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【発明の名称】 アルコール代謝促進剤
【発明者】 【氏名】田中 雅嗣

【要約】 【課題】アルコール過剰摂取による不快な二日酔いの症状を予防・改善しうるアルコール代謝促進剤を提供する。

【解決手段】ピルビン酸またはその塩、およびシステインまたはその塩を共に含有するアルコール代謝促進剤は、アルコール代謝を著しく促進し、さらに血中のアセトアルデヒド濃度の上昇を抑制することができる。このことにより、不快な二日酔いの症状を改善または予防することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 薬理有効量のピルビン酸またはその塩と、薬理有効量のシステインまたはその塩とを含有することを特徴とするアルコール代謝促進剤。
【請求項2】 前記薬理有効量が、ピルビン酸として20mg/kg/日〜1000mg/kg/日の投与量であり、システインとして0.4mg/kg/日〜20mg/kg/日の投与量であることを特徴とする請求項1に記載のアルコール代謝促進剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルコール代謝促進剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、アルコールの摂取に伴う不快な症状を軽減する効果のあるとされる物質については、各種の報告がなされている。例えば、特開平9−40564や特開平11−276116には、卵殻膜を加水分解した物や、豚肉をプロテアーゼで処理して得られた豚肉加工品がアルコール代謝促進剤として開示されている。しかし、これらの促進剤は、どのようなメカニズムでアルコールの摂取に伴う不快な症状を軽減するのかが解明されていないものも多く、充分に効果的な投与法や成分の組み合わせが開発されるには至っていなかった。
【0003】そもそも、体内に摂取されたアルコールは、アルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに酸化され、さらにアセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素により酢酸(アセテート)に代謝される。一般に二日酔いといわれるアルコールの過剰摂取による不快な症状は、この代謝が十分に進行していないために、アセトアルデヒドが体内に蓄積されて起こると考えられている。
【0004】上記のアルコール代謝経路において、二つの脱水素酵素(アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素)は、それぞれの反応段階で酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NAD+と称する)を必要とし、反応に使用されたNAD+は、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADHと称する)に還元される。一方、NADHは、ミトコンドリア内に入って酸化され、再びNAD+とされる。上記の各反応のうち、NADHをNAD+に酸化する反応は、全体の反応の中で最も速度が遅く、律速段階となっている。このため、アルコール代謝時には、NADH:NAD+比が増加し、細胞内が過還元状態となっている。
【0005】ところで、解糖系においては、グルコースは最終的にピルビン酸となる。ピルビン酸は、酸素が十分に供給されている状態ではTCAサイクルと呼ばれる代謝系に入り、酸素が不足している状態では乳酸に還元されて、生体の活動に必要なエネルギーを供給する。このうちピルビン酸が乳酸に還元される反応は可逆反応であり、この過程にもNAD+およびNADHが関与している。すなわち、ピルビン酸が乳酸に還元されるときには、NADHがNAD+に酸化される一方、乳酸がピルビン酸に酸化されるときにはNAD+がNADHに還元される。アルコール代謝の際には、前段で述べたように細胞内が過還元状態となっている。このため、これを解決し、アルコール代謝に必要なNAD+を供給するために、ピルビン酸の乳酸への還元が促進される。このような知見に基づいて、本発明者は、ピルビン酸自体にアルコール代謝促進剤としての効果があることを見いだして、特許出願をした(平成11年特許願第005736号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、日本人をはじめとするモンゴロイドには、アセトアルデヒドを酢酸に酸化する酵素のうちの一部が欠損しているために、アルコールに弱い人が多いことが知られている(また、さらに一部の人は、上記の酵素活性をほとんど持たないために、極めて少しのアルコールしか飲めない人もいる。)。
【0007】このような人々にとっては、アルコールの酸化を促進させる物質を摂取したとしても、体内にアセトアルデヒドが蓄積して不快な症状を引き起こし、この症状を軽減するためには、アセトアルデヒドが体外に排出されるのを待つよりほかはない。従って、アルコールの酸化を促進させる物質を摂取するのみでは、二日酔いの防止のために充分な作用があるとは言い難い場合があった。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アルコール代謝促進剤を提供することを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前述のように、アルコールの代謝系において中心的な役割を果たすNAD+を供給する物質がピルビン酸であり、その不足を補うことがアルコールの代謝を促進するために、二日酔いの症状の改善に対して非常に有効であることを見出している。本発明は、このピルビン酸に加えて、主として、システインを併用することにより、アルコール代謝促進にさらに顕著な効果が挙がることを見出した。本発明は、かかる新規な知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明は、ピルビン酸およびシステインを有効成分とするアルコール代謝促進剤(以下、本発明医薬品と称する)を提供するものである。
【0009】本発明医薬品の有効成分であるピルビン酸およびシステインは、ヒトに対して、経口または血管を経由して安全に投与することができる。このうち、経口投与製剤としては、例えば、糖衣錠・コーティング錠・バッカル錠を含む錠剤、ソフトカプセルを含むカプセル剤、顆粒剤(コーティングしたものも含む)、丸剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤などの剤形に製剤化される。これらの製剤は製剤化の常法により調製することができ、製剤化に必要な添加物、例えば賦形剤、溶解補助剤、酸化防止剤、無痛化剤、等張化剤等を含んでいてもよい。また注射剤としても、製剤上の常法によって調製することができ、単独あるいはブドウ糖、アミノ酸などの通常の補液と混合で投与することができる。また、食品類、例えばスポーツドリンクや栄養ドリンク等の飲料類や、チョコレート等の菓子類等に添加し、摂取させることもできる。また、上記食品類は、例えばビタミン類、ミネラル類、甘味料等の、食品に許容される添加物を含んでいてもよい。
【0010】本発明医薬品の有効成分の一つであるピルビン酸は、通常の大気下では酸化・脱炭酸されてアセトアルデヒドとなりやすいことから、薬理的に許容し得る塩基性化合物と塩を形成させておくことが好ましい。かかる塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩または重炭酸塩、ナトリウムメチラート、カリウムエチラートなどの金属アルコラート等を例示することができる。また、システインは、通常の大気下では、酸化されやすいことから、薬理的に許容し得る化合物と塩を形成させておいてもよい。また、亜硫酸水素ナトリウムやアスコルビン酸等の抗酸化剤を添加してもよい。
【0011】
【発明の作用、および発明の効果】本発明によれば、ピルビン酸またはその塩、およびシステインまたはその塩を含有するアルコール代謝促進剤が提供される。本発明医薬品に含有されるピルビン酸またはその塩は、アルコールのアセトアルデヒドへの酸化およびアセトアルデヒドの酢酸への酸化に必要なNAD+を供給し、アルコールの代謝を促進させる。また、システインまたはその塩は、アルコールの酸化により生成して二日酔いの不快な症状の主要な原因となるアセトアルデヒドと結合し、体外に排出させる。これらの作用により、二日酔いの不快な症状の予防や改善等の薬理効果が奏される。
【0012】特に、アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い者においては、従来の多くのアルコール代謝促進剤のようにアルコールの酸化を促進するのみでは、生じたアセトアルデヒドを酸化することができないために、二日酔いの不快な症状を改善しにくいことがあった。しかし本発明医薬品によれば、システインを併用することにより、アセトアルデヒドの体内への蓄積を抑え、二日酔いの症状を顕著に改善および予防できることが期待される。また、アセトアルデヒド脱水素酵素非欠損者においても、アセトアルデヒドの体内への蓄積を抑えることにより、効果的な二日酔い症状の改善および予防が期待できる。
【0013】
【実施例】以下、本発明をさらに詳細に説明するために、本発明医薬品の試験群を挙げる。
<試験方法>対照群健常な成人男性5名(A,B,C,D,E)を被験者とし、被験者に試験開始0分より、被験者A,B,C,の三名については、体重1kgあたり0.8kg相当のアルコール(エタノール)を含有するウイスキーを20分間で経口摂取させた。なお、アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い被験者D,Eの二名については、アルコール摂取量を体重1kgあたり、各々0.4kg,0.5kgとした。また、試験開始1時間後に、精製水200mlを経口投与した。
【0014】試験開始直後(0時間とする)、0.5時間後、1時間後、1.5時間後、および2.5時間後に末梢血サンプルを採取し、そのサンプル中の血中アルコール濃度、血中アセトアルデヒド濃度、血中アセテート濃度および血中アセトン濃度を測定した。また、血中アルコール濃度より、試験開始1.5時間後から2.5時間後までの体重1kgあたりのアルコール酸化量を計算して求めた。なお、アルコール酸化量は、次式の分布係数(γ)と、アルコール酸化係数(β)とを使用して、(3)式により求めた。
(1)分布係数(γ)=アルコール摂取量/1.5時間でのアルコール濃度/体重(2)アルコール酸化係数(β)=(1.5時間でのアルコール濃度−2.5時間でのアルコール濃度)/(2.5−1.5)
(3)アルコール酸化量=γxβx体重【0015】比較群健常な成人男性5名(A,B,C,D,E)を被験者とし、被験者に試験開始0分より、被験者A,B,Cの三名については、体重1kgあたり、0.8kg相当のアルコールを含有するウイスキーを20分間で経口摂取させた。なお、アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い被験者D,Eの二名については、アルコール摂取量を体重1kgあたり、各々0.4kg,0.5kgとした。試験開始1時間後に、ピルビン酸ナトリウムを体重60kgあたり20gが投与されるように換算して200mlの精製水に溶解し、経口投与した。なお、末梢血サンプルの採取および、各種化合物の測定等については、上記の対照群と同様に行った。
【0016】試験群健常な成人男性4名(A,B,C,D)を被験者とし、被験者に試験開始0分より、被験者A,B,Cの三名については、体重1kgあたり、0.8kg相当のアルコールを含有するウイスキーを20分間で経口摂取させた。なお、アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い被験者Dについては、アルコール摂取量を体重1kgあたり0.4kgとした。
【0017】試験開始1時間後に、ピルビン酸ナトリウム、L−システインおよびビタミンCを混合したものを、体重60kgあたり、それぞれピルビン酸11g、システイン240mg、ビタミンC200mgが投与されるように300mlの精製水に溶解し、経口投与した。なお、ビタミンCは、風味を改善するために添加した。なお、末梢血サンプルの採取および、各種化合物の測定等については、上記の対照群と同様に行った。
【0018】<試験結果および考察>表1には、対照群における結果を示した。また図1には対照群におけるアルコール摂取開始時(試験時間0時間、以下同様)からの経過時間と血中アルコール濃度との関係を示すグラフ、図2には対照群におけるアルコール摂取開始時からの経過時間と血中アセトアルデヒド濃度との関係を示すグラフ、図3には対照群におけるアルコール摂取開始時からの経過時間と血中アセテート濃度との関係を示すグラフ、図4には対照群におけるアルコール摂取開始時からの経過時間と血中アセトン濃度との関係を示すグラフを、それぞれ示した。
【0019】
【表1】

【0020】血中アルコール濃度は、表1および図1に示すように、各被験者において、アルコール摂取後から速やかに上昇して試験時間0.5時間には最高値に達し、その後漸減した。なお、被験者D,Eのアルコール摂取量は、他の三名比べて少ないため、血中アルコール濃度は、その摂取量に応じて少なかった。このため、各被験者間において、アルコールは、速やかに胃および十二指腸において吸収されたものと考えられた。
【0021】血中アセトアルデヒド濃度は、アルコールの酸化反応によって、上昇してくるものと考えられる。表1および図2に示すように、アセトアルデヒド濃度は、各被験者において試験時間0.5〜1時間に最高値を示し、2.5時間においても大きくは減少しなかった。また、アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが少ない二名の被験者(D,E)では、アルコール濃度が低いにもかかわらず、アセトアルデヒドの濃度は有意に高値を示した。
【0022】血中アセテート濃度は、アセトアルデヒドの酸化反応によって、上昇してくるものと考えられる。しかし、表1および図3に示すように、アセテート濃度は、試験時間1時間までは緩やかに上昇し、それ以降はほぼ横這いとなるように推移した。このことから、体内において、NAD+が枯渇してくるために、アルコールの酸化反応が抑制されると考えられた。なお、血中アセトン濃度は、表1および図4に示すように、被験者によっては、アルコール摂取からの時間経過によって、増加傾向を示すものがいたが、全体として大きな変化は見られなかった。
【0023】表2には、比較群における結果を示した。また図5には比較群におけるアルコール摂取開始時からの経過時間と血中アルコール濃度との関係を示すグラフ、図6には比較群におけるアルコール摂取開始時からの経過時間と血中アセトアルデヒド濃度との関係を示すグラフ、図7には比較群におけるアルコール摂取開始時からの経過時間と血中アセテート濃度との関係を示すグラフ、図8には比較群におけるアルコール摂取開始時からの経過時間と血中アセトン濃度との関係を示すグラフを、それぞれ示した。
【0024】
【表2】

【0025】血中アルコール濃度は、表2および図5に示すように、各被験者において、試験時間0.5時間まで速やかに上昇し、その後漸減した。アルコールは、対照群の場合と同様に、各被験者において速やかに胃および十二指腸において吸収されたものと考えられた。また、血中アセトアルデヒド濃度は、表2および図6に示すように、各被験者において試験時間0.5時間まで上昇し、その後2.5時間までほぼ横ばいに推移した。また、血中アセテート濃度は、表2および図7に示すように、各被験者において試験開始から2.5時間まで速やかに上昇した。このことから、ピルビン酸を摂取したために、体内にアルコールの酸化に必要なNAD+が供給され、アルコールのアセトアルデヒドへの酸化およびアセトアルデヒドのアセテートへの酸化が顕著に促進されたものと考えられる。
【0026】但し、被験者Dにおいては、血中アセテート濃度はあまり上昇せず、血中アセトアルデヒド濃度が高くなっていた。これは、被験者Dにおいてはアセトアルデヒド脱水素酵素の働きが特に少なく、アセトアルデヒドがアセテートに酸化されにくいためと考えられた。また、同様にアセトアルデヒド脱水素酵素の働きが少ないと考えられる被験者Eにおいては、試験時間1〜2.5時間の間に血中アセトアルデヒド濃度が減少し、血中アセテート濃度が増加しており、アルコール代謝の促進が観察された。なお、血中アセトン濃度は、表2および図8に示すように、アルコール摂取からの時間経過によって、増加傾向を示すものがいたが、全体として大きな変化は見られなかった。
【0027】表3には、試験群における結果を示した。また図9には試験群におけるアルコール摂取開始時からの経過時間と血中アルコール濃度との関係を示すグラフ、図10には試験群におけるアルコール摂取開始時からの経過時間と血中アセトアルデヒド濃度との関係を示すグラフ、図11には試験群におけるアルコール摂取開始時からの経過時間と血中アセテート濃度との関係を示すグラフ、図12には試験群におけるアルコール摂取開始時からの経過時間と血中アセトン濃度との関係を示すグラフを、それぞれ示した。
【0028】
【表3】

【0029】血中アルコール濃度は、表3および図9に示すように、各被験者においてアルコール試験時間1時間に最高値を示し(但し、試験時間0.5時間の値は測定していない)、その後漸減した。
【0030】また、血中アセトアルデヒド濃度は、表3および図10に示すように、各被験者において試験時間1時間まで漸増し、その後2.5時間までほぼ横ばいに推移した。このとき、血中アセトアルデヒド濃度は、対照群および比較群に比べて低い値で推移した。また、血中アセテート濃度は、表3および図11に示すように、各被験者において試験時間0.5時間まで漸増し、その後試験時間2.5時間までやや上昇するか、もしくはほぼ横ばいに推移した。試験群においては、ピルビン酸を摂取したために、アルコールの酸化は比較群と同様促進されると期待される。しかし、システインの効果によりアセトアルデヒドの一部は尿中に排泄され、血中アセトアルデヒド濃度および血中アセテート濃度は比較群に比べて抑制されたと考えられる。なお、血中アセトン濃度は、表3および図12に示すように、アルコール摂取からの時間経過によって、大きな変化は見られなかった。
【0031】また、図13には、対照群、比較群および試験群における、アルコール摂取開始時からの経過時間と血中アルコール濃度(平均値±標準偏差)の関係を示すグラフを、図14には、対照群、比較群および試験群における、アルコール摂取開始時からの経過時間と血中アセトアルデヒド濃度(平均値±標準偏差)との関係を示すグラフを、図15には、対照群、比較群および試験群における、アルコール摂取開始時からの経過時間と血中アセテート濃度(平均値±標準偏差)との関係を示すグラフを、図16には、対照群、比較群および試験群における、アルコール摂取開始時からの経過時間と血中アセトン濃度(平均値±標準偏差)との関係を示すグラフを、それぞれ示した。
【0032】図13より、血中アルコール濃度は、上記三群のすべてにおいて、アルコール摂取後より速やかに吸収され、その後、時間の経過につれて漸減した。図14より、血中アセトアルデヒド濃度は、比較群においてはピルビン酸を摂取したことにより対照群に比べてアルコール代謝が促進されたために高い値で推移した。また、試験群においてはピルビン酸に併せてシステインを投与したことによって、血中アセトアルデヒド濃度の上昇は、抑制されていることがわかる。また、図16より、血中アセトン濃度は、対照群および比較群においては、試験時間の経過につれて漸増する傾向が見られたが、試験群においてはほぼ横ばいで推移した。表4および図17には、被験者A〜Eにおける、試験時間1.5時間から2.5時間までの体重1kgあたりのアルコール酸化量を示した。
【0033】
【表4】

【0034】すべての被験者において、対照群と比較して、ピルビン酸を摂取した比較群のほうが、アルコール酸化量が増大した。これは、ピルビン酸が、アルコール代謝を促進したためであると考えられた。また、ピルビン酸とシステインとを併せて摂取した試験群では、ピルビン酸の単独使用の比較群に比べて、全ての被験者において、さらにアルコール酸化量が増大しており、アルコール代謝の著しい促進が見られた。
【0035】図18には、被験者A〜Dにおける、試験時間1.5時間から2.5時間までの体重1kgあたりのアルコール酸化量の平均を示した。この図からも明らかなように、本発明医薬品を摂取することにより、アルコールの酸化量が顕著に増大することから、本発明医薬品がアルコール代謝の促進に有効であるといえる。
【0036】図19には、試験開始から2.5時間目における、被験者A〜Dの血中アセトアルデヒド濃度を示した。各被験者とも、ピルビン酸を単独で服用した比較群においては、水のみを服用した対照群に比べて、2.5時間目の血中アセトアルデヒド濃度は増加した。これは、ピルビン酸の投与によって、体内に吸収されたアルコールがアセトアルデヒドに酸化される代謝速度が促進され、一時的にアセトアルデヒドが体内に多く蓄積された状態になっているためと考えられた。
【0037】しかし、ピルビン酸とシステインとを併用した試験群においては、試験開始から2.5時間目の血中アセトアルデヒド濃度は、ピルビン酸のみを服用した比較群に比べると、全ての被験者において有意に減少している。また、このときの血中アセトアルデヒド濃度は、対照群に比べても、減少する傾向を示した。これにより、ピルビン酸とシステインとの併用が、アセトアルデヒドの排出に有効であることを示すものと考えられた。また、図17および図18に示すように、ピルビン酸とシステインとを併用した場合には、アルコール酸化量が最も増加することから、アルコールからアセトアルデヒドに酸化される量も増加されると考えられる。これにもかかわらず、血中アセトアルデヒド濃度の上昇が押さえられることは、従来には考えられなかった知見である。このことは、ピルビン酸が有するアルコール代謝効果と、システインが有するアセトアルデヒド排泄効果とを併せただけでは、予見し得ない新たな効果である。
【0038】また、アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い被験者Dにおいては、水のみを服用した対照群では、他の被験者A〜Cに比べて、非常に高い血中アセトアルデヒド濃度を示している。特に、ピルビン酸のみを投与した場合には、被験者Dでは、血中アセトアルデヒド濃度が著しく増大している。しかし、ピルビン酸とシステインとを併せて投与することにより、血中アセトアルデヒド濃度を著しく低下させることができた。このことから、ピルビン酸とシステインとの併用は、アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い者にとっては、不快な二日酔いの症状を抑制しつつアルコール代謝を促進するという有効な作用を備えていることが分かった。
【0039】以上のように、ピルビン酸とシステインとを併用することにより、アルコール代謝を著しく促進し、さらに血中のアセトアルデヒド濃度の上昇を抑制できることが明らかとなった。このことにより、不快な二日酔いの症状を軽減できることが期待される。本発明の技術的範囲は、上記した実施形態によって限定されるものではなく、均等の範囲にまで及ぶものである。
【出願人】 【識別番号】597144060
【氏名又は名称】田中 雅嗣
【識別番号】500572649
【氏名又は名称】財団法人岐阜県国際バイオ研究所
【識別番号】591235603
【氏名又は名称】財団法人応用生化学研究所
【出願日】 平成12年12月19日(2000.12.19)
【代理人】 【識別番号】100108280
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 洋平
【公開番号】 特開2002−187839(P2002−187839A)
【公開日】 平成14年7月5日(2002.7.5)
【出願番号】 特願2000−385645(P2000−385645)