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【発明の名称】 膝用サポーター
【発明者】 【氏名】入谷 誠

【氏名】山内 康司

【氏名】水本 博久

【氏名】古川 浩史

【要約】 【課題】登山やトレッキングまたはウォーキング等において、昇降時の膝関節部位およびその周囲の障害を予防し、これらの部分を保護する。

【解決手段】着用者の膝蓋部に対応する位置に切欠き1aからなる開口を有し、前面側に止着部11,12を有する展開可能なサポーター本体1と、偏平な概略V字状に延設された伸縮自在なストラップ部材2とを設ける。そして、ストラップ部材2の屈曲部に、面ファスナからなる第1の止着部20を取り付けるとともに、各帯状部2aの各端部に、面ファスナからなる第2の止着部21を取り付ける。第1の止着部20は、サポーター本体1の前面側および後面側の下腿部対応個所に着脱自在に設けられ、第2の止着部21は、サポーター本体1の前面側の大腿部対応個所に着脱自在に設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 膝用サポーターであって、着用者の膝蓋部に対応する位置に開口を有するとともに、前面側に止着部を有する展開可能なサポーター本体と、偏平な概略V字状に延設されるとともに、その屈曲部および各端部にそれぞれ第1および第2の止着部を有し、前記第1の止着部が前記サポーター本体の前面側および後面側の下腿部対応個所に着脱自在に設けられ、前記第2の止着部が前記サポーター本体の前面側の大腿部対応個所に着脱自在に設けられた伸縮自在なストラップ部材と、を備えた膝用サポーター。
【請求項2】 請求項1において、前記膝用サポーターが上り歩行に使用される際には、前記止着部により筒状にされた前記サポーター本体の前面側の下腿部対応個所に前記ストラップ部材の前記屈曲部における前記第1の止着部が止着されるとともに、前記ストラップ部材に張力が与えられつつ該ストラップ部材が前記サポーター本体の後面側で交差され、前記ストラップ部材の前記各端部における前記第2の止着部が前記サポーター本体の前面側の大腿部対応個所に止着されるようになっている、ことを特徴とする膝用サポーター。
【請求項3】 請求項1において、前記膝用サポーターが下り歩行に使用される際には、前記止着部により筒状にされた前記サポーター本体の後面側の下腿部対応個所に前記ストラップ部材の前記屈曲部における前記第1の止着部が止着されるとともに、前記ストラップ部材に張力が与えられた状態で、前記ストラップ部材の前記各端部における前記第2の止着部が前記サポーター本体の前面側の大腿部対応個所に止着されるようになっている、ことを特徴とする膝用サポーター。
【請求項4】 膝用サポーターであって、着用者の膝蓋部に対応する位置に開口を有するとともに、前面側に止着部を有する展開可能なサポーター本体と、偏平な概略X字状に延設され、その交差部に第1の止着部を有するとともに、前記第1の止着部の上方に延びる一対の帯状部の各端部に第2の止着部を有し、前記第1の止着部の下方に延びる一対の帯状部の各端部に第3の止着部を有し、前記第1の止着部が前記サポーター本体の後面側の膝窩部対応個所に固着されまたは着脱自在に設けられ、前記第2の止着部が前記サポーター本体の前面側の大腿部対応個所に着脱自在に設けられ、前記第3の止着部が前記サポーター本体の前面側の下腿部対応個所に着脱自在に設けられた伸縮自在なストラップ部材と、を備えた膝用サポーター。
【請求項5】 請求項1ないし4において、前記各止着部が面ファスナにより構成されている、ことを特徴とする膝用サポーター。
【請求項6】 請求項1ないし5において、前記サポーター本体の大腿部から下腿部にかけての内側面対応個所または外側面対応個所には、上下方向に延びるスプリングステーが設けられている、ことを特徴とする膝用サポーター。
【請求項7】 請求項1ないし6において、前記サポーター本体が、多孔質のラバーシートから構成されている、ことを特徴とする膝用サポーター。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、登山やトレッキングまたはウォーキング等において昇降時の膝関節部位およびその周囲の障害を予防でき、これらの部分を保護することができる膝用サポーターに関する。
【0002】
【従来の技術およびその課題】一般に、膝用サポーターには、筒状すなわちスリーブ状のサポーター本体から構成されるスリーブ型(またはクローズド型)のものと、展開可能なサポーター本体から構成されるオープン型のものとがある。
【0003】スリーブ型のものは、サポーター本体の周長が一定であるが、実際には、着用者によって膝関節部位の周径に個人差があり、このため、スリーブ型のものでは、膝関節部位に対する圧迫力の調整が容易ではない。また着脱の際に、サポーター本体を膝関節部位まで引き上げたり、あるいは膝関節部位から引き下げたりする必要があるため、着脱が容易ではない。
【0004】これに対して、オープン型のものでは、膝関節部位に対する巻き付け方を変えることによってある程度の圧迫力の調整が可能であり、また衣服の上からでも着脱が容易であるという利点を有するが、サポーター本体の前面側係止部分でずれ易いという欠点があり、このため、通常、ストラップと組み合わせて使用される。
【0005】オープン型の膝用サポーターして、たとえば特開平10−286275号公報に示すものでは、内反膝や外反膝を矯正することを目的としており、したがって、サポーター本体と組み合わされたストラップの張力による力が膝関節の側方に作用するようになっている。また、オープン型の膝用サポーターとして、その他に種々のものが提案されているが、そのいずれも、本発明が目的とするような、登山やウォーキング等における昇降時の膝関節部位およびその周囲を保護しようとするものではない。
【0006】本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、登山やトレッキングまたはウォーキング等において昇降時の膝関節部位およびその周囲の障害を予防でき、これらの部分を保護できる膝用サポーターを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】ここで、登山の際の脚の筋肉および骨格の動きを運動学的に分析してみると、登りの際には、主に大腿四頭筋が作用しており、このため、登りが長時間続く場合には、大腿四頭筋が繰り返し作用する結果、同筋が疲労することになる。また、大腿四頭筋は膝関節を伸展する際に作用しており、この筋の収縮により、下腿部が前方に引き出されるようになっている。一方、下りの際には、大腿四頭筋の働きに加えてハムストリングス(大腿部の裏側の筋肉群)が作用しており、このため、下りが長時間続く場合には、ハムストリングスが繰り返し作用する結果、同筋が疲労することになる。また、ハムストリングスは膝関節を屈曲する際に作用しており、この筋の収縮により、下腿部が後方に引っ張られるようになっている。
【0008】登山時における大腿四頭筋やハムストリングスの疲労は、とくに下りの際に山側の脚が体重を支えることを困難にし、その結果、膝関節部位およびその周囲を傷める原因になる。
【0009】本発明は、このような分析結果に基づいてなされたものであって、請求項1の発明に係る膝用サポーターは、着用者の膝蓋部に対応する位置に開口を有し、前面側に止着部を有する展開可能なサポーター本体と、偏平な概略V字状に延設されるとともに、その屈曲部および各端部にそれぞれ第1および第2の止着部を有し、前記第1の止着部が前記サポーター本体の前面側および後面側の下腿部対応個所に着脱自在に設けられ、前記第2の止着部が前記サポーター本体の前面側の大腿部対応個所に着脱自在に設けられた伸縮自在なストラップ部材とを備えている。
【0010】請求項2の発明に係る膝用サポーターは、請求項1において、前記膝用サポーターが上り歩行に使用される際には、前記止着部により筒状にされた前記サポーター本体の前面側の下腿部対応個所に前記ストラップ部材の前記屈曲部における前記第1の止着部が止着されるとともに、前記ストラップ部材に張力が与えられつつ該ストラップ部材が前記サポーター本体の後面側で交差され、前記ストラップ部材の前記各端部における前記第2の止着部が前記サポーター本体の前面側の大腿部対応個所に止着されるようになっていることを特徴としている。
【0011】請求項3の発明に係る膝用サポーターは、請求項1において、前記膝用サポーターが下り歩行に使用される際には、前記止着部により筒状にされた前記サポーター本体の後面側の下腿部対応個所に前記ストラップ部材の前記屈曲部における前記第1の止着部が止着されるとともに、前記ストラップ部材に張力が与えられた状態で、前記ストラップ部材の前記各端部における前記第2の止着部が前記サポーター本体の前面側の大腿部対応個所に止着されるようになっていることを特徴としている。
【0012】請求項4の発明に係る膝用サポーターは、着用者の膝蓋部に対応する位置に開口を有し、前面側に止着部を有する展開可能なサポーター本体と、偏平な概略X字状に配設され、その交差部に第1の止着部を有するとともに、前記第1の止着部の上方に延びる一対の帯状部の各端部に第2の止着部を有し、前記第1の止着部の下方に延びる一対の帯状部の各端部に第3の止着部を有する伸縮自在なストラップ部材とを備えている。そして、前記ストラップ部材の前記第1の止着部が前記サポーター本体の後面側の膝窩部対応個所に固着されまたは着脱自在に設けられるとともに、前記第2の止着部が前記サポーター本体の前面側の大腿部対応個所に着脱自在に設けられ、前記第3の止着部が前記サポーター本体の前面側の下腿部対応個所に着脱自在に設けられている。
【0013】請求項5の発明に係る膝用サポーターは、請求項1ないし4において、前記各止着部が面ファスナにより構成されていることを特徴としている。
【0014】請求項6の発明に係る膝用サポーターは、請求項1ないし5において、上下方向に延びるスプリングステーが、前記サポーター本体の大腿部から下腿部にかけての内側面対応個所または外側面対応個所に設けられていることを特徴としている。
【0015】請求項7の発明に係る膝用サポーターは、請求項1ないし6において、前記サポーター本体が、多孔質のラバーシートから構成されていることを特徴としている。
【0016】請求項1および2の発明においては、当該サポーターを上り歩行に用いる際には、サポーター本体を着用者の膝関節部位の周囲に巻き付けて、止着部によりサポーター本体を筒状に保持する。次に、V字状ストラップ部材の屈曲部における第1の止着部をサポーター本体の前面側の下腿部対応個所に止着する。この状態からストラップ部材に張力を与えつつ、ストラップ部材を後面側で交差させるとともに、ストラップ部材の各端部における第2の止着部をサポーター本体の前面側の大腿部対応個所に止着する。
【0017】ところで、膝関節が屈曲する際には、その回転中心位置が後方に移動することが知られており、これを図6を用いて説明する。膝関節が伸展位でロッキングした図(a)に示す状態から膝関節が屈曲を始めると、図(b)に示すように、下腿骨K′が大腿骨D′の大腿骨頭D′hに対して後方(図右方)にグライディング(滑動)して、膝関節の回転中心が点C1 から後方の点C2 に移行する。次に、膝関節の屈曲度合いが増すにつれて、図(c)〜図(d)に示すように、下腿骨K′が大腿骨頭D′hの回りをローリング(回転)して、膝関節の回転中心が点C2 から後方の点C3 を経てさらに後方の点C4 に移動する。
【0018】したがって、請求項1および2の発明に示すような締め付け方でストラップ部材を膝関節部位の周囲に締め付けると、図7および図8に示すように、ストラップ部材の張力によりサポーター着用者の下腿部Kが大腿部Dに向かって矢印a方向に引っ張られて、膝関節の屈曲角度が増加し、その結果、膝関節の回転中心が点Cから後方側の点C′に移行する。これにより、大腿四頭筋Aによる筋力の作用線までの距離がdからd′(>d)と増加して(図9参照)、大腿四頭筋の作用効率が高まり、大腿四頭筋の疲労を軽減できる。このようにして、登山やウォーキング等の上り時において膝関節部位およびその周囲の障害を予防できる。
【0019】請求項1および3の発明においては、当該サポーターを下り歩行に用いる際には、サポーター本体を着用者の膝関節部位の周囲に巻き付けて、止着部によりサポーター本体を筒状に保持する。次に、V字状ストラップ部材の屈曲部における第1の止着部をサポーター本体の後面側の下腿部対応個所に止着するとともに、ストラップ部材に張力を与えた状態で、ストラップ部材の各端部における第2の止着部をサポーター本体の前面側の大腿部対応個所に止着する。
【0020】この場合には、ストラップ部材の張力によって、図10および図11に示すように、サポーター着用者の下腿部Kが大腿部Dに向かって矢印b方向に引き出されて、膝関節の屈曲角度が低下し(つまり伸展角度が増加し)、その結果、膝関節の回転中心が点C′から前方側の点Cに移行する。これにより、ハムストリングスBによる筋力の作用線までの距離がe′からe(>e′)と増加して(図12参照)、ハムストリングスの作用効率が高まり、ハムストリングスの疲労を軽減できる。このようにして、登山やウォーキング等の下り時において膝関節部位およびその周囲の障害を予防できる。
【0021】請求項4の発明においては、サポーターの使用時には、サポーター本体を着用者の膝関節部位の周囲に巻き付けて、止着部によりサポーター本体を筒状に保持する。次に、サポーター本体の後面側の膝窩部対応個所に第1の止着部を介してX字状ストラップ部材が取り付けられた状態から、下り歩行の際には、第2の止着部の側の各帯状部に大きな張力を作用させつつ第2の止着部をサポーター本体の前面側の大腿部対応個所に止着するとともに、第3の止着部の側の各帯状部には小さな張力を作用させつつ第3の止着部をサポーター本体の前面側の下腿部対応個所に止着する。
【0022】また上り歩行の際には、第3の止着部の側の各帯状部に大きな張力を作用させつつ第3の止着部をサポーター本体の前面側の下腿部対応個所に止着するとともに、第2の止着部の側の各帯状部に小さな張力を作用させつつ第2の止着部をサポーター本体の前面側の大腿部対応個所に止着する。
【0023】前者の場合には、第2の止着部の側の各帯状部に作用する張力によって、請求項1および3の発明と同様に、サポーター着用者の下腿部を前方に引き出すように力が作用して、ハムストリングスの作用効率が高まり、これにより、登山やウォーキング等の下り時において膝関節部位およびその周囲の障害を予防できる。
【0024】また、後者の場合には、第3の止着部の側の各帯状部に作用する張力によって、請求項1および2の発明と同様に、サポーター着用者の下腿部を後方に引っ張るように力が作用して、大腿四頭筋の作用効率が高まり、これにより、登山やウォーキング等の上り時において膝関節部位およびその周囲の障害を予防できる。また、上り歩行および下り歩行のいずれの場合においても、第2および第3の止着部側の各帯状部を締め付けることにより、膝関節部位の周囲をサポートして、膝関節部位の左右へのぶれを防止できる。
【0025】このように請求項4の発明では、サポーター本体に取り付けられたX字状ストラップ部材の各帯状部の各端部をそれぞれ所定の位置に止着することによって、ストラップ部材を付け替えることなく、上り歩行および下り歩行の双方の歩行に適用可能である。
【0026】前記各止着部は、請求項5の発明に記載されているように、好ましくは、面ファスナにより構成されている。これにより、サポーター本体およびストラップ部材の着脱が容易に行えるようになる。
【0027】請求項6の発明に記載されているように、前記サポーター本体の大腿部から下腿部にかけての内側面対応個所または外側面対応個所には、上下方向に延びるスプリングステーが設けられていてもよい。この場合には、スプリングステーの作用によって、歩行時の支持性能を向上できる。
【0028】前記サポーター本体は、請求項7の発明に記載されているように、好ましくは、多孔質のラバーシートから構成されている。この場合には、サポーター本体として、伸縮性のみならず、通気性をも確保できる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施態様を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施態様による膝用サポーターを構成するサポーター本体の展開状態における表面側の正面図、図2は図1のサポーター本体とともに用いられるストラップ部材の正面図、図3は図1のサポーター本体とともに用いられるスプリングステーの拡大図である。
【0030】本実施態様による膝用サポーターは、オープン型のサポーターであって、着用者の膝関節部位の周囲に巻き付けられるサポーター本体1(図1)と、これに着脱自在に装着されるストラップ部材2(図2)とから主として構成されている。
【0031】サポーター本体1は、心材として、たとえばポリクロロプレンラバー製のラバーシートを有しており、該ラバーシートには、その全面にわたって多数の孔が形成されている。これにより、サポーター本体1の伸縮性を確保しつつ、通気性が得られて、着用時の蒸れが抑制されるようになっている。ラバーシートの裏面には、たとえばナイロン製シートが装着されており、ラバーシートの表面には、面ファスナが着脱自在に止着し得るシートが装着されている。
【0032】図1に展開状態で示されるように、概略矩形状のサポーター本体1は、その両側縁部にそれぞれ切欠き1aを有している。これらの切欠き1aは、サポーター本体1を着用者の膝関節部位の周囲に巻き付けたときに開口を形成するようになっており、該開口内に着用者の膝蓋部が配置される。したがって、サポーター本体1において、切欠き1aより上側の部分は着用者の大腿部に巻き付けられ、下側の部分は着用者の下腿部に巻き付けられる。サポーター本体1の裏面には、切欠き1aに沿って、軟質素材からなるパッド10が取り付けられている。パッド10は、緩衝材として作用するとともに、サポーター着用時に着用者の膝蓋部の左右に配置されて、膝蓋骨の左右方向の動きを抑制し得るようになっている。
【0033】サポーター本体1の裏面において、切欠き1aの上側および外側の各側縁部には、面ファスナからなる止着部11,12がそれぞれ取り付けられている。各止着部11,12は、それぞれ対応する逆側の側縁部に着脱自在に止着するようになっている。また、サポーター本体1の切欠き1aより下側の部分において中央部13は立体裁断されており、これにより、サポーターの着用時には、着用者のふくらはぎの立体形状に沿ってサポーター本体1が密着するようになっている。
【0034】サポーター本体1の表面には、所定間隔を隔てて上下方向に延びる一対のポケット部14,15が設けられている。これらのポケット部14,15は、図3に示すようなスプリングステー(またはスパイラルボーン)3を挿入するためのものであって、各ポケット部14,15の中央には、スプリングステー3を入れるための開孔14a,15aが形成されている。
【0035】スプリングステー3は、直線状に延びる金属製の部材であって、図3中の矢印方向のみならず、紙面と垂直な方向にも屈曲し得るようになっている。また、サポーター着用時には、スプリングステー3は、着用者の脚の大腿部から下腿部にかけての膝蓋部内側面または外側面に沿った位置に配置されるようになっており、このスプリングステー3の作用によって、歩行時の支持性能が向上するようになっている。なお、スプリングステー3を入れるための開孔14a,15aを各ポケット部14,15の中央に形成したことにより、歩行中に膝の屈伸が繰り返された場合でも、スプリングステー3がポケット部14,15から外側に飛び出すのが防止されている。
【0036】図2に示すように、ストラップ部材2は、偏平な概略V字状に延設されており、その屈曲部には、面ファスナからなる第1の止着部20が設けられている。屈曲部から左右両側方に延びる帯状部2a,2bの各端部には、面ファスナからなる第2の止着部21が設けられている。またストラップ部材2は、好ましくは、サポーター本体1と同様のラバーシートから構成されており、該ラバーシートの表面には、面ファスナが着脱自在に止着し得るシートが装着されている。
【0037】次に、本実施態様による膝用サポーターの装着方法およびその作用効果について説明する。まず、サポーターを登山やトレッキングまたはウォーキング時の上り歩行に用いる際には、サポーター本体1の裏面の中央部を着用者の膝窩部(膝の裏側部位)にあてがい、この状態から、サポーター本体1を前側に引っ張りつつ膝関節部位の周囲に巻き付けて、大腿部および下腿部前面においてそれぞれ面ファスナ11,12によりサポーター本体1を筒状に保持する。このとき、切欠き1aにより構成される開口内に、着用者の膝蓋部が配置されている(図4参照)。
【0038】次に、ストラップ部材2の第1の止着部20をサポーター本体1の前面の下側部分(下腿部対応個所)に止着する(図4参照)。この第1の止着部20を止着する位置は、膝蓋骨下縁から3cm程下方の位置が好ましい。この状態から、ストラップ部材2に張力を与えつつ、ストラップ部材2を後面側で交差させるとともに、ストラップ部材2の各端部の第2の止着部21をサポーター本体1の前面の上側部分(大腿部対応個所)に止着する(図4参照)。
【0039】この場合には、ストラップ部材2の張力により、図7および図8に示すように、サポーター着用者の下腿部Kが大腿部Dに向かって矢印a方向に引っ張られて、膝関節の屈曲角度が増加し、その結果、膝関節の回転中心が点Cから後方側の点C′に移行する。これにより、大腿四頭筋Aによる筋力の作用線までの距離がdからd′(>d)に増加する(図9参照)。
【0040】ここで、大腿四頭筋Aの筋力により下腿骨K′に作用する回転モーメントTを求めると、図7の場合には T=P×d(P:大腿四頭筋の筋力) … (1)
となり、図8の場合には T=P′×d′(P′:大腿四頭筋の筋力) … (2)
となる。
【0041】したがって、同じ大きさの回転モーメントTが作用する場合には、式(1)および(2)からP×d=P′×d′となり、ここで、d′>dであることよりP′<Pとなる。
【0042】したがって、膝関節が屈曲している方が、同じ大きさの回転モーメントを発生させるのに大腿四頭筋の筋力が小さくてすむことが分かる。これにより、大腿四頭筋の作用効率を高めることができ、その結果、大腿四頭筋の疲労を軽減できる。このようにして、登山やウォーキング等の上り時において膝関節部位およびその周囲の障害を予防できる。
【0043】次に、このサポーターを登山やトレッキングまたはウォーキング時の下り歩行に用いる際には、上述の装着方法と同様にして、サポーター本体1を着用者の膝関節部位の周囲に巻き付けて固定した状態から、ストラップ部材2の第1の止着部20をサポーター本体1の後面の下側部分(下腿部対応個所)に止着する(図5参照)。この状態から、ストラップ部材2に張力を与えた状態で、ストラップ部材2の各端部の第2の止着部21をサポーター本体1の前面の上側部分(大腿部対応個所)に止着する(図5参照)。
【0044】この場合には、ストラップ部材2の張力により、図10および図11に示すように、サポーター着用者の下腿部Kが大腿部Dに向かって矢印b方向に引き出されて、膝関節の屈曲角度が低下し(つまり伸展角度が増加し)、その結果、膝関節の回転中心が点C′から前方側の点Cに移行する。これにより、ハムストリングスBによる筋力の作用線までの距離がe′からe(>e′)に増加する(図12参照)。
【0045】ここで、ハムストリングスBの筋力により下腿骨K′に作用する回転モーメントMを求めると、図10の場合には M=Q′×e′(Q′:ハムストリングスの筋力) … (3)
となり、図11の場合には M=Q×e(Q:ハムストリングスの筋力) … (4)
となる。
【0046】したがって、同じ大きさの回転モーメントMが作用する場合には、式(3)および(4)からQ′×e′=Q×eとなり、ここで、e>e′であることよりQ<Q′となる。
【0047】したがって、膝関節が伸展している方が、同じ大きさの回転モーメントを発生させるのにハムストリングスの筋力が小さくてすむことが分かる。これにより、ハムストリングスの作用効率を高めることができ、その結果、ハムストリングスの疲労を軽減できる。このようにして、登山やウォーキング等の下り時において膝関節部位およびその周囲の障害を予防できる。
【0048】〔他の実施態様〕前記実施態様では、V字状ストラップ部材を用い、該ストラップ部材の第1および第2の止着部の各止着位置を適宜変えることによって、上り歩行および下り歩行の双方に対応させた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
【0049】図13は、本発明の他の実施態様によるストラップ部材を示している。このストラップ部材4は、偏平な概略X字状に延設されており、その交差部には、面ファスナからなる第1の止着部40が設けられている。第1の止着部40から上方に延びる各帯状部4aの各端部には、面ファスナからなる第2の止着部41が設けられ、第1の止着部40から下方に延びる各帯状部4bの各端部には、同様に面ファスナからなる第3の止着部42が設けられている。またストラップ部材4は、好ましくは、サポーター本体1と同様のラバーシートから構成されており、該ラバーシートの表面には、面ファスナが着脱自在に止着し得るシートが装着されている。
【0050】X字状ストラップ部材4とともにサポーターを使用する際には、まず、前記実施態様と同様にして、サポーター本体1を着用者の膝関節部位の周囲に巻き付けて固定した状態から、ストラップ部材4の第1の止着部40をサポーター本体1の後面側の膝窩部対応個所に止着する(図14参照)。
【0051】この状態から、サポーターを下り歩行に用いる際には、ストラップ部材4の各帯状部4aを強く引っ張った状態で、第2の止着部41をサポーター本体1の前面の上側部分(大腿部対応個所)に止着するとともに、ストラップ部材4の各帯状部4bを軽く引っ張った状態で、第3の止着部42をサポーター本体1の前面の下側部分(下腿部対応個所)に止着する。
【0052】この場合には、第2の止着部41の側の各帯状部4aに作用する張力によって、着用者の下腿部Kを前方に引き出すように力が作用する結果、前記実施態様の図10ないし図12の場合と同様にして、ハムストリングスの作用効率が高まり、これにより、登山やウォーキング等の下り時において膝関節部位およびその周囲の障害を予防できる。
【0053】また、サポーターを上り歩行に用いる際には、ストラップ部材4の各帯状部4bを強く引っ張った状態で、第3の止着部42をサポーター本体1の前面の下側部分(下腿部対応個所)に止着するとともに、ストラップ部材4の各帯状部4aを軽く引っ張った状態で、第2の止着部41をサポーター本体1の前面の上側部分(大腿部対応個所)に止着する。
【0054】この場合には、第3の止着部42の側の各帯状部4bに作用する張力によって、着用者の下腿部Kを後方に引っ張るように力が作用する結果、前記実施態様の図7ないし図9の場合と同様にして、大腿四頭筋の作用効率が高まり、これにより、登山やウォーキング等の上り時において膝関節部位およびその周囲の障害を予防できる。
【0055】このように他の実施態様では、サポーター本体1に取り付けられたX字状ストラップ部材4の各帯状部4a,4bの各端部をそれぞれ所定の位置に止着することによって、前記実施態様のようにストラップ部材を付け替えることなく、上り歩行および下り歩行の双方の歩行に適用可能である。また、サポーター装着時には、各帯状部4a,4bにより、膝関節部位がサポートされるので、膝関節部位の左右方向へのぶれを防止できる。
【0056】なお、X字状ストラップ部材4の交差部は、サポーター本体1の表面側の中央部に縫合されていてもよい。この場合には、サポーター本体とは別にストラップ部材を携帯する必要がなくなり、またストラップ部材のサポーター本体への装着も容易になる。
【0057】
【発明の効果】以上のように、本発明に係る膝用サポーターによれば、登山やトレッキングまたはウォーキング等において、上り歩行時には、ストラップ部材の張力により着用者の下腿部を後方に引っ張るように力が作用し、また下り歩行時には、ストラップ部材の張力により着用者の下腿部を前方に引き出すように力が作用する。これにより、大腿四頭筋またはハムストリングスの疲労を軽減できるようになり、その結果、昇降時の膝関節部位およびその周囲の障害を予防でき、これらの部分を保護できる効果がある。
【出願人】 【識別番号】500431759
【氏名又は名称】有限会社足と歩きの研究所
【識別番号】597054596
【氏名又は名称】有限会社アクト
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
【出願日】 平成12年9月14日(2000.9.14)
【代理人】 【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
【公開番号】 特開2002−88534(P2002−88534A)
【公開日】 平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願番号】 特願2000−279244(P2000−279244)