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【発明の名称】 身体的障害体験スーツ及び身体的障害体験キット
【発明者】 【氏名】坂本 隆

【要約】 【課題】種々の身体的障害の同時体験を容易にする身体的障害体験スーツ及び身体的障害体験キットを提供する。

【解決手段】本発明の身体的障害体験スーツ1は、手首までの袖と足首までの裾を有する一繋がりのスーツであって、手首部及び足首部に各々設けられて重りを収容しうる重りポケット1A、1Bと、関節部分の両側に跨って設けられて、その関節の伸長方向に棒を収容し固定しうる棒ポケット1C、1Dと、一端が上半身部の要所に、他端が下半身部の要所に固定され、腰より上部の伸長を拘束する範囲で長さを調節しうるベルト1Eとを備えることを特徴とする。また、本発明の身体的障害体験キットは、上記のスーツ1と、そのスーツの重りポケットに収容される重りと、棒ポケットに収容される屈曲不可能な棒とを備えることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】手首までの袖と足首までの裾を有する一繋がりのスーツであって、手首部及び足首部に各々設けられて重りを収容しうる重りポケットと、関節部分の両側に跨って設けられて、その関節の伸長方向に棒を収容し固定しうる棒ポケットと、一端が上半身部の要所に、他端が下半身部の要所に固定され、腰より上部の伸長を拘束する範囲で長さを調節しうるベルトとを備えることを特徴とする身体的障害体験スーツ。
【請求項2】請求項1に記載のスーツと、そのスーツの重りポケットに収容される重りと、棒ポケットに収容される屈曲不可能な棒とを備えることを特徴とする身体的障害体験キット。
【請求項3】前記棒が円柱状をなす請求項2に記載のキット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、老化等による身体的障害を疑似体験するためのスーツ、及びこれを備えた身体的障害体験キットに属する。
【0002】
【従来の技術】近年、高齢化社会へ向けてどのように対応すべきかが問題となっている。高齢になると身体的機能が低下する。例えば、円背になり、腕や脚が上がりにくくなる。また、関節の硬直や脳卒中による麻痺などによって、肘や膝が曲がりにくくなる。そのため高齢になると、階段の昇り降りが困難になるなど日常生活も満足にできなくなる。高齢化社会に的確に対応するためには、このような高齢者の抱える悩みを高齢者以外の者も十分に把握する必要がある。特に、看護学校の学生など将来高齢者の介護をする者は、高齢による身体的障害を疑似体験して学習するのが望ましい。
【0003】身体的障害を疑似体験するためのキットとしては、特開平8−137379号に開示されたものがある。このキットは、重りを収容してなる荷重用上着、重りを収容してなる手首荷重用バンド、重りを収容してなる足首荷重用バンド、肘当てとこれに接続された紐とを有する肘固定具、及び膝当てとこれに接続された紐とを有する膝固定具などの複数のパーツからなる。そして、これらのパーツを体に装着することによって、円背の状態、腕及び脚を上げにくい状態、さらに肘及び膝を曲げにくい状態を体験することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このキットでは、パーツ毎に体に装着しなければならない。また、このキットでは、パーツを装着するのが面倒である。例えば、手首荷重用バンド及び足首荷重用バンドを装着するには手首または足首に巻回させて固定する必要があるし、肘固定具及び膝固定具を装着するには肘または膝に紐で縛り付ける必要がある。さらに、複数のパーツを装着するのは非常に手間が掛かり、そのため、種々の障害を同時に疑似体験するにはかなりの時間を要する。
【0005】それ故、本発明は、身体的障害の疑似体験を容易にし、種々の障害の同時体験を容易にする身体的障害体験スーツ、及びこれを備えた身体的障害体験キットを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の身体的障害体験スーツは、手首までの袖と足首までの裾を有する一繋がりのスーツであって、手首部及び足首部に各々設けられて重りを収容しうる重りポケットと、関節部分の両側に跨って設けられて、その関節の伸長方向に棒を収容し固定しうる棒ポケットと、一端が上半身部の要所に、他端が下半身部の要所に固定され、腰より上部の伸長を拘束する範囲で長さを調節しうるベルトとを備えることを特徴とする。
【0007】また、本発明の身体的障害体験キットは、上記のスーツと、そのスーツの重りポケットに収容される重りと、棒ポケットに収容される屈曲不可能な棒とを備えることを特徴とする。
【0008】本発明では、スーツを着て、スーツの手首部及び足首部の重りポケットに重りを収容することにより、腕及び脚を上げにくい状態を体験することができる。また、肘部や膝部などの関節部分に設けられた棒ポケットに棒を収容して固定することにより、関節を曲げにくい状態を体験することができる。さらに、上半身部の要所から下半身部の要所までに設けられたベルトの長さを調節して短くすることにより、体を前屈みにさせることができ、これにより円背の状態を体験することができる。
【0009】本発明のスーツは一つに繋がっているので、簡単に着ることができる。そして本発明では、スーツを着て重りや棒を所定のポケットに収容するだけで、腕や脚を上げにくい状態または肘や膝を曲げにくい状態を体験することが可能である。また、ベルトの長さを調節するだけで、円背の状態を体験することができる。即ち、本発明によると、身体的障害を疑似体験するのに手間が掛からず、複数種類の障害の同時体験も容易である。
【0010】本発明のスーツにおいて、重りポケットについては、例えば、長方形状をなしたポケットで良い。また、手首全体及び足首全体を重くするために、手首及び足首の周りに複数個のポケットを設けても良い。棒ポケットについては、棒を収容可能な細長い形状をなしたポケットで良い。細長い形状のポケットを例えば肘部に腕部と平行になるように設けると、肘の伸長方向に棒を収容し固定することが可能となる。さらに、各種ポケットに面ファスナー等の開閉手段を設けるのが好ましい。開閉手段を設けると、重り又は棒の収容後にポケットを閉じることによって、疑似体験中に重り又は棒がポケット外に出てしまうのを防止することができる。
【0011】ベルトについては、例えば、一端を肩部に他端を太股部前側に固定すれば良い。また、ベルトを複数本設けても良い。ベルトの長さを調節するためには、ベルトにバックルを取り付けると良い。さらに、ベルトの一部をスーツの腰部付近に固定し、この固定部分の上下にそれぞれバックルを取り付けても良い。このようにすると、固定部分の上下それぞれにおいて長さを調節することが可能となる。そのため上半身の屈み具合を細かく変えることができ、よって、障害の程度の異なる円背の状態を疑似体験することができる。
【0012】本発明のキットにおいて、重りとしては、例えば鉛袋を使用すると良い。重量については特に限定はなく、例えば手首用としては1個のポケット当たり200〜250g、足首用としては1個のポケット当たり400〜500gで良い。また、重量の異なるものを複数種類用意して、疑似体験する障害の程度を変えられるようにしても良い。棒の剛性は、身体的障害をよりリアルに再現するため、屈曲不可能でありながら僅かに湾曲する程度が好ましい。棒の材質については、ABS等の樹脂や竹などが使用可能である。長さについては、例えば肘用としては約25cm、膝用としては約30cmで良い。さらに、棒の形状は円柱状が好ましい。棒の形状を円柱状にすると、棒はどの方向にも同じ程度で湾曲しうる。そのため、歩行、階段の昇り降り、食事等のあらゆる状況での不自由をリアルに体感することができる。
【0013】本発明のキットは、これらの他に、聴覚障害を体験するための耳栓、視覚障害を体験するためのゴーグル、及び触覚障害を体験するための手袋を備えていても良い。さらに、本発明のキットは杖を備えても良い。身体的機能を低下させた状態で杖を使うことにより、杖の必要性を感じることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、実施形態の身体的障害体験キットの使用状態を示す図である。本実施形態の身体的障害体験キットは、スーツ1を備える。スーツ1は、図2に平面図として示すように、上半身部と下半身部とが一つに繋がっていて、また手首まで袖を有するとともに足首まで裾を有する。
【0015】このスーツ1は、左右の手首部の各々に長方形の手首部ポケット1Aを有する。手首部ポケット1Aは、各々の手首部の表側と裏側とに1つずつ設けられている。各ポケット1Aの開口部内側には面ファスナー1Aaが取り付けられていて、これにより各ポケット1Aを閉じることが可能である。また、このスーツ1は、左右の足首部の各々に長方形の足首部ポケット1Bを有する。足首部ポケット1Bは、手首部ポケット1Aと同様に、各足首部の表裏に設けられており、開口部内側には面ファスナー1Baが取り付けられている。
【0016】スーツ1は、左右の肘部の各々に肘の位置を決めるための穴1Fを有する。さらに左右の肘部には、細長い形状をなし腕部と平行な2つの肘部ポケット1Cが穴1Fを挟むように且つ肘の両節に跨るように設けられている。各肘部ポケット1Cの開口部には、これを被せる部材1Caが設けられている。この部材1Caの内側及びポケット1Cの外側には面ファスナー1Cbが取り付けられていて、これによってポケット1Cを閉じることができる。また、肘部の左右各々にはゴム製等の紐1Gが2本ずつ付いており、各紐1Gの両端には面ファスナー1Gaが取り付けられている。
【0017】スーツ1の膝部の左右各々には膝の位置を決めるための穴1Hが設けられ、細長い形状をなし脚部と平行な2つの膝部ポケット1Dが穴1Hを挟むように且つ膝の両節に跨るように設けられている。膝部ポケット1Dは、肘部ポケット1Cと同様に、開口部を被せる部材1Da及び面ファスナー1Dbを有する。また、膝部の左右各々にはゴム製等の紐1Iが2本ずつ付いており、各紐1Iの両端には面ファスナー1Iaが取り付けられている。
【0018】スーツ1の左右の太股部にはそれぞれ帯1Jが接着している。各帯1Jには紐1Jaが付いていて、さらに面ファスナー1Jbが設けられている。また、スーツ1の腰部にも、帯1Kが接着している。この帯1Kにも面ファスナー1Kaが設けられていて、胸部に設けられた面ファスナー1Lとともに、スーツ1の上半身部分を開閉する手段として機能する。
【0019】スーツ1は、左半身部及び右半身部に1本ずつのベルト1Eを有する。各ベルト1Eの一端は太股部の帯1Jに固定され、他端は肩部に固定されている。また、各ベルト1Eは、襟で端部同士を繋げており、中間において腰部の帯1Kと固定している。各ベルト1Eには、腰部の帯1Kの上下にバックル1Mが1個ずつ設けられている。各バックル1Mは、図3に示すように、横方向に弾力性をもつ雄部1Maと、雄部1Maが挿入可能な穴を有する雌部1Mbとからなる。ベルト1Eは雄部1Maで折り返されており、そのため折り返し箇所を変えることによりベルト1Eの長さを調節することができる。
【0020】本実施形態の身体的障害体験キットは、スーツ1の他に、手首用重り、足首用重り、肘用棒、膝用棒、耳栓、ゴーグル3、手袋4、及び杖5を備える。手首用重りは重量250gの長方形状の鉛袋であり、足首用重りは重量500gの長方形状の鉛袋である。これらは、片方の手首部に各2個ある手首部ポケット1A、及び片方の足首部に各2個ある足首用ポケット1Bにそれぞれ収容される。尚、各重りの重量は上記に限定されず、例えば200〜250gの手首用重り、400〜500gの足首用重りを使用すると良い。
【0021】図4に示すように、肘用棒2は円柱状の棒で、長さは25cmである。また、材質はABS樹脂で、僅かに湾曲しうる。膝用棒については、長さが30cmである点を除いて、肘用棒2と同じである。肘用棒2及び膝用棒は、スーツ1の肘部ポケット1C、膝部ポケット1Dにそれぞれ収容される。ゴーグル3については、透視面が小さく、また透視面には半透明の色付きフィルターが貼られている。そのため、このゴーグル3を掛けると、視界が狭くなる上にぼやける。手袋4は薄いニットからなり、これをはめると、皮膚感覚が鈍くなって物を落としやすくなる。
【0022】本実施形態のキットでは、例えば以下のようにして、身体的障害を疑似体験することができる。まず、スーツ1を着て、肘部の穴1F及び膝部の穴1Hに肘の関節部分及び膝の関節部分を当てる。そして、腰部帯1Kの面ファスナー1Ka及び胸部の面ファスナー1Lを接着させることにより、スーツ1を閉じる。各バックル1Mを結合させた後、上半身が前屈みになるようにベルト1Eを調節する。これにて、円背の状態を体験することができる。
【0023】次に、各手首部ポケット1A及び各足首部ポケット1Bに手首用重り及び足首用重りを入れて、各ポケット1A、1Bの面ファスナー1Aa、1Baを接着させる。これによって、腕を上げにくい状態及び脚を体験することができる。続いて、各肘部ポケット1C及び各膝部ポケット1Dに肘用棒及び膝用棒を入れて、各ポケット1C、1Dの面ファスナー1Cb、1Dbを接着させる。これにより、肘を曲げにくい状態及び膝を曲げにくい状態を体験することができる。
【0024】次いで、耳栓、ゴーグル3及び手袋4を装着する。これにて、聴覚障害、視覚障害及び触覚障害を疑似体験することができる。さらに、杖5を使うことにより、杖5の必要性を感じることができる。尚、体に対してスーツ1が大きすぎる場合には、各所に付けられた紐1G、1I、1Jaを巻いて面ファスナー1Ga、1Ia、1Jbを接着させることにより、スーツ1を体にフィットさせる。
【0025】本実施形態のキットでは、スーツ1が一つに繋がっているので、スーツ1を簡単に着ることができる。そして、スーツ1を着て、重り及び棒を所定のポケット1A、1B、1C、1Dに収容するだけで、腕・脚を上げにくい状態及び肘・膝を曲げにくい状態を疑似体験することができる。また、ベルト1Eの長さを調節するだけで、円背の状態を疑似体験することができる。即ち、本実施形態のキットによると、身体的障害を疑似体験するのに手間が掛からず、複数種類の障害の同時体験が容易である。
【0026】本実施形態のキットによると、一部の機能の障害を疑似体験するのも容易である。例えば、左半身部においてのみ又は右半身部においてのみ、重り及び棒の収容やベルト1Eの長さの調節をすることにより、半身不随の状態を疑似体験することができる。さらに、このキットでは、ベルト1Eに2個のバックル1Mが設けられているので、上半身の屈み具合を細かく決めることができる。また、本実施形態では肘用棒及び膝用棒の形状が円柱形なので、これらの棒はどの方向にも湾曲しうる。そのため、あらゆる動きに対する不自由をリアルに感じることができる。
【0027】
【発明の効果】本発明によると、高齢などによる身体的障害を容易に疑似体験することができ、複数種類の障害の同時体験も容易である。
【出願人】 【識別番号】393024197
【氏名又は名称】株式会社坂本モデル
【出願日】 平成12年7月11日(2000.7.11)
【代理人】 【識別番号】100098969
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 正行
【公開番号】 特開2002−20909(P2002−20909A)
【公開日】 平成14年1月23日(2002.1.23)
【出願番号】 特願2000−209586(P2000−209586)