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【発明の名称】 観賞用製品
【発明者】 【氏名】宮沢 健一

【氏名】伊藤 美貴子

【氏名】中村 千波

【要約】 【課題】可動部の変化速度を任意に設定できるとともに可動部が逆戻りすることがない観賞用製品の提供。

【解決手段】可動部21を機械的エネルギで可動する機械的エネルギ発生機構12と、機械的エネルギ発生機構12で発生するエネルギを可動部21に伝達する伝達機構13とを備える。機械的エネルギ発生機構12は、周囲温度の変化により固体及び液体の一方から他方へ相変化し、この相変化により体積が変化する相変化物質を備える。相変化物質を代えることで、可動部21が変位する速度を調整することができる。伝達機構13は、相変化物質の体積の増加と減少の一方のみを可動部21に伝達し他方を可動部21に伝達しない構成としたので、温度が昇降しても、可動部21が逆戻りすることがない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 可動部を機械的エネルギで可動する機械的エネルギ発生機構と、この機械的エネルギ発生機構で発生するエネルギを前記可動部に伝達する伝達機構とを備え、前記機械的エネルギ発生機構は、周囲温度の変化により固体及び液体の一方から他方へ相変化し、この相変化により体積が変化する相変化物質を備え、前記伝達機構は、前記相変化物質の体積の増加と減少の一方のみを前記可動部に伝達し他方を前記可動部に伝達しないことを特徴とする観賞用製品。
【請求項2】 請求項1に記載の観賞用製品において、前記機械的エネルギ発生機構は、前記相変化物質としてワックスが内部に収められた密閉容器を備え、この密閉容器には、前記相変化物質の体積変化により駆動されるロッドが進退可能に設けられていることを特徴とする観賞用製品。
【請求項3】 請求項2に記載の観賞用製品において、前記可動部は、カップ状固定部の内部に軸方向に沿って出没自在に収納されていることを特徴とする観賞用製品。
【請求項4】 請求項3に記載の観賞用製品において、前記伝達機構は、一端が前記可動部に連結されたワイヤと、このワイヤを係止可能とするとともに前記ロッドに連結された第1チャックと、この第1チャックとは異なる位置で前記ワイヤを係止可能とする第2チャックとを備え、前記第1チャックは、前記ロッドの前進に際して前記ワイヤを係止するとともに前記ロッドの後退に際して前記ワイヤとの係止を解除する構成であり、前記第2チャックは、前記ワイヤの前進に際して前記ワイヤとの係止を解除するとともに前記ワイヤの後退に際して前記ワイヤを係止する構成であることを特徴とする観賞用製品。
【請求項5】 請求項3に記載の観賞用製品において、前記伝達機構は、一端が前記可動部に連結されたワイヤと、このワイヤを繰り出すプーリと、前記ロッドに連結されるラックと、このラックと前記プーリとを連結するラチェット機構とを備え、このラチェット機構は、前記ワイヤを前進する方向のみ前記プーリの回転を許容し後退する方向には前記プーリの回転を阻止する構成であることを特徴とする観賞用製品。
【請求項6】 請求項3に記載の観賞用製品において、前記伝達機構は、一端が前記可動部に連結され表面に係止用歯が形成された帯状部材と、この帯状部材の係止用歯に噛合する係止用歯が形成されるとともに前記ロッドと連結されたラックとを備え、このラックの係止用歯と前記帯状部材の係止用歯とは、前記帯状部材を前進する方向にのみ係止し後退する方向には係止を解除するように形成されていることを特徴とする観賞用製品。
【請求項7】 請求項3から6のいずれかに記載の観賞用製品において、前記可動部は、それぞれ花弁形状を有するとともに、前記カップ状固定部の内壁部に向けて付勢される複数の弾性部材からなり、前記カップ状固定部は萼形状を有することを特徴とする観賞用製品。
【請求項8】 請求項7に記載の観賞用製品において、前記伝達機構は、前記可動部の前進に伴って前進するとともに、入れ子状に組み合わされた複数の筒状部材を備えたことを特徴とする観賞用製品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、花弁等の可動部が動く造花、その他の観賞用製品に関するものである。
【0002】
【背景技術】観賞用製品として、造花、人形、玩具等が知られている。これらの観賞用製品には、可動部の動きを楽しむものがある。一般的に、可動部を動かすためにモータが観賞用製品に備えられており、このモータは商用電源又は電池で駆動される。しかしながら、商用電源から供給される電力でモータが駆動されるものでは、観賞用製品を置く場所が制限されることになる。この点、電池でモータが駆動されるものでは、この不都合はないが、電池の交換作業が面倒であり、使用済み電池を廃棄しなければならないといった不都合がある。そのため、商用電源や電池に代えて形状記憶合金を利用して可動部を動かすことが考えられる。従来では、形状記憶合金を棒状にし、この棒状部分が温度変化によって花形形状に変化する温度計(実開平2-140338号公報)がある。この温度計は、棒状部分が花形形状に変化することから、観賞用製品としても利用可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】実開平2-140338号公報で示される従来例では、形状記憶合金を利用しており、この形状記憶合金は、形状変化する温度がポイントでしか設定できず、所定の範囲をもって設定できない。そのため、所定温度に達すると、急激に可動部が変化することになり、徐々に可動部の変化を楽しむ観賞用製品には不適切である。例えば、形状記憶合金を利用して造花を製作すると、可動部を構成する花弁が急激に変位して開花することになり、花の蕾み、三分咲き、満開といった開花の工程が楽しめない。また、実開平2-140338号公報で示される従来例では、主に、温度計として利用されているため、温度が下がると、元の状態に戻ることになる。そのため、これをそのまま造花として利用すると、一度、満開となった造花が温度低下に伴って、三分咲き、蕾みになるといった逆の開花工程を辿ることになり、不自然である。
【0004】本発明の目的は、可動部の変化速度を任意に設定できるとともに可動部が逆戻りすることがない観賞用製品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の観賞用製品は、可動部を機械的エネルギで可動する機械的エネルギ発生機構と、この機械的エネルギ発生機構で発生するエネルギを前記可動部に伝達する伝達機構とを備え、前記機械的エネルギ発生機構は、周囲温度の変化により固体及び液体の一方から他方へ相変化し、この相変化により体積が変化する相変化物質を備え、前記伝達機構は、前記相変化物質の体積の増加と減少の一方のみを前記可動部に伝達し他方を前記可動部に伝達しないことを特徴とする。
【0006】このような本発明では、温度変化によって、機械的エネルギ発生機構の相変化物質が固体及び液体の一方から他方へ相変化する際に、体積変化は小さいが大きな駆動力を発生する。この駆動力によって、伝達機構を介して可動部が可動することになり、温度変化を視覚的に認識することができる。相変化物質を代えることで、可動部が変位する速度を調整することができるため、例えば、徐々に可動部を変位させたい場合や急激に可動部を変位させたい場合に適用することができる。しかも、伝達機構は、相変化物質の体積の増加と減少の一方のみを可動部に伝達する構成であるため、今まで上昇していた温度が一転して下降しても、可動部が逆戻りすることがない。そのため、外観上、不自然さがなくなる。
【0007】以上の観賞用製品において、前記機械的エネルギ発生機構は、前記相変化物質としてワックスが内部に収められた密閉容器を備え、この容器には、前記相変化物質の体積変化により駆動されるロッドが進退可能に設けられている構成が好ましい。このように相変化物質としてワックスを採用すれば、ワックスに、ラウリン酸、ステアリン酸、脂肪酸カルシウム、脂肪酸、オレイン酸及びデカン酸等の添加物を適宜加えることにより、相変化が生じる温度範囲を任意に調節することが可能となる。そして、相変化物質の体積変化量は、前述のロッドで外部に取り出すことが可能となるので、このロッドに伝達機構を連結することで、可動部を容易に可動することが可能となる。
【0008】また、前記可動部は、カップ状固定部の内部に軸方向に沿って出没自在に収納されている構成が好ましい。この構成では、可動部は、カップ状固定部に対する進退に伴って外側に向けて変位することになり、その動きをはっきり認識することができる。そのため、可動部のはっきりした動きにより、観賞用製品の外観を良好なものにできる。
【0009】また、本発明では、前記伝達機構は、一端が前記可動部に連結されたワイヤと、このワイヤを係止可能とするとともに前記ロッドに連結された第1チャックと、この第1チャックとは異なる位置で前記ワイヤを係止可能とする第2チャックとを備えた構成とし、かつ、前記第1チャックは、前記ロッドの前進に際して前記ワイヤを係止するとともに前記ロッドの後退に際して前記ワイヤとの係止を解除する構成とし、前記第2チャックは、前記ワイヤの前進に際して前記ワイヤとの係止を解除するとともに前記ワイヤの後退に際して前記ワイヤを係止する構成とすることが好ましい。この構成では、第1チャックと第2チャックとが協働してワンウェイクラッチとして機能することで、ワイヤを後退させることがない。そのため、温度の昇降が繰り返されても、可動部が逆戻りすることなく、前進し続けることになる。
【0010】本発明では、前述の構成に代えて次の構成を採用してもよい。つまり、前記伝達機構は、一端が前記可動部に連結されたワイヤと、このワイヤを繰り出すプーリと、前記ロッドに連結されるラックと、このラックと前記プーリとを連結するラチェット機構とを備え、このラチェット機構は、前記ワイヤを前進する方向のみ前記プーリの回転を許容し後退する方向には前記プーリの回転を阻止する構成である。この構成では、ラチェット機構によって、ワイヤを後退させることなく、確実に前進させることができる。そのため、温度が昇降しても、可動部が逆戻りすることなく、前進し続けることになる。
【0011】本発明では、前述の構成に代えて次の構成を採用してもよい。つまり、前記伝達機構は、一端が前記可動部に連結され表面に係止用歯が形成された帯状部材と、この帯状部材の係止用歯に噛合する係止用歯が形成されるとともに前記ロッドと連結されたラックとを備え、このラックの係止用歯と前記帯状部材の係止用歯とは、前記帯状部材を前進する方向にのみ係止し後退する方向には係止を解除するように形成されている。この構成では、ラックと帯状部材との係止用歯同士が噛合し合うことで、ロッド及びラックの前進を帯状部材に確実に伝達することができるとともに、ロッド及びラックの後退は帯状部材に伝達されることがないので、温度の昇降しても、可動部が逆戻りすることなく、前進し続けることになる。
【0012】また、本発明では、前記可動部は、それぞれ花弁形状を有するとともに、前記カップ状固定部の内壁部に向けて付勢される複数の弾性部材からなり、前記カップ状固定部は萼形状を有する構成が好ましい。この構成では、観賞用製品を、複数の花弁及び萼からなる造花としたから、花の開花状況を観ることができる。そして、前記伝達機構は、前記可動部の前進に伴って前進するとともに、入れ子状に組み合わされた複数の筒状部材を備えた構成が好ましい。この構成では、入れ子状に組み込まれた筒状部材がいわば造花の茎部分を構成することになるため、造花の開花状況をリアルに再現することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]図1から図7には第1実施形態が示されている。第1実施形態の観賞用製品1は鉢植えの造花である。図1には観賞用製品1の断面が示されている。図1において、観賞用製品1は、植木鉢を構成するケーシング10と、花部11と、機械的エネルギを発生する機械的エネルギ発生機構12と、この機械的エネルギ発生機構12で発生したエネルギを花部11に伝達する伝達機構13とが備えられた構造である。ケーシング10は、底部に逆円錐台形の周面部10Aが取り付けられ、この周面部10Aに円盤状の上板部10Bと、中板部10Cとがそれぞれ取り付けられた構造であり(図5から図7参照)、その表面は、植木鉢に相応しい色、例えば、茶色等に着色されている。
【0014】花部11は、カップ状固定部20と、このカップ状固定部20の内部にそれぞれ出没自在に収納された複数の花弁形状の可動部21と、これらの可動部21の端部を結合しカップ状固定部20の内壁部に軸方向移動自在に配置されたスライダ22とから構成されている。カップ状固定部20は、プラスチック、金属、その他の適宜な材質から周面が略球面とされた萼形状であり、緑色、その他萼として相応しい色に着色されている。カップ状固定部20の中間部から上端部にかけて略円筒状の開口部20Aが形成され、この開口部20Aの底面から取付孔20Bがカップ状固定部20の下端に向けて形成されている。
【0015】可動部21は、金属、プラスチック、布、紙、その他の材料から形成されるが、花弁の形状を十分に保持するために、ばね材、アモルファス合金等の弾性材料から形成されることが好ましい。また、可動部21は、赤色、黄色、その他の花弁として相応しい色に着色されている。スライダ22は、カップ状固定部20の開口部20Aの内周面に沿って軸方向移動自在に設けられた略円柱状部材であり、その上端部が複数の可動部21の下端部と、それぞれ接着剤、連結具、その他の手段によって結合されている。可動部21は、スライダ22に結合された状態では、カップ状固定部20の内壁部に向けて付勢される。そのため、スライダ22に伴って可動部21がカップ状固定部20の内部に出没すると、各可動部21が外側に向けて変位して花が開き、あるいは、花が蕾むようにされる。
【0016】機械的エネルギ発生機構12は、ケーシング10の内部に固定されたエネルギ発生部31と、このエネルギ発生部31で発生したエネルギにより上下に駆動(進退)するロッド32とから構成されている。機械的エネルギ発生機構12の具体的な構造が図2に示されている。図2において、エネルギ発生部31は、周囲温度の変化により固体及び液体の一方から他方へ相変化し、この相変化により体積が変化する相変化物質30を密閉容器33の内部に収納したものである。密閉容器33は、充分な剛性を有する有底筒状のものであり、可撓性を有する円盤部材34を有し、この円盤部材34でその開口が塞がれている。円盤部材34は、シリコンゴムあるいはテフロン(登録商標)ゴム等を含んで形成された密閉性に優れた強靭な膜である。
【0017】密閉容器33の開口側の端部には、段付き筒状のカバー部材35が嵌合されている。このカバー部材35の下方大径側内周面には円盤部材34が軸方向(図2中、上下方向)に沿って移動自在とされ、カバー部材35の上方小径側内周面にはパッキン部材36が軸方向(上下方向)に沿って移動自在とされている。このパッキン部材36、カバー部材35及び円盤部材34で仕切られる空間には円盤部材34の動きをパッキン部材36に伝達する流体樹脂37が収納されている。パッキン部材36には、ロッド32の下端が連結されている。カバー部材35の上方小径側内周面は、ロッド32を案内する筒状のガイド部35Aであって流体樹脂37を導くものである。これにより、相変化物質30の体積変化に応じて、ロッド32の先端がガイド部35Aの先端面から進退可能とされている。
【0018】この際、相変化物質30としては、n−パラフィン等のワックスが採用されている。このワックスには、融点の異なるラウリン酸、ステアリン酸、脂肪酸カルシウム、脂肪酸、オイレン酸及びデカン酸等の添加物が適宜混合されている。すなわち、添加物を含まない相変化物質30を採用すると、その温度に対するロッド32の伸び量は、図3(A)に示されるように、低温の固体範囲及び高温の液体範囲では、温度変化に対して伸び量が少なく、その中間の固体・液体共存範囲では、温度変化に対して充分な伸び量が得られる。
【0019】このため、ワックスとは融点の異なるラウリン酸(融点45℃)、ステアリン酸(融点55℃)及び脂肪酸カルシウム(融点65℃)を適宜な割合で混合することにより、例えば、図3(B)に示されるように、伸び量を得られる領域を略一点(15℃近傍)に集中することができ、あるいは、図3(C)に示されるように、伸び量を得られる領域を所定の範囲(10℃〜15℃)とすることができる。第1実施形態では、生花の成長に合わせて伸び量を得られる領域を設定する。つまり、図4に示される通り、夏での成長を早めるために、伸び量を得られる温度領域(成長範囲)を15℃〜35℃とし、冬、早春、晩秋でほとんど成長させないようにするため、15℃未満では伸び量がない状態とする。
【0020】図1において、伝達機構13は、下端部が上板部10Bに形成された孔部10Dに係合された略円筒形の茎部40と、この茎部40の内部に収納され一端がスライダ22を介して可動部21に連結されたワイヤ41と、このワイヤ41をそれぞれ係止可能とする第1チャック42及び第2チャック43とを備えて構成されている。茎部40は、可動部21の前進に伴って前進するとともに、入れ子状に組み合わされた第1から第3の筒状部材44,45,46と、第1及び第2の筒状部材44,45の下端部にそれぞれ端部が固定された複数の葉部47とから構成されている。これらの葉部47は、和紙、布、プラスチック、金属箔、その他の適宜な材質から形成され、これらの筒状部材44,45,46が伸び切った時には、生花の葉っぱのように、先端部が外側に向けて変位される。葉部47は、生花の葉と同様に、緑色に着色されている。
【0021】第1の筒状部材44は、その上端部がカップ状固定部20の取付孔20Bに圧入されており、その下端部が第2の筒状部材45から抜けないようにするためのフランジ部44Aが形成されている。第2の筒状部材45は、その上端部が第1の筒状部材44及び葉部47を移動自在に案内する案内部45Bとされており、その下端部が第3の筒状部材46から抜けないようにするためのフランジ部45Aが形成されている。第3の筒状部材46は、その上端部が第2の筒状部材45及び葉部47を移動自在に案内する案内部46Bとされており、その下端部がケーシング10の上板部10Bの孔部10Dから抜けないようにするためのフランジ部46Aが形成されている。
【0022】これらの筒状部材44,45,46は、プラスチック、金属、その他の材料から形成され、その表面は花の茎を構成する色、例えば、緑色に着色されている。ここで、スライダ22とカップ状固定部20の開口部20Aとの間の摩擦係数をμ1とし、第2の筒状部材45の案内部45Aと第1の筒状部材44との間の摩擦抵抗値をμ2とし、第3の筒状部材46の案内部46Aと第2の筒状部材45との間の摩擦抵抗値をμ3とし、第3の筒状部材46と上板部10Bの孔部10Dとの間の摩擦抵抗値をμ4とすると、μ4<μ3<μ2<μ1となる。また、μ3は茎部40及び花部11の重さを保持するに充分な値である。そのため、ワイヤ41の前進に伴って可動部21が上昇すると、図5に示される通り、まず、ケーシング10の上板部10Bに対して第3の筒状部材46が突出し、その後、図6に示される通り、第3の筒状部材46に対して第2の筒状部材45が突出し、さらに、図7に示される通り、第2の筒状部材45に対して第1の筒状部材44が突出し、さらに、花部11が開花した状態となる。
【0023】図1において、第1チャック42は、ロッド32の上端部に連結される駆動部42Aと、この駆動部42Aに一体に形成されたチャック本体42Bとから構成されている。駆動部42Aのロッド32を挟んで反対側の位置と中板部10Cとの間には、駆動部42Aを介してロッド32を常時後退方向(下方)に付勢するばね部材48が介装されている。そのため、温度上昇によって相変化物質30が膨張すると、ロッド32がばね部材48の付勢力に抗して上昇し、温度下降によって相変化物質30が収縮すると、ロッド32がばね部材48の付勢力により下降する。チャック本体42Bは、ロッド32の前進(上昇)に際してワイヤ41を係止するとともにロッド32の後退に際してワイヤ41との係止を解除する構成であり、具体的には、ワイヤ41を案内する案内孔42Cが形成されたガイド部42Dの上にワイヤ41を合掌状に挟持する少なくとも2個以上の爪部42Eが形成された構造である。複数の爪部42Eは、その上端部同士でワイヤ41を合掌状に挟持するため、爪部42Eが上昇(前進)する際には、爪部42Eの先端角部がワイヤ41を大きな摩擦力を持って係止することになりワイヤ41毎上昇させるが、爪部42Eが下降(後退)する際には、静止しているワイヤ41に対して爪部42Eの先端角部が滑らかに移動する。
【0024】第2チャック43は第1チャック42より上方位置でワイヤ41を係止可能とするもので、中板部10Cに取り付けられたチャック本体43Bを備えて構成される。チャック本体43Bは、ワイヤ41の前進に際してワイヤ41との係止を解除するとともにワイヤ41の後退に際してワイヤ41を係止する構成であり、具体的には、ワイヤ41を案内する案内孔43Cが形成されたガイド部43Dの上にワイヤ41を合掌状に挟持する少なくとも2個以上の爪部43Eが形成された構造である。複数の爪部43Eは、複数の爪部42Eと同様に、その上端部同士でワイヤ41を合掌状に挟持するため、第1チャック42が下降する際にワイヤ41を下方に引っ張ろうとしても、爪部43Eの先端角部がワイヤ41を大きな摩擦力を持って係止することになりワイヤ41の下降を阻止するが、第1チャック42がワイヤ41を上方に持ち上げようとすると、上昇するワイヤ41に対して爪部43Eの先端角部が滑らかとなってワイヤ41の上昇を許容する。
【0025】これらの第1チャック42及び第2チャック43は、ワイヤ41を上昇方向のみに移動させ下方には逆戻りさせないワンウェイクラッチとして機能するものである。ワイヤ41は、金属、プラスチック、その他の材料から形成され、第1チャック42及び第2チャック43によって上方に送り出されても、撓むことなくスライダ22に伝達する強度を有する。このワイヤ41は、ケーシング10に回転自在に取り付けられたプーリ49から繰り出されている。なお、第1チャック42及び第2チャック43には、それぞれ図示しないリセット機構が設けられ、このリセット機構が作動されることで、ワイヤ41との係止がともに解除される。これにより、プーリ49から繰り出されたワイヤ41を手動等で巻き戻すことが可能となる。
【0026】前述のような第1実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)可動部21を機械的エネルギで可動する機械的エネルギ発生機構12と、この機械的エネルギ発生機構12で発生するエネルギを可動部21に伝達する伝達機構13とを備え、機械的エネルギ発生機構12は、周囲温度の変化により固体及び液体の一方から他方へ相変化し、この相変化により体積が変化する相変化物質30を備えたので、温度変化によって、機械的エネルギ発生機構12の相変化物質が固体及び液体の一方から他方へ相変化する際に、体積変化は小さいが大きな駆動力を発生することになる。この駆動力によって、伝達機構13を介して可動部21が可動することになり、温度変化を視覚的に認識することができる。
【0027】(2)相変化物質30を代えることで、可動部21が変位する速度を調整することができるため、例えば、徐々に可動部を変位させたい場合や急激に可動部を変位させたい場合に適用することができる。
(3)伝達機構13は、相変化物質30の体積の増加と減少の一方のみを可動部21に伝達し他方を可動部21に伝達しない構成としたので、今まで上昇していた温度が下降しても、可動部21が逆戻りすることがない。そのため、外観上、不自然さがなくなる。
【0028】(4)機械的エネルギ発生機構12は、相変化物質30としてワックスが内部に収められた密閉容器31を備えているので、相変化物質30としてワックスを採用すれば、ワックスに、ラウリン酸、ステアリン酸、脂肪酸カルシウム、脂肪酸、オレイン酸及びデカン酸等の添加物を適宜加えることにより、相変化が生じる温度範囲を任意に調節することが可能となる。
(5)容器31には、相変化物質30の体積変化により駆動されるロッド32が進退可能に設けられているので、相変化物質30の体積変化量は、ロッド32で外部に容易に取り出すことが可能となる。そのため、ロッド32に伝達機構13を連結することで、可動部21を容易に可動することが可能となる。
【0029】(6)カップ状固定部20と、このカップ状固定部20の内部に軸方向に沿って出没自在に収納された可動部21とを備えて花部11を構成したから、可動部21がカップ状固定部20に対する進退に伴って外側に向けて変位することになり、その動きがはっきり認識することができる。従って、可動部21のはっきりした動きにより、観賞用製品の外観を良好なものにできる。
【0030】(7)伝達機構13は、一端が可動部21に連結されたワイヤ41と、このワイヤ41を係止可能とするとともにロッド32に連結された第1チャック42と、この第1チャック42とは異なる位置でワイヤ41を係止可能とする第2チャック43とを備え、第1チャック42は、ロッド32の前進に際してワイヤ41を係止するとともにロッド32の後退に際してワイヤ41との係止を解除する構成であり、第2チャック43は、ワイヤ41の前進に際してワイヤ41との係止を解除するとともにワイヤ41の後退に際してワイヤ41を係止する構成としたので、第1チャック42と第2チャック43とが協働することで、ワイヤ41を後退させることなく、確実に前進させるワンウェイクラッチとして機能することになる。従って、温度の昇降が繰り返されても、可動部21が逆戻りすることなく、前進し続けることになるので、観賞用製品1として良好なものを提供することができる。
【0031】(8)可動部21は、それぞれ花弁形状を有するとともに、カップ状固定部20の内壁部に向けて付勢される複数の弾性部材からなり、カップ状固定部20は萼形状を有する構成としたので、可動部21のカップ状固定部20に対する前進が花の開花を模したものとなるため、優れた造花からなる観賞用製品1を提供することができる。
(9)ケーシング10は植木鉢を模して形成されているため、この点からも、造花として優れた観賞用製品1を提供することができる。
【0032】(10)伝達機構13は、可動部21の前進に伴って前進するとともに、入れ子状に組み合わされた複数の筒状部材44,45,46を備えたので、入れ子状に組み込まれた筒状部材44,45,46がいわば造花の茎部分を構成することになるため、これらが伸びることで、造花の開花状況をリアルに再現することができる。
(11)複数の筒状部材44,45,46の内部にワイヤ41が収納されているので、このワイヤ41が外部からの力により、誤って切断されることが少なくなり、観賞用製品1の故障を少なくすることができる。
【0033】(12)密閉容器33の開口側の端部には、段付き筒状のカバー部材35が嵌合され、このカバー部材35の大径側内周面には円盤部材34が軸方向に沿って移動自在とされ、カバー部材35の大径側内周及び小径側内周には円盤部材34の動きを、パッキン部材36を介してロッド32に伝達するため、円盤部材34の小さな変位をロッド32の大きな変位として伝達することができる。そのため、この点からも、花部11の動きを大きなものとすることができる。
【0034】[第2実施形態]次に、本発明の第2実施形態を、図8及び図9に基づいて説明する。第2実施形態は第1実施形態に比べて伝達機構の構成が異なるもので、他の構成は第1実施形態と同じである。ここで、第2実施形態では、第1実施形態と同一構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
【0035】図8は第2実施形態にかかる観賞用製品2の全体構成を示す断面図である。図8において、観賞用製品2は、ケーシング10と、花部11と、機械的エネルギ発生機構12と、この機械的エネルギ発生機構12で発生したエネルギを花部11に伝達する伝達機構53とが備えられた構造である。伝達機構53は、茎部40と、この茎部40の内部に収納されたワイヤ41と、このワイヤ41を係止可能とするチャック43と、ワイヤ41を繰り出すプーリ50と、ロッド32の一端部に連結されるラック51と、このラック51とプーリ50とを連結するラチェット機構52とを備えて構成されている。
【0036】ロッド32の軸方向が水平方向となるように機械的エネルギ発生機構12がケーシング10内に配置されている。ラック51は、その長手方向がロッド32の軸方向と一致するように配置されており、ラック51の他端部とケーシング10内に固定された固定ブロック10Eとの間には、ラック51を介してロッド32を常時後退方向(左方)に付勢するばね部材48が介装されている。そのため、温度上昇によって相変化物質30が膨張すると、ロッド32がばね部材48の付勢力に抗して上昇し、温度下降によって相変化物質30が収縮すると、ロッド32がばね部材48の付勢力により下降する。
【0037】ラチェット機構52の構成が図9に示されている。図9において、ラチェット機構52は、プーリ50に同芯上に結合された第1ラッチェットギア54と、この第1ラッチェットギア54と噛合される第2ラッチェットギア55と、この第2ラッチェットギア55と同芯状に結合されるとともにラック51のギア部51Aに噛合される歯車56と、この歯車56を介して第1ラッチェットギア54と第2ラッチェットギア55とを確実に噛合させるばね部材57とを備えた構成である。
【0038】第1ラッチェットギア54と第2ラチェットギア55との噛み合いは、ラック51の前進に伴って第2ラッチェットギア55が図8中反時計方向に回転すると、この第2ラッチェットギア55が第1ラッチェットギア54に噛合してプーリ50を同方向に回転してワイヤ41を前進(上昇)させ、ラック51の後退に伴って第2ラッチェットギア55が図8中、時計方向に回転すると、この第2ラッチェットギア55が第1ラッチェットギア54に対して空回りしてプーリ50の回転を阻止するように形成されている。
【0039】従って、第2実施形態では、第1実施形態の(1)〜(6)(8)〜(12)と同様の作用効果を奏することができる他に、次の作用効果を奏することができる。
(13)第2実施形態では、伝達機構53は、一端が可動部21に連結されたワイヤ41と、このワイヤ41を繰り出すプーリ50と、ロッド32に連結されるラック51と、このラック51とプーリ50とを連結するラチェット機構52とを備え、このラチェット機構52は、ワイヤ41を前進する方向のみプーリ50の回転を許容し後退する方向にはプーリ50の回転を阻止する構成としたので、ラチェット機構52によって、ワイヤ41を後退させることなく、確実に前進させることができる。従って、温度が昇降しても、可動部21が逆戻りすることなく、前進し続けることになるため、開花工程を楽しむことができる観賞用製品2を提供することができる。
(14)第1実施形態で使用されたチャック43とラチェット機構52とを備えて伝達機構53を構成したから、より効果的にワイヤ41の逆戻りを阻止することができる。
【0040】[第3実施形態]次に、本発明の第3実施形態を、図10及び図11に基づいて説明する。第3実施形態は第1実施形態に比べて伝達機構の構成が異なるもので、他の構成は第1実施形態と同じである。ここで、第3実施形態では、第1実施形態と同一構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
【0041】図10は第3実施形態にかかる観賞用製品3の全体構成を示す断面図である。図10において、観賞用製品3は、ケーシング10と、花部11と、機械的エネルギ発生機構12と、この機械的エネルギ発生機構12で発生したエネルギを花部11に伝達する伝達機構63とが備えられた構造である。伝達機構63は、茎部40と、この茎部40の内部に収納された帯状部材60と、この帯状部材60を係止可能とするチャック43と、帯状部材60を繰り出すプーリ61と、帯状部材60を上方に押し上げるラック62とを備えている。
【0042】帯状部材60は、一端(上端)がスライダ22に結合され、他端部がプーリ61に巻き込まれている。この帯状部材60は、ステンレス材、Ni-Co合金、その他の金属、アモルファス材、プラスチック、その他の材料から形成され、ラック62によって上方に送り出されても、撓むことなくスライダ22に伝達する強度を有し、かつ、錆に強い材質が好ましい。図11に示される通り、ラック62は、その長手方向がロッド32の軸方向と一致するようにロッド32と連結されており、ラック62の他端部とケーシング10内に固定された固定ブロック10Fとの間には、ラック62を介してロッド32を常時後退方向(下方)に付勢するばね部材64が介装されている。そのため、温度上昇によって相変化物質30が膨張すると、ロッド32がばね部材64の付勢力に抗して上昇し、温度下降によって相変化物質30が収縮すると、ロッド32がばね部材64の付勢力により下降する。
【0043】ラック62とケーシング10内に固定された固定ブロック10Gとの間には、ラック62を帯状部材60側に付勢するばね部材65が介装されている。帯状部材60は、ラック62と対向する面に係止用歯60Aが形成され、この係止用歯60Aに噛合される係止用歯62Aがラック62に形成される。係止用歯60A,62A同士は、帯状部材60を前進する方向にのみ係止し後退する方向には係止を解除するように、つまり、ロッド32の前進に伴ってラック62が前進(上昇)すると、互いに噛合して帯状部材60を上昇させ、ロッド32の後退に伴ってラック62が後退(下降)すると、互いに噛合することなく空回りするように形成されている。なお、ラック62をばね部材65の付勢力に抗して帯状部材60から離隔することで、帯状部材60との係止が解除される。これにより、プーリ61から繰り出された帯状部材60を手動等で巻き戻すことが可能となる。
【0044】従って、第3実施形態では、第1実施形態の(1)〜(6)(8)〜(12)と同様の作用効果を奏することができる他に、次の作用効果を奏することができる。
(15)第3実施形態では、伝達機構63は、一端が可動部21に連結され表面に係止用歯60Aが形成された帯状部材60と、この帯状部材60の係止用歯60Aに噛合する係止用歯62Aが形成されるとともにロッド32と連結されたラック62とを備え、このラック62の係止用歯62Aと帯状部材60の係止用歯60Aとを、帯状部材60を前進する方向にのみ係止し後退する方向には係止を解除するように形成したから、係止用歯60A,62A同士が噛合し合うことで、ロッド32及びラック62の前進を帯状部材60に確実に伝達することができる。そのため、温度が昇降しても、可動部21が逆戻りすることなく、前進し続けることになるため、開花工程を楽しむことができる観賞用製品3を提供することができる。
(16)伝達機構63は、ラック62に加えて第1実施形態で使用されたチャック43を備えて構成されているので、より効果的に帯状部材60の逆戻りを阻止することができる。特に、帯状部材60の表面に係止用歯60Aが形成されているので、チャック43の爪部43Eに帯状部材60の係止用歯60Aが係止されることになるため、帯状部材60の逆戻りを確実に阻止することができる。
【0045】なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、次に示すような変形等をも含むものである。例えば、前記実施形態では、植木針を構成するケーシング10に1本の造花を設けた構成としたが、本発明では、ケーシング10に複数本の造花を設ける構成でもよい。さらに、前記各実施形態では、観賞用製品1,2,3を造花としたが、本発明では、造花に限らず、他のものでもよい。例えば、人形や動物の玩具からなる観賞用製品でもよい。この場合、人形の髪の毛や猫や犬の髭を可動部とし、この可動部を機械的エネルギ発生機構及び伝達機構で前進させる構成としてもよい。
【0046】さらに、本発明では、相変化物質としては、n−パラフィン等のワックスに限らず、グリセリン等でもよく、要するに、常温の範囲に融点があり、固体及び液体の相変化で体積が変化するものであればよい。その上、伸び量を得られる温度領域(成長範囲)を15℃〜35℃としたが、この温度領域は任意に設定できるものであり、例えば、春、秋で成長するように、温度設定してもよい。
【0047】また、本発明では、伸び量を得られる温度領域を狭い範囲とすれば、所定の温度を超えた際に、可動部が急激に変化することになるため、急激な動きを必要とする玩具には最適である。第1、第2実施形態において、ワイヤ41に代えて第3実施形態で使用した帯状部材60を用いてもよい。さらに、本発明では、複数段の筒状部材44,45,46を備えて茎部40を構成したが、筒状部材は1個のみ用いるものでもよい。
【0048】
【発明の効果】前述のように、本発明の観賞用製品によれば、可動部の変化速度を任意に設定できるとともに可動部が逆戻りすることがない。
【出願人】 【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
【出願日】 平成12年11月10日(2000.11.10)
【代理人】 【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉 (外1名)
【公開番号】 特開2002−146613(P2002−146613A)
【公開日】 平成14年5月22日(2002.5.22)
【出願番号】 特願2000−344074(P2000−344074)