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【発明の名称】 手 袋
【発明者】 【氏名】山本 勉

【氏名】波多野 武

【要約】 【課題】

【解決手段】裏面がフィラメント捲縮糸から主として構成されており、表面が紡績糸から主として構成されていることを特徴とする裏面と表面の吸水表裏拡散面積比が1.3以上である手袋。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 裏面と表面の吸水表裏拡散面積比が1.3以上である手袋。
【請求項2】 表面を主として構成している糸条と、裏面を主として構成している糸条の繊維空間率比が、1:1.2〜2.0であることを特徴とする請求項1に記載の手袋。
【請求項3】 裏面がフィラメント捲縮糸から主として構成されており、表面が紡績糸から主として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の手袋。
【請求項4】 裏面を主として構成している糸条の単糸繊度が、表面を主として構成している糸条の単糸繊度に対し、1.2〜6倍であることを特徴とする請求項1〜3に記載の手袋。
【請求項5】 さらに、表面層を主として構成している糸条の繊維横断面において、繊維表面に長手方向に沿って1または複数の凹溝が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の手袋。
【請求項6】 裏面が、(a)17cN/dTex以上の引っ張り強度および/または(b)限界酸素指数が25以上の難燃性と示差走査熱量測定法による熱分解点が400℃以上の耐熱性を有する高性能繊維の糸条から主として構成されていることを特徴とする請求項1〜5に記載の手袋。
【請求項7】 表面が、(a)17cN/dTex以上の引っ張り強度および/または(b)限界酸素指数が25以上の難燃性と示差走査熱量測定法による熱分解点が400℃以上の耐熱性を有する高性能繊維の糸条から主として構成されていることを特徴とする請求項1〜6に記載の手袋。
【請求項8】 高性能繊維が、パラ系アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリビニルアルコール系繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、メタ系アラミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維であることを特徴とする請求項6または7に記載の手袋。
【請求項9】 パラ系アラミド繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である請求項8に記載の手袋。
【請求項10】 裏面を主として構成している糸条の総繊度と、表面を主として構成している糸条の総繊度の比が、1:1.2〜5.0である請求項1に記載の手袋。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、手袋に関し、さらに詳しくは優れた汗処理性を有する手袋に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、手袋は肌に直接接触するように装着され、特に作業用手袋は長時間装着されていることが多い。そのため、肌からの発汗による蒸れやベトツキは手袋を装着している者に不快感を与える。特に、作業手袋においてはかかる不快感からくる作業効率の低下が問題となる。したがって、手袋は、肌から発汗する汗を長時間にわたり連続的に吸収すると共に、速やかに外気中に蒸散させる乾燥性を有するものが好ましい。また、用途によっては優れた機械強度、耐熱性または耐薬品性等を有するものが好ましく、さらに、頻繁に行われる洗濯に対し優れたウオッシュアンドウエア性を有するものであればより好ましい。
【0003】しかし、吸水・透水性および蒸散・速乾性を有し、かつ使用用途において要求される機械強度、耐熱性または耐薬品性などの性質を備えている手袋は、いまだに出現していないのが実状である。例えば、一般的に使用されている木綿、ウール等の天然繊維のみからなる手袋、または、これら天然繊維と合成繊維との交編、交織や混紡物からなる手袋は、吸水性や保水性には優れていて汗を良く吸い取るが、いったん吸い取った汗を容易に蒸散させることができないため蒸散・速乾性に劣っている。また、かかる手袋は、合繊繊維に比べ機械強度、耐熱性、耐薬品性などに劣るため、特に作業用手袋としては使用しにくい。さらに、かかる手袋は、洗濯後の脱水が難しく繊維内部にかなりの水が残って乾燥に長時間を要するため、ウオッシュアンドウエア性に劣るという欠点もある。
【0004】一方、合成繊維のみからなる手袋は、ウオッシュアンドウエア性や機械強度、耐熱性または耐薬品性などには優れているが、水と接触したときの吸水速度が遅く、透水能力に劣り、汗の吸汗・移動が不十分であるため、汗による蒸れ感、それに伴う不快感を招くという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、裏面で吸収した汗を表面側へ移動させる吸水・透水性、表面での蒸散・速乾性に優れ、汗による蒸れ感およびそれに伴う不快感を実質的に感じることのない手袋を提供することにある。本発明の他の目的は、さらに、使用用途において要求される機械強度、耐熱性または耐薬品性などの性質を有し、ウオッシュアンドウエア性に優れている手袋を提供することにある。ここで、裏面とは肌に接する面、つまり内側の面のことであり、表面とは肌に接しない面、つまり外側の面のことである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、裏面にフィラメント捲縮糸を用い、表面に紡績糸を用いて手袋を作製したところ、裏面に付着した水滴が毛細管現象により表面に移動するという知見を得た。したがって、かかる手袋は、肌にかいた汗を速やかに内側から外側に移動させ、水分を大気中に放出して蒸れ感を除くことができる。本発明者らは、さらに、裏面に付着した水滴を毛細管現象により表面に移動させることができる手袋の構成および形態について検討を重ね、本発明を完成した。
【0007】すなわち、本発明は、(1)裏面と表面の吸水表裏拡散面積比が1.3以上である手袋、(2)表面を主として構成している糸条と、裏面を主として構成している糸条の繊維空間率比が、1:1.2〜2.0であることを特徴とする前記(1)に記載の手袋、(3)裏面がフィラメント捲縮糸から主として構成されており、表面が紡績糸から主として構成されていることを特徴とする前記(2)に記載の手袋、(4)裏面を主として構成している糸条の単糸繊度が、表面を主として構成している糸条の単糸繊度に対し、1.2〜6倍であることを特徴とする前記(1)〜(3)に記載の手袋、(5)さらに、表面層を主として構成している糸条の繊維横断面において、繊維表面に長手方向に沿って1または複数の凹溝が形成されていることを特徴とする前記(4)に記載の手袋、に関する。
【0008】さらに、本発明は、(6)裏面が、(a)17cN/dTex以上の引っ張り強度および/または(b)限界酸素指数が25以上の難燃性と示差走査熱量測定法による熱分解点が400℃以上の耐熱性を有する高性能繊維の糸条から主として構成されていることを特徴とする前記(1)〜(5)に記載の手袋、(7)表面が、(a)17cN/dTex以上の引っ張り強度および/または(b)限界酸素指数が25以上の難燃性と示差走査熱量測定法による熱分解点が400℃以上の耐熱性を有する高性能繊維の糸条から主として構成されていることを特徴とする前記(1)〜(6)に記載の手袋、(8)高性能繊維が、パラ系アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリビニルアルコール系繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、メタ系アラミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維であることを特徴とする前記(6)または(7)に記載の手袋、(9)パラ系アラミド繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である前記(8)に記載の手袋、および、(10)裏面を主として構成している糸条の総繊度と、表面を主として構成している糸条の総繊度の比が、1:1.2〜5.0である前記(1)に記載の手袋、に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明に係る手袋は、裏面と表面の吸水表裏拡散面積比が約1.3程度以上であることが好ましい。より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは4倍以上が好適である。上限は30倍程度が好ましい。ここで、吸水表裏拡散面積比は以下の方法によって測定できる。ガラス板上に市販のインクを2倍に水で希釈したインク液を0.1cc滴下し、その上に本発明に係る手袋を構成する編織物(以下、この欄において「サンプル編織物」という)の裏面を下に、すなわちインク液に接するようにのせ、ついで、60秒間放置し、インク液を吸収させた後、今度は別のガラス板上に移動し、ここでも裏面を下にして3分間放置する。サンプル編織物3枚について同様に行う。サンプル編織物の表面、裏面のインク液の拡散面積を測定し、その測定値により面積比(表面の拡散面積/裏面の拡散面積)を算出する。各サンプル編織物について算出された上記面積比の平均値を、本発明における「吸水表裏拡散面積比」とする。
【0010】拡散面積の大小はインク液の吸収状態を示すものであり、表面の拡散面積が大きく、かつ、前記吸水表裏拡散面積比が大きいものは滴下されたインク液を効率よく表面側に移動するいわゆる吸水、透水、拡散能力に優れていることを表すものである。また、表面側の拡散面積が大きいことは、大気との接触効率が良くなるので乾燥性にも優れていることを示す。
【0011】本発明にかかる手袋は、上記裏面と表面の吸水表裏拡散面積比が好ましくは約1.3程度以上であればその形態または構成を問わない。本発明に係る手袋の好ましい態様としては、裏面が繊維空間の多い糸条から主として構成されており、表面が繊維空間の少ない糸条から主として構成されている手袋が挙げられる。かかる手袋は、毛細管現象により汗を速やかに内側から外側に移動させ、水分を大気中に放出して手袋装着時の蒸れ感を除くことができる。
【0012】以下に、この効果について詳細に説明する。水面に毛細管を立てた場合、重力に抗して水は毛細管を上昇するが、その高さ(h)は次式で表される。
h=2r・cosθ/v・p・g (数式1)
(式中、rは液体の表面張力、θは接触角、vは管の半径、pは液体の密度、gは重力加速度を表す。)
つまり、液体の種類が一定であれば、管の半径に反比例して液体は吸引される。ここで、本発明に係る手袋の裏面は繊維空間の多く、すなわち、上記式において管半径(v)が大きいことになるから水分(汗)の吸引力が小さい。一方、表面は繊維空間の少なく、すなわち、上記式において管半径(v)が小さいことになるから水分(汗)の吸引力が大きい。したがって、手袋の裏面から表面に行くほど水分の吸収力が増すという水分の吸収勾配が生じ、水分は裏面から表面へ吸収移動することができるが、逆に表面から裏面に逆流することはない。ゆえに、汗を速やかに内側から外側に移動させ、水分を大気中に放出することができる。
【0013】かかる効果をより有効に発揮するために、表面を主として構成している繊維空間の少ない糸条と、裏面を主として構成している繊維空間の多い糸条の繊維空間率比は、1:1.2〜2.0程度であることが好ましい。より具体的には、裏面を主として構成している糸条の繊維空間率は約70〜95%程度であることが好ましく、表面を主として構成している糸条の繊維空間率は約40〜60%程度であることが好ましい。
【0014】ここで、繊維空間率は次のようにして算出される。(1)繊維の繊度がほぼ2200dTexになるように原糸(フィラメント、加工糸、ステープル糸など)を必要本数引き揃える。(2)一方の糸端を検撚器のチャック部に取り付け、他の糸端を初荷重(繊度の1/200g)をかけた状態で試長500mmの長さでもう一方のチャックに固定する。(3)試料に25回/50cmの撚りをかけた状態で台紙に固定し、チャックから外す。(4)台紙に固定した状態で拡大鏡を用い繊維の直径rを測定する。(測定数nは10以上で毛羽の長さは含めない。)(5)試料を30cm長さに切り、電子天秤を用いて重量Aを測定する。(6)次式により空間率を求める。
繊維空間率(%)={1−(A/B)}×100(式中、Aは(5)で測定された実測重量(g)を表す。Bは、次式により算出される計算重量(g)を表す。)
計算重量(g)=πr×30×繊維の比重(式中、rは(4)で測定され繊維の直径(cm)を表す。)
【0015】本発明にかかる手袋において、表面および裏面を構成している糸条の素材としては、例えば、木綿や麻などの天然繊維、またはポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリルもしくはポリプロピレン等の合成繊維など従来から衣料用に使用されているものであればいずれも使用可能である。中でも、高性能繊維を用いるのが好ましい。また、表面および裏面を構成している糸条は、上記繊維のうち1種類からなる紡績糸またはフィラメント糸、さらにはかかる紡績糸またはフィラメント糸を複数本用いた引き揃え糸、撚り糸もしくは編み糸を用いてもよいし、上記繊維の2種以上を混紡または混繊した糸条を使用してもよい。さらに、該糸条は延伸糸または捲縮加工糸などであってもよい。
【0016】上記高性能繊維としては、(a)約17cN/dTex程度以上の引っ張り強度、(b)優れた耐切創性、および、(c)限界酸素指数が約25以上の難燃性と示差走査熱量測定法による熱分解点が約400℃以上の耐熱性の性質のうち、少なくとも1以上の性質を有する繊維が好ましい。
【0017】ここで、引っ張り強度は、ステープルの場合は、JIS L 1095:1999 化学繊維ステープル試験方法7.7に従って、またフィラメントの場合は、JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法8.5.1に従って容易に測定することができる。限界酸素指数は、JIS K 7201:1999 酸素指数法による高分子材料の燃焼試験方法に従って、熱分解点は、JIS K 7120:1987プラスチックスの熱重量測定方法に従って容易に測定することができる。耐切創性は、ASTM F1790−97に従って、規定の刃(American Safety Razer Co.,品番No.88−0121)を用いて測定することができる。
【0018】上記高性能繊維のうち、高強度、耐切創性および耐熱性を兼ね備えている繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名ケブラー)およびコポリパラフェニレン−3,4’−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製、商品名テクノーラ)などのパラ系全芳香族ポリアミド繊維などのパラ系アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維(例えば株式会社クラレ製、商品名ベクトラン)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(例えば東洋紡株式会社製、商品名ザイロン)などが挙げられる。本発明においては、中でも、パラ系アラミド繊維を用いるのが好ましく、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を用いるのがより好ましい。
【0019】また、上記高性能繊維としては、耐熱性は上述の繊維に比べやや劣るが引っ張り強度に優れた繊維も挙げられる。具体的には、例えば、超高分子量ポリエチレン繊維(例えば東洋紡株式会社製、商品名ダイニーマ)、ポリビニルアルコール系繊維(例えば株式会社クラレ製、商品名クラロンKII(高強力タイプ))などが挙げられる。また、上記高性能繊維としては、引っ張り強度は上述の繊維に比べやや劣るが耐熱性に優れた繊維も挙げられる。具体的には、例えばポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(デュポン社製、商品名ノーメックス)などのメタ系全芳香族ポリアミド繊維などのメタ系アラミド繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリアミドイミド繊維(例えばローヌプーラン社製、商品名ケルメル)、ポリイミド繊維などが挙げられる。
【0020】本発明に係る手袋のより好ましい態様としては、裏面がフィラメント捲縮糸から主として構成されており、表面が紡績糸から主として構成されている手袋が挙げられる。糸条の密度を比較すると、フィラメント捲縮糸は紡績糸より小さいことから、繊維空間はフィラメント捲縮糸のほうが紡績糸よりも大きい。したがって、かかる手袋は、上述のように毛細管現象により手袋装着時の蒸れ感を除くことができる。
【0021】本発明に係る手袋の裏面を主として構成する上記フィラメント捲縮糸は、自体公知の捲縮糸を用いてよく、具体的には例えばナイロンやポリエステルのマルチフィラメントの仮撚り加工糸などが挙げられる。中でも、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の捲縮糸、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維の捲縮糸または超高分子量ポリエチレン繊維捲縮糸など上記高性能繊維の捲縮糸が好ましい。また、嵩高加工法としては、自体公知の方法に従えばよく、例えば一般的な旋回仮撚法あるいは非旋回法である押し込み法、擦過法、賦型法などを用いればよい。本発明で用いる該フィラメント捲縮糸としては、上記捲縮糸の1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混繊や編み込みなどにより混合して用いてもよい。また、ポリウレタン弾性糸を混合して伸縮性を高めるなど、所望により他の合成繊維を混合して用いることもできる。
【0022】本発明に係る手袋の表面を主として構成する上記紡績糸としては、綿を主体とする混紡糸が挙げられる。この場合、綿を少なくとも50重量%含有している糸条が好ましい。綿と混紡する他の繊維としては、例えばポリノジックやレーヨンなどの再生繊維やアセテート、トリアセテートなどの半合成繊維が、吸水性や風合の面から好ましく用いられる。また、該紡績糸として、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリルまたはポリプロピレン等の従来から衣料用に使用されているものを用いてもよい。中でも、上述した高性能繊維の紡績糸を用いるのが好ましい。さらに、該紡績糸としては、これらの繊維の混紡糸を用いてもよい。
【0023】ここで「主として構成している」とは、表面が例えば紡績糸などの繊維空間の少ない糸条のみで、裏面が例えばフィラメント捲縮糸などの繊維空間の多い糸条のみで構成されていることがより好ましいが、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、表面に繊維空間の多い糸条、また、裏面層に繊維空間の少ない糸条がある程度混在されて構成されていてもよい。具体的には、例えば、表面における繊維空間の多い糸条の混合率が約40重量%程度以下、逆に裏面における繊維空間の少ない糸条の混合率を約40重量%程度以下とすることが好ましい。
【0024】本発明の手袋における他の好ましい態様としては、裏面を主として構成している糸条の単糸繊度が、表面を主として構成している糸条の単糸繊度よりも大きい手袋が挙げられる。繊維の集合体である糸条も繊維間の間隔が毛細管と同じ構造となっており、単糸繊度が小さいほど繊維間の間隔が小さい、すなわち毛細管の管半径が小さいため、上記(数式1)より明らかなように水分の吸引力が大きい。したがって、裏面は糸条を構成している単糸が太く繊維間の間隔が大きいのに対し、表面は糸条を構成している単糸が細いので繊維間の間隔が小さいため、上述のように毛細管現象により汗を速やかに内側から外側に移動させ、水分を大気中に放出して手袋装着時の蒸れ感を除くことができる。
【0025】中でも、本発明に係る手袋においては、裏面を主として構成している糸条の単糸繊度が、表面を主として構成している糸条の単糸繊度より、好ましくは約1.2〜6倍程度、より好ましいは約1.5〜5.5倍程度であることが好適である。手袋装着時の蒸れ感が実質的にない程度に裏面から汗を吸水するとともに、裏面の単糸繊度が太くなることによる肌触りの低下を極力避けるために、上記範囲が好ましい。
【0026】より具体的には、表面を主として構成している糸条の単糸繊度は約1.0dTex未満程度が好ましい。抗ピリング性、抗スナッグ性等の機械強度の低下を極力抑え、一方で、汗の透水・拡散性を十分に発揮し、かつ、風合いが粗硬になるのを抑えるために、上記範囲が好ましい。また、裏面を主として構成している糸条の単糸繊度は、約1.0〜2.0dTex程度にすることが、裏面における吸水能力または肌触りの観点から好ましい。具体的な態様としては、例えば、1.67dTexのポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を裏面において主として用い、表面においては0.67dTexのポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を主として用いる手袋が挙げられる。なお、単糸繊度は、単糸1本を取り出し、JIS L 1015 8.5の繊度(振動法)に従って容易に測定することができる。また、単糸を引き揃えた状態で表示繊度の1/10gの初荷重をかけ、その状態で9cm長さに切断し、株式会社島津製作所製のトーションバランスを用いて測定することもできる。
【0027】ここで「主として構成している」とは、表面が単糸繊度の細い糸条のみで、裏面が単糸繊度の太い糸条のみで構成されていることがより好ましいが、本発明の目的、効果を損なわない範囲で、表面に単糸繊度の太い糸条、また、裏面に単糸繊度の細い糸条がある程度混在されて構成されていてもよい。具体的には、例えば、表面における単糸繊度の太い糸条の混合率が約40重量%程度以下、逆に裏面における単糸繊度の細い糸条の混合率を約40重量%程度以下とすることが好ましい。
【0028】本発明の手袋における一実施態様として、上記態様に加えて、さらに表面を主として構成している糸条が、その繊維横断面において繊維表面に長手方向に沿って1または複数の凹溝を形成している手袋が挙げられる。該繊維横断面形状として文字もしくは記号等でモデル的に示すとE、F、H、I、K、M、N、T、W、X、Y、Z、+等の形状が挙げられる。なかでもH型やI型、X型、Y型などの形状を有する場合が好ましい。このような形状の糸条は、糸条自体が毛細管現象作用を示すので、より優れた汗処理性を達成することができる。毛細管現象による水分の移動をより効率よく行うために、上記凹溝を形成している糸条は表面において約30重量%程度以上含まれていることが好ましく、約50重量%程度以上含まれていることがより好ましい。
【0029】一方、裏面を主として構成している糸条としては、その繊維横断面が例えば丸型、三角型、五角型、八角型などの形状の糸条を用い、前記のような長手方向に沿って凹溝を有する糸条を裏面において含まないようにすることが好ましい。手袋の裏と表においてこのような糸条の配置とすることにより、毛細管現象がより促進され、手袋装着時の蒸れ感がより軽減される。ここで、手袋を構成する糸条の形態としては、ステープル、モノフィラメントまたはマルチフィラメントなど特に限定されないが、肌触りおよび装着感の点からマルチフィラメントが好ましい。
【0030】本発明で用いられる糸条の総繊度は、編み地や織物の加工ができる太さであれば制限はないが、編み地の工程を鑑みれば約5〜5000Tex程度が好ましい。なお、上記繊度はJIS L 0101(1999)に規定されるTex(テックス)で表している。例えば、1Texは1000mの長さの繊維が1gの質量であることを示し、10Texは1000mの長さの繊維が10gの質量であることを示す。Texで表される数値が大きいほど繊維の太さが太いことになる。
【0031】本発明の手袋における他の実施態様としては、裏面を主として構成している糸条の総繊度が表面を主として構成している糸条の総繊度よりも小さい手袋が挙げられる。裏面は糸条の総繊度が小さいので繊維空間が多く、一方表面は糸条の総繊度が大きいので繊維空間が少ないため、上述のように毛細管現象により汗を速やかに内側から外側に移動させ、水分を大気中に放出して手袋装着時の蒸れ感を除くことができる。好ましい態様としては、裏面を主として構成している糸条の総繊度と、表面を主として構成している糸条の総繊度の比が、1:1.2〜5.0程度である手袋が挙げられる。
【0032】本発明に係る手袋は、自体公知の方法で製造することができる。具体的には、自体公知の手袋編機を用いて糸条から手袋を編み上げる方法、または織編物を自体公知の方法に従って手袋の形に切断して縫い上げる方法などが挙げられる。前者の方法としては、上述した表面を構成する糸条と裏面を構成する糸条とを1:0.2〜5、好ましくは1:0.6〜1.5の割合で引き揃え、該引き揃え糸から、例えば市販のコンピュータ手袋編機SFGやSTJ(株式会社島精機製作所製)を用いて手袋を製造する方法などが挙げられる。この製造方法によれば1工程で本発明に係る手袋が製造できるので、製造工程が簡略であり、それゆえに製品が安価に供給できるという利点がある。
【0033】後者の方法において用いる織編物は、自体公知の生地の形成方法に従って作製することができる。例えば、シングルジャージもしくはダブルジャージなどの丸編地、シングルトリコット、ダブルトリコット、シングルラッセルもしくはダブルラッセル等の経編地などで構成された編物が挙げられる。また、平二重、二重ツイル、二重サテンに代表される通常の二重織物、また、ツイル、サテンに代表される通常の一重織物で構成された織物が挙げられる。編織物の表裏形態としては、両面フラット形態、片面フラット・他面凹凸形態、両面凹凸形態、片面パイル形態、両面パイル形態、メッシュ形態等、特に限定されるものではない。また、起毛形態にしても良い。
【0034】本発明に係る手袋に用いる上記織編物においては、表面と裏面とが接結糸条で連結されていてもよい。例えば、かかる編物としては、表面地と裏面地が両面タックニットをなす接結された両面丸編地や両面横編地、または、一方面を形成しつつ他面とをタックニットにより接結をなす両面丸編地や両面横編地などが挙げられる。また、かかる織物としては、ダブルベルベット織機で得られるような単独の接結糸条で表面地と裏面地が接結された織物、一方面を形成する縦糸もしくは緯糸のどちらか一方の糸条が他面とを接結点において接結する縦緯2重織物、または一方面を形成する縦糸(緯糸)と他面を形成する縦糸(緯糸)を、緯糸(縦糸)の接結点において接結する縦2重織物(緯2重織物)などが挙げられる。この際、接結糸条は裏面を主として構成している糸条と実質的に同一の糸条を用いるのが好ましい。また、3種の糸使いとなるので、接結糸条として、裏面を主として構成している糸条と表面を主として構成している糸条の中間の物性(例えば、繊維空間や単糸繊度)を有する糸条を用いてもよい。
【0035】本発明に係る手袋を構成する上記織編物は、表面を形成する織編物と裏面を形成する織編物とが密着した状態で隣接することなく、中層部に空気層を介在するように構成されていてもよい。また、本発明に係る手袋を構成する上記織編物は、表面と裏面との間に中間層を有し、3〜5層程度、好ましくは3層の多層構造体からなるものであってもよい。
【0036】本発明に係る手袋は、裏面の形状を凹凸形状にすることも好ましい。手袋を装着した場合、その凸部が肌と点接触するため、液状の汗を発汗してもベタツキ感が少ない。また、裏面に凹凸部があることにより、肌と凹部間で空気層ができ、手の動きを止めてからの冷感に伴う不快感を軽減することもできる。かかる凹凸部の形状は特に限定されるものではないが、タテストライプ状、ヨコボーダー状、格子状、ツイル状、杉綾状、ドット状または鹿の子状などが挙げられる。この凹凸状高低差を形成させるには、編組織、織組織による方法、太い糸と細い糸の組合せによる方法、またはこの両者を組合わせる方法等があり、特に限定されるものではない。
【0037】また、本発明に係る手袋は、裏面が起毛されていてもよい。裏面を起毛することにより裏面層の繊維拘束度が粗になるため、毛細管現象作用をより促進させ、汗の吸水・透水・拡散効果をより増大させることができると同時に、肌触り性と保温性を向上させることもできる。起毛の方法としては、公知の起毛工程を通せばよく、例えば針布起毛やバフ加工などいずれの方法を用いてもよい。
【0038】本発明に係る手袋に対しては、例えば、染色加工または吸水加工などの機能性付与加工など自体公知の処理を施してもよい。該染色加工の方法は特に限定されるものではない。また、吸水加工を付与するようにすれば、さらに優れた吸水・透水・拡散性が得られ、本発明に係る手袋をより好ましい性能にすることができる。さらに、吸水加工以外の機能性付与加工としては、帯電防止、消臭、撥水、防汚、抗菌、防カビおよび再帰反射、蓄光加工などが挙げられ、手袋の風合いを損なわず、かつ本発明の目的を損なわない範囲で施すものであれば、これらの加工は何ら限定されるものではない。
【0039】
【実施例】〔実施例1〕限界酸素指数29、熱分解点537℃、引張強さ2.03N/Tex、引張弾性率49.9N/Tex、繊度292dTexの東レ・デュポン株式会社製ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維フィラメント糸条(商品名ケブラー)を使用して、該糸条にリング撚糸機(株式会社柿木製作所製 複合撚糸機タイプKCT)で撚り係数K=6308相当の第1の撚りを加えた後、180℃の飽和水蒸気による熱処理を30分行った。次いで、上記撚糸機により第1の撚りとは逆方向に第2の撚りを与えて撚り数が0になるまで解撚し、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維からなるフィラメント捲縮糸を得た。
【0040】上記繊度292dTexのフィラメント捲縮糸2本を撚り合わせた双糸を2本収束させたものを裏面を構成する糸として用い、繊度292dTexのポリパラフェニレンテレフタルアミド紡績糸(商品名ケブラー、東レ・デュポン株式会社製)2本を撚り合わせた双糸を3本収束させたものを表面を構成する糸として用い、かかる表面を構成する糸と裏面を構成する糸とを引き揃えて、引き揃え糸とした。該引き揃え糸から、コンピュータ手袋編機(SFG−7G 株式会社島精機製作所製)を用いて本発明に係る手袋を作製した。
【0041】〔実施例2〕表面を構成する糸として、ポリパラフェニレンテレフタルアミド紡績糸の代わりに、高強力ポリビニルアルコール系繊維からなる紡績糸を用いた以外は上記実施例1と全く同様に行い、本発明に係る手袋を製造した。なお、高強力ポリビニルアルコール系繊維からなる紡績糸は、以下のように製造した。重合度2600の完全ケン化型ポリビニルアルコールをジメチルスルホキシドに溶解した紡出原液を口金吐出孔から押出してメタノールからなる凝固浴中に乾湿式紡糸し、連続してメタノール液中で洗浄、浴延伸、乾燥を行い、雰囲気温度240℃で有効全延伸倍率が20倍となるように加熱延伸して得られた原糸1500D/600f(単糸繊度17cN/dTex,切断伸度4.6%)を合糸し、10.8万Dのトウを得た。得られたトウを50℃に温水加熱した後押込み捲縮機により捲縮を付与し,乾熱ヒートセッタにより70℃で5分間熱固定した。その後仕上油剤を付与し、該繊維束を定長カッティング法により51mm長にカットして紡績用の綿を作り、通常のスフ紡績方法によって292dTex(20番手)の紡績糸を得た。
【0042】〔実施例3〕裏面を構成する糸として、ポリパラフェニレンテレフタルアミドフィラメント捲縮糸の代わりに、超高分子量ポリエチレン繊維からなるフィラメント捲縮糸を用いた以外は上記実施例1と全く同様に行い、本発明に係る手袋を製造した。なお、超高分子量ポリエチレン繊維からなるフィラメント捲縮糸は、以下のように製造した。原糸繊度292dTexの超高分子量ポリエチレン糸(商品名ダイニーマ 東洋紡株式会社製)を、加工時の温度147℃、加工速度50m/分、仮撚り数1700T/m、加工フィード率−23.5%、スピナ巻き数1回、仮撚り方向S方向で、スピンドル式で仮撚り加工により得た。
【0043】〔比較例1〕裏面および表面を構成する糸として、ともに繊度292dTexのポリパラフェニレンテレフタルアミド紡績糸(商品名ケブラー、東レ・デュポン株式会社製)を用いた以外は、実施例1と全く同様に行い手袋を製造した。
【0044】〔比較例2〕裏面および表面の糸として、ともに繊度292dTexの綿糸を用いた以外は、実施例1と全く同様に行い手袋を製造した。
【0045】〔比較例3〕表面を構成する糸として繊度295dTexのポリエステル紡績糸を用い、裏面を構成する糸として繊度278dTexのポリエステルフィラメント糸を用いた以外は、実施例1と全く同様に行い手袋を製造した。
【0046】〔試験例〕上記実施例1〜3および比較例1〜3で得られた手袋について、3つのサンプルを用いて、裏面と表面の吸水表裏拡散面積比、耐切創性および耐熱性を測定した。かかる物性は、以下の方法で測定した。吸水表裏拡散面積比については、ガラス板上に市販のインクを2倍に水で希釈したインク液を0.1cc滴下し、その上に手袋の裏面を下に、すなわちインク液に接するようにのせた。そして60秒間放置し、インク液を吸収させた後、今度は別のガラス板上に移動し、ここでも裏面を下にして3分間放置した。このように処理した手袋の表面、裏面のインク液の拡散面積を測定し、その測定値から面積比(表面の拡散面積/裏面の拡散)を算出した。
【0047】耐切創性については、ASTM F1790−97に従って、規定の刃(American Safety Razer Co.,品番No.88−0121)を用いて、切創抵抗を測定した。測定値はN(ニュートン)で示し、規定の試料台上に測定試料を置き、規定刃を25.4mm(1インチ)水平に移動させたとき刃がサンプルを切断して貫通するために必要な荷重を示し、数値が大きいほど切れにくいことを示す。耐熱性については、JIS K 7120:1987 プラスチックスの熱重量測定方法により熱分解点を測定した。非熱可塑性繊維は熱分解温度を、熱可塑性繊維は融点を示した。各測定の測定値を以下に示す。表中の数値は、3つのサンプルの平均値を表す。
【0048】
【表1】

【0049】
【発明の効果】本発明の手袋によれば、装着した際に汗を肌側から外側に素早く吸水・透水・拡散させることにより蒸れ感が実質的になく、良好な着用快適性を得ることができる。また、本発明の手袋の素材として合成繊維を用いれば、優れたウオシュアンドウエア性を有する手袋が得られる。また、使用用途に応じて本発明の手袋の素材に高性能繊維を用いれば、さらに機械強度、耐熱性または耐薬品性などの性質を有する手袋を得ることができる。このような本発明に係る手袋は、特に作業用手袋として有用であり、作業用手袋に要求される機械強度、耐熱性または耐薬品性などを備えつつ、長時間装着時の汗による蒸れ感、それに伴う不快感を軽減し、それにより作業効率の向上を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
【出願日】 平成13年5月8日(2001.5.8)
【代理人】 【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
【公開番号】 特開2002−327323(P2002−327323A)
【公開日】 平成14年11月15日(2002.11.15)
【出願番号】 特願2001−136934(P2001−136934)