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【発明の名称】 膝人工関節用インレー
【発明者】 【氏名】ヴィルフリート グリーン

【氏名】ディルク ザロモン

【氏名】トーマス カッツェル

【氏名】イェンス ラーム

【氏名】クラウス トーン

【要約】 【課題】インレーにおける付加的な摩滅またはコールドフローを生じさせることなく、インレーの傾倒の危険並びにそれによる膝関節の脱臼を回避する。

【解決手段】インレー30が、脛骨仮床20と大腿骨顆10との間の半月コンポーネントとして膝完全人工関節に備えられる。インレーは、凹面をなす上面36を有し、上面は、膝が曲げられるとき、大腿骨顆に対するスライド軸受として機能する。インレー上面の後方領域は、前後方向の断面において凸面をなす。上面の凸面領域40は、インレーのほぼ後方1/4の長さを越えて延びる。インレー上面の後方領域の凸面状湾曲により、曲げられた大腿骨顆によってインレーの後方領域に及ぼされる垂直力は、インレー下面を貫通するように向けられるが、垂直辺縁を貫通するようには向けられず、インレーには如何なる傾倒モーメントも及ぼされない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 脛骨仮床(20)および大腿骨顆(10)の間に半月コンポーネントとして備えられ、凹面に形成された上面(36)を有し、前記上面(36)は、膝が曲げられたとき、大腿骨顆(10)に対するスライド軸受として機能する膝完全人工関節用インレー(30)において、前記インレー(30)の上面(36)の後方領域が、その前後方向の断面において凸面に形成されていることを特徴とするインレー。
【請求項2】 前記上面(36)の凸面領域(40)は、実質上、前記インレー(30)の後方1/4の部分を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のインレー。
【請求項3】 前記凸面領域(40)の曲率中心は、前記インレー(30)の下面の後端の前方の2mm〜10mmの範囲内に位置していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインレー。
【請求項4】 前記凸面領域(40)の頂点は、前記インレ−(30)の後端の前方の約6mm〜14mmの範囲内に位置していることを特徴とする請求項3に記載のインレー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、膝完全人工関節の脛骨関節代用物の半月コンポーメント(インレー)であって、脛骨仮床および大腿骨顆の間の半月コンポーネント備えられ、このコンポーネントは、表面に形成された上面を有し、この上面は、膝が曲げられたとき、大腿骨顆に対するスライド軸受として機能するようなインレーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】このようなインレーは、EP‐A‐0 732 092およびEP‐A‐0 765 645においてすでに知られている。インレー上面の表面上の構造は、この場合、インレーの全長を越えてのびており、前方および後方において鋭角端面(骨辺縁)で終わっている。顆状突起およびインレーの間には、組み合わされたスライド‐回転運動が生じる。それ故、膝が曲げられるとき、顆状突起およびインレーの間の接点は、後端に向かってずれる。顆状突起からインレーに対して及ぼされる力は、実質上この接点における接線に対して垂直な垂直力として作用する。この接点は、インレーの後方領域に位置しているので、この力は、後方に向けられ、そして、インレーに傾倒モーメントを及ぼす。その結果、インレーは、前方に向けられ、後方に向かって傾倒する。これによって、脱臼が生じ得る。このような傾倒モーメントはまた、靱帯組織の最適ではない状態によっても生ぜしめられ得る。
【0003】この文献は、インレーが脛骨高台部に動かないように固定されるのではなく、むしろ、脛骨高台部に対して制限された並進および回転運動を行い得るようになっており、さらに、大腿骨顆がインレー上面の凹面形状、並びに後方十字靱帯を含む自然の靱帯組織にのみ保持されることによって、大腿骨顆がインレーに対して前後にずれ得るような傾倒することのない膝人工関節に関するものである。
【0004】DE‐A‐43 08 563によれば、インレーは、蟻接ぎガイドによって脛骨高台部に固定されており、よって、並進および回転運動が可能とされる。がしかし、インレーは、脛骨高台部から持ち上げられるおそれがない。それに対応して形成されたガイドはまた、EP‐A‐0 634 156に記載されている。この拘束ガイドは、いわゆる受動的な傾倒保持手段となっている。インレーは、全般にポリエチレンから形成される一方、脛骨高台部は、チタン合金またはコバルト‐クロム‐モリブデン合金から形成されている。傾倒モーメントが発生するとき、この拘束ガイド内には、ポリエチレンインレーの付加的な摩滅、または高い面圧力による超高分子ポリエチレンの非常に危険なコールドフロー(常温で加圧により起こる歪み)が生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の課題は、インレーにおける付加的な摩滅またはコールドフローを生じさせることなく、インレーの傾倒の危険並びにそれによる膝関節の脱臼を回避することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題は、本発明によれば、インレー上面の後方領域を凸面に形成することによって解決される。
【0007】インレー上面の凸面領域は、実質上、インレーの後方1/4の部分を含み得る。凸面領域の曲率中心および曲率半径は、好ましくは、凸面の湾曲の頂点が、後端の前方またはせいぜいその後方2mmの範囲内に位置するように設定される。好ましくは、インレー上面は、後端においてほぼ水平になっている。好ましくは、曲率半径は、約10〜14mmに設計され、曲率中心は、インレーの後端の前方約2mmの位置にある。
【0008】好ましくは、インレー上面の凸面領域は、半径方向の力が発生するとき、その力のベクトルのインレー支持面との交点が常に後方のインレー辺縁の腹側に常に位置するように形成される。
【0009】平面の顆状突起に対するスライド軸受として機能するインレー上面の領域は、自然の膝に対応するように外側および内側のすり鉢部を有しており、顆状突起は、それに対応して外側および内側の顆エレメントを伴うように形成され、対応するすり鉢部内において回転し、スライド運動する。すり鉢部は、前後方向だけでなく、外側、内側方向にも凹面に湾曲している。インレー上面の凸面の後方領域内には、内側および外側湾曲部が保持され、前後方向にのみ凸面の湾曲部が存在しており、これらの全体がサドル面を形成している。
【0010】本発明のインレーによれば、際立った後方の骨辺縁は、全く存在しない。インレー上面の後方領域の凸面の湾曲部によって曲げられた大腿骨顆によって、インレーの後方領域に及ぼされる垂直力は、インレーの下面を貫くような方向に向けられ、周囲を取り巻く垂直な縁を貫通する向きには向けられない。その結果、インレーには、如何なる傾倒モーメントも及ぼされない(能動的な傾倒防止)。
【0011】インレーは、動き得るようにすることもできるし(脛骨高台部に対して可動)、あるいは固定することもできる(脛骨高台部に対して固定)。
【0012】固定されたインレーは、全く傾倒することがない。それにもかかわらず、発生する傾倒モーメントは、骨‐脛骨高台部の接合面内に伝達され、この領域内に引張力を生じさせる。この引張力は、脛骨内における脛骨インプラントの固定にとって有利なものとなり、あるいはかかる作用を誘発させる。このような傾倒モーメントは、本発明によるインレーの凸面構造においては、全く生じることがない。
【0013】本発明によるインレーは、超高分子量ポリエチレンから形成され、一般に生体適合性を有するチタン合金またはコバルト‐クロム‐モリブデン合金または生体適合性を有するセラミック材料から形成された脛骨高台部と結合するように嵌め込まれる。
【0014】可動インレーの傾倒は、脛骨高台部におけるインレーの拘束ガイドによって、例えば、蟻接ぎガイドによって確実に回避される。インレーの脛骨高台部に対する運動は、発生する傾倒モーメントまたは外向きの力が、ガイド内の摩耗、よって、ポリエチレン材料から形成されたインレーの望ましくない摩耗を導く場合がある。本発明による能動的な傾倒防止構造のため、インレーの拘束ガイドは、脛骨高台部上においては必要とされない。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施例について説明する。図1および図2は、大腿骨顆10、脛骨高台部20、およびそれらの間に配置された半月コンポーネントとして機能するインレー30を備えた完全人工関節を示したものである。図1は、膝が伸ばされた状態の人工関節を示しており、図2は、膝が曲げられた状態人工関節を示したものである。顆状突起10は、大腿骨12にボルトによって固定され、脛骨高台部20は、脛骨22にボルトによって固定されている。この場合、種々の公知の固定技術が用いられ得る。
【0016】これらの間に配置されたインレー30は、義肢の構造に依存して、予め与えられた程度で脛骨高台部20に面してスライド運動し、回転運動する(可動インレー)か、またはそれらに強固に結合される(固定インレー)。
【0017】上方から見たとき、脛骨高台部20は、後方の十字靱帯に対する半円形の後方スペースを伴った腎臓の形状を有している。図面に示された可動インレー30は、円板形状を有し、上方から見ると、脛骨高台部20と類似した形状を有している。インレー30は、実質上脛骨高台部20より小さい寸法を有しており、同様に、後方の十字靱帯に対する後方スペースを備えている。脛骨高台部20の中央には、ねじボルト24がねじ込まれており、その円筒状の頭26が突出している。インレー30は、その下面34に細長いあるいは半球形の窪み32を有し、この窪み32は、ボルトの頭26を遊びを伴って収容するようになっている。脛骨高台部20のインレー30に対する幾何学的関係、並びに頭26の窪み32に対する幾何学的関係は、いずれも、顆状突起が曲げられるとき(図2参照)、インレー30が脛骨高台部20より高くそびえることがなく、インレー30が自由に運動し、例えば、約±20°の角度だけ脛骨高台部20に対して回転し、また、前後に約9mm、内側および外側方向に約2mmスライド運動し得るように選択される。
【0018】インレーは、脛骨高台部20に固定され、インレーおよび顆状突起の間に回転‐スライド運動、すなわちこね回し運動が生じる。可動インレーの場合には、2平面内において、すなわち脛骨高台部20およびインレー30間の平面、並びにインレー30および顆状突起10の間の平面内において、スライド運動が生じる。インレー30および顆状突起10の間のこね回し運動は、それによって、最小限に抑えられ、その結果、インプラントの寿命が延びる。
【0019】インレー30の上面36は、内側および外側凹面の浅い窪みまたはすり鉢部38を有し、これらのすり鉢部38の間には、隆起が設けられている。すり鉢部38内においては、膝が曲げ伸ばしされるとき、大腿骨顆10が回転し、および/またはスライド運動する。すり鉢部38は、その後方領域において、凸面のスライド面40に連続している。凸面のスイラド面40は、前後方向において実質上インレー30の寸法の1/5〜1/4の長さにわたって延びている。図5から明らかなように、凸面のスライド面40の曲率半径Rは、約10mm〜14mmであり、この凸面のスライド面40の曲率中心は、インレー30の後端の前方約2mm(延びX)の位置にある。内側および外側方向において、スライド面はさらにわずかな凹面をなして湾曲している。
【0020】図3に示されるように、インレー30は、その断面において、従来公知のものと同様、完全な凹面をなす上面36を備えている一方、図4に示されるように、本発明によるインレー30は、後方の凸面状のすり鉢部38を備えている。
【0021】顆状突起10によって、インレー30に及ぼされる力46は、常に、実質上インレー30の上面に対して垂直方向に、すなわち、接点14における接線に対して垂直な向きに生じる。膝が曲げられるとき、顆状突起10は、後に動作する靱帯の状態次第で後方に向かってずれ、それによって、顆状突起10とインレー30との間の接点は、インレー30の後端上に位置する。図3に示されるような専ら凹面上の窪みの場合には、この垂直力46は、後方に向けられた力の成分を有しており、この力の成分は、より大きければ大きいほど、顆状突起10およびインレー30の間の接点14の後方に離れて位置するようになる。顆状突起10および/またはインレー30の間のより後方にずらされた接点14、並びに後方に向けられた垂直力46によって、力のベクトルは、インレーの後方辺縁を貫通するように向けられ、それによって、傾倒モーメント44が発生し、その結果、インレー30の前面が持ち上げられる。こうして、顆状突起10は、インレー30の後端からすべり落ち、そして、脱臼が発生する。
【0022】図4に示されるような本発明によるインレー30の場合には、顆状突起10およびインレー30の間の接点14が、インレー30の後端に位置するときであっても、垂直力のベクトルは、常にインレー30の下面34を貫通する方向に向けられているので、傾倒モーメントは全く発生することがなく、むしろ、逆方向をさす回転モーメント48が発生する。このことは、インレー30の上面36の後端を凸面状に形成することによって達成され、このとき、凸面をなすスライド面40の曲率中心は、好ましくは、インレー30の下向きの射影の内側、すなわちインレー30の支持面または下面の内側に位置し、いずれにせよ、インレーの後端の後方2mmの位置に位置する。顆状突起10によってインレー30に及ぼされる力のベクトルは、それ故、インレー30の下面を貫通し、よって、如何なる傾倒モーメントも発生することがない。こうして、凸面をなすスライド面40により、顆状突起10が曲げられるときのインレー30の傾倒が防止される。
【0023】インレー30が固定される場合には、脛骨高台部20の上面が、例えば、前方に向かって開いたV字形状の凹部を備え、そうでなければ、平坦上に形成される。また、このインレーは、円板上に形成され、上方からみたとき、同様の後方十字靱帯に対する後方スペースを備えた脛骨高台部と同様の形状を有している。固定されたインレーの寸法は、それに対応して全般的に脛骨高台部と同様である。インレー30の下面34は、平坦に形成され、その前方に下向きの突出部を備えている。突出部は、脛骨高台部20のV字形状の凹部内に位置する。インレー30は、インレーの溝孔を貫通してねじ込まれるねじボルトによって、脛骨高台部に固定される。インレー30は、回転することはなく、ただ、非常に制限された前後方向のスライド運動のみを行い得る。インレーの可動性はまた、脛骨高台部の周囲を取り巻く辺縁によっても制限される。このような固定されたインレーもまた、傾倒を生じさせるような力の発生を回避するという長所を有している。
【出願人】 【識別番号】502023239
【氏名又は名称】ケラメード メディチンテクニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】KERAMED Medizintechnik GmbH
【出願日】 平成14年1月21日(2002.1.21)
【代理人】 【識別番号】100068032
【弁理士】
【氏名又は名称】武石 靖彦 (外2名)
【公開番号】 特開2002−224149(P2002−224149A)
【公開日】 平成14年8月13日(2002.8.13)
【出願番号】 特願2002−11499(P2002−11499)