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【発明の名称】 眼科手術用カッタの刃先清浄化処理法
【発明者】 【氏名】真野 富也

【氏名】栗田 英次

【氏名】坂井 徹

【要約】 【課題】刃先に残留する微細固形物等を眼科手術室内で簡便且つ確実に除去し得て、刃先の表面を良好に清浄化処理することができるようにする。

【解決手段】眼科手術用カッタ1の刃先15aを滅菌水により湿潤させる。湿潤された刃先15aを滅菌処理したゴム質材製の研掃体6に切り込み、刃先15aとこれによって形成された研掃体6の切り込み面6a,6aとを、研掃体自体の弾性により密着させた状態で、刃先15aの切り込み方向と直交する方向に相対運動させることにより、刃先15aに付着する微細固形物を切り込み面6a,6aで擦り取る。そして、研掃体6から離脱させた刃先15aに医療用ガスを吹き付ける。研掃体を構成するゴム質材は、天然ゴム、スチレン系エラストマ樹脂、ポリ塩化ビニル系エラストマ樹脂又はシリコン系エラストマ樹脂である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 眼科手術用カッタの刃先を滅菌水により湿潤させ、湿潤された刃先を滅菌処理したゴム質材製の研掃体に切り込み、刃先とこれによって形成された研掃体の切り込み面とを、研掃体自体の弾性により密着させた状態で、刃先の切り込み方向と直交する方向に相対運動させることにより、刃先に付着する微細固形物を切り込み面に転移させ、研掃体から離脱させた刃先に医療用ガスを吹き付けるようにしたことを特徴とする眼科手術用カッタの刃先清浄化処理法。
【請求項2】 眼科手術用カッタが角膜の切開手術に使用されるバータイプカッタであることを特徴とする、請求項1に記載する眼科手術用カッタの刃先清浄化処理法。
【請求項3】 研掃体を構成するゴム質材が、天然ゴム、スチレン系エラストマ樹脂、ポリ塩化ビニル系エラストマ樹脂又はシリコン系エラストマ樹脂であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載する眼科手術用カッタの刃先清浄化処理法。
【請求項4】 刃先に吹き付ける医療用ガスが、清浄な窒素ガスであることを特徴とする、請求項1、請求項2又は請求項3に記載する眼科手術用カッタの刃先清浄化処理法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、角膜の切開手術に使用されるバータイプカッタ等の眼科手術用カッタの刃先を清浄化処理する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】角膜の切開手術に使用されるバータイプカッタ等の眼科手術用カッタは、一般の外科手術用メスと異なって、一回限りの使用に供せられるものであり、手術後は廃棄される所謂使い捨てのものである。すなわち、かかる眼科手術用カッタは、医療用具製造工場において温水洗浄法等により洗浄処理されると共にエチレンオキサイドガス滅菌法,ガンマ線照射滅菌法等により滅菌処理された上で、密閉包装されたものであり、眼科手術室内においては、手術を行う都度、包装を解いて新しいカッタを取り出して使用するのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、眼科手術用カッタの刃先は、上述した如く、滅菌・洗浄状態で包装されており良好な滅菌状態に保持されるものの、極めて微小ではあるが眼科手術に悪影響を与える微細固形物が付着している可能性がある。例えば、刃先を研磨した際に、刃先には研磨によって生じる20〜30μm程度の金属粉や研磨剤残滓等の微細固形物が付着することがあるが、このような微細固形物は、包装前に行う上記した温水洗浄法等による洗浄処理によっては完全に除去されず、その一部が刃先に付着したまま残存する虞れがある。そして、このような微細固形物が付着した刃先により角膜の切開手術を行った場合、微細固形物が角膜を損傷する虞れがあり、角膜切開等の眼科手術を安全に行い得ない。
【0004】したがって、眼科手術用カッタについては、洗浄処理及び滅菌処理を施した上で包装されたものであるが、角膜の切開等の眼科手術を安全に行うためには、使用直前に開封されたカッタの刃先を清浄化処理して、これに付着する微細固形物を除去しておく必要がある。
【0005】本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、刃先に残留する微細固形物等を眼科手術室内で簡便且つ確実に除去し得て、刃先の表面を良好に清浄化処理することができる眼科手術用カッタの刃先清浄化処理法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成すべく、特に、眼科手術用カッタの刃先を滅菌水により湿潤させ、湿潤された刃先を滅菌処理したゴム質材製の研掃体に切り込み、刃先とこれによって形成された研掃体の切り込み面とを、研掃体自体の弾性により密着させた状態で、刃先の切り込み方向と直交する方向に相対運動させることにより、刃先に付着する微細固形物を切り込み面に転移させ、研掃体から離脱させた刃先に医療用ガスを吹き付けるようにしたことを特徴とする眼科手術用カッタの刃先清浄化処理法を提案するものである。かかる方法は、角膜の切開手術に使用されるバータイプカッタの刃先を清浄化処理する場合に特に好適する。また、研掃体を構成するゴム質材としては、天然ゴム、スチレン系エラストマ樹脂、ポリ塩化ビニル系エラストマ樹脂又はシリコン系エラストマ樹脂を使用することが好ましい。また、刃先に吹き付ける医療用ガスとしては、窒素ガス,炭酸ガス,合成空気等が使用されるが、一般には、眼科手術室に常備されている窒素ガスを使用することが好ましい。
【0007】
【実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1〜図6に基づいて具体的に説明する。
【0008】この実施の形態は、近視,乱視,遠視の矯正手術において角膜の切開に使用するバータイプカッタの刃先清浄化処理に本発明を適用した例に係る。
【0009】このバータイプカッタ1は、図1に示す如く、ダミープレート2にカッタガイド3と共に保持されたセット形態で包装され、出荷,販売されるものである。なお、これらの部材1,2,3には、包装前において、冒頭で述べた如き手法により洗浄処理,滅菌処理が施されている。
【0010】ダミープレート2は、手術機器のカッタ取付部と略同一の矩形板形状(長さ:50.8mm,幅:14.5mm,厚さ:1.0mm)をなす金属製のものであり、カッタ1及びカッタガイド3を、これらを当該カッタ取付部に取り付けた場合と同一形態で、保持している。カッタガイド3は、帯板状のガイド本体31とその両端部に設けた板バネ32,32とからなる金属製のものであり、ダミープレート2に、板バネ32,32によりガイド本体31を当該プレート2の表面2aに押圧接触させた状態で、プレート長手方向に滑動自在に挿通保持されている。
【0011】カッタ1は、図1及び図2に示す如く、手術機器の駆動部に取り付けられる略U字状の合成樹脂製の取付体11と、取付体11に固着されて両側に張り出す金属製のアーム12と、アーム12の両端部に一体形成された断面コ字状の金属製のガイド13と、取付体11に固着されて両側に張り出す金属製のバネ板14と、両ガイド13,13の先端部13a,13a間に橋架状に固着されたカッタ本体15とからなり、ダミープレート2に、バネ板14によりガイド13,13の先端部13a,13aを当該プレート2の表面2aに押圧接触させた状態で、プレート長手方向に滑動自在に挿通保持されている。
【0012】カッタ本体15は、図1〜図5に示す如く、その幅方向の一端縁部を刃先15aとする帯板状のもの(長さ:19.0mm,幅:1.0mm,厚さ:0.25mm)で、両端部をガイド13,13の先端部13a,13aに固着されている。ところで、刃先15aは、カッタ本体15の一端縁部の全長に亘って形成されているが、実質的に刃先15aとして機能するのはガイド13,13に固着されている両端部分を除いた部分である。したがって、以下の説明において、刃先15aとは、ガイド13,13の先端部13a,13a間に位置する刃先部分のみをいうものとする。なお、刃先15aの長さF及び幅G並びにカッタ本体15とダミープレート2との間隔(ガイド13の先端部13aの厚み)Hは、夫々、F=12.5mm,G=0.5mm,H=0.5mmである。
【0013】而して、バータイプカッタ1は、角膜切開手術を行うに際して、眼科手術室において開封され、ダミープレート2に保持された状態で本発明に従って次のように清浄化処理される。なお、清浄化処理は医師又は看護婦(以下「医師等」という)が人為的に行う。
【0014】まず、カッタ1及びカッタガイド3を保持しているダミープレート2を、図3に示す如く、カッタ本体15の刃先15aを上方に向けた状態で、処理台4に傾斜状にセットする。
【0015】処理台4は、図3に示す如く、一側端面部に、ダミープレート2を傾斜状に保持する上下保持部41,42と両保持部41,42間に位置する陥没部43とを形成してなる、略台形状の断面形状をなす合成樹脂製のものである。すなわち、処理台4は、上保持部41に形成した凹部41aにダミープレート2の一端部を左右方向移動不能に係合保持させると共に、下保持部42に形成した凹部42aにダミープレート2の他端部を左右方向及び下方向に移動不能に係合保持させることにより、カッタ1及びその上位のカッタガイド3を陥没部43に位置させた状態で且つカッタ1を下保持部42に下方向へ移動不能に係止させた状態で、ダミープレート2を傾斜状に固定保持するように構成されている。
【0016】そして、カッタ1の刃先15aを、滅菌水により湿潤させた上(図4(A))、研掃体6を、刃先15aの上方位においてダミープレート2の表面2aに押し当てた状態で、当該表面2a上を下方へと滑動させて(同図(B))、相対的に刃先15aを研掃体6に切り込ませる(同図(C))。
【0017】研掃体6は、図3〜図5に示す如く、ゴム質材製の矩形体であり、滅菌処理が施されている。研掃体6には、図3に示す如く、医師等が手で持って人為的に操作するための合成樹脂製の操作体61が固着されている。研掃体6の構成材としては、少なくとも■のような刃先15aに対する剪断抵抗性及び■のような弾性を有する天然ゴム、スチレン系エラストマ樹脂、ポリ塩化ビニル系エラストマ樹脂又はシリコン系エラストマ樹脂等のゴム質材が使用される。■刃先15aに対する剪断抵抗性が角膜と同程度又はこれをやや上回る程度であり、研掃体6に切り込みを入れた場合に刃先15aが損傷するようなことがなく、また刃先15aの切れ味が低下しない(角膜を切開するに十分な切れ味が維持できる)こと。■刃先15aによって形成された研掃体6の切り込み面6a,6aが、図(C)に示す如く、刃先15aの両面に十分に密着しうる程度の弾性を有すること。なお、図4(C)に示す如く、研掃体6の刃先切り込み方向の厚みJは刃先幅Gに対して、また研掃体6の高さKはダミープレート2の上面2aからカッタ本体15の上面までの高さLに対して、夫々十分に大きく設定されており、図6に示す如く、研掃体6の刃先切り込み方向に直交する方向の厚みMは刃先15aの長さFより小さく設定されている。
【0018】刃先15aの研掃体6への切り込みは、図3及び図6に示す如く、刃先15aの一端部位において行われ、その切り込み深さは、図4(C)に示す如く、刃先15aの幅方向においてその両面が研掃体6の切り込み面6a,6aに全面的に密着する程度とされる。
【0019】次に、研掃体6を、刃先15a及びダミープレート2の表面2aに押し付けたまま、刃先15aの切り込み方向と直交する方向に相対運動させる、つまりダミープレート2の表面2a上を刃先15aの一端部から他端部へと滑動させる(図4(C),図6)。すなわち、研掃体6を、切り込み面6a,6aが刃先15aに密着する状態で、刃先15aの全長に亘って移動させる。かかる研掃体6の移動操作(以下「研掃操作」という)を行うことにより、刃先15aの両面に付着している微細固形物は、切り込み面6a,6aによって擦り取られ、刃先15aから切り込み面6a,6aへと転移される。このとき、刃先15aの両面が滅菌水により湿潤されていることから、微細固形物の刃先15aの付着力が低下しており且つ刃先15aと切り込み面6a,6aとが密着状態を保持したまま円滑に相対運動される(滅菌水が両者6a,15aの接触部分における潤滑剤として機能する)ことになる。その結果、切り込み面6aによる微細固形物の擦り取り作用(以下「研掃作用」という)が良好且つ確実に行われる。
【0020】そして、研掃体6が刃先15aの他端部まで移動した時点で、研掃体6をダミープレート2の表面2a上を上方へ滑動させて刃先15aから離脱させる(図5(D))。なお、図4(B)〜図5(D)及び図6に示す一連の研掃操作は、必要に応じて、数回に亘って繰り返し行うことができる。この場合、研掃作用により切り込み面6aに転移された微細固形物が刃先15aに転移復帰する虞れを確実に防止するために、少なくとも、最終の研掃操作にあっては、研掃体6の向きを反転させて、先の切り込み面6a,6aが形成されていない研掃体部分を刃先15aに食い込ませるようにすることが好ましい。すなわち、少なくとも、最終の研掃操作は、新たに形成した切り込み面6a,6aによって行うことが好ましい。勿論、一つのカッタ1に対する研掃操作を、2個以上の研掃体6…を使用して、複数回行うようにすることも可能である。
【0021】研掃操作が終了すると、カッタ1の刃先15aに医療用ガス7を吹き付ける(図5(E))。医療用ガス7としては、窒素ガス,炭酸ガス,合成空気等が使用されるが、一般には、眼科手術室において常備されている窒素ガスを使用することが好ましい。医療用ガス7の吹き付けは、主として、刃先15aに残存する滅菌水(刃先15aを湿潤させるために使用した滅菌水)を乾燥,除去するためである。また、研掃体6の構成するゴム質材の種類によっては、稀に、研掃操作時にゴム質材の摩耗粉が生じて、これが刃先15aに付着する虞れがあるが、かかる場合にも、摩耗粉を医療用ガス7の吹き付けにより確実に除去することができる。
【0022】以上のように、本発明の方法によれば、開封されたカッタ1の刃先15aを眼科手術室において簡便に且つ良好に清浄化処理することができる。また、研掃操作が滅菌処理された研掃体6によって行われ且つ研掃操作前に刃先15aを滅菌水により湿潤させることから、開封後の大気接触による刃先15aの滅菌効果の低下をも防止することができる。これらのことから、バータイプカッタ1による角膜の切開手術を安全に行うことができる。
【0023】ところで、上記したバータイプカッタ1についての清浄化処理の前後において、刃先15aの両面における微細固形物の個数を光学顕微鏡により測定したところ、開封直後の刃先15aには18個の20μm未満の微細固形物と3個の20μm以上の微細固形物とが存在していたが、上記した清浄化処理後においては、刃先15aには全く微細固形物の存在が認められなかった。使用した光学顕微鏡における検出限界値(微細固形物の大きさ)は10μmであり、10μm未満の微細固形物の存在は角膜に何らの悪影響を及ぼさない。つまり、仮に刃先15aに当該光学顕微鏡により検出できない10μm未満の微細固形物が残存していたとしても、そのことによっては角膜の切開手術に何らの悪影響を及ぼさない。
【0024】なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に改良,変更することができる。例えば、本発明は、上記した角膜切開に使用されるバータイプカッタ1の刃先15aを清浄化処理する場合のみならず、眼科手術に使用する各種のカッタの刃先を清浄化処理する場合にも、上記したと同様に好適に適用することができる。また、操作体61を含む研掃体6の形状,構成や処理台4の形状,構成も、カッタ1又は刃先15aの形状等に応じて任意に設定することができる。また、カッタ1又は刃先15aの形状等によっては、処理台4を使用することなく清浄化処理を行うこともできる。
【0025】
【発明の効果】以上の説明から容易に理解されるように、本発明の方法によれば、眼科手術用カッタを、眼科手術室において、開封後、簡便に且つ良好に清浄化処理することができ、その後直ちに手術機器に取り付けて角膜切開等の眼科手術を安全に行うことができる。
【出願人】 【識別番号】501019033
【氏名又は名称】真野 富也
【識別番号】000208167
【氏名又は名称】大陽東洋酸素株式会社
【出願日】 平成13年1月15日(2001.1.15)
【代理人】 【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
【公開番号】 特開2002−209929(P2002−209929A)
【公開日】 平成14年7月30日(2002.7.30)
【出願番号】 特願2001−6420(P2001−6420)