トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学




【発明の名称】 分岐鎖アミノ酸を含有する医薬用懸濁剤
【発明者】 【氏名】樋口 祐幸

【氏名】井田 光泰

【氏名】矢吹 昭

【要約】 【課題】分岐鎖アミノ酸粒子を有効成分として高い懸濁濃度で含有する安定性に優れかつ服用し易い医薬用懸濁剤を提供する。

【解決手段】イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる分岐鎖アミノ酸を有効成分として含有し、かつ粘度が3〜15000mPa・secで親水性疎水性バランス(HLB)が3〜40である懸濁化剤を含有することを特徴とする医薬用懸濁剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる分岐鎖アミノ酸を有効成分として含有し、かつ粘度が3〜15000mPa・sで親水性疎水性バランス(HLB)が3〜40である懸濁化剤を含有することを特徴とする医薬用懸濁剤。
【請求項2】 前記懸濁化剤は、粘度が30〜8000mPa・sでありHLBが5〜35であることを特徴とする請求項1記載の医薬用懸濁剤。
【請求項3】 前記懸濁化剤がセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ゼラチン、寒天及びトラガント末からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬用懸濁剤。
【請求項4】 前記懸濁化剤としてのセルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、結晶セルロース及び結晶セルロース・カルメロースナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬用懸濁剤。
【請求項5】 前記懸濁化剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム及びゼラチンから選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬用懸濁剤。
【請求項6】 前記イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる分岐鎖アミノ酸粒子の懸濁濃度が11〜70%(W/V)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬用懸濁剤。
【請求項7】 前記イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる分岐鎖アミノ酸粒子の懸濁濃度が15〜60%(W/V)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬用懸濁剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる3種の分岐鎖アミノ酸粒子を有効成分として含有する安定性に優れた医薬用懸濁剤に関する。特に本発明は、苦みの強いイソロイシン、ロイシン及びバリンからなる3種の分岐鎖アミノ酸粒子を有効成分として高い懸濁濃度で含有する安定性に優れた医薬用懸濁剤に関する。
【0002】
【従来の技術】イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる3種の分岐鎖アミノ酸を含む医薬用製剤は肝硬変に有効な治療薬であり、現在市販されている製剤は顆粒剤が主体である。しかし、上記3種の分岐鎖アミノ酸粒子を有効成分とする顆粒剤の場合、その1回の服用量が約5gと一般の製剤と比較して著しく量が多く、しかも苦みが強いことから服用しにくいという難点がある。
【0003】一方、1回の服用量が多い薬剤を、服用時に水を必要としない咽喉越しのよい懸濁剤とすることも知られている。しかし市販の懸濁剤の場合、一部のタンパク分解物等を含有する経腸栄養剤等を除けば、技術的問題等からその有効成分の濃度は10%程度又はそれ以下とされているのが普通である(例えば、スクラルファート、水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウムなど。)。
【0004】肝硬変用の薬剤であるイソロイシン、ロイシン及びバリンからなる3種の分岐鎖アミノ酸混合物を上記のような低濃度の懸濁製剤とした場合には、通常の製剤による1回服用量よりも遙に多い5gという量を1回で服用しようとすると、懸濁製剤の服用量も多くせざるを得ず、薬剤成分の苦みが口中に拡がって不快感を与えることとなる場合が多い。
【0005】イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる3種の分岐鎖アミノ酸混合物を通常の手法で懸濁製剤とした場合には、懸濁濃度が10%(W/V)を超える濃度となると、保存中に懸濁分散成分が沈殿して分層を生じやすくなり、薬剤成分の沈殿が生じると保存中にケーキングを生じて再分散性を失う場合が多い。それ故、懸濁分散成分の沈殿が生じる場合には、ケーキングを生じないような再分散性の優れた懸濁製剤を作る必要がある。
【0006】また、懸濁濃度を高くすることができたとしても、懸濁液の粘性の増大、流動性の低下を招いて服用しにくいものとなる。以上のような理由から、苦みの強いイソロイシン、ロイシン及びバリンからなる3種の分岐鎖アミノ酸を有効成分として含有する製剤として、製剤の1回の服用量が少なくて済むような、高濃度でかつ安定的に流通可能な懸濁製剤はこれまで開発されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、苦みの強い分岐鎖アミノ酸薬剤の1回の服用量を医薬品として適切な量とするために、懸濁製剤を高濃度化することを可能とし、かつ安定的に長期間懸濁状態を維持することができるイソロイシン、ロイシン及びバリンからなる3種の苦みの強い分岐鎖アミノ酸粒子を有効成分として含む医薬用懸濁剤を提供することにある。
【0008】上記の目的を達成することができる本発明は、以下の各発明を包含する。
(1) イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる3種の分岐鎖アミノ酸粒子を有効成分として含有し、かつ粘度が3〜15000mPa・sで親水性疎水性バランス(HLB)が3〜40である懸濁化剤を含有することを特徴とする医薬用懸濁剤。
【0009】(2) イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる3種の分岐鎖アミノ酸粒子を有効成分として11〜70%(W/V)含有し、かつ粘度が30〜8000mPa・sで親水性疎水性バランス(HLB)が5〜35である懸濁化剤を含有することを特徴とする医薬用懸濁剤。
【0010】(3) 前記懸濁化剤は、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ゼラチン、寒天及びトラガント末からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1) 項又は(2) 項に記載の医薬用懸濁剤。
【0011】(4) 前記懸濁化剤としてのセルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、結晶セルロース及び結晶セルロース・カルメロースナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1) 項〜(3) 項のいずれか1項に記載の医薬用懸濁剤。
【0012】(5) 前記イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる分岐鎖アミノ酸粒子の懸濁濃度が15〜60%(W/V)であることを特徴とする(1) 項〜(4) 項のいずれか1項に記載の医薬用懸濁剤。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の肝硬変治療用の懸濁製剤は、日本薬局方に記載されている懸濁剤及びシロップ剤を意味しており、その濃度も日本薬局方に規定されている範囲のものである。
【0014】本発明の懸濁製剤における有効成分は、イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる3種の分岐鎖アミノ酸である。イソロイシンは日本薬局方の規格を満たすものである限り特に限定されるものではないが、通常は発酵法で製造されている1mm程度又はそれ以下の粒度のものを粉砕し、D50が3〜100μmに調製されているものが使用される。同様に、ロイシンは日本薬局方の規格を満たすものである限り特に限定されるものではないが、通常は発酵法又は抽出法で製造されている1mm程度又はそれ以下の粒度のものを粉砕し、D50が3〜100μmに調製されているものが使用される。同様に、バリンは日本薬局方の規格を満たすものである限り特に限定されるものではないが、通常は発酵法又は合成法で製造されている1mm程度又はそれ以下の粒度のものを粉砕し、D50が3〜100μmに調製されているものが使用される。
【0015】イソロイシン/ロイシン/バリンの配合割合は、一般的にはイソロイシンを1とした場合、ロイシン(1.9〜2.2)、バリン(1.1〜1.3)の範囲であるが、この配合割合に限定されず、互いの配合量は適宜増減することが可能である。上記したように、イソロイシン、ロイシン及びバリンの粒径はD50が3〜100μmであることが望ましいが、500μm程度までの粒径のものであれば使用可能である。
【0016】本発明の懸濁製剤に使用される懸濁化剤は、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ゼラチン、寒天及びトラガント末からなる群から選ばれる少なくとも1種である。セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム等が挙げられる。
【0017】懸濁化剤の使用量の範囲は、懸濁製剤全容量に対して0.1〜5.0%(W/V)、好ましくは0.3〜3.0%(W/V)であり、対アミノ酸では0.5〜25.0%(W/V)、好ましくは1.5〜15.0%(W/V)である。また、通常の医薬用懸濁剤に懸濁化剤として使用されるカルボキシルビニルポリマー、ポリビニルアルコールの部分ケン化物又は完全ケン化物、ポリビニルピロリドン類のような合成高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルのような天然高分子等も使用することができる。外に、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40のような界面活性剤、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸のような無機物質も使用することができる。
【0018】本発明の懸濁製剤には、安全性、主薬である分岐鎖アミノ酸との配合性等を考慮した上で、通常の懸濁製剤に使用される保存剤を使用することができる。使用できる保存剤の例としては、ソルビン酸及びその塩類、安息香酸及びその塩類、パラオキシ安息香酸及びそのエステル類等が挙げられる。甘味剤、酸味付与剤、芳香剤、着色剤等の各種矯味剤を添加することもできる。ショ糖のような糖類の使用はイソロイシン、ロイシン及びバリンの3種のアミノ酸とのメイラード反応による懸濁製剤の着色が生起することから避けることが望ましい。
【0019】本発明の懸濁製剤は、前記粒径のイソロイシン、ロイシン及びバリン粒子を前記配合割合で使用し、前記懸濁化剤と共に水と混合して調製される。懸濁製剤を調製するための混合手段に特に制限はなく、均一な懸濁液が得られる限り、混合のメカニズム、機種を問わない。各種のホモジナイザー、マイクロフルイダイザー等の高圧乳化機、コロイドミル等が好ましく使用されるが、ニーダー等の万能混合機やポットミル、乳鉢等でも使用可能である。
【00020】懸濁製剤中に用いられる分岐鎖アミノ酸粒子の粒度の測定は、次のように行うことができる。レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製 LA−920)を使用し、2−プロパノール約200mlを循環層に入れ、撹絆、超音波照射を行いながら、2分間循環させた後、ブランク(測定中は超音波照射なし)を行う。引き続いて、測定アミノ酸試料を透過率が85±5%の範囲内になるように投入する。撹絆、超音波照射しながら2分間循環させ、超音波照射を停止した1分後に測定を行う。平均粒径は体積基準のメジアン径とする。
【0021】本発明の懸濁製剤に使用される懸濁化剤のHLBは、懸濁化剤中の成分又は主成分の化学構造より「新製剤開発システム総合技術 基剤・添加物編 (1985)p158」に記載されているDaviesの基数を基にDaviesの式から算出することができる。本発明の懸濁製剤に使用される懸濁化剤の粘度は、2%の水溶液又は分散液を日本薬局方十三改正 一般試験法 粘度測定法に記載されている円すい−平板形回転粘度計装置(東機産業TV−30形)を用い、常温で液体のものは25℃、常温でゲル化しているものはゾル化する温度で測定した実測値として求められる。
【0022】
【実施例】実施例1精製水約350mlに粘度4553mPa・s、HLB15.7のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)2.52gを加え、ディスパーサー(IKA-Labortechnik URTRA-TURRAX25)で溶かした。この溶液に無水クエン酸1.00g、サッカリンナトリウム0.20g、エリスリトール30.00g、ジメチルポリシロキサン0.10gを加え、同様のディスパーサーを使用して溶かした。この溶液にイソロイシン(平均粒径15μm)19.04g、ロイシン(平均粒径15μm)38.08g、バリン(平均粒径15μm)22.881gを加え、同様のディスパーサーで懸濁させ、さらに精製水を追加し、全量を500mlとした。この液にストロベリーエッセンスを微量添加し、マイクロフルイダイザー〔月島機械(株)M−110Y〕により均一に懸濁させ、医薬用懸濁剤を調製した。
【0023】実施例2精製水約450mlに粘度2518mPa・s、HLB17.3のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)1.56gを加え、実施例1と同様のディスパーサーで溶かした。この溶液に無水クエン酸1.25g、サッカリンナトリウム0.25g、エリスリトール37.50g、ジメチルポリシロキサン0.13gを加え、ディスパーサーで溶かした。この溶液にそれぞれ実施例1で使用したものと同じイソロイシン23.80g、ロイシン47.60g、バリン28.60gを加え、ディスパーサーで懸濁させ、さらに精製水を追加し、全量を625mlとした。この液にストロベリーエッセンスを微量添加し、実施例1で使用したものと同様のマイクロフルイダイザーにより均一に懸濁させ、医薬用懸濁剤を調製した。
【0024】実施例3精製水約250mlに粘度55mPa・s、HLB15.9のHPMC2.80gを加え、ディスパーサーで溶かした。この溶液に酒石酸0.80g、サッカリンナトリウム0.16g、ジメチルポリシロキサン0.10gを加え、実施例1と同様のディスパーサーで溶かした。この溶液に実施例1で使用したものと同様のイソロイシン19.04g、ロイシン38.08g、バリン22.88gを加え、同様のディスパーサーで懸濁させ、さらに精製水を追加し、全量を376mlとした。この液にストロベリーエッセンスを添加し、実施例1で使用したものと同様のマイクロフルイダイザーにより均一に懸濁させ、医薬用懸濁剤を調製した。
【0025】実施例4精製水250mlに粘度55mPa・s、HLB15.9のHPMC2.80g及び粘度1195mPa・s、HLB33.0の結晶セルロース・カルメロースナトリウム0.20gを加え、実施例1と同様のディスパーサーで分散させた。この分散液に酒石酸0.80g、サッカリンナトリウム0.16g、ジメチルポリシロキサン0.80gを加え、同様のディスパーサーで溶かした。この溶液に実施例1で使用したものと同様のイソロイシン19.04g、ロイシン38.08g、バリン22.88gを加え、ディスパーサーで懸濁させ、さらに精製水を追加し、全量を376mlとした。この液にストロベリーエッセンスを添加し、実施例1で使用したものと同様のマイクロフルイダイザーにより均一に懸濁させ、医薬用懸濁剤を調製した。
【0026】実施例5精製水500mlに粘度4553mPa・s、HLB15.7のHPMC4.80g及び粘度1195mPa・s、HLB33.0の結晶セルロース・カルメロースナトリウム0.40gを加え、実施例1と同様のディスパーサーで分散させた。この分散液に酒石酸4.00g、サッカリンナトリウム0.48g、ジメチルポリシロキサン1.60gを加え、ディスパーサーで溶かした。この溶液にイソロイシン38.08g、ロイシン76.16g、バリン45.76gを加え、ディスパーサーで懸濁させ、さらに精製水を追加し、全量を800mlとした。この液にレモンフレーバーを添加し、マイクロフルイダイザーにより均一に懸濁させた。この液400mlに、粘度110mPa・s、HLB23.8の寒天2.40gを添加し、加熱溶解後、冷却させ、医薬用懸濁剤を調製した。
【0027】参考例1精製水約450mlに粘度2mPa・s、HLB42.3のアラビアゴム3.75gを加え、ディスパーサー(IKA-Labortechnik URTRA-TURRAX25)で溶かした。この溶液に無水クエン酸1.25g、サッカリンナトリウム0.250g、エリスリトール37.50g、ジメチルポリシロキサン0.130gを加え、同じディスパーサーで溶かした。この溶液にイソロイシン(平均粒径15μm)23.80g、ロイシン(平均粒径15μm)47.60g、バリン(平均粒径15μm)28.60gを加え、同じディスパーサーで懸濁させ、さらに精製水を追加し、全量を625mlとした。この液にストロベリーエッセンスを微量添加し、マイクロフルイダイザー(月島機械M−110Y)により均一に懸濁させ、医薬用懸濁剤を調製した。
【0028】試験例前記の実施例及び参考例で得られた各種医薬用懸濁剤を無色のポリプロピレン製の容器に充填し、4℃及び40℃で7日間静置後、肉眼により分散粒子の状態を観察した。その結果を次表に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【発明の効果】表1の結果から明らかなように、本発明のイソロイシン、ロイシン及びバリンからなる3種の分岐鎖アミノ酸を含んでなる医薬用懸濁剤は、高濃度で保存安定性に優れ、服用性改善及びコンプライアンスの向上に寄与するものである。
【出願人】 【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
【出願日】 平成13年9月27日(2001.9.27)
【代理人】 【識別番号】100078503
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 宏 (外2名)
【公開番号】 特開2002−187840(P2002−187840A)
【公開日】 平成14年7月5日(2002.7.5)
【出願番号】 特願2001−296990(P2001−296990)