| 【発明の名称】 |
吸放湿吸水発熱性繊維を含有する人造皮革を使用した保温品 |
| 【発明者】 |
【氏名】荻野 毅
【氏名】坂口 達雄
|
| 【要約】 |
【課題】人造皮革1層のみでも発熱効果を十分に発揮し、重量が増加したり、風合いが硬くなってしまうようなこともなく、製造も容易な人造皮革の保温品を提供する。
【解決手段】単層あるいは多層構造を有する不織布又は編織物生地の基材層上に、単層あるいは複数層の合成樹脂からなる表皮層を形成した人造皮革であり、吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末を含有する層を少なくとも1層以上有する人造皮革を使用した保温品とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 単層あるいは多層構造を有する不織布又は編織物生地の基材層上に、単層あるいは複数層の合成樹脂からなる表皮層を形成した人造皮革であり、吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末を含有する層を少なくとも1層以上有する人造皮革を使用した保温品。 【請求項2】 単層あるいは多層構造を有する不織布又は編織物生地の基材層上に、単層あるいは複数層の合成樹脂からなる表皮層を形成した人造皮革であり、吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末を少なくとも1層以上に含有する基材層と、表皮層とからなる人造皮革を使用した保温品。 【請求項3】 単層あるいは多層構造を有する不織布又は編織物生地の基材層上に、単層あるいは複数層の合成樹脂からなる表皮層を形成した人造皮革であり、吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末を含有する層を少なくとも連続して2層以上有する人造皮革を使用した保温品。 【請求項4】 基材層、表皮層を構成する各層すべてが透湿性を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の人造皮革を使用した保温品。 【請求項5】基材層、表皮層を構成する各層すべてが通気性を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の人造皮革を使用した保温品。 【請求項6】 含有させる吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末は、公定水分率が16%以上であって、羊毛繊維以上の吸湿発熱性を有する合成繊維又は該繊維の粉末である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の人造皮革を使用した保温品。 【請求項7】 含有させる吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末は、アクリロニトリル系繊維のニトリル結合部の一部にヒドラジン架橋部を導入して高架橋繊維構造にし、ニトリル結合部の残りの一部を加水分解して水酸基、カルボキシル基、塩型カルボキシル基、アミド基のうち1種類以上の官能基を導入したアクリレート系繊維又は該繊維の粉末である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の人造皮革を使用した保温品。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、人造皮革を使用した保温品に係り、具体的には人造皮革からなる衣服、手袋、帽子、靴等において、人体から発生する気相および液相の汗や衣服外から侵入する気相および液相の水分を吸収することにより発熱保温させることにより、着用感の良い保温品を提供しようとするものである。なお、人造皮革とは、合成皮革と人工皮革との両方を示す言葉である。 【0002】 【従来の技術】人造皮革を用いた衣服等の製品に吸放湿吸水発熱性繊維を使用する方法としては、人造皮革とは別の裏地に吸放湿吸水発熱性繊維を含有させたものを使用したり、人造皮革と裏地との間に中綿として使用する方法が知られていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】製品仕様上の都合で人造皮革1層のみで製品を構成したい場合に、吸放湿吸水発熱性繊維を使用する方法としては、皮革用素材に吸放湿吸水発熱性繊維を含有させた不織布又は編織物生地を、接着剤等のバインダーを介して張り付けることにより複合素材として用いていた。この製法で作られた複合素材については、以下の問題があった。 【0004】■バインダー等が吸放湿吸水発熱性繊維の表面一部もしくは全部を被覆してしまい吸放湿吸水発熱性機能が十分に発揮できない。 ■皮革部と生地部の2層となることから、重量が増加し、風合いが硬くなってしまう。 ■加工工程が増えるので、コストアップになってしまう。 そこで、本発明は、以上の問題を解決した吸放湿吸水発熱性繊維を含有した人造皮革を提供して、着用感の良い保温品を提供しようとするものである。 【0005】 【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、単層あるいは多層構造を有する不織布又は編織物生地の基材層上に、単層あるいは複数層の合成樹脂からなる表皮層を形成した人造皮革であり、吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末を含有する層を少なくとも1層以上有する人造皮革を使用した保温品である。 【0006】請求項2の発明は、単層あるいは多層構造を有する不織布又は編織物生地の基材層上に、単層あるいは複数層の合成樹脂からなる表皮層を形成した人造皮革であり、吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末を少なくとも1層以上に含有する基材層と、表皮層とからなる人造皮革を使用した保温品である。 【0007】請求項3の発明は、単層あるいは多層構造を有する不織布又は編織物生地の基材層上に、単層あるいは複数層の合成樹脂からなる表皮層を形成した人造皮革であり、吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末を含有する層を少なくとも連続して2層以上有する人造皮革を使用した保温品である。 【0008】請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、基材層、表皮層を構成する各層すべてが透湿性を有する人造皮革を使用した保温品であり、請求項5記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、基材層、表皮層を構成する各層すべてが通気性を有する人造皮革を使用した保温品である。 【0009】請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発明において、含有させる吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末の公定水分率が16%以上であって、羊毛繊維以上の吸湿発熱性を有する合成繊維又は該繊維の粉末である人造皮革を使用した保温品である。 【0010】請求項7の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発明において、含有させる吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末が、アクリロニトリル系繊維のニトリル結合部の一部にヒドラジン架橋部を導入して高架橋繊維構造にし、ニトリル結合部の残りの一部を加水分解して水酸基、カルボキシル基、塩型カルボキシル基、アミド基のうち1種類以上の官能基を導入したアクリレート系繊維又は該繊維の粉末である人造皮革を使用した保温品である。 【0011】 【発明の実施の形態】まず、実際に使用されている皮革について説明する。牛、馬、羊等の天然皮革は、極細コラーゲン繊維が3次元的に交絡した構造を有し、密度は内側に行く程粗く、表面に近い程密になっており、表面はさらに緻密な繊維層となっている。 【0012】合成皮革と呼ばれるものは、天然皮革に似せたものとして使用されている。製造法としては、溶剤を用いて溶解した合成樹脂を、編織布等の繊維基布の上にコーティングあるいはラミネートし、空気中で溶剤を飛散させて皮膜を形成する乾式法による乾式合成皮革と、水中で水溶性の溶剤と水を置換させてから空気中で水を飛散させて合成樹脂の微細な連続スポンジ構造を有する皮膜を形成する湿式法による湿式合成皮革が知られている。 【0013】また、人工皮革と呼ばれるものは、不織布に合成樹脂を含浸させて補強したものをそのまま使用するか、基材層として使用し、合成樹脂を1層以上表皮層として塗布したもので、合成皮革が編織物生地、不織布をそのまま用いて基材層としているのに対し、人工皮革は不織布に合成樹脂を含浸させて基材層としていることが相違点である。天然皮革は、極細コラーゲン繊維の絡み合いで、下層から表層にかけて高密度化構造を有するが、人工皮革の場合は合成樹脂の助けを借りてコラーゲン繊維の替わりの不織布を補強し、密度変化を保持しており、一般的に合成皮革よりもさらに天然皮革に似せることが可能である。 【0014】製造法としては、合成皮革と同様に、合成樹脂を含浸、塗布させた不織布を空気中で乾燥させる乾式法と、水中に導入する湿式法とがあり、両方とも人工皮革に透湿、通気性を持たせることが可能である。合成皮革、人造皮革とも表面研削や表面層の部分的溶解、エンボスロール、レーザー等を用いての機械的な研削等の後加工でさらに通気性を向上させることが可能である。さらに、エンボスロール等で天然皮革調の表面感を再現したり、サンドペーパー等で表面を研削又は起毛してスエード調等の風合いを得る等の後加工が人造皮革の使用目的によって使い分けられる。 【0015】人造皮革に繊維を含有させたものとしては、特開平6−294076号や特開平5−106173号が公知となっている。特開平6−294076号は、合成皮革の基布と皮膜に綿等のセルロース系繊維、補強のためのナイロン繊維を含有させることを特徴としており、セルロース系繊維の吸水性と、基布の透湿性と皮膜の透湿性が相まって、蒸れず、結露防止効果のある合成皮革を提供しようとするものである。 【0016】特開平5−106173号は、繊維基材面に動物の毛の粉末または天然皮革粉末を含有するポリエステル多孔質膜を形成し、その表面を研削することで触感を天然スエードに類似させることを特徴とするものである。 【0017】しかし、両発明とも合成皮革に繊維を含有させているものの、発熱という点においては全く考慮されておらず、発熱性を体感するに至らず、冬季時の使用において冷たく感じることがあった。また、基材と皮膜に含有されている繊維の吸湿性が悪いために、湿気を効率良く外部に排出することができず、発汗時に蒸れを感じることがあった。 【0018】よって、本発明は、単層あるいは多層構造を有する不織布又は編織物生地の基材層上に、単層あるいは複数層の合成樹脂からなる表皮層を形成した人造皮革において、吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末を含有する層を少なくとも1層以上有する人造皮革を使用することにより、着用感の良い保温品を提供しようとするものである。 【0019】ここで、吸放湿吸水発熱性繊維としては、例えば、親水基を高密度で強架橋してなる化学変成体を有するアクリレート系吸放湿吸水発熱性繊維を挙げることができる。この吸放湿吸水発熱性繊維は、該吸放湿吸水発熱性繊維が有する化学変性体によって異なった発熱量を有するが、通常は、吸放湿吸水発熱性繊維を絶乾状態から水中または高湿度雰囲気下に移すと、水素結合や溶解熱やファンデルワールス力に関与した発熱量を有する。 【0020】その他の吸放湿吸水発熱性繊維としては、合成品のシリカゲルや天然のシリカアルミナ系の乾燥剤やモレキュラシーブスなどのセラミック系の乾燥剤などのように、吸湿時および吸水時に吸湿熱を発生するこれらの乾燥剤の微粉末を、各種繊維材料に混合したものが挙げられる。 【0021】アクリレート系吸放湿性繊維は、出発繊維として、アクリロニトリル(以下、ANという)を40w%以上、好ましくは50w%以上含有するAN系重合体により形成された繊維が用いられる。AN重合体は、AN単重合体、ANと他の単量体との共重合体のいずれでも良い。この他の単量体としては、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸などのスルホン酸含有単量体およびその塩、メタアクリル酸、イタコン酸などのカルボン酸含有単量体およびその塩、アクリルイミド、スチレン、酢酸ビニルなどの単量体を挙げることができるが、ANと共重合可能な単量体であれば特に限定されない。 【0022】以上のアクリル系繊維に、ヒドラジン系化合物を架橋剤として導入する方法が適用される。この方法においては、窒素含有量の増加を1.0〜10.0w%に調整し、ヒドラジン系化合物の濃度を5〜60w%、温度を50〜120℃とした状態で5時間以内で処理する。この方法は、工業的に好ましい。ここで、窒素含有量の増加とは、原料のアクリル系繊維の窒素含有量とヒドラジン系化合物を架橋剤として導入された状態のアクリル系繊維の窒素含有量との差をいう。この窒素含有量の増加が、上記の下限(1.0w%)に満たない場合は、最終的に満足し得る物性の繊維を得ることができない。 【0023】また、窒素含有量の増加が上記の上限(10.0w%)を超えた場合には、高吸湿性は得られない。したがって、ここで使用するヒドラジン系化合物としては、窒素含有量の増加が上記の範囲となるような化合物であればとくに限定されない。このようなヒドラジン系化合物としては、例えば、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネイト等や、エチレンジアミン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミン酸のアミン基を複数個含有する化合物を挙げることができる。 【0024】なお、この架橋工程においては、ヒドラジン系化合物が加水分解反応により架橋されずに残存した状態のニトリル基を実質的に消失させるとともに、1.0〜4.5meq/gの塩型カルボキシル基と残部にアミド基を導入する方法が適用される。その方法としては、アルカリ金属水酸化物、アンモニア等の塩基性水溶液、あるいは硝酸、硫酸、塩酸などの鉱酸の水溶液を含浸させるか、またはその水溶液中に原料繊維を浸漬した状態で加熱処理する方法、あるいは、上記した架橋剤の導入と同時に加水分解を起こす方法を用いることができる。なお、この加水分解反応が、酸による加水分解である場合は、カルボキシル基を塩型に変換させる必要がある。 【0025】このアクリレート系吸放湿吸水発熱性繊維の場合、気温20℃湿度40%の環境条件で20℃に保たれた100gの水中に投入すると、約60J/gの発熱量を有する。これは、同条件で投入したウール繊維の場合の発熱量、約15J/gおよびポリエステル繊維の場合の発熱量0J/gに比較して、吸水時の発熱量の面で充分である。また、吸湿量の面では、相対湿度変化における重量変化率が、例えば、標準状態(気温20℃、湿度65%)において40%あり、ウールの2倍以上の差がある。 【0026】綿、レーヨン等セルロース系繊維、羊毛、羽毛等の動物繊維も吸放湿吸水発熱する性質を有する。ただし、これらの繊維から構成される衣料品等は、吸放湿吸水発熱よりも繊維の含有するデッドエア層により人体からの熱を逃さないことで保温することに着眼点がおかれている。 【0027】本発明に用いる吸放湿吸水発熱性繊維は、これら天然繊維以上の吸放湿吸水発熱性を有することが必要で、天然繊維で最も吸湿率が高く、発熱性も高いと考えられる羊毛よりも吸湿率、吸放湿吸水発熱性が高いことが必要になる。繊維の吸放湿吸水発熱性は、膨潤度等検討する必要があるが、大体において公定水分率に比例するものと考えられるので、公定水分率で羊毛繊維より高い16%以上であれば本発明で用いることが可能である。 【0028】この吸放湿吸水発熱性繊維を、0.01mm〜0.8mm程度に粉砕(ランダムカット)し、ふるいを通過せしめたものを吸放湿吸水発熱性粉末として使用する。ふるいの目の大きさは、繊維粉末の添加分散させる溶剤又は合成樹脂の溶剤溶液に対する拡散性、発泡性等で使い分けることが必要である。 【0029】本発明では、この吸放湿吸水発熱性繊維又は粉末を、単層あるいは多層構造を有する不織布又は編織物生地の基材層や、前記基材層上に形成された単層あるいは複数層の合成樹脂からなる表皮層に、少なくとも1層以上含有させる。 【0030】この吸放湿吸水発熱性繊維又は粉末を含有させる方法としては、特に限定されるものではないが、不織布又は編織物生地の基材層に含有させる場合は、基材層を構成する繊維のうちの1つとして繊維状態で含有させるか、基材層に含浸させる合成樹脂の溶剤溶液中に添加分散させて含有させることが望ましい。表皮層に含有させる場合は、材料樹脂の溶剤又は合成樹脂の溶剤溶液に適宜の割合で吸放湿吸水発熱性繊維又は粉末を混入分散させ、基材上に適当な方法で塗布または含浸させ、表皮層を形成すれば良い。 【0031】ただし、この吸放湿吸水発熱性繊維又は粉末を含有させる際は、繊維又は粉末の表面を他繊維および樹脂等でできるだけ被覆しないようにすることが重要である。例えば、吸放湿吸水発熱性繊維同士を相互に結着して不織布の基材層を構成する場合、アクリルバインダーなどに浸漬して面接着してしまうと繊維の表面をバインダーの被膜で覆うこととなり、吸放湿吸水発熱性繊維の性能を発揮できない。そのため、吸放湿吸水発熱性繊維をポリプロピレンや低融点ポリエステルなどと混繊して加熱し、溶けた低融点繊維に接触する部分のみを結合させて吸放湿吸水発熱性繊維の不織布を構成することが好ましい。 【0032】また、泡立てたアクリルバインダーを吸放湿吸水発熱性繊維に塗布し、吸放湿吸水発熱性繊維の表面で泡を破裂させ、バインダーの表面張力により吸放湿吸水発熱性繊維の接点にバインダーを凝集させて不織布を構成することも好ましい。 【0033】吸放湿吸水発熱性繊維と他の繊維とを混紡して編織地とし、基材層を構成する場合も、吸放湿吸水発熱性繊維の糸が、他の繊維によって構成された補強層に絡むような編織地にするのが強度を保つ上で好ましい。また、吸放湿吸水発熱性繊維と他の繊維とを吸放湿吸水発熱性繊維の一部が糸の表面上に露出するように混紡した混紡糸を用いて、編織地の一部を構成することも、編織地が強度を保つ上でも好ましい。 【0034】吸放湿吸水発熱性繊維又は粉末を含有した不織布に、合成樹脂を含浸させる場合においても、例えば、湿式法では該不織布にポリウレタン樹脂のDMF(ジメチルホルムアミド)溶液を含浸させ、水中に導入し凝固させた後に乾燥させると、水中でDMFの替わりに置換された水が乾燥により蒸発し、水が存在していた部分に空隙ができて、ポリウレタンの微細な連続スポンジ構造が形成される。 【0035】乾式法でも同様に、ポリウレタン樹脂のMEK(メチルエチルケトン)、トルオール、MIBK(メチルイソブチルケトン)の混合溶剤またはどれか1つの単独溶剤に、水を分散させたW/Oエマルジョンを含浸させ、乾燥工程で有機溶剤を蒸発させると、水を含んだ合成樹脂のゲル状状態を経て、さらに水が蒸発すると、水が存在していたところに湿式法と同様のポリウレタンの微細な連続スポンジ構造が形成される。 【0036】湿乾どちらの方法でも、前記したように、合成樹脂の微細な連続スポンジ構造を構成させることができれば、吸放湿吸水発熱性繊維又は粉末の表面を合成樹脂で被覆される部分を減少させることができるので好ましい。表皮層に吸放湿吸水発熱性繊維又は粉末を含有させるときも、基材層と同様に、湿乾いずれかの方法で表皮層にポリウレタンの微細な連続スポンジ構造を形成し、吸放湿吸水発熱性繊維又は粉末の表面を合成樹脂でできるだけ被覆しないようにすることが重要である。 【0037】吸放湿吸水発熱性繊維又は粉末の含有方法であるが、人造皮革を構成する少なくとも1層に含有していれば吸湿吸水発熱効果により保温効果を感じることができるが、基材層に含有させた方が肌近くに吸放湿吸水発熱性繊維が存在することになって好ましい。 【0038】2層以上に吸放湿吸水発熱性繊維又は粉末を含有する人造皮革の場合は、連続して2層以上に吸放湿吸水発熱性繊維又は粉末を存在させると、湿気、水、汗等の水分を裏側の基材層から表皮層を経て、人造皮革表面から外界へ放散させる効果が高くなり、吸放湿吸水発熱を長時間継続させると同時に、人体側をよりドライに保つことが可能となる。 【0039】前記の場合には、基材層に含浸する樹脂や各表皮層が透湿性を有する樹脂で構成されていることが好ましい。さらに、通気性を有する基材層、表皮層であれば、吸放湿吸水発熱を長時間継続させる効果が高くなる。 【0040】上記の様に構成された人造皮革は、保温品の全体を構成しても良いが、保温品の目的よっては、少なくとも保温品の一部分に用いればよい場合もある。本保温品は、例えば、ジャンバー、コート、手袋、スキーウェア、防寒用登山服、その他防寒用ジャケットなどの防寒用衣服、登山靴等の防寒靴等に使用ができる。 【0041】また、人造皮革1層で吸放湿吸水発熱による保温が可能なので、起毛生地、綿又は吸放湿吸水発熱性繊維を含有する他の生地等と2層とする必要が無く、人造皮革1層のみ使用したい箇所にも適用可能で生地を合わせることによる重量増加、風合い硬化をなくすことができるのと同時に人造皮革と生地を2層にするための縫製等の工程を省くことができるため、コストダウンも可能である。 【0042】 【実施例】(実施例1)アクリレート系吸放湿吸水発熱性繊維30%とポリエステル原綿を70%混紡した40番の混紡糸を表側に配し、110dtex/48fポリエステル長繊維を裏側に配し、裏側を片面起毛したWフェースニットの基材層を用意する。 【0043】前記基材層の表側に、ポリオキシエチレン系ポリウレタンエラストマー(100%Md35kg/cm2)の30%DMF溶液100部に対し、アクリレート系吸放湿吸水発熱性繊維を0.1mm〜0.8mm程度に粉砕(ランダムカット)し20メッシュのふるいを通過せしめた吸放湿吸水発熱性繊維粉末25部をDMF200部に分散させた液を加え、酸化防止剤1部、着色顔料8部を添加して、ミキサーで十分に撹拌し均一にした分散液を、ロールコーターで厚さ0.4mmに均一に塗布して30秒間放置する。 【0044】前記、30秒放置後、30℃の水浴中に10分間浸漬して凝固させ、次いで、60℃の温水で1時間洗浄し、マングルで脱液した後、100℃で20分間乾燥し、微多孔質のシート材を得た。次に、この微多孔質シート材の皮膜表面を粒度180番の研磨紙を巻き付けた回転ドラムシリンダーに押圧し、皮膜面から0.07mmを研削することによって、スエード状合成皮革を造った。この合成皮革は基材層と表皮層の2層からなり、両方にアクリレート系吸放湿吸水発熱性繊維を含有することになる。 【0045】(実施例2)アクリレート系吸放湿吸水発熱性繊維を30%とポリエステル原綿を70%混紡した40番の混紡糸を表側に配し、110dtex/48fポリエステル長繊維を裏側に配し、裏側を片面起毛したWフェースニットの基材層を用意する。 【0046】前記基材層の表側に、ポリオキシエチレン系ポリウレタンエラストマー(100%Md35kg/cm2)の30%DMF溶液100部に対し、ポリエステル繊維を0.1mm〜0.8mm程度に粉砕(ランダムカット)し20メッシュのふるいを通過せしめた吸放湿吸水発熱性繊維粉末25部をDMF200部に分散させた液を加え、酸化防止剤1部、着色顔料8部を添加して、ミキサーで十分に撹拌し均一にした分散液を、ロールコーターで厚さ0.4mmに均一に塗布して30秒間放置する。 【0047】前記、30秒放置後、30℃の水浴中に10分間浸漬して凝固させ、次いで、60℃の温水で1時間洗浄し、マングルで脱液した後、100℃で20分間乾燥し、微多孔質のシート材を得た。次に、この微多孔質シート材の皮膜表面を、粒度180番の研磨紙を巻き付けた回転ドラムシリンダーに押圧し、皮膜面から0.07mmを研削することによってスエード状合成皮革を造った。この合成皮革は基材層と表皮層の2層からなり、基材層にアクリレート系吸放湿吸水発熱性繊維を含有することになる。 【0048】(実施例3)ポリエステル100%の40番混紡糸を表側に配し、110dtex/48fポリエステル長繊維を裏側に配し、裏側を片面起毛したWフェースニットの基材層を用意する。 【0049】前記基材層の表側に、ポリオキシエチレン系ポリウレタンエラストマー(100%Md35kg/cm2)の30%DMF溶液100部に対し、アクリレート系吸放湿吸水発熱性繊維を0.1mm〜0.8mm程度に粉砕(ランダムカット)し20メッシュのふるいを通過せしめた吸放湿吸水発熱性繊維粉末25部をDMF200部に分散させた液を加え、酸化防止剤1部、着色顔料8部を添加して、ミキサーで十分に撹拌し均一にした分散液を、ロールコーターで厚さ0.4mmに均一に塗布して30秒間放置する。 【0050】前記、30秒放置後、30℃の水浴中に10分間浸漬して凝固させ、次いで、60℃の温水で1時間洗浄し、マングルで脱液した後、100℃で20分間乾燥し、微多孔質のシート材を得た。次に、この微多孔質シート材の皮膜表面を粒度180番の研磨紙を巻き付けた回転ドラムシリンダーに押圧し、皮膜面から0.07mmを研削することによってスエード状合成皮革を造った。この合成皮革は基材層と表皮層の2層からなり、表皮層にアクリレート系吸放湿吸水発熱性繊維を含有することになる。 【0051】(比較例1)ポリエステル100%の40番混紡糸を表側に配し、110dtex/48fポリエステル長繊維を裏側に配し、裏側を片面起毛したWフェースニットの基材層を用意する。 【0052】前記基材層の表側に、ポリオキシエチレン系ポリウレタンエラストマー(100%Md35kg/cm2)の30%DMF溶液100部に対し、綿繊維を0.1mm〜0.8mm程度に粉砕(ランダムカット)し20メッシュのふるいを通過せしめた吸放湿吸水発熱性繊維粉末25部をDMF200部に分散させた液を加え、酸化防止剤1部、着色顔料8部を添加して、ミキサーで十分に撹拌し均一にした分散液を、ロールコーターで厚さ0.4mmに均一に塗布して30秒間放置する。 【0053】前記、30秒放置後、30℃の水浴中に10分間浸漬して凝固させ、次いで、60℃の温水で1時間洗浄し、マングルで脱液した後、100℃で20分間乾燥し、微多孔質のシート材を得た。次に、この微多孔質シート材の皮膜表面を粒度180番の研磨紙を巻き付けた回転ドラムシリンダーに押圧し、皮膜面から0.07mmを研削することによってスエード状合成皮革を造った。この合成皮革は基材層と表皮層の2層からなり、表皮層に綿繊維を実施例2と同量含有することになる。 【0054】(比較例2)ポリエステル100%の40番混紡糸を表側に配し、110dtex/48fポリエステル長繊維を裏側に配し、裏側を片面起毛したWフェースニットの基材層を用意する。 【0055】前記基材層の表側に、ポリオキシエチレン系ポリウレタンエラストマー(100%Md35kg/cm2)の30%DMF溶液100部に対し、ポリエステル繊維を0.1mm〜0.8mm程度に粉砕(ランダムカット)し20メッシュのふるいを通過せしめた吸放湿吸水発熱性繊維粉末25部をDMF200部に分散させた液を加え、酸化防止剤1部、着色顔料8部を添加して、ミキサーで十分に撹拌し均一にした分散液を、ロールコーターで厚さ0.4mmに均一に塗布して30秒間放置する。 【0056】前記、30秒放置後、30℃の水浴中に10分間浸漬して凝固させ、次いで、60℃の温水で1時間洗浄し、マングルで脱液した後、100℃で20分間乾燥し、微多孔質のシート材を得た。次に、この微多孔質シート材の皮膜表面を粒度180番の研磨紙を巻き付けた回転ドラムシリンダーに押圧し、皮膜面から0.07mmを研削することによってスエード状合成皮革を造った。この合成皮革は基材層と表皮層の2層からなり、表皮層にポリエステル繊維を実施例2と同量含有することになる。 【0057】以上、実施例1〜3、比較例1、2を裁断、縫製して皮コート(裏地なしの1枚もの)を作製した。これを、本発明品1、2、3、比較品1、2とする。また、同じく実施例1〜3、比較例1、2と同じ生地を用いて1枚物の手袋を作製し、これを本発明品4、5、6、比較品3、4とする。 【0058】(実施例4)実施例1とは、裏起毛加工を施していない点を除いて同一構造の基材層を使用し、塗布する厚みを0.6mmにする点を除いて同一構造の表皮層にした合成皮革とした。 【0059】(実施例5)実施例2とは、裏起毛加工を施していない点を除いて同一構造の基材層を使用し、塗布する厚みを0.6mmにする点を除いて同一構造の表皮層にした合成皮革とした。 【0060】(実施例6)実施例3とは、裏起毛加工を施していない点を除いて同一構造の基材層を使用し、塗布する厚みを0.6mmにする点を除いて同一構造の表皮層にした合成皮革とした。 【0061】(比較例3)比較例1とは、裏起毛加工を施していない点を除いて同一構造の基材層を使用し、塗布する厚みを0.6mmにする点を除いて同一構造の表皮層にした合成皮革とした。 【0062】(比較例4)比較例2とは、裏起毛加工を施していない点を除いて同一構造の基材層を使用し、塗布する厚みを0.6mmにする点を除いて同一構造の表皮層にした合成皮革とした。 【0063】以上、実施例4〜6、比較例3、4を裁断、縫製して靴を作製して、本発明品7、8、9、比較品5、6とする。 【0064】流入口、排出口を備えた箱上面が開口した装置を用意し、本発明品1〜3、比較品1、2のいずれかの試料を箱上面開口部に装着して、箱上面をふさぐ。これにより、丁度各試料から製造した衣服を着用したのと同様の状態が再現できる。この装置を用いて、人体への着用を想定したテストを行なった。 【0065】まず、装置の置かれている環境温湿度を20℃、50%RHにし、試料を装着後、27℃、35%RHの空気を10リットル/分の流量で流入口から装置内に流し、温湿度を安定させる。次に、計測開始1分後に、27℃、75%RHの空気を同様の流量で20分間流し続ける。この間本発明品1〜3、比較品1、2の皮革裏面に装着した温度センサーで、皮革裏面温度を10秒ごとに記録する。その結果が図1である。 【0066】図1から、本発明品は比較品と比較して、皮革裏面温度が高い領域にあることが分かる。また、本発明品1と2を比較すると1の方が、本発明品2と3を比較すると2の方が、発熱が継続していることが分かる。本発明品4〜6、比較品3、4も、図1と同様な結果が得られると考えられる。 【0067】従って、図1から次のことが言える。アクリレート系吸放湿吸水発熱性繊維を含有している合成皮革は発熱効果があり、基材層に含有しているものの方がさらに効果がある。基材層と表皮層の連続した2層に含有しているものの方が発熱がより継続する。 【0068】次に、本発明品1〜9、比較品1〜6を用いて、着用テストを行った。10℃、45%RHの人工気象室で、健康な男女30人に本発明品と比較品とを着用してもらい、暖かさを非常に感じる、やや感じる、わずかに感じる、感じないの4段階評価のアンケート調査を行なった。その結果が以下の通りである。 【0069】 【表1】
【0070】革コート、手袋、靴の各アイテムとも本発明品の方が比較品よりも暖かさをより感じることがこの着用テストからわかる。また、本発明品でも、基材層、表皮層の連続した2層に吸放湿吸水発熱性繊維、粉末を含有させた本発明品1、4、7、基材層のみに含有させた本発明2、5、8、表皮層のみに含有させた本発明品3、6、9の順で暖かさを感じており、この結果は、衣服内シミュレーターによるテストの結果と符合する。 【0071】 【発明の効果】本発明による人造皮革を使用すれば、人造皮革1層のみで製品を構成した場合でも、十分な発熱効果を発揮するものである。さらに、吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末を含有する層を少なくとも連続して2層以上有する人造皮革を使用した保温品とすれば、さらに発熱効果が期待できる。 【0072】しかも、従来のように吸放湿吸水発熱性繊維を含有させた不織布又は編織物生地を、接着剤等のバインダーを介して張り付けた場合と異なり、バインダー等が吸放湿吸水発熱性繊維の表面一部もしくは全部を被覆してしまって吸放湿吸水発熱性機能が十分に発揮できないというようなことがなくなる。また、皮革部と生地部の2層となって重量が増加し、風合いが硬くなったり、加工工程が増えてコストアップになるというようなこともなくなる。 【0073】基材層、表皮層を構成する各層すべてが透湿性、通気性を有する人造皮革を使用した保温品とすれば、さらに湿気を効率良く外部に排出し、発汗時に蒸れを感じることもない。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000005935 【氏名又は名称】美津濃株式会社
|
| 【出願日】 |
平成13年2月28日(2001.2.28) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2002−266113(P2002−266113A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月18日(2002.9.18) |
| 【出願番号】 |
特願2001−54851(P2001−54851) |
|