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【発明の名称】 臀部被覆衣類
【発明者】 【氏名】松井 孝明

【氏名】岡本 智子

【要約】 【課題】従来の造形機能を保持しつつ、殿裂部の上方、下方及び殿裂部の蒸れ感・熱のこもり感を解消することができる臀部被覆衣類を提供する。

【解決手段】着用時に臀部の後中心の殿裂部に形成され歩行時の脚部動作に伴い大きさが変化する縦長の空間に対し上方に連通した仙骨部18及び下方に連通したクロッチ部16の通気性が脚部及び臀部14a、14bの通気性よりも良くなるよう構成したので、殿裂部への空気の流れが自然に発生するとともに、さらに歩行動作時には、ふいご現象により当該歩行動作に伴い、仙骨部18、クロッチ部16及び殿裂部の空間に大きな空気の流れが発生する。このため、従来の造形機能を保持しながら、蒸れ感・熱のこもり感を解消することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 着用時に臀部に密着し、少なくとも前記臀部を被覆する臀部被覆衣類であって、着用時に臀部の後中心の殿裂部の上方の少なくとも仙骨近傍及び腰椎近傍の一方を含む第1の箇所、並びに少なくとも殿裂部下方を含む第2の箇所の通気性を、殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分の通気性よりも良くしたことを特徴とする臀部被覆衣類。
【請求項2】 前記第1の箇所は、着用時に臀部の後中心の殿裂部に形成され歩行時の脚部動作に伴い大きさが変化する縦長の空間に対し上方に連通し、前記第2の箇所は、前記空間に対し下方に連通していることを特徴とする請求項1記載の臀部被覆衣類。
【請求項3】 前記第1の箇所及び前記第2の箇所と、前記殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分とに、異なる生地を使用することで、通気性の差異が設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の臀部被覆衣類。
【請求項4】 1枚の中で通気性の良い部分と通気性の悪い部分とを編み分けた生地を使用することで、前記第1の箇所及び前記第2の箇所と、前記殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分とに、通気性の差異が設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の臀部被覆衣類。
【請求項5】 前記殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分に樹脂加工を施すことで、前記第1の箇所及び前記第2の箇所に対し相対的に通気性を悪くしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の臀部被覆衣類。
【請求項6】 前記第1の箇所及び前記第2の箇所にオパール加工を施すことで、前記殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分に対し相対的に通気性を良くしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の臀部被覆衣類。
【請求項7】 前記第1の箇所では、少なくとも前記殿裂部の上端付近を頂点とする略二等辺三角形の領域における通気性を、前記殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分の通気性よりも良くしたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の臀部被覆衣類。
【請求項8】 前記第2の箇所では、少なくとも前記殿裂部の下端付近を頂点とする略二等辺三角形の領域における通気性を、前記殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分の通気性よりも良くしたことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の臀部被覆衣類。
【請求項9】 前記第1の箇所及び前記第2の箇所に使用する生地がメッシュ地であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の臀部被覆衣類。
【請求項10】 前記第1の箇所の通気性を、前記第2の箇所の通気性よりも良くしたことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の臀部被覆衣類。
【請求項11】 通気性の良い素材を使用する方法及び面積を大きくする方法の少なくとも1つを採用することで、前記第1の箇所の通気性を、前記第2の箇所の通気性よりも良くしたことを特徴とする請求項10記載の臀部被覆衣類。
【請求項12】 前記臀部被覆衣類は、ブリーフ、ショーツ、ガードル、ハイウエスト型のガードル、スポーツ用ボトム、スパッツ及びボディースーツを含むことを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の臀部被覆衣類。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、着用時に臀部に密着し、少なくとも臀部を被覆する臀部被覆衣類に関する。
【0002】なお、本明細書において、クロッチ部は本発明に係る第2の箇所に相当し、股下箇所だけでなく、少なくとも殿裂部下方を含む領域を意味する。また、仙骨部は本発明に係る第1の箇所に相当し、いわゆる仙骨付近だけでなく、殿裂部の上方の少なくとも仙骨近傍及び腰椎近傍の一方を含む領域を意味する。
【0003】また、本明細書で「伸縮性が低い」とは、外力に対し伸縮しにくく、伸ばした場合に強い反発力(縮む力)を生じる性質を意味する。また、「伸縮性が高い」とは、外力に対し伸縮し易く、伸ばした場合に生じる反発力(縮む力)が弱いという性質を意味する。
【0004】
【従来の技術】ガードル、ショーツ等の臀部にフィットするボトム下着は、お腹押さえやヒップアップといった体型補整機能を有し、広く普及している。ただ、このようなボトム下着は、夏季の着用時に汗をかいて、蒸れ感や熱のこもり感を感じるという題点があった。
【0005】特に、図9に示す臀部の後中心の殿裂部90、この殿裂部90の上方に連通した仙骨部92及び下方に連通したクロッチ部94において、皮膚温度が高く発汗量も多いという実験データが得られており、これらの部位で蒸れ感・熱のこもり感が顕著に感じられている。
【0006】既存商品には、一様に通気性の高い素材を使用したものがある。また、殿裂部、クロッチ部、腰部周辺等にメッシュ地等の通気性の良い素材を用いた下着等が各種提案されている(実用新案登録3052111号、実開昭49−58525号、実公平3−54092号、実開昭60−117804号、実公昭43−16648号等)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、通気性を良くしただけでは空気の動きはあまり発生しないため、熱のこもり感を解消する効果はあまり高くなく、着用者に涼しさ感を実感してもらえないのが現状である。
【0008】本発明は、上記課題を解消するために成されたものであり、従来の造形機能を保持しつつ、仙骨部、クロッチ部及び殿裂部の蒸れ感・熱のこもり感を解消することができる臀部被覆衣類を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係る臀部被覆衣類は、着用時に臀部に密着し、少なくとも前記臀部を被覆する臀部被覆衣類であって、着用時に臀部の後中心の殿裂部の上方の少なくとも仙骨近傍及び腰椎近傍の一方を含む第1の箇所、並びに少なくとも殿裂部下方を含む第2の箇所の通気性を、殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分の通気性よりも良くしたことを特徴とする。
【0010】ここで、第1の箇所は、仙骨近傍及び腰椎近傍のうち一方のみを含む場合もあれば、両方とも含む場合もあり、また、仙骨近傍及び腰椎近傍を含みながらさらに面積が広いこともある。第2の箇所は、殿裂部下方のみの場合もあれば、殿裂部下方を含んで股下箇所まで含む場合もある。
【0011】本発明によれば、着用時に臀部の後中心の殿裂部の上方の少なくとも仙骨近傍及び腰椎近傍の一方を含む第1の箇所、並びに少なくとも殿裂部下方を含む第2の箇所の通気性を、殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分の通気性よりも良くしたので、蒸れ感や熱のこもり感を感じやすい臀部箇所において殿裂部の上方と下方に空気の入口と出口が形成されることとなる。このため、殿裂部に空気の流通が発生し従来のものに比べて良好な通気性を実現することができ、臀部箇所における蒸れ感や熱のこもり感を解消することができる。また、通気性に差異を設けるという構造で実現できるので、従来からのヒップ等の造形機能を保持することができる。
【0012】また、請求項2に記載したように、第1の箇所が、着用時に臀部の後中心の殿裂部に形成され歩行時の脚部動作に伴い大きさが変化する縦長の空間に対し上方に連通し、第2の箇所が、前記空間に対し下方に連通した構成とすることが望ましい。
【0013】歩行などの動作により上記縦長の空間の形状は変化し、また動作そのものによって空気の流れが生じる。このような縦長の空間に対し上方に連通した第1の箇所及び下方に連通した第2の箇所の通気性を、殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分の通気性よりも良くしたので、歩行時の脚部動作に伴い縦長の空間の大きさが変化すると、相対的に通気性が悪い殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分がポンプ部に、相対的に通気性が良い第1の箇所及び第2の箇所が吸排気部になり、ふいご現象により以下のような空気の流れが発生する。
【0014】即ち、図2(a)のように歩行時に一方の足が前に出たとき、図2(b)のように上記殿裂部の空間が狭まるので、当該殿裂部に貯まっていた空気は、上方に連通した第1の箇所及び下方に連通した第2の箇所へ流れ排出される。そして、図2(c)のように両足が揃ったとき、図2(d)のように上記殿裂部の空間が広がるので、外気が第1の箇所及び第2の箇所から吸い込まれ当該殿裂部の空間に流れ込む。
【0015】このように着用時の歩行動作に伴い、第1の箇所、第2の箇所、及び殿裂部の空間に空気の流れが発生するので、これらの部位の通気性がさらに良くなり、蒸れ感・熱のこもり感を解消することができる。
【0016】本発明に係る臀部被覆衣類では、通気性の差異を設けるために、さまざまな手法を採用することができる。例えば、請求項3のように、第1の箇所及び第2の箇所と、殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分とに、異なる生地を使用することで、通気性の差異を設けてもよいし、請求項4のように、1枚の中で通気性の良い部分と通気性の悪い部分とを編み分けた生地を使用することで、第1の箇所及び第2の箇所と、殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分とに、通気性の差異を設けてもよい。
【0017】また、請求項5のように、殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分に樹脂加工、例えば、樹脂の接着等、を施すことで、第1の箇所及び第2の箇所に対し相対的に通気性を悪くしてもよいし、請求項6のように、第1の箇所及び第2の箇所にオパール加工、即ち、生地を溶かして薄くする加工、を施すことで、殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分に対し相対的に通気性を良くしてもよい。このように本発明の構成はさまざまな手法で実現可能であるという利点がある。
【0018】本発明に係る第1の箇所では、請求項7のように、少なくとも殿裂部の上端付近を頂点とする略二等辺三角形の領域における通気性を、殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分の通気性よりも良くしたことを特徴とする。当該殿裂部の上端付近を頂点とする略二等辺三角形の領域は、殿裂部の空間と直結した部分なので、少なくとも当該略二等辺三角形の領域における通気性を相対的に良くすることで、上記ふいご現象による歩行時の空気の流れを発生させることができ、第1の箇所及び殿裂部の蒸れ感・熱のこもり感を解消することができる。
【0019】同じく、本発明に係る第2の箇所では、請求項8のように、少なくとも殿裂部の下端付近を頂点とする略二等辺三角形の領域における通気性を、殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分の通気性よりも良くしたことを特徴とする。当該殿裂部の下端付近を頂点とする略二等辺三角形の領域は、殿裂部の空間と直結した部分なので、少なくとも当該略二等辺三角形の領域における通気性を相対的に良くすることで、上記ふいご現象による歩行時の空気の流れを発生させることができ、第2の箇所及び殿裂部の蒸れ感・熱のこもり感を解消することができる。
【0020】本発明では、請求項9のように、第1の箇所及び第2の箇所に使用する生地としてメッシュ地を採用することができる。なお、第2の箇所の股下箇所に当接するクロッチ布をメッシュ地とし、このクロッチ布の内側に綿などの生地をさらに取り付けてもよい。
【0021】本発明では、請求項10のように、第1の箇所の通気性が第2の箇所の通気性よりも良くなるよう構成してもよい。一般に、殿裂部の上方の第1の箇所は第2の箇所よりも熱がこもりやすく体温そのものが若干高い箇所である。このため、第1、第2の箇所の両方の通気性を良くしつつも、これらの間では、第1の箇所の通気性が第2の箇所の通気性よりも良くなるよう構成することで、殿裂部の空間において下方から上方への通気が促進され、第1の箇所での放熱を促進し、例えば、着用者が涼しさを感じやすくなる。
【0022】このとき、請求項11のように、通気性の良い素材を使用する方法及び面積を大きくする方法の少なくとも1つを採用することで、第1の箇所の通気性を第2の箇所の通気性よりも良くすることができる。即ち、通気性の良い素材を使用する方法のみを採用してもよいし、面積を大きくする方法のみを採用してもよいし、これら両方を組み合わせて採用してもよい。
【0023】なお、通気性の良い素材を使用すれば、面積は小さくても通気性を良くする効果は大きい。また、通気性の差としては、第1の箇所の通気性は第2の箇所の通気性の2倍以上が好ましい。また、通気性を良くする第1の箇所の面積は10平方センチメートル以上とすることが好ましく、さらには40平方センチメートル以上とすることがより好ましい。第2の箇所の面積は5平方センチメートル以上とすることが好ましく、さらには10平方センチメートル以上とすることがより好ましい。
【0024】本発明は、臀部に密着し少なくとも臀部を被覆する衣類であれば、さまざまなものに適用でき、請求項12のように、本発明に係る臀部被覆衣類は、ブリーフ、ショーツ、ガードル、ハイウエスト型のガードル、スポーツ用ボトム、スパッツ及びボディースーツを含んでいる。このように汎用性が極めて高いという利点がある。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明に係る臀部被覆衣類の実施形態としてガードルの例を説明する。
【0026】図1(a)〜(c)に示すように、ガードル10は、前身頃12、左右一対の脚部及び臀部14a、14b、クロッチ部16及び仙骨部18から成り、これらの生地は互いに縫着されている。
【0027】本実施形態で特徴的なことは、ガードル10において、脚部及び臀部14a、14bに標準的又はそれ以下の通気性を有する生地(例えばパワーネット)を、クロッチ部16及び仙骨部18に上記生地よりも通気性の良い生地(例えばメッシュ布)を用いることで、クロッチ部16及び仙骨部18の通気性が脚部及び臀部14a、14bの通気性よりも相対的に良くなるよう構成されていることである。
【0028】通気性に差異を設ける方法としては、上記のように通気性の異なる複数の布をはぎ合わせる方法(所謂カット&ソー)を採用してもよいし、1枚の生地の中に編み組織を変化させることにより通気性に差異を設け、通気性の異なる編み組織部位が所要箇所となるよう、生地を裁断し縫合する方法を採用してもよい。以下、採用可能な方法を説明する。
【0029】複数の布をはぎ合わせる方法としては、クロッチ部16及び仙骨部18に当接する通気性の良い素材として、経編素材であるメッシュパワーネット、柄パワーネット、ラッセルレース、ダブルラッセル等をあてる方法や、クロッチ部16及び仙骨部18にメッシュ調組織又は針抜き組織の丸編素材をあてる方法を採用することができる。なお、脚部及び臀部14a、14bの身生地素材に、サテンパワーネット、ツーウェイトリコット、ツーウェイラッセル、丸編ニット等を用いる方法を採用することができる。
【0030】一方、1枚仕立てで通気性に差異を設ける方法としては、編み組織を切り替える方法、樹脂加工による後処理、オパール加工による後処理等を採用することができる。このうち編み組織を切り替えて1枚の生地の中に通気性の異なる部位を形成する方法には、シングルラッシェル機による編み組織変化、丸編み機による編み組織変化、ダブルラッシェル機による編み組織変化、ダブルニット機による編み組織変化等が挙げられる。上記樹脂加工による後処理としては、生地に樹脂を接着或いは溶着するなどの加工を行うことで通気性を低下させる等の処理が挙げられる。オパール加工による後処理としては、生地の所要箇所を溶融し薄くさせることによって通気性の良い箇所を形成する等の処理が挙げられる。
【0031】次に、図2を用いて、本実施形態の作用を説明する。ガードル10を着用したとき、殿裂部に沿って縦長の空間30(図2(d)参照)が形成されるが、歩行時の脚部動作により身体20とガードル10との間隔が変化するのに伴い、空間30の大きさも変化する。ガードル10では、仙骨部18及びクロッチ部16の通気性を脚部及び臀部14a、14bの通気性よりも良くしたので、歩行時の脚部動作に伴い空間30の大きさが変化すると、相対的に通気性が悪い脚部及び臀部14a、14bがポンプ部に、相対的に通気性が良い仙骨部18及びクロッチ部16が吸排気部になり、ふいご現象により以下のような空気の流れが発生する。
【0032】即ち、歩行時には、図2(a)のように一方の足が他方の足よりも前に出た状態と、図2(c)のように両足が揃った状態とが繰り返すことになるが、このうち図2(a)のように一方の足が前に出たとき、図2(b)のように空間30が狭まるので、空間30に貯まっていた空気は、上方に連通した仙骨部18及び下方に連通したクロッチ部16へ流出し仙骨部18及びクロッチ部16から外部へ排出される。そして、図2(c)のように両足が揃ったとき、図2(d)のように空間30が広がるので、外気が仙骨部18及びクロッチ部16から吸い込まれ空間30に流れ込む。このため、歩行中は殿裂部の空間30からの空気の排出と空気の吸い込みとが繰り返すことになる。
【0033】このように着用時の歩行動作に伴い、仙骨部18及びクロッチ部16と殿裂部の空間30との間に空気の流れが発生するので、これらの部位の蒸れ感・熱のこもり感を解消することができる。また、所要箇所の通気性に差異を設けるという構造で実現することができ、その他の部位についてはヒップアップやお腹おさえのための構造を併用してもよく、また、通気性を必要としない部位にはサテンパワーネットなどの伸縮性の低い生地を使用することにより、従来からガードルが有するヒップ等の造形機能を保持することができる。
【0034】以下、仙骨部18及びクロッチ部16の通気性の良い部分(以下、「通気性良好部」という)の各種変形例を説明する。
【0035】まず、仙骨部18に設ける通気性良好部は、図3(a)のように殿裂部の上端付近を頂点とし上端まで到達した略二等辺三角形の領域18Aとしてもよいし、図3(b)のように殿裂部の上端付近を頂点の1つとした菱形の領域(いわゆる仙骨菱形の領域)18Bとしてもよい。また、図10(a)のように殿裂部の上端付近から上方へ広がる半円状の領域18Cとしてもよいし、図10(b)のように仙骨部及び腰部に当接する底辺の長い三角形状の領域18Dとしてもよいし、図10(c)のように五角形状の領域18Eとしてもよい。また、仙骨部18に設ける通気性良好部の形状は、花柄の模様など左右非対称な形状でもかまわない。
【0036】また、クロッチ部16に設ける通気性良好部は、図4に示す各種形状を採用することができる。なお、図4の各図において上側が殿裂部の空間30(図2(d)参照)に連通した側である。
【0037】即ち、通気性良好部として、図4(a)のように殿裂部の空間30(図2(d)参照)と連通した略二等辺三角形の領域16Aを含む略五角形とし領域16Aの先端に丸みを持たせた態様、図4(b)のように図4(a)と同様の略五角形とし領域16Bの先端を尖った形状とした態様、図4(c)のように図4(a)の略五角形から領域16Aを除いた略四角形とした態様、図4(d)のように図4(a)と同様だが領域16Cを略半円形とした態様、図4(e)のように図4(a)の領域16Aのみを通気性良好部とした態様、図4(f)のように図4(b)の領域16Bのみを通気性良好部とした態様、図4(g)のように図4(d)の領域16Cのみを通気性良好部とした態様など、様々な態様を採用することができる。また、クロッチ部16に設ける通気性良好部の形状は、花柄の模様など左右非対称な形状でもかまわない。
【0038】また、クロッチ部全体に1枚のメッシュ地のクロッチ布をあて、このクロッチ布の内側に綿などの生地をさらに取り付けてもよい。
【0039】ところで、本実施形態では、シングルジャガードラッセル編物による1枚の中で通気性の良い部分と通気性の悪い部分とを編み分けた生地を使用することで、通気性の異なる部分を設けることができる。その手法を、図11を用いて説明する。
【0040】図11に示す1枚のシングルジャガードラッセル編物100の中に、半円弧状に編み組織を切替え、領域100A、100Bを形成する。このうち領域100Bはサテン調編み組織とする。サテン調編み組織は編み目が比較的つまっており通気性が低いが、一方で伸縮性が低い組織なので、この領域100Bからロングガードルの左右見頃104を裁断し使用する。このように伸縮性の低い見頃でロングガードルを形成するため、体型補整機能を持たせることができる。
【0041】一方の領域100Aはメッシュ調編み組織とする。メッシュ調編み組織はサテン調編み組織に比べ編み目が粗く通気性が良い。このようなメッシュ調編み組織の領域100Aに、ロングガードルの上方の通気性を良くする部分が当接するように、左右見頃104を裁断する。また、クロッチ部に用いるクロッチ布102も領域100Aから裁断する。
【0042】このような左右見頃104の一対と、クロッチ布102と、図示しない腹部布の計4枚を縫合することによって、図1のようなロングガードル10となる。なお、この場合、仙骨部18は略二等辺三角形となるが、その2本の等辺部分は内側に窪んだ曲線となる。
【0043】また、本実施形態では、1枚の生地の中に異なる緊締力部及び異なる通気性部を編み分けることができるシングルジャガードラッセル編地のさらなる応用例として、当該シングルジャガードラッセル編地をショートガードル及びロングガードルに適用した例を説明する。
【0044】この手法の要点は、ショートガードルの例で説明すると、図13に示す領域S1、S3、S4の様に曲線部を有する大きなジャカード柄を生地に編み込んで、1枚の生地の中に異なる通気性部を編み分け、さらに、生地の編み方向(矢印P方向)に帯状の領域SA、SB、SCで弾性糸を直線状に切り替えることによって領域SA、SB、SCにおける緊締力に差を設けることを特徴とする。こうした特徴を有するシングルジャガードラッセル編地を用いてガードルを作製するため、ヒップラインから2枚の生地を縫合することによって生じる縫合ラインの段差を無くすことができるとともに、縫合箇所も少なくて済むため、縫製の手間を削減することができ、生産効率を向上させることができる。
【0045】以下、ショートガードルへの適用例、ロングガードルへの適用例を順に説明する。まず、ショートガードルへの適用例に関する図12(a)はショートガードルへの適用例を斜め後方から見た図を、図12(b)は正面から見た図を示し、図13は編地の裁断前の状態を示している。
【0046】図13では、領域S3が強サテン編み組織、領域S1、S4がメッシュ編み組織、領域S2、S5が弱サテン編み組織とされ、ラインC1が左右身頃の裁断線を表している。この裁断線C1の内側における領域S1〜S5が、それぞれ図12の領域S1〜S5に対応する。
【0047】図12(a)、(b)においては、領域S3が、ヒップ下部からウエストにかけて湾曲したヒップ下部の幅約7cmの帯状の領域に該当し、この領域S3を、伸びの少ない強サテン編み組織としたことで、ヒップアップ効果を奏する。
【0048】また、領域S4が殿裂部下方箇所に、領域S1が殿裂部上方箇所に、それぞれ相当し、これら領域S4、S1を、目の粗いメッシュ編み組織とし、他の目の詰まった強サテン編み組織や弱サテン編み組織部分よりも通気性を良くしている。これにより、前述したように、殿裂部上方の領域S1と殿裂部下方の領域S4間において、空気が流通し、蒸れを感じない通気性の良いガードルが実現する。なお、一例として、領域S4は幅9cm、高さ3.5cmのかまぼこ形状とし、領域S1は底辺15cm、高さ9cmの二等辺三角形状としている。
【0049】領域S2、S5は、弱サテン編み組織とし、強サテン編み組織の領域S3よりは伸びを良くすることで、ヒップの膨らみに追随できる様にしている。
【0050】一方、図13において生地の編み方向(矢印P方向)に沿って、弾性糸による緊締力の切り替えが施されており、領域SCの緊締力が最も強く、以下、領域SB、領域SAの順とされている。一例として、領域SAには、200デシテックス(以下「dtex」と表記する)の弾性糸を1本挿入し、ヒップ下部に相当する幅4cmの領域SBには、200dtexの弾性糸を2本挿入している。また、裾ラインに相当する幅3.5cmの領域SCには、200dtexの弾性糸を3本挿入している。
【0051】これにより、ヒップ下部においては、幅約7cmの緊締力の強い強サテンのジャカード編み組織の領域S3と、弾性糸が2本挿入された幅4cmの領域SB、及びその下に弾性糸が3本挿入された幅3.5cmの領域SCとが、ほぼ重なることから、最も緊締力の強い部分が形成され、ヒップアップ効果が増大する。
【0052】次に、ロングガードルへの適用例を説明する。図14(a)はロングガードルへの適用例を斜め後方から見た図を、図14(b)は正面から見た図を示し、図15は編地の裁断前の状態を示している。
【0053】図15では、領域L3が強サテン編み組織、領域L1、L4がメッシュ編み組織、領域L2、L5が弱サテン編み組織とされ、ラインC2が左右身頃の裁断線を表している。この裁断線C2の内側における領域L1〜L5が、それぞれ図14の領域L1〜L5に対応する。
【0054】図14(a)、(b)においては、領域L3が、ヒップ下部からウエストにかけて湾曲したヒップ下部の幅約7cmの帯状の領域に該当し、この領域L3を、伸びの少ない強サテン編み組織としたことで、ヒップアップ効果を奏する。
【0055】また、領域L4が殿裂部下方箇所に、領域L1が殿裂部上方箇所に、それぞれ相当し、これら領域L4、L1を、目の粗いメッシュ編み組織とし、他の目の詰まった強サテン編み組織や弱サテン編み組織部分よりも通気性を良くしている。これにより、前述したように、殿裂部上方の領域L1と殿裂部下方の領域L4間において、空気が流通し、蒸れを感じない通気性の良いガードルが実現する。なお、一例として、領域L4は幅5cm、高さ4.5cmのかまぼこ形状とし、領域L1は底辺16cm、高さ8cmの二等辺三角形状としている。
【0056】領域L2、L5は、弱サテン編み組織とし、強サテン編み組織の領域L3よりは伸びを良くすることで、ヒップの膨らみに追随できるようにしている。
【0057】一方、図15において生地の編み方向(矢印Q方向)に沿って、弾性糸による緊締力の切り替えが施されており、領域LCの緊締力が最も強く、以下、領域LB、領域LAの順とされている。一例として、領域LAには、200dtexの弾性糸を1本挿入し、ヒップ下部から太腿に相当する幅18cmの領域LBには、200dtexの弾性糸を2本・1本・1本挿入している。これは、ウェール毎に、2本、1本、1本、2本、1本、1本、2本、1本、1本…と挿入していることを意味する。また、裾ラインに相当する幅3cmの領域LCには、200dtexの弾性糸を2本挿入している。
【0058】これにより、ヒップ下部においては、幅約7cmの緊締力の強い強サテンのジャカード編み組織の領域L3と、弾性糸が2本・1本・1本挿入された領域LBとが、ほぼ重なることから、緊締力の強い部分が形成され、ヒップアップ効果が増大する。
【0059】なお、図13、図15では、ショート、ロングともに、ヒップに充当する見頃を示しており、これらの左右見頃は後中心の殿裂部で縫合される。これに別途、腹部布1枚とクロッチ布1枚とが縫合されガードルを形成する。
【0060】本実施形態ではガードルの例を説明したが、本発明は、臀部に密着し少なくとも臀部を被覆する衣類であれば、さまざまなものに適用することができる。例えば、図5に示すようなハイウエスト型のガードル40、図6に示すようなショーツ50、図7に示すようなブリーフ60、図8に示すようなボディースーツ70、その他、スポーツ用ボトムやスパッツ等においても、仙骨部及びクロッチ部(各図の斜線部分)の通気性を相対的に高くすることで、上記同様のふいご現象による歩行時の空気の流れを発生させることができ、仙骨部、殿裂部の蒸れ感・熱のこもり感を解消することができる。
【0061】なお、本発明は、ストッキングやタイツにも応用することができる。丸編みの編み組織を切り替えることによって、殿裂部上方及び下方を、その他の箇所に比べ、通気性の良い編み組織とすることで実現することができる。
【0062】また、本発明を適用する場合、ウエスト布にも、殿裂部上方及び下方と同様に、通気性の良いメッシュ布を採用してもよく、蒸れ感をさらに減少させることができる。
【0063】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、着用時に臀部の後中心の殿裂部に形成された縦長の空間に対し、上方に連通した仙骨部及び下方に連通したクロッチ部の通気性を、殿裂部及び当該殿裂部を挟んで左右部分の通気性よりも良くしたので、殿裂部への空気の流れが自然に発生するとともに、さらに歩行動作時には、ふいご現象により当該歩行動作に伴い、仙骨部、クロッチ部、及び殿裂部の空間に空気の流れが発生し、これらの部位の蒸れ感・熱のこもり感を解消することができる。
【出願人】 【識別番号】000139399
【氏名又は名称】株式会社ワコール
【出願日】 平成14年3月19日(2002.3.19)
【代理人】 【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹 (外2名)
【公開番号】 特開2002−371402(P2002−371402A)
【公開日】 平成14年12月26日(2002.12.26)
【出願番号】 特願2002−75969(P2002−75969)