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【発明の名称】 手袋およびその製造方法
【発明者】 【氏名】白水 利通

【要約】 【課題】優れたグリップ力を有し、乾いた状態と濡れた状態とが共存する環境において使用される場合であっても十分な把持性を発揮することのできる、作業性および安全性に富んだ手袋と、その製造方法とを提供する。

【解決手段】本発明の手袋は、手袋本体10と、手袋本体10の表面に設けられた滑り止め層12とを備えたものであって、前記滑り止め層12は、あらかじめ埋め込まれた溶解性微粒子を溶解、抽出することによって形成された多数の微小凹部14を有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】手袋本体と、当該手袋本体の表面に設けられた滑り止め層とを備え、前記滑り止め層の表面に多数の微小凹部が形成されている手袋。
【請求項2】前記微小凹部の幅が100〜800μmである請求項1記載の手袋。
【請求項3】前記微小凹部の深さが10〜100μmである請求項1または2記載の手袋。
【請求項4】前記滑り止め層の表面における単位面積辺りの微小凹部の数が100〜500個/cm2 である請求項1〜3のいずれかに記載の手袋。
【請求項5】前記微小凹部が、前記滑り止め層中に埋め込まれた溶解性微粒子を溶解、抽出して形成されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の手袋。
【請求項6】手袋本体の表面に滑り止め層用の皮膜を形成し、当該皮膜が乾燥、硬化しないうちにその表面に溶解性微粒子を埋め込んだ後、前記皮膜を加硫、乾燥させ、次いで、前記溶解性微粒子を溶解、抽出することを特徴とする、請求項1記載の手袋の製造方法。
【請求項7】前記溶解性微粒子が、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項6記載の手袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、滑り止め加工が施され、特に乾いた状態と濡れた状態とが共存する環境での使用に好適な、グリップ力の優れた手袋と、その製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】ゴム製の手袋には、例えば綿等からなる手袋体を裏地として有するいわゆるサポート型のものと、前記裏地を有しないいわゆるノンサポート型のものとが知られている。このうち、サポート型の手袋は、例えば、前記手袋体(裏地)を型に被せてゴムラテックスや樹脂エマルジョン等の表面素材溶液に浸したり、あるいは手袋体を被せた型に前記表面素材溶液をシャワー方式で滴下することによって作製されるものであって、ノンサポート型の手袋に比べて強度が強いことから、特に土木、建築、漁業等の、重・軽作業用手袋として好適に用いられる。
【0003】一方、ノンサポート型の手袋は、前記手袋体(裏地)を有しないことから、一般にサポート型の手袋に比べて強度が劣るものの、ゴム本来の特性である優れた伸び、柔軟性等が維持されるという利点を有する。また、かかるノンサポート型の手袋についても、そのゴム膜の厚みを大きくすることにより、軽作業用手袋として好適に用いることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】かかる作業用の手袋においてグリップ力(手袋表面の摩擦係数)は重要な因子であって、手袋の作業性の優劣に大きな影響を及ぼすものである。グリップ力が大きいほど、作業時に手に係る負担が軽くなり、使用時の安全性も高くなる。そこで、グリップ力を高めるための種々の検討がなされており、手袋体の表面に、ポリ塩化ビニル(PVC)、ウレタン樹脂等の合成樹脂や、天然ゴム、合成ゴムからなる多数の突起を設けた手袋(登録実用新案第3056042号公報)、手袋体の表面に軟質合成樹脂からなる多数の凸部を設けた手袋(登録実用新案第3012349号公報)、編織布からなる手袋表面に発泡剤入り塩化ビニル樹脂ペーストを塗布した手袋(特開平5−51804号公報)が提案されている。
【0005】しかしながら、上記公報に記載の手袋のように、手袋体(裏地)の表面に、単に上記素材からなる突起を設けただけであったり、あるいは単にゴムや樹脂からなる皮膜を設けただけでは、優れたグリップ力を有する手袋を得ることができなかった。とりわけ、乾いたものと濡れたものとの両方を取り扱うような場合においては、グリップ力が不十分となって、濡れたものに対する把持性が著しく低下し、いわゆる滑りが生じてしまうという問題が顕著であった。
【0006】また、グリップ力を高めた手袋として、手袋体の表面に、炭酸カルシウムまたはタルク粒子を配合した熱可塑性ポリウレタン樹脂を成膜して、表面に微細な突起を多数設けた手袋(特開平11−140715号公報)が提案されているが、かかる手袋は、繰り返し使用すると前記突起が手袋体から脱離してしまい、グリップ力が著しく低下するという問題がある。また、手袋体の掌側表面に貫通孔を設けることによって当該表面の表面粗さを大きくし、摩擦係数を高めることでグリップ力を増大させることが考えられるが、この場合、ウェット時に手袋体の内部に水が浸入するおそれがあり、使用感の著しい低下を招くという問題がある。
【0007】そこで、本発明の目的は、優れたグリップ力を有し、乾いた状態と濡れた状態とが共存する環境において使用される場合であっても十分な把持性を発揮することのできる、作業性および安全性に富んだ手袋と、その製造方法とを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】上記課題を解決するための、本発明に係る手袋は、手袋本体と、当該手袋本体の表面に設けられた滑り止め層とを備え、前記滑り止め層の表面に多数の微小凹部が形成されているものである。上記本発明の手袋では、滑り止め層の表面に、貫通孔ではなく、多数のかつ微細な凹部(微小凹部)が設けられていることから、手袋の内部に水が浸入するという不具合を生じることなく、手袋の表面粗さを増大させることができる。また、その結果、手袋表面の摩擦係数が増大し、手袋のグリップ力の増大を図ることができる。
【0009】手袋本体の表面に設けられた上記微小凹部による摩擦係数の増大効果は、後述する実施例により明らかなように、ドライ時およびウェット時のいずれにおいても極めて大きなものである。それゆえ、上記本発明によれば、乾いた状態と濡れた状態とが共存する環境において使用される場合であっても十分な把持性(すなわち、優れたグリップ力)を発揮することができ、さらには、前述の、手袋内部に水が浸入することがないことと相俟って、作業性および安全性にも優れた手袋を得ることができる。
【0010】上記本発明の手袋において、前記微小凹部の幅は100〜800μmであるのが好ましく、前記微小凹部の深さは10〜100μmであるのが好ましい。また、前記滑り止め層の表面における単位面積辺りの微小凹部の数は100〜500個/cm2 であるのが好ましい。上記微小凹部の幅、微小凹部の深さ、および単位面積辺りの微小凹部の数が上記範囲を満足することにより、本発明の手袋の摩擦係数がより一層向上し、グリップ力がより一層優れたものとなる。
【0011】上記本発明の手袋は、後述する、本発明に係る手袋の製造方法において示すように、前記微小凹部が、前記滑り止め層中に埋め込まれた溶解性微粒子を溶解、抽出して形成されたものであることを特徴とする。本発明に係る手袋の製造方法は、上記本発明に係る手袋の製造方法であって、手袋本体の表面に滑り止め層用の皮膜を形成し、当該皮膜が乾燥、硬化しないうちにその表面に溶解性微粒子を埋め込んだ後、前記皮膜を加硫、乾燥させ、次いで、前記溶解性微粒子を溶解、抽出することを特徴とする。
【0012】上記製造方法によれば、手袋体に貫通孔を生じさせることなく、手袋体の表面に多数の、かつ微細な凹部を簡易な操作によって形成することができる。上記本発明の製造方法において、前記溶解性微粒子は、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】次に、本発明の手袋について詳細に説明する。図1(a) は本発明に係る手袋の一実施形態を示す正面図であって、同図(b) は手袋本体10と滑り止め層12との積層状態を示す部分拡大断面図である。本発明の手袋は、例えば図1(a) に示すように、手袋本体(第1の層)10と、手袋本体10の表面に設けられた滑り止め層12とを備えたものであって、滑り止め層12がその表面に多数の微小凹部14を有することを特徴とする。なお、手袋本体10と滑り止め層12とは同一のゴムまたは樹脂からなるものであってもよく、その場合には、手袋を製造した後において前記両層は区別がつかない程度に一体化する。
【0014】図1に示す実施形態において、滑り止め層12は、人差し指から小指までの各指部16b〜16eの先端から掌部(および甲部)18の一部分までと、親指部16aの先端から付け根部分に形成されている。この滑り止め層12は、図1に示す領域に限定して形成されるほか、手袋本体10の表面全面に設けることもできる。かかる態様は、図1に示す態様と同様に、掌側と甲側との区別をしない手袋に好適である。
【0015】また、手袋本体を掌部と甲部とに区別した上で、例えば掌部側には指先から手首までの全面に滑り止め層を設けるものの、甲部側には滑り止め層を設けないとする対応も可能である。
〔手袋本体〕本発明の手袋における手袋本体は特に限定されるものではなく、編布または織布からなる手袋体、いわゆる裏地であってもよく、滑り止め層を形成するゴムと同一のもしくは異なるゴムの皮膜、または樹脂の皮膜であってもよい。
【0016】上記裏地としては、縫い目のない(裁縫していない)ものや、縫い目を有するもののいずれであってもよい。裏地の材質は、後述する滑り止め層との接着性が良好なものであるほかは特に限定されるものではなく、綿、木綿、麻、羊毛等の天然繊維;セルロース等の再生繊維;アセテート、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維等の合成繊維等の、従来公知の種々の材質を用いることができる。上記ゴム皮膜としては、十分な柔軟性を有しており、かつ、後述する滑り止め層との接着性が良好なものであるほかは特に限定されるものではなく、例えば天然ゴム(NR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、メタクリル酸エチルグラフト重合体(MG)等の、従来公知の種々のゴムからなる皮膜が挙げられる。中でも、天然ゴム(NR)やメタクリル酸エチルグラフト重合体(MG)が、皮膜の強度や手袋の柔軟性等をより一層優れたものにする上で好適である。また、前記天然ゴム(NR)を用いる場合には、蛋白質によるアレルギーを防止すべく、脱蛋白された天然ゴム(DPNR)を用いるのがより好ましい。
【0017】上記樹脂皮膜としては、十分な柔軟性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂等の、従来公知の種々の樹脂からなる皮膜が挙げられる。手袋体の形状についても特に限定されるものではなく、例えばいわゆる直指形のものであってもよく、いわゆる曲がり指形のものであってもよい。手袋本体の厚みは、手袋の用途等に応じて適宜設定されるものであって、特に限定されないが、通常、0.20〜0.70mmであるのが好ましく、0.25〜0.5mmであるのがより好ましい。
【0018】〔滑り止め層〕本発明の手袋における滑り止め層は、表面に多数の微小凹部が形成されているものであって、十分な柔軟性を有し、かつ、前述の手袋本体との接着性が良好なものであるほかは特に限定されるものではなく、従来公知の種々のゴムまたは樹脂を用いて形成することができる。上記ゴムおよび樹脂としては、前記「手袋本体」の欄において例示した、ゴム皮膜を形成するためのゴム、および樹脂皮膜を形成するための樹脂と同様のものが挙げられる。
【0019】滑り止め層の厚みは特に限定されるものではないが、微小凹部の形成を十分なものとするためにも、50μm以上であるのが好ましい。また、手袋全体の柔軟性や装着感等を損なわないためにも、100μm以下であるのが好ましい。一般的には、10〜100μmの範囲で設定される。
(微小凹部)微小凹部の幅は、前述のように、100〜800μmであるのが好ましい。幅が上記範囲を下回る微小凹部を形成するのは困難であるとともに、上記範囲を下回るような極めて微細な凹部では、摩擦係数を増大させる効果が十分に得られないおそれがある。一方、微小凹部の幅が上記範囲を超えると、摩擦係数を増大させる効果が十分に得られないおそれがある。微小凹部の幅は、上記範囲の中でも特に300〜700μmであるのが好ましく、500〜600μmであるのがより好ましい。
【0020】微小凹部の深さは、前述のように、10〜100μmであるのが好ましい。微小凹部の深さが上記範囲を下回ると、摩擦係数を増大させる効果が十分に得られないおそれがある。微小凹部の深さは、上記範囲の中でも特に50〜100μmであるのが好ましく、80〜100μmであるのがより好ましい。なお後述するように、微小凹部の深さは、通常、滑り止め層の厚みまたは滑り止め層に埋め込まれる溶解性微粒子の大きさによって制御されるものである。
【0021】滑り止め層の表面における単位面積辺りの微小凹部の数は、前述のように、100〜500個/cm2 であるのが好ましい。単位面積辺りの微小凹部の数が上記範囲を下回ると、摩擦係数を増大させる効果が十分に得られないおそれがある。一方、微小凹部を、単位面積辺りの数が上記範囲を超えるように形成しても、摩擦係数を増大させる効果には大きな差異が生じないばかりか、逆に、滑り止め層の機械的強度が低下したり、製造コストが増大するおそれがある。滑り止め層の表面における単位面積辺りの微小凹部の数は、上記範囲の中でも特に300〜500個/cm2 であるのが好ましく、350〜400個/cm2 であるのがより好ましい。
【0022】〔手袋の製造方法〕本発明の手袋は、前述のように、手袋本体の表面に滑り止め層用のゴム皮膜または樹脂皮膜を形成し、当該皮膜が乾燥、硬化しないうちにその表面に溶解性微粒子を埋め込んだ後、前記皮膜を加硫、乾燥させ、次いで、前記溶解性微粒子を溶解、抽出することによって製造される。前記滑り止め層用のゴム皮膜または樹脂皮膜の表面には、溶解性微粒子を溶解、抽出によって多数の微小凹部が形成される。
【0023】以下、「手袋本体の形成」、「滑り止め層用皮膜の形成」および「微小凹部の形成」について、それぞれ詳細に説明する。
(手袋本体の形成)手袋本体としていわゆる裏地を用いる場合には、従来公知の種々の方法にて手袋体(編物または織物)を作製すればよい。一方、手袋本体としてゴム皮膜または樹脂皮膜を用いる場合には、手袋の型(以下、「手型」という。)を、ゴムラテックス、または、架橋剤が配合された樹脂エマルジョン(もしくは、自己架橋性を有する樹脂エマルジョン)に浸漬して皮膜を形成する、いわゆる浸漬法を採用すればよい。
【0024】浸漬法によってゴム皮膜からなる手袋本体を形成する場合において、ゴムラテックス中に配合される添加剤としては、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、感熱化剤、アノード凝着剤等が挙げられる。加硫剤としては、例えば硫黄;トリメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素等の有機含硫黄化合物等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。加硫剤の配合量は、前加硫の程度や加硫促進剤等の配合量と兼ね合いによって決定されるものであるが、通常、ゴムラテックス中のゴム固形分100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部の範囲で設定される。
【0025】加硫促進剤としては、例えばN−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛(PX)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(PZ)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(EZ)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(BZ)、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(MZ)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。加硫促進剤の配合量は、ゴムラテックスのゴム固形分100重量部に対して0.5〜3重量部程度に調整するのが好ましい。
【0026】加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華等が挙げられる。加硫促進助剤の配合量は、ゴムラテックスのゴム固形分100重量部に対して0.5〜3重量部程度に調整するのが好ましい。感熱化剤としては、例えば硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、亜鉛アンモニウム錯塩等の無機または有機のアンモニウム塩、あるいは例えばポリビニルメチルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリエーテルポリホルマール、官能性ポリシロキサン等の、曇点が常温以上、100℃以下の水溶性高分子が挙げられる。
【0027】アノード凝着剤としては、例えば硝酸カルシウム、塩化カルシウム等の2価以上の金属塩、あるいはテトラメチルアンモニウム塩酸塩等の有機アルキルアミン塩等が挙げられる。上記感熱化剤やアノード凝着剤の配合量は常法に従って設定すればよく、通常、ゴムラテックスのゴム固形分100重量部に対して0.5〜5重量部、特に0.5〜2.0重量部の範囲で設定される。
【0028】一方、浸漬法によって樹脂皮膜からなる手袋本体を形成する場合において、樹脂エマルジョンには、樹脂の架橋性を十分なものとし、かつ、手袋の強度を向上させるために、架橋剤を含有するのが好ましい。樹脂エマルジョンが自己架橋性を有する場合には架橋剤を配合しなくても成膜できるが、架橋剤を配合することによって手袋の強度をより一層向上させることができる。架橋剤としては、例えば亜鉛華、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の、ポリマーの加工用に用いられる従来公知の種々の架橋剤が挙げられる。架橋剤の配合量は特に限定されないが、通常、樹脂エマルジョン中の樹脂固形分100重量部に対して1〜10重量部、特に1〜5重量部の範囲で設定される。
【0029】本発明において、手袋本体としてのゴム皮膜を形成するゴムラテックス、または樹脂皮膜を形成する樹脂エマルジョンには、上記添加剤のほかに、例えば老化防止剤、充填剤、分散剤等の、従来公知の種々の添加剤を配合してもよい。老化防止剤としては、一般に、非汚染性のフェノール類が好適に用いられるが、アミン類を使用してもよい。その配合量は、ゴム固形分または樹脂固形分100重量部に対して0.5〜3重量部程度であるのが好ましい。充填剤としては、例えばカオリンクレー、ハードクレー、炭酸カルシウム等があげられる。その配合量は、ゴム固形分または樹脂固形分100重量部に対して10重量部以下であるのが好ましい。また、上記各添加剤のゴムラテックスまたは樹脂エマルジョン中への分散を良好にするために分散剤を配合してもよい。かかる分散剤としては、例えば各種陰イオン系界面活性剤等が挙げられる。分散剤の配合量は、分散対象である成分における重量の0.3〜1.0重量%程度であるのが好ましい。
【0030】手袋本体としてのゴム皮膜または樹脂皮膜を浸漬法によって形成する場合における浸漬条件等は、常法に従って行えばよい。手袋本体としてのゴム皮膜または樹脂皮膜は、浸漬法以外の他の成形方法によって形成してもよい。
(滑り止め層用の皮膜の形成)手袋本体がいわゆる裏地である場合には、手型に当該裏地を被せた上で、当該型を、ゴムラテックスまたは樹脂エマルジョン中に浸漬する、いわゆる浸漬法によって、滑り止め層用の皮膜が形成される。
【0031】一方、手袋本体がゴム皮膜または樹脂皮膜である場合には、手袋本体としての皮膜が形成された手型を、そのままの状態でゴムラテックスまたは樹脂エマルジョン中に浸漬することによって(浸漬法)、滑り止め層用の皮膜が形成される。滑り止め層用の皮膜を形成するためのゴムラテックスまたは樹脂エマルジョンに配合される添加剤は、前記「手袋本体の形成」の欄において例示した添加剤と同様のものが挙げられる。
【0032】滑り止め層用皮膜としてのゴム皮膜または樹脂皮膜は、浸漬法により、常法に従って形成すればよい。
(微小凹部の形成)微小凹部は、前述のように、滑り止め層用のゴム皮膜または樹脂皮膜を形成し、当該皮膜が乾燥、硬化しないうちにその表面に溶解性微粒子を埋め込んだ後、前記皮膜を加硫、乾燥させ、次いで、前記溶解性微粒子を溶解、抽出することによって形成される。
【0033】溶解性微粒子を滑り止め層用の皮膜中に埋め込む作業は、前記皮膜が乾燥したり、硬化したりする前に行う必要がある。また、かかる作業は、例えば溶解性微粒子を板上に散布し、未乾燥・未加硫の滑り止め層用皮膜を、手型ごと押し当てることによって行うことができる。溶解性微粒子による表面加工は、前述のように滑り止め層用皮膜が乾燥、硬化する前に施されることから、ほとんどの場合、溶解性微粒子が滑り止め層を貫通して、手袋本体の表面に到達する。それゆえ、微小凹部の深さは、通常、滑り止め層の厚みまたは滑り止め層に埋め込まれる溶解性微粒子の大きさによって制御される。
【0034】本発明に使用可能な溶解性微粒子としては、例えば水で容易に溶解、抽出可能なものが挙げられる。かかる溶解性微粒子としては、例えば塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ、重曹)、炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)等が挙げられる。
【0035】
【実施例】次に、実施例および比較例を挙げて本発明を説明する。
〔手袋の製造〕
実施例1(1) 前加硫ラテックスの調製天然ゴムラテックス〔NRラテックス,ゴム固形分濃度(TSC)60%〕のゴム固形分100重量部に対して、亜鉛華(ZnO)1重量部、加硫促進剤BZ(ジブチルカルバミン酸亜鉛)1重量部および硫黄1重量部を添加し、50℃で5時間加熱(前加硫)することにより、前加硫NRラテックスを得た。
【0036】(2) 手袋本体の形成陶器製の手型を、あらかじめ調製された凝固液(硝酸カルシウム水溶液,濃度25重量%)に浸漬し、引き上げて乾燥した。次いで、この手型を前記前加硫NRラテックスに20秒間浸漬して、当該手型の表面にゴム皮膜(手袋本体)を形成した。このゴム皮膜は、50℃の温風で15分間乾燥させた。
【0037】(3) 滑り止め層の形成乾燥後、表面に上記ゴム皮膜を有する手型の、各指の指先から親指の付け根部分までを、前記前加硫NRラテックスに再度浸漬した。この浸漬は10秒間行い、ラテックスから手型を引き上げた後、直ちに(ゴム膜が乾燥しないうちに)、平均粒径300μmの塩化ナトリウム粒子(溶解性微粒子)をゴム膜中に埋め込んだ。なお、塩化ナトリウムの埋め込み作業は、塩化ナトリウム粒子を散布した板上に、未乾燥のゴム膜を設けた手型を押し当てることによって行った。
【0038】(4) 加硫・粒子の抽出塩化ナトリウム粒子をゴム皮膜中に埋め込んだ後、当該皮膜を100℃のオーブンで40分間加熱し、加硫、乾燥させた。さらに、加硫・乾燥後、手型を水中に浸漬して、ゴム膜に埋め込まれた上記塩化ナトリウム粒子を溶解、抽出して、70℃の乾燥機にて30分間乾燥させた。こうして、図1に示すような、手袋本体10と、当該手袋本体10の表面に設けられた、表面に多数の微小凹部14を有する滑り止め層12とからなる手袋を得た。なお、手袋本体10と滑り止め層12とは同一の前加硫NRラテックスを用いて形成されたものであることから、両層は区別がつかない程度に一体化していた。
【0039】また、得られた手袋は、滑り止め層12の表面に、平均径が300μm、平均深さが80μmの微小凹部14を、1cm2 当たり平均400個有していた。
〔グリップ力の評価〕上記実施例で得られた手袋のグリップ力を評価するため、滑り止め層の表面における摩擦係数μを測定した。摩擦係数μの測定は、上記手袋のうち、滑り止め層12が形成されている領域から切り出された40mm×80mmのサンプル1を使用し、ドライ表面については図2に示すようにして、ウェット表面については図3に示すようにして行った。
【0040】すなわち、まず、上記サンプル1の滑り止め層(微小凹部14)側2を上側にして、その裏面を平らな面に粘着テープで固定した。さらに、サンプル1の表面(微小凹部14)側2に摩擦試験機ヘイドン10型〔新東化学(株)製の「トライボギア」、TYPE:HEIDON−10DR〕用のスライド台4(35mm×70mm、200g)を載せて、その上にさらに錘5とを載せた。次に、上記の状態で前記スライド台4を島津(株)製のオートグラフ6によって水平方向に50mm/分の速度で引っ張ることにより、ドライ表面での静摩擦係数の測定を行った。
【0041】一方、ウェット表面での測定に際しては、サンプル1の滑り止め層(微小凹部14)側2全面を水7に浸した状態にした上で、測定を行った。なお、静摩擦係数の測定は、さらに、錘の重さを0g、500g、1000gおよび1500gに変えて(サンプル1に実際にかかる総重量を200g、700g、1200gおよび1700gとして)行い、合計4つの測定値の平均をとった。
【0042】実施例2(1) 前加硫ラテックスの調製および手袋本体の形成実施例1と同様にして「前加硫ラテックスの調製」と「手袋本体の形成」とを行った。
(2) 滑り止め層用DPNRラテックスの調製蛋白質の除去処理を施したいわゆる脱蛋白天然ゴムラテックス〔DPNRラテックス,ゴム固形分濃度(TSC)50%〕のゴム固形分100重量部に対して、亜鉛華(ZnO)1重量部、加硫促進剤BZ(ジブチルカルバミン酸亜鉛)1重量部および硫黄1重量部を添加し、50℃で5時間加熱(前加硫)することにより、滑り止め層用DPNRラテックスを得た。
【0043】(3) 滑り止め層の形成上記手袋本体を手型に取り付けたままの状態で使用し、その各指の指先から親指の付け根部分までを上記(2) で得られた滑り止め層用DPNRラテックスに浸漬した。この浸漬は10秒間行い、ラテックスから手型を引き上げた後、直ちに(ゴム膜が乾燥しないうちに)、平均粒径300μmの塩化ナトリウム粒子(溶解性微粒子)をゴム膜中に埋め込んだ。なお、塩化ナトリウムの埋め込み作業は、DPNR皮膜を設けた手型を15秒で1回転の速さで回転させつつ、上部から塩化ナトリウム粒子を30秒間散布することによって行った。
【0044】(4) 加硫・粒子の抽出塩化ナトリウム粒子をゴム皮膜中に埋め込んだ後、当該皮膜を100℃のオーブンで40分間加熱し、加硫、乾燥させた。さらに、加硫・乾燥後、手型を水中に浸漬して、ゴム膜に埋め込まれた上記塩化ナトリウム粒子を溶解、抽出して、70℃の乾燥機にて30分間乾燥させた。こうして、図1に示すような、手袋本体10と、当該手袋本体10の表面に設けられた、表面に多数の微小凹部14を有する滑り止め層12とからなる手袋を得た。
【0045】比較例1実施例1と同様にして手袋本体を形成した後、手袋本体と同じ前加硫NRラテックスを用いて成膜を行い、成膜後直ちに(滑り止め層が乾燥しないうちに)、その表面に手袋滑り止め用の凹凸パターンの型を押し付けて、その後100℃のオーブンで40分間加熱し、加硫、乾燥させた。こうして、表面に滑り止め用の凹凸模様(シボ加工)が施された、いわゆる手型転写タイプの手袋を得た。
【0046】比較例2実施例1と同様にして手袋本体を形成した。次いで、手袋本体の形成に用いたのと同じ前加硫NRラテックス中に、当該ラテックス中のゴム固形分100重量部に対して澱粉微粒子(平均粒径40μm)100重量部を分散させて、さらにこの分散液を用いて、浸漬法により前記手袋本体の表面に成膜を行った。
【0047】こうして、表面に澱粉のコート層が形成された、いわゆる微粒子コートタイプの手袋を得た。上記実施例2の手袋(微小凹部タイプ,異種ゴム積層タイプ)、比較例1の「手型転写タイプ」の手袋、および比較例2の「微粒子コートタイプ」の手袋についても、実施例1と同様にして、手袋表面の摩擦係数μを測定した。以上の測定結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】表1より明らかなように、表面に多数の微小凹部を有する実施例1および2の手袋では、ドライ時およびウェット時のいずれにおいても摩擦係数μが高かった。従って、ドライ時およびウェット時のいずれにおいても優れたグリップ力を示すことが分かった。これに対し、従来の手袋に相当する比較例1および比較例2の手袋では、摩擦係数μが十分ではなく、とりわけ、ウェット時のグリップ力が低いという問題があった。
【出願人】 【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
【出願日】 平成12年7月4日(2000.7.4)
【代理人】 【識別番号】100075155
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外2名)
【公開番号】 特開2002−20913(P2002−20913A)
【公開日】 平成14年1月23日(2002.1.23)
【出願番号】 特願2000−202563(P2000−202563)