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【発明の名称】 歯科用硬化性組成物
【発明者】 【氏名】山川 潤一郎

【氏名】風間 秀樹

【要約】 【課題】硬化前ペーストの充填操作性、硬化体の表面滑沢性、耐磨耗性に優れ、透明性が高く無色に近い色調を容易に調整できる歯科用複合修復材となり得る歯科用重合硬化性組成物を提供する。

【解決手段】有機無機複合フィラー及び重合性単量体を含むモノマー組成物を含有してなる歯科用硬化性組成物において、有機無機複合フィラー中に2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)等の蛍光増白剤を添加する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機無機複合フィラー及び重合性単量体を含有してなる歯科用硬化性組成物において、当該有機無機複合フィラーが蛍光増白剤を含有することを特徴とする歯科用硬化性組成物。
【請求項2】 平均粒径0.001〜1μmの無機粒子及び/又は該無機粒子の凝集体からなる無機フィラーを含有することを特徴とする請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項3】 その硬化体の下記式で定義される黄色度(YI)が20以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用硬化性組成物。
黄色度(YI)=100×(1.28X−1.06Z)/Y(式中、X、Y、およびZは、厚さ2mmの試料を白背景に密着させ、色差計で測定したときの三刺激値である。)
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯科用修復材として好適に使用できる歯科用硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】歯科用複合修復材は、天然歯牙色に近い色調を付与できることや操作が容易なことから、治療した歯牙を修復するための材料として急速に普及し、近年においては、前歯の治療の大部分が複合修復材料によって行われているばかりでなく、高い咬合圧のかかる臼歯部等の修復にも使用されるようになってきている。
【0003】歯科用複合修復材は、一般に重合性単量体(モノマー)、フィラー、及び重合触媒から主に構成されるが、硬化前ペーストの操作性、並びに硬化体の審美性及び機械的物性等は、使用するフィラーの種類、形状、粒子径、及び充填量等によって大きく左右される。
【0004】例えば、従来、粒径が数μmを超える比較的大きな無機フィラーを配合した歯科用複合修復材が知られていたが、該歯科用複合修復材は、硬化体の機械的強度が高いという特徴を持つものの、研磨性や耐摩耗性が悪く、臨床的に天然歯と同様な艶のある仕上がり面を得られないといった問題があった。
【0005】この問題点を解決するために、平均粒径が1μm以下の無機粒子、特にその形状が丸みを帯びた無機粒子及び/又はその凝集体からなる無機フィラーを用いることが提案され、表面滑沢性は大きく改善されている。しかしながら、このような微小フィラーを用いた歯科用複合修復材は、微小フィラーの比表面積が非常に大きいために硬化前ペーストの粘稠度が高くなってしまい、ペーストの粘稠度を歯科医が口腔内で使用可能なレベルに調整するためにはモノマーの配合量を多くせざるを得ず、操作性の低下や重合に伴う収縮量の増加、さらには機械的強度の低下等を招いてしまうといった問題があった。
【0006】これらの問題を解決する方法として、例えば特開昭54−107187号に開示されているような有機無機複合フィラーを用いる方法が提案されている。この有機無機複合フィラーは、微細な無機粉体と重合性単量体とを予め混合して重合硬化させた後に、数十〜数百μm程度の粒径に粉砕して得られるものであり、該有機無機複合フィラーを使用することにより、微細フィラーを用いたときの特徴である優れた表面滑沢性や耐磨耗性を実現しながら、上記したような操作性や重合収縮の問題をある程度解決することが可能となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような有機無機複合フィラーは、これを得るための重合時や粉砕時に着色してそれ自体が黄色味を帯びることがあった。このため、歯科用修復材料として適用した場合に、特に無色で透明な色調を持つ歯の先端部やブリーチングを行った歯に対して用いる場合、その色調を再現するのが非常に困難であるという問題があった。
【0008】酸化チタン等の白色顔料を添加することにより外観を白く見せることはできるが、透明性が著しく低下するため、白色顔料の添加により上記のような問題を解決することはできない。また、有機無機複合フィラーを過酸化物等の脱色試薬によって脱色する方法が知られているが、一般的な脱色試薬は取扱い上危険なものが多いうえ製造上煩雑な脱色工程を増やさなければならず、またその脱色効果も十分なものでなかった。
【0009】そこで本発明は、硬化前ペーストの操作性に優れ、その硬化体が優れた表面滑沢性、耐磨耗性を有し、さらに透明性が高く無色に近い色調を容易に調整可能な歯科用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題を解決するために種々検討を行った。その結果、紙や布等に一般的に用いられている蛍光増白剤を配合することによって、歯科用修復材においても、黄色味を目立たなくすることができること、更にこのような黄色味低下の効果は、蛍光増白剤をペースト中に配合した場合にはさほど高くないが、有機無機複合フィラーに予め配合した場合には顕著であり、透明性が高く無色に近い色調を容易に調整できるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】即ち、本発明は、有機無機複合フィラー及び重合性単量体を含有してなる歯科用硬化性組成物において、当該有機無機複合フィラーが蛍光増白剤を含有することを特徴とする歯科用硬化性組成物である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の歯科用硬化性組成物は、有機無機複合フィラー(以下、単に複合フィラーともいう。)、及び重合性単量体を含有してなる。ここで、複合フィラーとは、ポリマーと無機粒子との複合フィラーを意味する。
【0013】本発明の最大の特徴は、蛍光増白剤を複合フィラーに配合して使用する点にあり、これによって蛍光増白剤をペースト中に添加するより遥かに高い増白効果を得ることができる。ここで蛍光増白剤とは、紫外線を吸収し可視部短波長側周辺に紫青〜青緑の蛍光を発する薬剤を意味し、一般的に蛍光顔料と呼ばれる薬剤と必ずしも一致しない。該蛍光増白剤を複合フィラーに配合しない場合には、黄色味が十分に少なく無色で透明な歯科用複合修復材を得ることが困難である。
【0014】歯科用複合修復材の黄色味を評価するパラメータとしては、黄色度が一般的に用いられる。なお、ここでいう黄色度とは、厚さ2mmの歯科用複合修復材の硬化体を試料とし、これを白背景に密着させ、色差計でXYZ表色系の三刺激値を測定したときに得られる測定値に基づいて下記式に従って算出される値を意味する。
【0015】黄色度(YI)=100×(1.28X−1.06Z)/Y(X,Y,Z:三刺激値)
歯牙先端部やブリーチングされた歯のような無色に近い色調を再現するためには、上記の方法で算出した黄色度の値が20以下であることが好ましく、0〜15であることが更に好ましく、0〜10であることが最も好ましい。
【0016】本発明の歯科用硬化性組成物で使用する蛍光増白剤としては、公知のものが特に制限なく使用できる。例としては、ピラゾリン、スチルベン、トリアジン、チアゾール、ベンゾオキサゾール、キサントン、トリアゾール、オキサゾール、チオフェン、及びクマリンの各誘導体が挙げられ、具体的化合物名を例示すると、4,4'-ビス(ジフェニルトリアジニル)スチルベン、スチルベニル-ナフトトリアゾール、2,2'-(チオフェンジイル)-ビス(tert-ブチル-ベンゾオキサゾール)、2-(スチルビル-4'')-(ナフト-1',2',4,5)-1,2,3-トリアゾール-2''-スルホン酸フェニルエステル、7-(4'-クロロ-6''-ジエチルアミノ-1',3',5'-トリアジン-4'-イル)-アミノ-3-フェニル-クマリン、2,5-ビス(6,6'-ビス(tert-ブチル)-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン、2,5-チオフェンジイル(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾキサゾール)、4,4'-ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン、ジベンズオキサゾリルエチレン、及びN-メチル-5-メトキシナフタールイミド等が挙げられる。
【0017】これら蛍光増白剤は単独で用いても、2種以上を混合して使用してもよい。蛍光増白剤の添加量は目的に応じて選択すればよいが、複合フィラーを製造する際に用いられる重合性単量体(以下、複合フィラー原料モノマーともいう。)100重量部に対して、通常0.0001〜5重量部の割合で使用され、0.001〜0.5重量部であることがより好適であり、0.005〜0.05重量部の割合で使用されるのが最も好適である。蛍光増白剤の上記添加量が5重量部を越える場合は、歯科用複合修復材としての諸物性の低下を招く恐れがある。また、上記添加量が0.0001重量部に満たない場合は、本発明の効果が十分に得られない場合がある。
【0018】本発明の歯科用硬化性組成物で使用する複合フィラーは、蛍光増白剤が配合されてなるものであれば、如何なる方法で製造されたものでも使用できるが、製造の容易さの観点から、無機粉体(以下、複合フィラー原料無機フィラーともいう。)、複合フィラー原料モノマー、及び蛍光増白剤を所定量で混合機等にて配合し、加熱あるいは光照射等の方法で重合させた後、粉砕することによって得られたものを使用するのが好適である。このとき、粉砕方法としては、振動ボールミルやジェットミル等が好適に使用できる。さらに、フルイ、エアー分級機、あるいは水ひ分級等による分級工程を行うことによって、目的とする粒度分布の複合フィラーを得ることができる。本発明で使用する複合フィラーにおいては、硬化体の機械的強度や硬化性ペーストの操作性の観点からその平均粒径は2〜100μm、特に5〜20μmであるのが好適である。
【0019】複合フィラーの原料としての無機粉体(複合フィラー原料無機フィラー)は、公知のものが何ら制限なく使用可能である。該複合フィラー原料無機フィラーの材質は特に限定されず、非晶質シリカ、シリカジルコニア、シリカチタニア、シリカチタニア酸化バリウム、石英、アルミナ等の無機酸化物等の無機化合物が使用できる。また、これら無機化合物は、高温で焼成する際に緻密な無機酸化物を得易くする等の目的で、少量の周期律表第I族の金属酸化物を無機酸化物中に存在させた複合酸化物として用いることもできる。無機フィラーの材質としては、X線造影性を有し、より耐摩耗性に優れた硬化体が得られることから、シリカとジルコニアを主な構成成分とする複合酸化物が特に好適に用いられる。
【0020】本発明の複合フィラー原料無機フィラーの形状は特に制限されないが、高い表面滑沢性や耐磨耗性を得るために、形状が球状若しくは略球状の無機粉体及び/又はその凝集体を用いることが好適である。なお、ここでいう略球状とは、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略す)でフィラーの写真を撮り、その単位視野内に観察される粒子が丸みを帯びており、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で除した平均均斉度が0.6以上であることを意味する。
【0021】これら球状及び略球状の無機粉体の製造方法は特に限定されるものではないが、工業的にはいわゆるゾルゲル法によって製造するのが一般的である。即ち、加水分解可能な有機ケイ素化合物、あるいはこれに更に加水分解可能な周期律表第I、II、III、及び第IV族の金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する例えばアルコキサイド等の加水分解可能な有機金属化合物を加えた混合溶液を、これらの有機金属化合物は溶解するが反応生成物は実質的に溶解しないアルカリ性溶媒中に添加し、加水分解・縮合反応を行い反応生成物を析出させ、析出物を乾燥する方法が好適に採用される。また、この様な方法で得られた無機酸化物は、表面安定性を保持するため乾燥後500〜1000℃の温度で焼成されていてもよい。焼成に際しては、無機酸化物の一部が凝集する場合もあるため、ジェットミル、振動ボールミル等を用いることにより凝集粒子を解きほぐし、粒度を調整してから使用するのが好ましい。このような操作を行なっても凝集粒子を完全に凝集前の状態にするのは困難であり、上記のような熱処理を行なった場合には、一次粒子(球状若しくは略球状の無機粉体)とその凝集体とが混合したフィラーが得られる。
【0022】本発明の複合フィラー原料無機フィラーの粒径等は特に制限されないが、高い表面滑沢性や耐摩耗性、並びに高い機械的強度を得るためには、平均粒径0.001〜1μmの無機粒子及び/又は該無機粒子の凝集体からなる無機フィラーを使用するのが好適である。また、複合フィラー原料無機フィラーの全体としての平均粒子径は、平均粒径が0.001〜100μm、特に0.05〜50μmの範囲であることが好適である。なお、該無機フィラーにおいては、粒子径の大きな凝集体を含んでいても該凝集体は平均粒径0.001〜1μmの無機粒子の凝集体であるので、粒子径の大きな独立粒子を添加した場合と異なり、重合硬化後の滑沢性及び耐摩耗性は低下しない。
【0023】さらにこれら複合フィラー原料無機フィラーにおいては、修復後の硬化体の表面滑沢性及び耐摩耗性の観点から、前記無機粒子(一次粒子)は、その粒子径の変動係数が0.3以内にあるような単分散性に優れたものであるのが好ましい。
【0024】複合フィラー原料無機フィラーは、複合フィラー原料モノマーへの分散性を改良する目的でその表面を疎水化処理してから用いることが好ましい。かかる疎水化処理は特に限定されるものではなく、公知の方法が制限なく採用される。代表的な疎水化処理方法を具体的に例示すれば、複合フィラー原料無機フィラー及び疎水化剤としてシランカップリング剤、例えばγ−メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の有機珪素化合物を、適当な溶媒中でボールミル等を用いて分散混合させ、エバポレーターやスプレードライで乾燥した後、50〜150℃に加熱する方法や、複合フィラー原料無機フィラー及び上記疎水化剤をアルコール等の溶剤中で数時間程度加熱還留する方法等が挙げられる。この時使用される上記疎水化剤の量に特に制限はなく、得られる複合修復材の機械的物性等を予め実験で確認したうえで最適値を決定すればよいが、好適な範囲を例示すれば、無機フィラー100重量部に対して、上記疎水化剤1〜10重量部の範囲である。
【0025】なお、これら複合フィラー原料無機フィラーは粒度分布や材質が異なるものを複数種類混合して用いることもできる。
【0026】また、複合フィラー原料モノマーについても歯科用複合修復材として使用可能な公知の重合性単量体がなんら制限なく使用可能である。好適に使用できる複合フィラー原料モノマーを例示すれば、(メタ)アクリロイル基を有する重合可能なモノマーが挙げられ、このような重合性単量体の具体例としては下記A〜Dに示される各モノマーが挙げられる。
【0027】A 単官能性ビニルモノマーメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;あるいはアクリル酸、メタクリル酸、p−メタクリロイルオキシ安息香酸、N−2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−N−フェニルグリシン、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、及びその無水物、6−メタクリロイルオキシヘキサメチレンマロン酸、10−メタクリロイルオキシデカメチレンマロン酸、2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、10−メタクリロイルオキシデカメチレンジハイドロジェンフォスフェート、2−ヒドロキシエチルハイドロジェンフェニルフォスフォネート等。
【0028】B 二官能性ビニルモノマーB−1 芳香族化合物系のもの2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパンおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
【0029】B−2 脂肪族化合物系のものエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト;無水アクリル酸、無水メタクリル酸、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル、ジ(2−メタクリロイルオキシプロピル)フォスフェート等。
【0030】C 三官能性ビニルモノマートリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
【0031】D 四官能性ビニルモノマーペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
【0032】これら重合性単量体は、単独で使用しても、異なる種類のものを混合して用いてもよい。
【0033】複合フィラー原料組成物における複合フィラー原料無機フィラーと複合フィラー原料モノマーとの量比は特に限定されず、得られる複合フィラーの強度や屈折率の観点から適宜決定すればよいが、複合フィラー原料モノマー100重量部に対して、複合フィラー原料無機フィラーが60〜1900重量部、特に150〜900重量部の範囲であるのが好適である。また、歯科用硬化性組成物の硬化体の透明性を大きく低下させないために、複合フィラー原料無機フィラーの屈折率と複合フィラー原料モノマーの屈折率との差が0.1以下となるように設定するのが好ましい。
【0034】本発明で用いる複合フィラーは、重合開始剤を用いてその成分である前記複合フィラー原料モノマーを重合させることにより硬化してから得られる。したがって、適当な重合開始剤を含有するのが好適である。一般に、重合開始剤は重合性単量体の重合手段によって異なる種類のものが使用される。重合手段には、紫外線、可視光線等の光エネルギーによるもの、過酸化物と促進剤との化学反応によるもの、加熱によるもの等があり、採用する重合手段に応じて適宜選定される。
【0035】本発明の複合フィラーの硬化に使用する重合開始剤としては、公知の重合開始剤が特に制限なく用いられるが、より黄色度の低い硬化体を得ることができるといった観点から、熱重合開始剤を用いるのが好適であり、さらにその構造中に芳香族環を有していない化合物を用いることがより好ましい。
【0036】熱重合に使用できる重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラキス(p−フロルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸トリエタノールアミン塩等のホウ素化合物、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等のスルフィン酸塩類等が挙げられる。
【0037】また、光エネルギーによる反応(以下、光重合という)に用いる重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、ベンゾフェノン、4,4'−ジメチルベンゾフェノン、4−メタクリロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ジアセチル、2,3−ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナントラキノン、9,10−アントラキノンなどのα-ジケトン類、2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン化合物、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイドなどのビスアシルホスフィンオキサイド類等が使用できる。
【0038】なお、光重合開始剤には、しばしば還元剤が添加されるが、その例としては、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N−メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン類、ラウリルアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド類、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸、チオ安息香酸などの含イオウ化合物などを挙げることができる。
【0039】これら重合開始剤は単独で用いることもあるが、2種以上を混合して使用してもよい。重合開始剤の添加量は目的に応じて選択すればよいが、複合フィラー原料モノマー100重量部に対して通常0.01〜10重量部の割合であり、より好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用される。
【0040】本発明の複合フィラーは、上記蛍光増白剤、複合フィラー原料無機フィラー、複合フィラー原料モノマー及び重合開始剤の他に、その効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、顔料、重合禁止剤等が挙げられる。
【0041】このようにして得られた複合フィラーは、無機フィラーや重合性単量体などと混合するに先立ち、更に洗浄や表面処理を行ってもよい。表面処理法としては、前述の複合フィラー原料無機フィラーを表面処理する要領が同様に適用される。
【0042】本発明の歯科用硬化性組成物は、上記したような方法によって得られる複合フィラーおよび重合性単量体を含有してなる。本発明の歯科用硬化性組成物中における複合フィラーの含有量は特に限定されないが、硬化前ペーストの操作性や硬化体の強度の観点から、重合性単量体100重量部に対して、20〜1700重量部、特に50〜1000重量部の範囲にあるのが好適である。
【0043】本発明の歯科用硬化性組成物で使用する重合性単量体としては、本発明の複合フィラーの成分である複合フィラー原料モノマーとして前記したものと同じ重合性単量体が、単独で又は複数種組合わせて、なんら制限なく使用可能である。
【0044】本発明の歯科用硬化性組成物は、物性を低下させない範囲で無機フィラーを更に配合することができる。該無機フィラーとしては公知のものが何ら制限なく使用可能であり、本発明の複合フィラーの一成分である複合フィラー原料無機フィラーとして前記したものと同様の無機フィラーが好適に使用できる。
【0045】即ち、平均粒径0.001〜1μmの無機粒子及び/又は該無機粒子の凝集体からなり、無機フィラーの全体としての平均粒子径が0.001〜100μm、特に0.05〜50μmの範囲である無機フィラーが好適に使用できる。なお、上記無機粒子は、X線造影性を有し、より耐摩耗性に優れた硬化体が得られることから、シリカとジルコニアを主な構成成分とする複合酸化物であるのが好適であり、その形状は球状または略球状であり、さらに粒子径の変動係数が0.3以内にあるような単分散性に優れたものであるのがより好適である。
【0046】なお、これら無機フィラーは粒度分布や材質が異なるものを複数種類混合して用いることもできる。また、該無機フィラーについても、表面を前記したような方法で疎水化処理を施すのが好適である。
【0047】このような無機フィラーの配合量は、重合性単量体100重量部に対して、20〜1700重量部、特に50〜1000重量部の範囲にあるのが好適である。
【0048】本発明の歯科用硬化性組成物は、重合開始剤を用いてその成分である前記重合性単量体を重合させることにより硬化される。したがって、本発明の歯科用硬化性組成物は適当な重合開始剤を含有するのが好適である。
【0049】本発明の歯科用硬化性組成物で使用する重合開始剤としては、本発明の複合フィラーの硬化に用いる重合開始剤として前記したものと同じものがなんら制限なく使用可能である。
【0050】なお、一般に歯科用硬化性組成物においては、使用時の操作の簡便さの理由から、硬化(重合)手段として光重合が採用されることが多く、本発明の歯科用硬化性組成物においても重合開始剤としては光重合開始剤を用いるのが好適である。前記した光重合開始剤の中でも特に好適な光重合開始剤を具体的に例示すると、カンファーキノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイド、及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)―2,4,4−トリメチルフェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。これら重合開始剤は単独で用いることもあるが、2種以上を混合して使用してもよい。重合開始剤の添加量は目的に応じて選択すればよいが、重合性単量体100重量部に対して通常0.01〜30重量部の割合であり、より好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用される。
【0051】本発明の歯科用組成物においては、その効果を著しく阻害しない範囲で、公知の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、重合禁止剤、顔料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0052】本発明の硬化性組成物は、一般に、前記各必須成分及び必要に応じて各任意成分を所定量とって十分に混練し、さらに必要に応じてこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去することによって得ることができる。
【0053】本発明の歯科用硬化性組成物の用途は特に限定されないが、具体例としては歯科充填用コンポジットレジンが挙げられる。その一般的な使用方法としては、修復すべき歯の窩洞を適切な前処理材や接着材で処理した後に歯科充填用コンポジットレジンを直接充填し、歯牙の形に形成した後に専用の光照射器にて強力な光を照射して重合硬化させる方法等が挙げられる。
【0054】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例および比較例で用いた蛍光増白剤、無機フィラー、重合性単量体、及び重合開始剤は以下の通りである。
【0055】〔蛍光増白剤〕
■2,5-チオフェンジイル(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾキサゾール)(以下W−1と略す。)
■4,4'-ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(以下W−2と略す。)
■N-メチル-5-メトキシ-ナフタールイミド(以下W−3と略す。)。
【0056】〔無機フィラー〕
■球状シリカジルコニアフィラー;1次粒子の平均粒径=0.2μm、全体の平均粒子径20μm、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物(以下F−1と略す。)。
【0057】〔重合性単量体〕
■2,2−ビス[(3−メタクロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン/トリエチレングリコールジメタクリレート;重量比60/40(以下M−1と略す。)。
【0058】〔重合開始剤〕
■アゾビスイソブチロニトリル(以下I-1と略す。)
■tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(以下I-2と略す。)
■ベンゾイルパーオキサイド(以下I-3と略す。)
■クミルペルオキシオクタノエート(以下I-4と略す。)
■ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(以下I-5と略す。)
■カンファーキノン(以下CQと略す。)
■N,N−ジメチル-p-トルイジン(以下DMPTと略す。)。
【0059】また、以下の実施例及び比較例に示した、有機無機複合フィラーの調製及び硬化体色調の評価は以下の方法に従って行なった。
【0060】(1)有機無機複合フィラーの調製重合性単量体M−1中に、蛍光増白剤を重量比で0.01%、各種重合開始剤を重量比で0.5%予め溶解させておき、無機フィラーF−1、300重量部に対して蛍光増白剤及び重合開始剤を含むM−1を100重量部添加混合し、乳鉢でペースト化した。これを、重合開始剤がI−1〜I−4の場合は95℃窒素加圧下で一時間加熱することによって、また重合開始剤がI−5の場合は、可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒づつ光照射することによって重合硬化させた。この硬化体を、振動ボールミルを用いて粉砕し、さらにγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン0.02重量%によって、エタノール中、90℃で5時間還留することで表面処理を行い、平均粒径12μmの複合フィラーを得た。
【0061】(2)硬化体色調の評価歯科用硬化性組成物のペーストを7mmφ×2mmの孔を有する型にいれ、両面はポリプロピレンフィルムで圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒づつ光照射し硬化させた後、型から取り出して、色差計(東京電色製、TC-1800MKII)を用いて、背景色白で測定を行い、下記式に基づいて黄色度(YI)を求めた。
【0062】黄色度(YI)=100×(1.28X−1.06Z)/Y(但し、式中のX、Y、およびZは三刺激値を表す。)。
【0063】また、上記硬化体サンプルの黄色味を目視にて評価し、ほぼ無色であるものを◎、ごくわずかに黄色味が確認されるものを○、若干黄色に着色しているものを×、明らかに黄色に着色しているものを××と判定した。
【0064】実施例1重合性単量体M−1に対して、重合開始剤CQを重量比で0.5%、DMPTを1.5%加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製した。次に、上記の方法によって調製した有機無機複合フィラー300重量部をメノウ乳鉢に入れ、上記重合性単量体組成物100重量部を徐々に加えていき、暗所にて十分に混練し均一な硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去した後、上記の方法に基づいて硬化体の色調を評価した。組成及び結果を表1に示した。
【0065】
【表1】

【0066】実施例2〜22表1に示す組成で硬化性ペーストを調製し、それ以外は実施例1と同様にして硬化体の色調を評価した。結果を併せて表1に示した。なお、実施例12〜22においては、有機無機複合フィラー300重量部に代えて(A)有機無機複合フィラーと(B)無機フィラーとの混合比が表1に示されるような混合フィラー400重量部を用いている。
【0067】実施例1〜22のすべての組成において、有機無機複合フィラー中に蛍光増白剤を配合させることによって、黄色度が十分低く無色に近い色調の硬化体を得ることができた。
【0068】比較例1〜4表1に示す組成で硬化性ペーストを調製し、それ以外は実施例1と同様にして硬化体の色調を評価した。結果を併せて表1に示した。
【0069】前記実施例に対し、比較例1、2は本発明の必須成分である蛍光増白剤が欠如しており、いずれの場合にも黄色度が非常に高いのが明白である。さらに、比較例3、4は蛍光増白剤を有機無機複合フィラー中ではなく、硬化性ペースト側に配合させた例であるが、増白効果はほとんど見られなかった。
【0070】
【発明の効果】本発明の歯科用硬化性組成物は、硬化前ペーストの操作性に優れ、その硬化体は優れた表面滑沢性、耐磨耗性を有し、さらに透明性が高く無色に近い色調を有する硬化体を容易に調整できる。
【出願人】 【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
【出願日】 平成13年2月27日(2001.2.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−255722(P2002−255722A)
【公開日】 平成14年9月11日(2002.9.11)
【出願番号】 特願2001−52857(P2001−52857)