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【発明の名称】 血管新生促進剤、血管新生阻害剤又はそのスクリ−ニング方法
【発明者】 【氏名】飯田 真嗣
【氏名】中村 厳
【課題】循環器疾患もしくは創傷の薬物療法剤等として、又、血管新生阻害剤のスクリ−ニングに利用できる優れた血管新生促進剤の提供。

【解決手段】ウロテンシンII様ペプチド化合物(1)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する血管新生促進剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ウロテンシンII様ペプチド化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する血管新生促進剤。
【請求項2】ウロテンシンII様ペプチド化合物が一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、Glu- 、Gly-Pro- 、Pyr-Pro- 、Gln-His-Gly-Thr-、Pyr-His-Gly-Thr- 、Gln-His-Gly-Ala- 、Pyr-His-Gly-Ala- 、Ala-Gly-Asn-、Ala-Gly- 、Gly-Gly- 、Gly-Ser- 又は Asn-Asn- を示し、Rは、Thr、Ala、Leu、Gly、Asn 又は Phe を示し、Rは、Pro、Ser、Ala 又は Thr を示し、Rは、Asp 又は Glu を示し、Rは、-Val 又は -Ile を示す。)である請求項1に記載の血管新生促進剤。
【請求項3】ウロテンシンII様ペプチド化合物が下記のアミノ酸配列を有する化合物である請求項1に記載の血管新生促進剤。
【化2】

【請求項4】ウロテンシンII様ペプチド化合物が下記のアミノ酸配列を有する化合物である請求項1に記載の血管新生促進剤。
【化3】

【請求項5】ウロテンシンII様ペプチド化合物が下記のアミノ酸配列を有する化合物である請求項1に記載の血管新生促進剤。
【化4】

【請求項6】請求項1に記載のペプチド化合物又はその塩の血管新生作用を指標として血管新生阻害剤をスクリ−ニングすることを特徴とする方法。
【請求項7】ペプチド化合物又はその塩が請求項2に記載のものである請求項6に記載の方法。
【請求項8】ペプチド化合物又はその塩が請求項3に記載のものである請求項6に記載の方法。
【請求項9】ペプチド化合物又はその塩が請求項4に記載のものである請求項6に記載の方法。
【請求項10】ペプチド化合物又はその塩が請求項5に記載のものである請求項6に記載の方法。
【請求項11】実験動物の角膜における反応を利用した請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】ウロテンシンII様ペプチド化合物の血管新生作用に拮抗する化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする血管新生阻害剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬品組成物として有用な血管新生促進剤、血管新生阻害剤又はそのスクリ−ニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】血管新生は、既存の血管から小血管が形成される現象である。心筋梗塞等種々の循環器疾患の予後は、多くの因子によって影響を受けるが、側副血行路の発達の程度は、最も重要な予後決定因子の一つであると考えられている。側副血行路の充分な発達があれば、狭窄や閉塞が生じても、虚血や組織の壊死が押さえられ、梗塞サイズの縮小や予後の改善が得られる。従来、側副血行路形成の機序として、血管内圧や血流の変化が重要視されてきたが、側副血行路形成時に血管内皮細胞や血管平滑筋細胞にDNA合成を伴う細胞分裂像が認められることが報告され、側副血行路の形成過程は、単に既存の吻合血管の物理的要因による拡張だけでなく、少なくともその一部は血管壁構成細胞の増殖が関与する血管新生の過程であると理解されるようになっている。そこで近年、「血管新生療法」という新しい治療法によって循環器疾患を治療しようという試みがなされてきている(Yanagisawa-Miwa, A. et al., Science, 257, 1401, 1992)。血管新生療法とは、虚血組織周辺の血管新生を促進することによって積極的に側副血行路を確保し、虚血組織を保護しようとする試みであり、薬物投与によるバイパス形成療法ともいえる新しい治療法である。しかし、未だ実用化には至っておらず、これに用いることのできる優れた薬剤の開発が期待されている。一方、繊維芽細胞成長因子など血管新生促進活性をもつ物質を創傷の治療に利用する試みもなされてきている(Hockel, M. et al., Arch. Surg., 128, 423, 1993)。しかし、これも未だ実用化に至っておらず、優れた薬剤の開発が期待されている。
【0003】一方、疾患に関連して生じてくる血管新生がその進展に関わっている疾患も存在し、固形腫瘍、糖尿病網膜症、及び炎症性疾患(慢性関節リウマチ)は、その代表的なものである。固形腫瘍が増殖するには、血管新生によって栄養や酸素の供給と老廃物の除去の道を確保することが必須である。また、現在の癌治療上の大きな問題である転移において、その道を確保するという意味でも癌細胞主導による血管新生が重要なステップとなっている。糖尿病性網膜症では、生じた血管新生そのものが病態となり、放置すると失明に至る。従って、これら疾患で生じてくる血管新生を抑制することが上記疾患の進展の予防及び治療に結びつくと考えられ、血管新生阻害剤の探索が精力的に行なわれてきている(Folkman, J. etal., Science 275, 116, 1996)。しかし、今だ臨床的に満足できるような薬剤は無い。
【0004】ところで、ウロテンシンIIは、最初、硬骨魚類のウロフィシスというホルモン分泌器官より単離された環状ペプチドである(Bern, H.A. et al., J. Endocrinol. 45, Xi, 1969)。その後、魚類、両生類及びヒトをも含む哺乳類より、C末端側の環状ヘキサペプチドを共通構造として有する幾つか異なる化学構造を有するウロテンシンIIが見つかってきている(Coulouarn, Y. et al., Proc. Natl.Acad. Sci. 95: 15803, 1998、Coulouarn, Y., et al., FEBS Letters 457: 28-32, 1999及び Hoare, S.R.J. Trends Pharmacol. Sci. 21: 80, 2000)。これらウロテンシンIIの作用としては、血管収縮作用(Itoh, H., et al., Eur. J. Pharmacol. 149: 61-66, 1988 及び Ames, R.S. et al., Nature 401: 282, 1999)及び心収縮力の減少作用(Ames, R.S. et al., Nature 401: 282, 1999)が知られている。
【0005】また、ウロテンシンIIは、細胞膜上にあるウロテンシンIIの受容体を介して作用を示す(Itoh, H., et al., Eur. J. Pharmacol. 149: 61-66, 1988)。そして、その作用発現の一つとして、ウロテンシンIIは、GPR14やSENR(sensory epithelium neuropeptide-like receptor) と呼ばれる公知のGタンパク質共役型受容体(Marchese, A., et al., Genomics 29: 335, 1995及びTal, M., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 209: 752, 1995)を刺激して作用を示すことが知られている、即ちウロテンシンIIは、Gタンパク質共役型受容体GPR14を刺激する内因性の物質であることが知られている(Nothacker, H.-P.,et al., Nature Cell Med 1: 383, 1999、Liu, Q., et al., Biochem. Biophys.Res. Commun. 266: 174, 1999、Mori, M., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 265: 123, 1999 及び Ames, R.S. et al., Nature 401: 282, 1999)。このウロテンシンIIは、まず生体内で前駆体のプレプロウロテンシンIIが作られ、その後プロホルモンコンバーターゼなどのペプチダーゼの作用により産生される(Coulouran, Y., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 95: 15803, 1998)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、血管新生促進作用を利用した循環器疾患もしくは創傷の薬物療法は、今だ実用化されておらず、これに用いることのできる優れた血管新生促進剤の提供が、重要な課題となっている。さらに、今だ臨床的に満足できる血管新生阻害剤が無い、さらにはそのような優れた血管新生阻害剤をスクリ−ニングする方法も無いため、血管新生が関わる固形腫瘍、糖尿病網膜症、及び炎症性疾患等には十分な治療方法が無く、臨床的に満足できる新しい血管新生阻害剤の提供及びそのスクリ−ニング方法の提供が、特に重要な課題となっている。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、血管新生を促進する化合物又は血管新生を阻害する化合物を見出すべく鋭意研究した結果、ウロテンシンII様ペプチド化合物又はその薬理学的に許容される塩が血管新生促進剤として極めて有用であることを見出した。更に、ウロテンシンII様ペプチド化合物又はその薬理学的に許容される塩の血管新生作用を指標として血管新生阻害剤をスクリ−ニングする方法を見出し、更に加えて、ウロテンシンII様ペプチド化合物の血管新生作用に拮抗する化合物又はその薬理学的に許容される塩が血管新生阻害剤として極めて有用であるという知見を得、本発明をなすに至った。即ち、本発明は次の(I)〜(XII)に関するものである。
【0008】(I) ウロテンシンII様ペプチド化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する血管新生促進剤。
(II) ウロテンシンII様ペプチド化合物が一般式(1)
【0009】
【化5】

(式中、Rは、Glu-、Gly-Pro-、Pyr-Pro-、Gln-His-Gly-Thr-、Pyr-His-Gly-Thr-、Gln-His-Gly-Ala-、Pyr-His-Gly-Ala-、Ala-Gly-Asn-、Ala-Gly-、Gly-Gly-、Gly-Ser- 又は Asn-Asn- を示し、Rは、Thr、Ala、Leu、Gly、Asn 又は Phe を示し、Rは、Pro、Ser、Ala 又は Thr を示し、Rは、Asp 又は Glu を示し、Rは、-Val 又は -Ile を示す。)である(I)に記載の血管新生促進剤。
(III) ウロテンシンII様ペプチド化合物が下記のアミノ酸配列を有する化合物である(I)に記載の血管新生促進剤。
【0010】
【化6】

(IV) ウロテンシンII様ペプチド化合物が下記のアミノ酸配列を有する化合物である(I)に記載の血管新生促進剤。
【0011】
【化7】

(V) ウロテンシンII様ペプチド化合物が下記のアミノ酸配列を有する化合物である(I)に記載の血管新生促進剤。
【0012】
【化8】

(VI) (I)に記載のペプチド化合物又はその塩の血管新生作用を指標として血管新生阻害剤をスクリ−ニングすることを特徴とする方法。
(VII) ペプチド化合物又はその塩が(II)に記載のものである(VI)に記載の方法。
(VIII)ペプチド化合物又はその塩が(III)に記載のものである(VI)に記載の方法。
(XI) ペプチド化合物又はその塩が(IV)に記載のものである(VI)に記載の方法。
(X) ペプチド化合物又はその塩が(V)に記載のものである(VI)に記載の方法。
(XI) 実験動物の角膜における反応を利用した(VI)〜(X)のいずれか1項に記載の方法。
(XII) ウロテンシンII様ペプチド化合物の血管新生作用に拮抗する化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする血管新生阻害剤。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明において、ウロテンシンII様ペプチド化合物とは、下記部分構造【0014】
【化9】

を分子中に有するペプチド化合物であり、例えば生体由来であるウロテンシンII及びそれと類似構造を有するペプチド化合物であり、具体的には、例えば下記一般式(1)で表わされるペプチド化合物が挙げられる。
【0015】
【化10】

(式中、Rは、Glu- 、Gly-Pro- 、Pyr-Pro- 、Gln-His-Gly-Thr-、Pyr-His-Gly-Thr- 、Gln-His-Gly-Ala- 、Pyr-His-Gly-Ala- 、Ala-Gly-Asn-、Ala-Gly- 、Gly-Gly- 、Gly-Ser- 又は Asn-Asn- を示し、Rは、Thr、Ala、Leu、Gly、Asn 又は Phe を示し、Rは、Pro、Ser、Ala 又は Thr を示し、Rは、Asp 又は Glu を示し、Rは、-Val 又は -Ile を示す。)
【0016】一般式(1)、R、R、R、R及びRにおいて、これを構成する各種アミノ酸は、左側がN末端であり、右側がC末端である。
【0017】一般式(1)、R、R、R、R及びRにおける、Gluとはグルタミン酸、Glyとはグリシン、Proとはプロリン、Pyrとはピログルタミン酸、Glnとはグルタミン、Hisとはヒスチジン、Thrとはトレオニン、Alaとはアラニン、Asnとはアスパラギン、Serとはセリン、Leuとはロイシン、Pheとはフェニルアラニン、Valとはバリン、Lysとはリジン、Cysとはシステイン、Aspとはアスパラギン酸、Trpとはトリプトファン、Ileとはイソロイシンを示す。
【0018】一般式(1)で表わされるペプチド化合物の具体例は、例えば以下の表1の化合物である。
【0019】
表1 一般式(1)で表わされるペプチド化合物の具体例化合物 R 1 Glu- Thr Pro Asp -Val 2 Gly-Pro- Thr Ser Glu -Val 3 Pyr-His-Gly-Thr- Ala Pro Glu -Ile 4 Gln-His-Gly-Thr- Ala Pro Glu -Ile 5 Gln-His-Gly-Ala- Ala Pro Glu -Ile 6 Pyr-His-Gly-Ala- Ala Pro Glu -Ile 7 Ala-Gly-Asn- Leu Ser Glu -Val 8 Ala-Gly- Thr Ala Asp -Val 9 Gly-Gly- Gly Ala Asp -Val10 Gly-Gly- Gly Ala Asp -Ile11 Gly-Gly- Asn Thr Glu -Val12 Gly-Ser- Asn Thr Glu -Val13 Gly-Gly- Asn Ser Glu -Val14 Gly-Ser- Gly Ala Asp -Val15 Ala-Gly- Thr Thr Glu -Val16 Gly-Ser- Thr Ser Glu -Val17 Asn-Asn- Phe Ser Glu -Val【0020】一般式(1)、R、R、R、R及びRにおいて、これを構成する各種アミノ酸は、L体、D体又はDL体のいずれであっても、又はL体、D体又はDL体が適当に混じっているもののいずれであっても構わないが、全てL体であるものが好ましい。
【0021】本発明において使用するウロテンシンII様ペプチド化合物は、例えば生体からの抽出により、また、 Mori, M. et al.が報告しているペプチドシンセサイザーを用いる合成方法(Biochem. Biophys. Res. Commun. 265: 123, 1999)に従って得る事ができる。
【0022】本発明において使用するウロテンシンIIは、例えばヒトをも含む哺乳類、両生類、又は魚類等から由来の公知ペプチド化合物であり、例えば、ヒト、ブタ、ラット、マウス、カエル、ハゼ、コイ、マス、sucker、flounder、sturgeon、paddlefish、skate、petoromyzon、dogfish 又は lamprey から得られたものが挙げられ、これらのウロテンシンIIは、具体的には、例えば前記表1で表わされる、化合物1(ヒト)、化合物2(ブタ)、化合物3、4(ラット)、化合物5、6(マウス)、化合物7(カエル)、化合物8(ハゼ)、化合物9〜12(コイ)、化合物13(マス)、化合物14(sucker)、化合物15(flounder)、化合物16(sturgeon や paddlefish)又は化合物17(skate、petoromyzon、dogfish や lamprey)等の化学構造を有するものである。
【0023】本発明において使用する薬理学的に許容される塩の具体例としては、例えばナトリウム塩もしくはカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩もしくはカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩もしくはヨウ化水素酸塩等のハロゲン化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、スルホン酸もしくはリン酸塩等の鉱酸との酸付加塩、メタンスルホン酸塩もしくはエタンスルホン酸塩等の低級アルキルスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等のハロゲノ低級アルキルスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩等の非置換アリールスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等の置換アリールスルホン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸もしくはフタル酸塩等の有機酸塩又はグルタミン酸塩もしくはアスパラギン酸塩等のアミノ酸塩を挙げることができる。
【0024】本発明において使用するウロテンシンII様ペプチド化合物又はその薬理学的に許容される塩を血管新生促進剤として使用する際には、各種注射剤、経皮粘膜投与剤、経口剤等の各種投与形態が可能であり、投与形態に応じた種々の剤形で使用される。投与の形態としては、カテーテルを用いての心室内腔より心筋肉への直接注入や冠状動脈内の狭窄又は閉塞部分にカテーテルを用いて局所的に放出又は塗布することも挙げられる。投与剤形としては、例えば静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射等用の注射剤、懸濁注射剤、凍結乾燥等の用時溶解型注射剤、坐剤、経鼻剤等の経粘膜投与剤、点眼剤、吸入剤、貼付剤、軟膏剤もしくはスプレー剤、又は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤もしくは懸濁液等の経口剤を挙げることができる。投与量は、患者の症状、年齢、体重、治療目的、投与方法、投与時期、投与日数又は投与期間によっても異なるが、一般に0.001〜20mg/日である。
【0025】本発明の血管新生促進剤を製剤化するには、通常知られた方法が適用される。例えば、製剤用担体が液体の場合は、溶解するかもしくは分散させ、また、製剤用担体が粉末の場合は、混合するかもしくはこれに吸着させ、さらに目的に応じて、これらに医薬品として許容される保存剤、安定化剤、抗酸化剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、着色剤、芳香剤、矯味剤、剤皮、懸濁化剤、乳化剤、溶解補助剤、緩衝剤、等張化剤、塑性剤、界面活性剤又は無痛化剤等を含有させることもできる。
【0026】本発明の血管新生促進剤に使用する製剤用担体としては、例えば、水、注射蒸留水、生理食塩水、精製水、グルコース、フラクトース、白糖、ラクトース(乳糖)、デンプン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グリセリン、イノシトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、グルクロン酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、キチン、キトサン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒト血清アルブミン、ヒト血清グロブリン、コラーゲン、ゼラチン、アルギン酸、タルク、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、尿素、シリコーン樹脂、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アスコルビン酸、アルファートコフェロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール又は二酸化ケイ素等が挙げられる。
【0027】本発明の血管新生促進剤中のペプチド化合物の含量は、製剤により種々異なるが、通常0.1〜100重量%である。また、例えば、注射液の場合には、通常0.1〜5重量%の有効成分を含むようにすることが好ましい。
【0028】本発明のウロテンシンII様ペプチド化合物又はその塩の血管新生作用を指標として血管新生阻害剤をスクリ−ニングする方法としては、例えば実験動物(例えばウサギ、ラット又はマウス等の動物)の角膜における反応を利用した方法が挙げられる。この方法の実施の一例として、メスで動物の角膜に傷をつけ、ペレットを挿入するためのポケットを眼球の頭頂寄りの血管叢またはその反対側の血管叢に向かって二ヶ所作成した。ポケットの先端は、リンバス(角膜と強膜の連接部結合部)から2mm離した。ポケット内に被験化合物を溶解又は懸濁しマイナス温度下で一晩静置し固まったペレット又はコントロ−ルペレットをまず挿入し、次にヒトウロテンシンIIを含むペレットを挿入した。一定期間(例えば5日間)経過後、リンバスからペレットに向って新生した血管の長さをメジャーを用いて測定し、被験化合物の血管新生阻害の指標とした。
【0029】また、本発明のウロテンシンII様ペプチド化合物又はその塩の血管新生作用を指標として血管新生阻害剤をスクリ−ニングする別の方法としては、例えばItoh, H. et al.が報告(Eur. J. Pharmacol. 149: 61-66, 1988)しているような、ウロテンシンIIが、細胞膜上にあるウロテンシンIIの受容体を介して作用を示すことを利用して、摘出ラット胸部大動脈標本の収縮反応を行って血管新生阻害剤をスクリ−ニングする方法、アイソトープで標識したハゼウロテンシンII及びラット胸部大動脈の膜分画を用いたバインディングアッセイ(Itoh, H., et al.,Eur. J. Pharmacol. 149: 61-66, 1988)を利用して、血管新生阻害剤をスクリ−ニングする方法、Liu, Q., et al.の方法(Biochem. Biophys. Res. Commun.266: 174, 1999)により、ウロテンシンIIがGタンパク質共役型受容体GPR14を刺激する内因性の物質であることを利用して、ラットGPR14を多数発現させたHEK293細胞を用いて、スクリ−ニングする方法、商業的に入手できるラットウロテンシンIIに対する抗体を用いてラットの脊髄を免疫組織染色することによる血管新生阻害剤のスクリ−ニング方法、又はプロホルモンコンバーターゼの抑制(J. Biol. Chem. 273: 26589-26595, 1998) を指標に血管新生阻害剤をスクリ−ニングする方法等が挙げられる。
【0030】ウロテンシンII様ペプチド化合物の血管新生作用に拮抗する化合物又はその薬理学的に許容される塩とは、例えばウロテンシンII様ペプチド化合物の持つ血管新生作用を阻害する化合物が挙げられる。
【0031】ウロテンシンII様ペプチド化合物の血管新生作用に拮抗する化合物又はその薬理学的に許容される塩を血管新生阻害剤としてして使用する場合は、経口的、又は非経口的に投与される。投与量は、患者の症状、年齢、体重、治療目的又は投与方法によっても異なるが、一般に1〜600mg/日である。製剤の形としては、例えば錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、吸入剤、貼付剤、点眼剤、坐剤、スプレー剤、軟膏剤又は注射剤等が用いられる。
【0032】本発明の血管新生阻害剤は、有効成分を通常担体と混合するか、又は担体により希釈するか、又は担体内に包含されるように製剤化され、その製剤は、カプセル、小袋、紙または他の容器の形態であっても良い。担体が希釈剤として作用する場合、固形、半固形または液体物質であってもよく有効成分のために媒介物、賦形剤又は媒体として作用する。即ち、この製剤は、錠剤、丸剤、粉末、口内錠、小袋、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳化剤、溶液、シロップ又はエアゾル剤(固形または液状媒体として)、例えば、有効成分を10重量%含む軟膏剤、軟ゼラチンカプセル剤、硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、滅菌剤の注射可能な溶液又は滅菌済の包装粉末の形態であってもよい。
【0033】本発明の血管新生阻害剤に使用する適当な担体、賦形剤又は希釈剤のいくつかの例として、ラクトース(乳糖)、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、塩類溶液、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸−メチル、ヒドロキシ安息香酸−プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム又は鉱油を含むことができる。その製剤は、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、防腐剤、甘味剤又は着香剤を付加的に含むことができる。更にその組成物は、当業者に既知の方法を用いて患者に投与後、活性成分を急速、持続又は遅延放出を行うように製剤化する事ができる。
【0034】
【実施例】以下に本発明の実施例として、ウロテンシンIIを用いての試験例および製剤例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】実施例1 ウロテンシンIIの血管新生促進作用ヒトウロテンシンIIの血管新生促進作用をウサギ角膜法(Abramovitch, R., et al., FEBS Letters 425, 441, 1998)を用いて、検討した。
【0036】実験方法雌性ニュージーランドホワイトウサギ(3.4〜3.7kg、オリエンタル酵母)をペントバルビタールナトリウム (25mg/kg)の静脈内投与により全身麻酔した。さらに、塩酸オキシブプロカイン点眼により局所麻酔した。ペレットを挿入するためのポケットを、メスで角膜の中央部に傷をつけ、眼科用スパーテルを切り口に挿入し、眼球の頭頂寄りの血管叢またはその反対側の血管叢に向かって二ヶ所作成した。ポケットの先端は、リンバス(角膜と強膜の連接部結合部)から2mm離した。眼科用スパーテルを用いてポケット内にヒトウロテンシンIIまたは何も含まないペレットを挿入した。ペレットとしては、コントロールとしてジクロロメタンに溶解した10%エチレンビニルアセテート溶液そのもの、その溶液でヒトウロテンシンIIの10μgを溶解させたもの、さらにそれを10%エチレンビニルアセテート溶液で200倍希釈したもの、以上のものを−20℃下で一晩静置することにより溶媒を飛ばして固まらせたペレット(直径約2mm)を用いた。ペレットを挿入した後、感染防御のためにアンピシリンナトリウムの10mg/mlを点眼し,さらにその14mg/kgを静脈内投与した。ペレット挿入5日および7日後に、ペントバルビタールナトリウム麻酔下でリンバスからペレットに向って新生した血管の長さをメジャーを用いて測定し、血管新生の指標とした。
【0037】結果結果を表2に示す。
【0038】
表2. ウサギ角膜におけるウロテンシンIIによる血管新生促進作用 {新生した血管の長さ(mm)を表示した}角膜に挿入するペレットの内容物 ペレット挿入5日後 ペレット挿入7日後コントロール(何も含まないペレ ットを挿入) 0.0 0.0ウロテンシンII 0.05μg 0.4 0.7ウロテンシンII 10μg 1.5 2.1【0039】表2から明らかなように、ヒトウロテンシンIIは、血管新生促進作用を用量依存的に示した。その作用は、ペレット挿入5日後と早期より認められ、その作用強度も非常に強力であり、本発明の血管新生促進剤の有用性が示された。なお、ヒトウロテンシンIIにより角膜の白濁や白血球の集積といった炎症を惹起する様な副作用や毒性は、認められなかった。
【0040】実施例2ウサギ角膜における反応を利用した血管新生阻害剤をスクリーニングする方法ウロテンシンIIを用いて、ウサギ角膜における反応を利用して血管新生阻害剤を見出す方法を検討した。
【0041】実験方法雌性ニュージーランドホワイトウサギ(3〜4kg、オリエンタル酵母)をペントバルビタールナトリウム (25mg/kg)の静脈内投与により全身麻酔した。さらに、塩酸オキシブプロカイン点眼により局所麻酔した。ペレットを挿入するためのポケットを、メスで角膜の中央部に傷をつけ、眼科用スパーテルを切り口に挿入し、眼球の頭頂寄りの血管叢またはその反対側の血管叢に向かって二ヶ所作成した。ポケットの先端は、リンバス(角膜と強膜の連接部結合部)から2mm離した。眼科用スパーテルを用いてポケット内に、被験化合物を10%エチレンビニルアセテート溶液で溶解もしくは懸濁し−20℃下で一晩静置し固まらせたペレット(直径約1mm)またはコントロールペレットをまず挿入し、次にヒトウロテンシンIIを10μg含むペレット(直径約1mm)を挿入した。感染防御のためにアンピシリンナトリウム10mg/mlを点眼し、さらに14mg/kgを静脈内投与した。ペレット挿入5日後に、ペントバルビタールナトリウム麻酔下でリンバスからペレットに向って新生した血管の長さをメジャーを用いて測定し、被験化合物の血管新生阻害の指標とした。
【0042】実施例3本発明の血管新生促進剤の毒性をラットを用いて検討した。
【0043】毒性試験雄性Wistar系ラット(250g、日本チャールスリバー)をペントバルビタールで麻酔下、ラットウロテンシンII(前記表1の化合物3)の10、30、100、300、及び1000pmol/kgを、連続的に静脈内へ投与し、毒性作用を検討した。血圧、心拍数及び心電図に対する毒性作用、その他の毒性作用ともに全く認められず、本発明の血管新生促進剤の高い安全性が確認された。
【0044】製剤例1ヒトウロテンシンIIを30重量部に対し、精製水を加え全量を2000重量部としてこれを溶解後、ミリポアフィルターGSタイプを用いて除菌濾過する。この濾液2mgを10mlのバイアル瓶にとり凍結乾燥し、1バイアルに30μgのヒトウロテンシンIIを含む凍結乾燥注射剤を得た。
【0045】製剤例2ラットウロテンシンII(前記表1の化合物3)を30重量部に対し、精製水を加え全量を2000重量部としてこれを溶解後、ミリポアフィルターGSタイプを用いて除菌濾過する。この濾液2mgを10mlのバイアル瓶にとり凍結乾燥し、1バイアルに30μgのラットウロテンシンIIを含む凍結乾燥注射剤を得た。
【0046】製剤例3ラットウロテンシンII(前記表1の化合物3)を100重量部、馬れいしょでんぷん30重量部、結晶乳糖150重量部、結晶セルロース108重量部及びステアリン酸マグネシウム2重量部をV型混合機で混合し、1錠60mgで打錠し、1錠あたり20mgのペプチド化合物を含有する錠剤とした。
【0047】製剤例4ヒトウロテンシンIIを50mgに対して、微結晶性セルロース400mg、二酸化ケイ素10mg及びステアリン酸マグネシウム5mgを加えて、硬ゼラチンカプセル剤を得た。
【0048】製剤例5ラットウロテンシンII(前記表1の化合物3)を50mgに対して、微結晶性セルロース400mg、二酸化ケイ素10mg及びステアリン酸マグネシウム5mgを加えて、硬ゼラチンカプセル剤を得た。
【0049】
【発明の効果】本発明のウロテンシンII様ペプチド化合物又はその薬理学的に許容される塩は、優れた血管新生促進作用を有し、この作用に基づく予防薬及び治療薬として有用である。具体的には、血管新生療法に用いる予防薬及び治療薬(血管新生促進剤)として有用である。更に具体的には、循環器疾患、例えば、急性心筋梗塞、不安定狭心症、慢性安定型狭心症、陳旧性心筋梗塞、心房細動による血栓塞栓箝症、汎発性血管内血液凝固症候群、冠動脈バイパス術後のグラフト閉塞、経皮的感動脈形成術後の冠動脈の狭窄及び閉塞、人工心臓弁置換術後の血栓性合併症、肺血栓・梗塞症、脳血管障害(一過性脳虚血発作、脳梗塞)、末梢動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎、血行再建術後の閉塞)、糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、本態性血小板症や血栓性血小板減少性紫斑病の血栓症、溶血性尿毒症症候群、抗リン脂質抗体症候群、川崎病、子癇、並びにベーチェット病の予防及び治療、創傷(褥瘡等の慢性皮膚潰瘍、糖尿病性潰瘍、火傷、角膜創傷、化学療法・放射線療法を受けた癌患者の口腔粘膜炎、皮膚移植等の各種手術後の創傷、胃腸組織の損傷等)の治療に対して有効である。また、ウロテンシンII様ペプチド化合物又はその薬理学的に許容される塩を用いて、その血管新生作用を指標として血管新生阻害剤をスクリ−ニング方法を見出した。この方法は、血管新生阻害剤を見出す方法として有用である。更に、ウロテンシンII様ペプチド化合物の血管新生作用に拮抗する化合物又はその薬理学的に許容される塩は、下記のような病態において強い血管新生阻害作用を示し、この作用に基づく予防薬及び治療薬として有用である。具体的には、腫瘍、例えば悪性黒色腫、悪性リンパ腫、胃癌、腸癌、肺癌、膵臓癌、食道癌、乳癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、腎癌、膀胱癌、脳腫瘍、カポジ肉腫、血管腫、骨肉腫、筋肉腫、並びに血管繊維腫の予防薬及び治療薬、眼疾患、例えば糖尿病網膜症、未熟児性網膜症、鎌状赤血球網膜症、網膜静脈閉塞症、角膜移植又は白内障手術に伴う血管新生、血管新生性緑内障、虹彩ルベオーシス、並びにコンタクトレンズ長期装用による角膜内の血管新生の予防薬及び治療薬、並びに炎症性疾患、例えば、慢性関節リウマチ、並びに乾癬症の予防薬及び治療薬として有用である。
【出願人】 【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
【出願日】 平成12年9月12日(2000.9.12)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−87982(P2002−87982A)
【公開日】 平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願番号】 特願2000−276519(P2000−276519)