| 【発明の名称】 |
歯科用根管充填材組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】常川 勝由
【氏名】横田 兼欣
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| 【要約】 |
【課題】生体親和性、長期安定性にすぐれたワンペーストタイプの乳歯用根管充填材組成物の提供。
【解決手段】歯内治療時に使用する乳歯の根管充填材において、生体親和性にすぐれた特性を有し、長期間シリンジ容器に充填してもすぐれた安定性を有するように、天然物由来の植物油、酸化マグネシウムおよびX線造影剤もしくは不透過剤から構成される。ワンペーストタイプの、安定性にすぐれた、乳歯の根管治療に適用できる理想的な根管充填材であり、その組成が歯周組織へ溢出したとしても、新生骨の形成、後継永久歯の成長および乳歯の生理的歯根吸収に悪影響を及ぼさないなどの生体親和性を有するため、操作も簡単でかつ根管治療後の健全な後継永久歯列の達成が確保される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 植物油と、カルシウムまたはマグネシウムの酸化物と、X線造影剤あるいは不透過剤を含有するワンペーストタイプの歯科用根管充填材組成物。 【請求項2】 植物油を10〜50重量%と、カルシウムまたはマグネシウムの酸化物を1〜50重量%と、X線造影剤あるいは不透過剤を10〜70重量%含有する請求項1に記載の歯科用根管充填材組成物。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、歯科の診療において乳歯の根管治療、すなわち、抜髄後、根管内の殺菌、消毒を行い、根管内を無菌状態にした後に、根管内を充填する際に使用する根管充填材組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】根管内の充填は、抜髄後残された起炎因子が外部に波及しないように根管内に封じこめ、根尖孔や根管口からの菌によって再感染されないようにするためである。そのため、生体為害性のない材料からなる根管充填材を使用し、根管治療時はできるだけ緊密に根管を充塞できることが重要となる。 【0003】この根管充填には、これまで、例えば、歯内療法ハンドブック,p149〜174,(医歯薬出版株式会社発行)、グロスマン エンドドンティックス 10th ed., p249〜293,(医歯薬出版株式会社発行)に示されているように多種の材料、薬剤が用いられてきた。こうしてさまざまな臨床結果をもとにして、現在用いられているものを大別すると、ガッタパーチャ、ペースト材およびシルバーポイントに分けることができる。 【0004】ガッタパーチャポイントは、1867年に、Bowmanが根管充填材として適しているとして使用されてきてから、現在もさまざまな充填法に合わせて、ガッタパーチャを素材とした製品が数多くある。 【0005】シルバーポイントは、細い彎曲根管に有利であるため一時的に多用されたこともあったが、根管への挿入が容易であるため根管拡大が不充分になりがち、加圧できないために死腔が残りやすい、シルバーポイントそのものが根尖孔からの滲出液により酸化、腐食する等の理由から、現在はほとんど用いられていない。 【0006】ペースト材の根管充填材としては、緊密な封鎖が行えないことや根尖孔から溢出してしまう可能性があり、半永久的な使用には好ましくないとされ、現在では、根尖孔のセメント質による閉鎖の促進をするための根管貼薬剤として、または乳歯の根管充填材として用いられている場合が多い。 【0007】以上の理由から、ガッタパーチャが現在の根管充填材の主流となっており、ガッタパーチャ単独、またはガッタパーチャとシーラーを併用して用いられている。 【0008】しかし、乳歯の根管治療においては、乳歯特有の性質が数多く存在するため、歯内療法も特別留意したものになっている。 【0009】その乳歯特有の性質として、1. 乳歯の根管が非常に細くて彎曲している、2. 根尖孔が大きく開いている、3. 髄室床部に副根管を有している、4. 生理的歯根吸収を受けて脱落、永久歯と交換する運命を有している、等があげられる。 【0010】このうち、上記1〜3の性質上、根管充填材を適用しても、その根管充填材が歯周組織に溢出する可能性は大いに高く、また、4の性質のため、歯周組織に溢出および根管内に充填された組成物は、乳歯の生理的歯根吸収に合わせて吸収されなければならない。 【0011】以上のことが達成できないとき、後続永久歯が健全な状態で萌出せず、この状態は乳歯の根管治療が達成できなかったことを意味する。 【0012】つまり、乳歯の根管治療に適用される根管充填材の特性としては、たとえ歯周組織へ溢出したとしても、その全組成物が、乳歯の生理的歯根吸収に悪影響を及ぼさないような生体親和性を有することが重要である。 【0013】この乳歯の根管治療に、永久歯と同様にガッタパーチャ単独、またはガッタパーチャとシーラーとで根管充填するという処置法を選択したとき、通常、ガッタパーチャが生体組織で容易に吸収されず、乳歯が歯根吸収を受けても、ガッタパーチャだけが吸収を受けずに残り、問題となることがわかっている。 【0014】このような理由から、乳歯の根管充填には、根管内でも硬化しないペーストタイプの充填材が使用されており、その組成はシリコンオイル(油性基剤)、ヨードホルム(X線造影剤、殺菌剤)、水酸化カルシウム(硬組織誘導剤)からなる根管充填材である。しかし、この油性基剤であるシリコンオイルは、水酸化カルシウムと混合して安定なペーストが維持できる利点を有するものの、生体内で非吸収性であるため正常な新生骨の形成を阻害する欠点が知られている。また、ペースト(根管充填材)が根尖孔外に溢出する危険性が高い乳歯の根管治療の際、非吸収性のシリコンオイルが、後継永久歯のエナメル質形成不全(ターナー歯の形成)や萌出不全など、健全な永久歯列の形成が達成できない危険因子になることもある。さらに根管内ではペースト状態で存在するため、気化性のヨードホルムが約1ヶ月間で消失し、レントゲンによる経過観察ができない問題点もあった。 【0015】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、乳歯の根管治療に適用できる理想的な根管充填材を得るもので、その解決課題は、その組成が歯周組織へ溢出したとしても、新生骨の形成、後継永久歯の成長および乳歯の生理的歯根吸収に悪影響を及ぼさないなどの生体親和性を有し、且つ、シリンジ容器内での長期安定性にすぐれたワンペーストタイプの根管充填材組成物を提供することにある。 【0016】 【課題を解決するための手段】本発明のワンペーストタイプの根管充填材組成物は、前記の生体親和性を獲得するための基剤として天然物由来成分の植物油を配合し、かつ長期間安定なペーストを維持するためにカルシウムまたはマグネシウムの酸化物を配合し、これにさらに、X線造影剤あるいは不透過剤を配合してX線造影性を付与したものである。 【0017】基剤天然物由来成分の植物油としては、ペーストを作る際の基材となる天然物由来成分であれば何でもよく、オリブ油、落花生油、ナタネ油、大豆油、ベニバナ油、綿実油、コーン油、月見草油等の植物油が挙げられ、さらにリノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸とグリセリンのエステル化合物もこの範疇に含まれる。 【0018】根管充填材としての理想的なペースト稠度は、シリンジに填入し鈍針を装着して押し出すとき、その抵抗値が高すぎず、根管内で流れない稠度であり、これを満足するための植物油の含有量は、10〜50重量%、とくに20〜45重量%であることが好ましい。 【0019】上記配合組成において、カルシウムまたはマグネシウムの酸化物は、根管内および根尖口付近の硬組織誘導のために必要であり、水酸化の形では、ペースト状に製剤化する際、シリンジ容器内でケン化反応を起こして固化するため、安定なペーストを維持できず製剤上の問題がある。最終組成物のペースト稠度に悪影響を及ぼさない範囲で必要量存在すればよいが、あまり過剰に含有させると、ペースト稠度が高くなりすぎ操作性の問題を生ずる。理想的なペーストを得るためのカルシウムまたはマグネシウムの酸化物の含有量は、1〜50重量%、とくに、5〜40重量%であることが好ましい。 【0020】根管充填材において硬組織誘導に必要な条件は、その成分が水に溶けてアルカリ性を呈することであり、かつ、その水に対する溶解度は小さい方が、そのアルカリ性を長期にわたり維持できるので望ましい。この条件に適合するものとしてアルカリ土類金属塩が上げられる。しかし、同じアルカリ土類金属塩としてストロンチウム、バリウムの塩も考えられるが、これらは溶出した際の強い毒性のため、本発明の根管充填材にはふさわしくない。 【0021】結局、長期安定性試験の結果、カルシウムまたはマグネシウムの化合物としては水酸化物ではなく、酸化物に特定することで長期間安定なペースト製剤とすることが可能となった。 【0022】X線造影剤もしくは不透過剤は、根管内に適性に充填されたかどうかのレントゲンによる判定、および経過観察の目的に配合されるものであり、ヨードホルム、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、ジルコニア、酸化亜鉛などの1種、もしくは2種以上を用いることができる。とくにヨードホルムはX線造影剤としてだけではなく殺菌剤としても作用するので好都合である。もちろん他の殺菌剤や抗生物質などを添加しても差し支えない。X線造影剤の含有量は、安定なペーストを得るためには10〜70重量%であるが、あまり少なすぎると良好なX線造影性が得られず、また、多すぎると、上述のような理想的なペーストが得られないために、具体的には30〜50重量%であることが好ましい。 【0023】また、本発明の根管充填材組成物は、ペーストの粘度を調整する目的で、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタンの超微粒子や、流動パラフィン、ワセリン、ロウ、樹脂、シロップ等の軟膏基剤あるいは増粘材を添加してもよい。 【0024】この根管充填材組成物は、たとえ根管外の歯周組織へ溢出したとしても、血液からの好中球やマクロファージにより貪食され吸収されるため、新生骨の形成阻害、後継永久歯の成長阻害、および乳歯の生理的歯根吸収に悪影響を及ぼすことはない。すなわち、生体親和性を有する乳歯の根管充填材として適切な組成物となり得る。 【0025】さらには、本発明の組成物、すなわち、ペースト製剤は、根管内に適用後は、吸水によりケン化反応が促進し、固化するため根管内でX線造影剤であるヨードホルムを長期に渡って保持することができ、レントゲンによる長期観察も可能になる利点がある。 【0026】上記成分を練和したペーストはシリンジ容器から、直接根管内に注入できる稠度であり、操作性の良好かつ安定な一剤型ペーストである。 【0027】X線造影剤としてヨードホルムを本発明の根管充填材に適用した場合、このヨードホルムは約1年後でも消失しない。 【0028】また、本発明の根管充填材を根管内に填入した際、吸水によってカルシウムまたはマグネシウムの酸化物と植物油とがケン化反応を起こして固化するが、硬く硬化してしまうものではなく、根尖孔外歯周組織では吸収され、根管内に留まっているものも乳歯の生理的吸収と同じ速度で徐々に吸収される。 【0029】本発明の歯科用根管充填材組成物は、上記成分をペースト状に練和し、シリンジ容器に充填後、18〜25ゲージの鈍針を装着し、直接根管内に充填することによって操作される。 【0030】 【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を実施例によって説明する。 【0031】実施例1この実施例は、本発明のペースト組成物の、根管充填材としての生体親和性をみるための実施例である。 【0032】オリブ油を25重量%、酸化マグネシウムを30重量%、X線造影剤としてヨードホルムを40重量%および増粘剤として酸化アルミニウムを5重量%を配合し、自動乳鉢によりペースト組成物を調製した。 【0033】以下に示す方法により本発明の根管充填材について、組織為害性および新生骨の形成添加に関する試験を行った。 【0034】試験方法:5週齢WKA雄性ラットの右側下顎部の頬側皮膚粘膜弁を剥離翻転し、第一臼歯中央頬側根根尖相当部に直径0.7mmのフィッシャーバーにて骨窩洞を形成すると共に同根尖部の切除を行い、形成された骨窩洞内に、この実施例に係る組成を填入後、弁を縫合、処置後30日目に、PLP固定液にて灌流および浸浸固定を施し、通法に従い脱灰、パラフィン包理を行い、頬舌方向の切片を作成し、H.E.染色後光学顕微鏡にて観察した。比較例として、ネオ製薬製造の市販水酸化カルシウム系(シリコンオイル基剤)ペースト型根管充填材「ビタペックス」を用いた。 【0035】実施例1の組成の根管充填材を骨窩洞内に填塞した結果、とくに急性炎症所見は観察されず、骨窩洞内の根管充填材周囲に緻密な新生骨の形成添加が生じていた。また、新生骨によって完全に囲繞された所見も得られ、本発明の根管充填材が骨組織や歯周組織に対して生体親和性を有することが示唆された。 【0036】一方、ビタペックス填塞群では新生骨は観察されたが菲薄であり、シリコンオイル残留に由来と思われる大小の空胞が多数観察され、周囲に異物巨細胞が見られた。非吸収性のシリコンオイルにより新生骨形成が阻害され、線維性の骨ができたものと思われる。 【0037】実施例2〜4この実施例は、本発明のペースト組成物の安定性を見るための実施例である。 【0038】 【表1】
表1に示す実施例2〜4および比較例1〜7に示すような組成で各原料を混合、練和してペーストを作製し、2.5ml注射用プラスチックシリンジに充填した。これらのシリンジを25℃、1年間放置後、各ペーストの性能を(1)ペーストの状態、(2)ペーストの安定維持(○:安定、X:不安定)、(3)X線造影性(○:十分、X:不充分)により評価した。 【0039】結果を表1に記載した。 【0040】この表1の結果からも理解できるように、本発明の組成範囲における根管充填材組成物は、シリンジ内で適正なペースト状態を安定に維持できており、良好なX線造影性も有していた。 【0041】 【発明の効果】本発明の歯科用根管充填材組成物は以下の効果を奏する。 【0042】1. たとえ根管外の歯周組織へ溢出したとしても、新生骨の形成阻害、後継永久歯の成長阻害、および乳歯の生理的歯根吸収に悪影響を及ぼすことはない。 【0043】2. 根管内に適用後は、ヨードホルムを長期に渡って保持することができ、レントゲンによる長期観察も可能になる。 【0044】3. シリンジ容器から、直接根管内に注入できる稠度であり、操作性の良好かつ安定した一剤型ペーストである。 【0045】4. シリンジ内に充填したペースト組成物は、長期にわたり安定なものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】592150354 【氏名又は名称】日本歯科薬品株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年12月6日(2000.12.6) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100082164 【弁理士】 【氏名又は名称】小堀 益 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−173409(P2002−173409A) |
| 【公開日】 |
平成14年6月21日(2002.6.21) |
| 【出願番号】 |
特願2000−371766(P2000−371766) |
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