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【発明の名称】 エルゴチオネイン及び/またはその誘導体の、グリケーション剤としての使用
【発明者】 【氏名】パスカル・ペルティエ

【氏名】エルヴェ・パジョン

【要約】 【課題】皮膚タンパク質のグリケーションを低減させるため、特に皮膚の老化の徴候、年齢に関連した皮膚の弾力性の喪失、皮膚のオレンジの皮様の外観の予防または処理のため、更に輪郭をほっそりさせ、且つ/または改良するため、並びに/または顔の輪郭を際立たせるために、皮膚への局所適用を企図する化粧品組成物中に使用することのできる剤を提供する。

【解決手段】皮膚タンパク質のグリケーションを低減するための剤として、エルゴチオネイン及び/またはその誘導体を、皮膚への局所適用を企図する化粧品組成物中に所定量で使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エルゴチオネイン及び/またはその誘導体の、化粧品組成物中での、皮膚タンパク質のグリケーションを低減するための剤としての使用。
【請求項2】 皮膚タンパク質のグリケーションを低減するための皮膚科用組成物の製造のための、エルゴチオネイン及び/またはその誘導体の使用。
【請求項3】 皮膚タンパク質が、真皮のタンパク質であることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】 コラーゲンのグリケーションを低減するための、請求項3に記載の使用。
【請求項5】 グリケーションに関連した皮膚の老化の徴候を、予防または処理するための、エルゴチオネイン及び/またはその誘導体の使用。
【請求項6】 年齢に関連した皮膚の弾力性の喪失を、予防または処理するための、エルゴチオネイン及び/またはその誘導体の使用。
【請求項7】 輪郭をほっそりさせ、且つ/または改良するため、並びに/または顔の輪郭を際立たせるための、エルゴチオネイン及び/またはその誘導体の使用。
【請求項8】 皮膚のオレンジの皮様の外観を予防または処理するための、エルゴチオネイン及び/またはその誘導体の使用。
【請求項9】 エルゴチオネイン及び/またはその誘導体が、下式(I):【化1】

[式中、Xは-O-R’または−NR’R”基を表し;R、R’及びR”は、共に、または互いに別個に、水素原子、C1−C18であるアルキル基、アルケニル基またはアシル基を表し、これらの基は、直鎖状または分枝状であって、任意に下記:(a)任意にエステル化されたヒドロキシル基、及び/または(b)ハロゲン原子、及び/または(c)カルボキシル基、及び/または(d)アミン基によって置換されている]に相当することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】 Rが水素原子またはエチルもしくはアセチル基を示し、XがNH2を示すことを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】 式(I)の化合物が、エルゴチオネインであることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】 式(I)は、L-(+)-エルゴチオインであることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】 前記組成物が、皮膚への局所適用を企図されたものであることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】 前記組成物が、生理学的に許容される媒質を更に含有することを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項にに記載の使用。
【請求項15】 エルゴチオネイン及び/またはその誘導体が、前記組成物全重量に対して0.001%乃至10%の範囲の量で存在することを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】 エルゴチオネイン及び/またはその誘導体が、前記組成物全重量に対して0.005%乃至5%の範囲の量で存在することを特徴とする、請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】【0001】本発明は、エルゴチオネイン及び/またはその誘導体の、化粧品組成物中での、皮膚タンパク質のグリケーションを低減させるため、特に皮膚の老化の徴候及び/または皮膚のオレンジの皮様の外観の予防または処理のため、更に輪郭をほっそりさせ(slimming)、且つ/または改良するため、並びに/または顔の輪郭を際立たせるための剤としての使用に関する。
【0002】
【従来の技術】グリケーションは、糖類(グルコースまたはリボース)を含み、これをメイラード反応によってアミノ酸残基、特にタンパク質のアミノ酸残基のアミノ基と反応させてシッフ塩基を生成させる、非酵素的方法である。このシッフ塩基は、アマドリ分子内転位を経た後に、一連の反応によって、架橋、特に、例えばペントシジンタイプの分子内架橋を引き起こしうる。
【0003】この現象は、その含量が年齢の関数として一定の割合で増大する、グリケーション生成物の出現によって特徴付けられる。グリケーション生成物は、例えば、ピラーリン、カルボキシメチルリシン、ペントシジン、クロスリン、Nε-(2-カルボキシエチル)-リシン(CEL)、グリオキサリシンダイマー(GOLD)、メチル-グリオキサリシンダイマー(MOLD)、3DG-ARGイミダゾール、ヴェルスペルリシンA、B及びC、スレオシジンまたは高次グリコシル化の最終生成物(またはAGE)である。
【0004】従って、タンパク質のグリケーションは、一般的な現象であり、皮膚、特に真皮成分、及び主にコラーゲン繊維においては既知である。特に、コラーゲンのグリケーションは、年齢と共に一定の割合で増加し、皮膚中のグリケーション生成物の含量が、一定の割合で増加する。
【0005】皮膚老化のいかなる理論の導入も意図することなく、これもまたグリケーションの結果であるかもしれない、コラーゲンへの別の変化、例えば熱変性の減少、酵素消化への耐性の増大及び分子間架橋の増大等が、皮膚老化の過程において呈示されてきことに注目すべきである(Tanaka S. et al., 1988, J. Mol. Biol.,203, 495-505; Takahashi M. et al., 1995, Analytical Biochemistry, 232,158-162)。更にまた、基底膜の所定成分、例えばコラーゲンIV、ラミニン及びフィブロネクチンのグリケーションによる変化が、確認されている(Tarsio JF.et al., 1985, Diabetes, 34, 477-484; Tarsio JF. et al., 1988, Diabetes,37, 532-539; Sternberg M. et al., 1995, C.R. soc. Biol., 189, 967-985)。
【0006】したがって、皮膚の老化の過程では、コラーゲンの物理化学特性が変化し、このコラーゲンの溶解及び分解が、より困難になる。この結果、組織の硬化が起き、本質的に皮膚の弾力性の喪失につながる。
【0007】皮膚の老化に対する作用に加え、グリケーションは、セルライトの特徴的な「オレンジの皮様の」外観にも関係する。特に、セルライトにおいては、結合部分の大半を構成するコラーゲンのグリケーションの結果、組織の硬化が起き、その後これは脂肪小球を封入することになる。こうして、皮膚は、結合部分の硬化によって生成した脂肪瘤及び空洞によって形成される一連の凹凸を示し、これが「オレンジの皮様の」外観の特徴である。
【0008】従って、タンパク質のグリケーションの減少を、削減または抑制しさえする入手可能な生成物の重要性が、認識されるであろう。
【0009】このグリケーション反応を抑制することができる、様々な生成物が既知である:アミノグアニジン(最も一般的に知られたインヒビターである)、タウリン、所定のビタミン(B1、B6)及びチアゾリウム誘導体。
【0010】本出願人は、ここに、驚くべきことに、また予期せぬことに、エルゴチオネイン及びその誘導体が、タンパク質のグリケーションの減少を低減または抑制しさえする特性、及び、まず皮膚の弾力性の年齢に関連した喪失に、次に皮膚の「オレンジの皮様の」外観に作用する特性を有することを見出した。さらにまた、エルゴチオネインの抗グリカント作用は、任意に、年齢と共に変形してしまった顔の輪郭を再設計することを企図した顔用スリミング製品において、有利な応用を見出しうる。
【0011】エルゴチオネインは、既に、メラニン発生抑制剤として[Motohashi, N. et al., Chem. Pharm. Bull., 39(1), 142-5(1991)及び日本国特許公報第630008335号]及び、フリーラジカル捕集剤として[Whiteman M. et al., FEBS Lett., 414(3), 497-500(1997)]開示されている。しかしながら、出願人の見知する限りにおいては、グリケーション抑制特性を有すると示唆されたことは、全くない。
【0012】本発明の主題の一つは、エルゴチオネイン及び/またはその誘導体の、化粧品組成物中での、皮膚タンパク質のグリケーションを低減する剤としての使用である。本発明の主題はまた、エルゴチオネイン及び/またはその誘導体の、皮膚タンパク質のグリケーションを低減するための、皮膚科用組成物の製造のための使用である。
【0013】皮膚タンパク質は、好ましくは真皮のタンパク質である。したがって、本発明による化合物は、コラーゲンのグリケーションを低減するために使用される。この語は、皮膚中に存在するあらゆるタイプのコラーゲンを意味する。
【0014】本発明によれば、エルゴチオネイン及び/またはその誘導体は、・グリケーションに関連した皮膚の老化の徴候を、予防または処理するため、特に年齢に関連した皮膚の弾力性の喪失を、予防または処理するため;及び/または・輪郭をほっそりさせ、且つ/または改良するため、並びに/または顔の輪郭を際立たせるため;及び/または・皮膚のオレンジの皮様の外観を予防または処理するため;に使用することができる。
【0015】本発明の目的のためには、エルゴチオネイン及び/またはその誘導体は、下式(I):【化2】

[式中、Xは-O-R’または−NR’R”基を表し;R、R’及びR”は、共に、または互いに別個に、水素原子、C1−C18であるアルキル基、アルケニル基またはアシル基を表し、これらの基は、直鎖状または分枝状であって、任意に下記:(a)任意にエステル化されたヒドロキシル基、及び/または(b)ハロゲン原子、及び/または(c)カルボキシル基、及び/または(d)アミン基によって置換されている]に相当する。
【0016】本発明の好ましい実施態様によれば、Rは水素原子またはエチルもしくはアセチル基を示し、XはNH2を示す。特に、エルゴチオネイン、好ましくはL-(+)-エルゴチオネインを使用する。
【0017】本発明による組成物は、好ましくは化粧品または皮膚科用の使用、有利には美容のための使用を企図する。これは、有利には、皮膚への局所適用を企図し、よって一般的に生理学的に許容される媒質、換言すれば皮膚に適合性の媒質を含有する。
【0018】この組成物中では、エルゴチオネイン及び/またはその誘導体は、好ましくは前記組成物全重量に対して0.001%乃至10%の範囲の量で存在し、前記組成物全重量に対して0.005%乃至5%の範囲の量であると更に良い。
【0019】この組成物は、化粧品及び皮膚科において通常使用されるあらゆる調剤形態であって良く、特に、任意にゲル化された水性溶液、任意にローションタイプの二相分散物、脂肪相を水相中に分散させることによって得られるエマルジョン(O/Wエマルジョン)またはその逆のエマルジョン(W/Oエマルジョン)または三相エマルジョン(W/O/WまたはO/W/Oエマルジョン)、あるいはイオン性及び/または非イオン性タイプのの小胞分散物の形態であって良い。これらの組成物は、通常の方法によって調製される。
【0020】この組成物は、多少によらず流動性であり、白色または有色クリーム、軟膏、乳剤、ローション、漿液、ペーストまたはムースの外観を有して良い。これは、任意に、エアロゾルの形態で皮膚に適用されてもよい。これは固体形態、特にスティックの形態であってもよい。これは、スキンケア製品として、及び/または皮膚のためのメイクアップ製品として使用してもよい。
【0021】既知の方法において、本発明の組成物は、化粧品には通常の、親水性または親油性のゲル化剤、親水性または親油性の活性剤、保存料、抗酸化剤、溶媒、香料、充填剤、スクリーン剤、顔料、臭気吸収剤及び染料等の補助剤を含有しても良い。これらの様々な補助剤の量は、懸かる分野において従来より使用される通りであり、例えば、当該組成物全重量に対して0.01%乃至20%である。その性質によって、これらの補助剤は、脂肪相に、水相に、脂質小胞に、及び/またはナノ粒子に導入されると良い。いかなる場合でも、これらの補助剤、及びその割合は、本発明による活性剤コンビネーションの所望の特性を損なうことの無いように選択される。
【0022】本発明の組成物がエマルジョンである場合、脂肪相の割合は、当該組成物全重量に対して5乃至80重量%、好ましくは5乃至50重量%の範囲をとるとよい。エマルジョン形態の当該組成物中に使用されるオイル、乳化剤及び共乳化剤は、懸かる分野において従来より使用されているものから選択される。乳化剤及び共乳化剤は、当該組成物全重量に対して0.3乃至30重量%、好ましくは0.5乃至20重量%の範囲の割合で存在する。
【0023】本発明において使用することのできるオイルとしては、鉱物油(流動ワセリン)、植物起源のオイル(アボカドオイルまたは大豆油)、動物起源のオイル(ラノリン)、合成オイル(ペルヒドロスクアレン)、シリコーンオイル(シクロメチコーン)及びフルオロオイル(ペルフルオロポリエーテル)を挙げることができる。脂肪アルコール(セチルアルコール)、脂肪酸及びワックス(カルナウバワックスまたはオゾケライト)もまた、脂肪物質として使用することができる。
【0024】本発明において使用することのできる乳化剤及び共乳化剤としては、例えば、PEG−20ステアレート等の、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、及びグリセリルステアレート等の、グリセリンの脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0025】特に挙げることのできる親水性ゲル化剤は、カルボキシビニルポリマー(カーボマー)、アクリルコポリマー、例えばアクリレート/アルキルアクリレートのコポリマー、ポリアクリルアミド、多糖類、天然ゴム及び粘土、並びに、挙げることのできる親油性ゲル化剤は、変性粘土、例えばベントン、脂肪酸の金属塩、疎水性シリカ及びポリエチレンである。
【0026】皮膚の弾力性の喪失を予防または処理するため、及び/または顔の輪郭を際立たせるための使用に際しては、エルゴチオネインを、他の抗老化活性剤、特に皺防止性、脱色性、引き締め性、排水性、伸張性用、フリーラジカル捕集性、及び/または免疫保護性の活性剤と、更に/または、細胞代謝(特に蛋白質合成)性及び/または細胞増殖を刺激する剤と、混合しても良い。
【0027】輪郭を改良するため、並びに/または皮膚のオレンジの皮様の外観を予防または処理するためには、エルゴチオネインを、引き締め性、排水性、収斂性、脂肪分解促進性、伸張性及び/または剥離性の活性剤と、混合しても良い。
【0028】不適合性の場合には、上述の活性剤の少なくとも幾つかは、球、特にイオン性または非イオン性の小胞及び/またはナノ粒子(ナノカプセル及び/またはナノスフェア)に導入することができ、相互に不適合性の活性剤が、組成物中で互いに隔離されているようにする。
【0029】本発明は、以下の実施例に鑑みて、よりよく理解され、その利点はより明確となるであろう。これら実施例は、限定することなく、本発明を詳説するために与えられる。
【0030】
【実施例】(実施例1:グリケーションに対する、エルゴチオネインの作用の研究)グリケーション生成物の形成は、エルゴチオネインの存在下または非存在下において、ウシの血清アルブミン(BSA)とD-リボースとを混合しておくことによって観察される。グリケーションの抑制を、蛍光放出中での変化によって測定する。
【0031】特に、ウシの血清アルブミンを、1mg/mlの濃度でリン酸緩衝液(PBS)中に溶解させた溶液を、10mMの濃度のD-リボースと共に、37℃において14日間、500μM、1mMまたは5mMの濃度でのエルゴチオネインの存在下または非存在下において、インキュベートした。
【0032】グリケーションは、λex.=370nmにおける励起の後、λem.=440nmにおいて各試料から放出されるAGEの蛍光を測定することによって評価した。グリケーションの抑制は、糖単独で処理した試料と比較して、蛍光中での減少によって視覚化された。
【0033】結果を、下記の表1にまとめ、グリケーションされたコントロールに対する蛍光の抑制%として表した。
【表1】

このように、エルゴチオネインは、有利な抗グリケーション活性を有することが判明し、これは活性剤の濃度に依存していた。
【0034】(実施例2:化粧品組成物)以下に例として記載する組成物の成分の量は、重量%で表した。これらの組成物は、当業者には周知の、通常の技術に従って調製した。
【0035】
(実施例2−1:抗老化クリーム)
エルゴチオネイン 1%ソルビタントリステアレート 0.9%ポリエチレングリコールステアレート(40EO) 2%セチルアルコール 4%グリセリルステアレート 3%ステアリン酸 1.2%ワセリン 4%水素化ポリイソブテン 8.5%ミリスチルミリステート 2%シクロペンタシロキサン 5%グリセリン 3%保存料 0.3%水酸化ナトリウム 0.05%水 全体を100%とする残量【0036】
(実施例2−2:スリミング組成物)
エルゴチオネイン 1%PVM/MAデカジエンコポリマー 0.45%シクロヘキサシロキサン 7%カーボマー 0.3%トリエタノールアミン 0.5%プロピレングリコール 3%カフェイン 2%ゲル化剤(SEPPIC社製のSepigel(登録商標)305) 0.25%水 全体を100%とする残量【0037】
(実施例2−3:抗「オレンジの皮様の」皮膚クリーム)
エルゴチオネイン 1%ナトリウムジメチコーンコポリオールアセチルメチルタウレート(PHOENIX社製のPecosil(登録商標) DCT) 5.4%鉱物油 19%グリセリン 5%保存料 0.25%カフェイン 1%キサンタンガム 0.25%アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸のアンモニウム塩 1.2%シクロペンタシロキサンとジメチコノールとの混合物 5%プロピレングリコールによる、銀杏の二葉の抽出物 5%水 全体を100%とする残量
【出願人】 【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】LOREAL
【出願日】 平成13年6月25日(2001.6.25)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外7名)
【公開番号】 特開2002−37724(P2002−37724A)
【公開日】 平成14年2月6日(2002.2.6)
【出願番号】 特願2001−191929(P2001−191929)