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【発明の名称】 保温衣料
【発明者】 【氏名】春田 勝

【氏名】梶 修一

【氏名】横井 宏恵

【要約】 【課題】水分子吸着性能を利用した、肌との接触面の接触温冷感を低下させることができる保温効果の高い衣料を提供する。

【解決手段】放湿放熱コントロール性能を有する布帛層に水分子吸着発熱性能を有す布帛層が積層された積層布帛からなる衣料であって、放湿放熱コントロール性能を有する布帛層の透湿度が3,000〜12,000g/m2・24hrの範囲にあり、水分子吸着発熱性能を有す布帛層の発熱エネルギー指数が5以上、かつその外面側の接触温冷感(qmax)が0.1W/cm2以下であることを特徴とする保温衣料である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 放湿放熱コントロール性能を有する布帛層に水分子吸着発熱性能を有する布帛層が積層された積層布帛からなる衣料であって、放湿放熱コントロール性能を有する布帛層の透湿度が3,000〜12,000g/m2・24hrの範囲にあり、水分子吸着発熱性能を有する布帛層の発熱エネルギー指数が5以上あり、かつその外面側の接触温冷感(qmax)が0.1W/cm2以下であることを特徴とする保温衣料。
【請求項2】 放湿放熱コントロール性能を有する布帛層を表地とし、水分子吸着発熱性能を有する布帛層を裏地としてなり、該裏地の外面側の接触温冷感(qmax)が0.1W/cm2以下であることを特徴とする請求項1記載の保温衣料。
【請求項3】 さらに中地として、発熱エネルギー指数が5以上の布帛層を用いてなることを特徴とする請求項1または2記載の保温衣料。
【請求項4】 布帛の片面に合成樹脂からなる透湿防水皮膜層を積層した、放湿放熱コントロール性能を有する布帛層の透湿防水皮膜層面に、発熱エネルギー指数が5以上あり、かつ裏地面の接触温冷感(qmax)が0.1W/cm2以下の裏地を接着積層したことをことを特徴とする請求項1記載の保温衣料。
【請求項5】 表地を密、裏地を粗にした多重組織織物からなることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の保温衣料。
【請求項6】 水分子吸着発熱性能を有する布帛層が、繊維表面に吸湿性ポリマーおよび/または吸湿性微粒子を固着させてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の保温衣料。
【請求項7】 吸湿性ポリマーが、ビニルスルホン酸、下記一般式[I]で表されるビニルモノマー、下記一般式[II]で表されるビニルモノマー、および下記一般式[III]で表されるビニルモノマーの1種もしくは、2種以上を主成分とするポリマーであることを特徴とする請求項6記載の保温衣料。
【化1】

(式中、X=HまたはCH3、n=9〜23の整数)
【化2】

(式中、X=HまたはCH3、m+n=は9〜23の整数)
【化3】

(式中、R=HまたはCH3、R1=Cl、Br、I、OCH3、OC25またはSCH3、m=0〜9の整数、l=10〜30の整数)
【請求項8】 吸湿性微粒子がシリカ微粒子であることを特徴とする請求項6記載の保温衣料。
【請求項9】 水分子吸着発熱性能を有する布帛が、蓄熱剤を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の保温衣料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スポーツ用衣類または防寒衣等に好適に使用される快適な保温性を持つ衣料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の保温衣料においては、含気率を上げた素材を用い不動空気層を作ることにより断熱性を向上させ、または、アルミニウム箔膜等を利用して輻射熱を反射させ断熱性を向上させることにより、保温性の向上が図られていた。
【0003】また、近年になり特公平7−59762公報で提案されているように、吸放湿吸水発熱繊維を用いることにより保温性の向上が図られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の含気率を上げた素材を用いた場合はカサ高になり、着用時の運動性が阻害される。また、輻射熱を反射させる素材はアルミニウム箔膜等の金属の色が付き、色展開に制限がある。そして、これらの課題を解決するものとして吸放湿吸水発熱繊維を用いた衣料を提案している特公平7−59762号公報では、保温品は単に吸放湿吸水発熱性繊維を使用した衣料や、それを中綿や裏地に使用した衣料の開示があるのみである。また、ここで用いられる吸放湿吸水発熱性繊維は、吸湿率が高いために、手や身体に触れたときに冷たく感じるとともに、吸放湿吸水発熱性繊維からなる衣料では、着用時に吸放湿吸水して発熱すると同時に、空気中に水蒸気を放散しているために気化熱を奪われる。したがって、吸放湿吸水発熱性繊維をもちいた衣料において保温性に寄与するのは、吸放湿吸水発熱から気化熱を差し引いた熱量のみである。したがって、吸放湿吸水発熱が大きいものほど奪われる気化熱が大きいため、吸放湿吸水発熱をいくら大きくしても、保温性の向上効果は小さいという問題があった。
【0005】本発明の目的は、上記の実状に鑑み、水分子吸着発熱による保温効果を最大限に生かし、かつ、手や身体に触れた時に冷たく感じることのない保温衣料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意研究した結果、水分子吸着発熱性能を有する布帛層の上に、気化熱を制御する放湿放熱コントロール性能を有する布帛層を積層することにより、水分子吸着発熱性能を効率良く発揮さるのと同時に、肌面に接した場合に冷たく感じることがない衣料が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0007】すなわち、上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
(1)放湿放熱コントロール性能を有する布帛層に水分子吸着発熱性能を有す布帛層が積層された積層布帛からなる衣料であって、放湿放熱コントロール性能を有する布帛層の透湿度が3,000〜12,000g/m2・24hrの範囲にあり、水分子吸着発熱性能を有する布帛層の発熱エネルギー指数が5以上あり、かつその外面側の接触温冷感(qmax)が0.1W/cm2以下であることを特徴とする保温衣料。
(2)放湿放熱コントロール性能を有する布帛層を表地とし、水分子吸着発熱性能を有する布帛層を裏地としてなり、該裏地の外面側の接触温冷感(qmax)が0.1W/cm2以下であることを特徴とする前記(1)記載の保温衣料。
(3)さらに中地として、発熱エネルギー指数が5以上の布帛層を用いてなることを特徴とする前記(1)または(2)記載の保温衣料。
(4)布帛の片面に合成樹脂からなる透湿防水皮膜層を積層した、放湿放熱コントロール性能を有する布帛層の透湿防水皮膜層面に、発熱エネルギー指数が5以上あり、かつ裏地面の接触温冷感(qmax)が0.1W/cm2以下の裏地を接着積層したことをことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の保温衣料。
(5)表地を密、裏地を粗にした2重組織織物からなることを特徴とする前記(2)〜(4)のいずれかに記載の保温衣料。
(6)水分子吸着発熱性能を有する布帛層が、繊維表面に吸湿性ポリマーおよび/または吸湿性微粒子を固着させてなることを特徴とする前記(2)〜(5)のいずれかに記載の保温衣料。
(7)吸湿性ポリマーがビニルスルホン酸、下記一般式[I]で表せるビニルモノマー、下記一般式[II]で表されるビニルモノマー、および下記一般式[III]で表されるビニルモノマーの1種もしくは2種以上を主成分としたポリマーであることを特徴とする前記(6)記載の保温衣料。
【0008】
【化4】

(式中、X=HまたはCH3、n=9〜23の整数)
【0009】
【化5】

(式中、X=HまたはCH3、m+n=9〜23の整数)
【0010】
【化6】

(式中、R=HまたはCH3、R1=Cl、Br、I、OCH3、OC25またはSCH3、m=0〜9の整数、l=10〜30の整数)
(8)吸湿性微粒子がシリカ微粒子であることを特徴とする前記(6)記載の保温衣料。
(9)水分子吸着発熱性能を有する布帛が、蓄熱剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載を保温衣料。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の保温衣料は、放湿放熱コントロール性能を有する布帛層に水分子吸着発熱性能を有する布帛層が積層された積層布帛からなる衣料であって、放湿放熱コントロール性能を有する布帛層の透湿度が3,000〜12,000g/m2・24hrの範囲にあり、水分子吸着発熱性能を有す布帛層の発熱エネルギー指数が5以上、接触温冷感(qmax)が0.1W/cm2以下であることを特徴とする保温衣料である。
【0012】本発明の放湿放熱コントロール性能を有する布帛層および水分子吸着性能を有する布帛層に有用な布帛としては、使用目的等に応じて適宜な布帛を用いることができるが、例を挙げると、ポリエステル繊維やポリアミド繊維の如き合成繊維、アセテート繊維の如き半合成繊維、綿や麻や羊毛の如き天然繊維を、単独でまたは2種以上を混合した織物や編物、不織布等が特に限定なく用いられる。
【0013】本発明の放湿放熱コントロール性能とは、気化熱を制御することを目的とする性能である。一方、水分子吸着発熱性能を有する布帛層においては、身体から不感蒸泄等により放出された水分を吸着して発熱するが、同時に布帛層から系外に水分を蒸発し、気化熱を奪うため実際に着用した場合の発熱効果は小さくなる。この気化熱を制御して、小さくすることによりはじめて、着用時に実感できる発熱効果が得られる。
【0014】しかしながら、気化熱を制御してそれを小さくしすぎると、放湿性が小さくなり、着用時の蒸れ感が大きくなり不快なものとなる。気化熱を防ぐと同時に、着用時の蒸れ感をなくすためには、放湿放熱コントロール性能を有する布帛層としては透湿度が、JIS L−1099(A−1法)の測定法で3,000〜12,000g/m2・24hrの範囲にあることが必要である。透湿度がこの範囲より低いと蒸れ感が大きくなり、また、この範囲より大きいと気化熱が大きくなり水分子吸着発熱性能が小さくなり発熱性能が実感できないものとなる。透湿度は、好ましくは4,000〜11,000g/m2・24hrの範囲であり、より好ましくは6,000〜11,000g/m2・24hrの範囲である。
【0015】また、本発明で用いられる水分子吸着発熱性能を有する布帛層を構成する繊維は、吸湿性を有する繊維であり、例えば、繊維便覧−原料編−(発行:丸善(株))の245ページに記載のように、吸湿性を有する繊維は、水分子を吸着して発熱することが古くから知られている。本発明で用いられる水分子吸着発熱性能を有する布帛層は、これらの吸湿性を有する繊維からなる布帛を使用しても良いが、望ましくは、合成繊維に吸湿ポリマー等を分散して練り込むことにより、吸湿性を向上させた繊維、例えば、ナイロンにポリビニルピロリドン等の吸湿ポリマーを錬り込み紡糸して得られた吸湿性向上ナイロン糸等や、後加工等により吸湿性のあるポリマーおよび/または吸湿性のある微粒子を繊維表面に固着させることにより、吸湿性を増加させ水分子吸着発熱性能を向上した布帛が実用上好ましく用いられる。
【0016】さらに望ましくは、合成繊維に吸湿ポリマー等を分散して練り込むことにより、吸湿性を向上させた繊維に、後加工等により吸湿性のあるポリマーおよび/または吸湿性のある微粒子を繊維表面に固着させることにより水分子吸着発熱性能をさらに増加させた布帛を使用することが好ましい。
【0017】吸湿性を増加させると、手または身体に触れたときに冷たく感じ、保温衣料には適さなくなる。本発明は、この現象を防ぐために、水分子吸着発熱性能を有する布帛層の肌と接する面(接触面または外面側の面)の接触温冷感(qmax)を0.1W/cm2以下にする必要がある。
【0018】接触温冷感(qmax)が0.1W/cm2以下の布帛層は、例えば、布帛層の肌と接する接触面、すなわち布帛層の外面側に凹凸を付け、接触面積を小さくした布帛構造にすることにより得られる。また、接触温冷感(qmax)が0.1W/cm2以下の布帛層は、接触面のみに吸湿性の低い繊維を用いた2重組織織物等の多重組織織物でも得られる。例えば、布帛を起毛加工する方法や多重重組織で接触面積を小さくする方法で、接触温冷感(qmax)を0.1W/cm2以下にすることができるが、本発明はこれらに限定されず、いかなる方法でも接触温冷感(qmax)を0.1W/cm2以下にすれば良い。
【0019】接触温冷感(qmax)は好ましくは0.08W/cm2以下であり、より好ましくは0.05W/cm2以下である。
【0020】この接触温冷感は、素材表面の接触面積が小さい(凹凸がある)ほど、また吸湿率が小さい程接触温冷感は小さくなる。例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維100%使いの起毛トリコットの起毛面は0.04W/cm2であり、起毛されていない面は0.10W/cm2である。また、同じポリエチレンテレフタレート繊維100%使いの起毛トリコットを後加工で吸湿率3%にすると、起毛面の接触温冷感は変化せず0.04W/cm2であるのに対し、起毛のない面は0.12W/cm2となる。
【0021】本発明の発熱エネルギー指数とは、ポリエステル繊維100%素材と比較した水分子吸着発熱エネルギーであり、ポリエステル繊維100%素材を1とした場合の比較値である。具体的な測定法は実施例で詳細に示すが、アルコール温度計に3gの試料を巻き付け、30℃、30%RHの環境で調温、調湿させた後、30℃、90%RHの環境へ移動させた場合の吸湿時の温度上昇を経時的に観察し、横軸に時間、縦軸に温度としたグラフに30℃から上昇し再び30℃に復元するまでプロットし、その面積を測定するものである。
【0022】本発明で用いられる水分子吸着発熱性能を有する布帛層は、上述の発熱エネルギー指数が5以上必要である。発熱エネルギー指数が5以下では発熱効果が実感できない。発熱エネルギー指数は好ましくは8以上であり、さらに好ましくは10以上である。
【0023】発熱エネルギー指数を5以上にするためには、例えば、ナイロンにポリビニルピロリドンを5重量%練り込むことにより発熱エネルギー指数が13程度の糸が得られる。また、実施例に示したとおりポリエステル100%素材にアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸とPEG#1000ジメタクリレートの共重合物を3重量%程度付着させることにより発熱エネルギー指数が15程度の布帛が得られる。
【0024】本発明の布帛の片面に合成樹脂からなる透湿防水皮膜層を積層した放湿放熱コントロール性能を有する布帛層としては、布帛の片面にポリウレタンの湿式凝固法による微多孔膜や親水性ポリウレタンの無孔膜および微多孔ポリテトラフルオロエチレン膜を積層した透湿防水加工品を挙げることができる。本発明では、これらの透湿防水加工品の透湿防水皮膜面に、上述した発熱エネルギーが5以上でかつ外側面の接触温冷感(qmax)が0.1W/cm2以下の布帛を接着剤等で接着積層した布帛を用いることにより、水分子吸着発熱性能を有する好適な透湿防水衣料を得ることができる。
【0025】本発明では、また2重組織織物等の多重組織織物を用いることができる。2重組織織物は、2枚の織物を重ね合わせて1枚の織物として織った2重織物である。2重織物にはタテ糸を使って2重にしたもの、ヨコ糸を使って2重にしたもの、タテ糸とヨコ糸の両方で2重にしたものがあり、本発明で用いられる2重組織織物は、どの方法でもかまわないが、表面の織密度が密であり裏面の織密度がが粗であることが好ましい。表面の織密度が密、裏の織密度が粗とは裏組織に比べ表組織のカバーファクターが高いことを意味する。表面の織密度を密にすることにより透湿度を3,000〜12,000g/m2・24hrの範囲にし、放湿放熱コントロール層とすることができる。
【0026】本発明の保温衣料では、上記の織組織が密である表組織面を衣料布帛の表地とし、また、織組織が粗である裏組織面を衣料布帛の裏地として用いることが好ましい。
【0027】また、織組織が粗な裏面側に、水分子吸着発熱性能を付与する方法としては、裏面側に使用する糸条に吸湿性の高い繊維、例えば、前記したナイロンにポリビニルピロリドンを錬り込み紡糸して得られた吸湿性向上ナイロン糸等を織り込んでも良く、また、裏面側のみキスロール方式や泡加工等の後加工で吸湿性ポリマーや吸湿性微粒子を固着させても良いが、簡単に加工する方法としては、密な表面にキスロール方式や泡加工方式で撥水加工を施し、次いでパディング法で水分子吸着発熱性能剤溶液に上述の2重組織織物を浸漬して加工すると、撥水加工を施した密な表面側には水分子吸着性能を有する薬剤はほとんど付着せず、粗な裏面側のみに薬剤が付着し、目的とする性能を得ることができ、かつ表面に撥水性能も付与することができる。
【0028】さらに、裏面側を粗にすることにより、接触温冷感(qmax)を0.1W/cm2以下にすることができる。
【0029】上述の2重組織織物を用いて縫製することにより、水分子吸着発熱性能を有する衣料が得られる。
【0030】また、布帛に水分子吸着発熱性能を付与する後加工としては、好適には、ビニルスルホン酸、上述した一般式[I]、[II]、[III]で表される化合物の1種もしくは2種以上を含有する溶液に重合開始剤を混合した処理液を、パディング法、スプレー法、キスロールコータ、スリットコータなどの処理方法で付与後、乾熱処理、湿熱処理、マイクロ波処理、紫外線処理等によりポリマー化して、繊維表面に固着する方法がある。ビニルスルホン酸はPHが低く、そのまま用いると綿やナイロンは脆化するため、予め中和したビニルスルホン酸ナトリウムを用いる。また、ビニルスルホン酸亜鉛を用いると消臭性能も付与することができる。ビニルスルホン酸としては、例えば、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸が水分子吸着発熱性能の点で好ましい。
【0031】重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤を使用でき、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素などの無機系重合開始剤や、2,2’−アゾビス(2−アミディノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(N、N−ジメチレンイソブチラミディン)ジハイドロクロライド、2−(カルバモイラゾ)イソブチロニトリルなどの有機系重合開始剤が挙げられる。また、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどの水不溶性重合開始剤をアニオン、ノニオン等の界面活性剤で乳化させて用いてもよい。コスト、取り扱いに容易さの点からは、過硫酸アンモニウムが好ましく用いられる。さらに、重合効率を高めるために、重合開始剤としての過酸化物と還元性物質を併用する、いわゆるレドックス開始剤を用いてもよい。この過酸化物としては、例えば、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム、還元性物質としては、例えば、スルホキシル酸ナトリウムとホルマリンとの反応物やハイドロサルファイトなどが挙げられる。 処理液を繊維材料に付与する方法としては、通常用いられる手段が適用可能である。例えば、真空脱水機で処理するなどして付与量を調整することも好ましく行われる。
【0032】また、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維に対しては、製糸や製紡の段階での付与も可能である。例えば、ポリエステルフィラメントの場合、溶融紡糸法でUY(未延伸糸)やPOY(半延伸糸)等を紡糸する際、上記化合物の1種もしくは2種以上と炭素数が25〜33の高級炭化水素と、炭素数が3〜6の多価アルコールと炭素数が14〜18の脂肪酸とのエステル、炭素数が12〜17の脂肪酸とアミノアルコールとの反応により得られる脂肪族アミド、および水溶性シリコーン化合物から成る群から選ばれる少なくとも一種の化合物とポリオキシエチレン系界面活性剤の混合組成物を紡糸油剤とともに付与し、後の延伸工程において乾熱処理されることによって上記化合物が繊維に強固に付着し、耐洗濯性のある水分子吸着発熱性能を付与することができる。
【0033】またアクリル繊維の場合は、湿式紡糸法で紡糸、延伸、水洗された後、上述の一般式[I]、[II]、[III]で表される化合物の1種もしくは2種以上を含む処理液を、好適には0.05〜5.0重量%(o.w.f.)付着させ、乾燥緻密化処理、スチーム処理、乾燥工程を経て、繊維に強固に付着しポリエステルと同様に、耐洗濯性のある水分子吸着発熱性能を付与することができる。
【0034】また、布帛に水分子吸着発熱性能を有する布帛は、吸湿性微粒子として吸湿率の高いシリカ微粒子を用い、これをバインダーで繊維表面に固着することでも得られる。
【0035】本発明の保温衣料は、水分子吸着発熱性能を有する布帛に、蓄熱剤を含有させることにより、より一層保温性を向上させることができる。
【0036】本発明で用いられる蓄熱剤としては、好適には、液相から固相に相変換する時に吸熱し、液相から固相に相変換するときに放熱する、いわゆる潜熱を利用したものとして、パラフィンワックスやポリエチレングリコールをマイクロカプセルに封入したものや、アルミナ、ジルコニア、マグネシア等の無機化合物からなる遠赤外線放射セラミックなどを挙げることができる。中でも、相変換時の潜熱を利用したものは、マイクロカプセルへの封入剤を選ぶこと、また添加物により相変換温度が制御できることから、衣服内温度を一定に制御できる点で好ましく用いられる。
【0037】運動等による、発汗時には水分子吸着発熱性能が大きくなる、すなわち運動により身体が暖かくなっているときに、発熱作用が大きくなることを蓄熱剤が吸熱することにより抑制し、逆に環境温度が低下し、衣服内温度が低下してきたときに蓄熱剤が放熱するため、衣服内温度を一定に制御する快適な保温衣料が得られる。この様な効果を保持させるために、相変換温度(凝固温度)は、5〜35℃とすることが好ましく、さらに好ましくは、10〜25℃である。
【0038】蓄熱剤を布帛に固着する方法としては、上記のマイクロカプセルや無機化合物を単体および/または混合物を、上述のビニルスルホン酸を主体とするポリマーを繊維表面に固着する際に、ビニルスルホン酸溶液に混合する方法や、別のバインダーで固着する方法が挙げられるが、本発明では特に限定されない。
【0039】また、蓄熱剤を放湿放熱コントロール性能を有する布帛に付与することでも、上記の効果が得られが、好ましくは、水分子吸着発熱性能を有する布帛に、蓄熱剤を含有させた方が、より高い保温効果が得られる。
【0040】本発明の保温衣料は、フィッシング、登山衣などのアウトドアスポーツウエア、スキーウエア、ウインドブレーカー、アスレチックウエア、ゴルフウエアなどのスポーツウエア、カジュアルウエア、雨衣などのほか、屋外作業衣などにも用いることができる。
【0041】
【実施例】以下、本発明を実施例で詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(測定方法)
(1)透湿度透湿度の測定は、JIS規格L−1099(A−1)による。
【0042】(2)発熱エネルギー指数幅約3.5cmの試料3gを、アルコール温度計あるいは熱電対の測定部に巻き、摂氏30℃×湿度30%RHの環境下に12時間以上放置後の温度を測定する。次に、摂氏30℃×湿度90%RHの環境まで湿度を約3%/分の速度で変化させ、この間1分ごとに4時間後まで温度を測定する。測定後、上昇温度を積分したものを発熱エネルギー量として求め、次の式によって現す。発熱エネルギー指数=試料の発熱エネルギー量/ポリエステルタフタ(JIS染色堅牢度試験用添付布)の発熱エネルギー量(3)接触温冷感(qmax)
カトーテック(株)製のサーモラボ2型測定器を用い、室温20℃、湿度65%RHの部屋で、BT−Boxを30℃に調節し、十分調湿したサンプルの上にBT−Box(圧力10g/cm2)を乗せ、10℃の温度差での単位面積当たりの熱流束を測定する。
【0043】(4)発熱効果(保温性向上効果)
縫製品を室温5℃、湿度65%RHの部屋で着用し、エルゴメーターで75Wの運動を15分実施した後、縫製品を脱ぎ、裏返し、裏側面の温度を熱赤外線画像で測定するとともに着用感覚を確認した。
【0044】[実施例1]77dtexのナイロンフィラメントヤーンで構成されたナイロンタフタに、フッ素系撥水剤にて撥水処理を行なった。すなわち、撥水剤アサヒガードAG710(明成化学(株)製)を3重量%に含有した水分散液に、上記ナイロンタフタを浸漬し、絞り率40%にピックアップし、ヒートセッターにて130℃×30秒の乾燥熱処理を施した。
【0045】次に、下記処方1に示す組成のポリウレタン溶液を、ナイフオーバーロールコーターを使用してクリアランス200μで塗工し、次いで80℃にて熱風乾燥して、透湿度が4,800g/m2・24hrの無孔質膜透湿性防水加工した表地を得た。
【0046】(処方1)
・ハイムレンY−265(大日精化製、ポリエーテル系ポリウレタン(厚さ12μmの透湿度6,300g/m・24hr))100部・レザミンX−100架橋剤(大日精化製、イソシアネート系架橋剤)1部・MEK 25部・トルエン 25部次に、繊維構造物として、単糸繊維繊度7.2dtex、繊維長64mmである、ポリエチレンテレフタレート繊維100%からなる目付80g/m2のウエッブに、下記組成の処方2の処理液をスプレーで付着率100重量%になるように吹き付けた後、120℃で2分間予備乾燥した。その後、180℃で1分間熱処理し、繊維表面にシリカ粒子を固着させた発熱エネルギー指数22の中入れ綿を得た。
【0047】(処方2)
・シリカ粒子(サイリシア550(富士シリシア化学(株)製) 60g/l・バインダー(シリコーン系樹脂−KT7014(固形分40%)(高松油脂(株)製) 25g/l(ここで使用したシリカ粒子は、平均粒子径が2.7μm、平均比表面積が500m2/gのものである。)
さらに、ポリエステル83dtex−24Fを使用したサテントリコットのカット起毛品を、下記組成の処方3の処理液に浸漬後、ピックアップ率80%に設定したマングルで絞り、乾燥機で120℃、2分乾燥させた。
【0048】
(処方3)
・AMPS(アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸) 20g/l ・PEG#1000ジメタクリレート(商品名P303 共栄社)40g/l ・過硫酸アンモニウム 2g/l乾燥後直ちに、105℃の加熱スチーマーで5分間処理し、湯水洗、乾燥した。 次いで、乾燥機で170℃、1分でセットして発熱エネルギー指数15の裏地を得た。
【0049】上記の表地、中入れ綿、裏地を使用してブルゾンを縫製し評価した。結果を表1に示す。
【0050】[実施例2]実施例1の中入れ綿を使用せず、実施例1で得られた表地と裏地を使用してブルゾンを縫製し評価した。結果を表1に示す。
【0051】[実施例3]実施例1で得られた表地の膜面に、下記組成の処方4に示す接着剤を30メッシュのグラビアロールで塗工し、100℃にて熱風乾燥した後、実施例1で得られた裏地を貼り合わせ、圧着したまま24時間、40℃で熟成して3層構造の透湿防水加工布を得た。
【0052】(処方4)
・ハイムレンY−199(大日精化工業(株)製、2液ポリエーテル系ポリウレタン)100部・コロネートHL(日本ポリウレタン工業(株)製、イソシアネート)8部・アクセルT(大日本インキ化学工業(株)製、架橋促進剤)2部上記の透湿防水加工布を使用してブルゾンを縫製し評価した。結果を表1に示す。
【0053】[実施例4]タテ糸に83dtex−72Fのポリエステル仮ヨリ加工糸、ヨコ糸に表用として83dtex−72Fと裏用として165dtex−96Fのポリエステル仮ヨリ加工糸を用いウオータージェットルーム、2ピックのドビー織機を用い、図1に示すとおりの、表組織は平織組織、裏組織は1/3ツイルのヨコ2重織物を、仕上密度でタテ密度170本/in、ヨコ密度(表)90本/in、(裏)45本/inになるように製織、染色加工した。
【0054】図1において、塗りつぶしたところはタテ糸の浮き部を示す。また、ヨコ糸のAは83dtex−72Fのポリエステル仮ヨリ加工糸であり、Bは165dtex−96Fのポリエステル仮ヨリ加工糸である。
【0055】次いで、実施例1のトリコット起毛裏地の加工と同様に処方3の処理液に浸漬後、ピックアップ率80%に設定したマングルで絞り、乾燥機で120℃、2分乾燥させた。乾燥後直ちに、105℃の加熱スチーマーで5分間処理し、湯水洗、乾燥した。次いで、乾燥機で170℃、1分でセットして表面が密、裏面が粗な2重組織織物を得た。
【0056】上記の2重織物を使用してブルゾンを縫製し評価した。結果を表1に示す。
【0057】別に、上記の表面組織のみの平織物を製織、染色加工して透湿度を確認した結果、11,000g/m2・24hrであった。
【0058】[実施例5]60毛番手のアクリルニトリル紡績糸を用いた丸編地を常法より染色後、上述した一般式[III](l=23、m=0、Rl=OCH3)の化合物96重量%と一般式[II](X=CH3、n=23)の化合物4重量%の混合単量体70重量%とアクルルニトリルモノマー30重量%を全単量体濃度が22重量%になる水溶液に浸積し、ピックアップ率が60%になるように絞った。しかる後、90℃で5分間乾燥した。次いで、160℃で1分間セットした後、起毛加工し、発熱エネルギー指数14のアクリル紡績糸使いの丸編地を得た。次いで、実施例1で得られた表地を用い、上記で得られた丸編地を裏地(起毛面を裏地表面)としてブルゾンを縫製し評価した。結果を表1に示す。
【0059】[実施例6]湿式紡糸法によって紡糸、延伸、水洗されたアクリル繊維に対して、一般式[III](R=CH3、Rl=OCH3、l=23、m=0)の化合物を、0.2重量% 繊維に付着させ、乾燥緻密化処理(120℃・1分間)、スチーム処理(100℃・1分)、乾燥工程(120℃・1分)を経て、2.2dtexのアクリルステープルとし、次いで、通常の方法で紡績し、60毛番手のアクリル紡績糸を得た。この紡績糸を用い、丸編地を編成し、通常の方法で染色、起毛仕上し、発熱エネルギー指数が15の丸編地を得た。次いで、実施例1で得られた表地を用い、上記で得られた丸編地を裏地(起毛面を裏地表面)としてブルゾンを縫製し、評価した、結果を表1に示す。
【0060】[実施例7]実施例1において、中入れ綿作製時の処方2を、凝固温度が25℃、潜熱量が35cal/gのパラフィンワックスをエチレン・コビニール・アセテートを壁膜とする平均粒径50μmのマイクロカプセルに封入した相変換蓄熱材を混合した下記組成の処方5に変えたこと以外は、実施例1と同様にしてブルゾンを縫製して評価した。結果を表1に示す。
【0061】なお、本実施例7で得られた仲入れ綿の発熱エネルギー指数は、相変換マイクロカプセルを用いない実施例1の中入れ綿と同様の22であった。これは、発熱エネルギー指数は、30℃に12時間以上放置した後、測定するため、すでに相変換され蓄熱された状態にあるためである。
【0062】(処方5)
・シリカ粒子(サイシリア550(富士シリシア化学(株)製) 60g/l・蓄熱剤マイクロカプセル(凝固温度25℃のパラフィンワックス封入)150g/l・バインダー(シリコーン系樹脂−KT7410(固形分40%)(高松油脂(株)製) 25g/l(ここで使用したシリカ粒子は、平均粒子径が2.7μm、平均比表面積が500m2/gのものである。)
[比較例1]実施例1で得られた表地と、実施例1の中入れ綿の加工に際しシリカ粒子を除いて実施例1と同様に加工した中入れ綿と、タテ糸83dtex、ヨコ糸116dtexのキュプラ使いタフタ裏地(接触温冷感0.15W/cm2)を使用しブルゾンを縫製し評価した。結果を表1に示す。
【0063】[比較例2]実施例1で得られた表地と、比較例1で使用したキュプラ使いタフタ裏地(接触温冷感0.15W/cm2)を使用しブルゾンを縫製し評価した。結果を表1に示す。
【0064】[比較例3]実施例1で得られた表地を使用し、実施例3と同様の方法で実施例1の加工をしない起毛トリコット裏地(発熱エネルギー指数1)を接着した3層の透湿防水加工品を得た。上記の透湿防水加工品を使用しブルゾンを縫製し評価した。結果を表1に示す。
【0065】[比較例4]実施例4の処方3の加工のないヨコ2重組織織物を用いブルゾンを縫製し評価した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【発明の効果】本発明によれば、放湿放熱コントロール性能を有する布帛層に水分子吸着発熱性能を有する布帛を積層することにより、また肌との接触面の接触温冷感を低下させた本発明の衣料により、水分子吸着性能を発揮する保温効果の高い衣料が得られる。
【0068】すなわち、水分子吸着発熱性能を有する布帛は、身体から発生する水分を吸着し発熱するのと同時に衣服外へ水分を放出する気化熱を奪われるため、実質の発熱量は低くなる。本発明の、水分子吸着発熱布帛に放湿放熱コントロール性能を有する布帛層を積層することにより、気化熱を制御するため実質の発熱量が大きくなる。さらに接触冷感を低く抑えているため、保温性の高い衣料が得られるのである。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成13年9月27日(2001.9.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−180308(P2002−180308A)
【公開日】 平成14年6月26日(2002.6.26)
【出願番号】 特願2001−297437(P2001−297437)