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【発明の名称】 接着芯地
【発明者】 【氏名】大塚 武久

【氏名】棚瀬 勉

【要約】 【課題】ポリエステルのマテリアルリサイクルを可能にすることができるとともに、ドライクリーニング後の接着強力の低下を容易に抑制することができるように構成された接着芯地を提供する。

【解決手段】接着芯地は、ポリエステル繊維から構成された芯地用布帛の表面に、異なる種類のポリエステル樹脂からなる下部接着剤層と上部接着剤層とによって構成される立体二層構造形態の接着剤層が形成されたものである。下部接着剤層は、極性基を有するポリエステル樹脂によって構成するのが好ましい。前記極性基は、スルホン酸基又はカルボン酸基であるのが好ましい。さらに、前記上部接着剤層を構成するポリエステル樹脂の融点を130℃以下とするとともに、前記下部接着剤層を構成するポリエステル樹脂の軟化点を130℃以上とするのが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリエステル繊維から構成された芯地用布帛の表面に、異なる種類のポリエステル樹脂からなる下部接着剤層と上部接着剤層とによって構成される立体二層構造形態の接着剤層を形成したことを特徴とする接着芯地。
【請求項2】 前記下部接着剤層を、極性基を有するポリエステル樹脂によって構成したことを特徴とする請求項1に記載の接着芯地。
【請求項3】 前記上部接着剤層を構成するポリエステル樹脂の融点を130℃以下とするとともに、前記下部接着剤層を構成するポリエステル樹脂の軟化点を130℃以上としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接着芯地。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、マテリアルリサイクルが可能となるように構成された衣料用の接着芯地に関するものである。より詳しくは、芯地用布帛とその布帛の表面に塗布される接着剤とを、ともにポリエステルから構成することによって、マテリアルリサイクルを可能にすることができるように構成された接着芯地に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、衣服のリサイクルについて実用化されているものとしては、衣服を燃焼させてその熱エネルギーを利用する「サーマルリサイクル」、素材のポリマー段階までリサイクルする「マテリアルリサイクル」、及び素材のモノマー段階までリサイクルする「ケミカルリサイクル」の3種類が知られている。このうち、ポリエステルのマテリアルリサイクルが可能な衣服を作るためには、その資材である表生地、裏地、芯地、肩パッド、縫い糸、ボタン、ファスナー等が全てポリエステルによって構成されている必要がある。また、接着芯地についても同様に、それを構成する芯地用布帛及び接着剤が、全てポリエステルによって構成されている必要がある。現在のところ、ポリエステル繊維からなる芯地用布帛の表面に、ポリエステル樹脂の単一成分から構成されたシングルドット形態の接着層が形成された接着芯地が実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記従来のポリエステル樹脂を用いて接着された接着芯地では、一般的に接着芯地用に利用されるポリアミド系やポリエチレン系の熱可塑性樹脂を用いて接着されたものと比較すると、ドライクリーニング後の接着強力の低下によって耐久性が劣るという欠点があった。
【0004】この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、ポリエステルのマテリアルリサイクルを可能にすることができるとともに、ドライクリーニング後の接着強力の低下を容易に抑制することができるように構成された接着芯地を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の接着芯地は、ポリエステル繊維から構成された芯地用布帛の表面に、異なる種類のポリエステル樹脂からなる下部接着剤層と上部接着剤層とによって構成される立体二層構造形態の接着剤層を形成したことを特徴とするものである。
【0006】請求項2に記載の発明の接着芯地は、請求項1に記載の発明において、前記下部接着剤層を、極性基を有するポリエステル樹脂によって構成したことを特徴とするものである。
【0007】請求項3に記載の発明の接着芯地は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記上部接着剤層を構成するポリエステル樹脂の融点を130℃以下とするとともに、前記下部接着剤層を構成するポリエステル樹脂の軟化点を130℃以上としたことを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、この発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。本実施形態の接着芯地は、ポリエステル繊維から構成された芯地用布帛の表面(片面)に、異なる種類のポリエステル樹脂からなる下部接着剤層と上部接着剤層とによって構成される立体二層構造形態の接着剤層が形成されたものである。この接着芯地は、全てポリエステルによって構成されていることから、ポリエステルのマテリアルリサイクルが可能となっている。さらに、この接着芯地は、接着剤層が2種類の樹脂により構成されていることから、ドライクリーニング後の接着強力の低下を抑制して耐久性を高めることができるように構成されている。
【0009】芯地用布帛としては、ポリエステル100%からなるポリエステル繊維が使用される。このポリエステル繊維は、紡績糸、フィラメント糸、加工糸のいずれであってもよい。また、織物、編物又は不織布のいずれであってもよい。
【0010】下部接着剤層は、芯地用布帛の片面に直接塗布することによって構成される。この下部接着剤層としては、ポリエステルのマテリアルリサイクルを可能にするために、ポリエステル100%からなるポリエステル樹脂によって構成される。さらに、ドライクリーニング後の接着強力の低下を効果的に抑制するために、極性基を有するポリエステル樹脂(ポリエステル非晶体樹脂)を使用するのが好ましい。
【0011】前記極性基としては、ポリエステル樹脂の分子内に親水性を付与してドライクリーニング溶剤による膨潤及び溶解を抑制してドライクリーニング後の接着強力の低下を抑制するために、スルホン酸基又はカルボン酸基が好適に導入される。前記スルホン酸基としては、5−Naスルホイソフタル酸、5−アンモニウムスルホイソフタル酸、4−Naスルホイソフタル酸等が挙げられ、カルボン酸基としては、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、トリメシン酸等が挙げられる。
【0012】さらに、この下部接着剤層を構成するポリエステル樹脂としては、軟化点が130℃以上であるのが好ましい。このポリエステル樹脂の軟化点が130℃未満の場合には、上部接着剤層を表生地に浸透させる際のアンカー効果が少なくなり不適切となる。
【0013】上部接着剤層は、前記下部接着剤層の上面に塗布することによって構成される。この上部接着剤層としては、ポリエステルのマテリアルリサイクルを可能にするとともにドライクリーニング後の接着強力の低下を抑制するために、前記下部接着剤層とは異なる種類のポリエステル樹脂(100%)が使用される。さらに、この上部接着剤層を構成するポリエステル樹脂としては、融点が130℃以下であるのが好ましい。このポリエステル樹脂の融点が130℃を超える場合には、接着芯地を接着する際に、その溶融が不十分となることから接着強力が著しく低下するおそれがある。
【0014】これら下部接着剤層及び上部接着剤層からなる立体二層構造形態の接着剤層の形成(塗布)方法としては、まず、下部接着剤層を構成するポリエステル樹脂を水系分散体としてロータリースクリーン、グラビア、フレキソ等のコーターにより、芯地用布帛の片面にドット状に塗布する。続いて、前記下部接着剤層の上面に、上部接着剤層を構成するポリエステル樹脂を粉末状態で散布した後、ドット以外の部分(下部接着剤層上に付着されていない部分)の粉末を吸引除去する。最後に、乾燥機を用いて150〜170℃で20〜40秒間加熱し、両ポリエステル樹脂を溶融させて芯地用布帛に固着させる。
【0015】なお、前記ドット配列については、規則性の有る配列であってもよく、ランダム配列であってもよい。また、ドット密度としては、接着強力を高めることができるとともに容易に塗布することができることから、1平方インチ当たり200個〜1000個であるのが好ましい。
【0016】上記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態の接着芯地は、ポリエステル繊維から構成された芯地用布帛の表面に、異なる種類のポリエステル樹脂からなる下部接着剤層と上部接着剤層とによって構成される立体二層構造形態の接着剤層が形成(塗布)されている。このため、この接着芯地は、全てポリエステルによって構成されていることから、ポリエステルのマテリアルリサイクルすることが可能である。さらに、異なる種類のポリエステル樹脂からなる立体二層構造形態の接着剤層が形成されていることから、前記従来の単一成分からなるシングルドット形態の接着層を有する接着芯地と比較して、ドライクリーニング後の接着強力の低下を容易に抑制することができ、長期間に渡る使用に対する耐久性を高めることができる。加えて、この立体二層構造形態の接着剤層によって、初期接着強力も高められる。
【0017】・ 下部接着剤層として極性基を有するポリエステル樹脂を使用することによって、初期接着強力及びドライクリーニング後の接着強力を顕著に高めることが可能となり、長期間の使用に十分に耐え得る極めて高品質の製品とすることができる。さらに、下部接着剤層に導入される極性基をスルホン酸基又はカルボン酸基とすることによって、下部接着剤層を構成するポリエステル樹脂の分子内に親水性を容易に付与することができる。このため、ドライクリーニング溶剤による膨潤及び溶解を抑制することができることから、衣服の消費段階におけるクリーニング時において、水泡状の浮きやバブリングが発生したり、芯地が剥離したりするといった不具合を減らして、ドライクリーニング後の接着強力の低下を極めて効果的に抑制することができる。
【0018】・ 上部接着剤層を構成するポリエステル樹脂の融点を130℃以下とするとともに、下部接着剤層を構成するポリエステル樹脂の軟化点を130℃以上とすることにより、接着芯地を接着する際の接着強力を容易に高めることができる。
【0019】
【実施例】以下、前記実施形態を具体化した実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)経糸及び緯糸の素材としてポリエステル加工糸(75デニール/36フィラメント、密度が経糸69本/2.54cm、緯糸68本/2.54cm)を用いて織成された芯地用布帛を使用した。この芯地用布帛に、下部接着剤層としてNa−スルフォン酸基を導入した軟化点165℃のポリエステル樹脂エマルジョンを用いるとともに、上部接着剤層として融点115℃、粒度80〜200μmのポリエステル樹脂を用いて、ロータリースクリーンコーターにて立体二層構造形態の接着剤層を形成した。なお、ドット密度は1平方インチ当たり625個(18g/m2)をランダムに配列した。最後に、乾燥機を用いて160℃で30秒間加熱処理することにより接着剤層を芯地用布帛に固着させ、ポリエステルのマテリアルリサイクル可能な接着芯地を得た。
【0020】(実施例2)経糸及び緯糸の素材としてポリエステル加工糸(75デニール/36フィラメント、密度が経糸69本/2.54cm、緯糸68本/2.54cm)を用いて織成された芯地用布帛を使用した。下部接着剤層としてNa−スルフォン酸基を導入していない軟化点165℃のポリエステル樹脂エマルジョンを使用した以外は、実施例1と同様にして接着芯地を作製した。
【0021】(比較例1)経糸及び緯糸の素材としてポリエステル加工糸(75デニール/36フィラメント、密度が経糸69本/2.54cm、緯糸68本/2.54cm)を用いて織成された芯地用布帛を使用した。この芯地用布帛に、融点115℃、粒度0〜80μmのポリエステル樹脂を使用して単一成分(シングルドット)にて1平方インチ当たり990個(18g/m2)を正規配列で塗布した。
【0022】<接着強力の測定>上記実施例1、2及び比較例1で得られた各接着芯地について、初期接着強力及びドライクリーニング後の接着強力を測定した。接着強力の測定方法及びドライクリーニング条件は下記の通りである。
【0023】接着強力:インスロトン型引張り試験機にて25mm幅で測定。
接着条件は、温度150℃、圧力300gf/cm2、時間15秒間。表生地はポリエステル100%ユニフォーム生地を使用した。
【0024】ドライクリーニング条件:商業用ドライクリーニング機械を用い、溶剤はパークロロエチレンを使用。
総合評価は、◎:非常に良好、○:良好、△:やや不十分で示した。
【0025】測定結果及びその測定結果を評価した評価結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0027】・ 下部接着剤層として高い親水性を有するポリエステル樹脂を用いること。このように構成した場合でも、ドライクリーニング後の接着強力の低下を効果的に抑制することができる。
【0028】さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記極性基を、スルホン酸基又はカルボン酸基としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の接着芯地。このように構成した場合、ドライクリーニング後の接着強力の低下を容易に抑制することができる。
【0029】・ 前記立体二層構造形態の接着剤層のドット密度を、1平方インチ当たり200個〜1000個としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の接着芯地。このように構成した場合、ドライクリーニング後の接着強力の低下を効果的に抑制することができるうえ容易に塗布することができる。
【0030】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。請求項1に記載の発明の接着芯地によれば、ポリエステルのマテリアルリサイクルを可能にすることができるとともに、ドライクリーニング後の接着強力の低下を容易に抑制することができる。
【0031】請求項2に記載の発明の接着芯地によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、ドライクリーニング後の接着強力の低下を極めて効果的に抑制することができる。
【0032】請求項3に記載の発明の接着芯地によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、接着芯地を接着する際の接着強力を容易に高めることができる。
【出願人】 【識別番号】594040198
【氏名又は名称】東海サーモ株式会社
【出願日】 平成13年2月6日(2001.2.6)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣 (外1名)
【公開番号】 特開2002−235227(P2002−235227A)
【公開日】 平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願番号】 特願2001−29857(P2001−29857)