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【発明の名称】 シャツ
【発明者】 【氏名】山内 知子

【要約】 【課題】窮屈感がなく、且つ着用者の体にフイットし、さらに着用者が動いた時に着崩れしないシャツを提供することを課題とする。

【解決手段】本発明のシャツ1は、後身頃3のバストラインBB−BBにおける中心線から端部までの幅WBが、前身頃のバストラインBF−BFにおける打合せライン16から端部までの幅WFよりも大きい。また背面側にタック50がある。そのため背面側に布の余裕が大きく、動きやすい。また前側の鎌深が後ろ側に比べて長いので、胸の部分が立体的に盛り上がり、シャツの生地が体にフイットし、見た目が美しい。シャツ1では、袖口辺42は、両端側が僅かに先端側に突出しているので、袖は袖下側51が従来のものに比べて長く、腕を真上に上げる様な運動をしても、裾がずり上がらない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 腕が挿通される筒状部分を構成する本体袖片と、袖口に取り付けられるカフス部材によって構成される袖を備えたシャツにおいて、本体袖片の袖口部分の展開図形は、袖丈のラインよりも袖下側の部位がカフス側に突出していることを特徴とするシャツ。
【請求項2】 カフス側への突出量は、0.3〜1.0cmであることを特徴とする請求項1に記載のシャツ【請求項3】 袖口部分の展開図形は、袖口の端部を構成する線を4等分し、その各点を端からa,b,c,d,eとしたとき、線分a,b及びd,eは、袖丈のラインの垂直線に対して2°〜10°の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャツ。
【請求項4】 前身頃、後身頃、その他の部材が縫製されてなるシャツにおいて、後身頃のバストラインにおける中心線から端部までの幅と、前身頃のバストラインにおける打合せラインから端部までの幅の比率は、53:47以上、後身頃側の方が大きいことを特徴とするシャツ。
【請求項5】 前身頃、後身頃、その他の部材が縫製されてなるシャツにおいて、後身頃のバストラインから裾にかけての範囲における中心線から端部までの平均幅と、前身頃の同範囲における打合せラインから端部までの平均幅の比率は、53:47以上、後身頃側の方が大きいことを特徴とするシャツ。
【請求項6】 袖を有し、背面側にタックがあり、タックの袖側の折り返し位置は、肩端部から6.5〜7.5cmの部位であることを特徴とするシャツ。
【請求項7】 前身頃、後身頃、その他の部材が縫製されてなるシャツにおいて、前面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さは、背面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さに比べて0.5〜2cm長いことを特徴とするシャツ。
【請求項8】 前身頃、後身頃、袖、ヨークその他の部材が縫製されてなるシャツにおいて、前身頃は肩傾斜が13°〜20°であることを特徴とする請求項7に記載のシャツ。
【請求項9】 前身頃、衿、後身頃、袖、ヨークその他の部材が縫製されてなるシャツにおいて、衿を4等分し、衿の他の部材との取り付け位置を端からf,g,h,i,jとし、前身頃の端部はg及びiに取り付けられ、前身頃の肩傾斜が13°〜20°であることを特徴とする請求項7又は8に記載のシャツ。
【請求項10】 前身頃、後身頃、袖、ヨーク、その他の部材が縫製されてなるシャツにおいて、前身頃は肩傾斜が13°〜20°であり、後身頃のバストラインにおける中心線から端部までの幅と、前身頃のバストラインにおける打合せラインから端部までの幅の比率は、53:47以上、後身頃側の方が大きく、シャツの前面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さは、背面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さに比べて0.5〜2cm長く、袖は腕が挿通される筒状部分を構成する本体袖片と、袖口に取り付けられるカフス部材によって構成され、本体袖片の袖口部分の展開図形は、袖口の端部を構成する線を4等分し、その各点を端からa,b,c,d,eとしたとき、線分a,b及びd,eは、袖丈のラインの垂直線に対して2°〜10°の範囲にあり、袖丈のラインよりも袖下側の部位がカフス側に突出していることを特徴とするシャツ。
【請求項11】 袖を有し、背面側にタックがあり、タックの袖側の折り返し位置は、肩端部から6.5〜7.5cmの部位であることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,7,8,9,10のいずれかに記載のシャツ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ワイシャツ等の袖付きのシャツに関するものであり、特に着心地の良さとシルエットの美しさを両立させたシャツに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ワイシャツ、カッターシャツ、ドレスシャツ等と称される袖付きのシャツは、男性の通勤着や仕事着等として極めて大量に生産されている。これらのシャツは、前身頃、後身頃、ヨーク、袖、衿といったパーツが縫製されて作られる。図12は、従来技術のシャツのパーツを示す平面図である。より正確には、図12は、従来技術のシャツの型紙を表したものであり、縫代は省略されている。図12において、100は前身頃であり、101は後身頃であり、102はヨークであり、103は袖であり、104はカフスであり、105は衿である。前身頃100、袖103、カフス104は片側だけが図示されている。また後身頃101及びヨーク102は、半分だけが図示されている。
【0003】従来技術のシャツは、上記した各パーツが縫い合わされて作られるが、縫製の際に後身頃にタックが形成される。タックの位置は、図12の後身頃101の「V」字線110の部位である。従来技術においては、タックはシャツの中心を基準としてから肩幅の一定の割合の部位に設けられる。
【0004】また従来技術のシャツでは、バストラインにおける前側の部品の長さと、後ろ側の部品の長さが略同じである。型紙に基づいて説明すると、前身頃100のバストラインBF−BFにおける打合せライン111から端部までの幅WFと、後身頃のバストラインBB−BBにおける幅WBは等しい。
【0005】また従来技術のシャツでは、前面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さは、背面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さと等しい。型紙に基づいて説明すると、前身頃100の最高部からバストラインBF−BFまでの長さLFと、後身頃の最高部からバストラインBB−BBまでの長さLBは等しい。
【0006】また従来技術のシャツでは、前身頃100の肩傾斜θは12°程度である。
【0007】さらに従来技術のシャツでは、袖103の袖口側のライン113が直線である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記したシャツは、古くから普遍的に使用されているものである。しかしながら市場においては、窮屈感がなく、且つ着用者の体にフイットし、さらに着用者が動いた時に着崩れしないシャツの開発が望まれている。すなわち窮屈感の解消を主眼とするシャツは、一般に、全体形状が大きいものであり、締まりがなく、恰好が悪い。一方、デザインを重視したシャツは、着用者の体にフイットするものの、窮屈感は否めない。またデザインを重視したシャツは、例えば腕を上げ下げした時に裾がずれ上がり、ズボンからはみ出して着崩れを起こす。そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、窮屈感がなく、且つ着用者の体にフイットし、さらに着用者が動いた時に着崩れしないシャツを提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】そして上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、腕が挿通される筒状部分を構成する本体袖片と、袖口に取り付けられるカフス部材によって構成される袖を備えたシャツにおいて、本体袖片の袖口部分の展開図形は、袖丈のラインよりも袖下側の部位がカフス側に突出していることを特徴とするシャツである。
【0010】本発明のシャツでは、本体袖片の袖口部分の展開図形が特異であり、袖丈のラインよりも袖下側の部位がカフス側に突出している。そのため本発明のシャツの袖は、袖下側が従来のものに比べて長い。従って本発明のシャツは、腕を上げる際に袖下側に余裕があり、裾側が上がらない。
【0011】また請求項2に記載の発明は、カフス側への突出量は、0.3〜1.0cmであることを特徴とする請求項1に記載のシャツである。
【0012】さらに請求項3に記載の発明は、袖口部分の展開図形は、袖口の端部を構成する線を4等分し、その各点を端からa,b,c,d,eとしたとき、線分a,b及びd,eは、袖丈のラインの垂直線に対して2°〜10°の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャツである。
【0013】本発明のシャツでは、袖口の袖下近傍を重点的にカフス側に突出せしめている。そのため腕を垂直に上げる運動の際に、脇の下に余裕が生じ、裾側が上がらない。
【0014】また請求項4に記載の発明は、前身頃、後身頃、その他の部材が縫製されてなるシャツにおいて、後身頃のバストラインにおける中心線から端部までの幅と、前身頃のバストラインにおける打合せラインから端部までの幅の比率は、53:47以上、後身頃側の方が大きいことを特徴とするシャツである。
【0015】さらに請求項5に記載の発明は、前身頃、後身頃、その他の部材が縫製されてなるシャツにおいて、後身頃のバストラインから裾にかけての範囲における中心線から端部までの平均幅と、前身頃の同範囲における打合せラインから端部までの平均幅の比率は、53:47以上、後身頃側の方が大きいことを特徴とするシャツである。
【0016】請求項4,5に記載のシャツでは、後身頃が前身頃に比べて幅が広い。そのため前で腕を抱える運動をしたとき、肩甲骨側に余裕があり、つっぱり感が少ない。
【0017】また請求項6に記載の発明は、袖を有し、背面側にタックがあり、タックの袖側の折り返し位置は、肩端部から6.5〜7.5cmの部位であることを特徴とするシャツである。
【0018】本発明のシャツでは、背面側にタックが設けられ、当該タックの位置は従来のものよりも袖側に寄っている。そのため前で腕を抱える運動をしたとき、肩甲骨側に余裕があり、つっぱり感が少ない。
【0019】また請求項7に記載の発明は、前身頃、後身頃、その他の部材が縫製されてなるシャツにおいて、前面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さは、背面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さに比べて0.5〜2cm長いことを特徴とするシャツである。
【0020】本発明のシャツでは、前面側を構成する部材の肩ラインからバストラインまでの長さが、背面側を構成する部材の肩ラインからバストラインまでの長さに比べて0.5〜2cm長い。そのため本発明のシャツでは、前面側の肩から胸にかけての部分が前面側に迫り出す。すなわち本発明のシャツは、縫製後の形状が立体的なものとなる。そのため胸筋の部分がつっぱらず、体にフィットする。
【0021】また請求項8に記載の発明は、前身頃、後身頃、袖、ヨークその他の部材が縫製されてなるシャツにおいて、前身頃は肩傾斜が13°〜20°であることを特徴とする請求項7に記載のシャツである。
【0022】さらに請求項9に記載の発明は、前身頃、衿、後身頃、袖、ヨークその他の部材が縫製されてなるシャツにおいて、衿を4等分し、衿の他の部材との取り付け位置を端からf,g,h,i,jとし、前身頃の端部はg及びiに取り付けられ、前身頃の肩傾斜が13°〜20°であることを特徴とする請求項7又は8に記載のシャツである。
【0023】請求項8,9に記載のシャツは、いずれも肩傾斜を大きく設定している。この様に構成することにより、前面側の肩ラインからバストラインまでの長さを、無理なく背面側よりも長くすることができる。
【0024】また請求項10に記載の発明は、前身頃、後身頃、袖、ヨーク、その他の部材が縫製されてなるシャツにおいて、前身頃は肩傾斜が13°〜20°であり、後身頃のバストラインにおける中心線から端部までの幅と、前身頃のバストラインにおける打合せラインから端部までの幅の比率は、53:47以上、後身頃側の方が大きく、シャツの前面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さは、背面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さに比べて0.5〜2cm長く、袖は腕が挿通される筒状部分を構成する本体袖片と、袖口に取り付けられるカフス部材によって構成され、本体袖片の袖口部分の展開図形は、袖口の端部を構成する線を4等分し、その各点を端からa,b,c,d,eとしたとき、線分a,b及びd,eは、袖丈のラインの垂直線に対して2°〜10°の範囲にあり、袖丈のラインよりも袖下側の部位がカフス側に突出していることを特徴とするシャツである。
【0025】本発明のシャツは、前記した各構成の殆どを併せ持つものであり、袖の下側が従来のものに比べて長く、腕を上げる際に裾側が上がらない。また後身頃の幅が前身頃の幅に比べて広く、且つ背面側の袖側に寄った位置にタックが設けられているので腕を抱える運動をしたとき、肩甲骨側のつっぱり感が少ない。さらに前面側を構成する部材の肩ラインからバストラインまでの長さが、背面側を構成する部材の肩ラインからバストラインまでの長さに比べて0.5〜2cm長いため縫製後の形状が立体的なものとなり、胸筋の部分がつっぱらず、体にフィットする。
【0026】また請求項11に記載の発明は、袖を有し、背面側にタックがあり、タックの袖側の折り返し位置は、肩端部から6.5〜7.5cmの部位であることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,7,8,9,10のいずれかに記載のシャツである。
【0027】本発明のシャツでは、背面側にタックが設けられ、当該タックの位置は従来のものよりも袖側に寄っているので、前で腕を抱える運動をしたとき、肩甲骨側に余裕があり、つっぱり感が少ない。
【0028】
【発明の実施の形態】以下さらに本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態のシャツの正面図、側面図及び背面図である。図2は、本発明の実施形態のシャツの衿取り付け前における正面図である。図3は、図1のシャツの衿取り付け前における背面図である。図4は、図1のシャツの前身頃の型紙である。図5は、図1のシャツの後身頃の型紙である。図6は、図1のシャツのヨークの型紙である。図7は、図1のシャツの袖の型紙である。図8は、図1のシャツの衿の型紙である。図9は、図1のシャツのカフスの型紙である。図10は、図5の後身頃の型紙に図4の前身頃の型紙を重ねた説明図である。図11は、図1のシャツの前鎌深と後鎌深との関係を説明するシャツの部分展開図である。
【0029】本実施形態のシャツ1は、図4〜図9に示した型紙から作られたパーツを縫製したものである。すなわち本実施形態のシャツは、前身頃2、後身頃3、ヨーク4、本体袖片5、衿6、カフス7によって作られている。順次説明すると、前身頃2は、衿ぐり10、前中心辺11、前裾辺12、前脇辺13、前袖ぐり辺14及び前肩傾斜辺15によって囲まれた図形である。そして本実施形態では、前肩傾斜辺15の角度θが15°である。より具体的には、打合せライン16に垂直である線を基準線18とし、前肩傾斜辺15は基準線18に対して15°傾斜している。
【0030】なお本実施形態では前袖ぐり辺14のカーブが従来に比べてやや多い(曲率半径が小さい)。この理由は、生地の余分な弛みを無くし、前シルエットを綺麗に見せるためである。
【0031】後身頃3は、半分だけが図示されており、実際には図5の図形を二つ合わせたものであり図面左端の辺21は仮想の線である。後身頃3の図形は、後ろ肩辺20,仮想中心線21、後裾辺22、後脇辺23、及び後袖ぐり辺24によって構成されている。
【0032】なお図5の破線で示したラインは、従来の後袖ぐり辺のラインである。図5の様に、本実施形態では後袖ぐり辺24が従来に比べて緩いカーブとなっている(曲率半径が大きい)。この理由は、腕を前で抱える運動をする際の突っ張り感を解消するためであり、前運動をし易くするための工夫である。
【0033】図5において、後ろ肩辺20に設けられたマーク25,26は、タックの位置を示すものである。本実施形態では、タックの折り曲げ線であって、後脇辺23側の端緒となる位置26は、後袖ぐり辺24の境界点30から7cmの位置にある。すなわち後袖ぐり辺24の境界点30から7cmの位置(マーク26)がマーク25に重なるように折り曲げ、タック50を作る。
【0034】ここでタックの位置は、着心地や機能性に重要な影響を与える。本発明者の研究によると、タックの袖側に位置する起点(マーク26)の位置は、シャツのサイズに係わらず後袖ぐり辺24の境界点30から7cmの位置にあることが望ましい。また当該起点は、少なくとも6.5〜7.5cmであることが推奨される。すなわちタックの位置が後袖ぐり辺24の境界点30から7.5cmを越えると腕を前で抱える運動をする際にタックが延びる効果が低く、窮屈な着心地となる。またタックの位置が後袖ぐり辺24の境界点30から6.5cm未満である場合についても、タックの全体が肩と共に移動し、タックが延びる効果が低く、窮屈である。加えてタックの位置が後袖ぐり辺24の境界点30から6.5cm未満である場合は、タックの位置が脇に寄り過ぎ、恰好も悪い。
【0035】本実施形態で採用する後身頃3と前身頃2を図10の様に重ねて比較すると次の通りである。すなわち本実施形態では、後身頃3のバストラインBB−BBにおける中心線から端部までの幅WBは、前身頃のバストラインBF−BFにおける打合せライン16から端部までの幅WFよりも大きい。なおワイシャツにおいては、袖ぐり辺14,24と、脇辺13,23との境界点55がバストラインの高さである。
【0036】本実施形態では、後身頃3のバストラインBB−BBにおける中心線21から端部までの幅WBと、前身頃2のバストラインBF−BFにおける打合せライン16から端部までの幅WFの比率WB:WFは54:46である。またバストラインBF−BF,BB−BBから裾辺12,22にかけても同一の比率で後身頃3側が大きい。すなわち後身頃3のバストラインBB−BBから裾にかけての範囲における中心線21から端部までの平均幅と、前身頃2の同範囲における打合せライン16から端部までの平均幅についても、54:46の関係がある。
【0037】バストラインBF−BF、BB−BBよりも上部側、すなわちバストラインから肩傾斜辺15までの部位については、タックしろが存在するために上記した比率は狂う。また袖ぐりのカーブが存在するという理由からも上記した寸法関係は成立しない。本実施形態のシャツ1では、後身頃3側の後袖ぐり辺24のラインが従来のものに比べて緩いカーブであり、さらに前身頃2側の前袖ぐり辺14のカーブの曲率半径が小さい。そのため本実施形態では、バストラインBF−BF,BB−BBよりも首側の部分については従来技術のものに比べて後身頃3側の寸法比率が大きい。具体的に数値を上げると、図11に示すように、後身頃3と前身頃2のバストラインBF−BF、BB−BBを重ね、前身頃2のネックポイントNからバストラインの間の中間線EEにおける前身頃2と後身頃3との寸法比率HWF:HWBは、76:100〜78:100である。また同一箇所でタックしろを補正した場合の寸法比率は、82:100〜84:100である。
【0038】また本実施形態では、前身頃2の最も上(シャツを着た状態を基準)の位置からバストラインBF−BFまでの長さLFが、後身頃3の最も上の位置からバストラインBB−BBまでの長さLBよりも長い。そのためシャツを構成したときに前面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さが、背面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さに比べて長くなる。
【0039】要するに本実施形態のシャツでは、図2,3に示すように前側の鎌深KFが後ろ側の鎌深KBそれに比べて長い。LFとLBの差及び鎌深KFとKBの差は、厳密には同一ではないが、両者は概ね0.5〜2cm程度であり、より望ましくは1cm前後である。すなわち前面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さは、背面側を構成する部材の展開図形における肩ラインからバストラインまでの長さに比べて0.5〜2cm長い【0040】ヨーク4は、半分だけが図示されており、実際には図6の図形を二つ合わせたものであり図面左端の辺33は仮想の線である。ヨーク4は、前接続辺31、ヨーク衿ぐり辺32、仮想中心辺33、後接続辺34、ヨーク袖ぐり辺35によって構成される図形である。前接続辺31の長さ及び傾斜角度は、前記した前身頃2の前肩傾斜辺15に等しい。
【0041】本体袖片5は、略扇型であり袖付け縁辺40と袖口辺42を有し、両者の間を袖下辺41,43で結んだものである。
【0042】袖付け縁辺40は、袖山を構成する中央が盛り上がった線を描いている。そして袖山の裾野の一方は、緩やかな曲線を描いて僅かに突出している。
【0043】一方、袖口辺42は、両端側が僅かに先端側に突出している。すなわち本実施形態では、袖口辺42の長さを4等分してその各点をa,b,c,d,eとしたとき、両端から全長の4分の1程度の位置から両端にかけて緩やかな曲線を描いてカフス側に突出している。すなわち線分、a−b,b−c,c−d,d−eの内、b−c,c−dは、袖丈のライン45に対して垂直であり、直線状である。これに対して両端部分a−b,d−eは、ゆるやかな曲線を描いている。この曲線を直線に近似して表示すると、線分a−b,d−eの、袖丈のライン45に対する垂直線46を基準とする角度αは、2°〜10°程度であり、より望ましくは角度αは3〜4°程度である。また両端部分の突出量SEは、0.3〜1.0cm程度であり、より望ましくは0.5〜0.7cmである。
【0044】従って本実施形態では、袖下辺41,43の長さが従来のものに比べて長い。なお本実施形態では、従来のものに比べて袖山の高さが低く、前記した突出量SEを除いても従来のものに比べて袖下辺41,43の長さが長い。また本実施形態では、袖下辺41,43が曲線である。より具体的には袖下辺41,43の上腕側が内側に入り込む曲線である。すなわち袖下辺41,43の中間点からカフス側は、外側に膨らみ、中間点から袖ぐり側は、内側に湾曲している。
【0045】本実施形態のシャツ1は、上記した前身頃2、後身頃3、ヨーク4、本体袖片5、カフス6を縫製したものである。すなわち前身頃2の前脇辺13と後身頃3の後脇辺23が縫い合わされる。また前身頃2の前肩傾斜辺15にヨーク4の前接続辺31が縫い合わされ、さらにヨーク4の後接続辺34に後ろ肩辺20が縫い合わされる。そして前身頃2の前袖ぐり辺14と、ヨーク4のヨーク袖ぐり辺35と後身頃3の後袖ぐり辺24によって構成される袖ぐりに、本体袖片5を縫い付ける。より具体的には、本体袖片5の袖下辺41,43同士を縫い合わせて筒状にし、袖付け縁辺40を前記した袖ぐりに縫い付ける。このとき、袖下辺41,43が脇の下側となる様に取り付ける。さらに袖の先端にカフス7を取り付ける。
【0046】また前身頃2の衿ぐり10とヨーク4のヨーク衿ぐり辺32によって形成される衿ぐりに、衿6を取り付ける。ここで衿6を4等分した時、端から2点目となる位置が、前身頃2とヨーク4との接続部となる様に配慮する。すなわち衿の他の部材との取り付け位置を端からf,g,h,i,jとした時、g及びiの位置に前身頃2とヨーク4との接続部が来るように縫製する。なおこの位置は三点目打ちと称されている。
【0047】こうして縫製されたシャツ1は、後身頃3のバストラインBB−BBにおける中心線21から端部までの幅WBが、前身頃2のバストラインBF−BFにおける打合せライン16から端部までの幅WFよりも大きいので、背面側に布の余裕が大きい。そのため両腕を抱き込んだ様な運動を行うとき、伸び側となる背面側に余裕ができる。また本実施形態のシャツ1では、背面側にタック50があるが、当該タック50の位置は、両腕を抱き込んだ様な運動を行うときに最も運動量が多い位置である。そのため着用者は、両腕を抱き込む様な運動を抵抗無く行うことができる。さらに本実施形態のシャツ1では、前側の鎌深が後ろ側に比べて長いので、胸の部分が立体的に盛り上がることとなる。そのためシャツの生地が体にフイットし、見た目が美しい。
【0048】なお本実施形態のシャツ1では、背面側の布に余裕をもたせたから、逆に前面側の伸びが少ない。そのため両手を後ろに反らす運動をする場合は、窮屈となる。しかし両手を後ろに反らす場合の両手の角度は、せいぜい220°程度であり、前面側に要求される伸び量は少なく、また日常生活において両手を後ろに反らす運動を行うことは稀であるから、実際上の問題はない。
【0049】また本実施形態のシャツ1では、袖口辺42は、両端側が僅かに先端側に突出しているので、袖は袖下側51が従来のものに比べて長い。そのため本実施形態のシャツ1では、脇の下近傍の布に余裕がある。したがって、腕を真上に上げる様な運動を行う場合、裾側が引っ張られにくい。そのため腕を真上に上げる様な運動をしても、裾がずり上がらない。
【0050】以上説明した実施形態では、前身頃2の最も上(シャツを着た状態を基準)の位置からバストラインBF−BFまでの長さLFを、後身頃3の最も上の位置からバストラインBB−BBまでの長さLBよりも長くして前側の鎌深が長くなる様に構成した。しかしながらヨークの形状によっては、必ずしもLFがLBよりも長くなくても良い場合がある。要するにシャツの前面側を構成する部材の展開図形における肩ライン56からバストラインまでの長さが、背面側を構成する部材の展開図形における肩ライン56からバストラインまでの長さに比べて0.5〜2cm長ければ、相当の効果が期待できる。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のシャツは、着心地が良く、且つ動きやすい。また本発明のシャツは、体にフイットし、見栄えもよい。さらに本発明のシャツは縫製が容易であり、量産に向くという優れた効果がある。
【出願人】 【識別番号】591160811
【氏名又は名称】山喜株式会社
【出願日】 平成13年3月12日(2001.3.12)
【代理人】 【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
【公開番号】 特開2002−266101(P2002−266101A)
【公開日】 平成14年9月18日(2002.9.18)
【出願番号】 特願2001−69493(P2001−69493)