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【発明の名称】 徘徊患者用衣服
【発明者】 【氏名】池田 隆

【氏名】浮田 彰

【氏名】中江 孝文

【要約】 【課題】目立ちにくい構造の磁気マーカ素子を備え、誤信号の少ない磁気システムによる監視・保護を可能とし、着用した際の違和感の少ない徘徊患者用の衣服を提供する。

【解決手段】衣服2のファスナー部3、襟部、ポケット取付部、見返し部分、折り返し部分、袖口部分あるいはゴム通し部分の少なくとも1カ所に磁気マーカ素子1を備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 衣服の少なくとも1カ所にFe族基非晶質合金からなる磁気マーカ素子を備えたことを特徴とする徘徊患者用衣服。
【請求項2】 衣服の襟部、ポケット取付部、ファスナー部分、見返し部分、折り返し部分、袖口部分あるいはゴム通し部分の少なくとも1カ所に磁気マーカ素子を備えたことを特徴とする請求項1記載の徘徊患者用衣服。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Fe族基非晶質合金からなる磁気マーカ素子を備えた衣服、特に老人ホームや病院などにおける徘徊患者用衣服に関するものである。
【0002】
【従来の技術】薄帯や細線形状に代表されるFe族基非晶質金属材料は、優れた軟磁気特性を示すことが知られており、その磁界中での優れたパルス電圧発生特性を生かして、盗難防止や物品監視システムに用いられる磁気マーカ素子として広く応用されている。
【0003】中でも特開昭56−165016号公報ならびに特開昭57−79052号公報により開示されたFeおよびCo基の非晶質金属材料は、磁気ヒステリシス曲線において、ある特定の磁界値において急速に磁化反転を生じる大バルクハウゼン不連続と呼ばれる特徴ある磁気特性を有する磁性材料として知られており、励磁磁界の変化速度に無関係に検出コイルに鋭い誘導電圧パルスを発生する磁気マーカ素子として各種磁気システムに広く応用されている。また、特公昭59−42069号公報により開示されたCo基非晶質金属材料は、低保磁力で高透磁率を示し、微弱磁界中でも優れたパルス電圧発生特性を示す素子として、各種磁気マーカに広く応用されている。
【0004】一方近年、痴呆症における徘徊症状を示す患者の増加が報告されており、介護人(家族)あるいは病院や老人ホームのスタッフの過大な負担や患者本人への束縛などの人権問題が医療分野の問題のみならず、大きな社会問題として議論されている。このような背景から、徘徊防止や徘徊患者保護のための各種システムが提案されており、磁気応用の分野においても特開平9−185786号公報では、永久磁石を磁気マーカとして患者の衣服の裾や患者が履く履物(スリッパなど)に付けることが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記した特開平9−185786号公報では、永久磁石からなる磁気マーカが、徘徊患者用の履物に直接付けられるため、患者が履物を履かない場合が多く有用ではない。また、一般に永久磁石の材料は硬くて変形しずらいため、衣服の裾に付けられた場合は、患者の違和感がひどく不快感が付きまとい着衣をきらうという問題があった。また、一般に建物の建材や医療用機器は着磁した鉄鋼材料(鉄合金やステンレス合金)が用いられている場合が多く、磁気センサにより永久磁石からの漏洩磁界を検知する方法は誤信号を拾いやすいものであった。
【0006】本発明は、目立ちにくい構造の磁気マーカ素子を備え、誤信号の少ない磁気システムによる監視・保護を可能とし、着用した際の違和感の少ない徘徊患者用の衣服を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、磁気マーカ素子として優れた磁気特性を有しかつ、その優れた靱性から変形が容易で、かつ形状としては薄さが薄いかあるいは太さが細いものに限られるFe族基非晶質合金に着目し研究した結果、衣服の生地表面に付ける形態ではなく衣服内に目立たない形態で磁気マーカ素子を具備させることにより前記目的を達成することができることを見い出し本発明を完成した。すなわち本発明は、衣服の少なくとも1カ所にFe族基非晶質合金からなる磁気マーカ素子を備えたことを特徴とする徘徊患者用衣服を要旨とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明においては、衣服にFe族基非晶質合金からなる磁気マーカ素子を備えることが必要であり、そのFe族基非晶質合金としては、磁気ヒステリシス曲線において、ある特定の磁界値において急速に磁化反転を生じる大バルクハウゼン不連続を示す磁気特性や、低保磁力で高透磁率特性を示す軟磁性材料であることが好ましい。中でも、大バルクハウゼン不連続に伴う急峻な磁化反転が生じる臨界磁界値が0.05〜2エルステッドを示しかつ、大バルクハウゼン不連続に伴う急峻な磁化反転において材料の飽和磁化(飽和磁束密度)の30%以上の磁化変化量を生じるものや、10mOeの励磁磁界中1kHzにおける透磁率が1000以上の高透磁率材料が特に好ましい。
【0009】また、本発明に係るFe族基非晶質合金の形態としては、円形、楕円や矩形断面など種々の断面形状を有する細線や薄帯を利用することが可能であり、代表的なものとしては、厚さが10〜50μm、幅が0.05〜5mmのFe基あるいはCo基の非晶質合金薄帯や、太さが10〜250μmのFe基あるいはCo基の非晶質合金細線を上げることができる。中でも、優れた磁気特性や優れた曲げ靱性を備え、取り扱いが容易な円形断面を有する太さが50〜150μmのFe基あるいはCo基の非晶質合金細線は特に好ましい形態として上げることができる。
【0010】なお合金組成としては、非晶質合金の前記の優れた磁気特性を示し、かつ角度が90度以上の曲げ変形が可能な優れた曲げ靱性を有するものであれば、特に限定はされないが、Fe,CoおよびNiの少なくとも1種を65原子%以上含む合金であり非晶質単相を形成するFe族基非晶質合金であることが好ましく、Niが35原子%以下の範囲で、Fe,CoおよびNiから選ばれた1種または2種以上のFe族基の元素の合計が65原子%以上90原子%以下で、非晶質形成を促進する元素としてB,P,C,Si,Al,Ga,Zr,NbおよびTaの群から選ばれた1種または2種以上の元素を合計で10原子%以上35原子%以下含むFe基あるいはCo基合金であることがより好ましい。さらに本発明においては合金組成に耐食性を改善する目的でW,V,Cr,CuやMoが10原子%以下含まれていても特に問題はない。
【0011】本発明に係る磁気マーカ素子に用いる非晶質合金は、X線回折実験により確認される非晶質構造を有することが必要であるが、前記の優れた磁気特性と曲げ靱性が得られる限りにおいては結晶質相が若干含まれていても良い。
【0012】本発明においては、Fe族基非晶質合金からなる磁気マーカ素子を、徘徊症状を示す患者が着用する衣服(徘徊患者用衣服)に目立たなく、かつ違和感なく具備させることが必要であり、徘徊患者用衣服の少なくとも1カ所にFe族基非晶質合金からなる磁気マーカ素子を備えることが必要である。なお、徘徊患者用衣服に、患者が直接見えない部分や直接ふれることのできない部分に磁気マーカ素子を備えることが好ましい。中でも、衣服の襟部、ポケット取付部、ファスナー部分、見返し部分、折り返し部分、袖口部分あるいはゴム通し部分の少なくとも1カ所に前記磁気マーカ素子を備える形態は、本発明に特に好ましい形態である。このように、患者が直接見えない部分や直接ふれることのできない部分に磁気マーカ素子を備えることにより、本発明の徘徊患者用衣服においては磁気マーカ素子が患者により排除されることが防止されるものである。そして、非晶質合金は応力により曲げ変形が容易であり、極薄か、極細形状のため、患者に違和感を与えることなく、衣服中に具備される。
【0013】ここで、衣服の襟部、ポケット取付部、ファスナー部、返し部分、折り返し部分、袖口部分あるいはゴム通し部分に磁気マーカ素子を具備する際に、前記部分中に芯地やテープ材料などとともに磁気マーカ素子を具備する形態は、本発明に好ましい形態である。中でも図1に示すようにフィルムやテープなどの高分子材料で磁気マーカ素子であるFe族基非晶質合金を挟み込み、芯地などとともにファスナー部に具備する形態は、特に好ましい形態である。
【0014】本発明の徘徊患者用衣服は、磁気マーカ素子を具備しているため、誤信号を拾いにくい高信頼性の磁気システムとして既に商品化されている特表平2−504438号公報、特表昭61−501229号公報、特公平1−23699号公報、特公平3−58072号公報などに開示の各種磁気システムにより、容易に検出されることが可能である。そのため、各種システムを応用することにより、病院や老人ホームで容易に徘徊患者の病室、部屋、場所、地域からの出入りを検出、管理することが可能となり、患者本人の安全性を確保したり、介護人(家族)あるいは病院や老人ホームのスタッフの負担を大幅に低減できる。
【0015】なお、本発明に係る非晶質合金は、液体急冷法により得られた非晶質合金をもとに、急冷状態のままや、加工あるいは熱処理を施すことにより容易に得ることができる。例えば液体急冷法としては、従来より液体急冷法として知られている融液抽出法、遠心急冷法、単ロール法あるいは回転液中紡糸法を用いて作製することができる。また、液体急冷法により得られた非晶質合金を圧延や線引などの加工を必要に応じて施したり、大気中熱処理、張力熱処理や磁場中熱処理などの種々の熱処理を施すことにより所望の磁気特性の非晶質合金を得ることができる。さらに、得られた非晶質合金を所望の長さに裁断し、高分子材料からなるフィルムやテープに挟んでおく方法は、後工程での取り扱いが容易であり本発明に係る徘徊患者用衣服の製造において利用価値の高い方法である。
【0016】なお、徘徊患者用衣服としては、公知の種々の形態の衣服に適用される。すなわち、従来から提案されている患者用衣服の襟部、ポケット取付部、ファスナー部分、見返し部分、折り返し部分、袖口部分あるいはゴム通し部分に、各種縫合技術を応用して、磁気マーカ素子を少なくとも1個以上具備させることができる。
【0017】
【実施例】次に、実施例により本発明を図面に基づき具体的に説明する。
実施例1Fe4.5Co73.5Si9B13(原子%)組成からなる合金について、回転液中紡糸法を用いて急冷凝固させ非晶質合金細線を作製した。なお、回転液中紡糸法においては、アルゴン雰囲気下で直径130μmのノズル孔を備える石英ノズル中で合金を溶融させ、350rpmで回転する直径50cmの回転ドラム中の水深35mmの回転水層上に、溶湯をアルゴンガス噴出圧4.5kg/cm2 で噴出することにより、太さ125μmの非晶質合金細線を作製した。このときの石英ノズルと回転水層との距離は2mm以下であった。
【0018】次に、作製した非晶質合金細線の磁気特性について、励磁磁界10mOe、周波数1kHzにおいて比透磁率を測定したところ18000であることが判明した。また、180度曲げを検討したところ破断せずに密着するまで曲げることが可能であった。
【0019】さらに、作製した非晶質合金細線を長さ12cmに切断し厚さ15μmのポリエステルフィルムで挟み込み、図1に示すようにこの磁気マーカ素子1を衣服2のファスナー部3の中央部分に入れ込み徘徊患者用衣服を作製した。
【0020】そして、出入り口にゲート間隔95cmのメト社の2000システムを配置した部屋において、作製した上記衣服を着用した人間の出入りを検討した。その結果、出入り口を上記衣服を着用した人間が移動・通過するたびにシステムにより検知されることを確認した。
【0021】実施例2実施例1で用いたフィルムで挟み込んだ非晶質合金細線からなる磁気マーカ素子1を図2に示すように衣服の袖口4内に入れ込み、徘徊患者用衣服を作製した。そして、実施例1と同様にシステムによる検知特性を検討した。その結果、出入り口を上記衣服を着用した人間が移動・通過するたびにシステムにより検知されることを確認した。
【0022】実施例3実施例1で用いたフィルムで挟み込んだ非晶質合金細線からなる磁気マーカ素子1を図3に示すように衣服(ズボン)5のゴム通し部分6に入れ込み徘徊患者用衣服を作製した。そして、実施例1と同様にシステムによる検知特性を検討した。その結果、出入り口を上記衣服を着用した人間が移動・通過するたびにシステムにより検知されることを確認した。
【0023】実施例4Fe39Co39Si9B13(原子%)組成からなる合金について、回転液中紡糸法を用いて急冷凝固させ非晶質合金細線を作製した。なお、回転液中紡糸法においては、アルゴン雰囲気下で直径130μmのノズル孔を備える石英ノズル中で合金を溶融させ、350rpmで回転する直径50cmの回転ドラム中の水深35mmの回転水層上に、溶湯をアルゴンガス噴出圧4.5kg/cm2 でで噴出することにより、太さ125μmの非晶質合金細線を作製した。このときの石英ノズルと回転水層との距離は2mm以下であった。
【0024】次に、作製した非晶質合金細線の磁気特性について、励磁磁界0.01〜5(Oe)、周波数50Hzの交流磁化特性を測定したところ、臨界磁界値が0.12(Oe)の大バルクハウゼン不連続を示した。また磁化反転の磁束量は飽和磁化の52%であることを確認した。また、180度曲げを検討したところ破断せずに密着するまで曲げることが可能であった。
【0025】さらに、作製した非晶質合金細線を長さ12cmに切断し厚さ15μmのポリエステルフィルムで挟み込むとともに、図1に示す衣服のファスナー部の中央部分に入れ込み徘徊患者用衣服を作製した。
【0026】そして、出入り口にゲート間隔85cmのセンサマティック社のJシステムを配置した部屋において、作製した衣服を着用した人間の出入りを検討した。その結果、出入り口を上記衣服を着用した人間が移動・通過するたびにシステムにより検知されることを確認した。
【0027】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、徘徊患者用衣服の患者本人の直接目に付かない所に、磁気マーカ素子を具備することが可能であり、商品化されているメト社、ダイアロック社、センサマティック社などの各種磁気システムを用いて人間の移動・通過を容易に検出することができる。そのため、本発明の徘徊患者用衣服を用いることにより、病院や老人ホームなどでの徘徊患者の保護を容易に行なうことができる。
【出願人】 【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
【識別番号】500293733
【氏名又は名称】宇野株式会社
【出願日】 平成12年6月21日(2000.6.21)
【代理人】 【識別番号】100068087
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
【公開番号】 特開2002−4118(P2002−4118A)
【公開日】 平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願番号】 特願2000−185515(P2000−185515)