トップ :: A 生活必需品 :: A41 衣類




【発明の名称】 高温高湿作業用防護スーツ
【発明者】 【氏名】田中 宏和

【氏名】森 周一

【要約】 【課題】高温・高湿作業用防護スーツを提供すること。

【解決手段】身体の一部を外気と隔離する様に密閉したスーツに少なくとも1つ以上のエアー供給部を持ち、エアー供給部からエアーを、スーツと身体の間に供給してスーツの膨らみ部を積極的に膨張させた空気層を形成し、空気層からそのエアーを、膨らみ規制部を通じて別な空気層もしくはエアー排気部へ排出するようにスーツを構成したこと。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 身体にかかる負荷を軽減させる防護スーツにおいて、身体の一部を外気と隔離するように密閉した防護スーツに少なくとも1つ以上のエアー供給部を持ち、該エアー供給部からエアーを、該防護スーツと身体の間に供給して、該防護スーツの膨らみ部を積極的に膨張させた空気層を形成し、該空気層からエアーを、膨らみ規制部を通じて別な空気層もしくはエアー排気部へ排出することを特徴とした高温高湿作業用防護スーツ。
【請求項2】 前記供給されるエアーの流量が単位時間当たり3m3/h 以上、20m3/h以下である請求項1に記載の高温高湿作業用防護スーツ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温度・高湿度環境に設定された恒温恒湿槽内での作業時に着用し、作業者の負荷軽減を行う為の防護スーツに関する。
【0002】
【従来の技術】製品の品質評価業務において、環境試験を行うための恒温槽内を高温度・高湿度又は低温度に設定し、その恒温槽内で作業者が製品を操作する場合がある。
【0003】その中で低温度の場合には、防寒着などを着用することによって、作業者の負荷をある程度は軽減させる事が出来る。
【0004】しかし高温・高湿環境においては、従来から身体への負荷を軽減できるような防護手段をとらず、吸水性のよい専用衣服に着替えて多量の汗をかき、その後は衣服を着替えるか、シャワーを浴びるなどしていた。
【0005】その為、作業者は苦痛感・疲労感が激しく、長時間連続の作業は困難であった。加えて従来から、所定温度の冷風を導入口から服内部の冷風通路に吹き込んで循環させそれを逃がし口から排出することで冷房効果を得るようにした冷房服、例えば特開平2−145801、特開平4−209809などが提案されているが、いずれも服の首、手、腰部はほぼ開放された状態であり、外気の侵入が生じ易い為、冷却効果が損なわれてしまう、また湿度に関しても周囲との隔離が不完全の為、作業者の不快感を軽減し難い。
【0006】また外気と完全に遮断した、例えば特許番号第2928766号に見られるような放射線用のエアーライン防護服などは、服そのものが重装備であることに加えて、作業者の安全を考慮し呼吸に適したエアーの供給設備や、供給圧を安定させる手段、さらに服内部の膨張を防ぐ為の安定した排気手段など大掛りな設備が必要である。
【0007】更に評価業務で用いる際、ヘルメットやグローブがあると、ヘルメットへの水滴の付着による視認性の低下や、製品性能にかかわる音の検出ができないこと。又グローブを用いると、特に小型のコンシューマ製品は操作性が悪く作業性が低下してしまう。
【0008】いずれにしても高温高湿に設定された恒温恒湿槽内での品質評価業務において、作業者の負荷軽減を行う為の防護スーツには適していない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、作業者の負荷軽減を行う為、高温度・高湿度環境に設定された恒温槽内での作業時に着用する防護スーツが必要とされている。
【0010】そこで、防護スーツに必要な条件を検討したところ、恒温槽内部における製品の品質評価という作業内容から、顔(特に目)及び両手の露出が必要であり、身体の一部、例えば首から上、及び両手首以外全てを外気から隔離する様に密閉し、かつエアーを防護スーツ内に供給することによって防護スーツの一部を積極的に膨張させることが重要であることを見いだした。
【0011】ここで言う積極的に膨張させることとは、従来の冷房服や、防護服における冷風などを単純に循環させる際の若干の膨張とは異なり、スーツに膨らみの規制部や密閉部を設けることで膨張効果を増加させると共に、強制的な排気手段や逆止弁を用いるのではなく、逆に意図的にスーツを膨らませた状態から自然にエアーが排出される程度にとどめておき、外気と隔離する為の空気層をより多くとるために設ける構成をいう。更に上記条件に加えて、作業者の苦痛感・疲労感を大幅に減少でき、快適であることはもちろんであるが・作業性を損なわない程度に動き易いこと・事前準備が最小限ですみ、装着が簡単であること例えば常温における衣服の上にそのまま着用できること・周辺設備も大掛りでなく、メンテナンスも容易でかつ清潔感があることも重要である。
【0012】上記条件をふまえて、実験も含めた解析を行ったところ、苦痛感・疲労感を軽減させる為の最も重要なポイントは、汗の量を減少させることであり、そのために必要な防護スーツの構成は、例えば顔と両手以外を外気から隔離する様に密閉するようなスーツと身体の間にエアーを供給しスーツの膨らみ部を積極的に膨張させて空気層を作ることと、その空気層内の空気が長時間滞留することなく少しずつでも循環し低温・低湿な空間をすることである。
【0013】ここで言う身体とは、衣服も含めた常温下における作業者の状態を意味する。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の防護スーツは、身体の一部を外気と隔離する様に密閉したスーツに少なくとも1つ以上のエアー供給部を持ち、エアー供給部からエアーを、スーツと身体の間に供給してスーツの膨らみ部を積極的に膨張させた空気層を形成し、空気層からそのエアーを、膨らみ規制部を通じて別な空気層もしくはエアー排気部へ排出することを特徴とした高温高湿作業用防護スーツである。
【0015】
【発明の実施の形態】次に本発明に係る第一実施例について説明する。
【0016】まず本発明のなかで、苦痛感・疲労感を最も効果的に軽減させる実施例を挙げると、全身を包み込むようなビニール袋状のスーツを着用し、頭部、両手のみ露出し、かつゴムバンドやマジックテープ(登録商標)を用いて各露出部を密閉した状態でエアーを供給した。
【0017】この際エアーの供給は呼吸には関係なく、また特に冷却手段が必須ではない為、例えば小型コンプレッサーなどを用いて恒温槽外の常温・常湿のエアーを供給するだけでも良いし、特に身体に悪影響のない方法であれば、どのような手段を用いても構わない。
【0018】しかし周辺設備が大掛りにならないようであれば、冷風エアーやドライエアーを用いると更に効果が増す。上記の状態で、エアー供給口とは別にエアーの排気口を設けて、高温度・高湿度の環境(例えば45℃90%)に設定された恒温槽に入室した。
【0019】この際エアーの排気量にもよるが、恒温槽への影響がない場合は恒温槽内部への排気でも良いが、影響がある場合には、恒温槽外への排気手段も必要となる。その結果、従来の高温高湿専用の衣服着用時に比べて、苦痛感や疲労感が格段に軽減され、スーツ外の露出部(顔、手、足)以外は殆ど汗をかかなかった。
【0020】しかしながら第一実施例では、空気層の膨らみをかなり多めにとっている為、快適さは優れている反面、動き易さの面で多少劣る。
【0021】そこで次に本発明に係る第二実施例について説明する。図1は、本実施例に係る防護スーツ1の全体を示す正面図である。防護スーツ1は、装着を簡単にすることと、密閉性をより向上させるために、つなぎ形状になっている。
【0022】2はファスナーを示す。ファスナーは、密閉性に優れたものを用いると良い。3はエアー供給口であり、本実施例では腰部に設けてあるが、エアー供給の為のホースが邪魔にならない位置、又は全身にエアーが回り込みやすい位置であれば、任意の配置で良い。また供給口を複数設けても良い。
【0023】例えば図示はしていないが、スーツに供給する手前で3箇所等複数に分岐してスーツ内への供給口を複数設置し、さらに各々バルブを設け、全身にエアーが回り込みやすいように調節する機構を設けると上半身、下半身などバランスよくエアーを供給できる。
【0024】調節機構に関しては、スーツ内部に温度センサを設け、温度に応じて流量の調節ができる機構を設ければ、さらに作業者の状態に応じた調節を行うことが出来る。4,5,6は膨らみの規制部であり、各関節部分の動きを良くする為に設けてある。この部分は、スーツの膨らみを規制するだけでなく、空気層と別な空気層間の連通路を確保して、空気層内の空気が長時間停滞することなく循環できるようになっている。
【0025】これにより空気層内部が低温・低湿な状態を維持できるようになっている。さらに本実施例ではゴムバンドを用いて規制部を構成した為、動き易さを得る効果もより向上した。7,8,9はゴムバンドやマジックテープを用いて排気部近辺を密閉する部分である。ここをある程度密閉しないと、膨らみ部を設けることも困難であり、また外気の侵入もあるため効果が大きく損なわれてしまう。
【0026】10は排気口であり本実施例では首、両手、両足に各々設けているが、第一実施例と同様に恒温槽への影響がある場合は、恒温槽外へ排気する構成(例えば全ての排気を1つの管にまとめて排気するなど)を設ければ良い。
【0027】この排気口を設けることにより、空気層内のエアーを長時間停滞させることなく循環させ、低温・低湿な状態を維持できるようになっている。
【0028】ここで本実施例の作用について詳細に説明する。まずエアー供給口3から腰部に供給されたエアーが外気と隔離する様に密閉された防護スーツ1内部に供給される。供給されたエアーは、上半身と下半身に回り込むが、膨らみ規制部5,6を設けているために供給されつづけるエアーの抵抗となり、上胴体部と大腿部にエアーの滞留が生じてスーツが膨らむ。この構成が前述したスーツの一部を積極的に膨張させるものである。
【0029】この膨らみつまり空気層が存在することにより、周囲の高温に対して、低温な状態を維持しかつ、空気層の厚みにより多少の断熱効果を得て、高温環境から身体への影響を緩和することができる。また湿度に関しても、スーツの着用によって外気と遮断されている為に、直接の影響はない。しかし人体そのものから発生する湿気が、時間が経つにつれて、不快感へとつながっていくが、本実施例においては、ある程度膨らんだ空気層に、エアーが供給されつづける為に、空気層内でのエアーの対流が発生し、その湿気が狭い隙間に長時間滞留することを防ぐ為、不快感を緩和することが可能となる。
【0030】上記作用の際、膨らみ規制部5,6によりある程度のエアーの滞留はあるが、この膨らみ規制部はあくまでも膨らみの規制にとどまっており完全な密閉ではなく、そこから先の別な空気層へつながる通路の役割も果たしている。このことからスーツの膨らみ部が膨らみきった状態からエアーは膨らみ規制部5,6を通過して別な空気層である足のふくらはぎ部、腕部へと供給される。この供給されたエアーによってふくらはぎ部、腕部においても前述と同様の作用が生じて、高温高湿による身体への影響が緩和される。
【0031】最終的に温度上昇しかつ人体より発生する湿気を含んだエアーが排気口10より、スーツ外に排出されていき、供給口からはエアーが供給されつづけるために、防護スーツ内部は常に低温・低湿な状態が維持されることとなる。 しかしながら、本実施例による防護スーツは、エアーの流量が極端に少ないと、膨らみ部を生じることが出来ず、前述したような効果は得られない。
【0032】実際にはエアー供給源の圧力や、エアー供給の為のホースの断面積等も関係してくるが、防護スーツ内に供給される流量が単位時間当たり3m3/h 以上ないと膨らみ部を設けることが困難であり、又最終的に排気されるエアーを確保できなくなってしまう。逆に、流量が多すぎると膨らみ部の圧力が大きすぎて作業者への圧迫感が強まる。他にもスーツの生地や、その他構造部への破損を生ずる可能性もあり実用面で不具合が生じてしまう。
【0033】この点においても種々の条件が絡んでくるが、流量が単位時間当たり20m3/h 以下であれば、本実施例の効果は、充分に得ることができ作業者への圧迫感も殆ど感じない。次に本実施例の防護スーツを実際に着用した結果について説明する。この防護スーツを着用して入室した場合と、従来の専用衣服で入室した場合を比較する為、高温度・高湿度(45℃90%)環境に約30分入室してみた。
【0034】その結果、従来の専用衣服で入室した場合は、かなりの苦痛感・疲労感を感じ、汗と高湿度環境による水滴の付着により全身が濡れた状態となってしまった。しかし防護スーツを着用した場合、スーツ外に露出している部分は濡れた状態であったが、その他はうっすら汗をかく程度ですんでおり、苦痛感・疲労感がかなり軽減されることが確認できた。さらにその際の脈拍数の上昇を確認すると、従来の専用衣服時 入室前 約70拍/分 → 30分後 約130拍/分防護スーツ着用時 入室前 約70拍/分 → 30分後 約 90拍/分と感覚的な苦痛感・疲労感の差が、データの上からも確認することが出来た。
【0035】第二実施例では上記効果のほかに、膨らみの規制部を設けたことにより作業性を損なわない程度に動き易くなり、又スーツがつなぎ形状の為装着も簡単である。また周辺設備もそれ程大掛りなものでなく、例えば小型のコンプレッサー等による簡易なエアー供給システムとこの防護スーツのみでも快適な効果を得ることが出来る。さらに本実施例では防護スーツの材質はナイロン地に、ポリウレタンコーティングを施したものを用いた為、密閉性もよく、膨らみ部を設けることも容易であった。また清潔感もあるので他人が使用したものでも流用可能である。しかし材質に関しては、上記特性がある程度得られるものであれば、特に本実施例の材質に限定されるものではない。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の防護スーツは、身体の一部を外気と隔離するように密閉したスーツに少なくとも1つ以上のエアー供給部を持ち、エアー供給部からエアーを、スーツと身体の間に供給して、スーツの膨らみ部を積極的に膨張させた空気層を形成し、空気層からそのエアーを、膨らみ規制部を通じて別な空気層もしくはエアー排気部へ排出することを特徴としており、それによって、高温高湿の厳しい環境下においても、作業者の苦痛感・疲労感を軽減させることが可能となり、快適な作業をより長時間に渡って行うことができる。
【0037】さらに各関節部に膨らみ規制部を設けることにより、動き易さを確保することも出来るため、作業者が作業効率を損なうことなく快適な作業を行うことができる。
【0038】またこの構成であれば、上記効果を得ることが可能であるが、さらに冷却、除湿など周辺設備を増やすことによって更なる相乗効果を生むことも可能である。
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成12年12月28日(2000.12.28)
【代理人】 【識別番号】100090538
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 恵三 (外1名)
【公開番号】 特開2002−201507(P2002−201507A)
【公開日】 平成14年7月19日(2002.7.19)
【出願番号】 特願2000−401333(P2000−401333)