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【発明の名称】 吸収性物品
【発明者】 【氏名】高井 尚志

【氏名】小西 孝義

【要約】 【課題】従来、水解性の吸収性物品において、水解性を高くした裏面層は表面強度と厚み方向の紙間強度が低かった。よって、裏面層を下着から剥がすときに、粘着層や裏面層を構成する繊維の一部が下着に付着して残るおそれがあった。

【解決手段】水解性の裏面層12と、水解性で且つ液透過性の表面層10と、裏面層12と表面層10の間に挟まれる水解性の吸収層11とを有する水解性のパンティライナー1などの吸収性物品において、前記裏面層12を水分散性繊維に、フィブリル化レーヨンまたは微小繊維状セルロースを含ませ、ウォータジェットで処理した水解性シートで形成した。前記フィブリル化レーヨンまたは微小繊維状セルロースが繊維間の結合強度を高め、且つ水解性も良好になる。特に裏面層12の外面の密度が高くなり、感圧粘着層30との接着面積が広くなるため、使用後に下着から剥がすときに、感圧粘着層30や繊維が下着に残りにくい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 裏面層と、前記裏面層の表面側に設置された吸収層と、前記吸収層を覆う液透過性の表面層とを有し、少なくとも前記裏面層が水解性の吸収性物品において、前記裏面層は、水分散性繊維とフィブリル化レーヨンとで形成されウォータジェット処理された水解性シートであり、この水解性シートの外面に、前記裏面層を下着に固着させるための感圧粘着層が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】 前記フィブリル化レーヨンは、1.8〜10mmの長さのレーヨン繊維の表面に長さが1mm以下のマイクロファイバーが延びたものであり、前記マイクロファイバーが、フィブリル化レーヨンの自重の0.1〜65%を占めるものである請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】 前記裏面層を形成する水解性シートには、前記フィブリル化レーヨンが3〜40質量%含まれている請求項1または2記載の吸収性物品。
【請求項4】 裏面層と、前記裏面層の表面側に設置された吸収層と、前記吸収層を覆う液透過性の表面層とを有し、少なくとも前記裏面層が水解性の吸収性物品において、前記裏面層は、水分散性繊維と微小繊維状セルロースとで形成されウォータジェット処理された水解性シートであり、この水解性シートの外面に、前記裏面層を下着に固着させるための感圧粘着層が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】 前記微小繊維状セルロースは、繊維長が100〜500μm、繊維径が0.001〜0.1μmであり、粘度が1000〜10000mPa・sである請求項4記載の水解性の吸収性物品。
【請求項6】 前記裏面層を形成する水解性シートには、前記微小繊維状セルロースが1〜10質量%含まれる請求項4または5記載の吸収性物品。
【請求項7】 前記裏面層を形成する水解性シートの、JIS P8129−1976 2.1による表面強度(ワックスNO.)が4以上である請求項1ないし6のいずれかに記載の水解性の吸収性物品。
【請求項8】 前記裏面層を形成する水解性シートの目付けが10〜50g/m2である請求項1ないし7のいずれかに記載の水解性の吸収性物品。
【請求項9】 前記裏面層を形成する水解性シートの水解性が50秒以下である請求項1ないし8のいずれかに記載の水解性の吸収性物品。
【請求項10】 前記裏面層と前記表面層とが、吸収層の周囲において水で解離可能に接合されており、前記表面層と前記吸収層とが、水解性と生分解性の少なくとも一方の性質を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パンティライナーや生理用ナプキンのように、裏面層に下着に固着するための粘着層が設けられた吸収性物品に係り、特に水洗トイレットへ廃棄可能な構造の吸収性物品に関する。
【0002】
【従来の技術】パンティライナーや生理用ナプキンなどの吸収性物品には、水洗トイレに流し捨てることができるものが開発されている。例えば特開平8−38547号公報や、特開平8−19571号公報には、水解性の吸収層と、それを挟む水解性の表面層と裏面層とから成る吸収性物品が開示されている。
【0003】また、パンティライナーや生理用ナプキンなどでは、下着などの外部装着体に掛止させるために、裏面層の外面に感圧粘着層が設けられている。吸収性物品の使用前は、前記感圧粘着層が離型紙で覆われており、前記離型紙を剥がして前記感圧粘着層を外部装着体の内面に固着させる。そして使用後は、粘着層を外部装着体から剥がして、吸収性物品をトイレに流し捨てる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記水解性の吸収性物品は、水洗トイレットに流したときに、浄化槽内などの多量の水に触れたときに、吸収層、表面層、裏面層を構成する繊維が分散し、その結果、浄化槽内で形を留めない状態に分解できるようになっている。
【0005】しかし、従来の水解性の素材は、一般に、水解性を高めると必然的に乾燥状態および湿潤状態での繊維どうしの結合強度が低くなる性質を有し、水解性と強度の双方を共に高めることが難しい。
【0006】特に、パンティライナーや生理用ナプキンの裏面層には、下着に固着させるための感圧粘着剤が塗工されるが、前記裏面層の外面での繊維間の結合強度が弱いと、使用後のパンティライナーなどを下着から剥がすときに、前記感圧粘着層が裏面層の外面から剥がれて下着に固着したまま残ったり、また裏面層の外面の繊維が感圧粘着層と共に下着に付着するおそれもある。
【0007】また、前記裏面層は、身体の装着感を良好にし、また身体の動きや下着の動きに追従できるように、軟質な風合いを有することが好ましい。しかし従来の水解紙などでは、湿潤時の強度が低いのみならず、硬質感があって身体に装着したときに身体に違和感を与えるおそれもある。
【0008】本発明の目的は、上記従来の課題を解決するものであり、裏面層の表面強度を高めて、裏面層の外面に設けられた粘着層や繊維が下着に付着しにくくなり、しかも前記裏面層が高い水解性を有する水洗トイレットへ流すことが可能な吸収性物品を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】第1の本発明は、裏面層と、前記裏面層の表面側に設置された吸収層と、前記吸収層を覆う液透過性の表面層とを有して、少なくとも前記裏面層が水解性の吸収性物品において、前記裏面層は、水分散性繊維とフィブリル化レーヨンとで形成されウォータジェット処理された水解性シートであり、この水解性シートの外面に、前記裏面層を下着に固着させるための感圧粘着層が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】例えば、前記フィブリル化レーヨンは、1.8〜10mmの長さのレーヨン繊維の表面に長さが1mm以下のマイクロファイバーが延びたものであり、前記マイクロファイバーが、フィブリル化レーヨンの自重の0.1〜65%を占めるものである。
【0011】また、前記裏面層を形成する水解性シートには、前記フィブリル化レーヨンが3〜40質量%含まれることが好ましい。
【0012】第2の本発明は、裏面層と、前記裏面層の表面側に設置された吸収層と、前記吸収層を覆う液透過性の表面層とを有し、少なくとも前記裏面層が水解性の吸収性物品において、前記裏面層は、水分散性繊維と微小繊維状セルロースとで形成されウォータジェット処理された水解性シートであり、この水解性シートの外面に、前記裏面層を下着に固着させるための感圧粘着層が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】例えば、前記微小繊維状セルロースは、繊維長が100〜500μm、繊維径が0.001〜0.1μmであり、粘度が1000〜10000mPa・sである。
【0014】また、前記裏面層を形成する水解性シートには、前記微小繊維状セルロースが1〜10質量%含まれることが好ましい。
【0015】前記両発明において、前記裏面層を形成する水解性シートの、JIS P8129−1976 2.1による表面強度(ワックスNo.)が4以上であることが好ましく、前記裏面層を形成する水解性シートの目付けが10〜50g/m2であることが好ましい。また、前記水解性シートの水解性が50秒以下であることが好ましい。
【0016】なお、本発明では、前記裏面層と前記表面層とが、吸収層の周囲において水で解離可能に接合されており、前記表面層と前記吸収層とが、水解性と生分解性の少なくとも一方の性質を有するものが好ましい。
【0017】本発明の吸収性物品では、少なくとも裏面層が、多量の水で繊維が分離する水解性シートで形成されている。また、好ましくは、表面層や吸収層は、天然繊維や生分解性材料で形成されて、浄化槽内で分散または分解可能とされている。
【0018】前記裏面層を形成する水解性シートに、フィブリル化レーヨンまたは微小繊維状セルロースを含ませる(前記フィブリル化レーヨンと微小繊維状セルロースの双方を含ませてもよい)ことにより、裏面層の表面強度を高くでき、この裏面層に対する感圧粘着層の固着強度が高くなり、下着などに前記粘着層が付着したり、または裏面層の繊維が付着するのを防止できる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の吸収性物品の一実施の形態であるパンティライナーを表側(装着者に対面する側)から見た斜視図、図2は図1に示すパンティライナーを表側から見た平面図、図3は図1及び図2に示したパンティライナーのIII−III線の断面図、図4は図1及び図2に示したパンティライナーを裏側から見た底面図である。なお、吸収性物品の長手方向(縦方向)をY方向とし、Y方向とほぼ直交する幅方向(横方向)をX方向とする。
【0020】図1及び図2に示すパンティライナー1は、図3に示すように装着者側に向けられる水解性で且つ液透過性の表面層10と、水解性の裏面層12と、表面層10と裏面層12との間に挟まれる水解性の吸収層11とで構成されている。また、裏面層12の表面側には、水溶性の熱可塑性樹脂層12rが塗工されている。
【0021】パンティライナー1の周縁1eから所定幅間隔をあけた境界線3までの領域である外周領域1bでは、表面層10と裏面層12と熱可塑性樹脂層12rとが積層されている。この外周領域1bにおいて吸収層11を取り囲むようにして加熱加圧処理が施され、水溶性の熱可塑性樹脂層12rが溶融し、表面層10と裏面層12とを接合するラウンドシール部2が形成されている。さらに、境界線3より内側の中間領域1aにおいて、接着剤13a,13bが、スパイラル状または水玉模様状に、互いに間隔を開けて各層間の全域に分散して設けられ、表面層10と吸収層11が接着され、また裏面層12上の熱可塑性樹脂層12rと吸収層11とが接着されている。
【0022】さらに、図3と図4に示すように、裏面層12の裏側には、使用時にパンティライナー1を、下着などの外部装着体の内面に固着させるための感圧粘着層30が設けられている。また、感圧粘着層30の表面には使用直前まで保護する離型紙が設けられる。パンティライナー1の装着時には前記離型紙が剥がされ、パンティライナー1が下着などの外部装着体の内側のクロッチ部に設置され、本体の裏側外面に設けられた感圧粘着層30がクロッチ部の内面に固着される。使用後のパンティライナー1は、下着の内面から剥がして、パンティライナー1を水中に廃棄する。廃棄されたパンティライナー1は、水洗トイレットの浄化槽内の多量の水で各層が分離し、また各層を構成する繊維が水によりバラバラに分散する。
【0023】第1の本発明の実施の形態では、前記裏面層12が、水分散性繊維とフィブリル化レーヨンとで形成されウォータジェット処理された水解性シート(スパンレースシート)であり、1枚の前記水解性シートで前記裏面層12が形成され、あるいは前記水解性シートが複数枚重ねられて前記裏面層12が形成される。そして前記裏面層12を形成する水解性シートの外面に、前記感圧粘着層30が設けられている。
【0024】前記水分散性繊維は、水に対する分散性が良い繊維のことである。ここでいう水に対する分散性とは、水解性と同じ意味であって、多量の水に接触することにより繊維どうしがバラバラになる性質のことである。
【0025】本発明において用いられる水分散性繊維としては、天然繊維及び/または化学繊維を使用することができる。天然繊維としては針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻、ケナフ、リンターパルプ、化学繊維としては再生セルロース繊維であるレーヨンやフィブリル化レーヨン、合成繊維であるポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、合成生分解性繊維であるポリ乳酸繊維等があげられる。これらの中でも、パルプやケナフなどの天然繊維、レーヨン、ポリ乳酸など、生分解を持つ繊維を用いることが好ましい。特に、天然繊維としては、叩解度が700cc以下、好ましくは600cc以下のパルプ、あるいはレーヨンを用いることが水分散性の点で望ましい。
【0026】これら水分散性繊維の繊維長は、繊維シートの水解性の点から2〜20mmであることが好ましい。さらに好ましくは2〜10mmである。また、水分散性繊維としてレーヨンを使用する場合、その繊度は1.1〜3.3dtexが好ましく用いられる。
【0027】前記フィブリル化レーヨンは、レーヨン繊維が叩解されることで、レーヨン繊維の繊維本体の表面にマイクロファイバーが延びたものである。フィブリル化レーヨンは、まず、パルプを例えばN−メチルモルホリン−N−オキシド(MMNO)などの有機溶媒に溶解させ、水中で紡糸した繊維素材を形成する。この繊維素材は、パルプ中のセルロースの結晶構造が保持されたまま微細構造を形成しており、これを叩解すると、繊維本体の表面にマイクロファイバーが延びたフィブリル化レーヨンが得られる。
【0028】フィブリル化レーヨンの前記繊維本体の繊維長は、1.8〜10mm、前記マイクロファイバーは、長さが1mm以下であり、フィブリル化レーヨン全体の質量に対してマイクロファイバーが0.1〜65%を占めるものである。フィブリル化レーヨンの繊度は1.1〜1.9dtexが好ましい。叩解度は700cc以下が好ましく、さらに好ましくは600cc以下であり、さらには400cc以下であってもよい。
【0029】本発明の裏面層12は、前記水分散性繊維を97〜60質量%、前記フィブリル化レーヨンを3〜40質量%とで形成された繊維ウエッブを、網目状ワイヤーの上に湿式方式で形成し、この繊維ウエッブに水流(ウォータジェット)を与えて処理したものである。このシートでは、水分散性繊維どうしが水解可能に交絡するとともに、フィブリル化レーヨンのマイクロファイバーが前記水分散性繊維および前記フィブリル化レーヨンの繊維本体に交絡する。またマイクロファイバーとレーヨンやパルプなどの水分散性繊維との表面のOH基との水素結合によりシートの強度が維持される。また水洗トイレットに流されて多量の水が与えられると、前記マイクロファイバーと繊維との結合が外れて、繊維がばらばらに崩壊する。
【0030】このように、前記水解性シートでは、フィブリル化レーヨンのマイクロファイバーの繊維間結合力を利用することで、裏面層12の強度を高くでき、また水内での分解も速くなる。この水解性とシート強度とのバランスをとるために、前記のように水分散性繊維の長さが2〜10mm、フィブリル化レーヨンの繊維本体の長さが1.8〜10mmであることが好ましい。各繊維の長さが前記未満であると、裏面層12の強度が低下し、前記を越えると、繊維どうしの交絡による結合力が高くなりすぎて水解性が悪くなる。また、フィブリル化レーヨンの叩解度が700ccまたは600ccを越えると、マイクロファイバーの占める量が少なくなり繊維間の結合強度が低下する。
【0031】また、前記裏面層12はウォータジェット処理されているため、全体が軟質である。特に、裏面層12の目付けが10〜50g/m2であると、裏面層12の全体の強度と、嵩高感および軟質感を呈することができる。
【0032】この水解性シートで形成された裏面層12は、シートの表面において水分散性繊維の間がマイクロファイバーで埋められて、裏面層12の表面での密度が高くなっている。したがって、感圧粘着剤30が裏面層12の外面に塗工されたときに、前記外面と感圧粘着層30との接着面積が広くなって、感圧粘着層30が裏面層12の外面から剥がれにくくなる。さらに裏面層12の外面では、前記マイクロファイバーが水素結合により繊維に強固に固着しているため、裏面層12の外面と感圧粘着層30との間に剥離力が作用したときに、裏面層12の外面で繊維が剥離しにくい。
【0033】したがって、使用後のパンティライナーを下着から剥がすときに、下着側に感圧粘着層30が残りにくく、また裏面層12の外面の繊維が下着側に残りにくい。
【0034】第2の本発明の実施の形態では、前記裏面層12が、前記水分散性繊維と微小繊維状セルロース(Microfibrillated Cellulose)とで形成されている。
【0035】前記微小繊維状セルロースは、セルロースを粉砕してミクロフィブリルに近い状態まで叩解したものである。主な製造方法としては、パルプを原料として、これを水懸濁液の状態で機械的に特殊な処理を行い、繊維軸方向の切断を抑えて極度に叩解して得ることができる。形状としては細長い繊維状で、繊維長は100〜500μm、繊維径は0.001〜0.1μmあるいは0.01〜0.1μmであり、いわゆるミクロフィブリルに近い状態で、微小繊維状セルロースは水不溶性の微細繊維である。
【0036】前記水分散性繊維に前記微小繊維状セルロースを含ませたものを湿式にて網目状ワイヤー上に供給して、繊維ウエッブを形成し、この繊維ウエッブに水流を与えて水解性シートを得る。
【0037】このウォータジェット処理された水解性シートでは、水分散性繊維どうしが水解可能に交絡するとともに、水分散性繊維間に微小繊維状セルロースが微細化されて混入し、微小繊維状セルロースと水分散性繊維とが水素結合する。このように、微小繊維状セルロースが繊維間の結合力の増強剤として機能し、水解性とシート強度とのバランスの点で優れたものとなる。
【0038】また、シート表面において水分散性の繊維間に、微小繊維状セルロースが存在することで、密度が高くなっている。そのため、前記第1の実施の形態と同様に、感圧粘着層30とのシート表面との接着面積が広くなって、感圧粘着層30が裏面層12の外面から剥がれにくくなる。また裏面層12の表面では前記微小繊維状セルロースが繊維間で強固な水素結合力を発揮しているため、感圧粘着層30と裏面層12との間に剥離力が作用しても、裏面層12の表面の繊維が分離しにくい。したがって使用後のパンティライナー1を下着から剥がすときに、粘着層30や繊維が下着の内面に残りにくい。
【0039】前記微小繊維状セルロースは、製造時の微細化の条件によって水素結合のしやすさが変化し、保水度が高い微小繊維状セルロースを用いれば、この微小繊維状セルロースの配合量が少量であっても強度の高いシートを得ることができる。また多量の水に接すると、前記微小繊維状セルロースの水素結合が外れ、水分散性繊維が分解する。このときのシートの水内での分散を速めるためには、水分散性繊維の長さが2〜10mmの範囲であることが好ましい。
【0040】本発明では、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.26における保水度が250%以上である微小繊維状セルロースを用いることが好ましい。この場合において、水分散性繊維及び微小繊維状セルロースの配合割合は、水分散性繊維が90〜99質量%で、微小繊維状セルロースが1〜10質量%となることが好ましい。この配合割合であると、裏面層12を形成する水解性シートの乾燥時および湿潤時の強度を高くでき、また水解性も良好になる。
【0041】また、 前記保水度が350%以上である微小繊維状セルロースを用いる場合、微小繊維状セルロースの配合量は1〜5質量%であれば、乾燥時と湿潤時の強度を高くでき、且つ水解性も良好になる。
【0042】また、前記微小繊維状セルロースの粘度は1000〜10000mPa・sが好ましく、さらに好ましくは4000〜8000mPa・sである。微小繊維状セルロースの粘度が前記範囲であると、水素結合による繊維間の結合強度を高くでき、また水解性の良好なものとなる。
【0043】前記粘度は、B型粘度計を用い、ロータNo.4を使用し、回転数を30rmpに設定し、98質量%の水に2質量%の微小繊維状セルロースを混合したものを試料とし、湿度25℃の環境下において測定したものである。
【0044】また、第2の実施の形態においても、裏面層12の目付は、10〜50g/m2が好ましい。
【0045】前記第1の実施の形態および第2の実施の形態において裏面層12として使用される水解性シートは、JIS P8129−1976 2.1による表面強度(ワックスNo.)が4以上であり、紙間強度が2.0N/18mm以上であることが好ましく、水解性が50秒以下であることが好ましい。さらに水解性シートの乾燥時のMDとCDの強度は25mm幅あたり8N以上であることが好ましく、さらに好ましくは10N以上である。
【0046】前記第1の実施の形態の裏面層12はフィブリル化レーヨンを含むことで、シートの強度と水解性のバランスが保たれ、第2の実施の形態では微小繊維状セルロースを含ませることでシートの強度と水解性のバランスが保たれている。したがって、前記シートにはバインダーを含ませなくてもよい。
【0047】ただし、裏面層12の表面強度や紙間強度をさらに高くするために、水不溶性カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボン酸変性ポリビニルアルコールやスルホン酸変性ポリビニルアルコールなどの変性ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどのアルキルセルロース、デンプン、変性デンプン、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレンオキシドなどの水溶性または水膨潤性のバインダーを含ませてもよい。
【0048】次に、前記感圧粘着層30は、図4に示すように、裏面層12の外面の全面に水玉模様状に設けられる。この場合の感圧粘着層30の形状は、直径が10mm以下で1mm以上のほぼ円形状であり、縦方向と横方向に間隔を開けて、一定のピッチで規則的にまたは不規則なパターンとして形成されている。感圧粘着層30の塗工パターンは、前記水玉模様状に限られるものではなく、ストライプ状、または矩形状(長方形)のパターンが規則的に配列しているものであってもよい。ただし、いずれのパターンであっても、裏面層12の外面に対する前記感圧粘着層30の占める面積率が、10〜50%程度であることが好ましい。あるいは、前記裏面層12の外面の全域に、前記感圧粘着層30が薄く塗工されていてもよい。
【0049】前記感圧粘着層30を形成する粘着剤は、通常吸収性物品の掛止手段として使用されている粘着剤であればどのようなものも使用できるが、特に親水性保護コロイド層を有したアクリル系エマルジョンなど、水系エマルジョンである水膨潤性の粘着剤や、水溶性のポリビニルアルコールが使用される。
【0050】本発明の実施の形態では、裏面層12の表面側に設けられている熱可塑性樹脂層12rが、例えば水溶性または水膨潤性ポリビニルアルコールフィルムで形成され、裏面層12上にラミネートされている。この熱可塑性樹脂層12rを設けることにより、吸収層11で吸収された液が裏面層12へ浸透するのを防止できるようになっている。ただし、中間領域1aに塗工される接着剤13a,13bは、水溶性または水膨潤性であり、例えばポリビニルアルコールのホットメルトが使用される。
【0051】前記吸収層11は、例えば水解紙やパルプやシートから形成されることが好ましい。例えば、目付50〜70g/m2程度のエアレイドパルプなどを用いて形成できる。水解紙で形成する場合、比較的厚みの薄い水解紙を複数枚重ねて形成すると水解性が良好であり好ましい。また例えば、目付が10〜20g/m2である水解紙を4〜8枚程度重ねて吸収層11を形成する。また、ポリビニルアルコールなどの水膨潤性樹脂を塗布した水解紙を積層させて形成してもよい。
【0052】表面層10は、例えば水解性のスパンレースシートである。または、水解性のシートに複数枚の水解紙を積層させて形成しても良い。この場合、シート及び水解紙は水素結合やニードリング処理によって一体化させても良い。また、表面層10は排泄液を表面層10の下の吸収層11へと導くため、図1に示すように複数の開孔部が全面的に設けられることが好ましい。
【0053】なお、本発明では、パンティライナーなどの吸収性物品の形状の保持に寄与する比較的厚い前記裏面層12が水解性であれば、他の表面層10や吸収層11とが必ずしも水解性の素材でなくてもよい。パンティライナー1のような比較的薄く小型の吸収性物品であれば、前記表面層10や吸収層11が非水解性であっても、長期間浄化槽内に存在したときに分解させることが可能である。
【0054】例えば、前記吸収層11は、薄く小さいものであれば、非水解性の不織布や非水解性の紙などであってもよい。ただし、これらを形成する素材は天然繊維や生分解性繊維であることが好ましい。また、表面層10は、薄い非水解性の不織布(好ましくは天然繊維や生分解性繊維で形成された不織布)、または生分解性の樹脂で形成された開孔シートであってもよい。
【0055】また、浄化槽内での分散や分解を速めるためには、前記吸収層11の周囲において、裏面層12と表面層10とが水で解離可能な手段で接合されていることが好ましい。この接合手段としては、前記ポリビニルアルコールなどの水溶性接着剤を用いるほか、裏面層12と表面層10とを、ニードリング処理などの機械的接合手段で接合してもよい。
【0056】以上、本発明の水解性の吸収性物品としてパンティライナーについて説明したが、本発明の吸収性物品は、下着や生理用ショーツに固着される粘着層を有する生理用ナプキンであってもよい。
【0057】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】(実施例A)水解性のパンティライナー1の裏面層12として用いられる水解性シートを作成して物性試験を行なった。
【0059】実施例Aでは、前記水解性シートを、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP:CSF=600cc)と、レーヨン(1.1dtex、繊維長5mm)と、フィブリル化レーヨンとで作成した。フィブリル化レーヨンは、例えばパルプを有機溶媒に溶解して水中で紡糸した繊維素材(アコーディス社製の製品名「テンセル」)を叩解して得られたものであり、繊維本体の繊維長が5mmで叩解度が200ccのもの、前記繊維長が5mmで叩解度が600ccのもの、前記繊維長が3mmで叩解度が200ccのものを使用し、前記各材料を表1に示す配合比(質量%)とした。またフィブリル化レーヨンを含まないものを比較例Aとした。
【0060】前記配合比の材料を水中で混抄し、網目状ワイヤー上に混抄した繊維ウエッブを形成し、得られた繊維ウエッブに水流(ウォータジェット)を与えて処理し、その後に乾燥させた。ウォータジェット処理条件は、繊維ウエッブの搬送速度を30m/minとし、孔径100μmのノズルを、ウエッブの搬送方向と横断する方向へ1.0mmピッチで配置し、ノズルからの水流の吐出圧力を2.94MPaとし、このウォータジェット処理を同じ繊維ウエッブに対して2回行った。得られた水解性シートの目付けと厚みは、表1に示す通りである。
【0061】(水解性)水解性の試験はトイレットペーパーほぐれやすさ試験に基づいて行った。詳細を述べると、前記各実施例および比較例のシートを縦10cm横10cmに切断したものを、イオン交換水300mlを入れたビーカーに投入して、回転子を用いて撹拌を行った。回転数は600rpmである。ただし、前記回転子などの諸条件はJIS P4501に規定に準じた。この時の繊維シートの分散状態を経時的に目視で観察し、分散されるまでの時間を測定した(単位は秒)。
【0062】(乾燥強度)各実施例および比較例を、幅25mm長さ150mmに裁断したものを試料として用い、テンシロン試験機により、チャック間隔を100mmで保持し、引張速度100mm/minで引張って破断強度を測定した。測定は紙の縦方向(MD:Machine Direction)及び紙の横方向(CD:CrossDirection)に対してそれぞれ行った(表では、測定値をN/25mmで表す)。
【0063】(表面強度)JIS P8129−1976 2.1のワックスを用いる方法にて測定した。表1にはワックスNo.を示している。
【0064】(紙間強度)実施例Aと比較例Aの水解性シートの両面それぞれに、18mm×15mmのポリエステル粘着テープ(日東電工製、「No.31B75ハイ」)を貼り付けた。その後、質量500gのローラーを速度5m/minの速度でテープの上で転送させて荷重を与えた。その後にシートの表裏に粘着させている前記テープの幅18cmの端部を掴み、シートの厚み方向で且つ互いに180度の逆向き方向へ両テープを速度100mm/minで引張り、そのときの最大荷重を測定した。表1では測定値を単位N/18mmで示す。
【0065】上記結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】次に、前記実施例Aおよび比較例Aを裏面層12として使用し、図1〜4に示す構造のパンティライナーを作成した。このパンティライナーの長手寸法は140mm、幅寸法は55mmである。表面層10は目付45g/m2の湿式スパンレースシート、吸収層11は目付60g/m2のエアレイドパルプを用いた。さらに、パンティライナーを下着に掛止させるための感圧粘着層30は、アクリル系エマルジョンを用いて形成し、水玉模様状に設けた。このパンティライナーを10人のモニターに8時間装着させ、その後、下着からパンティライナーを剥がし、以下の観察を行なった。そして各モニターにより前記装着試験を2回ずつ行った。
【0068】(着用テスト:糊残り)合計20回の着用テストの結果、パンティライナーを剥がした後に下着に糊が残った回数を調査した。
【0069】(着用テスト:材破)合計20回の着用テストの結果、パンティライナーを剥がした後に、裏面層の外面から繊維が剥がれて下着に残った回数を調査した。
【0070】結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】(実施例B)水解性のパンティライナー1の裏面層12として用いられるシートを実施例Bとして作成して前記実施例Aと同様の物性試験を行なった。
【0073】実施例Bでは、前記シートの材料として、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP:CSF=600cc)と、レーヨン(1.1dtex、繊維長5mm)と、微小繊維状セルロースを使用し、前記各材料を表3に示す配合比(質量%)とした。また微小繊維状セルロースを含まないものを比較例Bとした。
【0074】微小繊維状セルロースは、ダイセル化学社製の製品名「セリッシュ(KY−100Gタイプ):粘度6000mPa・s」を用いた。これはパルプを繊維径が約0.01μmまで微細フィブリル化させたものである。また微小繊維状セルロースとして、ダイセル化学社製の製品名「ミクセル(ファインタイプ):粘度4500mPa・sを用いた。これは、リンターパルプを繊維系が0.1μm以下まで微細フィブリル化させたものである。
【0075】前記各材料を表3で示す配合比(質量%)で配合し、実施例Aと同じ条件でシート化した。
【0076】そして各物性値と、着用テストを実施例Aと同様に測定した。それぞれの結果を表3と表4に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】前記表1ないし表4に示すように、表面強度が4以上で、厚み方向の紙間強度が2.0N/18mm以上であるシートを裏面層として用いたパンティライナーでは、着用テストの結果下着に糊残りや裏面層の一部が残ることのないことが確認できた。
【0080】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の水解性の吸収性物品においては、裏面層は高い水解性を維持しながらも、表面強度や厚み方向の紙間強度が高いため、使用時における形状保持性が高く、耐久性が高い。さらに、裏面層の外面に設けられた粘着層を介して外部装着体に接合された吸収性物品を、使用後に外部装着体から剥がし取ったとき、裏面層や繊維が外部装着体に残りにくい。
【0081】また、裏面層をウォータージェット処理して得られる水解性のシートで形成しているため、嵩高感と軟質感を呈することができる。
【出願人】 【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
【出願日】 平成13年3月8日(2001.3.8)
【代理人】 【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
【公開番号】 特開2002−263137(P2002−263137A)
【公開日】 平成14年9月17日(2002.9.17)
【出願番号】 特願2001−64711(P2001−64711)