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【発明の名称】 歯科鋳造用埋没材
【発明者】 【氏名】藤田 武敏

【氏名】小倉 英夫

【氏名】赫多 清

【氏名】後藤 真一

【要約】 【課題】歯科鋳造用貴金属合金を鋳造したときに黒色酸化膜の発生が防止される歯科鋳造用埋没材を提供する。

【解決手段】歯科鋳造用貴金属合金の鋳造に用いられる、耐火材と結合材とを少なくとも含む歯科鋳造用埋没材に、酸化防止元素を配合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 歯科鋳造用貴金属合金の鋳造に用いられ、耐火材と結合材とを少なくとも含む歯科鋳造用埋没材において、酸化防止元素を含むことを特徴とする歯科鋳造用埋没材。
【請求項2】 前記耐火材がクリストバライトであり、前記結合材が石膏である請求項1記載の歯科鋳造用埋没材。
【請求項3】 前記酸化防止元素は、ホウ素、シリコン、アルミニウム、クロム、スズ、ジルコニウム、バナジウム、セリウム及び亜鉛からなる群から選ばれる1つまたはそれ以上の組み合わせである請求項1又は2に記載の歯科鋳造用埋没材。
【請求項4】 歯科鋳造用埋没材全量に対する酸化防止元素の含有量は、0.001〜15質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯科鋳造用埋没材。
【請求項5】 前記歯科鋳造用埋没材は、800℃以上1200℃以下で鋳造に供されるためのものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の歯科鋳造用埋没材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯科鋳造用貴金属合金の鋳造物に用いられる埋没材に関する。より詳しくは、歯科鋳造用貴金属合金を鋳造する際に用いた場合、鋳造物表面の酸化黒変が大幅に低減される埋没材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の歯科鋳造用貴金属合金、即ち、鋳造用金合金あるいは鋳造用金・銀・パラジウム合金などは、合金の硬度を改善し且つ熱処理効果を発現させるために、銅が含有されている。これらの合金を従来の鋳造用埋没材を用いて鋳造すると、含有される銅が酸化されることによって鋳造物の表面が黒色の酸化膜で覆われる。そのため、鋳造物の黒色酸化膜を硫酸、塩酸あるいは他の処理剤により取り除いて、合金本来の色調、光沢を発現させ、さらに研磨等を行うのが一般的に行われている。
【0003】しかし、黒色酸化膜を取り除くのに余分な手間を必要とするのみならず、処理の際に酸類の蒸気によって歯科技工室あるいは診療室内の器物が腐食したり汚損するなどの諸問題がある。
【0004】従って、このような黒色酸化膜の発生を防止するために、歯科鋳造用埋没材に黒鉛粉末、金属銅粉、ホウ酸、酸化アルミニウムあるいは酸化マグネシウムなどを単独に加える試みがなされているが、何れも黒色酸化膜の発生を防止するにはあまり効果がないので、依然として鋳造物を酸処理しているのが実状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、歯科鋳造用貴金属合金を鋳造するために用いた場合、鋳造物表面の黒色酸化膜の発生が防止される歯科鋳造用埋没材を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、歯科鋳造用貴金属合金の鋳造に用いられ、耐火材と結合材とを少なくとも含み、さらに酸化防止元素を加えることにより得られる歯科鋳造用埋没材は、歯科鋳造用貴金属合金を鋳造するために用いた場合、鋳造物表面の黒色酸化膜の発生が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】即ち、本発明は以下の通りである。
(1)歯科鋳造用貴金属合金の鋳造に用いられ、耐火材と結合材とを少なくとも含む歯科鋳造用埋没材において、酸化防止元素を含むことを特徴とする歯科鋳造用埋没材。
(2)前記耐火材がクリストバライトであり、前記結合材が石膏である(1)の歯科鋳造用埋没材。
(3)前記酸化防止元素は、ホウ素、シリコン、アルミニウム、クロム、スズ、ジルコニウム、バナジウム、セリウム及び亜鉛からなる群から選ばれる1つまたはそれ以上の組み合わせである(1)又は(2)の歯科鋳造用埋没材。
(4)歯科鋳造用埋没材全量に対する酸化防止元素の含有量は、0.001〜15質量%である(1)〜(3)のいずれかの歯科鋳造用埋没材。
(5)前記歯科鋳造用埋没材は、800℃以上1200℃以下で鋳造に供されるためのものである(1)〜(4)のいずれかの歯科鋳造用埋没材。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】本発明の歯科鋳造用埋没材は、歯科鋳造用貴金属合金の鋳造に用いられ、少なくとも耐火材、結合材、酸化防止元素とを含む。
【0010】本発明において用いられる耐火材としては、歯科鋳造用埋没材に通常用いられる耐火材でよく、クリストバライト、石英、珪石等が挙げられ、好ましくはクリストバライトが用いられる。
【0011】結合材としては、石膏が挙げられ、好ましくはα型半水石膏が用いられる。
【0012】本発明における酸化防止元素として、ホウ素、シリコン、アルミニウム、クロム、スズ、ジルコニウム、バナジウム、セリウム及び亜鉛等からなる群から選ばれる1つまたはそれ以上の組み合わせを用いることが出来る。この中でも特にホウ素が好ましい。
【0013】用いられる形状としては、特に制限はないが、粉末状で用いることが、製造上、操作上の点から好ましい。
【0014】粉末の大きさとしては、特に制限はないが、平均粒径5μm以下のものが好ましく用いられる。平均粒径が5μmを超えた酸化防止元素が添加された歯科鋳造用埋没材を、歯科鋳造用貴金属合金の鋳造に用いた場合、得られる鋳造物の表面平滑性が悪くなる傾向がある。
【0015】歯科鋳造用埋没材全量に対する耐火材の含有量としては30〜90質量%が好ましく、結合材の含有量としては10〜50質量%が好ましい。
【0016】また、歯科鋳造用埋没材全量に対する酸化防止元素の含有量としては、0.001〜15質量%が好ましく、さらには0.05〜5質量%がより好ましい。上記範囲で含有させることにより、本発明の歯科鋳造用埋没材を鋳造物とした際に黒色酸化膜の発生を効果的に防止することができる。含有量が0.001質量%未満では、黒色酸化膜の発生を防止できないことがあり、15質量%を超えた場合、増加に伴った効果が得られないだけでなく、埋没材の性質を劣化させることがある。
【0017】本発明の歯科鋳造用埋没材は、前記耐火材、結合材、酸化防止元素以外に、必要により、凝固調整剤等を含有していてもよい。これらの含有量は、歯科鋳造用埋没材全量に対して、0.1〜1質量%が好ましい。
【0018】本発明の歯科鋳造用埋没材は、例えば、以下のようにして製造する。
【0019】上記原料を、ボールミル等の混合機に加え、十分混合して、細粉状とする。これをメッシュ篩等で篩別して、歯科鋳造用埋没材を得る。この様にして得られる本発明の歯科鋳造用埋没材の粒径は、特に制限はない。
【0020】本発明の歯科鋳造用埋没材を用いて歯科用金属修復物(歯科鋳造用貴金属合金の鋳造物)を作成する方法について以下説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0021】歯科鋳造用貴金属合金としては、金、銀及びパラジウムから選ばれる一つまたはそれ以上を主成分として含み、硬度、熱処理効果を発現させるために銅が含有された合金のことである。
【0022】歯科用金属修復物を作成する方法としては、一般的に用いられるロストワックス法が挙げられる。以下、具体例を示す。
【0023】まず、本発明の歯科鋳造用埋没材100質量部に対して、30〜40質量部の水等を添加し練和させる。予め修復物の形態をワックス材料で形成しておき、それに溶融金属注入口を設けるためにスプルー線などを付し、練和した前記埋没材に埋没する。硬化した埋没材を電気炉に入れワックス材料を焼却除去する。こうして得られた鋳型に前記溶融金属注入口から溶融貴金属合金を注入し、鋳造する。このとき、貴金属合金の溶融温度は800℃以上1200℃以下の温度である。
【0024】本発明の歯科鋳造用埋没材を用いて、歯科鋳造用貴金属合金を鋳造することにより、黒色酸化膜が生成されない歯科用鋳造物を得ることができる。
【0025】本発明の歯科鋳造用埋没材を用いて、上記のようにして得られた鋳造物を図1と図2に示す。なお、比較として従来の歯科鋳造用埋没材(酸化防止元素が含有されていない埋没材)を用いて得られた鋳造物も示す。
【0026】図1は、鋳造用貴金属合金にJISで規定されているタイプIV金合金を用いて鋳造物を作成した場合であり、図2は鋳造用貴金属合金にJISで規定された金・銀・パラジウム合金を用いて鋳造物を作成した場合の写真を示す。
【0027】図1中(a)は本発明の歯科鋳造用埋没材を用いて得られた鋳造物であり、(b)は本発明の特徴である酸化防止元素が添加されない歯科鋳造用埋没材を用いて得られた鋳造物を示す。
【0028】同様に、図2中(c)は本発明の歯科鋳造用埋没材を用いて得られた鋳造物であり、(d)は本発明の特徴である酸化防止元素が添加されない歯科鋳造用埋没材を用いて得られた鋳造物を示す。
【0029】本発明の歯科鋳造用埋没材は、歯科鋳造用貴金属合金の鋳造に供したときに、得られた貴金属合金鋳造物の黒色酸化膜の発生を防止するだけでなく、埋没材の硬化時間、硬化膨張、熱膨張、圧縮強さに関しても好ましい物性を有する。
【0030】
【実施例】以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0031】
【実施例1】歯科用クリストバライト埋没材(珪石粉末30質量%、クリストバライト40質量%、α型半水石膏30質量%)1000gに、ホウ素12.5gを正確に秤量して添加した。これをボールミルに装入して、50回/分の回転速度で30分間混合して細粉状とした。これを300メッシュ篩で篩別して、歯科鋳造用埋没材Aを得た。
【0032】次いで歯科鋳造用埋没材A100gに精製水34mlを加え60秒間よく練和して、予め作成しておいたスプルーを有する橋義歯型ワックス材料及び金冠型ワックス材料を埋没して30分間硬化させた。該埋没材を700℃の電気炉に入れ、30分間同じ温度を保持してワックス材料を焼却除去して、JISで規定されているタイプIV金合金の溶融物(融点940℃)を注入し冷却して、鋳造物を得た。
【0033】鋳造物は、黒色酸化膜が全く認められず、図3(a)に示すように地金の色に近い色を有する橋義歯鋳造物及び金冠鋳造物であった。
【0034】歯科鋳造用埋没材Aの硬化時間、硬化膨張、熱膨張、圧縮強さを以下のように測定した。評価結果を表1に示す。
<硬化時間の測定>JIS T6601に従って以下のように硬化時間の測定を行った。
【0035】耐腐食性で非吸水性の型に、埋没材100gに対し水34mlで練和したものを充填する。練和を開始したときから、質量300gのビカー針(針の直径1mm)が型の底部5mm以内に対して最初に貫通できなくなるまでの時間を測定した。この試験を3回行い、平均値を硬化時間とした。
<硬化膨張の測定>硬化膨張は、埋没材の試験片(JISで規格された、長さ50±1mmで円形の均一な横断面を持つ試験片を用い、試験片の横断面は78〜275mm2の範囲とする)の長さ方向の線膨張率とし、硬化時間2分後に零点を設定して、練和開始20分後に測定する。
【0036】試験中は、試験片に膨張を抑制する力が加わらないようにし、試験片に加えられる計測圧力は、2.4kPaを超えてはならない。この試験を3回行い、平均値を硬化膨張率とした。硬化膨張計として石膏の硬化膨張を計測する膨張計を用いた。
<熱膨張の測定>熱膨張の測定には、熱分析システム(RIGAKU:先端研究センター)を用いた。試験片は、耐腐食性で非吸水性の型に埋没材100gに対し水34mlで練和したものを充填して、寸法と形態は熱分析システムに対応したもの(JISで規格された、長さ50±1mmで円形の均一な横断面を持つ試験片を用い、試験片の横断面は78〜275mm2の範囲とする)として作成した。硬化後は、試験片に膨張を抑制する力が加わらないようにする。
【0037】練和開始2時間後に試験片を熱膨張測定装置に入れて加熱し、700℃における長さの変化を測定して、元の長さに対する変化率を求めた。試験中に試験片に加えられる計測圧力は、2.4kPaを超えてはならない。この試験を3回行い、平均値を熱膨張率とした。
<圧縮強さ試験>ガラス板上においた金属型(内径20mm、高さ30mm)に、埋没材100gに対し水34mlで練和したものを充填し、金属型の上面にもガラス板をかぶせる。取り扱いに耐える程度に硬化させてから(硬化時間経過後)、金属型から試験片を抜き取って、温度23±2℃、相対湿度95〜100%に保管した。練和開始2時間後に圧縮試験を行った。圧縮試験は、クロスヘッドスピード1mm/minで行った。この試験を3回行い、平均値を圧縮強さとした。
【0038】
【表1】

【0039】
【実施例2】JISに定められた金・銀・パラジウム合金を用いる以外は実施例1と同様にして、鋳造物を得た。なお、金・銀・パラジウム合金の溶融温度は960℃であった。
【0040】鋳造物は、黒色酸化膜が全く認められず、図4(c)に示すように白金色の金・銀・パラジウム合金製の橋義歯鋳造体及び金冠鋳造体であった。
【0041】
【比較例1】市販の歯科鋳造用埋没材B(珪石粉末30質量%、クリストバライト40質量%、α型半水石膏30質量%)100gを精製水34mlを加え30秒間よく練和して、蝋型に埋没して硬化させ、30分後に700℃の電気炉に入れ、30分間同じ温度を保持してワックス材料を焼却して、JISで規定されているタイプIV金合金を鋳造して、鋳造物を得た。図3(b)に示すように、鋳造物は黒色酸化膜が全面に発生していた。
【0042】歯科鋳造用埋没材Bの硬化時間、硬化膨張、熱膨張、圧縮強さを実施例1と同様に測定した。評価結果を表1に示す。
【0043】
【比較例2】JISに定められた金・銀・パラジウム合金を用いる以外は比較例1と同様にして、鋳造物を得た。図4(d)に示すように、鋳造物は黒色酸化膜が全面に発生していた。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、本発明の歯科鋳造物用埋没材は酸化防止元素が含まれているため、金合金、金・銀・パラジウム合金等の鋳造用貴金属合金を、歯科鋳造用埋没材を用いて鋳造する際、得られた鋳造物の黒色酸化膜の発生を防止することができる。そのため、鋳造後の酸処理等をする必要がないことから、工業的価値は大きい。
【出願人】 【識別番号】501201409
【氏名又は名称】株式会社ダイアヤトロン
【出願日】 平成13年5月21日(2001.5.21)
【代理人】 【識別番号】100089244
【弁理士】
【氏名又は名称】遠山 勉 (外2名)
【公開番号】 特開2002−336276(P2002−336276A)
【公開日】 平成14年11月26日(2002.11.26)
【出願番号】 特願2001−150923(P2001−150923)