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【発明の名称】 療養寝衣
【発明者】 【氏名】安岡 エリ子

【要約】 【課題】和式寝衣にかわり、機能的でありながらも、年齢、性別を問わず、趣味による選択肢があり、負担なく腋下での検温がおこなえる療養寝衣を提供する。

【解決手段】上前身頃を洋服型、下前身頃を打ち合わせのワンピース型で構成し、また、寝衣の外部より、直接腋下に体温計の挿入可能な、検温スリットをもうける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】後ろ身頃は一枚から成り、前身頃は腹部で上下に分割し、上前身頃においては、左右に全開可能として、左右は止着具により着脱自在に結合するとともに、下前身頃については左右全開が可能とするも、上前身頃とは異なり、打ち合わせ式として、また左右のどちらでもが上前可能になるよう着脱自在に止着具を配置し、腹部で、上前身頃と下前身頃に重なりを持たせ、重なった部分において、一部縫製、また一部を止着具を用いて結合し、後ろ身頃と上下前身頃は、脇線で縫製して一体化成ることを特徴とする療養寝衣。
【請求項2】寝衣の外部より、直接人体の腋下に、検温のための体温計の挿入可能な、開閉自在の検温用スリットが、左右の袖付け線上、或いは袖付け線を利用できない場合も含め、適宜な位置にある事を特徴とする、請求項1に記載の療養寝衣。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゆかた状の和式寝衣に変わり、療養機能を備えながらも、多様なデザインで着用者に趣味による選択肢を与え、また、容易に腋下での検温が行える療養寝衣に関する。
【0002】
【従来の技術】従来病院、施設、また家庭において手術後等の一時的、或いは常時のおむつ、導尿カテーテル使用時、またはギプス装着時等、要看護、介護状態より回復に向かう過程において、年齢、性別を問わず、多用されているのは、ゆかた状の和式寝衣、或いは入院中に提供される病衣、和式検査着である。
【0003】上記の和式寝衣は、前身頃において左右に一枚ずつ大きく打ち合わせ式であるために、おむつ交換等の処置、寝返り、或いは歩行などの下半身の動作によって着崩れしやすく、不必要な露出をまねきやすい。
【0004】止着具を用いず、単に打ち合わせているだけの胸元は、開きやすく不安定であり、直線裁ちの和式に特有の身八つ口、広い袖口など開口部が多く保温には不適切であり、また、寝衣において袂は不要である。
【0005】和式寝衣の場合、常に左前身頃を上に打ち合わせて着用、すなわち左前には着用しない事が慣例であるため、導尿バッグを下げての移動、歩行の際は必然的に着用者の右手側でバッグを維持しなければ、導尿カテーテルによって、打ち合わせが腰紐より下において、大きくはだけてしまう事になり、これはベッド上での仰臥位においても同様の事があてはまり、身体の障害、ベッドの位置によって、左側に導尿バッグを設置したい場合に左右のどちらを上前にするか、和式寝衣では選択肢が無い。
【0006】さらに、腰紐で拘束するため腹部に圧迫感を生じ、また、ぴったりと下半身を巻込む形状によっておこる脚部の動作の制限は、窮屈であるばかりか、近年ベッド上で実施される機能回復訓練、或いは歩行訓練にも支障をきたし、身体に障害があるうえに、日常、和服に不慣れな着用者にとって、快適な寝衣とは言い難い。
【0007】なお、腰紐、和式特有の背縫いは、蓐瘡の誘因になりやすい。
【0008】如何なる身体状態、たとえ摂食の楽しみ、動ける自由が無くても自己表現の手段としての、装う、という事は、人間に与えられた喜びでもあり、特に一日中寝衣で過ごす事の多い着用者にとって、美的欲求ないしは、装身の欲求、精神的満足を得る事は回復において重要な意味があるにも拘わらず、看護者、介護者の立場から、ただ着せやすい、管理しやすいに重点がおかれ、古来より多用されている和式寝衣は、デザインが一定である上に、生地または色、柄においても大差がない事により、季節、年齢、性別、趣味における選択肢を与えられる事はなく、更衣による気分転換すらはかれない。
【0009】そこで、和式検査着については、必要な部分だけを露出させる目的で、ウエスト部付近で横方向に切断したものが提案されているが(特開平11−279815公報参照)これは上前身頃も打ち合わせであるため止着に紐を必要とし、さらに上下前身頃の結合部分では、左右の脇線より脇線までを、換言すれば腹部全面が止着具により結合され、その結合部分においても止着具に要する幅のみで構成されているために、重なり代が薄く、上下に強い力がかかり、止着具が剥離した場合においては、腹部が露出してしまうという難点があり、短時間の検査において、所望部位を露出できるといった利点はあるが、和式の域を脱しておらず、常着に耐え、精神的満足を得る寝衣への展開は希薄かと思われる。
【0010】また、身頃、袖を取り外して着脱可能にした衣服等が多く考案されているが、止着具が多く使用されているため、着心地は言うに及ばず、審美性のよい衣服とはいえず、ともすれば、如何にして看護、介護者の労力を軽減させるかに視点がおかれ、着用者が望んでいるものとの隔たりは大きい。
【0011】さらに、全開のネグリジェタイプの寝衣では、おむつ交換時に止着具を外す必要があり、トイレ使用においては、腹部まで寝衣を手繰り揚げねばならず、これは介助のあるなしに拘わらず、身体の障害によっては負担が大きく、また、デザイン的に女性専用のイメージが払拭できず、着用者に制限があるかと思われる。
【0012】上記請求項2については、病院で多用されている和式検査着、およびパジャマ等のいわゆる一般の寝衣、衣服において、検温の際に体温計を腋下に挿入するには、通常、寝衣の胸元或いは上着の裾等より手を入れるため、ボタンを外す、襟刳りをひっぱる等何らかの動作が必要であり、そのための体位の変換、及び必然的に体温計を持つ手が肌に触れるため看護、介護者、また自身の手が冷たい時等に受ける不快感、並びに負担は病身には大きい。
【0013】特に、抑制を要する痴呆患者に用いられる、ロック付き抑制パジャマ、ロック付きのつなぎ型抑制衣服においては、腋下への体温計の挿入が容易ならざる事は顕著である。
【0014】また、電子体温計による検温中にエラーが生じていても、体温計は着衣で覆われ、表示部を目視できないため、エラーであるか否か即時の確認ができず、再度の検温に手間取り、不要な時間を費やす。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題点を解決して、和式寝衣、和式検査着に変わり、おむつ交換および介助のあるなしに拘わらずのトイレ使用も容易に行う事ができ、導尿カテーテルを左右どちらの側に導いても不要に寝衣が乱れず、また、寝衣による蓐瘡の誘因を軽減し、身体を拘束せず、かつ動作によって着崩れる事なく、早期に実施されるベッド上、或いは歩行等の機能回復訓練にも柔軟に対応できる事。
【0016】さらには機能のみならず、着用者の立場になり、装身の欲求を満たし、回復に不可欠な精神的満足感を得られるように、年齢、性別を問わず、幅広く趣味での選択肢と季節感をもたせる事。
【0017】腋下での検温を負担の少ない方法で行い、またその装置の製作は容易であり、寝衣及びそれを必要とする衣服、肌着に応用可能である事、以上の条件を満たした療養寝衣を提供する。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明による療養寝衣は、以下に示すようにワンピース型に構成した事を特徴とする。請求項1に係わる療養寝衣の後ろ身頃は一枚から成り、前身頃は腹部で上下に分割し、上前身頃においては、左右に全開可能として、左右は止着具により着脱自在に結合するとともに、下前身頃については左右全開が可能とするも、上前身頃とは異なり、打ち合わせ式として、また左右のどちらでもが上前可能になるよう着脱自在に止着具を配置し、腹部で、上前身頃と下前身頃に重なりを持たせ、重なった部分において、一部縫製、また一部を止着具を用いて結合し、後ろ身頃と上下前身頃は、脇線で縫製して一体化成る事を特徴とするものである。
【0019】請求項2に係わる療養寝衣においては寝衣の外部より、直接人体の腋下に、検温のための体温計の挿入可能な、開閉自在の検温用スリットが、左右の袖付け線上、或いは袖付け線を利用できない場合も含め、適宜な位置にある事を特徴とするものである。
【0020】
【発明の実施の形態】上記によれば、請求項1の療養寝衣は、後ろ身頃を1枚、前身頃を4枚として、上前身頃を洋服型、下前身頃を打ち合わせ式にして、その打ち合わせにおいては左右どちら側でも上前可能にするために、対になる止着具を2か所に取り付け、上下前身頃は腹部で重ね合わせ、縫製と止着具で結合、脇線で後ろ身頃とともに縫製する、前全開のワンピース型の構成である。
【0021】請求項2の検温用スリットは、袖付け線の腋下にあたる部分を一部縫い残し、袖山の縫い代を持ち出しとして、スリットとする。この方法においては止着具を必要とせず、製作も容易である。
【0022】袖付け線を利用できない場合においても、スリットは検温可能な長さでよいため、同様に止着具の必要もなく、この場合の製作も容易である。
【0023】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。図1は療養寝衣の全体構成を示す正面図、図2は全開にした状態の正面図であり、図3は図1療養寝衣の袖付け線を利用した場合の左袖検温用スリット17の拡大図を示す。1は療養寝衣,2は右上前身頃、3は左上前身頃、4は右下前身頃、5は左下前身頃、6は後ろ身頃、7は右袖、8は左袖であり、これらの図では療養寝衣を示す。
【0024】この図1、図2では上前身頃を右前で説明しているが、上前身頃を左前にした場合でも全体の構成は同様であり、以下図、および説明においては、右前に統一して説明する事とする。
【0025】本療養寝衣の右上前身頃2、左上前身頃3は、前中心に適宜間隔に配置された止着具13a、13aと対となる止着具13bにより着脱自在に結合、止着具には面ファスナー、或いはボタン、スナップ等を用いるため、あらかじめ左前、右前を決定しておく必要があるが、右下前身頃4、左下前身頃5の打ち合わせにおいては、左下前身頃5の止着具、面ファスナー10aは右上前身頃2の10aと対となる止着具10cまたは右下前身頃4の10aと対となる止着具10bのどちらにでも止着可能である。
【0026】同様に右下前身頃4の止着具、面ファスナー11aも左上前身頃3の11aと対となる止着具11cまたは左下前身頃5の11aと対となる止着具11bのどちらにでも止着可能である。
【0027】これによって下前身頃の打ち合わせを、左右自在に上前とする事ができる。
【0028】この実施の形態では、止着具10並びに止着具11は、面ファスナーを使用しているが、止着具13同様ボタン、スナップ、その他これらに類するものを使用する事もできる。
【0029】腹部においては、右上前身頃2に右下前身頃4を、同様に左上前身頃3に左下前身頃5を重ね合わせ、それぞれ縫い止まり9まで脇線より縫製されている事を示す。
【0030】右上前身頃2に取り付けられたボタン12は、右下前身頃ボタンホール14、左下前身頃ボタンホール15に対のものであり、ボタン12を右下前身頃をボタンホール14、左下前身頃ボタンホール15にかけている事により歩行時等、動作によって、仮に右下前身頃4の止着具11a、左下前身頃5の止着具10aが対になっているそれぞれの止着具と剥離した場合においても不用意な露出を防ぐ事ができる。
【0031】なお、おむつ交換等の処置においては、通常ボタン12を外す事なく可能である。
【0032】次に図3によって検温スリットの実施例を説明する。図3は図1、および図2における左袖検温スリット17の拡大図を示すが、図1、図2の右袖検温スリット16においても以下同様であるので説明を省略する。
【0033】この図3では、図1療養寝衣の袖付け線を利用した場合の左袖検温スリット17を示すが、分かりやすくするために袖ぐり縫い代19を袖山縫い代18より浮かせた状態で図に示している。
【0034】なお、袖付けの縫製により、袖ぐり縫い代19は袖山縫い代18とともに左前身頃3側に倒されており、袖ぐり縫い代19は左前身頃3と重なっているため、この左袖検温スリット17の説明においては、袖ぐり縫い代19として説明する事とする。
【0035】ミシンステッチ21は袖付け縫い代を左前身頃3に縫い止めている事を示す。
【0036】左袖8の袖付けの上下の縫い止まり20によって、袖ぐり縫い代19が、袖山縫い代18と、結合せず離れてはいるが、袖山縫い代18は持ち出しになっているため、袖ぐり縫い代19とは重なり代があり、これにより止着具を用いずとも動作によって肌が露出する事はなく、また容易に体温計を挿入できる。
【0037】寝衣のデザインを考慮した上で、左袖検温スリット17、或いは縫い止まり20にテープ、カラーステッチ等を使用する事により、検温スリットの位置が一目で認識でき、体温計の挿入が迅速におこなえる。
【0038】次に他の実施例を示す。図4、図5、図6は本発明をデザイン展開した一例であり、図4はシャツカラーにした一例を示す。
【0039】図5は衿、袖口にニットファブリックを用いた一例を示しており、図4、図5のデザインは年齢、性別を問わず幅広く着用できる。
【0040】図6は特に女性用にデザイン展開した一例を示しており、この他、衿、袖、身頃等において、タック、ギャザー、フリル、テープ等を用いて多様なデザインの展開を可能とし、また素材、色、柄においても変化を持たせる事により、性別を問わず、また幅広い年齢層に合わせた療養寝衣を提供できる。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ゆかた状の和式寝衣、および和式検査着に変わり、上前身頃を洋服型、下前身頃を左右の上前が自在になる打ち合わせ式、前全開で身幅にゆとりあるワンピース型の構成にした事により、着脱が容易であり、おむつ交換がしやすく、介助のあるなしに拘わらず、トイレ使用の動作も楽にでき、また導尿カテーテルを左右のどちら側に導いても、寝衣の裾が乱れる事なく、これによって身体の障害、ベッドの位置、および利き手に合わせて、柔軟な対応ができる。
【0042】また前身頃を4枚にした効果で、要看護、介護より回復に至る過程においての処置、歩行、機能回復訓練等で着崩れず、和服に不慣れな着用者にとってはなじみやすい。
【0043】さらには、上下前身頃の重なり部分で、おむつ交換時において、手が離れている間、一時的に局部を覆う事もでき、着用者にはかりしれない安心感を与え、身体を圧迫せず、寝衣による蓐瘡の誘因を軽減し、また上記の機能のみならず、和式寝衣では得られない多様なデザイン、色、柄、素材での展開により、年齢、性別を問わず着用者に趣味による選択肢と季節感を与え、装身の欲求を満たし、回復に必要な精神的満足感をもたらす事ができる。
【0044】また、検温スリットにおいては、寝衣の外部より直接腋下に体温計を挿入できる事により、検温に伴う動作のわずらわしさを排除し、負担なく、迅速な検温が可能になるとともに、検温中においても体温計の表示部を目視できるため、エラーの場合は即時に対処でき、再度の検温に要する時間と手間を省略できる。
【0045】さらには、この装置の製作が極めて容易であるうえに、袖付け線を利用した場合、衣服のデザインを何ら、干渉するものでなく、肌着を含め、抑制衣服等、必要とする寝衣、衣服に幅広く利用できる。
【出願人】 【識別番号】500361331
【氏名又は名称】安岡 エリ子
【出願日】 平成12年7月1日(2000.7.1)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−20911(P2002−20911A)
【公開日】 平成14年1月23日(2002.1.23)
【出願番号】 特願2000−237756(P2000−237756)