用語は、炭素数10〜40のパラフィン類;炭素数10〜50のミルセン、テルピン油、スクワランなどのテルペン化合物;炭素数10〜80を有する脂肪酸グリセリド類などを表し、炭素数10〜80を有する脂肪酸グリセリド類を特に意味することができる。かかる脂肪酸グリセリド類としては、例えば、トリカプリル酸グリセリド、トリラウリン酸グリセリド、トリミリスチン酸グリセリド、トリパルミチン酸グリセリド、トリステアリン酸グリセリド、トリオレイン酸グリセリド、トリリノール酸グリセリド、トリリノレン酸グリセリドなどのトリ脂肪酸グリセリド、また、トリ脂肪酸グリセリドから1つ脂肪酸が外れた形である、ジカプリル酸グリセリド、ジラウリン酸グリセリド、ジミリスチン酸グリセリド、ジパルミチン酸グリセリド、ジステアリン酸グリセリド、ジオレイン酸グリセリド、ジリノール酸グリセリド、ジリノレン酸グリセリドなどのジ脂肪酸グリセリド、さらにトリ脂肪酸グリセリドから二つ脂肪酸が外れた形である、モノカプリル酸グリセリド、モノラウリン酸グリセリド、モノミリスチン酸グリセリド、モノパルミチン酸グリセリド、モノステアリン酸グリセリド、モノオレイン酸グリセリド、モノリノール酸グリセリド、モノリノレン酸グリセリドなどのモノ脂肪酸グリセリドを例示することができる。これら脂肪族グリセリドは単独で使用しても混合して使用してもよく、上記した脂肪酸グリセリド類の混合物である、一般に流通している大豆油、コーン油、ピーナッツ油などの食用油を本発明に使用しても何ら差し支えない。なお、トリ脂肪酸グリセリド、ジ脂肪酸グリセリドおよびモノ脂肪酸グリセリドの任意の割合の混合物も、本明細書で意味する高沸有機液体に包含される。かかる高沸有機液体は一般的に少なくとも常圧で150℃以上の沸点を有し、本発明において使用するカロテノイドのための溶媒/担体物質として働く。
【0009】カロテノイドは酸素に対して敏感であるため、カロテノイドを高沸有機液体中に懸濁させた懸濁液を調製する際に、抗酸化剤を添加するのが好ましい。抗酸化剤としては、例えばt−ブチルヒドロキシアニソール、t−ブチルヒドロキシトルエン、ビタミンEなどが挙げられるが、特にビタミンEの使用が好ましい。これらの抗酸化剤は上記の高沸有機液体と任意の割合で混合して使用することができるが、通常、使用するカロテノイドに対して0〜10質量倍の範囲で用いるのが好ましい。
【0010】本発明では、まず、カロテノイドを高沸有機液体中に懸濁させた懸濁液を、加熱した高沸有機液体と混合させることによって加熱してカロテノイドを溶解させる。
【0011】カロテノイド懸濁液を調製する際のカロテノイドと高沸有機液体との割合に特に制限はないが、通常、カロテノイドの含量が該懸濁液に対して0.5〜90質量%の範囲であるのが好ましく、1〜40質量%の範囲であるのがより好ましい。
【0012】カロテノイド懸濁液に混合する加熱した高沸有機液体は、該懸濁液を調製する際に用いる高沸有機液体と同一のものでも異なる種類のものでも使用可能であるが、該懸濁液を調製する際と同種類の高沸有機液体を用いるのが好ましい。
【0013】カロテノイド懸濁液に混合する、加熱した高沸有機液体の加熱温度は120〜500℃の範囲であり、150〜500℃の範囲であるのが好ましく、180〜450℃の範囲であるのがより好ましい。かかる温度が120℃未満の場合にはカロテノイドを高沸有機液体に溶解させるだけの十分な熱量を供給することができず、一方500℃を越える場合には、両者を混合させたときにカロテノイドが熱により異性化する量が増大する。
【0014】カロテノイド懸濁液に混合する加熱した高沸有機液体の使用量には厳密な意味での制限はなく、該カロテノイド懸濁液中のカロテノイドの含有量、加熱した高沸有機液体の加熱温度などによっても異なるが、得られるカロテノイド乳化液中のカロテノイド含有量の実用的な範囲や、混合によりカロテノイドを確実に溶解させ得る範囲を考慮すると、通常、加熱した高沸有機液体の量とカロテノイド懸濁液を構成する高沸有機液体の量との和として、カロテノイド懸濁液中に含有されるカロテノイドに対して1〜20質量倍の範囲内であるのが好ましく、2〜10質量倍の範囲内であるのがより好ましい。
【0015】なお、カロテノイド懸濁液に混合する加熱した高沸有機液体の加熱手段としては、ガスバーナー、電気ヒーター、電磁誘導などを用いる方法、通常の熱媒オイルなどの有機熱媒体、HTS(Heat Transfer Salt:亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの混合物)などの無機熱媒体を用いて加熱する方法などの通常の加熱手段を採用できる。
【0016】なお、カロテノイド懸濁液は、加熱した高沸有機液体と混合させるのに先立ち、カロテノイドが異性化しない温度で予め加熱していてもよい。カロテノイド懸濁液を予め加熱する場合には、かかる加熱温度は通常40〜140℃の範囲であるのが好ましく、60〜120℃の範囲であるのがより好ましい。
【0017】カロテノイド懸濁液と加熱した高沸有機液体とを混合させる時間は重要であり、両者が接触した瞬間(混合開始時)から、得られるカロテノイドが高沸有機液体に溶解した状態の溶液を、後述する乳化液を含む水溶液中に加えて乳化させるまでの時間は、0.05〜10秒以内である必要があり、0.05〜5秒の範囲であるのが好ましい。カロテノイド懸濁液と加熱した高沸有機液体とを混合させる時間が0.05秒よりも短い場合には、カロテノイドを高沸有機液体に溶解させるだけの十分な熱量を供給することができず、一方10秒を越える場合にはカロテノイドの熱による劣化および異性化が顕在化する。
【0018】カロテノイド懸濁液と加熱された高沸有機液体を混合させる手段は特に限定されないが、かかる混合により得られるカロテノイドが高沸有機液体に溶解した状態の溶液を、次いで直ちに乳化剤を含む水溶液に加えて乳化させる操作を行う観点からは、例えば両者を同一の導管に供給して混合させる方法、両者をインラインミキサーなどの混合機能を有した管に供給して混合させる方法、両者を攪拌装置を有する容器中に連続的に供給して上記の混合時間内で滞留させて連続的に混合させる方法などが好ましい。
【0019】上記したとおり、カロテノイド懸濁液と、加熱した高沸有機液体を混合させることで、カロテノイドが高沸有機液体に溶解した状態の溶液を調製することができ、かかる溶液は、次いで直ちに乳化剤を含む水溶液に加えて乳化させる工程に付す。
【0020】乳化剤としては、高沸有機液体と水を乳化させることが可能であれば特に制限はなく、例えばアスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸モノオレートなどのアスコルビン酸脂肪酸エステル、ショ糖パルミテート、ショ糖モノオレートなどのショ糖脂肪酸エステル、ソルビタンパルミテート、ソルビタンモノオレートなどのソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、アスコルビン酸パルミテートなどのアスコルビン酸脂肪酸エステルを用いるのが特に好ましい。乳化剤は水に溶解させて用いるが、アスコルビン酸脂肪酸エステルを用いる場合には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属化合物をさらに添加して溶解させてもよい。
【0021】また、製造するカロテノイド乳化液の安定性を向上させる観点から、乳化剤を含む水溶液に、ゼラチン、糖、アラビアゴム、でんぷんなどをさらに添加してもよい。
【0022】乳化剤を含む水溶液を構成する乳化剤と水の使用量比には特に制限はない。また、乳化剤を含む水溶液の使用量は、カロテノイドを含む高沸有機液体を乳化できる量、すなわち安定なO/Wエマルジョンが形成できる程度であれば特に制限はないが、通常、カロテノイドが高沸有機液体に溶解した状態の溶液に対して、乳化剤が0.1〜2質量倍および水が0.1〜1000質量倍となる範囲であるのが好ましい。
【0023】カロテノイドが高沸有機液体に溶解した状態の溶液を、乳化剤を含む水溶液に加えて乳化させる際の温度は90℃以下に保つのが好ましく、0〜90℃の範囲であるのがより好ましく、20〜80℃の範囲であるのが特に好ましい。乳化させる際の温度が90℃より高い場合には、水が沸騰状態に近くなり、一方0℃よりも低い場合には、水が凍結状態に近くなるので、どちらの場合も安定なエマルジョンの形成を妨げるため、良好なカロテノイド乳化液を得ることができない。
【0024】カロテノイドが高沸有機液体に溶解した状態の溶液を乳化剤を含む水溶液に加えて乳化させる工程は、例えば攪拌型の乳化機を装着した容器に乳化剤を含む水溶液を予め仕込んでおき、ここにカロテノイドが高沸有機液体に溶解した状態の溶液を間欠的にまたは連続的に加えて乳化させることで行うことができる。また、カロテノイドが高沸有機液体に溶解した状態の溶液と、乳化剤を含む水溶液を一緒にインラインミキサーへ導入することで乳化させることもできる。
【0025】本発明の方法は、カロテノイドを高沸有機液体中に懸濁させた懸濁液に、加熱した高沸有機液体を混合させることによって加熱してカロテノイドを溶解させ、かかる操作で得られる、カロテノイドが高沸有機液体に溶解した状態の溶液を、乳化剤を含む水溶液に加えて乳化させる工程までが一連の操作であり、簡便な操作でカロテノイド乳化液を得ることができる。本発明の方法は、バッチ式でも連続式でも実施することができる。
【0026】得られたカロテノイド乳化液はそのまま食品着色剤、飼料添加剤の用途に使用することができる。また、かかるカロテノイド乳化液を噴霧乾燥するか、またはかかるカロテノイド乳化液をヘキサン、トルエン、パラフィンなどの非極性溶剤中で攪拌して粒子化し、濾過後、乾燥することによって、カロテノイドを含む粉体を得ることができ、かかるカロテノイド粉体は食品の着色剤用途、生理活性剤用途として用いることができる。
【0027】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0028】図1に、本発明の製造方法の一実施態様を示す。タンク1に高沸有機液体を入れ、タンク6にはカロテノイド懸濁液を仕込む。タンク1から定量送液ポンプ2を介して、熱媒を入れた容器3中に浸された導管5へ高沸有機液体を送液する。一方、タンク6から定量送液ポンプ7を介し導管8を経由して送液されるカロテノイド懸濁液は、前記で加熱された高沸有機液体とC点で合流する。両者は導管9内で混合されてカロテノイドが高沸有機液体に溶解した状態の溶液となり、かかる溶液は、乳化機11を備え、乳化剤を含む水溶液を予め仕込んだ容器12に間欠的または連続的にフィードされる。10はカロテノイドが高沸有機液体に溶解した状態の溶液を容器12または受器13へフィードするための切替え機で、Kはコックである。
【0029】実施例1 β−カロチン乳化液の製造図1において、導管5として、内径2mm、外径3mm、熱媒に浸した部分AからBまでの長さが2.2mの緩やかなコイル形状、BからCまでの長さは0.2mのステンレス製導管を用いた。この導管5は容器3中の387℃に加熱された熱媒で加熱した。導管8として、内径6mm、外径8mm、ポンプ7からCまでの長さが0.6mで、Cから0.1mの位置にコックKが取り付けられているステンレス製導管を用いた。また、導管9として、内径3mm、外径4mm、Cから切替え機10までの長さが1.5mのステンレス製導管を用いた。水200gにアスコルビン酸パルミテート3.0g、1規定水酸化ナトリウム水溶液9.0g、ゼラチン4gおよび砂糖4gを溶解させて調製した溶液を容器12(容量500ml)に入れて50℃に加温し、乳化機11(クリアミキサー乳化機)を用いて17000回転/分で攪拌した。タンク1にコーン油を入れ、タンク6にはβ−カロチン300g(98%純度、全トランス体比率99%)を、コーン油1100gおよびモノオレイン100gに懸濁させて調製した懸濁液を入れ、80℃に加温した。コックKを閉とし、切替え機10を容器13側にして、タンク1のコーン油を定量送液ポンプ2で1.7リットル/分にて送液を開始し、切替え機10の位置にて、ノズル(長さ5cm)出口で吐出されるコーン油の温度が190℃であることを確認した。次に、定量送液ポンプ7を送液量0.8リットル/分、送出圧力1.21MPa(12kg/cm;ゲージ圧)で作動させて、同時にコックKを開とし、切替え機10のノズルからβ−カロチンが溶解した状態の赤色の溶液が吐出されはじめたのを確認して、切替え機10を容器12側へ2秒間切り替えてβ−カロチンが溶解した状態の溶液を導入した。なお、この時の吐出溶液のノズル出口温度は149℃であった。その後、再び切替え機10を容器13側へ戻し、定量送液ポンプ2および7を停止した。β−カロチンが溶解した状態の溶液を導入した後、容器12中での乳化操作を6分間行って、β−カロチン乳化液を得た。なお、β−カロチンが溶解した状態の溶液を導入した直後の容器12中の溶液の温度は53℃であり、乳化操作を6分間行った後の容器12中の乳化液の温度は58℃であった。得られた乳化液を分析したところ、この乳化液にはβ−カロチンが1.7%含まれており、その全トランス体比率は98.5%であった。
【0030】実施例2 カンタキサンチン乳化液の製造実施例1と同様な装置を用い、容器3中の熱媒を410℃に加熱した。水200gにアスコルビン酸パルミテート3.0g、1規定水酸化ナトリウム水溶液9.0g、ゼラチン4gおよび砂糖4gを溶解させて調製した溶液を容器12(容量500ml)に入れて50℃に加温し、乳化機11(クリアミキサー乳化機)を用いて17000回転/分で攪拌した。タンク1にコーン油を入れ、タンク6にはカンタキサンチン300g(97%純度、全トランス体比率96%)を、コーン油1100gおよびモノオレイン100gに懸濁させて調製した懸濁液を入れ、80℃に加温した。コックKを閉とし、切替え機10を容器13側にして、タンク1のコーン油を定量送液ポンプ2で1.7リットル/分にて送液を開始し、切替え機10の位置にて、ノズル出口で吐出されるコーン油の温度が193℃であることを確認した。次に、定量送液ポンプ7を送液量0.26リットル/分、送出圧力1.21MPa(12kg/cm;ゲージ圧)で作動させて、同時にコックKを開とし、切替え機10のノズルからカンタキサンチンが溶解した状態の赤色の溶液が吐出されはじめたのを確認して、切替え機10を容器12側へ2秒間切り替えてカンタキサンチンが溶解した状態の溶液を導入した。なお、この時の吐出溶液のノズル出口温度は178℃であった。その後再び切替え機10を容器13側へ戻し、定量送液ポンプ2および7を停止した。カンタキサンチンが溶解した状態の溶液を導入した後、容器12中での乳化操作を6分間行ってカンタキサンチン乳化液を得た。なお、カンタキサンチンが溶解した状態の溶液を導入した直後の容器12中の溶液の温度は57℃であり、乳化操作を6分間行った後の容器12中の乳化液の温度は63℃であった。得られた乳化液を分析したところ、この乳化液にはカンタキサンチンが0.61%含まれており、その全トランス体比率は69.5%であった。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、カロテノイドを有効成分として有する乳化液を、該カロテノイドの高い全トランス体比率を保ち、生産性よく、簡便に、工業的に有利に製造することができる。
【0032】
【出願人】 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【出願日】 平成14年1月22日(2002.1.22)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−316924(P2002−316924A)
【公開日】 平成14年10月31日(2002.10.31)
【出願番号】 特願2002−13195(P2002−13195)