トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学




【発明の名称】 3次元運動測定装置およびその方法並びに3次元位置検出装置
【発明者】 【氏名】荒井 賢一

【氏名】薮上 信

【氏名】三谷 英夫

【氏名】金高 弘恭

【要約】 【課題】被測定者に優しく、かつ低コストの顎運動測定装置を提供する。

【解決手段】上顎22と一体と考えられる額32に磁気マーカ16aを装着するとともに、下顎24の代表点として下顎歯列中、切歯に磁気マーカ16bを装着する。磁気マーカ16a、磁気マーカ16bの磁化方向は、それぞれ顔面の正面を向くように装着している。磁気マーカ16a、16bの磁界を検出する複数の磁界センサ20i(磁気マーカの数×5個以上)を各磁気マーカ16a、16bに対向して配置する。顎運動に伴う磁気マーカ16a、16bの磁界の変化を磁界センサ20iにより検出し、固定座標からの磁気マーカ16a、16bの位置を検出し、顎形状に基づき、顎運動をディスプレイ52上に表示する。この場合、磁気マーカ16a、16bは、配線が不要であるので、被測定者14にほとんど不自由を与えない。また、被測定者14の視界も良好である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】相対的に運動する少なくとも2つの物体に対して、それぞれ少なくとも1つ配置される磁気マーカと、前記物体に配置された各磁気マーカの磁界をそれぞれ6自由度運動計測用として非接触で検出する磁界センサと、前記磁界センサにより検出した磁界から前記各磁気マーカの6自由度運動のパラメータを求め、求めたパラメータと、前記各物体の形状に基づき、一つの物体を基準とする他の物体の相対的な運動を算出する信号処理手段とを備えることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項2】請求項1記載の3次元運動測定装置において、前記磁界センサの成分の数は、磁気マーカの数の少なくとも5倍の数とされていることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項3】請求項1記載の3次元運動測定装置において、前記磁界センサは、個々の磁界センサが一体的にされた磁界センサアレイとして構成されていることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項4】請求項1記載の3次元運動測定装置において、前記磁界センサは、前記磁気マーカの磁化方向の磁界成分を計測するように配置されることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項5】請求項1記載の3次元運動測定装置において、さらに、前記磁気マーカの磁界以外の外部磁界を検出する外部磁界検出センサを備え、前記外部磁界検出センサは、前記各磁気マーカの磁界を検出する磁界センサにより検出される前記外部磁界を相殺するために利用されることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項6】請求項1記載の3次元運動測定装置において、さらに、前記信号処理手段により算出された3次元的な位置に基づき、前記少なくとも2つの物体の3次元運動を表示する表示手段とを有することを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項7】請求項1記載の3次元運動測定装置において、さらに、任意に移動自由な磁気マーカを有し、前記信号処理手段は、前記移動自由な磁気マーカが前記物体の所望の部位に接触させられたとき、その接触させられた位置を検出することで、前記物体に配置されている磁気マーカの位置を基準に物体の所望の部位の位置を算出することを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項8】請求項1記載の3次元運動測定装置において、前記磁気マーカが配置される相対的に運動する少なくとも2つの物体は、頭蓋中、上顎と一体的に運動する部分と、下顎と一体的に運動する部分とであることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項9】請求項8記載の3次元運動測定装置において、前記上顎と一体的に運動する部分中、額に前記磁気マーカが配置されるとともに、前記下顎と一体的に運動する部分中、下顎歯に前記磁気マーカが配置されることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項10】請求項8記載の3次元運動測定装置において、前記上顎と一体的に運動する部分中、上顎歯に前記磁気マーカが配置されるとともに、前記下顎と一体的に運動する部分中、下顎歯に前記磁気マーカが配置されることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項11】請求項1記載の3次元運動測定装置において、前記磁界センサは、配置された磁気マーカの周辺に近接して配置される、1軸、2軸または3軸の磁界センサであることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項12】請求項1記載の3次元運動測定装置において、前記信号処理手段は、前記磁界センサにより検出した前記磁気マーカ周辺の磁界を理想のダイポール磁界とし、最尤度法により前記パラメータを求めることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項13】請求項1記載の3次元運動測定装置において、前記信号処理手段は、前記磁界センサにより検出した前記磁気マーカ周辺の磁界が擬似ダイポール磁界でありかつ磁界センサが有限寸法の磁界センサである場合、予め、磁気マーカと各磁界センサ間の相対位置に対する各磁界センサにより実測した磁界の相互関係を求めておき、前記相対位置と前記実測磁界との相互関係を用いて最尤度法により前記パラメータを求めることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項14】請求項1記載の3次元運動測定装置において、前記信号処理手段は、前記磁界センサにより検出した前記磁気マーカ周辺の磁界が擬似ダイポール磁界でありかつ磁界センサが有限寸法の磁界センサである場合、離散化手法による磁界解析により磁界センサ位置での磁界の理論値を求め、この理論値を用いて最尤度法により前記パラメータを求めることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項15】請求項1記載の3次元運動測定装置において、前記磁気マーカが配置される相対的に運動する少なくとも2つの物体は、人体中、手指、上肢、下肢等、各関節を介して運動する部位であることを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項16】相対的に運動する少なくとも2つの物体に対して、それぞれ少なくとも1つの磁気マーカを配置する配置過程と、前記物体に配置された各磁気マーカの磁界をそれぞれ6自由度運動計測用として磁界センサにより非接触で検出する検出過程と、前記磁界センサにより検出した磁界から前記各磁気マーカの6自由度運動のパラメータを求め、求めたパラメータと、前記各物体の形状に基づき、一つの物体を基準とする他の物体の相対的な運動を算出する信号処理過程とを有することを特徴とする3次元運動測定方法。
【請求項17】請求項16記載の3次元運動測定方法において、さらに、外部磁界検出センサにより前記磁気マーカの磁界以外の外部磁界を検出し、前記各磁気マーカの磁界を非接触で検出する磁界センサで検出される前記外部磁界を相殺する過程を有することを特徴とする3次元運動測定方法。
【請求項18】請求項16記載の3次元運動測定方法において、さらに、前記信号処理過程により算出された3次元的な位置に基づき、前記少なくとも2つの物体の3次元運動を表示する過程を有することを特徴とする3次元運動測定方法。
【請求項19】請求項16記載の3次元運動測定方法において、前記相対的に運動する少なくとも2つの物体は、頭蓋中、上顎と一体的に運動する部分と、下顎と一体的に運動する部分とであることを特徴とする3次元運動測定方法。
【請求項20】磁気マーカを有する移動自由なポインタと、前記ポインタが物体の表面に接触したときに、接触したことを知らせる信号を出力する接触信号出力手段と、前記ポインタを構成する前記磁気マーカの磁界を非接触で検出する磁界センサと、前記磁界センサの出力を信号処理する信号処理手段とを備え、前記信号処理手段は、前記接触したことを知らせる信号を検知したとき、前記磁界センサにより検出した磁界から前記磁気マーカの位置を求めることで、前記ポインタの前記物体への接触位置を検出することを特徴とする3次元位置検出装置。
【請求項21】請求項20記載の3次元位置検出装置において、前記物体が、人体中、顎、手指、上肢、下肢等、各関節を介して運動する部位であることを特徴とする3次元位置検出装置。
【請求項22】物体の表面に固定された固定磁気マーカと、前記物体の表面の位置を検出するために、前記物体の表面を自由にポイントできる、磁気マーカを有する移動自由なポインタと、前記ポインタが物体の表面に接触したときに、接触したことを知らせる信号を出力する接触信号出力手段と、前記固定磁気マーカと前記ポインタを構成する磁気マーカの磁界を非接触で検出する磁界センサと、前記磁界センサの出力を信号処理する信号処理手段とを備え、前記信号処理手段は、前記接触したことを知らせる信号を検知したとき、前記磁界センサにより検出した磁界から前記固定磁気マーカに対する前記ポインタを構成する磁気マーカの相対位置を求めて予め前記物体の特徴点として登録し、前記ポインタが前記磁界センサの検出範囲外の位置とされた後、前記物体の運動に従い運動する前記固定磁気マーカの位置が前記磁界センサにより検出されたとき、該検出された固定磁気マーカの位置と、この位置からの相対的な位置として前記登録してある特徴点を読み出して、前記物体の立体としての3次元運動を測定することを特徴とする3次元運動測定装置。
【請求項23】請求項22記載の3次元運動測定において、前記物体が、人体中、顎、手指、上肢、下肢等、各関節を介して運動する部位であることを特徴とする3次元運動測定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、物体に配置された磁気マーカの位置を磁界センサにより検出することで、前記物体の相対的3次元運動(たとえば、顎運動、手指の運動、上肢の運動、下肢の運動等)を測定する3次元運動測定装置およびその方法に関する。
【0002】また、この発明は、物体中の所望の位置を簡易に検出する3次元位置検出装置に関する。
【0003】
【従来の技術】従来から、物体の3次元運動を測定しようとする装置が市場に提供されている。たとえば、人体の頭部と一体に構成されている上顎に対する下顎の相対的な運動を測定するために、磁気式の顎運動測定装置が用いられている。この磁気式の顎運動測定装置では、被測定者の頭部に、磁界センサ組立体をベルト等により装着し、下顎切歯に1個の磁石を磁気マーカとして取り付ける。
【0004】この状態において、被測定者の顎運動に伴う下顎切歯に取り付けた1個の磁気マーカの変位を頭部に装着されている磁界センサ組立体により検出し、その1個の磁気マーカの運動をディスプレイ装置上等で表示するようにし、これを下顎の動きと同定し顎運動を測定するようにしている。
【0005】しかしながら、この従来技術に係る磁気式の顎運動測定装置においては、被測定者の頭部に装着される磁界センサ組立体の形状が比較的大きく、被測定者の頭部が拘束されることから、顎運動測定の際に、被測定者に与える不自由度が大きいという問題がある。
【0006】また、被測定者の頭部に装着される磁界センサ組立体の確実な固定が困難であるため、顎運動測定中に磁界センサ組立体が揺動する可能性が高く、揺動した場合には顎運動の測定誤差が大きくなり、正確な顎運動を再現することができなくなるという問題もある。
【0007】さらに、この磁気式の顎運動測定装置では、下顎切歯に取り付けられた磁気マーカ1点のみの運動が再現されるに過ぎず、下顎を立体として認識した状態での顎運動を再現することができないという問題もある。
【0008】これらの問題を解決するために、光学式の顎運動測定装置も提供されている。この光学式の顎運動測定装置では、被測定者の上顎の運動を測定するために、被測定者の頭部もしくは上顎歯列を固定源として一方の光源装置が配置されるとともに、下顎の運動を測定するために、下顎歯列を固定源として他方の光源装置が配置される。そして、これら2つの光源装置の顎運動に伴う位置の変化を、その周囲に配置固定されたCCDカメラにより撮影することで、下顎を立体として認識し、顎運動を測定(3次元6自由度の顎運動測定)することができるとされている。
【0009】しかしながら、この従来技術に係る光学式の顎運動測定装置においては、被測定者の頭部を固定源として光源装置が配置される場合、この光源装置が比較的大きく、被測定者の頭部が拘束されることから、顎運動測定の際に、被測定者に与える不自由度が大きいという問題が解消されるには至っていない。
【0010】さらに、被測定者の頭部に装着される光源装置の確実な固定が困難であることから顎運動測定中に光源装置が揺動し、顎運動測定の誤差が大きくなる可能性が存在し、正確な顎運動を再現することができないという問題も解決されるには至っていない。
【0011】しかも、光源装置は、CCDカメラにより撮影されるため、口腔外へ露出させなければならず、上顎歯列や下顎歯列を固定源として装着する場合には、口腔内と口腔外を接続する物理的なコネクタが必要となって、口唇の閉鎖が不可能となり、その上、比較的に大きくかつ重い光源装置を下顎に装着しているので、不自由のない自然な状態での咀嚼、嚥下、発音ができないなどの問題があり、結果として、所望の顎運動を測定することができない。
【0012】さらに、CCDカメラは、比較的に高価であるので、顎運動測定装置全体として高コストになるという問題もある。
【0013】なお、6自由度運動の測定をするためには、下顎を立体として認識することが必須であるが、従来は、CCDカメラを用いた光学式の3次元位置検出装置や高価なレントゲン装置等が用いられ、物体表面の任意点の設定を簡易かつ低コストに測定することができる装置が提供されていないという問題もある。
【0014】磁気マーカの位置を磁界センサにより検出する有用な従来技術として、この出願の発明者等による特開2000−337811号公報に開示された技術がある。
【0015】しかしながら、この技術は、下記に説明する問題点を有している。
【0016】第1に、この技術では磁気マーカの位置および方向を求めることは可能であるが、剛体等の物体の運動を計測することができない。
【0017】第2に、磁気マーカの磁気モーメントを、変数として求めているために、変数が多くなり、求めた位置精度の誤差が大きくなる要因となっている。
【0018】第3に、ニュートンラフソン法によって連立方程式を解くことを想定しているが、磁界センサ数を増加させた場合には、最適解を精度良く求めることが難しくなるという問題を内在している。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】この発明は上述した種々の課題を考慮してなされたものであり、被測定者が被る不自由性を改善し、より自然な状態での運動を正確に再現でき、しかも低コストに、顎運動等の少なくとも2つの物体間の相対的3次元運動を測定することを可能とする3次元運動測定装置およびその方法を提供することを目的とする。
【0020】また、この発明は、物体表面の任意点の3次元的な位置を簡単な構成で容易にかつ低コストで検出することを可能とする3次元的位置検出装置を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】この発明の3次元運動測定装置は、相対的に運動する少なくとも2つの物体に対して、それぞれ少なくとも1つ配置される磁気マーカと、前記物体に配置された各磁気マーカの磁界をそれぞれ6自由度運動計測用として非接触で検出する磁界センサと、前記磁界センサにより検出した磁界から前記各磁気マーカの6自由度運動のパラメータを求め、求めたパラメータと、前記各物体の形状に基づき、一つの物体を基準とする他の物体の相対的な運動を算出する信号処理手段とを備えることを特徴とする(請求項1記載の発明)。
【0022】この発明によれば、相対的に運動する少なくとも2つの物体に対して、それぞれ少なくとも1つの磁気マーカを配置し、各磁気マーカの磁界を非接触で磁界センサにより検出し、この検出結果と各物体の形状に基づき、信号処理手段により、一つの物体を基準とする他の物体の相対的な運動を算出するようにしている。
【0023】この場合、磁気マーカは、比較的に小型軽量でかつ薄肉に作ることが可能であり、さらには配線も不要であるので、被測定者あるいは被測定部位にほとんど不自由を与えることがなく、3次元運動を測定することができる。
【0024】また、磁気マーカの配置位置が、たとえば被測定者の口腔内など物理的に遮蔽された空間であっても、配線等が不要であることから容易に配置可能であり、被測定者は、たとえば、咀嚼、嚥下および発音動作を、ほとんど不自由なく、自然な状態で行うことができる。
【0025】また、磁界センサは、CCDカメラに比較して廉価であるので、3次元運動測定装置のコストを低減することが可能である。
【0026】たとえば、相対的に運動するそれぞれの物体に各1個の磁気マーカを配置する(取り付ける)ことで、5自由度の運動測定が可能であり、一方の物体に1個の磁気マーカを、他方の物体に2個の磁気マーカを取り付けた場合には、6自由度の運動測定が可能である。したがって、それぞれの物体に2個以上の磁気マーカを取り付けることで、それぞれの物体について6自由度の運動測定が可能である。ただし、磁気マーカの数を多くすると信号処理装置での計算負荷が大きくなる。
【0027】なお、磁界センサの成分の数は、磁気マーカの数の少なくとも5倍の数とする(請求項2記載の発明)。たとえば、磁界センサが1軸の成分を検出するセンサである場合には、磁気マーカ1個に対して少なくとも5個の1成分磁界センサ(1軸磁界センサ)が必要であり、磁界センサが2軸の検出成分を検出するセンサである場合には、磁気マーカ1個に対して少なくとも3個の2成分磁界センサ(2軸磁界センサ)が必要である。磁気マーカ1個に対して、2個の2成分磁界センサ(2軸磁界センサ)と1個の1成分磁界センサ(1軸磁界センサ)を用いてもよい。
【0028】この場合、磁界センサとして、個々の磁界センサが一体的とされた磁界センサアレイを用いることで、設置、持ち運び等の取り扱いが容易になるとともに、磁界センサアレイを構成する個々の磁界センサ間の相対位置が予め既知となるのでパラメータの計算が容易である(請求項3記載の発明)。
【0029】また、磁界センサは、磁気マーカの磁化方向の磁界成分を計測するように配置することが好ましい(請求項4記載の発明)。磁界センサに入力する磁界が大きくなり、SN比が向上するからである。逆に、SN比が向上するので、磁気マーカの磁化力および体積の小さいものを使用することができ、かつ磁界センサの検出感度のより小さいものを使用することが可能となる。
【0030】さらに、外部磁界を検出する外部磁界検出センサを用いることで、磁界センサで検出される地磁気等の外部不要磁界を磁界センサの出力から除去することが可能となるので、物体に配置された磁気マーカの磁界のみの検出が可能となり、より正確な3次元運動を得ることができる(請求項5記載の発明)。
【0031】また、信号処理手段により算出された3次元的な位置に基づき、前記の少なくとも2つの物体の3次元運動を表示する表示手段を設けることで、測定者は、3次元運動を視認することができる(請求項6記載の発明)。表示手段としては、たとえばCRTディスプレイあるいは液晶ディスプレイ等を用いることができる。
【0032】この場合、さらに、任意に移動自由なポインタの先端を、被測定者の所望の部位に接触させてその位置を検出することにより、前記物体に配置されている磁気マーカの位置を基準に前記物体の所望の部位の3次元位置を算出することができる(請求項7記載の発明)。
【0033】上記の装置は、磁気マーカが配置される相対的に運動する少なくとも2つの物体を、それぞれ、頭蓋中、上顎と一体的に運動する部分と、下顎と一体的運動する部分に選定することで、正確かつ容易に顎運動を測定することができる(請求項8記載の発明)。
【0034】この場合、下顎と一体的に運動する部分を下顎歯に選択して磁気マーカを配置することで、下唇などの軟組織と異なり歯は下顎骨とほぼ一体の剛体と考えられることから、より正確に下顎の運動を測定することができる(請求項9記載の発明)。
【0035】なお、額に代替して上顎歯に磁気マーカを配置することもできる(請求項10記載の発明)。この場合、各磁気マーカの距離が近づき、磁界の分離は若干困難になるが、上記したように、上顎歯も額など軟組織とは異なり、上顎骨とほぼ一体な剛体と考えられることから、額に配置することに比較してより正確に顎運動を測定することができる。
【0036】磁界センサは、磁気マーカの周辺に近接して配置することが好ましく、1軸、2軸または3軸センサを用いることができる(請求項11記載の発明)。
【0037】信号処理手段は、磁界センサにより検出した磁気マーカ周辺の磁界を理想のダイポール磁界として、最尤度法によりパラメータを求めることができる(請求項12記載の発明)。
【0038】なお、磁気マーカ周辺の磁界を理想のダイポール磁界と近似することができず、有限の大きさを持つ磁気マーカによって発生する擬似ダイポール磁界であって、磁界センサも有限の大きさを持つ場合には、予め、磁気マーカーと各磁界センサ間の相対位置対磁界の相互関係を求めておき、この相互関係を用いて最尤度法により前記パラメータを求めることができる(請求項13記載の発明)。
【0039】また、この場合には、離散化手法による磁界解析により磁界センサ位置での磁界の理論値を求め、この理論値を用いて最尤度法により前記パラメータを求めることもできる(請求項14記載の発明)。
【0040】この発明は、顎関節を介する顎運動に限らず、磁気マーカが配置される相対的に運動する少なくとも2つの物体として、人体中、手指、上肢、下肢等、各関節を介して運動する物体に対しても同様に適用することができる(請求項15記載の発明)。
【0041】この発明の3次元運動測定方法は、相対的に運動する少なくとも2つの物体に対して、それぞれ少なくとも1つの磁気マーカを配置する配置過程と、前記物体に配置された各磁気マーカの磁界をそれぞれ6自由度運動計測用として磁界センサにより非接触で検出する検出過程と、前記磁界センサにより検出した磁界から前記各磁気マーカの6自由度運動のパラメータを求め、求めたパラメータと、前記各物体の形状に基づき、一つの物体を基準とする他の物体の相対的な運動を算出する信号処理過程とを有することを特徴とする(請求項16記載の発明)。
【0042】この発明によれば、相対的に運動する少なくとも2つの物体に対してそれぞれ配置した磁気マーカの位置を磁界センサで検出し、この検出結果と各物体の形状に基づき、一つの物体を基準とする他の物体の相対的な運動を算出するようにしている。この場合、磁気マーカは、比較的小さく軽く配線も必要ではなく、さらに口腔内など遮蔽された空間(部位)でも使用可能であるため、被測定者あるいは被測定物にほとんど不自由を与えることがない。すなわち、より自然な状態で被測定者の運動を測定することが可能である。また、磁界センサは、CCDカメラに比較して廉価であるので、3次元運動装置のコストを低減することが可能である。
【0043】この場合においても、外部磁界を検出する外部磁界検出センサを用いることで、地磁気等の外部磁界を磁界センサの出力から除去することが可能となり、より正確な3次元運動を得ることができる(請求項17記載の発明)。
【0044】また、算出された3次元的な位置に基づき、前記の少なくとも2つの物体の3次元運動を表示する表示過程を設けることで、測定者は3次元運動を視認することができる(請求項18記載の発明)。
【0045】また、磁気マーカが配置される相対的に運動する少なくとも2つの物体を、それぞれ、頭蓋中、上顎体と一体的に運動する部分と、下顎骨と一体的運動する部分に選定することで、正確かつ容易に顎運動を測定することができる(請求項19記載の発明)。
【0046】さらにまた、この発明の3次元位置検出装置は、磁気マーカを有する移動自由なポインタと、前記ポインタが物体の表面に接触したときに、接触したことを知らせる信号を出力する接触信号出力手段と、前記ポインタを構成する前記磁気マーカの磁界を非接触で検出する磁界センサと、前記磁界センサの出力を信号処理する信号処理手段とを備え、前記信号処理手段は、前記接触したことを知らせる信号を検知したとき、前記磁界センサにより検出した磁界から前記磁気マーカの位置を求めることで、前記ポインタの前記物体への接触位置を検出することを特徴とする(請求項20記載の発明)。
【0047】この発明によれば、顎形状等の物体の表面の形状を簡単な構成で容易にかつ低コストで測定することを可能とする。なお接触信号出力装置は、ポインタとは別体に構成して手動で動作させることも可能であり、あるいはポインタに一体的に組み込んで接触したことを自動検知して信号(無線信号あるいは有線信号)として出力させることも可能である。
【0048】この3次元位置検出装置は、人体中、顎、手指、上肢、下肢等、関節を介して運動する部位に適用して有用である(請求項21記載の発明)。
【0049】さらに、この発明の3次元運動測定装置は、物体の表面に固定された固定磁気マーカと、前記物体の表面の位置を検出するために、前記物体の表面を自由にポイントできる、磁気マーカを有する移動自由なポインタと、前記ポインタが物体の表面に接触したときに、接触したことを知らせる信号を出力する接触信号出力手段と、前記固定磁気マーカと前記ポインタを構成する磁気マーカの磁界を非接触で検出する磁界センサと、前記磁界センサの出力を信号処理する信号処理手段とを備え、前記信号処理手段は、前記接触したことを知らせる信号を検知したとき、前記磁界センサにより検出した磁界から前記固定磁気マーカに対する前記磁気マーカの相対位置を求めて予め前記物体の特徴点として登録し、前記ポインタが前記磁界センサの検出範囲外の位置とされた後、前記物体の運動に従い運動する前記固定磁気マーカの位置が前記磁界センサにより検出されたとき、該検出された固定磁気マーカの位置と、この位置からの相対的な位置として登録してある前記特徴点を読み出して、前記物体の立体としての3次元運動を測定することを特徴とする(請求項22記載の発明)。
【0050】この発明によれば、予め、物体の表面に固定された固定磁気マーカの位置を基準とし、該基準位置からの相対位置で表現される物体表面上の1以上の複数の任意の点をポインタによって検出し特徴点として登録する。このポインタによる位置検出登録終了後に、前記固定磁気マーカの物体の運動に伴う位置の移動を検出したとき、前記特徴点を読み出すことで、固定磁気マーカの位置と特徴点の位置(固定磁気マーカの配置されてない登録位置)の3次元運動を同時に立体的に測定することができる。
【0051】この3次元運動測定装置は、人体中、顎、手指、上肢、下肢等、関節を介して運動する部位に適用して有用である(請求項23記載の発明)
【発明の実施の形態】以下、この発明の一実施の形態について図1〜図23の図面を参照して説明する。なお、図面が煩雑となるのを回避するため、図面中、被測定者14の外観、顎形状、歯形状等をデフォルメして描いている。
【0052】図1は、この発明の一実施の形態が適用された3次元顎運動測定装置および3次元位置検出装置を含む3次元顎運動測定システム10の全体構成を示している。
【0053】図2は、図1の3次元顎運動測定システム10の一部が、被測定者14に対して近づけられた状態での拡大構成を模式的に示している。
【0054】図3は、図1の3次元顎運動測定システム10の電気回路ブロック図を示している。
【0055】図1〜図3に示すように、3次元顎運動測定システム10は、基本的には、被測定者14の所定位置に接着剤等で取り付けられる永久磁石等の磁気マーカ16と、各磁気マーカ16の磁界をそれぞれ6自由度運動測定用として非接触で検出する磁界センサである磁界センサアレイ(単に、磁界センサともいう。)18(18a、18b)と、磁界センサアレイ18を構成する各磁界センサ20i(図2、図3に示すように、この実施の形態では、磁界センサ20i(i=1〜14、磁界センサ201〜207と磁界センサ208〜2014までの、上下それぞれ7個、合計14個の磁界センサ)で検出した磁界から各磁気マーカ16の位置および方向を求め、求めた各磁気マーカ16の位置および方向と、剛体である上顎22および下顎(下顎骨)24の形状に基づき、前記上下顎22、24の3次元的な位置をリアルタイムに算出する信号処理手段としてのパーソナルコンピュータ(PC)26とを有する。
【0056】なお、磁界センサアレイ18は、個々の磁界センサ20iが一体的にされた磁界センサ組立体として構成されているので、個々の磁界センサ20i間の相対位置は既知の位置としてパーソナルコンピュータ26に記憶しておくことができる。
【0057】図1および図3に示すように、パーソナルコンピュータ26は、図示していないCPU、ROM、RAM、ハードディスク等を有する信号処理手段としての本体部50と、この本体部50に接続されるCRTディスプレイ等のモニタディスプレイ52と、本体部50に接続される入力手段等として機能するキーボード54とマウス56とを有し、キャスター45により固定・移動自由なラック46の上段の棚上に収容されている。
【0058】ラック46には、パーソナルコンピュータ26以外にプリンタ60、AD変換器62、および電源部64が収容されている。
【0059】このパーソナルコンピュータ26等が配されているラック46は、被測定者14に配置されている磁気マーカ16と、磁界センサアレイ18および後述する外部磁界検出センサ44が配されている測定用スタンド38とに対して、磁気的な相互作用を及ぼさない程度に離れた位置となるよう配線66を介して配置されている。配線66は、電磁シールド被覆がなされた多心電線を用いている。
【0060】図3に示すように。電源部64は、電源コード80を介して、図示していないAC100V等の交流電源に接続されており、電源部64により生成された直流電源がAD変換器62に供給されるとともに、配線66bを介して磁界センサアレイ18a、18bおよび外部磁界検出センサ44に供給される。
【0061】図1に示すように、ラック46の下側棚板上には、ポインタホルダ74が固定され、このポインタホルダ74には、測定者(不図示)等が手に持って任意に移動させることの自由な、内部に磁気マーカ72を有するポインタ70が、抜き差し自由な状態で挿入されている。
【0062】このポインタ70は、図2、図3に示すように、磁石である磁気マーカ72が内蔵されるとともに、略円錐状の尖った先端部76を有する鉛筆状の棒体である。ポインタ70に内蔵される磁気マーカ72以外の部分の材質は、樹脂等の非磁性体とされている。この場合、ポインタ70の略円錐状の先端部76の位置と磁気マーカ72(の中心)間の距離は既知であり、本体部50のハードディスク内に記憶され格納されている。また、磁気マーカ72の磁化方向が、ポインタ70の軸心方向に一致するように磁気マーカ72が取り付けられている。測定誤差を最小限とするため、内蔵される磁気マーカ72は、なるべく先端部76に近い位置に配置固定することが好ましい。もちろん先端部76に配置することもできる。
【0063】この実施の形態において、磁気マーカ16および磁気マーカ72は、大きさが、5mm×5mm×2mm(厚み)程度、飽和磁束密度が1[T(テスラ)]程度の最大エネルギ積の大きいNdFeB(ネオジウム鉄ボロン)材質の焼結磁石の永久磁石を用いている。このような磁気マーカ16、72を用いることで、磁界センサ20iでは、10[mG(ミリガウス)]〜100[mG]程度の磁界を検出することができる。また、この実施の形態において、磁気マーカ16の磁化の方向(着磁方向)J(図3参照)は、被測定者14から外向きの方向に向けられ、磁界センサ20iの磁界検出方向が、この磁化方向Jに一致するように設定されている。
【0064】磁界センサ20iおよび外部磁界検出用センサ44としては、ホール素子を利用したもの、磁気抵抗効果素子を利用したもの、高周波キャリア型薄膜磁界センサ(Magneto Impedance Sensor)を利用したもの、あるいは高周波励磁コイルを有するフラックスゲートセンサ等、周知のものを用いることができる。なお、3軸のフラックスゲートセンサについては、たとえば、特開2000−337811号公報に詳細に開示されている。
【0065】特に、高周波キャリア型薄膜磁界センサを用いた場合には、ヘッドの寸法が、1mm以下となり、この1mm以下の高周波キャリア薄膜磁界センサの検出感度は、ヘッドの寸法が10mm程度のフラックスゲートセンサと略同等以上の感度を有する。
【0066】顎運動の測定に関し、高周波キャリア型薄膜磁界センサを用いる場合には、ヘッド寸法を点として考えることが可能であり、フラックスゲートセンサを用いる場合には、必要に応じて、ヘッド寸法を有限と考えて処理を行う。
【0067】すなわち、磁界センサ20iは、できるだけヘッド寸法の小さいものを採用することが好ましい。ヘッド寸法が小さいほど磁気マーカ16の周辺の磁界を正確に測定でき、複数の磁気マーカ16の検出位置精度が向上するからである。
【0068】この図1〜図3例において、磁気マーカ16a、16bは、椅子30に腰掛けている被測定者14の額部32と下顎歯(下顎歯列)34中、下顎切歯の歯冠部に、容易に取り外し可能な接着剤を介してそれぞれ取り付けられる。
【0069】図1に示すように、被測定者14が腰掛ける椅子30の背もたれ部には、被測定者14の頭部を支えるヘッドレスト29が取り付けられている。ヘッドレスト29は、個々の被測定者14の顎部24に磁界センサ20iの位置をできるだけ近づけるためと被測定者14の頭部の位置に対応するように、上下、左右、前後方向に移動させることが可能な構成になっている。
【0070】図2に示すように、磁界センサ20iを被測定者14に近接させ対向配置した測定時において、磁界センサ20iは、各磁気マーカ16a、16bを顔面の正面から取り囲むようにそれぞれ配置され、磁界センサ20iから構成される磁界センサ組立体としての磁界センサアレイ18a、18bは、センサホルダ36に取り付けられている。
【0071】この磁界センサアレイ18a、18bが取り付けられたセンサホルダ36が、図1に示すように、固定用ねじ41により上下方向(垂直方向)の自由な位置に調節可能な測定用スタンド38の支柱40間に取り付けられている。各支柱40は、被測定者14の脚部を避けるために略U字状のベース42の両端に垂直方向に取り付けられ、このような構成の測定用スタンド38は、ベース42の床側に取り付けられている4個のキャスタ43により被測定者14の方向に対して移動および固定自由である。
【0072】支柱40間には、さらに、地磁気等の外部磁界(外部不要磁界)を検出する3次元磁界センサである外部磁界検出センサ44が取付孔39(39a、39b、39c、39d)およびコ字状の枠37を介して配置固定されている。外部磁界検出センサ44は、ねじ35により、取付部39a、39b、39c、39dのいずれかの位置に配置固定することが可能である。
【0073】この外部磁界検出センサ44の最適な配置位置は、磁気マーカ16から作用する磁界が無視できるほど小さくなる位置(基本的には、磁気マーカ16から比較的に離れた位置)であって、かつ各磁界センサ20iに作用する磁気マーカ16以外の地磁気を含む外部磁界と同等の磁界を3軸成分で検出できる位置とされる。
【0074】外部磁界検出センサ44は、各磁界センサ20iの同相成分を相殺するために配置される。地磁気を含む外部磁界成分(直流磁界成分+変動磁界成分)中の変動(ふらつき)磁界成分をも相殺するために、磁気マーカ16からの磁界が0.1[mG:ミリガウス]以下となる位置が好ましい。
【0075】なお、この実施の形態においては、図1に示すように、外部磁界検出センサ44を、枠37を介して磁界センサ20iを有する磁界センサアレイ18と一体的に形成されているセンサホルダ36のパイプ部に一体的に固定するようにしている。このため、磁界センサアレイ18の位置が個々の測定者14に対応するように支柱40を上下させてセンサホルダ36を上下させても、磁界センサ20iと外部磁界検出センサ44との空間上の位置関係が変化しない。この構成のため、各取付部39a〜39dにおいて、一旦、各磁界センサ20iの出力と、外部磁界検出センサ44の出力との相殺関係を調整して決定し、パーソナルコンピュータ26のハードディスク等に記憶格納しておけば、この相殺関係の再調整が不要となるという利点を有する。
【0076】図1に示す測定用スタンド38全体の材質は、磁気マーカ16からの磁界あるいは外部磁界を乱さないように、たとえばプラスチック樹脂、木、あるいはステンレス等の非磁性体を用いることが好ましい。センサホルダ36および枠37、ねじ35の材質も同様に非磁性体を用いることが好ましい。
【0077】図1および図3に示すように、各磁界センサ20iおよび外部磁界検出センサ44で検出された磁界は、アナログ信号として、配線66を介してAD変換器(アナログデジタル変換器)62に供給され、該AD変換器62によりデジタルデータとしての磁界強度の値に変換され、パーソナルコンピュータ26を構成する本体部50中のRAMおよびハードディスクの所定領域に記憶される。
【0078】パーソナルコンピュータ26の本体部50は、上述したように、信号処理手段として機能し、この信号処理手段は、予め記録されているアプリケーションプログラムに基づき、後述するように、最尤度法等の繰り返し計算を利用し、AD変換器62を介して供給された磁界強度のデジタルデータから磁気マーカ16a、16bの位置をリアルタイムに算出するとともに、外部磁界検出センサ44の出力に基づき外部磁界の大きさと方向を算出し、さらには、必要なときに、内部に磁気マーカ72を有する移動自由なポインタ70の先端の接触部位の位置を算出する。また、信号処理手段は、ポインタ70の先端の接触部位の位置を、磁気マーカ16を基準とする相対位置として記憶し登録し、必要なときに読み出す処理を行う。
【0079】このようにして、磁気マーカ16a、16b等の3次元位置が測定される。本体部50は、測定した磁気マーカ16a、16b等の位置をRAMおよびハードディスクに記憶するとともに、これらの位置に基づき、ディスプレイ52上に、被測定者14に対応する人物の顎運動画像を動画としてリアルタイムに表示する。
【0080】この実施の形態に係る3次元顎運動測定システム10は、基本的には以上のように構成され、かつ動作するものであり、次に、図4に示す動作フローチャートを参照しながらその動作をさらに詳細に説明する。
【0081】まず、ステップS1では、各磁界センサ20iの出力値を、外部磁界検出センサ44の出力値で校正、いわゆるキャリブレーションしておく。この校正は、当該顎運動測定システム10の製造業者(メーカー)の工場内の磁気シールドされた特定設備内等で行われる。
【0082】すなわち、平等磁界(地磁気程度の磁界)を外部磁界検出センサ44と各磁界センサ20iに、同時に、たとえば、直交3軸であるX軸、Y軸、Z軸の順に順次作用させてゆき、各軸毎に、外部磁界検出センサ44と各磁界センサ20iの出力値との関係(たとえば、外部磁界検出センサ44と各磁界センサ20iの出力の差)を、各磁界センサ20iの出力値が、0値あるいは無視できるほど小さい値となるような補正係数を決めておき、ルックアップテーブル(外部不要磁界相殺(校正)用ルックアップテーブル(表)という。)等を作成しておく。このルックアップテーブルは、パーソナルコンピュータ26の本体部50中の記憶媒体であるハードディスクに記憶しておく。なお、ルックアップテーブルに代替して計算式(外部不要磁界相殺(校正)用計算式)として、格納しておくこともできる。
【0083】すなわち、ルックアップテーブル(校正表あるいはキャリブレーションテーブル)または計算式(校正用計算式)は、各平等磁界の外部磁界センサ44による検出磁界(ベクトル)をBreとし、各平等磁界の各磁界センサ20i(iはi番目の意味)による検出磁界(ベクトル)をBmeiとするとき、次の(1)式の値が0値あるいは最小となる値となるような補正係数kを、検出磁界Breを変数とする関数として決定しておく。
【0084】Bmei−kBre …(1)
このメーカ等でのキャリブレーションの後、該顎運動測定システム10は、たとえば病院や診療所あるいは健康センター等の測定場所に納入される。
【0085】次に、ステップS2では、図1に示すような測定場所において、3次元顎運動測定システム10に電源が投入されると、該測定場所で磁界センサ20の出力が、外部磁界検出センサ44の出力で自動的に校正される。すなわち、測定場所において、外部磁界検出センサ44で検出される地磁気等外部磁界の減算割合である上記の補正係数kが、その測定場所での外部磁界(ベクトル)Brに基づいて、上記の校正表あるいは校正用計算式から自動的に算出される。
【0086】このように、実際の測定場所で磁界センサ20の出力を外部磁界検出センサ44の出力により補正するのは、地磁気等の外部磁界が時間の経過あるいは場所によって一定ではなく変化するからである。
【0087】したがって、外部磁界検出センサ44を有する顎運動測定システム10によれば、測定中に、たとえ、地磁気等の外部磁界が変化しても、そのような変動性のノイズ成分が自動的に除去される。
【0088】なお、測定場所において、電源が投入された時点では、磁気マーカ16a、16bは、被測定者14に取り付けられていない。また、磁気マーカ16a、16bは、磁界センサアレイ18および外部磁界検出センサ44に影響を及ぼさないような十分離れた位置あるいは磁気シールド箱(不図示)内に置いてある。
【0089】次に、ステップS3では、椅子30に腰掛けている被測定者14に対して測定用スタンド38を対向配置することで磁界センサ20iを配置する。
【0090】この場合、測定用スタンド38を、図1の位置から被測定者14に向けて近づけ、磁界センサアレイ18のセンサホルダ36が所定位置、たとえば、図5に示すように、横から見て、センサホルダ36の被測定者14側の先端が、被測定者14の顔の前面と略一致する位置として、測定用スタンド38のキャスタ43を固定する。
【0091】このステップS3では、さらに、被測定者14に対して磁界センサアレイ18を所定高さに配置調整する。具体的には、たとえば、被測定者14の下顎(下顎骨)24中の下顎歯のうち、2本の中切歯Ti(いわゆる前歯)の位置(後に磁気マーカ16bを貼付する位置)と下側の磁界センサアレイ18bの高さが一致するようにホルダ36を上下させ、一致した状態で固定用ねじ41によりホルダ36を支柱40に固定する。
【0092】図6は、被測定者14に対して測定用スタンド38、換言すれば磁界センサ20iが配置された状態を示している。図6に示すように、測定用スタンド38の幅L2(図1参照)は、測定者14の最大幅である両上腕間の間隔を超える間隔に設定している椅子30の横幅L3よりも広くしてあるので、磁界センサ20iを有するセンサホルダ36を被測定者14に対し所望の位置に配置することができる。
【0093】この場合、外部磁界検出センサ44の高さ方向の位置は、被測定者14の太股に載せた腕の上側となるように設定しているので、被測定者14に接触することがない。
【0094】さらに、被測定者14の後頭部には、ヘッドレスト29を配置しているので、被測定者14は、自己の頭部をこのヘッドレスト29により圧迫なく自然に支えることができるとともに、ヘッドレスト29が上下、左右、前後方向に移動できるようになっているので、磁気マーカ16の貼付位置をできるだけ磁界センサアレイ18に近づけることができる。
【0095】このように、測定中において、被測定者14は、後述するように、きわめて小さい磁気マーカ16だけが取り付けられただけの状態、換言すれば、身体的に直接圧迫のないきわめて自由な状態で、顎運動測定あるいは診査を受けることが可能である。図5、図6に示すように、この測定中には、被測定者14の視界も測定装置によりほとんど制限されることがない。
【0096】したがって、この実施の形態による3次元顎運動測定システム10を用いることで、従来技術の項で説明したように、ベルト固定磁界センサ組立体あるいは光源装置等により被測定者の頭部を固定するという不自由さが一掃される。そのため、従来装置では困難であった小児や高齢者に対しても適用が可能になる。
【0097】次に、ステップS4においては、図6に示すように被測定者14の顔面に対し、磁界センサレイ18が対向配置された状態において、ねじ35を取り外して外部磁界検出センサ44が取り付けられた枠37を上下することで、上記(1)式の値が最小値となるように、当該測定位置における外部磁界検出センサ44の最適な高さを決定し、決定した高さ位置に最も近い位置にある取付孔39に、ねじ35により枠37、すなわち外部磁界検出センサ44を取付固定する。
【0098】3次元顎運動システム10による測定中に、外部磁界検出センサ44に関連してパーソナルコンピュータ26の本体部50で行われる演算は、各磁界センサ20i(iはi番目の意味)の校正前の出力値(測定磁界:ベクトル)をBmi0、外部磁界センサ44による検出磁界(ベクトル)をBrとし、上記補正表あるいは補正式に基づく定数をkとし、補正後の各磁界センサ20iの測定磁界をBmiとすれば、測定磁界(ベクトル)Bmiは、次の(2)式で表すことができる。
【0099】
Bmi=Bmi0−kBr …(2)
この(2)式により、外部磁界の時間変動性のノイズを除くことができることが分かる。
【0100】この測定中には、被測定者14に取り付けられる磁気マーカ16の1個に対して、少なくとも5個の成分を有する磁界センサ20iが配置されるようにする。このようにすれば、5自由度(x,y,z,θ,φ)の顎運動を観察することができる。
【0101】ただし、角度φとθは、図7に示すように、原点Oからの座標(x,y,z)で定まるベクトルPのz軸からの傾き(方向角)φ、およびベクトルPをxy平面へ射影したときのx軸からの傾き(方向角)θを表す。
【0102】次に、ステップS5では、磁気マーカ16の配置と上下顎の特徴点のマーキング処理を行う。なお、図1例に示す測定場所において、ステップS2〜S4の処理過程では、実際には、磁気マーカ16は、被測定者14に配置されていない状態にある。
【0103】ここで、上下顎の特徴点のマーキング処理とは、上顎22あるいは下顎24の表面上の任意点、たとえば下顎24でいえば下顎左右第一大臼歯中心窩の点や左右下顎頭近傍の点等の特徴点を、相対座標として設定する処理である。
【0104】さらに詳しく説明すると、上下顎の特徴点のマーキング処理とは、以下に説明するステップS6以降の処理において被測定者14の顎に固定的に貼付される磁気マーカ16の貼付位置に対する、上下顎上の任意点の相対位置(相対的3次元位置)を認識させ、登録(記憶)する処理である。
【0105】そのため、まず、ステップS5aでは、下顎24の正面の1箇所、この場合、図5に示すように、被測定者14の下顎(下顎骨)24中の下顎歯のうち、2本の中切歯Tiに跨って、それらの歯冠の中央に、上述した磁気シールド箱等から取り出した磁気マーカ16bを貼付する。歯に貼付するのは、歯は硬組織であり、下顎骨とほぼ一体と考えられるので、下唇等の軟組織に付けた場合に比較して、歯に取り付けることで下顎24の運動を正確に再現することができるからである。
【0106】次に、ステップS5bでは、下顎の任意点(所望点、特徴点、あるいは代表点)を設定するために、測定者等は、ラック46のポインタホルダ74からポインタ70を取り外し、ポインタ70の先端部76を、下顎歯列中の所定位置、たとえば両第2大臼歯Tm(図5参照)の歯冠部に接触させ、貼付した磁気マーカ16bの位置を基準とした両第2大臼歯Tmに対する3次元座標位置を、磁界センサ20iの出力により後述する最尤度法等により求める。
【0107】実際上、ポインタ70の先端部76を、被測定者14の第2大臼歯Tmに接触させているとき、入力装置であるマウス56により、ディスプレイ52上の表示に従い、所定の箇所、たとえば、画面中の「磁気マーカ付きポインタの接触中」と表示されている箇所をクリックすることで、そのときの磁界センサ20iの磁界からポインタ内部の磁気マーカ72の位置を求め、ポインタ70の先端部76の位置を求める。先端部76の位置が、第2大臼歯Tmの位置である。
【0108】このようにして、中切歯Tiに跨って貼付された磁気マーカ16bに対する下顎歯列中、左右の両第2大臼歯Tmの相対位置を求め、パーソナルコンピュータ26の本体部50内のハードディスクに記憶して登録しておく。同様な手順で、下顎24のその他の特徴点、たとえば下顎左右第一大臼歯中心窩の点や左右下顎頭近傍の点等の数点をマーキングし、磁気マーカ16bの位置に対する相対位置を記憶して登録しておくことにより、磁気マーカ16bの運動と同時にマーキングした数点の運動も測定することができる。
【0109】なお、被測定者14が、下顎24の任意点(特徴点、たとえば下顎左右第一大臼歯中心窩の点や左右下顎等近傍の点)のマーキング中に、頭部や顎部を動かさなければ、磁気マーカ16bは必要とせずに、ポインタ70のみで下顎24の任意点のマーキングを行うことができるが、磁気マーカ16bが貼付されている場合には、ポインタ70の先端部76を被測定者14に接触させたときに頭部や顎部が動いてしまった場合においても、貼付されている磁気マーカ16bに対する相対的位置として記憶できるため、下顎24の任意点に対して正確にマーキングを行うことが可能である。
【0110】また、ポインタ70による下顎任意点のマーキング(相対位置把握)では、ポインタ70の先端部76を所望点に接触させることによりその任意点を所望点として座標位置を記憶して登録するため、被測定者14の表面に出ている点のみしか座標位置を登録することができない。
【0111】しかし、実際には、被測定者14の内部の点の運動をみる必要もあり、そのような場合には、その位置をパーソナルコンピュータ26により算出した上で登録することも可能である。たとえば、左右下顎頭の近傍の点(耳珠のやや前方)を皮膚の上からポインタ70で指し示し、ポインタ70で指示し記憶した左右の点を結んだ直線に対し、内側へそれぞれ、たとえば20[mm]動かした点をパーソナルコンピュータ26により算出することで、その点(左右顆頭点に対応する。)の運動を測定することも可能である。
【0112】ステップS5bにおける下顎形状の特徴点の相対位置(磁気マーカ16bの位置を基準とする位置)の登録処理が終了したとき、ステップS5cでは、ポインタ70をポインタホルダ74に返却しておく。
【0113】次に、ステップS5dでは、図2、図5等に示しているように、上顎22の側に磁気マーカ16aを接着剤で取り付ける。
【0114】磁気マーカ16aは、顔の中心線上で、かつ図5に示すように、額32中、磁界センサアレイ18aと同じ高さの水平線上に貼付する。なお、後述するように、上顎22の側に磁気マーカ16aを貼付する理由は、測定中に上顎22が動いてしまった場合においても、下顎24の運動から上顎22の運動を差し引きすることにより、下顎24のみの純粋な運動を検出して測定することを可能とするためである。
【0115】このようにして、額32側の磁気マーカ16aの正面に磁界センサアレイ18aが対向配置され、下顎24側の磁気マーカ16bの正面に磁界センサアレイ18bが対向配置されることになる。
【0116】なお、磁気マーカ16aの取付箇所として、硬組織である上顎歯等を選定しないで、額32を選定したのは、額32が、上顎と一体に形成されている前頭骨の前頭鱗上の軟組織(皮膚組織)であり厳密には剛体とは言えないが、下顎歯列に取り付けた磁気マーカ16bとの距離が、たとえば上顎22を構成する上顎歯に配置した場合に比較して、5倍以上の距離となり、磁気マーカ16a、16b同士の磁界の相互作用が軽減され、磁界センサアレイ18a、18bで磁気マーカ16a、16b個々の磁界をより正確に検出できるからである。なお、磁気マーカ16a、16bの磁化の方向(着磁方向J)は、図3、図5に示すように、被測定者14の正面を向くようにしている。ここで、図5中、磁化の方向Jおよびこの磁界の方向Jを示す矢印を囲む長方形は、模式的なものであり、実際に存在するものではない。
【0117】次に、ステップS6では、磁界センサアレイ18a、18b内の磁界センサ20iの出力により、2個の双極子磁場(ダイポール磁界)の足し合わせ分布から上下顎に配置された磁気マーカ16a、16bの位置・方向を求める。
【0118】そのため、まず、図8に示すように、固定点である絶対座標系X0Y0Z0の原点位置から、磁気マーカ16aの位置を示す上顎座標系XuYuZuの原点位置、および磁気マーカ16bの位置を示す下顎座標系XbYbZbの原点位置までの位置・方向(ベクトル)Pu0、Pb0を求める。
【0119】この場合、上顎座標系XuYuZuと下顎座標系XbYbZbの原点は、上顎22あるいは下顎24中のどの位置でもよいが、ここでは、簡単のために、磁気マーカ16a、16bのそれぞれ中心位置に一致しているものとする。また、絶対座標系X0Y0Z0の原点位置は、たとえば、磁界センサアレイ18を構成する上下中央の磁界センサ224と2211を結んだ中点とする。
【0120】この仮定のもとで2個の磁気マーカ16a、16bの原点座標、換言すれば、上顎座標系XuYuZuと下顎座標系XbYbZbの原点座標を、それぞれ、位置および方向角(姿勢角)のパラメータで表して、Pu0(x1,y1,z1,θ1,φ1)、Pb0(x2,y2,z2,θ2,φ2)とする。
【0121】この場合、各磁界センサ20iで検出される測定磁界Bmiと、それぞれ磁気モーメントが既知である各磁気マーカ16a、16bの各双極子磁界(ダイポールフィールド)の各磁界センサ20iの位置での計算値である計算磁界をBciとするとき、測定磁界Bmiと計算磁界Bciとから、次の(3)式により最尤度法等により、前記ベクトルPu0(x1,y1,z1,θ1,φ1)、Pb0(x2,y2,z2,θ2,φ2)の各パラメータを求める。図2例の磁界センサ20iの配置例の場合、(3)式中、Σの範囲は、i=1〜n=1〜14である。
【0122】
Σ(Bmi−Bci)2=0または極小値 …(3)
この場合、マーカ数および磁気モーメントが既知であるので、最尤度法のパラメータが減少し、かつ収束性および精度を向上させることができる。
【0123】この(3)式の最小自乗法による最尤度法で、複数のダイポールの位置および方向を求める計算を詳しく説明する。
【0124】式の見た目での分かり易さを考慮するため、ここで、ベクトルPu0、Pb0をそれぞれ単にベクトルp1、p2と置く。このとき、上記(3)式を、以下の(3−1)式の評価関数S(p)と置く。
【0125】
S(p)=S(p1,p2)=Σ(Bmi−Bci(p1,p2))2=0 または最大値 …(3−1)
ただし、(3−1)式において、各値は以下の通りである。
【0126】
Bci(p1,p2)=(1/4π)× [{(−M1/r13)+(3(M1・r1)r1/r15)}
+{(−M2/r23)+(3(M2・r2)r2/r25)}] …(3−2)
(M1・r1)と(M2・r2)における「・」はベクトルの内積ベクトルp1=(x1,y1,z1,θ1,φ1)
ベクトルp2=(x2,y2,z2,θ2,φ2)
ベクトルp=(x1,y1,z1,θ1,φ1,x2,y2,z2,θ2,φ2)
ベクトルr1=(x1,y1,z1)−(xi,yi,zi)
ベクトルr2=(x2,y2,z2)−(xi,yi,zi)
ベクトルp1:磁気マーカ16aの位置ベクトル、方向ベクトルp2:磁気マーカ16bの位置ベクトル、方向(xi,yi,zi):i番目の磁界センサ20iの位置ベクトルn:磁界センサ20iの成分数ベクトルM1、M2:それぞれ磁気マーカ16a、16bの磁気モーメント(既知)
ベクトルr1:i番目の磁界センサ20iから磁気マーカ16aへの位置ベクトルベクトルr2:i番目の磁界センサ20iから磁気マーカ16bへの位置ベクトル上記のように定義される(3)式において、評価関数S(p)が、ベクトルp=qにおいて極小値をとれば、mを後述するパラメータの数として下記(3−3)式が成立する。
【0127】
(∂S(p)/∂pj)|p=q=0,(j=1,2…m) …(3−3)
上記(3−1)式を、この(3−3)式に代入して展開すれば、Σの範囲をk=1〜mとして、次の(3−4)式が得られる。
【0128】
Σ(∂2S/∂pj∂pk)Δpk=−(∂2S/∂pj),(j=1,2,…m) …(3−4)
この(3−4)式は、m行m列の行列式による連立方程式であり、これを解いてベクトルΔpkを求め、ベクトルp(i+1)=ベクトルpi+ベクトルΔpkから最適解であるベクトルqを求めることができる。
【0129】なお、磁界Bmi、Bciの距離による一階微分値を求め、この一階微分値と測定磁界Bmiのみに対して最尤度法を適用することで、磁界が距離の3乗に比例することを考慮すると、精度を向上させることができる。
【0130】全ての磁界センサ20iの測定磁界Bmiを用いることで、精度を向上させることができる。なお、所定以上の磁界強度の得られる磁界センサ20iの測定磁界Bmiを用いることで、精度の悪化を小さく保持しながら、計測時間を大幅に短縮することができる。
【0131】上記の(3)式のように、磁気モーメントを用いて計算する場合に、磁気マーカ16a、16bの相互作用が小さい場合には、そのまま用いてよいが、相互作用が無視できない場合には、実効的な磁気モーメントを算出する必要がある。
【0132】また、下顎24に付けている磁気マーカ16bの動きを、70(上下)×40(左右)×30(前後)mm3以内と仮定し、上顎22に付けている磁気マーカ16aの動きを30×30×30mm3以内と仮定して、最尤度法による解の存在範囲を制限することで、収束性の向上および算出時間の短縮を図ることができる。
【0133】さらに、磁界を検出するサンプリング間隔を、顎の動きが10〜20mm以内となる時間に設定することで、収束性が向上し、顎の動きを円滑に追跡することができる。
【0134】このようにしても、(3)式の演算が収束しなかった場合、あるいは収束した場合においても、パラメータの解が前後の軌跡から不自然な場合には、その点における解を除いて、その前の時刻の解を初期値として演算を繰り返せばよい。
【0135】なお、この計算は、顎関節を介する顎運動で説明しているが、顎運動に限らず、磁気マーカ16a、16bが配置される相対的に運動する少なくとも2つの物体として、人体中、手指、上肢、下肢等、各関節を介して運動する物体に対しても同様に適用することができる。
【0136】次に、磁気マーカ16a、16bの位置方向から上顎22および下顎24の物体のパラメータを求める。
【0137】この場合、上顎座標系XuYuZuにおける任意の点の座標を(xu,yu,zu)とし、下顎座標系XbYbZbにおける任意の点の座標を(xb,yb,zb)とする。
【0138】また、絶対座標系X0Y0Z0から見た上記任意の点の座標をそれぞれ(xu0,yu0,zu0)、(xb0,yb0,zb0)とする。
【0139】このとき、顎座標(xu,yu,zu)、(xb,yb,zb)から絶対座標(xu0,yu0,zu0)、(xb0,yb0,zb0)への変換は、次の(4)式および(5)式により得られる。(4)式および(5)式中、右辺の最も左側の3行3列の行列は変換行列と呼ばれ、各成分(各パラメータ)は、それぞれ、上顎座標系XuYuZuの絶対座標系X0Y0Z0に対する方向余弦、下顎座標系XbYbZbの絶対座標系に対する方向余弦である。なお、ベクトルPu0、Pb0(図8参照)は、それぞれ、既に求めてある、上顎の磁気マーカ16aおよび下顎の磁気マーカ16bの座標Pu0(x1,y1,z1)、Pb0(x2,y2,z2)である。
【0140】
【数1】

【0141】
【数2】

【0142】以下、主に下顎の運動に係わる(5)式について説明する。(4)式も同様であるので、必要な箇所以外は、その説明を省略する。
【0143】(5)式中の変換行列は方向余弦であることから、次の(6)式〜(11)式の関係が成り立つ。
【0144】
1b2+l2b2+l3b2=1 …(6)
1b2+m2b2+m3b2=1 …(7)
1b2+n2b2+n3b2=1 …(8)
2b3b+m2b3b+n2b3b=0 …(9)
3b1b+m3b1b+n3b1b=0 …(10)
1b2b+m1b2b+n1b2b=0 …(11)
(6)式〜(11)式の全6式において、変数が9個あるので自由度は3(変数から式の数を引いた数)である。
【0145】ここで、磁気マーカ16a、16bの磁化方向Jが平行であって、それぞれ、Xu軸、Xb軸と平行であると仮定すると(もともと平行となるように付けている。)、以下の(12)式〜(14)式が成り立つ。
【0146】
1=cosθsinφ …(12)
1=sinφsinθ …(13)
1=cosφ …(14)
すなわち、以下の(15)式〜(20)式が成り立つ。
【0147】
l1b=cosθu・sinφu …(15)
m1b=sinθu・cosφu …(16)
n1b=cosφu …(17)
l2b=cosθb・sinφb …(18)
m2b=sinθb・cosφb …(19)
n2b=cosφb …(20)
(15)式〜(20)式を上記(4)式、(5)式に代入すれば、次の(21)式、(22)式が得られる。
【0148】
【数3】

【0149】
【数4】

【0150】(21)式、(22)式の変換行列を考えると、6変数5方程式になり(1方程式は、右辺=左辺の関係となるので、5方程式にしかならない。)、まだ、パラメータの値、すなわち解を得ることができない。
【0151】ここで、さらに、絶対座標系X0Y0Z0、上顎座標系XuYuZu、および下顎座標系XbYbZbにおいて、Yu//Yb//Y0と、y座標が互いに平行であると仮定する。
【0152】この仮定により、(4)式および(21)式で、yu0//yu、m1u=m3u=0、m2u=1、θu=0゜となり、(5)式および(22)式で、yb0//yb、m1b=m3b=0、m2b=1、θb=0゜となるので、(21)式、(22)式は、それぞれ、以下に示す(23)式、(24)式となって、(6)式〜(11)式に示した変換行列は、5変数、5方程式となり、それぞれ5個のパラメータである変数(φu,l2u,l3u,n2u,n3u)と(φb,l2b,l3b,n2b,n3b)を全て求めることができる。
【0153】
【数5】

【0154】
【数6】

【0155】上述した(23)式、(24)式から、磁気マーカ16a、16bの位置および方向が求められたときには、上顎22および下顎24の任意の位置の絶対座標系からの座標を求めることが可能となる。
【0156】ここで、ステップS7では、上顎22に対する下顎24の相対的運動を、次の(25)式により求める。
【0157】
【数7】

【0158】この相対的運動を、ステップ10では、顎部の動きとしてディスプレイ52上の画像に変換して表示させることができる。すなわち、額32の磁気マーカ16aに移動が発生していても、それが画面上では固定点となるように処理し、かつ顎運動に伴う磁気マーカ16bの位置の移動とともに、ステップS5bで登録してある複数の特徴点の位置を読み出して同時に移動させて表示させることができる。
【0159】この顎部の動きは、ハードディスクあるいはデジタルビデオディスク等に記録することが可能であるので、何回でも再生することが可能となり、また、スロー再生、スチル再生、高速再生も可能となることから、さまざまな視点から顎運動を診断することが可能となる。
【0160】なお、被測定者14が複雑な動きの顎運動を行う場合であって、Yu//Yb//Y0が仮定できないときには、図9に示すように、下顎歯につけている磁気マーカ16bを磁気マーカ16bと磁気マーカ16cの2つとし、それぞれ、下顎歯列中、たとえば、左右の犬歯の歯冠部近傍に付ければ、3次元6自由度で顎運動のパラメータを算出することができる。
【0161】このように上述した実施の形態によれば、相対的に運動する少なくとも2つの物体の例である上顎22と下顎24に対して、それぞれ少なくとも1つの磁気マーカ16a、16bを配置し(装着し)、各磁気マーカ16a、16bの磁界をこれらに対向して配置した磁界センサアレイ18構成の磁界センサ20iにより非接触で検出する。次に、磁界センサ20iにより検出した磁界から各磁気マーカ16a、16bの位置および方向を求め、求めた各磁気マーカ16a、16bの位置および方向と、上顎22および下顎24の形状に基づき、上顎22および下顎24の3次元的な位置を算出するようにしている。この場合、磁気マーカ16a、16bは、比較的小さく軽く、かつ配線の必要がなく、さらには口腔内など遮蔽された空間でも使用が可能なため、被測定者14に対しては、ほとんど不自由なく、より自然な状態での運動を測定することが可能である。
【0162】また、磁界センサ20iは、CCDカメラに比較して廉価であるので、大幅に廉価な3次元運動測定装置を提供することができる。さらに、図2に示すように、被測定者14の視界をできるだけ妨げないように設計されているため、被測定者14に圧迫感を感じさせず、その点においても被測定者14に優しい測定装置であるということができる。
【0163】また、上述した実施の形態によれば、顎運動を測定中において、磁界センサ20iによる測定領域(磁界検出領域)内の磁気マーカ16の数は2個としている。一般に、磁界検出領域内の磁界の数が少ないほど位置検出精度が高まるので、2個のみの磁気マーカ16a、16bを測定するようにした上述の実施の形態によれば、きわめて高精度に磁気マーカ16a、16bの位置を検出することができる。なお、上顎22中、額32に配置している磁気マーカー16bは、上顎22に対する下顎24(磁気マーカ16b)の運動を測定するために(下顎24の純粋な運動を抽出するために)用いている。したがって、顎運動中に、上顎22が少々移動しても、その移動を除去することができる。
【0164】さらに、上述した実施の形態によれば、測定者あるいは被測定者14が手に持って移動自由な磁気マーカ72付きポインタ70を準備し、ポインタ70中の磁気マーカ72が、物体である被測定者14の表面である上記第2大臼歯Tm等に接触したときに、接触信号出力手段として機能するマウス56等をクリックして接触したことを知らせる信号を信号処理手段としてのパーソナルコンピュータ26の本体部50に出力する。このとき、本体部50は、磁界センサ20iにより検出した磁界から磁気マーカ70の位置を求めることで、前記物体の任意の部位の3次元的位置を算出することができる。すなわち、下顎22の運動を立体として認識することができる。このように顎形状の特徴点を固定的な磁気マーカ16bに対して相対的な位置として登録しておくことで、磁気マーカ16bの運動を検出したとき、登録してあった顎形状の特徴点を読み出して、同時に3次元表示することで、顎運動を正確かつ容易に診断することができる。
【0165】なお、接触信号出力手段としては、マウス56に代替して、ポインタ70にスイッチ(不図示)を設け、磁気マーカ70が物体の表面に押しつけられたときの押圧力に応じて該スイッチがオン状態となるように構成し、このオン状態において、赤外線信号をパーソナルコンピュータ26の本体部50に取り付けられた赤外線受信装置(不図示)に送るようにしても、磁気マーカ70の接触位置を測定することができる。
【0166】このような構成のポインタ70と磁界センサ20iおよび信号処理手段としてのパーソナルコンピュータ26を使用することで、顎形状等の物体の表面の形状を測定する3次元位置検出装置として、簡単な構成で容易にかつ低コストで測定することができる。
【0167】以下、この発明の種々の変形例について説明する。
【0168】磁界センサ20として、1軸センサ、2軸センサおよび3軸以上のセンサが考えられるが、1軸センサは磁気マーカ16の磁化方向の磁界強度の大きな成分のみを集中して計測することができる利点を有する。
【0169】2軸センサは、1軸センサに比較して低容積化、低コスト化が図れるとともに、平面的に強い磁界の部分を計測することで精度を向上させることができる利点を有する。
【0170】3軸センサは、単一のコアで3成分以上の測定が可能であるため、センサ数を低減することができ、顎等剛体が複雑に動いても、3軸成分で計測すればいずれかの成分が大きくなるために精度を向上することができる。
【0171】図2に示した配置形式と同様に、図10に示すように、下顎24の下顎歯34と額32にそれぞれ配置した磁気マーカ16a、16bと同じ高さで、その着磁方向(磁化方向)Jの延長線上と磁界センサ20iの測定方向(磁界検出方向)が一致するように並べる。磁界強度は、磁化方向の延長線上が最も双極子磁場に近く大きいためSN比が上がり、測定精度が向上する。
【0172】なお、磁界センサ20iは、一直線上に並べてもよいが、図10(図2も同様)に示しているように、顔面の形状に近い曲面に沿ってずらして配置することで、磁界センサ20i間の相互作用を抑制できるとともに、磁気マーカ16に対して磁界センサ20iを近づけることができるため精度が向上する。また、磁界センサ20iは、上下それぞれ一列としているが、二列以上にすることにより、最尤度法の精度がより向上する。なお、二列以上にしてもよいことは図11以降を参照する以下の説明に対しても適用できる。
【0173】また、磁気マーカ16bは歯の裏側(舌側)に付ける(接着する)こともできる。過蓋咬合などで下顎切歯の表側(唇側)に磁気マーカ16を接着できない場合もあるため、そのような被測定者14によっては、磁気マーカ16bを歯の裏側に付けることで、自然に顎運動を行うことができるようになり、非常に大きな利点である。
【0174】図11に示すように、下顎歯34に配置した磁気マーカ16bに対して、磁界センサ20iを上下方向に並べることもできる。このようにすれば、磁気マーカ16bが上下運動しても、磁気マーカ16bの磁化方向J成分の磁界を上下方向に並べた磁界センサ20iにより、大きな磁界強度として測定することが可能であり測定精度が向上する。
【0175】この場合、図12に示すように、磁気マーカ16bに対して、顔の正面では前後成分の磁界を測れるように磁界センサ20iを、顔の側面では左右方向の2次元的な磁界を測れるように2列の磁界センサ20iを並べるようにしてもよい。
【0176】また、図13に示すように、磁気マーカ16bに対して、上下左右に顔面に沿って3軸の磁界センサ20iを並べることで、下顎24(磁気マーカ16b)の動きが複雑であっても、いずれかの成分は強い磁界として検出することができるため、測定精度が向上する。
【0177】さらに、図14に示すように、磁気マーカ16a、16bの磁化方向Jを顔の左右方向に配置し、これに対応して、左右方向に磁界検出方向を有する磁界センサ20iを磁気マーカ16a、16bの左右(顔の左右)側に配置することで、顔の正面が空くので、測定者は被測定者14の顎の動きをより容易に観察することができる。また、磁界センサ20iでは、磁化方向Jの磁界を検出することができるので、測定精度が向上する。
【0178】さらにまた、図15に示すように、磁気マーカ16a、16bの磁化方向Jを上下方向とした場合、磁気マーカ16aに対して磁界検出方向を合わせた磁界センサ20iを磁気マーカ16aの上部側に配置し、磁気マーカ16bに対して磁界検出方向を合わせた磁界センサ20iを下顎24の形状に沿って配置することにより、磁化方向Jの磁界を検出して測定精度が向上するとともに顔の正面、側面が空くので、測定者は被測定者14の顔の動きをより容易に観察することができる。
【0179】なお、磁気マーカ16が磁化方向Jを回転軸として回転しないため、言い換えれば、磁化方向Jの回転方向と顎運動の回転方向が不一致であるので、実質的に6自由度の測定となる。
【0180】図16に示すように、磁気マーカ16の配置組み合わせは、上述した図1例の磁界センサ16aと16bのみの組み合わせ(記号(16a,16b)で表す。)に限らず、磁界センサ16bと磁界センサ16g(上顎歯中、向かって左側の最後臼歯)のみ(磁界センサ16aは取り外しているの意味。)の組み合わせ(16b,16g)とすることもできる。この組み合わせ(16b,16g)(16bと16hのみの組み合わせも同じ。)では、上下顎の硬組織に固定でき、かつ下顎では、最も運動量の多い位置に磁気マーカ16bを固定するので、その分、顎運動の測定精度が向上する。
【0181】また、磁気マーカ16dと磁気マーカ16hのみの組み合わせ(16d,16h)のように、上顎22と下顎24のそれぞれ反対側の最後臼歯に固定した場合、硬組織である歯列中では、最大離れた位置となるので、測定精度が向上する。
【0182】なお、両方とも硬組織でかつ変位を大きくして精度を向上させたい場合には、磁気マーカ16fと磁気マーカ16bのみの組み合わせ(16f,16b)のように、上下顎22、24の近接した位置に配置する。この場合には、磁気マーカ16f、16b同士の磁界の相互作用が小さくなるように、磁化方向Jが、例えば、互いに直角(一方の磁気マーカ16fの磁化方向Jが上下方向であれば、他方の磁気マーカ16bの磁化方向bが左右方向を向く配置)になるようにする。なお、実際上、下顎24に配置される磁気マーカ16bの磁化方向Jは、上下方向にしないことが望ましい場合が多い。回転運動と磁化方向Jとが同方向になる場合には、回転角の検出精度が落ちるからである。
【0183】この実施の形態に係る3次元顎運動測定システム10は、顎関節を介して相対的に運動する剛体である上顎22と下顎24の運動、いわゆる顎運動の測定システムであるが、この発明は、一般的には、相対的に運動する少なくとも2つの物体に対して適用することができる。
【0184】たとえば、人体中、顎関節を介する下顎の上顎に対する相対的運動、肘関節を介する前腕の上腕に対する相対的運動、膝関節を介する下腿の大腿に対する相対的運動等に適用することが可能である。
【0185】この場合、磁気マーカ16は、図17〜図19に示すように、支点110に対して角度α内で動く、2つの物体111、112が存在するとき、磁化方向jが互いに略平行(図17:磁気マーカ16jと磁気マーカ16k)あるいは互いに略直角(図18:磁気マーカ16jと磁気マーカ16l)となるように配置することで各磁気マーカ16の磁界の相互作用が小さくなり、図示していない磁界センサでの測定精度が向上する。図19の磁気マーカ16mと磁気マーカ16nの磁化方向Jに示すように、磁化方向Jが、一直線になる配置は好ましくない。
【0186】すなわち、複数磁気マーカ16は、平行あるいは直角あるいはねじれの位置(同一平面にはない位置)に配置することが、磁界の相互作用を軽減することが可能となり、好ましい。
【0187】なお、磁界センサ20iの配置は、図10〜図15を参照して説明した配置が好ましく、この図17および図18例に対して同様に適用することができるので、その説明は省略する。
【0188】さらに、3つ以上の物体に対する相対運動の測定も可能で、それぞれ磁気マーカが配置される胸部に対する肩関節、肘関節を介した上腕および前腕の相対運動や、腹部に対する股関節、膝関節を介した大腿および下腿の相対運動等にも適用することが可能である。
【0189】図20に示すように、上述の実施の形態において、最尤度法を用いてパラメータを求める際に、磁気マーカ16および磁界センサ20iは、それぞれ理想の(無限小として考えた)ダイポール磁界および磁界センサと仮定している。すなわち、磁気マーカ16および磁界センサ20iは、それぞれなるべく微小なものを用いることが好ましい。
【0190】この場合、磁束線120を発生する磁界センサ16の磁気モーメントをベクトルM、磁界センサ20i(測定点)での計算磁界をベクトルBで表す。このとき、上記(3−2)式で説明したように、計算磁界Bに関し、それぞれ図20中、点で示す磁気マーカ16と磁界センサ20iとの間のベクトルをrとすると、次の(26)式の関係が成立する。
【0191】
B=(1/4π){−(M/r3)+3(M・r)r/r5} …(26)
ただし、式中、「r3」と「r5」は、スカラ量、「・」は、ベクトルの内積を表す。
【0192】しかし、測定しようとする物体等との関係において、磁気マーカ16および磁界センサ20iが有限の大きさを持つ場合でも、以下に示す第1または第2の方式により、最尤度法を用いてパラメータを算出することができる。
【0193】第1の方式(実測値テーブルを用いる方式)
図21に示すように、有限の擬似ダイポール磁界を有し、磁束線121を発生する磁気マーカ16xと有限の大きさの磁界センサ20xである場合に、実測した校正テーブル122(図23参照)に示すように、磁気マーカ16xから既知の座標位置(ベクトルr(x),偏角θ(x),偏角φ(x))における磁界センサ20x(x=1,2…i)の各位置で、図22に示すように磁界Bm(x)を予め測定する。
【0194】このようにして、磁気マーカ16xと各磁界センサ20x間の相対位置である座標(r(x),θ(x),φ(x))に対する各磁界センサ20xにより実測した測定磁界B(x)の相互関係である図22に示す校正テーブル122を求めて登録(記憶)しておく。最尤度法のパラメータを計算する際に、ルックアップテーブルであるこの校正テーブル122を参照することにより複数の磁気マーカ16xのパラメータを高精度で求めることができる。なお、3次元運動の測定中に測定した測定磁界Bmのデータが校正テーブル122に存在しないデータである場合には、測定磁界Bmの値に近い校正テーブル122中の複数の測定磁界の補間処理により、座標を求めることができる。
【0195】第2の方式(離散化手法を用いる方式)
この場合、図21において、体積Vを有する磁界センサ20xについて、計算磁界Bc(i)を考えると、この計算磁界Bc(i)の理論値は、次の(27)式で得られる。
【0196】
Bc(i)=(∫sB(i)dv)/V …(27)
ここで、「∫s」は、体積Vについての積分を意味している。
【0197】この(27)式をマクスウエル方程式により有限要素法等の離散化手法で解くことにより、座標(r(x),θ(x),φ(x))と計算磁界Bc(i)の理論値との対応関係である図24に示す磁界理論値テーブル124が得られる。この磁界理論値テーブル124をルックアップテーブルとして最尤度法計算の際に用いれば、複数磁気マーカ16xのパラメータを高精度に求めることが可能となる。この場合にも、補間処理を用いることができる。
【0198】なお、この発明は、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0199】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、相対運動する少なくとも2つの物体に磁気マーカを配置し、物体の動きに伴う磁気マーカの磁界の変化を非接触の磁界センサにより測定することで、被測定者あるいは被測定物に対して少ない負担で、その物体の運動をより自然な状態で測定することができるという効果が達成される。
【0200】また、この発明によれば、従来技術のように、CCDカメラを利用する必要がないので、装置自体の低コスト化が可能である。
【0201】さらに、この発明では、被測定者に対して、微小な磁気マーカが装着できればよいので、測定の際の被測定者に対する負担が少ない。このため、この発明は、たとえば顎運動の測定に適用して好適であり、顎関節症、顎変形症、不正咬合等の診断および治療に有用である。顎顔面領域ではその他、舌に複数の磁気マーカを配置することにより、舌運動を立体的に測定することも可能であり、嚥下障害、発音障害の診断および治療に対しても応用可能である。
【0202】さらにまた、顎顔面領域に限らず、手指、上肢、下肢等を構成する複数の物体が、複数の関節を介し、複雑な運動をする部位においても、被測定者を自然な状態で測定することが可能であり、たとえば機能的電気刺激システムにも応用が可能である。
【0203】また、この発明によれば、移動自由な磁気マーカ付きポインタと磁界センサと信号処理手段という簡単な構成で物体の3次元的な位置を検出することができる。
【0204】さらに、この発明によれば、予め、物体の表面に固定された固定磁気マーカの位置を基準とし、該基準位置からの相対位置で表現される物体表面上の任意の点中、1以上の複数点をポインタによって検出し特徴点として登録する。このポインタによる位置検出終了後に、前記固定磁気マーカの物体の運動に伴う位置の移動を検出したとき、前記特徴点を読み出することで、固定磁気マーカの位置と特徴点の位置の3次元運動を同時に立体的に測定することができる。
【出願人】 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】エヌイーシートーキン株式会社
【識別番号】000250753
【氏名又は名称】凌和電子株式会社
【出願日】 平成13年5月31日(2001.5.31)
【代理人】 【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏 (外1名)
【公開番号】 特開2002−355264(P2002−355264A)
【公開日】 平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願番号】 特願2001−165487(P2001−165487)