| 【発明の名称】 |
人工関節インプラント部材 |
| 【発明者】 |
【氏名】難波 ▲吉▼雄
【氏名】土居 憲司
【氏名】高野 恭寿
【氏名】岩壷 卓三
【氏名】松田 光正
【氏名】スウーチュー アネタニコレタ
【氏名】黒坂 昌弘
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| 【要約】 |
【課題】大腿骨コンポーネントが脛骨コンポーネント上を転動、滑動するように構成された人工膝関節において、両コンポーネントの接触面の摩耗を一層低減することにより耐久性を高めた膝関節インプラント部材を提供する。
【解決手段】大腿骨コンポーネント1下面部を、金属粉末をプラズマ溶射すること等により多数の開気孔11を有するように形成するとともに、脛骨コンポーネント2の上面部2bを弾力性かつ多数の開気孔21を有する、例えばPVAハイドロゲルで形成する。これにより開気孔11には常に関節液が保持されることに加え、上からの荷重が掛かったときには開気孔21に保持されている関節液が絞り出されて接触面間に潤滑膜が形成され、接触面間の摩擦抵抗が低下するように構成される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 大腿骨に固定される大腿骨コンポーネントと脛骨に固定される脛骨コンポーネントとからなり、該大腿骨コンポーネント下面が該脛骨コンポーネント上面に接しつつ転動及び/又は滑動するように構成された膝関節インプラント部材において、前記大腿骨コンポーネント下面部に多数の開気孔を有するように構成されたことを特徴とする膝関節インプラント部材。 【請求項2】 前記脛骨コンポーネント上面部が弾力性を有し、及び/又は、多数の開気孔を有するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の膝関節インプラント部材。 【請求項3】 生体関節を構成する一方の生体骨に固定される第1の人工骨コンポーネントと、他方の生体骨に固定される第2の人工骨コンポーネントとからなり、第1の人工骨コンポーネントが第2の人工骨コンポーネントに接しつつ転動及び/又は滑動するように構成された人工関節インプラント部材において、前記一方の人工骨コンポーネントの接触面に多数の開気孔を有するように構成されるとともに、前記他方の人工骨コンポーネントの接触面が弾力性を有し、及び/又は、多数の開気孔を有するように構成されたことを特徴とする人工関節インプラント部材。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、慢性関節リウマチ、変形性膝関節症などによる高度に変形した膝関節あるいは交通事故、災害等により破壊された関節を正常な機能に回復させるために用いられる人工膝関節に関するものである。 【0002】 【従来の技術】図3に示すように、従来から、疾患や事故により変形・破壊された膝関節の大腿骨Aの遠位部と脛骨Bの近位部の骨切りを行い大腿骨コンポーネント1と脛骨コンポーネント2をそれぞれ挿入固定する人工膝関節置換手術が行われており、人の正常な関節運動を再現するものとして、脛骨コンポーネント2上面に接しつつ大腿骨コンポーネント1下面が転動及び/又は滑動することにより、屈曲可能となるような構造の膝関節インプラント部材(1、2)が用いられてきた。そして、大腿骨コンポーネント1下面側は耐荷重のため機械的強度に優れる金属材料で形成され、脛骨コンポーネント2上面側は衝撃緩衝および摩耗低減のため金属材料よりは弾力性があり、かつ耐摩耗性で摩擦係数の低い超高分子量ポリエチレンで形成されることが多かった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記人工膝関節の耐久性は摺動部の摩耗によって制約されるため、従来は大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントとが接する摺動部を鏡面加工することで摩擦抵抗を極力抑え、耐久性を高める工夫がなされてきた。しかしながら、このような工夫によっても超高分子量ポリエチレンが徐々に摩耗して膝関節インプラント部材の生体骨への癒合不全や、摩耗粉の生体内への蓄積により生体細胞に異物反応を起こさせるなどの問題は完全には解決されておらず、改善の余地が残されていた。 【0004】以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、摺動部の摩耗をより一層低減することにより耐久性を高めた膝関節インプラント部材を提供することにある。 【0005】図3に示す膝関節インプラント部材(1、2)は、大腿骨コンポーネント1下面が脛骨コンポーネント2上面に接しつつ転動あるいは滑動することで膝関節としての機能を発揮する。大腿骨コンポーネント1からの荷重は、脛骨コンポーネント2との接触面を通して脛骨コンポーネント2に伝わることになるが、両コンポーネント1、2とも常に同じ場所で接触しているのではなく、接触面が移動しながら転動、滑動している。したがって、この接触面に常に十分な関節液Cが供給されていれば、その潤滑作用により接触面の摩耗が抑制されることとなる。 【0006】古典的な潤滑理論によれば、生体関節の両関節面の相対運動によって関節液が両関節面の隙間に引き込まれこの流体圧による潤滑作用が摩耗を防止すると考えられていた。ところが、この理論が成立するためには両関節面に高速の相対運動が必要であるのに対して、実際の生体関節運動は間欠的であって両関節面の相対運動速度は小さいため、この理論では説明できない。 【0007】一方、McCutchenは、生体関節では自己起因性の潤滑機構、つまり両関節面が押し合うと両関節面を覆っている軟骨から関節液が絞り出され、両関節面の間隙に関節液膜を形成する浸出潤滑が作用して摩耗を防止するという理論を提案した(C.W.McCutchen:”The Frictional Properties of Animal Joint”,Wear,vol.5(1962)p.1〜17参照)。 【0008】本発明者らは、このMcCutchenの理論を基に、このような生体関節の浸出潤滑作用を模擬できるような人工膝関節の研究開発に鋭意取り組み、本発明を完成させたものである。 【0009】 【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、大腿骨に固定される大腿骨コンポーネントと脛骨に固定される脛骨コンポーネントとからなり、該大腿骨コンポーネント下面が該脛骨コンポーネント上面に接しつつ転動及び/又は滑動するように構成された膝関節インプラント部材において、前記大腿骨コンポーネント下面部に多数の開気孔を有するように構成されたことを特徴とする膝関節インプラント部材である。 【0010】請求項2の発明は、前記脛骨コンポーネント上面部が弾力性を有し、及び/又は、多数の開気孔を有するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の膝関節インプラント部材である。 【0011】請求項3の発明は、生体関節を構成する一方の生体骨に固定される第1の人工骨コンポーネントと、他方の生体骨に固定される第2の人工骨コンポーネントとからなり、第1の人工骨コンポーネントが第2の人工骨コンポーネントに接触しつつ転動及び/又は滑動するように構成された人工関節インプラント部材において、前記一方の人工骨コンポーネントの接触面に多数の開気孔を有するように構成されるとともに、前記他方の人工骨コンポーネントの接触面が弾力性を有し、及び/又は、多数の開気孔を有するように構成されたことを特徴とする人工関節インプラント部材である。 【0012】図1に示すように、本発明の大腿骨コンポーネント1は、その下面部(脛骨コンポーネントと接触する面)に多数の開気孔11を有するので、これにより大腿骨コンポーネント1下面部に常に関節液が含まれた状態に保たれ、転動あるいは滑動により接触面の位置が変化した場合にも、その新たな接触面に存在する開気孔に含まれている関節液が潤滑作用を発揮して両コンポーネント、特に脛骨コンポーネント2の摩耗を抑制するものである。 【0013】これに対して、従来の鏡面加工された大腿骨コンポーネントを用いる場合には、その表面に開気孔がほとんど存在せず関節液を保持することができないため潤滑作用が小さく、摩耗を十分抑制できなかったものである。 【0014】また、図2に示すように、上記大腿骨コンポーネント1下面部への開気孔11の付与に加え、脛骨コンポーネント2の上面部(大腿骨コンポーネント1と接触する面)2bを弾力性のある、多数の開気孔21を有するように構成することにより、上記McCutchenの理論で述べた軟骨と同様の働きにより、さらに潤滑効果が増幅される。すなわち、大腿骨コンポーネント1からの荷重により脛骨コンポーネント上面部2bが弾性的に圧縮される際に上記開気孔21内部に保持されていた関節液が絞り出され、この関節液が大腿骨コンポーネント1と脛骨コンポーネント2の接触面間に潤滑膜を形成することにより、潤滑効果が増幅される。一方、大腿骨コンポーネント1からの荷重が除去されると、脛骨コンポーネント上面部2bが弾性的に元の厚さに戻る際に周囲の関節液を開気孔21内に吸収して保持する。このように本発明の膝関節インプラント部材を用いることにより、生体関節と同様の、関節に荷重が掛かったときには関節液を放出して潤滑作用を高める一方、荷重が除去されたときには関節液を吸収・保持する自己起因性の潤滑作用をもつことが可能となり、接触面の耐摩耗性がさらに向上するものである。このように、脛骨コンポーネントの上面部は弾力性と多数の開気孔とをともに有することが好ましいが、弾力性と多数の開気孔のどちらか一方のみを有する場合であっても、大腿骨コンポーネントの下面と脛骨コンポーネントの上面の間に関節液を補充する働きを有する。 【0015】なお、上記図2に示す構成は人工膝関節のみでなく、他の部位の人工関節においても同様の作用効果を期待し得るものである。 【0016】 【発明の実施の形態】以下、本発明に係る膝関節インプラント部材の実施の形態について説明する。 【0017】先ず、本発明に係る大腿骨コンポーネント下面部への開気孔の付与方法について述べる。例えばチタン、チタン合金、もしくはセラミックス製大腿骨コンポーネント基材の表面に、プラズマ溶射法により粒径100〜350μmのCo−Cr合金粉末と粒径44μm以下のCo−Cr合金粉末の混合粉末を溶着させることにより、前記基材表面に開気孔が形成される。特に限定されるわけではないが、平均径が40〜100μmで平均深さが5〜1000μmの開気孔を面積率で20〜25%形成させることが大腿骨コンポーネントの機械的強度を低下させることなく関節液を大腿骨コンポーネント表面に適量保持できるので好ましい。 【0018】ここに、開気孔の平均径、平均深さ、および面積率は、画像解析装置により求めた。具体的には、先ず上記溶射面から任意の観察領域を選択し、画像解析装置でこの観察領域に含まれる個々の開気孔の径および面積を測定し、この個々の開気孔径の算術平均値を開気孔の平均径とし、一方、個々の開気孔面積の合計面積の、観察領域面積に対する割合を開気孔の面積率とした。また上記溶射面の任意の断面について、上記と同様、任意の観察領域を選択して画像解析装置でこの観察領域に含まれる個々の開気孔の深さ(長さ)を測定し、これの算術平均値を開気孔の平均深さとした。 【0019】なお、大腿骨コンポーネント下面部に開気孔を付与する方法は、上記プラズマ溶射法に限定されるものではなく、例えば、大腿骨コンポーネント基材の表面を機械加工もしくはレーザ加工により開気孔を形成する方法等を用いてもよい。 【0020】また開気孔付与(形成)後に大腿骨コンポーネント下面部に鏡面加工を施すことも、接触面の摩擦抵抗がさらに低下して摩耗が抑制され耐久性が一層向上するので好ましい。 【0021】次に、本発明に係る脛骨コンポーネント上面部への弾力性かつ開気孔の付与方法について述べる。例えば超高分子量ポリエチレン製脛骨コンポーネント基材の表面に弾力性のある、開気孔の多い(多孔性の)ポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲルの層を一体に形成する。特に限定されるわけではないが、形成されたPVAハイドロゲル層の弾力性は縦弾性係数(ヤング率)で1〜25MPa、層表面における開気孔面積率は30〜70%、層厚は2〜2.5mmの範囲とすることが、荷重に対する緩衝材としての効果と、荷重の掛り具合に応じて関節液を放出・吸収・保持する効果とを両立しながらより適切に発揮できるので好ましい。 【0022】ここに、縦弾性係数は、圧縮試験装置を用いてPVAハイドロゲルの円形状の薄膜を圧縮/引張することにより測定した値であり、開気孔面積率は、大腿骨コンポーネント下面部と同様の測定法および定義によるものである。 【0023】なお、本発明の膝関節インプラント部材を実際に患者体内に埋設・装着するにあたっては、ポリメタクリル酸メチル等の骨セメントを用いて残存生体骨と接着する方法、あるいは骨セメントを用いずに膝関節インプラント部材表面に凹凸をつけて生体骨を侵入させ固着する方法等、従来の膝関節インプラント部材に用いられている公知の技術を適宜採用すればよい。 【0024】また、膝関節以外の関節に用いられる人工関節インプラント部材についても、上記膝関節インプラント部材と同様の方法により本発明を実施できることは明らかである。例えば、股関節や肘関節に用いることができる他、膝関節において脛骨インプラント部材自体が2つの部材(例えば、基材部と上面部)に分けられ転動もしくは滑動するように構成された場合にその部分に適用することも可能である。 【0025】 【発明の効果】請求項1の発明によれば、大腿骨コンポーネント下面部が常に関節液を含んだ状態に保たれるので、その潤滑作用により両コンポーネントの接触面、特に脛骨コンポーネント上面の摩耗を抑制することができる。 【0026】請求項2の発明によれば、上記効果に加え、脛骨コンポーネント上面部に自己起因性の潤滑作用をもたせることができ、さらに接触面の摩耗を抑制できる。 【0027】請求項3の発明によれば、人工膝関節のみでなく、他の人工関節においても請求項2と同様の効果が期待できる。 【0028】すなわち、本発明により、耐摩耗性に優れた高耐久性の人工関節を提供できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001199 【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
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| 【出願日】 |
平成13年4月27日(2001.4.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089196 【弁理士】 【氏名又は名称】梶 良之 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−325781(P2002−325781A) |
| 【公開日】 |
平成14年11月12日(2002.11.12) |
| 【出願番号】 |
特願2001−131202(P2001−131202) |
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