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【発明の名称】 手袋とその製造方法
【発明者】 【氏名】越智 敦子

【氏名】中下 武文

【要約】 【課題】特に炊きたてのご飯等の、高温でかつ粘着性のある食品の取り扱いが容易で、しかも安全性の高い手袋と、その製造方法とを提供する。

【解決手段】手袋は、加硫ゴムや樹脂などの、非透水性でかつ可とう性を有する材料からなる手袋本体に、水溶性高分子を含有させた。第1の製造方法は、水溶性高分子の液を手袋本体に噴霧し、タンブリング処理して、水溶性高分子を手袋本体中に浸透、含浸させる。第2の製造方法は、水溶性高分子を添加した液を用いて、浸漬法によって手袋本体を作製する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】非透水性でかつ可とう性を有する材料にて形成した手袋本体に、水溶性高分子を含有させたことを特徴とする手袋。
【請求項2】水溶性高分子が平均分子量1000以上のポリエチレングリコールであり、当該ポリエチレングリコールを、手袋本体を形成する材料1gあたり0.0005〜0.5gの割合で含有させた請求項1記載の手袋。
【請求項3】非透水性でかつ可とう性を有する材料にて形成した手袋本体の、少なくとも外側面に水溶性高分子の液を塗布または噴霧したのちタンブリング処理して、手袋本体に水溶性高分子を浸透、含浸させる工程を含むことを特徴とする手袋の製造方法。
【請求項4】非透水性でかつ可とう性を有する材料もしくはその原材料を含む液中に手袋の型を浸漬して、その表面に上記材料を凝固させて成膜する工程を経て手袋本体を製造するに際し、上記液に水溶性高分子を加えることによって、製造される手袋本体に水溶性高分子を含有させることを特徴とする手袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、特に炊きたてのご飯等の、高温でかつ粘着性のある食品の取り扱い作業を容易に行うことができる新規な手袋と、その製造方法とに関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】近時、弁当やファーストフード類などの食品を製造する現場では、衛生管理上の観点から、手袋をして作業することが一般化しつつある。かかる手袋には、1回の使いきりにすることから安価で、しかも衛生的である上、手袋をした際の食品の取り扱いが容易であることが求められている。これらの要求を満たすものとして従来は、極薄手ないし薄手の、ポリ塩化ビニル製の手袋が広く用いられてきた。
【0003】ポリ塩化ビニル製の手袋は、ポリ塩化ビニルに多量の液状可塑剤を添加して膨潤させ、さらに加熱して液状にした中に手袋の型を浸漬したのち、引き上げて、型の表面に形成された薄膜を冷却、固化させることで製造される。そして製造後の手袋から可塑剤が浸出して、ご飯等を扱った際に手袋にくっつくことを防止するので、手袋が極薄手ないし薄手であることと相まって、食品の取り扱いが容易である。
【0004】しかし最近になって、ポリ塩化ビニルの可塑剤として多用されているフタル酸エステルが、いわゆる環境ホルモンとして問題視されるようになってきた。しかもそれが、現在のところ直接的な影響はないと言われているものの、コンビニエンスストアの弁当中から多量に検出されるに到ったことから、2000年7月より、食品用途でのポリ塩化ビニルの使用が禁止された。そこでこの措置に伴って手袋についても、ポリ塩化ビニル製のものに代わる代替品の調達が急務となりつつある。
【0005】このような代替品の1種に、例えば天然ゴムやニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)などのゴムラテックスや、あるいはアクリレートラテックスなどの樹脂のラテックス状エマルジョン(水中油型エマルジョン、「樹脂エマルジョン」とする)を、いわゆる浸漬法によって手袋の形状に成膜して製造される薄手の手袋がある。しかし、従来のこうした手袋はいずれも、特に炊きたてのご飯などの、高温でかつ粘着性のある食品がくっつきやすいため、薄手であるにも拘らず食品の取り扱いが容易でないという問題があった。
【0006】そこで撥水性がよく、またゴムや樹脂への浸透性が高いシリコーンオイルを、上記薄手の手袋の、少なくとも表面に含浸させることで、シリコーンオイルの撥水性によってご飯等のくっつきを防止することが検討された。しかしシリコーンオイルは、熱が加わると手袋内部に浸透して表面から失われやすく、くっつきの効果が低下しやすいので、製造条件や保存環境等に気を配る必要があった。
【0007】この発明の目的は、特にご飯等の食品の取り扱いが容易で、しかも安全性の高い新規な手袋と、その製造方法とを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】請求項1記載の発明は、非透水性でかつ可とう性を有する材料にて形成した手袋本体に、水溶性高分子を含有させたことを特徴とする手袋である。上記請求項1の構成によれば、特に炊きたてのご飯等の、高温でかつ粘着性のある食品と手袋本体とのくっつきを防止して、食品の取り扱いが容易な手袋が得られる。
【0009】この理由として、発明者らは、手袋本体に含有させた水溶性高分子が、食品中に含まれる水分によって膨潤して、主に手袋本体の外側面に連続的な、あるいは不連続な、極めて薄いゲル状の膜を形成し、この膜が、食品と手袋本体とが直接に接触するのを防いで両者のくっつきを防止するためではないかと考えている。また水溶性高分子は、可塑剤のように環境ホルモン等として作用しないため、上記請求項1の構成によれば、手袋の安全性も向上する。
【0010】したがって請求項1の構成によれば、上記ご飯等の食品の取り扱いが容易で、しかも安全性の高い新規な手袋を提供することができる。請求項2記載の発明は、水溶性高分子が平均分子量1000以上のポリエチレングリコールであり、当該ポリエチレングリコールを、手袋本体を形成する材料1gあたり0.0005〜0.5gの割合で含有させた請求項1記載の手袋である。
【0011】水溶性高分子としては、安全性を考慮して、特に医薬品、化粧品もしくは食品用としての安全性が確認されたもの、あるいは植物などの天然物起源のものなどを使用するのが好ましい。この点、ポリエチレングリコールは、医薬品や化粧品用としての安全性が確認されており、安全性が高い。しかもポリエチレングリコールは、上記医薬品、化粧品用の他、各種用途に多用されており、その製造方法が確立されていて、平均分子量、純度などの揃った製品を、安価かつ大量に入手することができる。このため手袋の品質向上と、コストダウンとを両立できるという利点もある。
【0012】なお請求項2において、ポリエチレングリコールの平均分子量が1000以上とされるのは、下記の理由による。すなわち平均分子量が1000以上のポリエチレングリコールは、食品と接触しても簡単に食品側に移行することなしに、食品と手袋本体とのくっつきを防止する機能を、手袋の使用期間中にわたって維持することができる。これは、ポリエチレングリコールの高分子鎖が互いに、あるいは手袋本体を形成するゴムや樹脂の高分子鎖と絡み合った状態で、前記ゲル状の膜を形成するためと考えられる。
【0013】しかし平均分子量が1000未満のポリエチレングリコールは主鎖の絡み合いが不十分であるためか、食品と接触すると、比較的簡単に食品側に移行してしまう。このため、後述する比較例の結果からも明らかなように、食品のくっつきを防止する効果が得られないおそれがある。したがって、ポリエチレングリコールの平均分子量は前記の範囲が好ましい。また請求項2において、ポリエチレングリコールの含有割合が、手袋本体を形成する材料1gあたり0.0005〜0.5gとされるのは、下記の理由による。
【0014】すなわちポリエチレングリコールの含有割合が上記の範囲未満では、後述する比較例の結果からも明らかなように、食品と手袋本体とのくっつきを防止する効果が手袋の使用期間中にわたって維持されず、早期に失われてしまうおそれがある。これは、ポリエチレングリコールの絶対的な量が不足して、手袋本体の外側面に十分な膜が形成されないため、たとえ平均分子量が1000以上のポリエチレングリコールを使用しても、当該ポリエチレングリコールの食品側への移行によって膜が早期に失われてしまうためと考えられる。
【0015】また逆に、ポリエチレングリコールの含有割合が上記の範囲を超える場合には、これも後述する比較例の結果から明らかなように、手袋本体の表面がべたつくおそれがある。これは、過剰のポリエチレングリコールが、手袋本体の外側面に過剰に厚い膜を形成し、その表面が、食品中の水分によって溶解するためと考えられる。また、溶解したポリエチレングリコールが食品に多量に付着するおそれもある。
【0016】したがって、ポリエチレングリコールの含有割合は前記の範囲が好ましい。請求項3記載の発明は、非透水性でかつ可とう性を有する材料にて形成した手袋本体の、少なくとも外側面に水溶性高分子の液を塗布または噴霧したのちタンブリング処理して、手袋本体に水溶性高分子を浸透、含浸させる工程を含むことを特徴とする手袋の製造方法である。かかる製造方法によれば、水溶性高分子の液を塗布または噴霧した手袋本体をタンブラー、すなわち回転ドラム式の乾燥機等に投入して、好ましくは加熱しつつ回転させるタンブリング処理をするだけで、簡単、安価かつ効率的に、この発明の手袋を製造できる。したがって手袋のコストを下げることが可能となる。
【0017】請求項4記載の発明は、非透水性でかつ可とう性を有する材料もしくはその原材料を含む液中に手袋の型を浸漬して、その表面に上記材料を凝固させて成膜する工程を経て手袋本体を製造するに際し、上記液に水溶性高分子を加えることによって、製造される手袋本体に水溶性高分子を含有させることを特徴とする手袋の製造方法である。かかる製造方法によれば、例えば前述したゴムラテックスや樹脂エマルジョンなどの液中に水溶性高分子を加えるだけで、あとは通常の浸漬法によって簡単、安価かつ効率的に、この発明の手袋を製造できる。したがって手袋のコストを下げることが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に、この発明を説明する。
〈手袋本体〉この発明の手袋のうち手袋本体としては、ゴムや樹脂などの、非透水性でかつ可とう性を有する材料にて形成した、従来公知の種々の構成の手袋が、いずれも使用可能である。
【0019】ただし、(1) 浸漬法によって、ゴムラテックスを手袋の形状に成膜してゴムを加硫させることで製造した、加硫ゴム製の薄手の手袋本体、もしくは(2) 同じく浸漬法によって、樹脂エマルジョンを手袋の形状に成膜して樹脂を乾燥、固化させることで製造した薄手の手袋本体が、食品の取り扱いが容易であるため好適に用いられる。
【0020】中でも(1)の加硫ゴム製の手袋本体は、上記のように薄手である上、柔軟性、可とう性、引張強さ、耐熱性などにも優れており、食品の取り扱いをさらに容易にできるため特に好適に使用される。かかる加硫ゴム製の手袋本体は、詳しくは下記の手順で製造される。まずゴムラテックスに、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤(活性化剤)、老化防止剤、充てん剤、分散剤等の各種添加剤を加えた、未加硫もしくは前加硫状態の液を用意する。次にこの液に、その表面を凝固剤で処理した手袋の型を浸漬し、引き上げて型の表面に付着した液を乾燥させる。この浸漬、乾燥工程は、手袋本体の厚みに応じて1回のみ行ってもよいし、2回以上、繰り返してもよい。そして型ごと加熱してゴムを加硫させると、加硫ゴム製の手袋本体が製造される。
【0021】一方、(2)の樹脂製の手袋本体は、詳しくは下記の手順で製造される。まず樹脂エマルジョンに、老化防止剤、充てん剤、分散剤等の各種添加剤を加えた液を用意する。次にこの液に、その表面を凝固剤で処理した手袋の型を浸漬し、引き上げて、型の表面に付着した液を乾燥させる。そうすると、樹脂製の手袋本体が製造される。この浸漬、乾燥工程は、やはり手袋本体の厚みに応じて1回のみ行ってもよいし、2回以上、繰り返してもよい。また乾燥後に、さらに必要に応じて型ごと加熱して樹脂を固化させる工程を加えてもよい。
【0022】手袋本体を形成するゴムとしては天然ゴム、および合成ゴムの中から、食品衛生法によって使用が許可されており、なおかつラテックス化が可能な種々のゴムがいずれも使用可能である。かかるゴムの具体例としては天然ゴム、脱蛋白天然ゴム、NBR、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴムなどが挙げられる。これらはそれぞれ1種単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
【0023】また樹脂としてはアクリル系、ウレタン系等の、食品衛生法によって使用が許可されており、なおかつエマルジョン化が可能な種々の樹脂がいずれも使用可能である。ゴムラテックスに添加される加硫剤としては、例えば硫黄や有機含硫黄化合物などが挙げられる。その配合量は、ゴムラテックス中の固形分(ゴム分)100重量部に対して0.5〜3重量部であるのが好ましい。
【0024】加硫促進剤としては、例えばPX(N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛)、PZ(ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛)、EZ(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)、BZ(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛)、MZ(2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩)、TT(テトラメチルチウラムジスルフィド)などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を混合して用いることができる。その配合量は、ゴム分100重量部に対して0.5〜3重量部であるのが好ましい。
【0025】加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華やステアリン酸などが挙げられる。その配合量は、ゴム分100重量部に対して0.5〜3重量部であるのが好ましい。老化防止剤としては、一般に、非汚染性のフェノール類が好適に用いられるが、アミン類を使用してもよい。老化防止剤の配合量はゴム分、もしくは樹脂エマルジョン中の固形分(樹脂分)100重量部に対して0.5〜3重量部であるのが好ましい。
【0026】充てん剤としては、例えばカオリンクレー、ハードクレー、炭酸カルシウムなどが挙げられる。その配合量は、ゴム分または樹脂分100重量部に対して10重量部以下であるのが好ましい。分散剤は、上記各添加剤の、ゴムラテックスや樹脂エマルジョン中への分散を良好にするために配合されるもので、かかる分散剤としては、例えば各種陰イオン系界面活性剤などが挙げられる。分散剤の配合量は、分散対象である成分の総量の0.3〜1.0重量%程度であるのが好ましい。
【0027】〈水溶性高分子〉水溶性高分子としては、前述したように安全性を考慮して、特に医薬品、化粧品もしくは食品用としての安全性が確認されたもの、あるいは植物などの天然物起源のものなどが使用される。かかる水溶性高分子としては、前述したポリエチレングリコールが特に好適に使用される他、例えばゼラチン、でんぷん合成物、コラーゲン、ペクチン、アルギン酸、カゼイン、大豆たんぱく質、キトサン、プルラン、水溶性コラーゲンペプチドなどの、いわゆる可食性を有する水溶性高分子を使用することもできる。
【0028】これら水溶性高分子はそれぞれ1種単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。水溶性高分子の物性などについては特に限定されない。ただし水溶性高分子は、その分子の大きさを規定する平均分子量の大小によって、食品側への移行のしやすさや水溶性の強弱、あるいはこれらの特性の差によってもたらされる、食品のくっつきを防止する効果の強さなどに違いを生じる。このため水溶性高分子の平均分子量は、上記効果の大小などに応じて適宜、調整するのが望ましい。
【0029】例えば水溶性高分子としてポリエチレングリコールを使用する場合、その平均分子量は1000以上であるのが好ましい。この理由は前述したとおりである。なお食品側への移行をさらに抑制して、食品のくっつきを防止する機能を手袋の使用期間中にわたって十分に維持することを考慮すると、ポリエチレングリコールの平均分子量は、上記の範囲内でも特に2000以上であるのが好ましい。またポリエチレングリコールの平均分子量の、上側の範囲についても特に限定はされないが、およそ50万以下であるのが好ましい。平均分子量が50万以上のものを製造するのは容易でない。のみならず、もし製造できたとしても殆ど水溶性を有しないため、手袋本体の外側面にゲル状の薄い膜を形成して、食品のくっつきを防止する効果が十分に得られないおそれがある。
【0030】なおポリエチレングリコールなどの水溶性高分子の平均分子量は、この発明では、水酸基価数によって規定することとする。水溶性高分子の、手袋本体への含有割合についても特に限定はされない。ただし水溶性高分子は、その種類や、あるいは同じ水溶性高分子でも平均分子量の違いなどの特性の相違によって、食品のくっつきを防止する効果などに違いを生じる。このため水溶性高分子の含有割合は、使用する水溶性高分子における、上記効果の大小などに応じて適宜、調整するのが望ましい。
【0031】例えば水溶性高分子として、上述した、平均分子量が1000以上であるポリエチレングリコールを使用する場合、その含有割合は、手袋本体を形成する材料1gあたり0.0005〜0.5gが好ましい。この理由も先に述べたとおりである。また食品のくっつきを防止する効果をさらに向上することなどを考慮すると、ポリエチレングリコールの含有割合は、上記の範囲内でも特に、手袋本体を形成する材料1gあたり0.001〜0.05gであるのが好ましい。
【0032】〈手袋の製造方法1〉この発明の手袋は、先に述べたように手袋本体の、少なくとも外側面に水溶性高分子の液を塗布または噴霧したのちタンブリング処理する、この発明の第1の製造方法によって製造することができる。より具体的には、まず前記のように浸漬法などによって製造した手袋本体に、ゴムの場合は加硫後、また樹脂の場合は乾燥固化後、さらに必要に応じてリーチング等の通常の処理をする。
【0033】そして回転ドラム式の乾燥機(タンブラー)に投入して乾燥するに先立って、個々の手袋本体の外側面に、水溶性高分子の液を塗布または噴霧する。水溶性高分子の液としては、当該水溶性高分子を加熱、溶融させた融液や、水溶性高分子を適当な溶媒中に溶解した溶液等が挙げられる。このうち溶液を形成する溶媒は、水溶性高分子の良好な溶解性と、非透水性である手袋本体への浸透性とを考慮して選択される。例えば前述したポリエチレングリコールに適した溶媒としては水や、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒等が挙げられ、特に水が好適に使用される。
【0034】次に、手袋本体を前記乾燥機に投入し、乾燥と並行して水溶性高分子を手袋本体に均一に行きわたらせるタンブリング処理をした後、1日以上、放置してさらに均一に浸透、含浸させるとこの発明の手袋が製造される。上記のようにタンブリング処理を、手袋本体の乾燥と並行して同時に行った場合には、手袋製造の工程数を減じてさらに低コスト化を図ることができる。タンブリング処理の条件、例えばドラムの回転速度、回転時間、加熱をする場合はその加熱温度などは、処理する手袋の総量、ドラムのサイズ等に基づいて最適な範囲を設定すればよい。
【0035】〈手袋の製造方法2〉この発明の手袋は、浸漬法によって手袋本体を製造するに際し、上記浸漬法に用いる液に水溶性高分子を加えるこの発明の第2の製造方法によって製造することもできる。より具体的には、まず浸漬法用に調製する、前述したゴムラテックスを含む液(手袋を形成する材料としての加硫ゴムの、原材料である未加硫のゴムを含む液)、もしくは樹脂エマルジョンを含む液(手袋を形成する材料としての樹脂を含む液)に、その調製と同時に、所定量の水溶性高分子を加える。次に従来同様に、その表面を凝固剤で処理した手袋の型を浸漬し、引き上げて型の表面に付着した液を乾燥させる。そしてゴムの場合は型ごと加熱して加硫させると、手袋本体を形成する加硫ゴムの薄い膜中に水溶性高分子が含有された、この発明の手袋が製造される。また樹脂の場合は上記のように液を乾燥、固化させ、さらに必要に応じて型ごと加熱して固化させると、手袋本体を形成する薄い樹脂の膜中に水溶性高分子が含有された、この発明の手袋が製造される。
【0036】なおこの第2の製造方法の変形例として、手袋の型の表面をあらかじめ処理する凝固剤中に、所定量の水溶性高分子を加えておく方法を採用することもできる。
【0037】
【実施例】以下にこの発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1〈手袋本体の作製〉ゴム固形分濃度が60重量%である天然ゴムラテックス(ゴム固形分量100重量部)に対し、下記の各成分を添加して30℃で24時間、前加硫して浸漬法用の液を調製した。
【0038】
(成 分) (重量部)
・硫黄 1.0・加硫促進剤BZ 0.6・亜鉛華 1.0つぎに、凝固液としての硝酸カルシウムを表面に塗布して、50℃に加熱した手袋の型を、上記液中に20秒間、浸漬した後、ゆっくり引き上げ、さらに室温で数分間、乾燥して、上記型の表面にゴム層を成膜した。
【0039】つぎにこのゴム層を、型ごとオーブンに入れて100℃で30分間、加熱して加硫させることで、厚み0.1mmの天然ゴム製の手袋本体を作製した。
〈手袋の製造〉上記手袋本体を裏返しながら型から取り外した後、その外側面に、ポリエチレングリコール(平均分子量1000)を水に溶解した溶液を、ハンドスプレーを用いて所定量、噴霧した。
【0040】次いで同じ手袋本体を多数枚(総重量15kg)、回転ドラム式の乾燥機(ドラムの内容量0.2m3)のドラム中に入れ、ドラムを回転させながら、60℃で30分間、タンブリング処理した後、1日以上、放置してポリエチレングリコールを均一に浸透、含浸させて手袋を製造した。ポリエチレングリコールの、手袋本体を形成するゴム1gあたりの含有量は0.005gであった。
【0041】実施例2、3、比較例1ポリエチレングリコールとして、平均分子量が600のもの(比較例1)、20000のもの(実施例2)、および500000のもの(実施例3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして手袋を製造した。ポリエチレングリコールの、手袋本体を形成するゴム1gあたりの含有量は、いずれも0.005gであった。
【0042】上記各実施例、比較例の手袋について、下記の米飯粘着試験を行って、その特性を評価した。
米飯粘着試験各実施例、比較例の手袋を両手に装着した状態で、100gの炊きたてのご飯を握って握り飯を作る作業を連続して行った際の、手袋へのご飯のくっつきの状態を評価した。
【0043】評価は、握り飯を1個、10個、および100個、握った時点でのご飯の付着状態で評価した。評価基準は下記のとおり。
◎:両手の手袋ともにご飯粒は1粒もくっついていない。きわめて良好。
○:両手の手袋を合計してご飯粒が1〜10粒くっついていた。良好。
△:両手の手袋を合計してご飯粒が11〜20粒くっついていた。やや不良。
×:両手の手袋を合計してご飯粒が20粒以上くっついていた。不良。
【0044】結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】表より、平均分子量が600であるポリエチレングリコールを用いた比較例1は、米飯試験初期から多くのご飯粒が付着することがわかった。これに対し、平均分子量が1000以上であるポリエチレングリコールを用いた各実施例は、米飯試験中ご飯粒が全く付着せず、食品を取り扱いやすいことが確認された。
実施例4、5、比較例2、3ポリエチレングリコール(平均分子量20000)の溶液の噴霧量を調整して、手袋本体を形成するゴム1gあたりの含有量を0.0001g(比較例2)、0.0005g(実施例4)、0.5g(実施例5)、および1g(比較例3)としたこと以外は実施例2と同様にして手袋を製造した。
【0047】上記各実施例、比較例の手袋について、前記米飯粘着試験を行って、その特性を評価した。結果を、実施例2の結果とあわせて表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】表より、ポリエチレングリコールの含有量を、手袋本体を形成するゴム1gあたり0.0001gとした比較例2は、米飯試験初期こそ良好な結果を示すものの、結果が徐々に悪化することがわかった。またポリエチレングリコールの含有量を、手袋本体を形成するゴム1gあたり1gとした比較例3は、米飯試験中ご飯粒が全く付着しなかったが、表の問題点の欄に記載したように製造直後からべたついた状態を呈し、食品の取り扱いに使用できないことがわかった。
【0050】これに対し、ポリエチレングリコールの含有量を、手袋本体を形成するゴム1gあたり0.0005〜0.5gとした各実施例は、米飯試験中ご飯粒が全く付着しない上、比較例3のようにべたつくなどの問題を全く生じず、食品を取り扱いやすいことが確認された。
実施例6〈手袋本体の作製〉ゴム固形分濃度が45重量%であるNBRラテックス(ゴム固形分量100重量部)に対し、下記の各成分を添加して30℃で72時間、前加硫して浸漬法用の液を調製した。
【0051】
(成 分) (重量部)
・硫黄 1.0・加硫促進剤BZ 0.6・亜鉛華 1.0つぎに、凝固液としての硝酸カルシウムを表面に塗布して、50℃に加熱した手袋の型を、上記液中に10秒間、浸漬した後、ゆっくり引き上げ、さらに室温で数分間、乾燥して、上記型の表面にゴム層を成膜した。
【0052】つぎにこのゴム層を、型ごとオーブンに入れて130℃で30分間、加熱して加硫させることで、厚み0.1mmのNBR製の手袋本体を作製した。
〈手袋の製造〉上記手袋本体を裏返しながら型から取り外した後、その外側面に、ポリエチレングリコール(平均分子量20000)を水に溶解した溶液を、ハンドスプレーを用いて所定量、噴霧した。
【0053】次いで同じ手袋本体を多数枚(総重量15kg)、回転ドラム式の乾燥機(ドラムの内容量0.2m3)のドラム中に入れ、ドラムを回転させながら、60℃で30分間、タンブリング処理した後、1日以上、放置してポリエチレングリコールを均一に浸透、含浸させて手袋を製造した。ポリエチレングリコールの、手袋本体を形成するゴム1gあたりの含有量は0.005gであった。
【0054】比較例4、5ポリエチレングリコール(平均分子量20000)の溶液の噴霧量を調整して、手袋本体を形成するゴム1gあたりの含有量を0.0001g(比較例4)、および1g(比較例5)としたこと以外は実施例6と同様にして手袋を製造した。上記実施例、比較例の手袋について、前記米飯粘着試験を行って、その特性を評価した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】表の結果より、手袋本体を形成するゴムを天然ゴムからNBRに変更しても、同様の結果が得られることがわかった。すなわち、ポリエチレングリコールの含有量を、手袋本体を形成するゴム1gあたり0.0001gとした比較例4は、米飯試験初期こそ良好な結果を示すものの、結果が徐々に悪化することがわかった。またポリエチレングリコールの含有量を、手袋本体を形成するゴム1gあたり1gとした比較例5は、米飯試験中ご飯粒が全く付着しなかったが、表の問題点の欄に記載したように製造直後からべたついた状態を呈し、食品の取り扱いに使用できないことがわかった。
【0057】これに対し、ポリエチレングリコールの含有量を、手袋本体を形成するゴム1gあたり0.005gとした実施例6は、米飯試験中ご飯粒が全く付着しない上、比較例5のようにべたつくなどの問題を全く生じず、食品を取り扱いやすいことが確認された。
実施例7ゴム固形分濃度が60重量%である天然ゴムラテックス(ゴム固形分量100重量部)に対し、下記の各成分を添加して30℃で24時間、前加硫して浸漬法用の液を調製した。
【0058】

つぎに、凝固液としての硝酸カルシウムを表面に塗布して、50℃に加熱した手袋の型を、上記液中に20秒間、浸漬した後、ゆっくり引き上げ、さらに室温で数分間、乾燥して、上記型の表面にゴム層を成膜した。
【0059】つぎにこのゴム層を、型ごとオーブンに入れて100℃で30分間、加熱して加硫させることで、厚み0.1mmの天然ゴム製の手袋本体を作製して、ポリエチレングリコールが含有された手袋を得た。ポリエチレングリコールの、手袋本体を形成するゴム1gあたりの含有量は0.005gであった。
実施例8、9、比較例6ポリエチレングリコールとして、平均分子量が600のもの(比較例6)、20000のもの(実施例8)、および500000のもの(実施例9)を用いたこと以外は実施例7と同様にして手袋を製造した。
【0060】ポリエチレングリコールの、手袋本体を形成するゴム1gあたりの含有量は、いずれも0.005gであった。上記各実施例、比較例の手袋について、前記米飯粘着試験を行って、その特性を評価した。結果を表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】表の結果より、手袋の製造方法を変更しても、同様の結果が得られることがわかった。すなわち平均分子量が600であるポリエチレングリコールを用いた比較例6は、米飯試験初期から多くのご飯粒が付着することがわかった。これに対し、平均分子量が1000以上であるポリエチレングリコールを用いた各実施例は、米飯試験中ご飯粒が全く付着せず、食品を取り扱いやすいことが確認された。
【0063】実施例10、11、比較例7、8ポリエチレングリコール(平均分子量20000)の、浸漬法用の液への添加量を調整して、手袋本体を形成するゴム1gあたりの含有量を0.0001g(比較例7)、0.0005g(実施例10)、0.5g(実施例11)、および1g(比較例8)としたこと以外は実施例8と同様にして手袋を製造した。上記各実施例、比較例の手袋について、前記米飯粘着試験を行って、その特性を評価した。結果を、実施例8の結果とあわせて表5に示す。
【0064】
【表5】

【0065】表より、ポリエチレングリコールの含有量を、手袋本体を形成するゴム1gあたり0.0001gとした比較例7は、米飯試験初期こそ良好な結果を示すものの、結果が徐々に悪化することがわかった。またポリエチレングリコールの含有量を、手袋本体を形成するゴム1gあたり1gとした比較例8は、米飯試験中ご飯粒が全く付着しなかったが、表の問題点の欄に記載したように製造直後からべたついた状態を呈し、食品の取り扱いに使用できないことがわかった。
【0066】これに対し、ポリエチレングリコールの含有量を、手袋本体を形成するゴム1gあたり0.0005〜0.5gとした各実施例は、米飯試験中ご飯粒が全く付着しない上、比較例3のようにべたつくなどの問題を全く生じず、食品を取り扱いやすいことが確認された。
実施例12ゴム固形分濃度が45重量%であるNBRラテックス(ゴム固形分量100重量部)に対し、下記の各成分を添加して30℃で72時間、前加硫して浸漬法用の液を調製した。
【0067】

つぎに、凝固液としての硝酸カルシウムを表面に塗布して、50℃に加熱した手袋の型を、上記液中に10秒間、浸漬した後、ゆっくり引き上げ、さらに室温で数分間、乾燥して、上記型の表面にゴム層を成膜した。
【0068】つぎにこのゴム層を、型ごとオーブンに入れて130℃で30分間、加熱して加硫させることで、厚み0.1mmのNBR製の手袋本体を作製して、ポリエチレングリコールが含有された手袋を得た。ポリエチレングリコールの、手袋本体を形成するゴム1gあたりの含有量は0.005gであった。
比較例9、10ポリエチレングリコール(平均分子量20000)の溶液の噴霧量を調整して、手袋本体を形成するゴム1gあたりの含有量を0.0001g(比較例9)、および1g(比較例10)としたこと以外は実施例12と同様にして手袋を製造した。
【0069】上記実施例、比較例の手袋について、前記米飯粘着試験を行って、その特性を評価した。結果を表6に示す。
【0070】
【表6】

【0071】表の結果より、ポリエチレングリコールの含有量を、手袋本体を形成するゴム1gあたり0.0001gとした比較例9は、米飯試験初期こそ良好な結果を示すものの、結果が徐々に悪化することがわかった。またポリエチレングリコールの含有量を、手袋本体を形成するゴム1gあたり1gとした比較例10は、米飯試験中ご飯粒が全く付着しなかったが、表の問題点の欄に記載したように製造直後からべたついた状態を呈し、食品の取り扱いに使用できないことがわかった。
【0072】これに対し、ポリエチレングリコールの含有量を、手袋本体を形成するゴム1gあたり0.005gとした実施例12は、米飯試験中ご飯粒が全く付着しない上、比較例10のようにべたつくなどの問題を全く生じず、食品を取り扱いやすいことが確認された。
【出願人】 【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
【出願日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【代理人】 【識別番号】100075155
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外2名)
【公開番号】 特開2002−327324(P2002−327324A)
【公開日】 平成14年11月15日(2002.11.15)
【出願番号】 特願2001−132442(P2001−132442)